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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1035200
審判番号 不服2000-3221  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-03-09 
確定日 2001-04-20 
事件の表示 平成 4年特許願第232429号「防水型レンズ付きフイルムユニット」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 3月25日出願公開、特開平 6- 82893]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年8月31日の出願であって、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成11年8月13日付、及び平成12年4月7日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明は次のとおりのものである。

【請求項1】 撮影機構が組み込まれ予めフィルムが収納されたレンズ付きフィルムユニットと、このレンズ付きフィルムユニットと一対一に組み合わせて用いられ、レンズ付きフィルムユニットを装填する開□が底面又は背面に形成された箱型のケース本体と、このケース本体内に前記レンズ付きフィルムユニットを装填した後に前記開口を水密に覆ってレンズ付きフィルムユニットをケース本体内に封入する蓋体とからなる防水型レンズ付きフィルムユニットにおいて、
前記開□に対面するケース本体の内壁に少なくとも2つの突起を形成するとともに、レンズ付きフィルムユニットの外壁をなすカバー部材に前記突起が嵌入する穴を形成し、前記突起と穴との係合によりレンズ付きフィルムユニットをケース本体に装填するときのガイドを行うとともに、突起を穴に嵌入させてレンズ付きフィルムユニットをケース本体内に位置決めしたことを特徴とする防水型レンズ付きフィルムユニット。

2.引用刊行物
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1〔特開平2-203329号公報(以下、「引用例」という。)〕には、次のような記載がある。

(い)「本発明はカメラの防水ケースに関し、特に、市販の使い捨てカメラを収容して撮影を行うための防水ケースに関する。」(第1頁右欄第16〜18行)

(ろ)「本発明の防水ケース10に収容可能なカメラ1は、第9図の分解斜視図および第10図の後面側斜視図に示すように、前面からみて、左右方向に長い矩形状とされ、その高さよりも小さい寸法の厚みをもつ、大略6面体箱形の、いわゆる使い捨てカメラである。」(第2頁左下欄第14〜19行)

(は)「本発明の防水ケース10は、第1図ないし第7図および第9図に示すように、前記カメラ1が収容可能な大きさの有底の透明プラスチック製ケース本体11と、ケース本体11の底と反対側に離脱自在にタッパ状に嵌着される、合成ゴムなどの可撓性材料からなるキャップ12とを含む。
ケース本体11にカメラ1を収容するには、ケース本体11の底にカメラ1の上面が接するよう挿入する。したがってケース本体11は、前記底と反対側、すなわち、カメラ1の底面側が、キャップ12を嵌着するための開口部13となる。」(第2頁右下欄第17行〜第3頁左上欄第7行)

(に)「ケース本体11は、その厚み方向および左右方向内幅が、底側(第1図の上側)では、カメラ1の幅に対して僅かにきつ目に挟着可能とされ、開口部13側(第1図下側)でゆる目となるよう、第1および第3図示のように、周壁にテーパθが付されている。これら内幅は、カメラの厚みに対して僅かの隙間に設定されており、また、カメラ1の底面とキャップ12の内底面12dとの隙間も極めて僅かとされるので、カメラ1が防水ケース10に装着されたときのケース内空気量は僅かである。
ケ-ス本体11において、前記力メラ1とレンズ筒3、ファインダ窓4、ファインダ接眼窓5およびフィルムカウンタ8が対応する部分は、光の屈折を防ぎ、影像ひずみが生じないよう、または、透明度を向上させるため、うすい平坦面11dとされる。また、シヤツタボタン7に対応する部分に第1円孔14が設けられ、この円孔14に、膜状の可撓性ゴムからなるシヤツタ操作片15が水密状態に装着される。シヤツタ操作片15はシヤツタボタンカバーを兼ねる。」(第3頁右上欄第1行〜同頁左下欄第1行)

(ほ)「ケース本体11の後壁には、カメラのフイルム巻取り車6と対応する位置に、フィルム巻上げ手段収容部20が突設される。
この、フィルム巻上げ手段収容部20は、ケース本体11の後方へ突出して一体形成された半円筒状部分からなり、この収容部20には、第7図の要部拡大断面図に示すように、たとえば、不銹鋼を用いた軸26、フイルム巻取り車6と同ー材料の駆動歯車27、合成ゴム製の防水パツキン28、スチロールを用いたパツキンカバ-29およびプラスチック製の巻取りつまみ30からなるフィルム巻上げ手段25が配設される。フイルム巻上げ手段収容部20の上部壁には巻上げ手段取付孔21が設けられ、この取付孔に前記防水パツキン28が水密状態に装着される。
フイルム巻上げ手段25において、軸26は、下端部を収容部20の下部壁に回転自在に支承され、防水パツキン28および、このパツキンの下面で、収容部20の内方に固着されたパツキンカバ-29を水密状態で貫通し、収容部20より上方に延びる端部に、巻取りつまみ30が固定される。
駆動歯車27は、軸26の下部に固定され、カメラ1のフイルム巻取り車6と噛み合い可能とされる。この歯車27は、カメラ1がケ一ス本体11内に挿入されたとき、確実にフイルム巻取り車6と噛み合うよう、前記巻取りつまみ30から遠ざかる端部の全周がア-ル面31とされている。
ケース本体11の前壁の内面には、レンズ筒3と対応する部分から開口部13まで、レンズ筒3の移動を許す条溝22が設けられ、この条溝に対応する前壁外面は突条23とされる。」(第3頁左下欄第9行〜同頁右下欄第20行)

(へ)「防水ケース10にカメラ1を収容するには、ケース本体11とカメラ1とを、互いの前後方向を合致させ、カメラ1の上面を先にしてケース本体11の開口部13から挿入する。これによりカメラ1は、その上面がケース本体11の底に到達するにともない、上部を前後方向および左右方向から挟持されて固定される。」(第4頁左上欄第3〜9行)

(と)「ケース本体11にカメラ1を押入したのち、開口部13にキヤツプ12を嵌着することによって、防水ケース10内は完全な水密状態に保たれ、カメラ1による雨中や水中での写真撮影が可能となる。」(第4頁左上欄第20行〜同頁右上欄第4行)

(ち)「本発明の防水ケースは以上のように、収容されるカメラの、少なくともレンズ、ファインダ窓、ファインダ接眼窓およびフィルムカウンタに対応する部分を透光性材料製とした有底のケース本体と、ケース本体の、前記底と反対側に離脱自在に嵌着され、可撓性を有する材料からなるキャップとを含み、前記ケース本体には、カメラのシャッタボタンに対応する位置に可撓性のシャッタ操作片を設け、カメラのフィルム巻取り車に対応する位置にフィルム巻上げ手段収容部を突設し、この収容部にフィルム巻上げ手段を配設した。」(第4頁左下欄第17行〜同頁右下欄第7行)

前記(い)〜(ち)の記載事項と図面の記載からみて、引用例には、「撮影機構が組み込まれ予めフィルムが収納された使い捨てカメラと、この使い捨てカメラと組み合わせて用いられ、使い捨てカメラを装填する開□が底面に形成された箱型のケース本体と、このケース本体内に前記使い捨てカメラを装填した後に前記開口を水密に覆って使い捨てカメラをケース本体内に封入するキャップとからなる防水型使い捨てカメラ。」及び、「ケース本体は、その厚み方向および左右方向内幅が、底側(第1図の上側)では、使い捨てカメラの幅に対して僅かにきつ目で、使い捨てカメラの上部を挟着・固定可能とされ、開口部側(第1図下側)でゆる目となるよう、第1および第3図示のように、周壁にテーパθが付されている点、防水ケースは、使い捨てカメラのシャッタボタンに対応する位置に可撓性のシャッタ操作片を設け、使い捨てカメラのフィルム巻取り車に対応する位置にフィルム巻上げ手段収容部を突設し、この収容部にフィルム巻上げ手段を配設し、かつ、収容される使い捨てカメラの、少なくともレンズ、ファインダ窓、ファインダ接眼窓およびフィルムカウンタに対応する部分を透光性材料製とした点。」が記載されている。

3.対比
本願特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明における「使い捨てカメラ」、及び「キャップ」は、本願発明における「レンズ付きフィルムユニット」、及び「蓋体」に、それぞれ相当するものであるので、本願発明と引用例記載の発明は「撮影機構が組み込まれ予めフィルムが収納されたレンズ付きフィルムユニットと、このレンズ付きフィルムユニットと組み合わせて用いられ、レンズ付きフィルムユニットを装填する開□が底面に形成された箱型のケース本体と、このケース本体内に前記レンズ付きフィルムユニットを装填した後に前記開口を水密に覆ってレンズ付きフィルムユニットをケース本体内に封入する蓋体とからなる防水型レンズ付きフィルムユニット」という点で両者の構成は一致し、次の点で両者の構成は相違する。

相違点:
(ア)本願発明は、レンズ付きフィルムユニットと箱型のケース本体とが、一対一に組み合わせて用いられるのに対して、
引用例記載の発明は、レンズ付きフィルムユニットと箱型のケース本体との組み合わせが、一対一であるという明示がない点。

(イ)本願発明は、開□に対面するケース本体の内壁に少なくとも2つの突起を形成するとともに、レンズ付きフィルムユニットの外壁をなすカバー部材に前記突起が嵌入する穴を形成し、前記突起と穴との係合によりレンズ付きフィルムユニットをケース本体に装填するときのガイドを行うとともに、突起を穴に嵌入させてレンズ付きフィルムユニットをケース本体内に位置決めしたのに対して、引用例記載の発明は、開口に対向する部分のケース本体の内部で、レンズ付きフィルムユニットの上部を挟持・固定することにより、レンズ付きフィルムユニットをケース本体内に位置決めし、かつ、ケース本体は、その厚み方向および左右方向内幅が、底側(第1図の上側)では、使い捨てカメラの幅に対して僅かにきつ目で、開口部側(第1図下側)でゆる目となるよう、周壁にテーパθが付されている点。

4.判断
相違点(ア)について
本願発明は、「レンズ付きフィルムユニットは、後述する構造をもったケースに封入して使用されることを前提にして作られて」いること、および「周知のレンズ付きフィルムユニットをケースに収納した状態で販売されており、撮影後はケースに入れたままで現像取扱店に出すようになっている」ことを根拠として、レンズ付きフィルムユニットと箱型のケース本体とが一対一に組み合わせて用いられると主張しているが、引用例記載の発明も、箱型のケース本体が、レンズ付きフィルムユニットのシャッタボタンに対応する位置に可撓性のシャッタ操作片を設け、レンズ付きフィルムユニットのフィルム巻取り車に対応する位置にフィルム巻上げ手段収容部を突設し、この収容部にフィルム巻上げ手段を配設し、かつ、収容されるレンズ付きフィルムユニットの、少なくともレンズ、ファインダ窓、ファインダ接眼窓およびフィルムカウンタに対応する部分を透光性材料製としたものであって、箱型のケース本体に対応するレンズ付きフィルムユニットにのみ使用可能なものであり、さらに、引用例記載の発明において、レンズ付きフィルムユニットをケース内に収納するのが、販売者であることを特に妨げる理由もなく、レンズ付きフィルムユニットをケースから取り出すのが、現像取扱店であることを特に妨げる理由もないので、相違点(ア)の本願発明の構成は、引用例記載の発明と比べて、何ら格別ものとは認められない。

相違点(イ)について
引用例記載の発明は、ケース本体の周壁のテーパθは、開口部から、レンズ付きフィルムユニットをケース本体に装填するときのガイド作用があり、かつ、開口に対向する部分のケース本体の内部で、レンズ付きフィルムユニットの上部を挟持・固定することにより、レンズ付きフィルムユニットをケース本体内に位置決めするので、本願発明も引用例記載の発明も、ケース本体およびレンズ付きフィルムユニットの相互作用によって、レンズ付きフィルムユニットをケース本体に装填するときのガイド作用および位置決め作用を奏することでは、同じである。
さらに、少なくとも2つの突起と、それらの突起が嵌入する穴との組み合わせによって、物と物とをガイドおよび位置決めすることは周知技術である。
したがって、引用例記載の発明において、レンズ付きフィルムユニットとケース本体とに、上記周知技術である突起と穴との組み合わせを採用して相違点(イ)の本願発明のような構成にしたことに、格別の困難性は認められない。
そして、前記相違点(ア)および(イ)における本願発明の構成による効果は、引用例の記載及び周知技術から予測される範囲のものである。

5.むすび
したがって、本願特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本願出願前に国内で頒布された引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、本願特許請求の範囲の請求項2に係る発明の審理をするまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-02-14 
結審通知日 2001-02-20 
審決日 2001-03-07 
出願番号 特願平4-232429
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柏崎 康司川俣 洋史  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 柏崎 正男
綿貫 章
発明の名称 防水型レンズ付きフイルムユニット  
代理人 小林 和憲  
代理人 小林 和憲  

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