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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 発明同一  C08F
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C08F
管理番号 1027925
異議申立番号 異議2000-72859  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-24 
確定日 2000-11-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第3001385号「ポリマー分散剤」の請求項1〜21に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3001385号の請求項1〜21に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第3001385号は、平成6年12月12日(優先権主張、平成5年12月13日、米国)に出願された特願平6-307909号の出願に係り、平成11年11月12日に設定登録されたものであり、その請求項1〜21に係る発明は、設定登録時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜21に記載された事項により構成される次のとおりのものである。
「【請求項1】 不飽和酸反応物質(an unsaturated acidic reactant)と、高分子量オレフィンとのコポリマーであって、コポリマー中の不飽和酸反応物質の高分子量オレフィンに対するモル比が少なくとも1.3であり、該高分子量オレフィンがα-オレフィンとアルキルビニリデンオレフィンから成る群から選択され、かつ該高分子量オレフィンが、生成するコポリマーが潤滑油中に可溶であるように、充分な数の炭素原子を有し、更に、
該不飽和酸反応物質は、式:



[式中、XとX’は同一若しくは異なる基であるが、XとX’の少なくとも一方はアルコールをエステル化し、アンモニア若しくはアミンとアミド若しくはアミン塩を形成し、反応性金属若しくは塩基性に反応する金属化合物と金属塩を形成するように反応する、さもなくばアシル化するように機能することができる基である]で示されるマレイン酸反応物質(maleic reactants)又はフマル酸反応物質(fumaric reactants )であり、該α-オレフィンは、式:


[式中、Rは生成する分子に潤滑油及び燃料中での溶解性を与えるために充分な鎖長を有するアルキル又は置換アルキルである]で示される構造を有し、該アルキルビニリデンオレフィンは、式:


[式中、Rは生成する分子に潤滑油及び燃料中での溶解性を与えるために充分な鎖長を有するアルキル又は置換アルキルであり、Rvは炭素数約1〜約6の低級アルキルである]で示されるビニリデン構造を有する、前記のコポリマー。
【請求項2】 コポリマー中の不飽和酸反応物質の高分子量オレフィンに対するモル比が1.3〜2.0の範囲内である請求項1記載のコポリマー。
【請求項3】 不飽和酸反応物質が式:



[式中、XとX’はそれぞれ独立的に、-OH、-Cl、-O-低級アルキルから成る群から選択され、XとX’が一緒になった場合は、XとX’は-O-である]で示される請求項1記載のコポリマー。
【請求項4】 酸反応物質が無水マレイン酸からなる請求項3記載のコポリマー。
【請求項5】 高分子量オレフィンが鎖に沿って2炭素原子につき少なくとも1つの分枝を有する高分子量アルキルビニリデンオレフィンである請求項1記載のコポリマー。
【請求項6】 オレフィンが500〜5000の平均分子量を有する請求項5記載のコポリマー。
【請求項7】 オレフィンが900〜2500の平均分子量を有する請求項6記載のコポリマー。
【請求項8】 オレフィンがポリイソブテンである請求項5記載のコポリマー。
【請求項9】 該コポリマーが、式:


[式中、nは1以上の数であり;
(1)R1とR2が水素であり、R3とR4の一方が低級アルキルであり、他方が高分子量ポリアルキルであるか又は
(2)R3とR4が水素であり、R1とR2の一方が低級アルキルであり、他方が高分子量ポリアルキルであり、;
XとYが1以上の数であり、Xの合計が混合物全体のYの合計の少なくとも1.3倍である]で示される請求項1記載のコポリマー。
【請求項10】 高分子量ポリアルキルが少なくとも炭素数50のポリイソブテン基からなる請求項9記載のコポリマー。
【請求項11】 低級アルキルがメチルである請求項10記載のコポリマー。
【請求項12】 請求項1記載のコポリマーを、少なくとも1個の塩基性窒素原子を含むポリアミンと反応させることによって製造されるポリスクシンイミド。
【請求項13】 ポリアミンが式:H2N(YNH)aH[式中、Yは炭素数2〜6のアルキレンであり、aは1〜6の整数である]を有する請求項12記載のポリスクシンイミド。
【請求項14】 コポリマー中のポリアミン対コハク酸基のチャージモル比(charge mole ratio)が1〜0.1である請求項13記載のポリスクシンイミド。
【請求項15】 請求項12記載のポリスクシンイミドを環状カーボネートと反応させることを含み、該ポリスクシンイミドが少なくとも1つの第1級アミン基又は第2級アミン基を有する方法によって製造される改質ポリスクシンイミド。
【請求項16】 請求項12記載のポリスクシンイミドを酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸及びホウ酸エステルから成る群から選択されるホウ素化合物と反応させることを含む方法によって製造される改質ポリスクシンイミド。
【請求項17】 潤滑油粘度の油と、分散剤としての有効量の請求項12記載のポリスクシンイミドとを含む潤滑油組成物。
【請求項18】 潤滑油粘度の油90〜50重量%と、請求項12記載のポリスクシンイミド10〜50重量%とを含む潤滑油濃縮物。
【請求項19】 ガソリン又はジーゼル範囲内で沸騰する炭化水素と、請求項12記載のポリスクシンイミド30〜5000ppmとを含む燃料組成物。
【請求項20】 150°F〜400°F(65.6℃〜204.4℃)の範囲内で沸騰する不活性で安定な親油性の有機溶剤と請求項12記載のポリスクシンイミド5〜50重量%とを含む燃料濃縮物。
【請求項21】 高分子量オレフィンと不飽和酸反応物質とを、フリーラジカル開始剤の存在下で、反応させることを含む方法によって製造される請求項1記載のコポリマー。」
2.特許異議申立人の主張の概要
特許異議申立人は、下記甲第1号証〜甲第3号証を提示し、本件請求項1〜21に係る発明は、本件の出願前頒布された甲第1号証若しくは甲第2号証に記載された発明、又は甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、又は甲第3号証に掲載された、本件の出願前出願され本件の出願後に出願公開された出願の出願当初の明細書に記載された発明と同一であるから、本件は、特許法第29条第1項第3号、同条第2項又は同法第29条の2の規定に違反して特許されたものであり、さらに明細書の記載に不備があるから、本件は特許法第36条第4項、第5項及び第6項の規定を満足しない出願に対して特許されたものであって、その特許は取り消されるべきである旨、主張している。

甲第1号証:特開平2-101070号公報
甲第2号証:特表平1-502588号公報
甲第3号証:特表平8-504854号公報

3.対比・検討
(3-1)以下、まず本件請求項1に係る発明(以下「本件第1発明」という。)について検討する。
甲第1号証には、「塩素を実質的に含まず、琥珀酸基のポリオレフィン鎖に対する平均モル比が1.3:1より大きいポリオレフィン置換無水琥珀酸の製造方法であって、ポリオレフィンをモル過剰の無水マレイン酸と一緒に加熱することを含み、前記ポリオレフィンが、αオレフィン結合及び/またはかかるαオレフィン構造と等価の構造を有する構造の末端配置を少なくとも70%含むことを特徴とする方法。」(特許請求の範囲第1項)についての発明が記載され、該生成物をさらにアミン又はポリオールと反応させ、イミドまたはエステルにすること(特許請求の範囲第8項)、そしてこれら生成物を潤滑剤組成物に使用すること(特許請求の範囲10項)等がいずれも記載されている。
しかしながら、ポリオレフィンと無水マレイン酸との反応生成物に関しては、「既に述べたように、無水マレイン酸は(ポリオレフィンを基にして)少なくともモル過剰であるべきである・・・しかもポリオレフィン変換率が最高85〜90%のポリオレフィン置換無水琥珀酸を生産することが可能であることが判った。」(4頁左上〜右上欄)、「かかるエステルを形成するためには、置換された無水琥珀酸を二価アルコール・・・と反応させる」(4頁左下欄)、そして「生産された最終生成物はポリイソブテン無水琥珀酸・・」(実施例1)と記載されているとおり、ポリオレフィンで置換された無水琥珀酸が記載されているにすぎず、両者のコポリマー(共重合体)については全く記載されておらず、その記載から、コポリマーが製造されていると認めるに足りる根拠を見出すこともできない。
したがつて、本件第1発明は、甲第1号証に記載された発明とすることはできない。
甲第2号証には、潤滑油における分散剤または清浄剤として有用な添加剤としての変形スクシンイミドについての発明が記載され、該変形スクシンイミドは、アルケニルー又はアルキル琥珀酸無水物をポリアミンと反応させることにより製造されることが記載されているが、該製造原料たるアルケニルー又はアルキル琥珀酸無水物は、アルケニル基又はアルキル基で置換された琥珀酸無水物であつて、両者のコポリマーについては、やはり全く記載されていない。
したがって、本件第1発明は甲第2号証に記載された発明でもない。
そして、上記のとおり、甲第1号証及び甲第2号証には、ポリオレフィンで置換された無水琥珀酸は記載されているが、それら両者を共重合させて得た共重合体については全く記載されておらず、その存在を示唆する記載も見出せないといわざるを得ない。
したがつて、甲第1号証及び甲第2号証を併せ検討しても、これから、本件第1発明が当業者にとって容易に発明することができたものとすることはできない。
(3-2)甲第3号証(なお、特許異議申立人は、証拠方法の欄には特表平8-513448号公報と記載しているが、相当する公報は存在しないので、これに代えて甲第3号証として実際に添付された特表平8-504854号公報について検討する。)に掲載された、本件の出願前の出願であって本件の出願後に出願公開された特願平6-514348号の出願当初の明細書(以下「先願明細書」という。)には、「油質組成物、特に油質潤滑油組成物において有用な改良された油溶性重合体分散添加剤に関する」発明が記載されている(3頁左上欄)が、「本発明によれば、α-オレフィン重合体は、重合体主鎖上に酸生成性部分、即ち酸、酸無水物又は酸エステル部分をグラフト化させるため一不飽和カルボン酸反応体と反応せしめられる。・・・重合体と反応すると、この一不飽和カルボン酸反応体の一不飽和は飽和になる。従って、例えば、無水マレイン酸とグラフト反応した重合体は重合体置換こはく酸無水物となり、アクリル酸とグラフト反応した重合体は重合体置換プロピオン酸になる。」(5頁右下欄〜6頁左上欄)と記載されてるとおり、重合体で置換された酸あるいは酸無水物が得られるとしているだけで、両者の共重合体を得ることは記載されていない。
したがって、本件第1発明が先願明細書に記載された発明と同一とすることはできない。
(3-3)本件請求項2〜11に係る発明は、本件第1発明のコポリマーをより限定したものであり、本件請求項12〜14に係る発明は、本件第1発明のコポリマーをさらにポリアミンと反応させて得た、ポリスクシンイミドに関するものであり、本件請求項15〜16に係る発明は、該スクシンイミドを更に改質させたものであり、本件請求項17〜20に係る発明は、請求項12に係る発明のポリスクシンイミドを潤滑油又は燃料に添加した組成物に関するものであり、本件請求項21に係る発明は、本件第1発明のコポリマーの製造法を規定したものであるから、本件第1発明と同様、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明とも、また、これら刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも、そして甲第3号証に掲載された先願明細書に記載された発明と同一とも、することはできない。
(3-4)特許異議申立人は、(i)一般式におけるRとしてどのような基を用いることができるのか不明である、(ii)実施例でn(特許請求の範囲9項における)がいくつのものが得られたのか不明である、(iii)実施例ではマレイン酸を使用したものは記載されているが、フマル酸を使用した例はない、点で、本件明細書には、特許法第36条第4〜6項の規定を満足しない記載不備が存在することを主張するので、以下この点について検討することとする。
(i)について、一般式におけるRに関して発明の詳細な説明には、「典型的には、炭素数32以上のオレフィン(好ましくは炭素数52以上のオレフィン)で充分である。”潤滑油中に可溶”なる用語は、例えば潤滑油又は燃料のような、脂肪族及び芳香族炭化水素中に物質が本質的に全割合で溶解できることを意味する。」と説明され(段落0019)、実施例では、分子量1300又は2400のポリブテンを用いたことが記載されているのであるから、この点に当業者が容易に実施することができない程の不備があるとすることはできない。
(ii)について、個々の実施例においては、確かにnの数値は記載されていないが、だからといって、それによって、本件発明を当業者が容易に実施することの妨げとなるものでもない。
(iii)について、実施例は全てマレイン酸を使用しており、フマル酸を使用した実施例が存在しないことは特許異議申立人の指摘するとおりであるが、マレイン酸で実施できたものがフマル酸では実施できないとの具体的根拠は示されておらず、単に実施例の不足のみをいう主張は採用することができない。
したがって、本件明細書には、特許法(平成6年法律第116号による改正前のもの)第36条第4項、第5項及び第6項に違反する程の記載不備の存在を認めることはできない。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件特許異議申立人の提示する証拠及び主張する理由によっては、本件請求項1〜21に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜21に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-11-06 
出願番号 特願平6-307909
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C08F)
P 1 651・ 161- Y (C08F)
P 1 651・ 531- Y (C08F)
P 1 651・ 121- Y (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 昌広  
特許庁審判長 柿 崎 良 男
特許庁審判官 小 島 隆
佐 野 整 博
登録日 1999-11-12 
登録番号 特許第3001385号(P3001385)
権利者 シェブロン ケミカル カンパニー
発明の名称 ポリマー分散剤  
代理人 前 直美  
代理人 林 秀男  
代理人 山崎 行造  
代理人 浅村 肇  
代理人 岡田 希子  
代理人 木村 博  
代理人 浅村 皓  
代理人 木川 幸治  
代理人 長沼 暉夫  

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