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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1035034
審判番号 審判1999-4207  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-01-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-03-18 
確定日 2001-04-04 
事件の表示 平成 2年特許願第119416号「リフローはんだ付方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 1月22日出願公開、特開平 4- 18793]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成2年5月9日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成11年4月14日付けの手続補正書及び平成12年10月24日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
(1)電子部品を装着する基板のランド部に、0.1mm〜0.2mmの厚さ若しくは装着する電子部品が高精度の電極部もしくはリード部を有している場合は0.03mm〜0.1mmの電解はんだ鍍金又は溶融はんだ鍍金をし、常温近傍では腐食性が無く且つ10万から50万センチポアズの高粘度のフラックスを所定の位置にディスペンサーで塗布し、次に電極部またはリード部に予めはんだ鍍金をした電子部品を前記基板の所定の場所に装着し、次にその状態の基板を加熱リフローすることを特徴とするリフローはんだ付方法であって、前記フラックスを塗布する所定の位置は、前記電子部品がチップ部品の場合はチップ部品の電極及び本体が基板に装着される位置であり、IC部品の場合はIC部品の多数のリードが装着される多数のランド間を繋ぐ位置とするリフローはんだ付方法。
2.引用例
(1)一方、当審が通知した平成12年8月15日付けの拒絶理由において引用した特開昭60-149193号公報(以下、「引用例」という。)には、(ア)フラックスに関連する記載に関し、「フラックスを必要個所のみに供給することを可能にしてチップ部品の位置ずれを防止する」(3頁左下欄18行乃至20行)との記載、「・・・100,000センチポイズの粘稠なフラックスを用い・・・塗布時のプリント配線板上でのフラックスの流れも抑制できる。」(3頁右下欄15行乃至19行)との記載、「このような粘着力の大きいフラックス塗膜ははんだメッキした上にこれを塗布してチップ部品を供給しはんだ付けしてもよい」(5頁右上欄2行乃至4行)との記載、(イ)リフローはんだ付け方法に関し、「(2)このプリント配線板31の片面のはんだ付けランド32,32’に・・・はんだペースト・・・を・・・印刷供給した。この後・・・はんだを溶融し、冷却し、予備はんだ付け層34,34’を形成した。同様にプリント配線板31の反対側のはんだ付けランド33,33’にも上記はんだペーストを印刷後溶融し、冷却し、予備はんだ付け層35,35’を形成した。・・・(3)上記プリント配線板31の上記片面の予備はんだ付け層34,34’及びその間にシルクスクリーン法により・・・フラックスを印刷供給した後、(4)・・・チップ部品36を・・・供給し、さらに・・・加熱した。これによりチップ部品はフラックスにより固着され、・・・(5)つぎにプリント配線板31を反転し、(6)上記反対側の予備はんだ付け層35,35’にも上記(2)と同様にフラックスを塗布してから、(7)チップ部品36’を供給し固着した。・・・ベルト式リフロー炉により上下から加熱を行って両面のはんだを同時に溶融し、冷却してはんだ付けをおこない、(8)はんだ付けプリント配線板を得た。・・・はんだ付けランドのはんだはランド及びチップ部品の電極部によく流れ良好なはんだ付けができた。」(7頁左上欄13行乃至左下欄3行)との記載、及び(ウ)「実施例7において、はんだペーストを用いずはんだ付けランドにはんだメッキ法・・・により予備はんだ層を形成しても良い。」(7頁左下欄12行乃至15行)との記載、「はんだ厚さはチップ部品の形状、はんだ付けランド面積によっても異なるが10μ以上が望ましい。」(7頁左下欄15行乃至17行)との記載がある。
上記の各記載によれば、引用例には、リフローはんだ付け方法に関し、「プリント配線板のはんだ付けランドにはんだメッキ法によりはんだ厚さが10μ以上の予備はんだ層を形成し、上記プリント配線板の上記予備はんだ層及びその間にシルクスクリーン法により10,000センチポアズの粘稠なフラックスを印刷供給した後、チップ部品36を供給し、チップ部品をフラックスにより固着し、ベルト式リフロー炉により加熱を行ってはんだを溶融してはんだ付けをおこなうこと」が実質的に開示されているものと認められる。
3.対比
(1)そこで、上記引用例に記載されているものと本件請求項1に係る発明を対比すると、両者は、「電子部品を装着する基板のランド部に、所定の厚さのはんだ鍍金をし、10万センチポアズの高粘度のフラックスを所定の位置に塗布し、次に電子部品を前記基板の所定の場所に装着し、次にその状態の基板を加熱リフローするリフローはんだ付方法であって、前記フラックスを塗布する所定の位置は、前記電子部品がチップ部品の場合はチップ部品の電極及び本体が基板に装着される位置とするリフローはんだ付け方法。」である点で一致しており、
(ア)ランド部に、本件請求項1に係る発明では、電解はんだ鍍金又は溶融はんだ鍍金をするのに対し、引用例のものでははんだメッキ法により予備はんだ層を形成するものであって、前記はんだメッキ法が電解はんだ鍍金又は溶融はんだ鍍金であるのか不明である点、
(イ)本件請求項1に係る発明では、電子部品を装着する基板のランド部に、0.1mm〜0.2mmの厚さ若しくは装着する電子部品が高精度の電極部もしくはリード部を有している場合は0.03mm〜0.1mmの厚さの電解はんだ鍍金又は溶融はんだ鍍金をするのに対し、引用例のものでは、予備はんだ層の厚さが10μ以上である点、
(ウ)本件請求項1に係る発明では、塗布するフラックスが常温近傍では腐食性が無いものであるのに対し、引用例で用いられるフラックスは常温近傍で腐食性がないものであるとの直接的記載がない点、
(エ)本件請求項1に係る発明ではディスペンサーでフラックスを塗布するのに対し、引用例のものではシルクスクリーン法によりフラックスを塗布する点、
(オ)基板の所定の場所に装着する電子部品が、本件請求項1に係る発明では電極部またはリード部に予めはんだ鍍金をしたものであるのに対し、引用例のものでは電極部またはリード部に予めはんだ鍍金をしたものであることについて記載されていない点において相違している。
4.当審の判断
(1)相違点(ア)について検討すると、はんだめっきには電解法及び溶融法があることは従来周知の技術的事項であるので[(社)日本プリント印刷回路工業会編「プリント回路技術便覧」、日刊工業新聞社(昭和63年6月30日)発行、989頁の表9.6.9参照]、はんだメッキ法によって予備はんだ層を形成するために、基板のランド部に電解はんだ鍍金又は溶融はんだ鍍金をすることは当業者が容易に想到しうることである。
(2)相違点(イ)について検討すると、引用例には、上記したように、「(2)このプリント配線板31の片面のはんだ付けランド32,32’に・・・はんだペースト・・・を・・・印刷供給した。この後・・・はんだを溶融し、冷却し、予備はんだ付け層34,34’を形成した。同様にプリント配線板31の反対側のはんだ付けランド33,33’にも上記はんだペーストを印刷後溶融し、冷却し、予備はんだ付け層35,35’を形成した。・・・(3)上記プリント配線板31の上記片面の予備はんだ付け層34,34’及びその間にシルクスクリーン法により・・・フラックスを印刷供給した後、(4)・・・チップ部品36を・・・供給し、さらに・・・加熱した。これによりチップ部品はフラックスにより固着され、・・・(5)つぎにプリント配線板31を反転し、(6)上記反対側の予備はんだ付け層35,35’にも上記(2)と同様にフラックスを塗布してから、(7)チップ部品36を供給し固着した。・・・ベルト式リフロー炉により上下から加熱を行って両面のはんだを同時に溶融し、冷却してはんだ付けをおこない、(8)はんだ付けプリント配線板を得た」こと、そして、「はんだ付けランドのはんだはランド及びチップ部品の電極部によく流れ良好なはんだ付けができた。」(7頁左上欄13行乃至左下欄3行)ことが記載されている。
さらに、引用例には、上記したように、「はんだペーストを用いずはんだ付けランドにはんだメッキ法・・・により予備はんだ層を形成しても良い。このはんだ厚さはチップ部品の形状、はんだ付けランド面積によっても異なるが10μ以上が望ましい。」(7頁左下欄12行乃至17行)との記載がある。
そして、一般に、チップ部品のような電子部品をそのまま基板に実装することも従来周知の技術的事項[(社)日本プリント回路工業会編「プリント回路技術便覧」、日刊工業新聞社(昭和63年6月30日)発行、20頁の(2)チップ部品自動実装の普及(チップオンボード)、980頁及び985頁]であって、電子部品を基板に好ましい状態ではんだ付けするために、ランド部のはんだ量を過不足なくすること、すなわち、ランド部のはんだ鍍金の厚さを適当な厚さにすべきであることは当然考慮されることである。
してみれば、引用例の実施例7に記載されているはんだメッキ法によりはんだ付けランドに予備はんだ層を形成する場合、すなわち、ランド部に電解はんだ鍍金又は溶融はんだ鍍金をする場合にも、同様に、はんだがランド部及びチップ部品の電極部によく流れ良好なはんだ付けができるようにするために、ランド部のはんだの厚さをはんだがランド部及びチップ部品の電極部によく流れ良好なはんだ付けができる程度にすることは、当然、考慮すべきことであり、そして、はんだの厚さはチップ部品の形状、はんだ付けランド面積によっても異なるので、ランド部のはんだの厚さを0.1mm〜0.2mmとすることは容易に採択しうることであるといえる。
(3)相違点(ウ)について検討すると、使用するフラックスの必要条件として腐食性が無いことが望ましいことは従来周知の技術的事項[(社)日本プリント回路工業会編「プリント回路技術便覧」、日刊工業新聞社(昭和63年6月30日)発行、980頁18行乃至22行、983頁乃至985頁のフラックスの項、999頁乃至1000頁]であるので、フラックスとして常温近傍では腐食性がないものを用いることも当然考慮されることである。
(4)相違点(エ)について検討すると、引用例には、「スクリーン印刷は・・・チップ部品の位置ずれを防止するためあるいはフラックス膜による粘つき等をなくすためには必要箇所の部分にのみ塗布することもできる」(5頁10行乃至14行)こと及び「上記プリント配線板31の上記片面の予備はんだ付け層34,34’及びその間にシルクスクリーン法により・・・フラックスを印刷供給した後、・・・チップ部品34を・・・供給し、・・・チップ部品はフラックスにより固着され・・・(6)上記反対側の予備はんだ付け層35,35’にも・・・同様にフラックスを塗布」(7頁右上欄4行乃至15行)することが記載され、上記記載によれば、プリント配線板のはんだ付けランドにチップ部品の位置ずれを防止するためあるいはフラックス膜による粘つき等をなくすために必要箇所の部分のみにフラックスを供給して塗布した後、チップ部品36を供給してチップ部品をフラックスにより固着されることが開示されている。そして、引用例におけるフラックスの塗布手段はシルクスクリーン法ではあるが、必要な箇所のみにフラックス等のような高粘性物質を供給塗布する手段として、ディスペンサー方式は従来周知の塗布手段(たとえば、特開平1-201991号公報、特開昭58-109168号参照)である。
してみれば、10万センチポアズのような高粘度のフラックスを所定の位置に塗布するために、引用例に記載のシルクスクリーン法にかえてディスペンサーを用いることは容易に想到しうることである。
(5)相違点(オ)について検討すると、電極部に予めはんだ鍍金をした電子部品は従来周知(特開昭63-257210号公報、特開昭63-170826号公報参照)であり、また、上記したように、一般に、電子部品をそのまま基板に実装することは従来周知の技術的事項である。
してみれば、電子部品を装着する基板の所定の場所に電極部に予めはんだ鍍金をした従来周知の電子部品を装着し、次にその状態の基板を加熱リフローすることは容易に想到しうることである。
5.むすび
したがって、本件請求項1に係る発明は、引用例に記載されたもの及び従来周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2001-01-22 
結審通知日 2001-02-02 
審決日 2001-02-14 
出願番号 特願平2-119416
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 俊明豊島 ひろみ  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 井口 嘉和
大島 祥吾
発明の名称 リフローはんだ付方法  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

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