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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1028233
異議申立番号 異議1997-74485  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-09-26 
確定日 2000-04-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第2594702号「シリコン酸化膜及びそれを備えた半導体装置」の請求項に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2594702号の特許請求の範囲請求項1、請求項3ないし請求項8に記載された発明についての特許を取り消す。 同特許請求の範囲請求項2に記載された発明についての特許を維持する。 
理由 一.手続の経緯
本件特許第2594702号の発明は、平成2年5月7日(優先権主張1989年5月7日 日本)に出願され、平成8年12月19日に設定登録され、その後、平成9年9月26日に三浦俊郎より特許異議申立がなされ、平成10年2月5日付で取消理由通知をし、その指定期間内である平成10年4月27日に訂正請求がなされ、更に平成10年7月14日付で取消理由通知をし、その指定期間内である平成10年9月29日に訂正請求がなされたが、その訂正請求に対して平成11年8月11日付で訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内に特許権者から何らの応答もない。
二.訂正の適否の判断
(ロ)訂正の適否
当審が通知した訂正拒絶理由は
「1.訂正明細書の請求項1〜6の係る発明
訂正明細書の請求項1〜6の係る発明は、その特許請求の範囲請求項1〜6に記載されたとおりである。
2.刊行物 「HANDBOOK OF X-RAY PHOTOELECTR ON SPECTROSCOPY」,Perk in-Elmer Corporation Physical Electronics Division,1979 pp29-31,52-53,174-178
3.第29条第2項違反について
上記刊行物にはX線光電子分光スペクトルにおいて酸素と結合するシリコンのSi2pピークの結合エネルギーがシリコンと結合するシリコンのSi2P3/2ピークの結合エネルギーより4.25eV大きいシリコン酸化膜が記載されている。
(1)請求項1に係る発明との相違点は、請求項1に係る発明が上記のようなシリコン酸化膜を備えたMOSトランジスタを含む半導体装置であるのに対して、上記刊行物記載の発明が単なるシリコン酸化膜である点であるが、シリコン酸化膜を備えたMOSトランジスタを含む半導体装置は周知であり、上記刊行物記載のシリコン酸化膜を当該周知の半導体装置のシリコン酸化膜として用いることに格別の創意工夫を必要としない。
(2)請求項2に係る発明との相違点は、請求項2に係る発明が上記のようなシリコン酸化膜をゲート酸化膜としたMOSトランジスタを含む半導体装置であるのに対して、上記刊行物記載の発明が単なるシリコン酸化膜である点であるが、シリコン酸化膜をゲート酸化膜としたMOSトランジスタを含む半導体装置は周知であり、上記刊行物記載のシリコン酸化膜を当該周知の半導体装置のシリコン酸化膜として用いることに格別の創意工夫を必要としない。
(3)請求項3に係る発明との相違点は、請求項3に係る発明が上記のようなシリコン酸化膜をトンネル絶縁膜としたMOSトランジスタを含む半導体装置であるのに対して、上記刊行物記載の発明が単なるシリコン酸化膜である点であるが、シリコン酸化膜をトンネル絶縁膜としたMOSトランジスタを含む半導体装置は周知であり、上記刊行物記載のシリコン酸化膜を当該周知の半導体装置のシリコン酸化膜として用いることに格別の創意工夫を必要としない。
(4)請求項4に係る発明との相違点は、請求項4に係る発明が上記のようなシリコン酸化膜を備えたMOSトランジスタを含む半導体装置または上記のようなシリコン酸化膜をゲート酸化膜としたMOSトランジスタを含む半導体装置において当該シリコン酸化膜の厚さを0.5〜10nmとしたMOSトランジスタを含む半導体装置であるのに対して、上記刊行物記載の発明が単なるシリコン酸化膜である点であるが、シリコン酸化膜を備えたMOSトランジスタを含む半導体装置またはシリコン酸化膜をゲート酸化膜としたMOSトランジスタを含む半導体装置は周知であり、上記刊行物記載のシリコン酸化膜を当該周知の半導体装置のシリコン酸化膜として用いることに格別の創意工夫を必要としない。また、当該シリコン酸化膜の厚さをどの程度とするかは単なる設計的事項にすぎず、その厚さを0.5〜10nmすることは当業者が任意になし得たことである。
(5)請求項5に係る発明との相違点は、請求項5に係る発明が上記のようなシリコン酸化膜を半導体装置のエッチング用マスクとしたのに対して、上記刊行物記載の発明が単なるシリコン酸化膜である点であるが、シリコン酸化膜を半導体装置のエッチング用マスクとすることは周知であり、上記刊行物記載のシリコン酸化膜を当該周知の半導体装置のシリコン酸化膜として用いることに格別の創意工夫を必要としない。
(6)請求項6に係る発明との相違点は、請求項6に係る発明が上記のようなシリコン酸化膜を備えたMOSトランジスタを含む半導体装置において絶縁分離膜の少なくとも一部に金属フッ化膜を備えた半導体装置であるのに対して、上記刊行物記載の発明が単なるシリコン酸化膜である点であるが、シリコン酸化膜を備えたMOSトランジスタを含む半導体装置において絶縁分離膜の少なくとも一部に金属フッ化膜を備えた半導体装置は周知であり、上記刊行物記載のシリコン酸化膜を当該周知の半導体装置のシリコン酸化膜として用いることに格別の創意工夫を必要としない。
4.したがって、請求項1〜6に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、当該訂正は認められない。」というものであり、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。そして、上記訂正拒絶理由は妥当なものと認められるので、上記訂正請求は、特許法第120条の4第第3項で準用する同第126条第4項の規定に違反し、当該訂正は認められない。
三.特許異議申立についての判断
(イ)本件特許明細書の特許請求の範囲請求項1〜8に係る発明は以下のとおりである。
「【請求項1】X線光電子分光スペクトルにおいて、酸素と結合するシリコンのSi2Pピークの結合エネルギーが・シリコンと結合するシリコンのSi2P3/2のピークの結合エネルギーより4.1eV以上大きいシリコン酸化膜。
【請求項2】酸素と結合するシリコンのSi2Pピークの結合エネルギーが、シリコンと結合するシリコンのSi2P3/2のピークの結合エネルギ1より4.7eV以上大きいことを特徴とする請求項1記載のシリコン酸化膜。
【請求項3】請求項1または2の酸化膜を絶縁膜として備えたMOSトランジスタを含んでいることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】前記絶縁膜はゲート絶縁膜であることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】前記絶縁膜はトンネル絶縁膜であることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項6】酸化膜の厚さは0.5〜10nmであることを特徴とする請求項3または4のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項7】前記酸化膜はエッチングのマスク用酸化膜である請求項1記載のシリコン酸化膜。
【請求項8】ゲート電極とソースおよびドレイン電極の間を絶縁分離する絶縁膜の少なくとも一部に金属フッ化膜を備えたことを特徴とする請求項3記載の半導体装置。」
(ロ)異議申立人三浦俊郎の申立の概要は「請求項1に係る発明は甲第1号証(HANDBOOK OF X-RAY PHOTOELECTRON SPECTROSCOPY」,Perk in-Elmer Corporation Physical Eectronics Division,1979)記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2〜8に係る発明は甲第1号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、同法第29条第2項の規定に基づき特許を受けることができないものであり、また請求項2に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものでないから、同法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものである。従って、請求項1〜8に係る発明は取り消されるべきである。」というものである。
(ハ)平成10年2月5日付の取消理由は、
「1.特許法第29条第1項第3号違反について(請求項1に係る発明について)
本件特許第2594702号の請求項1に係る発明(以下「本件第1発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1に記載されたとおりのものと認める。
一方、下記刊行物には、特許異議申立人三浦俊郎による特許異議申立書第4頁第18行〜第5頁18行における「(4)イ、証拠の説明」に掲げられた内容に関する記載がなされている。
そして、本件第1発明は、上記異議申立書第5頁第20行〜第6頁第14行に記載された理由により、下記刊行物記載の発明であると認められる。
よって、本件第1発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
2.特許法第29条第2項違反について(請求項3〜8に係る発明について)
本件特許第2594702号の請求項3〜8に係る発明(以下「本件第3発明」〜「本件第8発明」という。)は、下記刊行物記載の発明に基き、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
よって、本件第3〜8発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
・・・・

「HANDBOOK OF X-RAY PHOTOELECTRON SPECTROSCOPY」,Perk in-Elmer Corporation Physical Electronics Division,1979」
というものである。
そこで、上記の点について詳細に検討すると、上記刊行物にはX線光電子分光スペクトルにおいて酸素と結合するシリコンのSi2Pピークの結合エネルギーがシリコンと結合するシリコンのSi2P3/2ピークの結合エネルギーより4.25eV大きいシリコン酸化膜が記載されている。
(1)本件第1発明における「4.1eV以上」は上記刊行物記載の発明における「4.25eV」を含むから、本件第1発明と上記刊行物記載の発明との相違点はない。
(2)本件第3発明と上記刊行物記載の発明との相違点は、本件第3発明のシリコン酸化膜が半導体装置内のMOSトランジスタの絶縁膜であるのに対して、上記刊行物記載の発明のシリコン酸化膜が単なるシリコン酸化膜である点であるが、シリコン酸化膜を備えたMOSトランジスタを含む半導体装置は周知であり、上記刊行物記載のシリコン酸化膜を当該周知の半導体装置のMOSトランジスタの絶縁膜として用いることに格別の創意工夫を必要としない。
(2)本件第4発明と上記刊行物記載の発明との相違点は、本件第4発明がシリコン酸化膜をゲート酸化膜としたMOSトランジスタを含む半導体装置であるのに対して、上記刊行物記載の発明のシリコン酸化膜が単なるシリコン酸化膜である点であるが、シリコン酸化膜をゲート酸化膜としたMOSトランジスタを含む半導体装置は周知であり、上記刊行物記載のシリコン酸化膜を当該周知の半導体装置のMOSトランジスタのゲート酸化膜として用いることに格別の創意工夫を必要としない。
(3)本件第5発明と上記刊行物記載の発明との相違点は、本件第5発明がシリコン酸化膜をトンネル絶縁膜としたMOSトランジスタを含む半導体装置であるのに対して、上記刊行物記載の発明のシリコン酸化膜が単なるシリコン酸化膜である点であるが、シリコン酸化膜をトンネル絶縁膜としたMOSトランジスタを含む半導体装置は周知であり、上記刊行物記載のシリコン酸化膜を当該周知の半導体装置のMOSトランジスタのトンネル絶縁膜として用いることに格別の創意工夫を必要としない。
(4)本件第6発明と上記刊行物記載の発明との相違点は、本件第6発明がシリコン酸化膜を備えたMOSトランジスタを含む半導体装置または上記のようなシリコン酸化膜をゲート酸化膜としたMOSトランジスタを含む半導体装置において当該シリコン酸化膜の厚さを0.5〜10nmとしたMOSトランジスタを含む半導体装置であるのに対して、上記刊行物記載の発明が単なるシリコン酸化膜である点であるが、シリコン酸化膜を備えたMOSトランジスタを含む半導体装置またはシリコン酸化膜をゲート酸化膜としたMOSトランジスタを含む半導体装置は周知であり、上記刊行物記載のシリコン酸化膜を当該周知の半導体装置のシリコン酸化膜として用いることに格別の創意工夫を必要としない。また、当該シリコン酸化膜の厚さをどの程度とするかは単なる設計的事項にすぎず、その厚さを0.5〜10nmにすることは当業者が任意になし得たことである。
(5)本件第7発明と上記刊行物記載の発明との相違点は、本件第7発明がシリコン酸化膜を半導体装置のエッチング用マスクとしたのに対して、上記刊行物記載の発明のシリコン酸化膜が単なるシリコン酸化膜である点であるが、シリコン酸化膜を半導体装置のエッチング用マスクとすることは周知であり、上記刊行物記載のシリコン酸化膜を当該周知の半導体装置のエッチング用マスクとして用いることに格別の創意工夫を必要としない。
(6)本件第8発明と上記刊行物記載の発明との相違点は、本件第8発明がシリコン酸化膜を備えたMOSトランジスタを含む半導体装置において絶縁分離膜の少なくとも一部に金属フッ化膜を備えた半導体装置であるのに対して、上記刊行物記載の発明のシリコン酸化膜が単なるシリコン酸化膜である点であるが、シリコン酸化膜を備えたMOSトランジスタを含む半導体装置において絶縁分離膜の少なくとも一部に金属フッ化膜を備えた半導体装置は周知であり、上記刊行物記載のシリコン酸化膜を当該周知の半導体装置のシリコン酸化膜として用いることに格別の創意工夫を必要としない。
(ニ)請求項2に係る発明のシリコン酸化膜と上記刊行物記載の発明のシリコン酸化膜とは、前者のシリコン酸化膜が酸素と結合するシリコンのSi2Pピークの結合エネルギーが、シリコンと結合するシリコンのSi2P3/2のピークの結合エネルギーより4.7eV以上大きいのに対して、後者のシリコン酸化膜が酸素と結合するシリコンのSi2Pピークの結合エネルギーが、シリコンと結合するシリコンのSi2P3/2のピークの結合エネルギーより4.25eV大きい点で相違する。そして、請求項2に係る発明は上記構成を採用することにより、絶縁膜特性の優れたシリコン酸化膜を得ることができるという顕著な効果を奏する。よって、請求項2に係る発明は上記刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
また、本件特許明細書の第5欄の第1表にシリコン酸化膜が酸素と結合するシリコンのSi2Pピークの結合エネルギーとシリコンと結合するシリコンのSi2P3/2のピークの結合エネルギーとの差が4.72eV、4.87eVと、4.7eV以上の例が記載されており、請求項2に係る発明が発明の詳細な説明に記載されていないとすることはできない。
(ホ)むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1、3〜8に係る発明は、上記刊行物記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1、3〜8に係る発明は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件請求項1、3〜8に係る発明は、特許法第113条第1項第2号に該当するので、取り消されるべきものである。
また、請求項2に係る発明の特許については、他に取消理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-02-03 
出願番号 特願平2-506700
審決分類 P 1 651・ 121- ZE (H01L)
P 1 651・ 531- ZE (H01L)
P 1 651・ 113- ZE (H01L)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 岡 和久  
特許庁審判長 今野 朗
特許庁審判官 橋本 武
加藤 浩一
登録日 1996-12-19 
登録番号 特許第2594702号(P2594702)
権利者 大見 忠弘
発明の名称 シリコン酸化膜及びそれを備えた半導体装置  
代理人 福森 久夫  
代理人 西脇 民雄  

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