• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E05F
管理番号 1027806
異議申立番号 異議1999-72937  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-12-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-03 
確定日 2000-10-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第2854189号「パワーウインドの安全装置」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2854189号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 (一)手続きの経緯
本件特許に係る出願は、平成4年5月23日の出願であって、平成10年11月20日に特許の設定登録がなされ、その後、株式会社ミツバから異議申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成12年1月18日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成12年8月22日に意見書が提出されたものである。
(二)訂正の適否(独立特許要件について)
1.訂正後発明
訂正明細書の請求項1及び2に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】車両のウインドを駆動源により開閉動作させるパワーウインドにおいて、前記ウインドの開閉動作に伴うパルス信号を発生する手段と、前記パルス信号に基づいて前記ウインドの開閉動作の絶対速度を検出する手段と、検出された絶対速度から異物の挟み込みを検出する手段と、前記パルス信号に基づいて前記ウインドの開閉動作の相対速度を検出する手段と、検出された相対速度から異物の挟み込みを検出する手段と、前記パルス信号に基づいて前記ウインドの開閉動作方向を検出する手段と、前記絶対速度と相対速度に基づく異物の挟み込み検出結果のうち少なくとも一方の検出結果と、前記ウインド開閉動作方向の検出結果とに基づいて安全制御動作を行う手段を備え、前記パルス信号を発生する手段は、位相の異なる2つのパルス信号を発生し、前記ウインドの開閉動作方向を検出する手段は、前記2つのパルス信号を2値化して2ビットの信号値とし、この2ビットの信号値が変化する周期性を検出した結果から開閉動作方向を検出することを特徴とするパワーウインドの安全装置。
【請求項2】前記ウインドの開閉位置を検出し、この検出された位置に基づいて安全制御領域を判別する手段を有し、安全制御領域内において安全制御動作を行うようにしてなる請求項1に記載のパワーウインドの安全装置。
2.引用文献
当審が通知した訂正拒絶理由に引用した特開昭63-165682号公報(以下、「引用例1」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(1)「窓ガラスを開閉する正逆回転可能なモータと、このモータの回転数に応じたパルスを発生するパルス発生器と、このパルス発生器の出力するパルス数を計数するカウンタと、このカウンタの計数値に基づき、前記窓ガラスを全閉位置近傍にあるか否かを判別する窓ガラス位置判別器と、前記パルス発生器が出力するパルスに基づき、前記モータの回転速度を求める速度演算器と、この速度演算器の出力に基づき、前記モータの前回計測値に対する回転速度変化量と速度変化率との少なくともいずれか1つを算出する速度変化演算器と、前記窓ガラスが閉動作中か開動作中かを判別する窓ガラス動作判別器と、この窓ガラス動作判別器が前記窓ガラスが閉動作中であると判別し、かつ前記窓ガラス位置判別器が前記窓ガラスが全閉位置近傍外にあると判別した場合に、前記速度変化演算器の出力が予め定めた第1の設定値以上のときに、前記モータを逆転させて前記窓ガラスを開動作させる逆転指令発生器と、前記窓ガラス動作判別器が前記窓ガラスが閉動作中であると判別し、かつ前記窓ガラス位置判別器が前記窓ガラスが全閉位置近傍内にあると判別した場合に、前記速度変化演算器の出力が予め定めた第2の設定値以上のときに、前記モータの動作を停止させる停止指令発生器とを有することを特徴とする窓ガラス開閉装置。」公報第1頁左欄〜第1頁右欄。
(2)「本発明は、窓ガラス開閉装置に係り、特に自動車用窓ガラスの自動昇降装置に関する。」公報第1頁右欄。
(3)「この割込処理は、パルス発生回路20が出力するモータパルス信号に基づいて、現在の窓ガラス位置とモータ速度とを検出するもので、まずステップ50においてモータパルス信号の電圧レベルが0(ローレベル)から1(ハイレベル)に変化したか否かの判断がなされる。変化がなければステップ64にスキップし、割込プログラムを終了する。またCPU24は、ステップ50において前回より今回の方が電圧レベルが高くなっている場合、即ち電圧レベルが0→1に変化したときは、ステップ52に進み、窓ガラス16が上昇(UP)中か否かを判断する。」公報第4頁左上欄。
(4)「以上のように、本実施例においては、モータの速度等の絶対量でないモータの速度変動率を監視することにより、モータ負荷のバラツキによる影響を少なくすることができる。そして、比較値(設定値)αの値を適切な値に選定することにより、物体の挟み込みを早目に検知し、窓ガラスを全閉位置まで下降させることにより、挟み込んだ物体の破損や損傷をなくすことができ、安全性が極めて高い。また、全閉、全開位置では,αより大きな値の比較値βを使用しているため、モータの速度変動率がかなり大きくならないと、即ち締込み力が充分大きくならないとモータ10が停止しないため、窓ガラス16を確実に全閉、全開することが可能となる。」公報第6頁右上欄〜第6頁左下欄。
前記(1)〜(4)の記載事項と図面の記載からみて、引用例1には、自動車の窓ガラスを開閉する正逆回転可能なモータと、このモータの回転数に応じたパルスを発生するパルス発生器と、このパルス発生器の出力するパルス数を計数するカウンタと、このカウンタの計数値に基づき、前記窓ガラスを全閉位置近傍にあるか否かを判別する窓ガラス位置判別器と、前記パルス発生器が出力するパルスに基づいて、前記モータの回転速度を求める速度演算器と、この速度演算器の出力に基づき、前記モータの前回計測値に対する回転速度変化量と速度変化率との少なくともいずれか1つを算出する速度変化演算器と、前記窓ガラスが閉動作中か開動作中かを前記パルスカウンタの増減により判別する窓ガラス動作判別器と、この窓ガラス動作判別器が前記窓ガラスが閉動作中であると判別し、かつ前記窓ガラス位置判別器が前記窓ガラスが全閉位置近傍外にあると判別した場合に、前記速度変化演算器の出力が予め定めた第1の設定値以上のときに、前記モータを逆転させて前記窓ガラスを開動作させる逆転指令発生器と、前記窓ガラス動作判別器が前記窓ガラスが閉動作中であると判別し、かつ前記窓ガラス位置判別器が前記窓ガラスが全閉位置近傍内にあると判別した場合に、前記速度変化演算器の出力が予め定めた第2の設定値以上のときに、前記モータの動作を停止させる停止指令発生器とを有する自動車の窓ガラス開閉装置が記載されている。
同じく、当審が通知した訂正拒絶理由に引用した特開昭60-156294号公報(以下、「引用例2」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(5)「開口に物が挟み込まれる恐れがある時に閉鎖動作を中断するための保護システムを有する電動式開閉部の駆動装置であって、挟み込みの恐れがある開閉部の調整通路の少なくとも一つの範囲において開閉部の調整速度を検知する速度伝達手段(15)(16)と、保護回路(13)を作動させる挟み込み信号を発生させるために、速度信号及び/又はその時間的変化に応答する評価ステージ(18)とを有していることを特徴とする電動式開閉部の駆動装置。」公報第1頁左欄。
(6)「開放動作中の種々の抵抗等により調整速度が変化しても、閉鎖動作中の速度変化と異なり、物が挟み込まれる恐れがあるという信号は送られない。保護システムを閉鎖動作中にだけ確実に作動させるには、閉鎖動作を認識する論理回路を評価ステージに設けると都合が良い。」公報第3頁左上欄。
(7)「第1図において、ブロックで示す摺動昇降屋根(10)は、駆動モータ(11)により駆動部(12)を介して調整される。駆動部(12)は、例えば耐圧ねじケーブルで形成されており、該ケーブルがモータ(11)により駆動されるピニオンに連結している。モータ(11)は、所望値位置手段(14)からの所望値位置信号Usを受け取る制御装置(13)により制御される。屋根(10)の実際位置Xは実際値位置伝達手段(15)により検知され、実際値位置信号Uiに変換される。該信号Uiは、制御装置(13)において所望値位置の値Usと比較される。」公報第3頁右上欄〜第3頁左下欄。
(8)「更に、実際値位置信号Uiは第1識別ステージ(16)に送られて識別され、速度信号Uvが形成される。識別ステージ(16)には第2識別ステージ(17)が連結されており、該ステージ(17)の識別作用により信号Uvから加速信号Ubが引き出される。位置信号、速度信号及び加速信号は評価ステージ(18)に送られ、該ステージ(18)は、入力信号の組み合わせの関数として、挟み込み信号Ukを発生させる。挟み込み信号は制御装置(13)へ送られ、装置(13)により、駆動モータ(11)の回転が逆転させられる。評価ステージ(18)で屋根(10)の昇降及び摺動範囲を識別するために、信号Unが評価ステージ(18)の別の入力部へ送られる。該信号Unは屋根(10)の閉鎖又は中立位置に対応する。」公報第3頁左下欄〜第3頁右下欄。
(9)「詳細には記載されていないが、位置信号Uiにより制御装置(13)又は評価ステージ(18)に影響を及ぼし、摺動昇降屋根が閉鎖位置に近付いて指等が挟み込まれる恐れが全くなくなると、制御装置(13)が挟み込み信号Ukに対して反応しなくなる」公報第4頁左下欄。
前記(5)〜(9)の記載事項と図面の記載からみて、引用例2には、自動車の電動式開閉部の駆動装置において、前記開閉部の開閉動作に伴い開閉部の実際位置Xが実際値位置伝達手段(15)により検知され、実際値位置信号Uiに変換され、実際値位置信号Uiは第1識別ステージ(16)に送られて識別され、速度信号Uvが形成され、速度信号Uvから加速信号Ubが引き出され、速度信号Uv及び加速信号Ubが評価ステージ(18)において第1及び第2所定限界値と対比して異物の挟み込みを検知し、実際値位置信号Uiから論理回路により開閉部の動作方向を検知し、前記速度信号Uv及び加速信号Ubによる異物挟み込み検出結果と、開閉部の位置信号Ui及び開閉部の動作方向検知信号に基づいて、安全制御動作を行う自動車の電動式開閉部の駆動装置の安全装置が記載されている。
同じく、当審が通知した訂正拒絶理由に引用したドイツ特許公開DE3829405A1公報(公開日1990年3月8日)(以下、「引用例3」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(10)「発明の名称:電動モータによる自動車の可動部品用の制御装置」公報訳文第1頁。
(11)「このような位置とは例えばスライドルーフまたは窓ガラスの閉鎖位置であることができる。」公報訳文第2頁。
(12)「磁気リンク9は軸2と共回転し、磁気センサ10および10a内でパルスを発生し、このパルスはマイクロプロセッサ7に伝送され、そこで7aで示されている計数レジスタによってカウントトされる。センサ10および10aは互いに移相ずれして配置されており、従って移相パルスを供給し、その移相方向から公知の態様でモータ1の回転方向に関する情報が得られる。」公報訳文第4〜5頁。
前記(10)〜(12)の記載事項と図面の記載からみて、引用例3には、自動車の窓ガラスを開閉する駆動モータに、パルス発生器を設け、前記パルス発生器は、駆動モータの正逆回転により異なる位相のパルスを発生し、このパルスをマイクロプロセッサに伝送し、前記検出したパルスの位相からマイクロプロセッサの処理により駆動モータの回転方向を検知する構成が記載されている。
3.対比
先ず、訂正後請求項1に係る発明と引用例1に記載の発明を対比する。
引用例1に記載の発明における、「自動車の窓ガラスを開閉する正逆回転可能なモータ」、「モータの回転数に応じたパルスを発生するパルス発生器」、「パルス発生器が出力するパルスに基づいて、モータの回転速度を求める速度演算器」、「速度演算器の出力に基づき、モータの前回計測値に対する速度変化量を算出する速度変化演算器」、「窓ガラスが閉動作中か開動作中かをパルスカウンタの増減により判別する窓ガラス動作判別器」、「速度変化演算器の出力が予め定めた第1の設定値以上のとき」及び「モータを逆転させて前記窓ガラスを開動作させる」は、訂正後請求項1に係る発明における、「車両のウインドを駆動源により開閉動作させるパワーウインド」、「ウインドの開閉動作に伴うパルス信号を発生する手段」、「パルス信号に基づいてウインドの開閉動作の絶対速度を検出する手段」、「パルス信号に基づいてウインドの開閉動作の相対的速度を検出する手段」、「前記パルス信号に基づいて前記ウインドの開閉動作方向を検出する手段」、「検出された相対速度から異物の挟み込みを検出する手段」及び「安全制御動作を行う手段」にそれぞれ対応するものであるから、訂正後請求項1に係る発明と引用例1に記載の発明は、次の一致点において両者の構成は一致し、次の相違点において両者の構成は相違する。
一致点:車両のウインドを駆動源により開閉動作させるパワーウインドにおいて、前記ウインドの開閉動作に伴うパルス信号を発生する手段と、前記パルス信号に基づいて前記ウインドの開閉動作の絶対速度を検出する手段と、前記パルス信号に基づいて前記ウインドの開閉動作の相対的速度を検出する手段と、検出された相対速度から異物の挟み込みを検出する手段と、前記パルス信号に基づいて前記ウインドの開閉動作方向を検出する手段と、相対速度に基づく異物の挟み込み検出結果と、前記ウインド開閉動作方向の検出結果とに基づいて安全制御動作を行う手段を備えたことを特徴とするパワーウインドの安全装置。
相違点1:訂正後の請求項1に係る発明においては、絶対速度及び相対速度の検出結果からそれぞれ異物挟み込みを検出し、前記絶対速度と相対速度に基づく異物挟み込み検出結果の少なくとも一方の検出結果を安全制御動作を行う条件としているのに対して、引用例1記載の発明においては、相対速度の検出結果から異物挟み込みを検出し、前記相対速度に基づく異物挟み込み検出結果を安全制御動作を行う条件とした点。
相違点2:訂正後請求項1に係る発明においては、パルス信号を発生する手段は、位相の異なる2つのパルス信号を発生し、前記ウインドの開閉動作方向を検出する手段は、前記2つのパルス信号を2値化して2ビットの信号値とし、この2ビットの信号値が変化する周期性を検出前記2つのパルス信号を2値化して2ビットの信号値とし、この2ビットの信号値が変化する周期性を検出した結果から開閉動作方向を検出するのに対して、引用例1に記載の発明においては、パルス信号を発生する手段は、同じ位相のパルス信号を発生し、前記ウインドの開閉動作方向を検出する手段は、パルスカウンタの増減によりら開閉動作方向を検出する点。
次に、訂正後の請求項2に係る発明と引用例1記載の発明を対比する。
引用例1記載の発明における、「カウンタの計数値に基づき、前記窓ガラスを全閉位置近傍にあるか否かを判別する窓ガラス位置判別器」及び「窓ガラス位置判別器が窓ガラスが全閉位置近傍外にあると判別した場合に、……、前記モータを逆転させて前記窓ガラスを開動作させる」は、本件請求項2発明における、「ウインドの開閉位置を検出し、この検出された位置に基づいて安全制御領域を判別する手段」及び「安全領域内において安全制御動作を行う」に相当するものであり、訂正後請求項2に係る発明は、訂正後請求項1に係る発明を引用する形式のものであるから、訂正後請求項2に係る発明と引用例1に記載の発明は、前記相違点1及び2において、両者の構成は相違する。
4.判断
前記相違点について検討する。
先ず、相違点1について検討する。
引用例2に記載の発明における、「速度信号」及び「加速信号」は、訂正後請求項1に係る発明における、「絶対速度」及び「相対速度」にそれぞれ対応するものであり、引用例2には、自動車の電動式開閉部駆動装置において、絶対速度UVが所定限界値Ugr1と対比され、相対速度Ubと所定限界値Ugr2と対比され、その検出結果から異物挟み込みを検出し、前記2つの異物挟み込み検出結果を論理演算して異物挟み込み信号Ukを生じるものであるから、絶対速度Ubと所定限界値Ugr1との対比及び相対速度Ubと所定限界値Ugr2との対比のそれぞれは、異物の挟み込みを検出する手段といえるものである。
また、引用例1に記載の発明において、相対速度のみにより異物挟み込みを検出する構成とした技術的意義は、前記引用例1の記載事項(4)中の「モータの速度等の絶対量でないモータの速度変動率を監視することにより、モータ負荷のバラツキによる影響を少なくすることができる。」という記載からみて、絶対速度はモータ負荷によりその値がバラツキがあるため、その影響を少なくするために、相対速度により異物挟み込みを検出するというものであり、バラツキはあるものの絶対速度によっても異物挟み込みを検出可能であることを示唆するものである。
そうしてみると、引用例1及び2に記載の発明から、絶対速度による異物挟み込み検出のモータ負荷によるバラツキによる影響を覚悟し、前記相違点1にあげた「絶対速度と相対速度に基づく異物の挟み込み検出結果のうち少なくとも一方の検出結果を安全制御動作を行う条件とする」という訂正後の請求項1に係る発明の構成のようにすることは、当業者が容易になしえる程度のものである。
次に、相違点2について検討する。
引用例3には、自動車の電動式開閉部を駆動するモータに、パルス発生器を設け、パルス信号を発生する手段は、位相の異なる2つのパルス信号を発生し、前記位相の異なるパルスをマイクロプロセッサに伝送し、マイクロプロセッサの処理によりモータの回転方向(開閉動作方向)を検出する構成が記載されており、マイクロプロセッサの処理とは論理演算であり、マイクロプロセッサーの論理演算の方式として、パルス信号を2値化して2ビットの信号値として演算することは周知の事項であり、位相の異なるパルスを2値化して比較するとその周期が異なることは明らかであるから、引用例1に記載の発明に、前記周知事項を考慮して引用例3に記載の発明の構成を適用して、前記相違点2にあげた訂正後請求項1に係る発明の構成のようにすることは、当業者が容易になしえる程度のものである。
そうしてみると、訂正後の請求項1及び2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
5.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
(三)異議申立についての判断
1.本件特許発明
本件の請求項1及び2に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】車両のウインドを駆動源により開閉動作させるパワーウインドにおいて、前記ウインドの開閉動作に伴うパルス信号を発生する手段と、前記パルス信号に基づいて前記ウインドの開閉動作の絶対速度を検出する手段と、検出された絶対速度から異物の挟み込みを検出する手段と、前記パルス信号に基づいて前記ウインドの開閉動作の相対速度を検出する手段と、検出された相対速度から異物の挟み込みを検出する手段と、前記パルス信号に基づいて前記ウインドの開閉動作方向を検出する手段と、前記絶対速度と相対速度に基づく異物の挟み込み検出結果のうち少なくとも一方の検出結果と、前記ウインド開閉動作方向の検出結果とに基づいて安全制御動作を行う手段を備え、前記パルス信号を発生する手段は、位相の異なる2つのパルス信号を発生し、前記ウインドの開閉動作方向を検出する手段は、これら2つのパルスを論理演算した結果から開閉動作方向を検出することを特徴とするパワーウインドの安全装置。
【請求項2】前記ウインドの開閉位置を検出し、この検出された位置に基づいて安全制御領域を判別する手段を有し、安全制御領域内において安全制御動作を行うようにしてなる請求項1に記載のパワーウインドの安全装置。
2.取消理由の概要
当審が通知した取消理由の概要は、引用文献として前記訂正の適否のところで示した引用例1〜3を提示し、請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものであるというものである。
3.引用文献
引用例1:特開昭63-165682号公報には、前記訂正の適否のところで引用例1として示したとおりのものが記載されている。
引用例2:特開昭60-156294号公報には、前記訂正の適否のところで引用例2として示したとおりのものが記載されている。
引用例3:ドイツ特許公開DE3829405A1公報(公開日1990年3月8日)には、前記訂正の適否のところで引用例3として示したとおりのものが記載されている。 4.対比・判断
前記訂正の適否のところで示したと同様の理由により、請求項1及び2に係る発明は、引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-09-07 
出願番号 特願平4-155747
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (E05F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山田 忠夫木村 史郎山本 芳栄  
特許庁審判長 片寄 武彦
特許庁審判官 小野 忠悦
宮崎 恭
登録日 1998-11-20 
登録番号 特許第2854189号(P2854189)
権利者 株式会社小糸製作所
発明の名称 パワーウインドの安全装置  
代理人 廣瀬 哲夫  
代理人 鈴木 章夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ