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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1033703
審判番号 審判1999-9972  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-06-18 
確定日 2001-02-08 
事件の表示 平成 4年特許願第234875号「測距方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 3月25日出願公開、特開平 6- 82683]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理由
1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年9月2日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という)は、明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「一定の周波数で変調された照射光を対象物へ照射し、その反射光を受光素子で受光し、受光素子から出力される光電変換信号に基いて対象物までの距離を測距する測距方法において、上記受光素子が上記照射光を受光しない状態で上記受光素子から出力される信号をA/D変換し、A/D変換された信号を離散的フーリエ変換の演算処理により複数の周波数でフィルタリングし、フィルタリングされた複数の信号の中で最も信号レベルが小さい信号の周波数を選択する第1過程と、上記第1過程で選択した周波数で変調された照射光を対象物に照射することにより対象物までの距離を測距する第2過程とを有する測距方法。」にあるものと認める。
2.引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平3-258480号(特開平5-071957号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「測距対象に変調光を投射し、その測距対象から乱反射した反射光を検出し、その測距対象までの距離を測定するアクティブ測距装置において、投光される変調光の周波数が切り換え可能な投光回路と、前記投光回路の周波数がほぼ中心周波数となるように切り換え可能なバンドパス特性を有する受光回路と、前記投光回路を不作動状態にして前記受光回路のバンドパス特性を切り換え、各々の周波数帯域に対応した前記受光回路の出力を比較することにより、前記受光回路の出力が最小の信号となる周波数帯域を求め、その周波数に前記投光回路を切り換えて測距を行うように制御する制御回路を備えたことを特徴とするアクティブ測距装置。」(請求項3)
(2)「距離信号増幅回路5は、光電流出力を電流電圧変換したのち増幅し、その出力は、バンドパスフィルタ回路(A)6およびバンドパスフィルタ(B)8に接続されている。バンドパスフィルタ回路6は、図2に示すように、発振回路18の発振周波数f1を中心周波数としたバンドパス特性を有する回路であり、バンドパスフィルタ回路8は、発振回路19の発振周波数f2を中心周波数としたバンドパス特性を有する回路である。各々のバンドパスフィルタ6、8は、信号が通過することにより、周波数f1または周波数f2の近辺を除いた帯域のノイズを減衰させる。」(明細書【0021】、【0022】)
(3)「ここでは、特に、第1の実施例に於けるバンドパスフィルタ回路6、8と発振回路A、B(18、19)の代わりに採用した中心周波数可変バンドパスフィルタ回路22、発振周波数可変発振回路23を中心にして詳述する。中心周波数可変バンドパスフィルタ回路22は、フィルタを構成する素子にスイッチングキャパシタ等を使用し、制御回路11からの信号により信号が通過可能な帯域の中心周波数の可変が可能な構成となっており、距離信号増幅回路5からの信号を授受する。」(明細書【0036】、【0037】)
(4)「カメラの作動シーケンスにおいて、測距が開始する・・・PSD2からの電流出力I1は、・・・バンドパスフィルタ回路6で帯域が制限され、・・・ここで求められたΣV(I1)は、IRED14を点灯させない状態で、PSD2より出力される信号から得ており、・・・ここで、VaとVbの大小関係を比較する・・・つまり、VaとVbを比較し、誤測距を引き起こす原因となる信号成分が小さい周波数で測距を行う。・・・IRED14からの赤外光は、投光レンズ13を介して被写体へ投射される。被写体からの反射光は、受光レンズ1を介してPSD2上に結像し、・・・公知の方法により距離データを演算し・・・終了する」(明細書【0024】〜【0033】)
(5)【図3】、【図4】には、実施例の制御回路の動作、すなわち、アクティブ測距の動作を示す流れ図が記載されている。
以上の記載事項によると、先願明細書には、
「測距対象に変調光を投射し、その測距対象から乱反射した反射光を検出し、その測距対象までの距離を測定するアクティブ測距方法において、前記変調光を投射しない状態で、中心周波数が切り換え可能なバンドパス特性を有する受光回路により、各々の周波数帯域に対応した前記受光回路の出力を比較することにより、前記受光回路の出力が最小の信号となる周波数帯域を求め、前記変調光をその周波数に切り換えて測距を行うことを特徴とするアクティブ測距方法。」という発明(以下、先願発明という)が記載されていると認められる。
3.対比
本願発明と先願発明とを対比すると、両者は、「一定周波数で変調された照射光を対象物へ照射し、その反射光を受光素子で受光し、受光素子から出力される光電変換信号に基づいて対象物までの距離を測距する測距方法において、上記受光素子が上記照射光を受光しない状態で上記受光素子から出力される信号を複数の周波数でフィルタリングし、フィルタリングされた複数の信号のなかで最も信号レベルが小さい信号の周波数を選択する第1過程と、上記第1過程で選択した周波数で変調された照射光を対象物に照射することにより対象物までの距離を測距する第2過程とを有する測距方法。」である点で一致し、本願発明と先願発明では、本願発明では受光素子から出力される信号をA/D変換し、A/D変換された信号を離散的フーリエ変換の演算処理によりフィルタリングするのに対して、先願発明では受光素子から出力される信号をバンドパスフィルタ回路によりフィルタリングする点で、一応相違する。
4.当審の判断
上記相違点について検討する。一般に、複数の異なる周波数の信号を含有する信号をある周波数でフィルタリングする方法として、複数の異なる周波数の信号を含有する信号をA/D変換し、A/D変換された信号を離散的フーリエ変換の演算処理によりフィルタリングする方法、および、複数の異なる周波数の信号を含有する信号をバンドパスフィルタによりフィルタリングする方法は、特開昭51-56627号公報、実願昭60-194889号(実開昭62-103377号)のマイクロフィルム、実願昭62-73830号(実開昭63-183719号)のマイクロフィルム、特開平2-200004号公報、特開平3-216078号公報に示されるように、ともに周知の方法である。なお、上記特開平2-200004号公報及び上記特開平3-216078号公報には、バンドパスフィルタによる方法とA/D変換及び離散的フーリエ変換による方法を置換することも示されている。
してみると、上記相違点は、受光素子から出力される信号をA/D変換し、A/D変換された信号を離散的フーリエ変換の演算処理によりフィルタリングする方法、受光素子から出力される信号をバンドパスフィルタ回路によりフィルタリングする方法という、両周知手段の、単なる置換によるものであり、また、両周知手段による格別な効果の差異も認められないから、実質的なものではない。
したがって、本願発明と先願発明は実質的に同一である。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、上記先願発明と同一であり、しかも、本願の発明者が先願発明をした者と同一ではなく、また本願の出願時において、本願の出願人が先願の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-10-31 
結審通知日 2000-11-14 
審決日 2000-12-12 
出願番号 特願平4-234875
審決分類 P 1 8・ 161- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柏崎 康司越河 勉  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 伊藤 昌哉
綿貫 章
発明の名称 測距方法  
代理人 松田 和子  

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