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審決分類 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61N
管理番号 1030352
審判番号 審判1998-11137  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-06-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-07-16 
確定日 2000-11-24 
事件の表示 平成 4年特許願第137251号「治療具」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 6月22日出願公開、特開平 5-154205号]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1,本件発明
本件発明は、平成4年5月28日(国内優先権主張、平成3年6月7日)の出願であって、平成10年2月6日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲に記載されたとおり、以下の事項を発明の構成に欠くことができない事項とするものと認める。
【請求項1】円板状に形成された導電体と、一対の極が設けられたPN接合型の半導体からなり前記各極が前記導電体に導通するよう前記導電体の中心に配置された一方向電気整流素子とを備え、
前記導電体には、少なくとも前記一方向電気整流素子のPN接合部に対応する位置に開口部を形成したことを特徴とする治療具。
【請求項2】一対の極が設けられたPN接合型の半導体からなる一方向電気整流素子と、前記一方向電気整流素子の各極から導出された2本の導電性金属線とを備え、
前記2本の導電性金属線は、前記一方向電気整流素子を中心とした同一円周上で少なくとも一部が互いに接触するよう巻回されたことを特徴とする治療具。

2,原査定の理由
これに対する原査定の拒絶の理由の概要は、「一方向電流整流素子、いわゆるダイオードは、非線形の抵抗素子として知られるものであって、これが電池のような起電力能力をもつとの記載は理解できない。また、素子の両端が導電体で短絡させられた状態で整流作用があるとの記載も理解できない。従って、本願発明を人体に対する電気的な治療具としては理解できない。」というものである。
なお、これに対する手続補正書については、拒絶査定の備考において、「本願発明の効果として、患部の異常電圧を導電体に集積し、これを一方向電気整流素子に印加することで整流効果を得るとされているが、特許請求の範囲や実施例に記載の本願発明の構成では、整流素子の両端を導電体で短絡しており、該素子に電圧を印加して整流するような構造となっていない。すなわち、本願明細書には、その効果を奏するに足る形で、発明の構成が記載されているとは認められない。
なお、出願人は意見書中で、短絡により整流素子の電気的特性は得られなくなると認めているが、一方で一時的に素子には電流が流れるとの矛盾する主張をしており、技術的に理解できない。」としたものである。

3,請求人の主張
これに対して請求人は、請求の理由において、「拒絶理由通知における特許法第36条第4項または第5項および第6項の指摘に対して、平成10年2月6日付けの手続補正書において、本願の明細書を補正しており、補正後の明細書により本願に対する拒絶理由はすでに解消された」旨主張すると共に、「本発明者および本出願人は本願発明に対して正確な技術的効果の理由付けを把握しているわけではない。このことは、株式会社有斐閣発行、「特許法概説(第12版)」吉藤幸朔著第51頁に記載されているように、「発明者においてその法則(自然法則)についての正確かつ完全な認識をもつことは必ずしも必要でない。経験上取得したものならば十分である」とされているように、この点に認識の不明確さをもって発明の構成が否定されることは納得ができない。」との主張をしている。

4,当審の判断
しかしながら、本件発明は請求項1,2の記載において明らかなように、請求項1に係る発明にあっては、「円板状に形成された導電体と、一対の極が設けられたPN接合型の半導体からなり前記各極が前記導電体に導通するよう」にされており、また、請求項2に係る発明にあっては、「一方向電気整流素子の各極から導出された2本の導電性金属線とを備え、前記2本の導電性金属線は、前記一方向電気整流素子を中心とした同一円周上で少なくとも一部が互いに接触するよう」にされているものであって、電気整流素子の各極は導電体或いは導電性金属線で直接導通させられたものである。
したがって、電気整流素子が整流作用を有していても、各極が直接導通させられている以上、電気整流素子の各極の間には電位差は生じず整流作用は行い得ないものと認められるから、整流作用があるとの前提に立つ明細書の記載は理解できず、かつ、整流作用が行い得ない以上、整流作用に基づく効果があるものとも認められない。
この点について、請求人は上記のとおり、「本発明者および本出願人は本願発明に対して正確な技術的効果の理由付けを把握しているわけではない。」とした上で、「発明者においてその法則(自然法則)についての正確かつ完全な認識をもつことは必ずしも必要でない。経験上取得したものならば十分である」と主張している。
しかし、発明に係る法則(自然法則)についての正確かつ完全な認識をもつことは必ずしも必要でないにしても、一定の手段により一定の目的を達成できることが確実に証明されている必要があり、仮にそうでなければ産業上利用できる発明とはいえず、当業者といえどもその有用性が確認できず実施し得ないものである。
そして、本件発明は、明細書及び図面の記載では、電気整流素子の各極が直接導通させられていて電気整流素子の各極間には電位差が生ぜず整流作用は生じ得ない構造であり、当然に整流効果に基づく明細書記載の、生体電流を広い範囲で補足することが可能となるといった効果があると認めることはできず、発明の構成上、作用効果が奏し得ない明白な理由があるものである。
また、表1に示す効果については、整流作用による効果が上記のとおりの理由で認められないものであるから、金属箔3や電気整流素子1の患部に対する押圧等による効果と区別できる効果を示したものとは認められない。
したがって、本件の請求項1,2に係る発明について、「本願発明を人体に対する電気的な治療具としては理解できない。」ものとした原査定の理由は妥当なものであって、治療具としては一定の目的を達成できることが確実に証明されているとはいえないから、その結果、発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度にその発明の目的、構成及び効果を記載したものとは認められず、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしたものではない。
また、特許請求の範囲の記載については、発明の詳細な説明において発明の目的、構成及び効果が不明である以上、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものともいえないから、特許法第36条第5項第1,2号に規定する要件を満たしたものでもない。

5,むすび
以上のとおりであるから、本件発明に係る明細書は、その発明の詳細な説明においては、当業者が一定の目的を達成できることを理解した上で実施できる程度に発明の目的、構成及び効果について記載されているものではなく、特許請求の範囲の記載においては、当該発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、当該発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものともいえないから、特許法第36条第4項又は第5項及び第6項に規定する要件を満たしたものではない。
 
審理終結日 2000-09-06 
結審通知日 2000-09-19 
審決日 2000-10-02 
出願番号 特願平4-137251
審決分類 P 1 8・ 531- Z (A61N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 賢一  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 和泉 等
長崎 洋一
発明の名称 治療具  
代理人 遠山 勉  
代理人 松倉 秀実  
代理人 川口 嘉之  
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