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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1030530 |
審判番号 | 審判1999-10767 |
総通号数 | 17 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-07-01 |
確定日 | 2000-12-20 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第169902号「薄膜磁気ヘッドの製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 1月29日出願公開、特開平 5- 20640]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願は、平成3年7月10日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成11年4月26日付け及び平成11年9月2日付け手続き補正書により補正された明細書及び図面の記載から見てその特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、本願発明という。)。 「基板上に絶縁層を形成し、 前記絶縁層に前記基板まで達しない第1の凹部を形成し、 前記絶縁層上に下部磁性層を形成するとともに、 前記下部磁性層に前記第1の凹部に沿った第2の凹部を形成し、 前記下部磁性層上にギャップ層を形成し、 前記第2の凹部の底部のみに第1の絶縁層を形成し、 前記第2の凹部内であって、しかも前記第1の絶縁層上に第1のコイル層を形成し、 前記第1のコイル層を覆うように第2の絶縁層を形成するとともに、 前記第2の絶縁層の表面を前記基板上の平坦面と同一になるように平坦化し、 前記第2の絶縁層上に第2のコイル層を形成し、 前記第2のコイル層を覆うように第3の絶縁層を形成し、 前記第3の絶縁層上に前記下部磁性層と磁気回路を構成するように上部磁性層を形成することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の出願であって、その出願後に出願公開された特願平2-218186号(特開平4-102211号公報)の願書に最初に最初に添付した明細書及び図面(以下、先願明細書という。なお、記載箇所は便宜上、上記公開公報の頁,欄,行で特定することとする。)の、 ・第3頁右上欄第10行〜第19行に、 「スライダとして用いられる基板1上には、厚い絶縁膜2が形成される。この絶縁膜2は、例えば、アルミナ膜を用いることができ、アルミナ膜は、通常、スパッタリング法で形成する。次に、この絶縁膜2上に、凹部を作成する.この凹部は、磁気ギャップ膜4を下部磁性膜3と上部磁性膜8で挟んで構成した磁気ギャップ部分及びバックギャップ部分13を残して、その間を凹形に削り、第1コイルの巻線部分を埋め込むことのできる形状に作成したものである」と、 ・第3頁左下欄第6行〜14行に、 「次に、下部磁性膜3を作成する。下部磁性膜3の作成法としては、例えば、絶縁膜2の全面に、下部磁性膜3をスパッタリング法で積層した後、ホトレジストパターンをマスクにして、イオンビームエッチング法を用いて作成することができる。また、他の方法として、ホトレジストパターンをマスクとして、その間隙にめつきするパターンめつき法を採用することも可能である。 次に、磁気ギャップ膜4を作成する。」と、 ・同第3頁左下欄第19行〜右下欄第9行に、 「次に、層間絶縁膜5、第1コイル6、及び、第2コイル7を順次作成する。まず、第1コイル6と下部磁性膜3とを絶縁し、第2コイル7と上部磁性膜8とを絶縁するために、層間絶縁膜5を磁気ギャップ膜4の凹部に当たる部分に作成する。 この層間絶縁膜5については、例えば、ノボラック系ポジ型のホトレジスト膜を、概ね240℃以上で焼成した膜を用いることができる。もちろん、他種のホトレジスト膜やポリイミド系樹脂等の有機樹脂膜や、あるいは、無機絶縁膜を用いることも可能である。」と、 ・同第4頁左下欄第8行〜第9行に、 「続いて、第1コイル6の上に層間絶縁膜5を形成する。」と、 ・同第4頁右下欄第2行〜第7行に、 「したがって、第1コイル6の作成工程で示したようにホトレジスト膜11と同様なホトレジスト膜(図示せず)を、ほぼ均一に塗布できることから、第2コイル用のホトレジストパターンは、第2コイル作成部全面において、均一な露光・現像条件により、精度よく作成することができる。」と、 ・同第4頁右下欄第13行〜第15行に、 「以上のようにして、第2コイル7を作成した後、層間絶縁膜5を形成し、しかる後に、上部磁性膜8を作成する。」と、 ・同第5頁左上欄第5行〜第14行に、 「本実施例によれば、第1コイル6及び第2コイル7を、おのおのほぼ平面上に作成できるので、各コイルを作成するときに用いるホトレジスト膜の厚みを一様にすることができるため、ホトレジスト膜の塗布・露光条件の適正範囲の基板面内でのばらつきが小さくなり、したがって、相対的に、ホトレジストパターンを作成する露光・現像条件の適正範囲が広がって、二層コイルを作成することができ、高記録密度に最適な薄膜磁気ヘッドを提供できるという効果がある。」と記載されている。 以上の記載及び図面から、先願明細書には2層のコイル有する薄膜ヘッドの製造方法に関して、 「基板上1に厚い絶縁膜2を形成し、 絶縁膜2に前記基板1まで達しない凹部を形成し、 絶縁膜2上に下部磁性膜3を形成するとともに、 下部磁性層膜3上に磁気ギャップ膜4を形成し、 磁気ギャップ膜4の凹部に当たる部分に層間絶縁膜5を形成し、 凹部内であって、磁ギャップ膜4上の層間絶縁膜5上に第1のコイル6を形成し、 続いて第1のコイル6の上に層間絶縁膜5を作成する。 第1のコイル6上の層間絶縁膜5上に第2のコイル7を形成し、 第2のコイル7を作成した後、層間絶縁膜5を形成し、 この第2のコイル7上の層間絶縁膜5上に前記下部磁性膜3と磁気回路を構成するように上部磁性膜8を形成することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法」の発明が記載されていると認められる。 3.対比 本願発明と先願明細書の発明を対比すると、 先願明細書に記載された「基板上1の厚い絶縁膜2」「下部磁性膜3」「磁気ギャップ膜4上の層間絶縁膜5」「第1のコイル6」「第1コイル6上の層間絶縁膜5」「第2のコイル」「第2コイル上7の層間絶縁膜5」「上部磁性膜8」はそれぞれ、 本願発明の「絶縁層」「下部磁性層」「第1の絶縁層」「第1のコイル層」「第2の絶縁層」「第2のコイル層」「第3の絶縁層」「上部磁性層」に相当するものであるから、 両者は、二層のコイル層を有する薄膜ヘッドの製造方法に関して、 「基板上に絶縁層を形成し、 前記絶縁層に前記基板まで達しない第1の凹部を形成し、 前記絶縁層上に下部磁性層を形成するとともに、前記下部磁性層に前記第1の凹部に沿った第2の凹部を形成し、 前記下部磁性層上にギャップ層を形成し、 前記第2の凹部の底部のみに第1の絶縁層を形成し、 前記第2の凹部内であって、しかも前記第1の絶縁層上に第1のコイル層を形成し、 前記第1のコイル層を覆うように第2の絶縁層を形成するとともに、 前記第2の絶縁層上に第2のコイル層を形成し、 前記第2のコイル層を覆うように第3の絶縁層を形成し、 前記第3の絶縁層上に前記下部磁性層と磁気回路を構成するように上部磁性層を形成することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。」で一致し、 先願明細書には、「第2の絶縁層の表面を基板上の平坦面と同一になるように平坦化し」の点が記載されていない点で一応相違する。 4.判断 先願明細書の記載を詳細に検討すると、「第1コイル6及び第2コイル7を、おのおのほぼ平面上に作成できるので、各コイルを作成するときに用いるホトレジスト膜の厚みを一様にすることができるため、」(明細書第5頁左上欄第5行〜第8行)の、第2のコイルがほぼ平面上に作成できるとの記載から、第2のコイルが重ねられる下側の層の層間絶縁膜5はほぼ平面であることが理解でき、そして、膜の重なる積層構造で形成していく過程では、各層は均一に形成されるはずであり、先願明細書に記載された基板が平坦面で無いとする根拠もないことから、基板上の平坦面に各膜は表面がほぼ平面に積層されていると推察でき、各膜の表面は本願発明と同程度に平坦化されていると認められる。 したがって、本願発明における「第2の絶縁層の表面を基板上の平坦面と同一となるように平坦化し」と、先願明細書の第2のコイルをほぼ平面上に作成できるとした記載による、第1のコイル上6の層間絶縁膜5がほぼ平面であるとする点とは、実質的に同じものと認められるから、前記一応の相違点は、実質的な相違とは認められない。 5.むすび したがって、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-09-13 |
結審通知日 | 2000-09-26 |
審決日 | 2000-10-10 |
出願番号 | 特願平3-169902 |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 信一 |
特許庁審判長 |
麻野 耕一 |
特許庁審判官 |
藤井 浩 相馬 多美子 |
発明の名称 | 薄膜磁気ヘッドの製造方法 |
代理人 | 村山 光威 |