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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E02D
管理番号 1032354
異議申立番号 異議1999-72801  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-07-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-19 
確定日 2001-01-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第2891663号「地盤改良装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2891663号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2891663号に係る発明は、平成7年12月27日に出願され、平成11年2月26日にその特許の設定登録がされ、その後、平成11年7月19日に日本海工株式会社より、平成11年9月7日に不動建設株式会社より、それぞれ特許異議の申立てがあり、平成12年5月9日(起案日)に取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年7月17日に特許異議意見書の提出と共に訂正請求がなされた後、平成12年7月28日(起案日)に訂正拒絶理由通知がなされたが、これに対しては応答がなかったものである。

II.訂正請求について
上記平成12年7月17日付け訂正請求に対しては、平成12年7月28日付けで訂正拒絶理由通知を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。 そして、上記訂正拒絶理由通知は妥当なものと認められるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

III.特許異議申立てについて
1.本件請求項1及び2に係る発明
本件請求項1及び2に係る発明(以下、「本件請求項1及び2に係る発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 リーダに昇降可能に支持されると共にリーダ頂部からワイヤ一により介して吊支された昇降体と、ワイヤーと昇降体との間に介装したショックアブソーバと、昇降体に装備された起振機と、上端部に地盤改良材投入用ホッパーを有し、昇降体の下部に垂下連結されたケーシングと、このケーシングの下端に、常時は自重で開きケーシング打ち込み時に土圧により閉じるように設けられた底蓋と、前記ワイヤ一を昇降させるワイヤー昇降操作手段と、ケーシングに圧力エアを供給するエア供給手段とを備えてなる地盤改良装置。
【請求項2】 地盤改良材として、地盤土砂とセメント系固化材との混合材を使用することを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。」
2.取消理由の概要
取消理由通知は、異議申立人不動建設株式会社が提出した証拠より、甲第2号証を刊行物1(特開平2-292410号公報)、甲第3号証を刊行物2(特公昭46-22380号公報)、甲第4号証を刊行物4(特公平5-62169号公報)として引用し、それ以外に刊行物3(特開平6-33442号公報)を引用し、本件請求項1及び2に係る発明は、上記刊行物1〜4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであることを理由とし、取り消すべきものであるとしている。
3.引用刊行物記載の発明
刊行物1には、第1頁右下欄第14〜18行、第2頁左下欄第4行〜第3頁右上欄第3行及び第1、2図の記載からみて、
「リーダ5にワイヤで吊支され、昇降可能に支持されると共にリーダ5の頂部に設けられた滑車と一体となったシーブブロック7の下端にアタッチメント8を取り付け、該アタッチメント8が上下動され、アタッチメント8は、バイブロ18と、バイブロ18の上端とシーブブロック7の下端との間に設けられた振動吸収用のショックアブソーバ19と、頂部に砂投入用ホッパー17を有し、垂下連結されたケーシング16とからなり、さらに前記ワイヤを昇降させるウインチドラム14と、ケーシング16に圧縮空気を供給するコンプレッサー11とを備えてなる砂杭施工機。」という発明が記載されていると認められ、
刊行物2には、第1欄第13〜18行、第2欄第28〜31行、第3欄第30行〜第4欄第1行及び第1図の記載からみて、
「起振機1を装着した主管2の下端に設けた衝撃短管4に開閉蓋3を取付け、引抜き時には、蓋3が開き、砂の圧密時には、蓋3を閉じるようにしている圧密砂杭造成管。」という発明が記載されていると認められ、
刊行物3には、第1欄第48行〜第2欄第13行、第3欄第35〜41行及び図1の記載からみて、
「内ケーシング4の下端に設けた開閉用蓋27は、常時はその自重によって逆V字形を成す開成位置にあり、ケーシング2の打ち込み時には土圧によって内ケーシング4の下端を閉塞すべく閉成するようにされている砂杭造成装置。」という発明が記載されていると認められ、
刊行物4には、第2欄第8〜10行、第6欄第39行〜第7欄第9行及び第5図の記載からみて、
「地盤柱状改良体として、地盤排出土とセメント系粉末固化材との混合土を使用すること。」という発明が記載されていると認められる。
4.対比・判断
(本件請求項1に係る発明について)
本件請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、
本件請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とは、以下の点で相違しているが、その余の点では実質上一致していると認められる。
相違点
本件請求項1に係る発明は、ケーシングの下端に、常時は自重で開きケーシング打ち込み時に土圧により閉じるように設けられた底蓋を備えているのに対して、刊行物1記載の発明は、そのような手段を具備していない点。
しかし、上記相違点を検討すると、
刊行物2、3には、本件請求項1に係る発明の地盤改良装置と同様の圧密砂杭造成管又は砂杭造成装置において、「主管又は内ケーシングの下端に、引抜き時又は常時は開き、砂の圧密時又はケーシング打ち込み時に土圧により閉じるように設けられた開閉蓋を備えること」が記載されており、上記相違点において、本件請求項1に係る発明のようにすることは、刊行物2、3記載の発明より、当業者であれば容易に付加できる設計事項にすぎない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物1〜3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、本件請求項1に係る発明の特許は、取り消されるべきものである。
(本件請求項2に係る発明について)
本件請求項2に係る発明において限定された「地盤改良材として、地盤土砂とセメント系固化材との混合材を使用すること」は、刊行物4に、「地盤柱状改良体として、地盤排出土とセメント系粉末固化材との混合土を使用すること」が記載されており、刊行物4記載の発明も、地盤を改良するため柱状改良体を造成する装置に係るもので、本件請求項1に係る発明が対象とする地盤改良パイルを形成する地盤改良装置と共通するものであるということができるから、該刊行物4記載の発明から当業者が容易に材料変更できることにすぎない。
また、特許権者は、平成12年7月17日付け特許異議意見書において、本件請求項2に係る発明はサンドコンパクションパイル工法に関するもので、刊行物4記載の発明とは技術分野が相違し、係るサンドコンパクションパイル工法としては、従来、セメント系固化材を含む地盤改良材をパイル材として用いることはなかった等主張している(第4頁第19行〜第5頁第11行)。そこで、本件請求項2に係る発明として、特許請求の範囲の請求項1、2には、サンドコンパクションパイル工法に使用される地盤改良装置としての限定がされていないが、たとえ、特許権者の主張どおり、本件請求項2に係る発明はサンドコンパクションパイル工法に関するものであるとしても、本件出願前、サンドコンパクションパイル工法において、地盤改良材として、砂とセメント系固化材との混合材を使用することは、周知の技術事項であり(例えば、藤森謙一他1名編,「新しい軟弱地盤処理工法」,近代図書株式会社,昭和54年4月1日, p.140-145、特開昭58-41114号公報を参照されたい。)、該周知の技術事項における砂として、地盤土砂を選択することは、当業者であれば、同様の目的・効果を奏する刊行物4記載の発明の地盤排出土を選択することから容易に材料変更できることであるということができる。
そして、本件請求項2に係る発明のその他の事項は、本件請求項1に係る発明を引用するものであり、上記「(本件請求項1に係る発明について)」において、判断したとおりである。
したがって、本件請求項2に係る発明は、刊行物1〜4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、本件請求項2に係る発明の特許は、取り消されるべきものである。
5.むすび
以上のとおり、本件請求項1及び2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1及び2に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-12-05 
出願番号 特願平7-340449
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (E02D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 藤枝 洋
杉浦 淳
登録日 1999-02-26 
登録番号 特許第2891663号(P2891663)
権利者 井森工業株式会社 国土総合建設株式会社 東洋建設株式会社 家島建設株式会社
発明の名称 地盤改良装置  
代理人 富田 幸春  
代理人 萼 経夫  
代理人 萼 経夫  
代理人 萼 経夫  
代理人 染谷 廣司  
代理人 萼 経夫  

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