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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03B
管理番号 1032068
異議申立番号 異議1999-73928  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-11-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-10-19 
確定日 2000-12-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第2884550号「投影型映像表示装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2884550号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 (1)手続の経緯
特許第2884550号の請求項1に係る発明は、平成3年5月7日に出願され、平成11年2月12日に設定登録され、その後、特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年4月14日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、これに対して意見書が提出されたものである。
(2)訂正の適否
(訂正明細書の請求項1に係る発明)
訂正明細書の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 スクリーンに投影すべき画像が表示される液晶パネルと、この液晶パネルに光源光を投写する光源と、前記液晶パネルを挟んだ位置に設けられる入射側及び射出側偏光板とを有する投影型映像表示装置において、前記入射側偏光板には射出側偏光板とで挟み込んだ液晶パネルに表示される画像に対応した成分のみを透過させるダイクロイックミラーが密着した状態で添えられており、かつ前記液晶パネルと間隔を設けて配置されていることを特徴とする投影型映像表示装置。」
(引用刊行物記載の発明)
訂正明細書の請求項1に係る発明に対し、当審が平成12年6月2日付訂正拒絶理由において示した刊行物1(特開昭64-32289号公報)には、次のような記載がある。
(あ) 「三原色の各色光の色純度を上げ、色再現性の高い、高画質の画像表示を提供するところにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明の投写型カラー表示装置は、画像形成のための三枚の液晶ライトバルブと、光の三原色への色分離を行なうダイクロイックミラー系と、カラー画像合成のためのダイクロイックプリズムと、1つの投写光源及び投写レンズからなる投写型カラー表示装置において、赤色光、緑色光、青色光の各色光の光路内に、狭帯域の赤色フィルター、緑色フィルター、青色フィルターを設けたことを特徴とする。
〔作用〕
本発明の上記の構成によれば、2枚のダイクロイックミラーにより分離された赤色光、緑色光、青色光の三原色を、それぞれピーク波長をおおむね450〔nm〕、530〔nm〕、620〔nm〕付近に持つ狭帯域の赤色フィルター、緑色フィルター、青色フィルターに通すことによって、色純度の高い三原色の各色光を得ることができ、ピーク波長の選定により、CRT同様の各色光を得ることができる。
こうして、色純度の高い赤色光、緑色光、青色光を用いた画像表示を行なうことが可能となり、非常に色再現性の優れた画像表示が行なえる。
〔実施例〕
以下、本発明の一実施例を図面に沿って説明する。
第1図は、本発明の投写型カラー表示装置の平面図であり、光路図も同時に描かれている。
ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等の投写光源1から出射される白色光は、球面リフレクタ2と集光レンズ3により集光される。集光レンズ3は、口径比が大きく焦点距離の短かいレンズを用いて、投写光源1との立体角を大きくとることで集光効率を高め、投写光源1を集光レンズ3の焦点位置で、かつ球面リフレクタ2の中心に配置することで明るい平行光を得ることができる。他の方法として、パラボリフレクタを用いることで、集光された平行光を得ることができる。
こうして、集光された白色光は、熱線カットフィルター4により、赤外域の熱線をカットし、可視光のみが色分離のダイクロイックミラー系に入射する。
ダイクロイックミラー系は、赤色反射ダイクロイックミラー5と青色反射ダイクロイックミラー6で十字状に構成され、赤色光及び青色光は反射し、緑色光は透過する。第2図はそれぞれのダイクロイックミラーの分光図で、Aが赤色反射ダイクロイックミラー5、Bが青色反射ダイクロイックミラー6の特性を示す。ダイクロイックミラーは、透明なガラス基板に誘電体多層膜を真空蒸着して作成される。なお、後述のダイクロイックプリズムを用いて色分離を行なっても同様の効果が得られる。
こうして光の三原色に色分離された各色光は、第3図のような色分離特性となり、各色光は、100〔nm〕程度の広帯域の特性を持つことになる。これらの各色光を例えばC、I、Eの色度図にプロットすると、第5図の点線で示した色三角形を持つことになる。つまり、色純度が低く、白っぽい色光となり、点線の色三角形の内部の色再現しかできない。
次に、この各色光は反射ミラー7により、それぞれ光路を曲げられ、赤色フィルター8R、緑色フィルター8G、青色フィルター8Bに入射する。それぞれの色フィルターの波長選択特性の一例は第4図で表わされる。赤色フィルター8Rはr、緑色フィルター8Gはg、青色フィルター8Bはbで示す。それぞれのピーク波長は、おおむね620〔nm〕、530〔nm〕、450〔nm〕付近にあり、それぞれ半値巾(ピーク透過率の50%の波長と波長の巾)がおおよそ50〔nm〕程度で、ピーク透過率が90%以上のものが非常に色純度が高く、明るい画像表示が可能となっている。また、投写光源1の分光特性に合わせて、それぞれのフィルターのピーク透過率を変えてやることで、表示画像の白バランスを容易にとることが可能である上に、任意の色温度に設定することも容易である。
色フィルターは、無色透明のガラス等の基板を染色、着色等により作成するものと、誘電体多層膜を真空蒸着することで作成するものがある。前者が透過光以外を吸収するのに対し、後者は反射して特性を出す。一般に後者の方が熱に強く、透過率が高く、波長特性が任意に変えられる等の特徴を持つ。」(第1頁右欄第20行〜第3頁左上欄第8行)
(い) 「各色用の液晶ライトバルブ9R、9G、9Bには、各色用の信号電圧が印加され、電圧の大きさによって各色ごとに液晶ライトバルブの透過率を制御し、各色ごとに画像を形成する。この液晶ライトバルブは、入射光の透過率の制御を行なうシャッターの機能を果たすため、アクティブマトリクス液晶パネルや時分割駆動液晶パネルのみならず、信号電圧に応じ透過率を可変する液晶パネルであればよい。さらには、機械式、電磁式等により透過率の制御可能なバルブで置き換えることも可能である。
液晶ライトバルブ9R、9G、9Bで変調された各色光は、ダイクロイックプリズム10に入射し、合成され、投写レンズ13によりスクリーンに拡大投写し、カラー画像表示を行なう。
ダイクロイックプリズム10は、赤色反射面11と青色反射面12を互いに直交するように構成されている。」(第3頁左上欄第19行〜同頁右上欄第16行)
(う) 「第6図は、本発明の他の実施例の平面図である。これは、色分離のダイクロイックミラー系の構成を変えたものであり、他の構成要素については、前述の実施例と全く同様である。このダイクロイックミラー系では、まず青色反射ダイクロイックミラー6で青色光(おおむね500〔nm〕以下の波長成分)を反射し、次に、緑色反射ダイクロイックミラー16で緑色系(おおむね500〔nm〕から600〔nm〕の波長成分)を反射し、透過光を赤色光(おおむね600〔nm〕以上の波長成分)として色分離を行なう。これらの各色光がそれぞれ青色フィルター8B、緑色フィルター8G、赤色フィルター8Rに入射し、色純度の高い各色光が作られる。こうして前述の実施例同様に、非常に色純度が高く、高彩度の画像表示を得ることができる。これは色分離の順序を変えても同様である。」(第3頁左下欄第14行〜同頁右下欄第10行)
(え) 「各色光の光路内に、それぞれ狭帯域の赤色フィルター、緑色フィルター、青色フィルターを設けることにより、色純度が高く、彩度の高い表示が各色光ごとに可能となり、カラー表示の際に、色の再現性及び表現性を大きく広げることが可能となり、鮮かな高画質のカラー画像表示を行なうことができる。
また、各色のフィルターの透過率を変えることにより、白バランスをとることが容易になり、」(第3頁右下欄第17行〜第4頁左上欄第5行)
前記(あ)〜(え)の記載事項と図面の記載からみて、刊行物1には、「スクリーンに投影すべき画像が表示される液晶パネルと、この液晶パネルに光源光を投写する光源とを有する投写型カラー表示装置において、液晶パネルに表示される画像に対応した成分のみを透過させる色フィルターが前記液晶パネルの前方に配置されていることを特徴とする投写型カラー表示装置。」が記載されている。
同刊行物2(特開平1-158480号公報)には、次のような記載がある。
「〔問題点を解決するための手段〕
上記問題点を解決するために、本発明の表示装置は、光源からの出射光を光導波管により導き、液晶ライトバルブにより画像を形成し、投写レンズにより画像を拡大投写する表示装置において、画像表示のために液晶ライトバルブを前後に挟む2枚の偏光板のうち、光導波管側の第1の偏光板を光導波管に取付けた事を特徴とする。
〔作用〕
上記のように構成された液晶ライトバルブ及び偏光板から成る画像形成ユニットに、例えば下側から冷却ファンにより風を吹き付けると、風は第1の偏光板及び液晶ライトバルブの表面を滑らかに流れ、画像形成ユニットの上部に吹き抜けるため、第1の偏光板及び液晶ライトバルブを効率良く冷却し、小型、低電力、高光束にして高画質の表示装置を実現できるのである。
〔実施例〕
以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。第1図は、本発明の1実施例を表わす基本構成図を平面的に示したものである。光源1を出射した光は、光導波管2内で赤,緑,青の3原色に分光されて導かれ、第1の偏光板3R,3G,3Bによってそれぞれ偏光を受ける。第1の偏光板3R,3G,3Bは、確実な固定及び偏光板の熱変形を防止するために、両面に無反射コートを施したガラス板4R,4G,4Bにそれぞれ取付けられ、ガラス板4R,4G,4Bを光導波管2に取付けることによって固定される。第1の偏光板3R,3G,3B によって偏光を受けた光は、液晶ライトバルブ5R,5G,5Bによってそれぞれの色に対応した光変調を受け、第2の偏光板7R,7G,7Bによってそれぞれ偏光を受けた後、プリズム8によって合成される。液晶ライトバルブ5R,5G,5Bは、確実な固定及び位置調整のために、中央部に窓を有するガイド板 6R,6G,6B にそれぞれ取付けられ、プリズム8と相対的な位置に保持される。プリズム8によって合成された光は、投写レンズ9によって拡大投写され、前方のスクリーン上に画像が投影される。
第2図は、第1図に示す基本構成図を投写レンズ9側から見た断面図であり、第1図を詳細に拡大したものである。プリズム8は、上下からプリズム固定板10,11により固定され、冷却ファン12の上部にスペ-サ13を介して取付けられる。液晶ライトバルブ5Bは、液晶ライトバルブ取付け板14Bによってガイド板6Bに固定され、ガイド板6Bをプリズム固定板10,11に取付けることによってプリズム8と相対位置に保持される。第2図において、冷却ファン12を吹き付け式として用いた場合、第2図中の矢印のように風が起こり、第1の偏光板3Bは冷却ファンの直線的な風によって冷却され光導波管2内部への空気の流れ込みも防止し、液晶ライトバルブ5Bは プリズム固定板11の下部から吹き込む風とガイド板6Bに設けた窓から吹き込む風とによって十分に冷却される。この時、冷却ファン12の上部に導風板15Bを設けることによって、冷却能力を一層向上することができる。第2図は、青色用の液晶ライトバルブ5B周りについてのみ表わしているが、他の液晶ライトバルブ5R,5G周りについても同様である。又、冷却ファン12は、下部のみならず上部或いは斜め方向に設けたとしても、同様の冷却効果を発揮できるのである。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明によれば、従来ガイド板に取付けてあった第1の偏光板を光導波管に取付ける事によって、ガイド板中央の窓からの空気の流れ込みが活発になり、光導波管内部への空気の流れ込みも防止できるため、冷却ファンの冷却能力を最大限に引き出し、第1の偏光板及び液晶ライトバルブの温度上昇を最低限に抑える事ができる。従って、従来通りの冷却ファン及び偏光板により従来通りの小型,低電力を維持しつつ高光束にして高画質の表示装置を実現できるという効果がある。」(第2頁左上欄第13行〜第3頁左上欄第12行)
前記記載事項と、第1及び2図の記載からみて、刊行物2には、「スクリーンに投影すべき画像が表示される液晶ライトバルブと、この液晶ライトバルブに光源光を投写する光源と、前記液晶ライトバルブを挟んだ位置に設けられる第1及び第2の偏光板とを有する投影型の表示装置において、前記第1の偏光板には確実な固定及び偏光板の熱変形を防止するためのガラス板が取付けられており、かつ前記液晶ライトバルブと間隔を設けて配置されていることを特徴とする投影型の表示装置。」が記載されている。
なお、参考資料として、
参考資料2:特開平1-267587号公報
参考資料3:特開昭60-2916号公報
参考資料4:特開平3-51881号公報
参考資料5:特開平2-210488号公報
参考資料6:特開平2-205886号公報
参考資料7:特開昭63-4217号公報
を提示した。
(対比・判断)
訂正明細書の請求項1に係る発明と、刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「投写型カラー表示装置」は、訂正明細書の請求項1に係る発明の「投影型映像表示装置」に相当するものであるので、両者は「スクリーンに投影すべき画像が表示される液晶パネルと、この液晶パネルに光源光を投写する光源とを有する投影型映像表示装置において、液晶パネルに表示される画像に対応した成分のみを透過させる光学部材が前記液晶パネルの前方に配置されていることを特徴とする投影型映像表示装置。」という点で一致し、次の点で相違する。
相違点(イ)
訂正明細書の請求項1に係る発明は、入射側及び射出側偏光板が液晶パネルを挟んだ位置に設けられているのに対して、刊行物1記載の発明は、そのことについての記載がない点。
相違点(ロ)
液晶パネルに表示される画像に対応した成分のみを透過させる光学部材が、訂正明細書の請求項1に係る発明は、ダイクロイックミラーであるのに対して、刊行物1記載の発明は色フィルターである点。
相違点(ハ)
訂正明細書の請求項1に係る発明は、入射側偏光板にダイクロイックミラーが密着した状態で添えられているのに対して、刊行物1記載の発明は、色フィルター【訂正明細書の請求項1に係る発明の「ダイクロイックミラー」に相当する。〔下記「相違点(ロ)について」参照。〕】の記載があるだけで、入射側偏光板に色フィルターが密着した状態で添えられていることの記載がない点。
相違点(ニ)
訂正明細書の請求項1に係る発明は、入射側偏光板が液晶パネルと間隔を設けて配置されているのに対して、刊行物1記載の発明は、そのことについての記載がない点。
相違点(イ)について
入射側及び射出側偏光板が液晶パネルを挟んだ位置に設けられる点は、本件出願前に周知技術(例えば、刊行物2、参考資料2、及び参考資料3参照。)であり、上記相違点(イ)の訂正明細書の請求項1に係る発明の構成は何ら格別な構成とは認められない。
相違点(ロ)について
液晶パネルに表示される画像に対応した成分のみを透過させる光学部材が、訂正明細書の請求項1に係る発明においてはダイクロイックミラーである点については、訂正明細書の段落【0017】には『このダイクロイックミラー35Rは、入射された光のうち赤色に相当する成分のみを選択的に透過させ、他の成分は透過させない性質を有している。』と記載され、そのダイクロイックミラー35Rの特性を示すグラフである図2が示されている。これらの記載によれば訂正明細書の請求項1に係る発明のダイクロイックミラーは、刊行物1記載の発明の色分離された三原色に対応する色フィルターと同じ機能を果たすものである。そして、ダイクロイックミラーが色フィルターと同じ機能を果たすことができることは周知であるから、刊行物1に記載された発明の色フィルターをダイクロイックミラーとすることは当業者が容易に想到できた事項である。
相違点(ハ)について
入射側偏光板に他部材(ガラス板、レンズ、ダイクロイックミラー等)が密着した状態で添えられて、入射側偏光板を補強することは本件出願前に慣用技術(刊行物2、参考資料4、参考資料5、参考資料6、及び参考資料7参照。)である。
刊行物1記載の色フィルター【訂正明細書の請求項1に係る発明の「ダイクロイックミラー」に相当する。〔上記「相違点(ロ)について」参照。〕】はガラス板上に形成されたものであるが、液晶パネルの前方にあるガラス板からなる色フィルターを、液晶パネルの前方にあることが周知の入射側偏光板に密着した状態で添えれば、入射側偏光板を補強できることは、たやすく予測されることであり、上記相違点(ハ)の訂正明細書の請求項1に係る発明のような構成にすることに格別の困難性は認められない。
相違点(ニ)について
刊行物2記載の発明の「液晶ライトバルブ」、「第1の偏光板」、及び「第2の偏光板」は、それぞれ訂正明細書の請求項1に係る発明の「液晶パネル」、「入射側偏光板」、及び「射出側偏光板」に相当するものであるので、刊行物2には「スクリーンに投影すべき画像が表示される液晶パネルと、この液晶パネルに光源光を投写する光源と、前記液晶パネルを挟んだ位置に設けられる入射側及び射出側偏光板とを有する投影型映像表示装置において、前記入射側偏光板には確実な固定及び偏光板の熱変形を防止するためのガラス板が取付けられており、かつ前記液晶パネルと間隔を設けて配置されていることを特徴とする投影型映像表示装置。」が記載されている。
刊行物2記載の発明の、確実な固定及び偏光板の熱変形を防止するためのガラス板に取付けられた入射側偏光板が、液晶パネルと間隔を設けて配置されている点を、刊行物1記載の発明に採用して、上記相違点(ニ)の訂正明細書の請求項1に係る発明のような構成にすることは当業者が容易に推考しえたものと認める。
そして、訂正明細書の請求項1に係る発明の効果は、刊行物1及び2の記載と周知・慣用技術から予測される範囲のものである。
(むすび)
したがって、訂正明細書の請求項1に係る発明は、上記刊行物1、刊行物2、および周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)(以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項の規定に違反するので、当該訂正は認められない。
(3)特許異議申立についての判断
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 スクリーンに投影すべき画像が表示される液晶パネルと、この液晶パネルに光源光を投写する光源と、前記液晶パネルを挟んだ位置に設けられる入射側及び射出側偏光板とを有する投影型映像表示装置において、前記入射側偏光板には射出側偏光板とで挟み込んだ液晶パネルに表示される画像に対応した成分のみを透過させるダイクロイックミラーが密着した状態で添えられていることを特徴とする投影型映像表示装置。」
(引用刊行物)
当審において平成12年1月21日付で通知した取消理由で引用した刊行物(特開昭64-32289号公報)は、当審が平成12年6月2日付で通知した訂正拒絶理由で引用した刊行物1と同じものであり、上記「(2)訂正の適否、(刊行物記載の発明)、刊行物1」において示されたとおりの発明が記載されている。
なお、参考資料として、
参考資料1:特開平1-158480号公報(平成12年6月2日付訂正拒
絶理由における刊行物2)
参考資料2:特開平1-267587号公報
参考資料3:特開昭60-2916号公報
参考資料4:特開平3-51881号公報
参考資料5:特開平2-210488号公報
参考資料6:特開平2-205886号公報
参考資料7:特開昭63-4217号公報
を提示した。
(対比・判断)
請求項1に係る発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、前記相違点(イ),(ロ),及び(ハ)が存在するが、上記「(2)訂正の適否、(対比・判断)」において、前記相違点(イ),(ロ),及び(ハ)について述べた理由により、請求項1に係る発明は刊行物記載の発明および周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に推考しえたものと認める。そして、請求項1に係る発明の効果は、刊行物の記載および周知・慣用技術から予測される範囲のものである。
(むすび)
以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、上記刊行物に記載された発明および周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-10-31 
出願番号 特願平3-132045
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (G03B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 越河 勉  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 綿貫 章
柏崎 正男
登録日 1999-02-12 
登録番号 特許第2884550号(P2884550)
権利者 シャープ株式会社
発明の名称 投影型映像表示装置  
代理人 元井 成幸  
代理人 木下 雅晴  
代理人 小池 隆彌  
代理人 菅 直人  
代理人 高橋 隆二  
代理人 佐々木 晴康  

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