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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する G01N
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する G01N
管理番号 1030061
審判番号 訂正2000-39055  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1981-05-21 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2000-06-07 
確定日 2000-10-02 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第1445773号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1445773号発明の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1 請求の要旨
本件審判の請求の要旨は特許第1445773号(特公昭62-55615号)(昭和54年10月18日出願、昭和63年6月30日設定登録。)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記の(1)、(2)のとおり訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項a
明細書中、特許請求の範囲の第2項ないし第4項を削除して第1項のみとし、第1項を次のとおりに訂正する。
「特許請求の範囲
1 上部に1枚の支持体を出し入れするための長方形の開口と、排液口とを有する縦長の染色脱色容器と、
電気泳動を終えた1枚の支持体を前記開口から前記染色脱色容器内へ搬入する一対のローラーと、
電気泳動を終えて水平方向に搬送される1枚の支持体の搬送方向を前記一対のローラーに案内するガイド部材とを備え、
電気泳動を終えた1枚の支持体を前記一対のローラーにより前記開口より染色脱色容器内へ送り込み前記染色脱色容器内に吊り下げた状態にて保持し、染色液を注入しての支持体の染色と、該染色液を前記排液口より排出した後脱色液を注入しての支持体の脱色とを、前記一つの染色脱色容器内で行うことを特徴とする支持体の染色脱色装置。」
(2)訂正事項b
明細書中の5頁11行ないし末行の「本発明は・・・である。」(公告公報3欄32〜41行)を次のとおりに訂正する。
「本発明は以上の点に鑑みなされたもので、上部に1枚の支持体を出し入れするための長方形の開口と、排液口とを有する縦長の染色脱色容器と、電気泳動を終えた1枚の支持体を前記開口から前記染色脱色容器内へ搬入する一対のローラーと、電気泳動を終えて水平方向に搬送される1枚の支持体の搬送方向を前記一対のローラーに案内するガイド部材とを備え、電気泳動を終えた1枚の支持体を前記一対のローラーにより前記閉口より染色脱色容器内へ送り込み前記染色脱色容器内に吊り下げた状態にて保持し、染色液を注入しての支持体の染色と、該染色液を前記排液口より排出した後脱色液を注入しての支持体の脱色とを、前記一つの染色脱色容器内で行うことを特徴とする支持体の染色脱色装置である。」
2 当審の判断
(訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否)
(1)前記訂正事項aについて
訂正事項aにおける「染色脱色容器」については、訂正前の特許請求の範囲第1項の「開口と排液口とを有する染色脱色容器」との記載を、「上部に1枚の支持体を出し入れするための長方形の開口と、排液口とを有する縦長の染色脱色容器」と訂正するものである。
この訂正は、明細書及び第2図に染色脱色容器11の「上部開口11b」(公告公報4欄37行)が記載され、第2図及び第5図には染色脱色容器11の上部の長方形の開口並びに縦長の染色脱色容器11に1枚の支持体1が収納されたものが示されていることから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において訂正されていると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項aにおける「一対のローラー」については、訂正前の特許請求の範囲第1項の「電気泳動を終えた支持体を前記開口から前記染色脱色容器内へ搬入する搬送手段」との記載を、「電気泳動を終えた1枚の支持体を前記開口から前記染色脱色容器内へ搬入する一対のローラー」と訂正するものである。
この訂正は、明細書の「支持体を容器11内部に送り込みこれを保持するためのローラー」の記載及び第2図に一対のローラー12により1枚の支持体1が容器11内部に送り込まれて保持された状態が示されていることから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において訂正されていると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項aにおける「電気泳動を終えて水平方向に搬送される1枚の支持体の搬送方向を前記一対のローラーに案内するガイド部材とを備え、」を加入する訂正は、電気泳動箱20にて電気泳動を終えた「支持体1はガイド18によりB位置にある染色脱色容器11の方向に向けられ染色脱色容器11内のローラー12により容器の奥へと送り込まれる。」(公告公報4欄12〜17行)の記載及び第2図に電気泳動箱20において水平状態で電気泳動を終えた1枚の支持体1がガイド18により染色脱色容器11の一対のローラー12に案内される状態が示されていることから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において訂正されていると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項aにおける「電気泳動を終えた1枚の支持体を前記一対のローラーにより」は、訂正前の特許請求の範囲の「電気泳動を終えた支持体を前記搬送手段により」を訂正するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とし、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において訂正されていると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、訂正事項aにおける特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(独立特許要件)
上記訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とするから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか審理する。
訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明(以下、「訂正後の発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認められる。
「上部に1枚の支持体を出し入れするための長方形の開口と、排液口とを有する縦長の染色脱色容器と、
電気泳動を終えた1枚の支持体を前記開口から前記染色脱色容器内へ搬入する一対のローラーと、
電気泳動を終えて水平方向に搬送される1枚の支持体の搬送方向を前記一対のローラーに案内するガイド部材とを備え、
電気泳動を終えた1枚の支持体を前記一対のローラーにより前記開口より染色脱色容器内へ送り込み前記染色脱色容器内にて吊り下げた状態にて保持し、染色液を注入しての支持体の染色と、該染色液を前記排液口より排出した後脱色液を注入しての支持体の脱色とを、前記一つの染色脱色容器内で行うことを特徴とする支持体の染色脱色装置。」
これに対して、本件特許に関する無効審判(平成11年35433号)における本件特許を無効とする審決の理由に引用された刊行物である特開昭53-146689号公報(以下、「引用刊行物1」という。)、特開昭51一82627号公報(以下、「引用刊行物2」という)、特開昭50一47629号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、以下に摘記する発明が記載されている。
[引用刊行物1]
「緩衝液の支持体としてセルロースアセテート膜を用い、血清蛋白の分析を行なう電気泳動装置に関するもの」(1頁左下欄10〜12行)であって、「セルロースアセテート電気泳動を多数の検体に対して同時に行なうことができる自動電気泳動装置」(同18〜20行)における試料塗布装置に関する発明が記載され、自動電気泳動装置における染色部及び脱色部について、「電気泳動が終った支持体は次に染色部12へ送られる。この染色部では染色液を収容した容器13の上方にローラー14を回転自在に設け支持体を染色する。染色後支持体を直ちに脱色部15へ送り、容器16に収容した脱色液をローラー17により支持体に作用させ脱色を行なう。」(2頁右上欄6〜11行)ことが記載されている。
[引用刊行物2]
「静電複写装置に於ける現像装置」(1頁左下欄13行)に関し、送りローラー12は、現像槽の現像液注入側「区分2の上端面の感光紙挿入口13の上方に配設され」(2頁左上欄11〜12行)、「帯電、露光の各工程を経て静電潜像を表面に得た感光紙Aを上記現像液注入区分2に挿入・脱離させるべく構成されている。」(同12〜15行)こと、その作用については、「此の様にして注入された現像液は送りローラー12にて感光紙挿入口13より区分2内に挿入されてくる感光紙Aの専ら静電潜像を有する面(略)に沿って区分2内を流動降下」(2頁左下欄4〜9行)
することが記載されている。
[引用刊行物3]
「一容器内で現像、水洗、定着水洗等の一般現像方法を一切手を触れることなく、しかも定温現像で高速処理を可能とする現像方法に係」(1頁左下欄16〜19行)り、従来のフィルムシートの自動現像方法について、「いずれの方法も現像、水洗、定着水洗のいわゆる「現像」としての一連の作業を、人為的作業を機械的作業に置換したに過ぎないものが多い。即ち「現像」の必須工程を機械的に移行し、各々必要溶液中を通過させるもので」(1頁右下欄2〜7行)あり、いくつかの欠点を具備しているが、「この発明は上記の欠点を全く除去し前述の技術的思想から脱却したものである。」(同14〜15行)ことが記載されている。
また、実施例においては、現像タンク(1)の「最下部にドレン排出口(4)が設けられ」(1頁右下欄19〜20行)、「現像液タンク(9)ならびに定着液タンク(12)の下端には開閉弁(13)、(14)を介した液供給管(15)(16)が現像タンク(1)の上部に開口すると共に該液供給管(15)(16)と隣接して洗滌液、例えば上水道に接続する洗滌液供給管(17)
を開閉弁(18)を備えている。」(2頁左上欄9〜14行)こと、「現像タンク(1)の縁辺段部に未現像のフィルムシート(22)を重合に近似する如き大多数の上端を束結したハンガー(23)を係合して垂下し定温の現像液を満し超音波発振動子(3)を作動させ」(2頁右上欄3〜7行)、「現像作用が完了したならば現像液を排出し洗滌液を満たし再び超音波振動子(3)を作動」(同16〜18行)して洗滌を行い、「洗滌後はその洗滌液排出後に直ちに定着液を流入させ、前述の如き作用をもってその作業を行い、爾後、再度の洗滌をこれ又前記と同様なる作業を行うことによってこれを完行することを可能とするものである。」(2頁左下欄2〜7行)ことが記載されている。
訂正後の発明と引用刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)とを対比すると、引用発明1の染色容器を備える「染色部12」、脱色容器を備える「脱色部15」からなる装置は本件発明の「染色脱色容器」に相当し、引用発明1も自動電気泳動装置であるから支持体の搬送手段を備え、染色脱色容器のドラム(ローラー14、ローラー17)の上側部の小ローラ(第1図)も搬送手段の一部を構成すると認められるから、本件訂正後の発明と引用発明1とは、
「電気泳動を終えた1枚の支持体を染色脱色容器内へ搬入し保持する手段を備え、電気泳動を終えた1枚の支持体を染色脱色容器内で染色及び脱色を行うことを特徴とする支持体の染色脱色装置。」で一致し、
(1)訂正後の発明の染色脱色容器が、上部に1枚の支持体を出し入れするための長方形の開口と、排液口とを有する縦長の染色脱色容器であり、染色液を注入しての支持体の染色と、該染色液を前記排液口より排出した後脱色液を注入しての支持体の脱色とを、前記一つの染色脱色容器内で行うのに対して、引用発明1の染色脱色容器は染色容器と脱色容器を備え、各容器で順次染色と脱色とを行う点、
(2)電気泳動を終えた1枚の支持体を染色脱色容器内へ搬入し保持する手段に関して、訂正後の発明は、一対のローラーを備え、電気泳動を終えた1枚の支持体を前記一対のローラーにより前記開口より染色脱色容器内へ送り込み前記染色脱色容器内にて吊り下げた状態にて保持するのに対して、引用発明は、電気泳動を終えた1枚の支持体をドラムとその上側の小ローラーによって染色脱色容器内へ送り込み保持する点
(3)訂正後の発明は、電気泳動を終えて水平方向に搬送される1枚の支持体の搬送方向を前記一対のローラーに案内するガイド部材とを備えているのに対して、引用発明はガイド部材を備えるものではない点。
上記相違点を検討する。
引用刊行物3には、一連の現像処理工程を自動化するに際して、現像、水洗、定着水洗等の工程を各々必要溶液中を通過させる従来のものに代えて、開口と排液口とを有する容器内で現像、水洗、定着水洗等の現像処理を行うこと、すなわち複数の処理溶液を用いて一連の処理を行う工程に代えて、一つの容器内で各処理溶液の注入・排出を繰り返すことにより一連の処理を行う技術思想が開示されていると認められる。
したがって、引用発明1における染色容器と脱色容器を備え、順次染色脱色を行う工程に代えて、開口と排液口とを有する染色脱色容器を備え、前記開口より染色液を注入しての支持体の染色と、該染色液を前記排液口より排出した後脱色液を注入しての支持体の脱色とを、前記一つの染色脱色容器内で行うようにすることは、容易に想到し得るものであり、引用刊行物2,3に記載されているように、溶液中で紙ないしフィルムを処理するに際して、紙ないしフィルムを吊り下げた状態で処理することは、周知の技術であると認められ、引用刊行物2に開示されているように感光紙を容器内に搬入する一対のローラーにより吊り下げられ保持されることも普通のことであると認められる。
しかしながら、引用刊行物2には、一対のローラーにまで感光紙を搬送する手段については記載がなく、引用刊行物3に記載されたものは多数のフィルムシートの上端を束結したハンガーにより吊り下げるものであるから、1枚のシートを搬送する手段について開示するものではない。そして、引用発明1は、支持体を水平方向に搬送して染色及び脱色工程を実施するものを開示するのみであるから、引用刊行物1〜3は、水平方向に搬送される支持体の搬送方向を変えて、支持体を吊り下げた状態に保持する一対のローラーにまで案内するガイド部材を開示ないし示唆するものではない。すなわち、訂正後の発明の「電気泳動を終えて水平方向に搬送される1枚の支持体の搬送方向を一対のローラーに案内するガイド部材」(相違点(3))について、引用刊行物1〜3には開示も示唆もない。
そして、訂正後の発明は、上部に1枚の支持体を出し入れするための長方形の開口と、排液口とを有する縦長の染色脱色容器を備える構成と、電気泳動を終えて水平方向に搬送される1枚の支持体の搬送方向をガイド部材で一対のローラーに案内して染色脱色容器内に吊り下げた状態にて処理する構成とにより、水平に保持して電気泳動を実施した支持体の搬送方向を変えて染色脱色容器に挿入する搬送装置が簡易化でき、また、染色脱色容器の幅を狭くすることができて一連の工程を自動的に行う電気泳動装置の面積を小さくするという作用効果を奏することが認められる。
したがって、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明は特許出願の際独立して特許を受けることができる発明である。
3 むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正前の特許法126条1項ただし書き1、3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条2項及び3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
支持体の染色脱色装置
(57)【特許請求の範囲】
1 上部に1枚の支持体を出し入れするための長方形の開口と、排液口とを有する縦長の染色脱色容器と、電気泳動を終えた1枚の支持体を前記開口から前記染色脱色容器内へ搬入する一対のローラーと、電気泳動を終えて水平方向に搬送される1枚の支持の搬送方向を前記一対のローラーに案内するガイド部材とを備え、電気泳動を終えた1枚の支持体を前記一対のローラーにより前記開口より染色脱色容器内へ送り込み前記染色脱色容器内に吊り下げた状態にて保持し、染色液を注入しての支持体の染色と、該染色液を前記排液口より排出した後脱色液を注入しての支持体の脱色とを、前記一つの染色脱色容器内で行うことを特徴とする支持体の染色脱色装置。
【発明の詳細な説明】
本発明は電気泳動における支持体の染色脱色装置の改良に関するものである。
医療機関における臨床検査室等における血清たんぱくの検査に電気泳動法が用いられるが、この電気泳動法は、周知のようにセルロースアセテート紙等の支持体上に検査すべき血清を塗布した上で通電し、血清の分画像を形成せしめる。そしてこの通電した試料を染色液にて染色、更に血清以外の部分を脱色したものを比色計にて定量する方法にて行なっている。そしてこれらの各工程はすべてが手作業にて行なわれていたため極めて非能率的であった。しかも電気泳動法による検査の作業は非常に熟練を要するものであって、このために検査を行なう者によってまちまちな異なった結果が出る等の欠陥を有していた。
以上のことから、この電気泳動法の各作業工程を自動的に行なうことによって、能率の向上をはかると共に検査毎の結果のばらつきをなくし、良好な検査を行ない得るようにした自動電気泳動装置の開発が行なわれている。この自動電気泳動装置の各工程のうち染色、脱色、乾燥を行なう染色脱色装置として支持体をドラム周辺に貼付けてドラムと共に回転せしめ、ドラムの回転中に染色液又は脱色液を入れた液槽中を支持体が通過することによって支持体を染色脱色するようにし、更に脱色を終えた支持体に温風をあてて乾燥するようにしたものがある。この染色脱色装置の概要を第1図に基づき説明すると、支持体1を適宜手段にてローラー2と矢印方向に回転するドラム3の間に送り込めば、支持体は先端より順次ドラム3の外周面に貼付けられて行く。支持体の先端が他のローラー4を通過したところでドラム3の回転を止めれば支持体1は両ローラー2,4によってドラム3の外周面に貼付けられたまま保持される。この状態にて今度はドラム3とローラー2および4とを一体に回転させれば支持体はローラー2,4にて支持されドラムの外周面に貼付けられたまま回転する。ここで液槽5に染色液を入れておけば、支持体は回転中に染色液中を何回も通過し染色される。また液槽5中の液を脱色液に代えれば同様にして支持体の脱色が行なわれる。このようにして染色脱色を終えた支持体は図示してない送風口よりの温風によって乾燥された後、ドラム3のみを回転させて支持体を次の工程へと送り出す。
以上説明した染色脱色装置はドラム3を使用するため液槽5が大型となる欠点を有している。また、この染色脱色装置は乾燥時の収縮によって支持体が切れること等が生じないようにドラム3に切欠き部3aを有しているが、支持体の種類等によって収縮する量が異なるため、理想的には支持体の縮む率によって切欠き部の大きさを変化させなければならない。また支持体の長さが短かい場合には径の小さいドラムを使用する必要があるが、ドラムの径を小さくした場合、ドラムに貼付けられている支持体は強く曲げられた状態で保持されるために巻きぐせが生じ、染色、脱色以後の工程での作業が行ないにくくなる。更に第1図に示すドラム方式の装置は機構が複雑であって部品点数が多い等の欠点もある。
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、上部に1枚の支持体を出し入れするための長方形の開口と、排液口とを有する縦長の染色脱色容器と、電気泳動を終えた1枚の支持体を前記開口から前記染色脱色容器内へ搬入する一対のローラーと、電気泳動を終えて水平方向に搬送される1枚の支持の搬送方向を前記一対のローラーに案内するガイド部材とを備え、電気泳動を終えた1枚の支持体を前記一対のローラーにより前記開口より染色脱色容器内へ送り込み前記染色脱色容器内に吊り下げた状態にて保持し、染色液を注入しての支持体の染色と、該染色液を前記排液口より排出した後脱色液を注入しての支持体の脱色とを、前記一つの染色脱色容器内で行うことを特徴とする支持体の染色脱色装置である。
以下図示する実施例に基づき本発明の詳細な内容を説明する。第2図において10は本発明染色脱色装置の本体、11は本体10内に11aを中心に回動し得るように設置された染色脱色容器、12は染色脱色容器11内に設けられた支持体を容器11内部に送り込みこれを保持するためのローラー、13は染色液ノズル、14は脱色液ノズル、15は排液ホース、16はピンチバルブ、17は乾燥用パイプ、18,19は夫々ガイドである。
以上のような構成の装置においてまず染色脱色容器11を実線にて示す装置(符号Aにて示す位置)より11aを中心に反時計方向に回動させて符号Bにて示す位置にて停止せしめる。この状態で電気泳動箱20にて泳動を終えた支持体1を泳動箱20より送り出し搬入口10aより装置本体10内に送り込む。ここで支持体1はガイド18によりB位置にある染色脱色容器11の方向に向けられ染色脱色容器11内のローラー12により容器の奥へと送り込まれる。支持体の後側の端部付近がローラー12の位置に達したところでローラー12を停止すれば、支持体1はローラー12にて一端が挟持され吊り下げられた状態で染色脱色容器11内に保持される。ここで染色液ノズル13より染色液を染色脱色容器11内に注入し容器内を染色液にて満たす。従って、支持体1は染色液に漬かったまま容器11内に保持される。続いて染色脱色容器11をAの位置にもどし、支持体1が染色液に漬かった状態のまま一定時間維持し、支持体が十分染色されたところで、ピンチバルブ16を開いて染色脱色容器内の染色液を排液ホース15を通して排出する。次にピンチバルブ16を閉じた後脱色液ノズル14より脱色液を染色脱色容器11内に注入して支持体の脱色を行なう。所定時間経過後再びピンチバルブ16を開いて染色脱色容器11内の脱色液を排液ホース15を通して排出する。この脱色操作は支持体が完全に脱色されるまで繰り返し数回行なう。脱色が終了すると染色脱色容器11は時計方向に回動されその上部開口11bが乾燥用パイプ17の下に位置する乾燥位置(符号Cにて示す位置)にて停止される。ここで乾燥用パイプより温風を出して支持体は乾燥される。支持体の乾燥が終了すると染色脱色容器11は更に時計方向に回動され支持体送り出し位置(符号Dにて示す位置)に移動する。ここでローラー12を回転せしめて支持体1をガイド19を通って搬出口10bより次の工程へと送り出す。
次に以上説明した染色脱色容器の回動等の操作を行なうための機構について説明する。第3図は染色脱色容器11内に設けられたローラー12の駆動機構を示す図である。21は一方のローラー12の軸12aに固定されたプーリー、22は染色脱色容器11の回動軸11a上に取り付けられた他のプーリー、23はローラー駆動用モーター24の回転軸24aに取り付けられたプーリー、25,26は夫々プーリー21と22およびプーリー22と23に掛けられたベルトである。このような構成のローラー駆動用モーター24の正転、逆転によって各プーリー、ベルトを介してローラー12は支持体1の染色脱色容器11への送り込みおよび容器からの送り出しのために回転する。次に第4図は染色脱色容器11の回動操作を行なうための機構を示す図である。31は染色脱色容器11の回動軸11a(プーリー21とは反対の側面)に固定されたギヤー、32はギヤー31と噛み合う他のギヤー、33は染色脱色容器回動用のモーターである。このような機構においてモーター33の正転、逆転により染色脱色容器は時計方向並びに反時計方向への回動を行なう。尚第3図および第4図は夫々ローラー駆動機構および染色脱色容器の回動機構とを別々に示した図である。実際には第5図の染色脱色容器の平面図に示すように容器の左右夫々の側面に夫々の機構が配設されている。尚第2図や第5図に符号34にて示すものは容器11内に送り込まれた支持体が、容器内壁につくのを防ぐためのフィンである。
実施例においては、支持体1をローラー12にて一端を挟持し吊り下げた状態で染血液を染色脱色容器11内に注入して支持体の染色を行なっているが、支持体4を染色脱色容器11内に挿入する前に染色液を注入して染色脱色容器11を染色液で満たしておくようにしても良い。
また、染色脱色容器はそれを回動させて支持体挿入位置、染色脱色位置、乾燥位置、支持体送り出し位置に移動させるようにしてあるが、これに限ることなく例えば容器を固定しておいて染色液ノズル等を容器の開口位置に移動させるようにしても良い。
本実施例によれば、支持体の一端をローラーにて挟持して吊り下げた状態にて染色脱色乾燥を行なうので支持体に巻きぐせがつくことなく、又乾燥の際の収縮により支持体に傷がついたり切断したりすることもない。更に装置は染色脱色容器とその内部に設置されたローラー等からなる簡単な構造のもので良い。
以上説明したように、本発明によれば、支持体を吊り下げた状態で染色脱色を行なうので染色脱色容器を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は従来の染色脱色装置の概略図、第2図は本発明の染色脱色装置の構成を示す図、第3図はローラーの回転機構を示す図、第4図は染色脱色容器の回動機構を示す図、第5図は染色脱色容器の平面図である。
10……染色脱色装置本体、11……染色脱色容器、12……ローラー、13……染色液ノズル、14……脱色液ノズル、15……排液ホース、17……乾燥用パイプ。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲第2項ないし第4項を削除して第1項のみとし、第1項を次のとおりに訂正する。
「特許請求の範囲
1 上部に1枚の支持体を出し入れするための長方形の開口と、排液口とを有する縦長の染色脱色容器と、
電気泳動を終えた1枚の支持体を前記開口から前記染色脱色容器内へ搬入する一対のローラーと、
電気泳動を終えて水平方向に搬送される1舞の支持体の搬送方向を前記一対のローラーに案内するガイド部材とを備え、
電気泳動を終えた1枚の支持体を前記一対のローラーにより前記開口より染色脱色容器内へ送り込み前記染色脱色容器内に吊り下げた状態にて保持し、染色液を注入しての支持体の染色と、該染色液を前記排液口より排出した後脱色液を注入しての支持体の脱色とを、前記一つの染色脱色容器内で行うことを特徴とする支持体の染色脱色装置。」
(2)明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書5頁11行ないし末行の「本発明は・・・である。」(公告公報3欄32〜41行)を次のとおりに訂正する。
「本発明は以上の点に鑑みなされたもので、上部に1枚の支持体を出し入れするための長方形の開口と、排液口とを有する縦長の染色脱色容器と、電気泳動を終えた1枚の支持体を前記開口から前記染色脱色容器内へ搬入する一対のローラーと、電気泳動を終えて水平方向に搬送される1枚の支持体の搬送方向を前記一対のローラーに案内するガイド部材とを備え、電気泳動を終えた1枚の支持体を前記一対のローラーにより前記閉口より染色脱色容器内へ送り込み前記染色脱色容器内に吊り下げた状態にて保持し、染色液を注入しての支持体の染色と、該染色液を前記排液口より排出した後脱色液を注入しての支持体の脱色とを、前記一つの染色脱色容器内で行うことを特徴とする支持体の染色脱色装置である。」
審決日 2000-09-07 
出願番号 特願昭54-134625
審決分類 P 1 41・ 853- Y (G01N)
P 1 41・ 851- Y (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 能美 知康  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 住田 秀弘
松本 邦夫
登録日 1988-06-30 
登録番号 特許第1445773号(P1445773)
発明の名称 支持体の染色脱色装置  
代理人 古川 和夫  
代理人 古川 和夫  

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