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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F42B
管理番号 1035211
審判番号 不服2000-8599  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-08-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-06-09 
確定日 2001-05-15 
事件の表示 平成3年特許願第49456号「ガスジェットによるミサイル操向装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成4年8月17日出願公開、特開平4-227495、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成3年3月14日(パリ条約による優先権主張1990年3月14日、フランス国)の出願であって、その請求項1〜12に係る発明は、平成11年11月26日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜12に記載されたとおりの、以下のものと認める。
「 【請求項1】 回転バルブ装置を介して少なくとも一対の横方向ノズルに連結されるガス発生器を備えると共に、前記バルブ装置が駆動装置の作用により可動で、かつ前記横方向ノズルを通るガス流量を制御するようにされている、ガスジェットによるミサイル操向装置において、
各横方向ノズル毎に個々の回転バルブ部材が関連配置され、
該回転バルブ部材の各々の回転が、個々の関連するジャッキのピストンにより制御され、該ジャッキの一方室がガス発生器により発生されるガスの一部を受容し、前記ピストンの位置が、前記一方室を通る前記ガスの流量を制御することにより制御され、
前記ガスの流れを受容するのと反対側の前記ジャッキの他方室の各々が、非圧縮性圧力流体を包含する連結回路により相互に連結され、且つ、
前記非圧縮性圧力流体の容量が、前記回転バルブ部材の一つが関連する前記横方向ノズルの完全開放位置となると共に、前記回転バルブ部材の他の総ての回転バルブ部材が各々対応する前記横方向ノズルを完全に閉鎖するように、選択されるようになっている、
ガスジェットによるミサイル操向装置。
【請求項2】 前記横方向ノズルの各々が、個々の関連する前記回転バルブ部材側で且つ該回転バルブ部材と共働する少なくとも前記横方向ノズルの流入オリフィス側の近傍において長方形断面となっている、請求項1記載のガスジェットによるミサイル操向装置。
【請求項3】 前記回転バルブ部材の各々が、半径方向に突出するプレートを備えたシャフトからなり、前記プレートの長手方向端面が対応の前記横方向ノズルの前記流入オリフィス側と共働するようにした、請求項2記載のガスジェットによるミサイル操向装置。
【請求項4】 前記回転バルブ装置の開放位置における前記横方向ノズルの前記流入オリフィス側に対向する前記半径方向に突出するプレートの横面が凹曲面を有している、請求項3記載のガスジェットによるミサイル操向装置。
【請求項5】 前記回転バルブ部材が、前記ミサイルの構造体と一体の剛性ブロックに取り付けられている、請求項1記載のガスジェットによるミサイル操向装置。
【請求項6】 前記横方向ノズルの各々が、前記ミサイルの表層に一体に設けられた翼部に形成されると共に、前記流入オリフィス側の端部である前記各横方向ノズルの足部が摺動嵌合により前記剛性ブロックに取り付けられている、請求項5記載のガスジェットによるミサイル操向装置。
【請求項7】 前記ジャッキを通る前記ガスの流量の制御が、前記ジャッキの前記一方室に接続する漏斗状部分内で球体を移動する線型モータにより達成される、請求項1記載のガスジェットによるミサイル操向装置。
【請求項8】 2対の横方向ノズルを備えると共に、該各対の2つの横方向ノズルが正反対位置関係に配置され、且つ該2対の内の一方対の横方向ノズルが該2対の内の他方対の横方向ノズルを包含する半径面に直交する半径面内に配置されると共に、該一方対の各横方向ノズルに対応する各回転バルブ部材が、該他方対の各横方向ノズルに対応する各回転バルブ部材と同時に制御されるようにした、請求項1記載のガスジェットによるミサイル操向装置。
【請求項9】 1対の横方向ノズルの各々に対応する前記各回転バルブ部材が同一の1つのモータにより制御される、請求項7記載のガスジェットによるミサイル操向装置。
【請求項10】 fcosβ=F1-F3 (1)
fsinβ=F4-F2 (2)
F1+F2+F3+F4=P (3)
F2=F3 又は F1=F4 (4)
(式中、fは所望半径方向推進力の強さ、βは前記横方向ノズルの一つからの半径方向推進力F1と前記所望半径方向推進力とにより形成される角度、F2,F3及びF4は他の3つの横方向ノズルからの半径方向推進力である。)
を解くことのできる演算処理手段を備える、請求項8記載のガスジェットによるミサイル操向装置。
【請求項11】 前記連結回路に連結され得る非圧縮性圧力流体貯蔵部を備える、請求項1記載のガスジェットによるミサイル操向装置。
【請求項12】 前記貯蔵部が、前記連結回路を流出部へ連結できるバルブにより前記連結回路に連結される、請求項11記載のガスジェットによるミサイル操向装置。」

2.引用例記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開昭59-192851号公報(以下、「引用例」という。)には、
(ア)「第2図は横方向ガス噴射誘導装置を含む誘導ミサイルを示す。・・・ミサイル1は、・・・ガスジェネレータ7a及び7bとを本質的に含む。・・・誘導セクションは、ミサイルの誘導横断面Y及びZ内に配置され直径方向に対峙する2組のノズルと、前記ノズルを通るガス流量差を制御するための手段とを含んでいる。」(公報第3頁左上欄第13行〜右上欄第9行)
(イ)「第3図は本発明に従うガス噴射誘導装置の一具体例を示す概略断面図である。・・・
-直径方向に対峙すると共に前記ボディの外面に開口しており、入口オリフィス12a及び12bと、・・・断面長方形状のノズルスロート部13a及び13bとを含むガス供給管12a及び12bを介してガスジェネレータ(図示せず)に連結された2個のノズル11a及び11bと、
-・・・ノズルスロート部13a及び13bを閉止するための弁を形成する断面長方形の端部14a及び14bを有するスライドバー14、とを含む。」(公報第3頁右上欄第13行〜左下欄第13行)
(ウ)「前記スライドバー14は中間部分にディスク15またはピストンを備え、該ディスクまたはピストンはキャビティ16に嵌合され該キャビティ内で自由に滑動し得る。前記キャビティは2個の入/出口オリフィス17及び18を含み、該オリフィスは、ピストンの面に往復推力を生成しスライドバー14の対応する運動を生ずるべく交互に加圧制御流体を供給される。」(公報第3頁左下欄第14行〜右下欄第3行)
(エ)「第1図は・・・2個の誘導面の一方に於ける断面図である。各誘導面内の当該装置100は直径方向に対峙する1対のノズル110a及び110bを含み、前記ノズルの各々はガスダクトを介して加圧ガス源に連結され、・・・当該誘導装置は更にノズル組の各々の流量差を個々に補正し得る2個のスイッチを含む。スイッチは、ノズルのガスダクトの壁の一方の構成要素である2個の可動羽根130a及び130bを含む。固定シャフト135a及び135bについて回転可能に取付けられた前記2個の可動羽根は・・・を形成する。」(公報第2頁右下欄第11行〜第3頁左上欄第8行)
と記載されている。

上記(ア)〜(エ)の記載から、引用例には、
”「弁を形成する断面長方形の端部14a及び14bを有するスライドバー14」を介して少なくとも一対の「ノズル11a及び11b」に連結される「ガスジェネレータ7a及び7b」を備えると共に、前記「スライドバー14」が駆動装置の作用により可動で、かつ前記「ノズル11a及び11b」を通るガス流量を制御するようにされている、ガスジェットによるミサイル操向装置において、前記「スライドバー14」の運動が「キャビティ16」に嵌合された「ディスク15またはピストン」により制御され、該「キャビティ16」が「加圧制御流体」を受容し、前記「ディスク15またはピストン」の位置が、前記「加圧制御流体」により制御され、前記「スライドバー14」における「弁を形成する断面長方形の端部」の一つが関連する前記「ノズル11a及び11b」の完全解放位置をとると、前記「スライドバー14」における他の「弁を形成する断面長方形の端部」が対応する「ノズル11a及び11b」を完全に閉鎖するようになっている、ガスジェットによるミサイル操向装置。”
が記載されているものと認める。

3.対比及び判断
以上の認定に基づいて、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用例に記載された発明とを対比すると、引用例に記載された発明の「ノズル11a及び11b」及び「ガスジェネレータ7a及び7b」が、本願発明の「横方向ノズル」及び「ガス発生器」に相当することは明らかである。また、「弁を形成する断面長方形の端部14a及び14bを有するスライドバー14」は、「ノズル11a及び11b」を通るガス流量を制御しており、バルブ装置であるという点で、本願発明の「回転バルブ装置」と共通している。また、引用例に記載された発明の「キャビティ16」及び「ディスク15またはピストン」は、バルブ装置としての「スライドバー14」を駆動しており、バルブ装置を駆動する装置であるという限りにおいて、本願発明の「ジャッキ」及び「ピストン」に相当する。また、引用例に記載された発明の「加圧制御流体」は、「ガスジェネレータ7a及び7b」で発生したものであるかどうかを除けば、本願発明の「ガス」に相当する。
そうすると、両者は、
バルブ装置を介して少なくとも一対の横方向ノズルに連結されるガス発生器を備えると共に、前記バルブ装置が駆動装置の作用により可動で、かつ前記横方向ノズルを通るガス流量を制御するようにされている、ガスジェットによるミサイル操向装置において、該バルブ部材の駆動が、関連するジャッキのピストンにより制御され、該ジャッキがガスを受容し、前記ピストンの位置が、ガスにより制御され、前記バルブ部材の一つが関連する前記横方向ノズルの完全開放位置となると、前記バルブ部材の他の総てのバルブ部材が各々対応する前記横方向ノズルを完全に閉鎖するようになっている、ガスジェットによるミサイル操向装置。
である点で一致し、以下の2点で相違している。
相違点1:バルブ装置が、本件発明では、「回転バルブ装置」であって、「各横方向ノズル毎に個々の回転バルブ部材が関連配置され」ているのに対して、引用例記載の発明では、「弁を形成する断面長方形の端部14a及び14bを有するスライドバー14」であって、「スライドバー14」は、個々のノズル毎に配置されてはいない点。
相違点2:バルブ装置の駆動が、本件発明では、「個々の関連するジャッキのピストンにより制御され、該ジャッキの一方室がガス発生器により発生されるガスの一部を受容し、前記ピストンの位置が、前記一方室を通る前記ガスの流量を制御することにより制御され、前記ガスの流れを受容するのと反対側の前記ジャッキの他方室の各々が、非圧縮性圧力流体を包含する連結回路により相互に連結され、且つ、前記非圧縮性圧力流体の容量が、前記回転バルブ部材の一つが関連する前記横方向ノズルの完全開放位置となると共に、前記回転バルブ部材の他の総ての回転バルブ部材が各々対応する前記横方向ノズルを完全に閉鎖するように、選択されるようになっている」のに対して、引用例記載の発明では、そのようになっていない点。

そこで、上記相違点1について検討すると、本願出願前に、回転バルブ装置が存在すること、及びノズル毎に回転バルブ装置を配置することは、上記(エ)にあるように、引用例にも開示があり、また、一例として特開昭59-176197号公報に示すように、当業者にとって周知の技術事項である。したがって、引用例記載の発明の「弁を形成する断面長方形の端部14a及び14bを有するスライドバー14」に代えて、回転バルブ装置を採用し、各横方向ノズル毎に関連配置するように構成したことは、当業者が容易に想到することができたものである。
次に、上記相違点2について検討すると、本願発明では、バルブ部材の駆動を、「個々の関連するジャッキのピストンにより制御」することにより、バルブの駆動に伴う慣性を低くし、振動のないバルブ制御をもたらすという効果を奏する上、「前記ガスの流れを受容するのと反対側の前記ジャッキの他方室の各々が、非圧縮性圧力流体を包含する連結回路により相互に連結され、且つ、前記非圧縮性圧力流体の容量が、前記回転バルブ部材の一つが関連する前記横方向ノズルの完全開放位置となると共に、前記回転バルブ部材の他の総ての回転バルブ部材が各々対応する前記横方向ノズルを完全に閉鎖するように、選択」することにより、一つのバルブ部材を制御するだけで、他の全てのバルブ部材のピストンが、非圧縮性流体の分配により所定位置をとるという効果を奏するものである。そして、引用例には、上記相違点2に係る本願発明の構成について、記載も示唆もなく、上記相違点2に係る本願発明の構成は、当業者にとって自明な事項ではない。したがって、上記相違点2に係る本願発明の構成は、引用例記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものではない。
よって、本願請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
また、本願請求項2〜12に係る発明は、本願請求項1に係る発明を直接又は間接に引用しているから、改めて引用例記載の発明と比較するまでもなく、引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1〜12に係る各発明は、原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭59-192851号公報に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-04-25 
出願番号 特願平3-49456
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F42B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大山 健  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 鈴木 久雄
刈間 宏信
発明の名称 ガスジェットによるミサイル操向装置  
代理人 古川 秀利  
代理人 長谷 正久  
代理人 黒岩 徹夫  
代理人 池谷 豊  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 曾我 道照  
代理人 池谷 豊  

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