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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21H
管理番号 1034491
審判番号 審判1999-17613  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-10-28 
確定日 2001-02-14 
事件の表示 平成10年特許願第507785号「中心孔を有する板金体の筒部成形方法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 2月12日国際公開、WO98/05446]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、1996年(平成8年)8月5日を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年5月31日付け全文補正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
なお、平成11年11月29日付け手続補正書による補正は、同日付けで却下された。
「1.円形の基板部に、その基板部の中央に連設された筒状のボス部によって形成される中心孔を有する板金材の上記基板部を第1回転型と第2回転型とで挟み付けて保持すると共に、第1回転型に設けられた回転軸心を同心とする軸部を上記板金材の中心孔に嵌合し、それらの回転型と共に上記板金材を回転させながら、上記基板部の外周部に連設された筒部を成形ローラで上記基板部の径方向内方へ押圧してその筒部を成形する、中心孔を有する板金体の筒部成形方法であって、
第1回転型及び第2回転型の上記基板部との重なり箇所に設けられた円環状の係合部にその基板部に設けられた円環状の被係合部を上記基板部が径方向に動かないように係合させておくと共に、上記軸部及び上記ボス部の各頂面と第2回転型との間に上記軸部の軸方向の隙間を形成した状態で第1回転型と第2回転型とにより基板部を挟み付けておくことを特徴とする、中心孔を有する板金体の筒部成形方法。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の昭和63年6月13日に頒布された特開昭63-140732号公報(以下、「引用例1」という。)には、
「以下、この発明を図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
先ず、鋼板をプレス加工等により加工して円板1を形成し、同時に円板1の中心に中心孔2を形成する。そしてこの円板1には同じくプレス加工等により、その板面上後述するクランパーにより支持される面に板厚方向に突出するリブ3を円周方向に形成する(第1図)。この円板1の板面に形成されるリブ3は、その断面形状及び本数について特に限定されるものではない。
次に、リブ 3 を形成した円板1をリブ 3 に対応するリブ支持面4,5をもつクランパー 6,7により両面から支持する。即ち、円板1の板面を支持する一方のクランパー6の支持面8上には円板1のリブ3の凹面9を受けるリブ支持面4を有し、他方のクランパー7の支持面10上にはリブ3の凸面11を受けるリブ支持面5を有するクランパー6,7により支持している(第2図)。
このようにして、クランパー6,7により支持した円板1の外周端面にこの円板1と同期して回転するローラー12を押し付けてベルト掛部13を形成する。この実施例では複数のV溝14をもつベルト掛部13を形成するものであり、先ず、クランパー6,7により支持した円板1の外周端面に、ローラー12aを押し付けて回転させ円板1の外周縁に円筒部15を形成し(第3図)、次に、この円筒部15の外周面に、複数のV山をもつV溝成形口ーラー12bを押し付けて回転させることにより複数のV溝14を形成することによりベルト掛部13を形成する(第4図)。
しかして、前記円板1の外周端面にローラー12 a及びV溝成形ローラー12bを押し付けてベルト掛部13を形成するに際し、円板1の内径側から外径側へ移動しようとする肉が円板1 の板面に形成したリブ3と、このリブ3を両側から支持しているクランパー6,7のリブ支持面4,5とによりその移動が阻止され、その結果、円板1の中心孔2の変形が防止され中心精度の良いプーリーが得られる。」(第2頁右上欄第10行ないし同頁右下欄第8行)と記載されている。
また、図面第1〜4図には、クランパー7の軸部の頂点とクランパー6との間に上記軸部の軸方向の隙間を形成した状態でクランパー7とクランパー6とにより円板1の中央部を挟み付けておく構成が記載されている。
以上の記載内容によると、引用例1には、
「円形の基板部に、その基板部の中央に形成される中心孔2を有する円板1の上記基板部を一方のクランパー7と他方のクランパー6とで挟み付けて保持すると共に、一方のクランパー7に設けられた回転軸心を同心とする軸部を上記円板の中心孔に嵌合し、それら両クランパーと共に上記円板を回転させながら、上記基板部の外周部に連接された円筒部15をローラー12aで上記基板部の径方向内方へ押圧してその円筒部を成形する、中心孔を有する円板の円筒部成型方法であって、
両クランパーの上記基板部との重なり箇所に設けられた円環状のリブ支持面4,5にその基板部に設けられた円環状のリブ3を上記基板部が径方向に動かないように係合させておく共に、一方のクランパーの軸部の頂点と他方のクランパーとの間に上記軸部の軸方向の隙間を形成した状態で一方のクランパーと他方のクランパーとにより円板1の中央部を挟み付けておく、中心孔を有する円板の円筒部成型方法。」
が記載されていると認められる。
また、原査定において引用された、本願の出願前の平成8年3月27日に頒布された特公平8-29375号公報(以下「引用例2」という。)には、
「以上の各工程によって、図14に示すように、その中心部に筒状ボス部6を、かつ該ボス部6と外周緑部1eとの間に平坦部8をそれぞれ一体に形成した板金製ポリVプーリの中間素材10が得られ、次に、このような中間素材10を用いて、その外周壁部にポリV溝を形成する工程に移行するのであり、以下、ポリV溝の形成工程について説明する。
まず、ポリV溝を成形するための外周壁部の厚肉化工程が行なわれる。この厚肉化工程は図15に示すように、前記中間素材10を挟んだ下型14と上型15とをプレス機を介して互いに近接させることにより、中間素材10の平坦部8をその板厚方向から加圧させる。これによって、平坦部8の材料が外周側に流動し、素材10の外周部分10aが厚肉化される。この時、前記筒状ボス部6はほぼ位置規制されており、前記平坦部8の材料の一部が流動してくるだけであり、その高さおよび肉厚はほとんど変化しない。
次に、上記のようにして厚肉化された外周壁部10aの切割り成形工程が行なわれる。この切割り成形工程は図16に示すように、前記中間素材10の厚肉外周壁部10aを除く平坦部8およびボス部6を回転内型16と回転上型17とで挟んで、それら回転内型16と回転上型17との回転により中間素材10の全体を回転させる。そして、その回転する中間素材10の厚肉外周壁部10aの中央部分に、外側から転造ローラ18の外周面に形成されたV状の切割り突部18aを回転させながら押し付けて回転軸芯側に食い込ませることにより、前記厚肉外周壁部10aをV状に切割り成形する。
続いて、図17に示すように、前記回転内型16と回転上型17との回転により中間素材10の全体を回転させながら、その回転する中間素材10のV状に切割りされた外周壁部l0aに、その外側から広幅外周壁成形用の転造ローラ19を回転させながら押し付けることにより、前記中間素材10の外周に広幅の外周壁部10bを転造成形させる。(中略)
最後に、前記のように成形された広幅外周壁部10bにポリV溝を成形する工程が行なわれる。このポリV溝成形工程は、図18に示すように、前記中間素材10の広幅外周壁部10bを除く平坦部8およびボス部6を回転内型20と回転上型21とで挟み込み、それら回転内型20と回転上型21との回転により中間素材10の全体を回転させる。そして、その回転する中間素材10の広幅外周壁部10bに、外側から転造ローラ22の外周面に形成された凹凸状の成形部22aを回転させながら押し付けて回転軸芯側に食い込ませることにより、前記広幅外周壁部10bに複数のV溝群よりなるポリV溝11を転造成形する。」(第8欄第18行ないし第9欄第18行)と記載されている。
また、図面第16〜18図には、中間素材10の平坦部8の中央に連設された筒状のボス部6によって形成された中央孔に、回転内型16に設けられた回転軸心を同心とする軸部が嵌合され、また、上記軸部及びボス部の各頂面と回転上型17との間に上記軸部の軸方向の隙間を形成した状態で回転上型と回転内型とにより中間素材の平坦部を挟み付けておく構成が記載されている。
上記記載内容によると、引用例2には、
「円形の平坦部8に、その平坦部の中央に連設された筒状のボス部6によって形成される中心孔を有する中間素材10の上記平坦部を回転上型17と回転内型16で挟み付けて保持すると共に、回転内型に設けられた回転軸心を同心とする軸部を上記中間素材の中心孔に嵌合し、それら回転上型と回転内型と共に上記中間素材を回転させながら、上記平坦部の外周部に連設された外周壁部10aを転造ローラ18、19で上記平坦部の径方向内方へ押圧してその外周壁部10aを成形する、中心孔を有する素材の外周壁部成形方法であって、
上記軸部及び上記ボス部の各頂点と上記回転上型との間に上記軸部の軸方向の隙間を形成した状態で上記回転上型と回転内型とにより平坦部を挟み付けておく、中心孔を有する素材の外周壁部成形方法。」
が記載されていると認められる。

3.本願発明と、引用例記載の発明との対比
本願発明と引用例1記載の発明とを比較すると、引用例1記載の発明における「円板1」、「一方のクランパー7」、「他方のクランパー6」、「円筒部15」、「ローラー12a」、「リブ3」及び「リブ支持面4」は、それぞれ、本願発明における「板金材、または板金体」、「第1回転型」、「第2回転型」、「筒部」、「成形ローラ」、「被係合部」及び「係合部」に相当することが明らかであるから、本願発明と引用例1記載の発明とは、「円形の基板部に、その基板部の中央に形成される中心孔を有する板金材の上記基板部を第1回転型と第2回転型とで挟み付けて保持すると共に、第1回転型に設けられた回転軸心を同心とする軸部を上記板金材の中心孔に嵌合し、それらの回転型と共に上記板金材を回転させながら、上記基板部の外周部に連設された筒部を成形ローラで上記基板部の径方向内方へ押圧してその筒部を成形する、中心孔を有する板金体の筒部成形方法であって、第1回転型及び第2回転型の上記基板部との重なり箇所に設けられた円環状の係合部にその基板部に設けられた円環状の被係合部を上記基板部が径方向に動かないように係合させておくと共に、上記軸部の頂点と第2回転型との間に上記軸部の軸方向の隙間を形成した状態で第1回転型と第2回転型とにより基板部を挟み付けておく、中心孔を有する板金体の筒部成形方法」である点で一致するが、本願発明では、成形の対象となる板金体が、基板部の中央に連設された筒状のボス部によって形成される中心孔を有するものであって、板金材の成形において、軸部及びボス部の各頂点と第2回転型との間に上記軸部の軸方向の隙間を形成した状態で第1回転型と第2回転型により基板部を挟み付けておくものであるのに対して、引用例1記載の発明では、成形の対象となる板金材が、ボス部がなく、基板部に中央に中心孔だけが形成されたものであって、軸部の頂点と第2回転型との間に上記軸部の軸方向の隙間を形成した状態で第1回転型と第2回転型のより基板部を挟み付けておくものの、ボス部の頂点と第2回転型との間の隙間を考える余地のないものである点で相違すると認められる。

4.当審の判断
引用例2記載の発明は、中心孔を有する板金材(引用例2記載の発明の「中間素材10」が相当する。以下、括弧内は相当部材を示す。)の筒部成形方法(外周部成形方法)において、板金材が円形であり、その基板部(平坦部8)の中央に連設された筒状のボス部によって形成される中心孔を有するものを成形の対象としており、また、板金材の成形において、軸部及びボス部の各頂点と第2回転型(回転上型17)との間に上記軸部の軸方向の隙間を形成した状態で第1回転型(回転内型16)と第2回転型により基板部を挟み付けておくものである。そして、引用例2記載の発明は、引用例1記載の発明と共に、本願発明と同様の板金体の筒部成型方法に関するものである。
してみると、引用例1記載の発明において、成形の対象となる板金体について、その基板部の中央に連設された筒状のボス部によって形成される中心孔を有するものとするとともに、板金材の成形において、軸部及びボス部の各頂点と第2回転型との間に上記軸部の軸方向の隙間を形成した状態で第1回転型と第2回転型により基板部を挟み付けておくようなことは、引用例2記載の発明を適用することにより何の困難もなく容易になすことのできたものである。
したがって、上記相違点として示された本願発明の構成は、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1および引用例2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-11-28 
結審通知日 2000-12-08 
審決日 2000-12-20 
出願番号 特願平10-507785
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 亨川端 修藤井 新也  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 宮崎 侑久
中村 達之
発明の名称 中心孔を有する板金体の筒部成形方法  
代理人 鈴江 孝一  
代理人 鈴江 正二  

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