• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 発明同一  C25D
管理番号 1028234
異議申立番号 異議1999-73527  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-09-13 
確定日 2000-04-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第2873095号「カチオン電着塗装における最終水洗槽廃液の処理方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2873095号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続きの経緯及び本件発明
本件特許第2873095号の手続きの経緯は、平成7年9月5日(優先権主張 平成6年9月6日 日本)に特許の出願がなされ、その後、特許異議申立人小西英明より、請求項1及び2に係る特許について特許異議の申立がなされたものである。
そして本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1」、「本件発明2」ということがある。)は、願書に添付した明細書及び図面(以下「特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された下記のとおりのものと認める。
「【請求項1】カチオン電着塗装工程における最終水洗槽より排出される廃液の処理方法において、濃縮槽6内での廃液のpHを常時6.4以下に保ちつつ、この廃液を半透膜を備えた濾過装置9に循環することにより、塗料成分を含む濃縮液と濾液とに分離することを特徴とする最終水洗槽廃液の処理方法。
【請求項2】半透膜により分離して得られる濾液の全部または一部を最終水洗槽に戻し、最終水洗用洗浄水として再使用することを特徴とする請求項1に記載の最終水洗槽廃液の処理方法。」
II.特許異議申立の理由
これに対して、特許異議申立人は、甲第1〜3号証を提出して、甲第2、3号証の記載を参酌すれば、本件発明1及び2は、甲第1号証の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるので、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反して特許を受けたものであると主張している。
III.甲各号証に記載の事実
(1)甲第1号証(特願平6-17793号の願書に最初に添付した明細書及び図面。特開平7-207495号公報参照。)
(1-1)「電着塗料浴液にて電着塗装された被塗物を多段回収水洗するに際して、まず、電着塗料浴液をUF・・・濾過して得たUF濾過液を含有した水洗水で水洗し、つぎに純水による最終水洗工程において、水洗水をUF濾過し、得られたUF濾過液を最終水洗水として使用し、さらに電着塗料浴液面の補正に必要な量の純水を最終水洗水に補充することを特徴とするクローズド化電着塗装方法。」(特許請求の範囲)
(1-2)「本発明においては最終水洗工程における純水による水洗水(第4回収水洗槽水)をUF濾過することにより、最終水洗水(第5回収水洗槽水)中の未電着塗料の固形分濃度を低濃度に保持する」(段落【0012】)
(2)甲第2号証(特開平4-358097号公報)
(2-1)「被電着物にカチオン電着塗料を付着させる電着工程及び被電着物に付着した過剰の電着塗料を水洗除去する水洗工程を含み、カチオン電着塗料を原液として限外濾過装置に供給し、濾過処理して、得られた塗料濃縮液を電着工程に戻し、濾液を水洗水として水洗工程に送るカチオン電着塗装において、上記限外濾過装置を一時休止し、限外濾過装置の原液側に有機カルボン酸の水溶液を加圧封入することを特徴とするカチオン電着塗装における膜処理方法。」(特許請求の範囲請求項1)
(2-2)「本発明の方法によれば、かかる限外濾過装置の一時休止に際して、・・・限外濾過装置や配管系を濾液貯槽の濾液と置換するときに、有機カルボン酸水溶液槽6からポンプ8にて酸水溶液を限外濾過装置の原液側に・・・加圧封入する。このようにして、限外濾過装置や配管系を濾液貯槽の濾液と置換が完了した後、弁10及び12を閉じ、同時にポンプ8も停止する。
」(段落【0010】)
(3)甲第3号証(特開昭60-204898号公報)
(3-1)「限外濾過法によりカチオン電着塗料を処理する工程において、濾過性能の低下した限外濾過膜を、有機酸を主成分とせる洗浄液で洗浄した後、
無機酸または無機塩基の希薄溶液で洗浄することを
特徴とする電着塗装ラインにおける限外濾過膜の濾過性能回復方法。」(特許請求の範囲)(3-2)「この洗浄後は・・・而るのち、モジュールに電着塗料を注入し、電着塗料の循環運転を再開して電着作業を再び開始する。」(第2頁右下欄第18行〜第3頁左上欄第1行)
IV.判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証に記載された発明(以下「先願発明」ということがある。)とを対比すると、甲第1号証には、「濃縮槽6内での廃液のpHを常時6.4以下に保ちつつ」という本件発明1の構成の記載はなく、この点で本件発明1は先願発明と相違している。
そこで、この相違点について検討する。
甲第2号証には、カチオン電着塗料原液を限外濾過装置に供給する場合において、限外濾過装置を一時休止し、限外濾過装置の原液側に有機カルボン酸の水溶液を加圧封入することが記載され(摘記2-1、2-2)、また、甲第3号証には、カチオン電着塗料の処理において、限外濾過膜を、有機酸を主成分とせる洗浄液で洗浄した後、無機酸または無機塩基の希薄溶液で洗浄することよりなる限外濾過膜の濾過性能回復方法が記載されている(摘記3-1)。
しかし甲第2、3号証のこれらの記載は、いずれも、カチオン電着塗料の処理に係るものであり、最終水洗槽廃液の処理に係る本件発明1とは、その課題を異にするものである。しかも、これら甲第2、3号証には、本件発明1の構成である「濃縮槽」の記載はなく、さらには「濃縮槽6内での廃液(即ち、最終水洗槽より排出される廃液のこと。)のpHを常時6.4以下に保ちつつ」なる構成の記載もない。
したがって、これら甲第2、3号証の記載をみても、上記の相違点に係る構成が本件優先権主張日以前、周知ないし自明であったとはいえない。
よって、本件発明1は先願発明と同一ということはできない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を更に限定したものであるから、本件発明1について上記(1)項に記載したと同様、先願発明と同一とはいえない。
V.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する理由及び提示した証拠によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-03-28 
出願番号 特願平8-509372
審決分類 P 1 652・ 161- Y (C25D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高木 正博北村 明弘  
特許庁審判長 酒井 正己
特許庁審判官 池田 正人
中澤 登
登録日 1999-01-08 
登録番号 特許第2873095号(P2873095)
権利者 日本ペイント株式会社 旭化成工業株式会社
発明の名称 カチオン電着塗装における最終水洗槽廃液の処理方法  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ