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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F15B
管理番号 1027703
異議申立番号 異議1997-72727  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-06-11 
確定日 2000-10-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第2562429号「スライドユニット」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2562429号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続きの経緯
本件特許第2562429号の発明についての出願は、昭和63年3月26日に特許出願した特願昭63-72652号の一部を平成5年2月26日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、平成8年9月19日にその特許権の設定登録がなされたものであるが、その後、本件の請求項1に係る特許に対して、小林数夫より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月5日に訂正請求がなされ、さらに、訂正拒絶理由通知がなされ、そして、その指定期間内である平成12年6月5日に手続補正書が提出されたものである。

【2】訂正請求に対する補正の適否についての判断
ア.補正の内容
(特許請求の範囲の補正の内容)
特許権者が求めている特許請求の範囲の補正の内容は、次のとおりである。
全文訂正明細書中の特許請求の範囲の請求項1の、
「相対向する左右一対の側壁を備えた断面コ字状のガイドフレームの収容部内にロッドレスシリンダを側壁に沿って長く延びるように配設し、そのロッドレスシリンダの外部移動体に連結したスライダを両側壁に設けた一対の案内レールによりロッドレスシリンダの軸線に沿って案内するようにしたスライドユニットにおいて、前記ガイドフレームの両側壁には、コ字状断面の開口を上向きにしたときに上側となる上面に、夫々その全長に亘って前記軸線に沿う1本のT溝を成形すると共に、それらの上面に案内レールの取付け面とその取付け面の一方側に位置する位置規制用の突縁を成形し、前記両側壁の取付け面に夫々前記案内レールを載置してそれらの案内レールを突縁に側面を当てた状態でT溝に嵌合する複数のT溝用締結具を介して取付けて成ることを特徴とするスライドユニット。」を、
「相対向する左右一対の堤防状の側壁を備えた断面コ字状の型材から成るガイドフレームの収容部内にロッドレスシリンダを側壁に沿って長く延びるように配設し、そのロッドレスシリンダの外部移動体に連結したスライダを両側壁に設けた一対の案内レールによりロッドレスシリンダの軸線に沿って案内するようにしたスライドユニットにおいて、前記ガイドフレームの堤防状の両側壁には、コ字状断面の開口を上向きにしたときに上側となる上端面に、夫々その全長に亘って前記軸線に沿う1本のT溝を成形すると共に、それらの上端面に案内レールの取付け面とその取付け面の一方側に位置する位置規制用の突縁を成形し、前記両側壁の上端面の取付け面に夫々前記案内レールを載置してそれらの案内レールを突縁に側面を当てた状態でT溝に嵌合する複数のT溝用締結具を介して取付けて成ることを特徴とするスライドユニット。」と補正する。
イ.補正の適否
上記訂正請求に対する補正により、請求項1に係る発明の「側壁」は「堤防状の側壁」に、「ガイドフレーム」は「型材から成るガイドフレーム」に、「両側壁」は「堤防状の両側壁」に、「上面」を「上端面」(2箇所)に、「両側壁の取付け面」は「両側壁の上端面の取付け面」に補正された。
しかし、「堤防状の側壁」、「型材から成るガイドフレーム」及び「堤防状の両側壁」とする補正事項は、訂正明細書の特許請求の範囲をより減縮する目的でなされたものであっても、訂正事項を変更するものであるから、このような補正事項は、訂正請求に係る訂正を求める範囲を実質的に変更するものであるから、本件訂正請求書の要旨を変更するものに該当する。
したがって、訂正請求に対する当該補正は、その余の補正事項の検討をするまでもなく、特許法第120条の4第3項で準用する同法第131条第2項の規定に適合しないので、上記補正を採用することはできない。

【3】訂正の適否についての判断
ア.訂正明細書の請求項1に係る発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、本件訂正発明という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「相対向する左右一対の側壁を備えた断面コ字状のガイドフレームの収容部内にロッドレスシリンダを側壁に沿って長く延びるように配設し、そのロッドレスシリンダの外部移動体に連結したスライダを両側壁に設けた一対の案内レールによりロッドレスシリンダの軸線に沿って案内するようにしたスライドユニットにおいて、前記ガイドフレームの両側壁には、コ字状断面の開口を上向きにしたときに上側となる上面に、夫々その全長に亘って前記軸線に沿う1本のT溝を成形すると共に、それらの上面に案内レールの取付け面とその取付け面の一方側に位置する位置規制用の突縁を成形し、前記両側壁の取付け面に夫々前記案内レールを載置してそれらの案内レールを突縁に側面を当てた状態でT溝に嵌合する複数のT溝用締結具を介して取付けて成ることを特徴とするスライドユニット。」
イ.引用刊行物に記載された発明
本件訂正発明に対して、当審が通知した訂正拒絶理由通知で引用した特開昭62-237103号公報(以下、刊行物1という。)には、
「軸方向のスリットを側壁に形成したバレル内に、ピストンを軸方向摺動可能に嵌装し、前記スリットより前記ピストンに連結したドライバの一部を突出させると共にこのスリットをバンドで密封し、前記バレル外側にはバレル軸に沿った案内レールを備えたガイド本体を配設し、このバレルとガイド本体とをバレル軸の直交方向に相対変位可能に連結し、ドライバに設けた案内子を上記案内レールによって案内することにより、ドライバに正確な直線移動を行わせるようにしたことを特徴とする圧流体シリンダ。」(第1頁下左欄第5行-同頁同欄第15行)との記載、「ガイド本体を断面コ字状に形成し、このガイド本体の収納部内壁と所定間隙を有し得るようなバレルを収納部に内装し、」(第1頁下左欄第16行-同頁同欄第18行)との記載、「本発明は、ピストンロッドを有しない、いわゆるロッドレスシリンダタイブのシリンダのうち、特にそのバレルにスリットを有し、バレル内のピストンと連結したドライバをスリットから突出させ、このドライバを正確に直線移動させるようにした圧流体シリンダに関する。」(第1頁下右欄第7行-同頁同欄第12行)との記載、「ガイド本体1の上部開口部の左右両側にはガイド本体1の全長に亘ってバレル軸に沿った互いに平行な二本の案内レール6、6が配設され、この案内レール6はV字状の案内面7を備えている。」(第2頁下左欄第2行-同頁同欄第6行)との記載、「11は案内子として示すスライダで、前記案内レール6、6をまたぐように門型に形成され、その両端にベアリング等を嵌装したガイド部材12、12が配設されて、このベアリングが前記案内レール6,6の案内面7,7に転動自在に接触している。」(第2頁下左欄第11行-同頁同欄第16行)との記載、及び「圧流体用ポート19、19の何れかから圧流体が供給されると、ピストン8はバレル軸方向に移動し、ドライバ9はスライダ11のガイド部材12、12と案内レール6、6の係合により案内レール6、6に沿って案内される。」(第2頁下右欄第16行-同頁同欄第20行)との記載、並びに第1-2図に図示された符号1を有する部材(発明の詳細な説明を参照すればガイド本体)と符号6を有する部材(発明の詳細な説明を参照すれば案内レール)との関連構成からみて、
「相対向する左右一対の側壁を備えた断面コ字状のガイド本体の収納部内にロッドレスシリンダを側壁に沿って長く延びるように配設し、そのロッドレスシリンダのドライバに連結したスライダを両側壁に設けた一対の案内レールによりロッドレスシリンダの軸線に沿って案内するようにした圧流体シリンダにおいて、前記ガイド本体の両側壁には、コ字状断面の開口を上向きにしたときに上側となる上面に、面とその面の一方側に位置する突縁を形成し、前記両側壁に夫々それらの案内レールを取付けて成る圧流体シリンダ。」
が記載されている。
また、同じく、特開昭61-61773号公報(以下、刊行物2という。)には、
「前記直進摺動ガイドを全長にわたり保持する長手方向に一様な断面形状を有し、センサー保持溝およびこのセンサー保持溝と運通した配線収納溝を設けた本体ベースと、」(第1頁下左欄第6行-同頁同欄第9行)との記載、「本体ベースは、金属押出材を用いてなる特許請求の範囲第1項記載の工業用ロボット。」(第1頁下右欄第3行-同頁同欄第4行)との記載、「前記直進摺動ガイドを全長にわたり保持し、センサー保持溝およびこのセンサー保持溝と連通した配線収納溝を設けた長手方向に一様な断面形状を有する本体ベースと、」(第2頁上左欄17行-同頁同欄第20行)との記載、「このセンサーよりわずかに幅広でセンサーを保持可能で、かつ前記本体ベースに、前記保持溝内に設けられたセンサー取付板とからなり前記センサー保持溝はT溝の斜め下部の少なくとも一方に配線収納溝を設け、」(第2頁上右欄第3-7行)との記載、及び「16は直進摺動ガイド2を全長に渡って保持する本体ベースである。17はスライドテーブル1の位置検出センサーでありセンサー取付板18に固定され、本体ベース16のセンサー保持溝19に第3図に示すようにセットし長手方向に位置を調整してネジ20を締め、溝底面21を押して固定する。」(第2頁下左欄第10行-同頁同欄第17行)との記載、並びに第1-4図、第6図に図示された符号16を有する部材(発明の詳細な説明を参照すれば本体ベース)と符号2を有する部材(発明の詳細な説明を参照すれば直進摺動ガイド)との関連構成からみて、
「本体ベースの上面にその全長に亘ってスライドテーブルの直進摺動方向に沿う2本のT溝を成形すると共に、その上面に直進摺動ガイドの取付け面を成形し、前記取付け面に前記直進摺動ガイドを載置して直進摺動ガイドをT溝に嵌合する複数のT溝用締結具を介して取り付けた点。」
が記載されている。
ウ.対比・判断
そこで、本件訂正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された「ガイド本体」、「収納部」、「ドライバ」、「圧流体シリンダ」は、それぞれ、本件訂正発明の「ガイドフレーム」、「収容部」、「外部移動体」、「スライドユニット」に対応するから、両者は、「相対向する左右一対の側壁を備えた断面コ字状のガイドフレームの収容部内にロッドレスシリンダを側壁に沿って長く延びるように配設し、そのロッドレスシリンダの外部移動体に連結したスライダを両側壁に設けた一対の案内レールによりロッドレスシリンダの軸線に沿って案内するようにしたスライドユニットにおいて、前記ガイドフレームの両側壁には、コ字状断面の開口を上向きにしたときに上側となる上面に、面とその面の一方側に位置する突縁を形成し、前記両側壁に夫々それらの案内レールを取付けて成るスライドユニット。」である点で一致し、次の点で相違する。
(1)本件訂正発明では、前記ガイドフレームの両側壁には、コ字状断面の開口を上向きにしたときに上側となる上面に、夫々その全長に亘って前記軸線に沿う1本のT溝を成形すると共に、前記両側壁の取付け面に夫々それらの案内レールをT溝に嵌合する複数のT溝用締結具を介して取付けるのに対して、刊行物1に記載された発明では、ガイドフレームの両側壁には、コ字状断面の開口を上向きにしたときに上側となる上面に、それらの案内レールを取付けるものであるが、その取付け手段はどのようなものであるか不明である点。
(2)本件訂正発明では、それらの上面に案内レールの取付け面とその取付け面の一方側に位置する位置規制用の突縁を成形し、前記両側壁の取付け面に夫々前記案内レールを載置してそれらの案内レールを突縁に側面を当てた状態で複数の締結具を介して取り付けるのに対して、刊行物1に記載された発明では、上面に面とその面の一方側に位置する突縁を形成し、前記両側壁に夫々それらの案内レールを取付けるものであるが、その取付け手段はどのようなものであるか不明である点。
前記相違点(1)について検討すると、刊行物2には、スライドユニットにおける案内レールの取付けにおいて、本体ベースの上面に、その全長に亘ってスライドテーブルの直線摺動方向に沿う2本のT溝を成形すると共に、その上面に直進摺動ガイドの取付け面を成形し、前記取付け面に前記直進摺動ガイドを載置して直進摺動ガイドをT溝に嵌合する複数のT溝用締結具を介して取り付けた点が記載されており、スライドテーブルの直線摺動方向に沿うことは、スライダの直線摺動方向、即ちロッドレスシリンダの軸線に沿うことに対応し、T溝の本数は設計事項であるので、これを、同じスライドユニットである刊行物1に記載のガイドフレームの両側壁のコ字状断面の開口を上向きにしたときに上側となる上面に適用して、前記ガイドフレームの両側壁には、コ字状断面の開口を上向きにしたときに上側となる上面に、夫々その全長に亘って前記軸線に沿う1本のT溝を成形すると共に、それらの案内レールをT溝に嵌合する複数のT溝用締結具を介して取付けることとすることは、当業者が容易になしえたことである。
前記相違点(2)について検討すると、スライドユニットにおける案内レールの取付けにおいて、上面に案内レールの取付け面とその取付け面の一方側に位置する位置規制用の突縁を形成し、取付け面に夫々前記案内レールを載置してそれらの案内レールを突縁に側面を当てた状態で複数の締結具を介して取り付けることは、例えば、特開昭60-196428号公報、特開昭61-105307号公報、特開昭61-266825号公報、特開昭62-37513号公報に記載されるように、本件特許の出願前に周知であり、またガイドフレームに対応する本体ベースを成形することは刊行物2に記載されているので、この刊行物2に記載された事項を、刊行物1に記載された発明のスライドユニットにおける案内レールの取付けに適用し、それらの上面に案内レールの取付け面とその取付け面の一方側に位置する位置規制用の突縁を成形し、前記両側壁の取付け面に夫々前記案内レールを載置してそれらの案内レールを突縁に側面を当てた状態で複数の締結具を介して取付けることは、刊行物1記載の発明も、刊行物2記載の発明も共に、スライドユニットという同一の技術分野に属する発明であるから、当業者が容易になしえたことである。
次に、本件訂正発明の構成によってもたらされる効果の予測性について検討する。
(1)ガイドフレームを長い型材を切断することによって簡易に製造できる効果について、刊行物2には、スライドユニットにおいて、本体ベースは長手方向に一様な断面形状を有する金属押出材を用いることが記載されており、長い型材の切断により簡易に製造する効果は、当業者であれば当然予測できる程度のものである。なお、この効果は、本件訂正発明の構成にはその限定がない、長い型材を切断して製造する場合の効果である。(2)従来側壁に穿設していた案内レール取付用の複数のタップ孔加工を省くことができるとの効果については、タップ孔加工を採用しないことからもたらされる当然の効果であり、当業者が当然予測できるものである。(3)案内レールの取付を簡易迅速にできる効果について、この効果は、刊行物1-2の案内レールの取付場所、並びに下記(5)及び下記(6)の効果を考慮すれば、当然当業者が予測しうるものである。(4)部材の材質、大きさ、数量、単価、労働量等のコスト決定要因を完全には特定していない本件訂正発明の構成における製造コストは、幅をもって計算されることになり、製造コストを大幅に低減できるという効果は、各構成を示す刊行物1-2及び前記周知事項に基づきコスト決定要因を考慮して当業者が予測できると共に本件訂正発明の構成で完全には特定されていない事項に基づく効果である。(5)案内レールを位置規制した状態で取付けるので容易に取り付けられるとの効果は、案内レールを位置規制した状態で取付けることは、前記周知技術(前記の如く、例えば、特開昭60-196428号公報、特開昭61-105307号公報、特開昭61-266825号公報、特開昭62-37513号公報参照)で採用されている技術であり、その効果は当業者が当然予測できるものである。(6)案内レールに設ける取付孔の間隔が異なっている種々の案内レールをガイドフレームの側壁の上面に容易に取り付けることができる効果について、刊行物2には、T溝への取付において、長手方向に位置を調整してネジを締めることが記載されており、取付孔の間隔によらずに取付けることが記載されており、容易に取付けられるとの効果は当業者が予測できるものである。(7)T溝の端部を必要に応じて他の部材の取付けに兼用できる効果について、どのような部材をどのように取付けるかの特定もない、一般的に必要に応じて他の部材の取付に兼用する点は、当業者であれば当然予測できるものである。なお、この効果は、本件訂正発明の構成に限定のない、案内レールが全てのT溝を覆っていない場合の効果である。
したがって、本件訂正発明は、上記刊行物1-2に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ.結論
以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

【4】特許異議の申立てについての判断
ア.本件特許の請求項1に係る発明
前記【3】エ.で述べたように、訂正請求の訂正が認められないので、本件特許の請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「相対向する左右一対の側壁を備えた断面コ字状のガイドフレームの収容部内にロッドレスシリンダを側壁に沿って長く延びるように配設し、そのロッドレスシリンダの外部移動体に連結したスライダを両側壁に設けた一対の案内レールによりロッドレスシリンダの軸線に沿って案内するようにしたスライドユニットにおいて、前記ガイドフレームの側壁には夫々その全長に亘って前記軸線に沿うT溝を形成すると共にそのT溝を形成した壁面に取付け面を形成し、それらの取付け面に前記案内レールを夫々T溝に嵌合する複数のT溝用締結具を介して取付けて成ことを特徴とするスライドユニット。」
イ.取消理由に引用した発明
当審が通知した取消理由通知で引用した特開昭62-237103号公報(上記刊行物1と同じ。)には、すでに上記【3】イ.で述べた記載事項からみて、
「相対向する左右一対の側壁を備えた断面コ字状のガイド本体の収納部内にロッドレスシリンダを側壁に沿って長く延びるように配設し、そのロッドレスシリンダのドライバに連結したスライダを両側壁に設けた一対の案内レールによりロッドレスシリンダの軸線に沿って案内するようにした圧流体シリンダにおいて、前記ガイド本体の両側壁には夫々壁面に取付け面を形成し、それらの取付け面に前記案内レールを夫々取付けて成る圧流体シリンダ。」
が記載されている。
また、同じく、特開昭61-61773号公報(上記刊行物2と同じ。)には、すでに上記【3】イ.で述べた記載事項からみて、
「本体ベースにはその全長に亘ってスライドテーブルの直線摺動方向に沿う2本のT溝を形成すると共にそのT溝を形成した壁面に取付け面を形成し、取付け面に前記案内レールをT溝に嵌合する複数のT溝用締結具を介して取り付ける点。」
が記載されている。
ウ.対比・判断
刊行物1に記載の発明における「ガイド本体」、「収納部」、「ドライバ」、「圧流体シリンダ」は、夫々本件発明における「ガイドフレーム」、「収容部」、「外部移動体」、「スライドユニット」に相当する。
したがって、本件発明と刊行物1に記載の発明とを対比すると、両者は、「相対向する左右一対の側壁を備えた断面コ字状のガイドフレームの収容部内にロッドレスシリンダを側壁に沿って長く延びるように配設し、そのロッドレスシリンダの外部移動体に連結したスライダを両側壁に設けた一対の案内レールによりロッドレスシリンダの軸線に沿って案内するようにしたスライドユニットにおいて、前記ガイドフレームの側壁には壁面に取付け面を形成し、それらの取付け面に前記案内レールを夫々取付けて成るスライドユニット。」である点で一致し、次の点で相違する。
(1)本件発明では、ガイドフレームの側壁には夫々その全長に亘って前記軸線に沿うT溝を形成すると共にそのT溝を形成した壁面に取付け面を形成し、それらの取付け面に前記案内レールを夫々T溝に嵌合する複数のT溝用締結具を介して取付るのにたいし、刊行物1に記載の発明では、ガイドフレームの側壁には夫々壁面に取付け面を形成し、それらの取付け面に前記案内レールを夫々取付けるものであるが、その取付け手段はどのようなものであるか不明である点。
前記相違点(1)について検討すると、刊行物2には、スライドユニットにおける案内レールの取付けにおいて、本体ベースにはその全長に亘ってスライドテーブルの直線摺動方向に沿う2本のT溝を形成すると共にそのT溝を形成した壁面に取付け面を形成し、取付け面に直線摺動ガイドをT溝に嵌合する複数のT溝用締結具を介して取付ける点が記載されており、スライドテーブルの直線摺動方向に沿うことは、スライダの直線摺動方向、即ちロッドレスシリンダの軸線に沿うことに対応し、T溝の本数は設計事項であるので、これを、同じスライドユニットである刊行物1に記載のガイドフレームの側壁に適用して、ガイドフレームの側壁には夫々その全長に亘って前記軸線に沿うT溝を形成すると共にそのT溝を形成した壁面に取付け面を形成し、それらの取付け面に前記案内レールを夫々T溝に嵌合する複数のT溝用締結具を介して取付ることとすることは、当業者が容易になしえたことである。
そして、本件発明の構成によってもたらされる効果も、刊行物1-2に記載された発明から当業者であれば予測できる程度のものである。

【5】むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明は、刊行物1-2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許の請求項1に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過処置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-08-08 
出願番号 特願平5-63521
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (F15B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 窪田 治彦  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 亀井 孝志
清田 栄章
登録日 1996-09-19 
登録番号 特許第2562429号(P2562429)
権利者 豊和工業株式会社
発明の名称 スライドユニット  

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