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審決分類 |
審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:11 D04H |
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管理番号 | 1030090 |
審判番号 | 補正2000-50003 |
総通号数 | 17 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1992-07-31 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2000-01-20 |
確定日 | 2000-11-01 |
事件の表示 | 平成2年特許願第338902号「不織布製造装置」において、平成11年10月25日付けでした手続補正に対してされた補正の却下の決定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原決定を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は平成2年11月30日の出願であって、平成11年10月25日付けで手続補正がなされたところ、原審においてこの手続補正について平成11年11月26日付けで補正の却下の決定をしたものである。 II.原補正却下の決定の理由 上記補正却下の決定(以下「原決定」という。)の理由は概ね以下のとおりのものである。 『この手続補正は、特許請求の範囲の記載において、カット面の切込み位置について「気流制御体に直行する断面上において、フィラメント流の軸線に15〜60度の角度θで交わり且つ前記気流制御体の前記対向面における輪郭線に接する接線のその接点に位置し、且つ前記接線と前記カット面のなす角度αが165〜30度であること」と補正し、さらに明細書第17頁の記載において、「しかも対向面からのカット面の切込み位置を、・・・角度αを165〜30度としたことにより、気流制御体の対向面を製造容易な真円の一部である円弧曲面としながらも、フィラメントの円周方向への回り込みの発生を有効に防ぐことができ、その結果CD方向の繊維むらのより少ない不織布を製造することができる、というすぐれた効果を奏する。」と補正するものであるが、これらの記載は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、且つ同明細書又は図面の記載からみて自明のこととも認められないので、この補正は明細書の要旨を変更するものと認められ、特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。』 III.当審の判断 まず、上記原決定の前段のカット面の切込み位置についての補正について検討する。 願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「出願当初の明細書」という。)には、カット面の切込み位置について次のように記載されている。 ア.「一対の気流制御体は互いの対向面が曲面で・・・前記対向面と反対側が切除されカット面を形成してある」(請求項1)、 イ.「気流制御体のカット面の切込み位置は、気流制御体に直行する断面上において、フィラメント流の軸線に15〜60度の角度θで交わる交線と気流制御体の輪郭線との接点に位置する」(請求項2)、 ウ.「気流制御体に直行する断面上において、前記交線のなす角度とカット面とのなす角度αが、165〜30度である」(請求項3) エ.「気流制御体のカット面の切込み位置は、気流制御体に直行する断面上において、フィラメント流の軸線に15〜60度の角度θで交わる交線と気流制御体の輪郭線との接点であるとよい。気流制御体に直行する断面上において、前記交線とカット面とのなす角度αが、255〜30度であるとよい。」(6頁2〜8行)、 オ.「第3図に示すように、一対の気流制御体5のカット面5cのそれぞれの切込み位置5bは、気流制御体に直交する断面上において、フィラメント流の軸線6に対して角度θ=15〜60度、好ましくは30度〜45度の大きさで、フィラメント流の軸線6に交わる交線7と一対の気流制御体5の輪郭線との接点に位置している。 また、交線7とカット面5cのなす角度αは255〜30度、好ましくは、150〜60度がよい。第4図のようにカット面が垂直に起立するようにしてもよい。」(11頁6〜16行)、 カ.実施例1〜4に、気流制御体に直交する断面上において、フィラメント流の軸線6に45,35,41または41度で交わる交線7と一対の気流制御体5の輪郭線との接点に切り込み位置5bが位置している一対の気流制御体5を用い、交線7とカット面5cとのなす角度αをそれぞれ135,90,49及び41度としたことが示されている。(12頁9行〜16頁最下行) キ.第3,及び4図に、交線、交線とフィラメントの軸線が角度θで交わり、交線とカット面のなす角度αが記載されている。 上記出願当初の明細書におけるカット面の切込み位置についての記載をみると、該カット面の切込み位置は、「気流制御体に直交する断面上において、フィラメント流の軸線に15〜60度の角度で交わる交線と気流制御体輪郭線との接点に位置し、且つ前記交線と前記カット面のなす角度αが165〜30度であること」が認められる。そして、接点は「(1)曲線とその接線との共有点、(2)機械における2つの機素が互いに接触しあう点、(3)小面積の接触を通じて電流を流し、または開閉する部分、(4)両者の出会う所、また、互いの考えの一致する所」の意味を有するものであるが(「広辞苑」参照)、(2)〜(4)が平面上の線や点とは関係のない事項に関するものであるから、前記接点とは(1)の意味に解するのが最も適切である。 そうすると、カット面の切込み位置である接点は、「フィラメント流の軸線に16〜60度の角度で交わる交線と気流制御体の輪郭線との接点」であり、接点は曲線とその接線との共有点であるから、この場合曲線が輪郭線で、交線が前記輪郭線の接線になるときの接点であるものと解するほかない。 すなわち、交線は「気流制御体に直行する断面上において、フィラメント流の軸線に15〜60度の角度θで交わり」且つ「気流制御体の前記対向面における輪郭線に接する接線」ということができる。 したがって、カット面の切込み位置について、「気流制御体に直行する断面上において、フィラメント流の軸線に15〜60度の角度θで交わり且つ前記気流制御体の前記対向面における輪郭線に接する接線のその接点に位置し、且つ前記接線と前記カット面のなす角度αが165〜30度であること」は出願当初の明細書に記載した事項の範囲内のものであると認める。 次に、原決定に記載された後段の補正事項である、「しかも対向面からのカット面の切込み位置を、・・・角度αを165〜30度としたことにより、気流制御体の対向面を製造容易な真円の一部である円弧曲面としながらも、フィラメントの円周方向への回り込みの発生を有効に防ぐことができ、その結果CD方向の繊維むらのより少ない不織布を製造することができる、というすぐれた効果を奏する。」について検討する。 出願当初の明細書には、気流制御体の対向面とその効果について以下のように記載されている。 ク.「一対の気流制御体は互いの対向面が曲面で」(請求項1及び4、及び5頁下より3行))、 ケ.「ところで、特開昭62-162063号公報には気流の方向を変位させる断面円形の棒状ローラをCD方向に振動させる装置が開示されている。」(3頁下より3〜1行) コ.「気流制御体の切込み位置から、前記対向面と反対側が切除されカット面を形成してあるので、気流制御体の周囲に沿って気流制御体の裏側にフィラメントの巻上がることがない。」(7頁下より3行〜8頁1行) サ.「一対の気流制御体5は、対向面5aを曲面とした断面が切欠き円状の2つの棒状体を組み合わせてあり」( 10頁下より1行〜11頁2行)、 シ.「(比較例2) カット面5cのある一対の気流制御体5に代え、直径38φの丸棒対を用い、各丸棒の対向間隔を・・・」(14頁6〜8行)、 ス.「[発明の効果] 本発明の不織布の製造装置は、このような構造でなるから、CD方向の繊維むらのより少ない不織布が得られる。」(17頁4〜7行) セ.第1〜5図に、気流制御体の対向面5aが曲面として示されている。 上記記載から、出願当初の明細書には、気流制御体の対向面とその効果につき、「気流制御体は対向面を曲面とした断面が切欠き円状の2つの棒状体を組み合わせたものであって、気流制御体の切込み位置から、前記対向面と反対側が切除されカット面を形成してあるので、気流制御体の周囲に沿って気流制御体の裏側にフィラメントの巻上がることがなく、CD方向の繊維むらのより少ない不織布が得られる。」ことが記載されているものと認められる。そして、前記「断面が切り欠き円状」とは、従来の気流制御体の断面が円形の棒状ローラであること(上記ケ参照)、及び比較例の直径38φの丸棒対との記載(上記シ参照)を考慮すると、本願発明が従来技術の断面が円形の丸棒材に切欠き部を設けたものであって、「断面が通常の円形すなわ真円形のものを切り欠いたもの」を意味することが認められる。そして、気流制御体は、その切欠き断面が真円形であれば、対向面は円の一部を構成する円弧曲線であるといえることは明らかである。 したがって、出願当初の明細書には「しかも対向面からのカット面の切込み位置を、・・・角度αを165〜30度としたことにより、気流制御体の対向面を真円の一部である円弧曲面としながらも、フィラメントの円周方向への回り込みの発生を有効に防ぐことができ、その結果CD方向の繊維むらのより少ない不織布を製造することができる、というすぐれた効果を奏する。」ことは記載されていたものと認められるが、気流制御体の対向面が真円の一部である円弧曲面であるから製造容易であることについては記載されていない。 しかしながら、気流制御体の対向面が真円の一部である円弧曲面であることは上記のとおり出願当初の明細書に記載された事項であるし、曲線が円形であれば製造容易であることは当業界における常識程度のことに過ぎないから、製造容易であることは出願当初の明細書に記載されていたに等しい事項と認められる。 したがって、上記手続補正は、出願当初の明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、明細書の要旨を変更するものでない。 IV.むすび 以上のとおりであるから、上記手続補正を却下すべきものとした原決定は失当である。 |
審決日 | 2000-09-28 |
出願番号 | 特願平2-338902 |
審決分類 |
P
1
7・
11-
W
(D04H)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 渕野 留香 |
特許庁審判長 |
石橋 和美 |
特許庁審判官 |
喜納 稔 石井 克彦 |
発明の名称 | 不織布製造装置 |
代理人 | 遠山 勉 |
代理人 | 松倉 秀実 |