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審決分類 審判 一部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  E03D
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  E03D
審判 一部申し立て 2項進歩性  E03D
審判 一部申し立て 判示事項別分類コード:533  E03D
審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  E03D
管理番号 1035572
異議申立番号 異議1999-72085  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-11-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-02 
確定日 2001-03-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第2830316号「水洗式便器」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについてした平成12年6月27日付けの取消決定に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決(平成12年(行ケ)第293号、平成12年12月19日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、、次のとおり決定する。 
結論 特許第2830316号の請求項1および2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2830316号は、平成2年3月2日に特許出願され、平成10年9月25日にその特許権の設定登録がなされ、その後、平成11年6月2日に長屋千亜紀より特許異議申立てがなされ、平成12年6月27日付で請求項1および2に係る特許を取り消す旨の決定がなされ、これを不服として東京高等裁判所に出訴(平成12年(行ケ)第293号)され、裁判係続中の平成12年8月10日に明細書を訂正することについての審判請求(訂正2000-39090号)がなされ、平成12年10月17日付で訂正を認める旨の審決がなされ、平成12年12月19日に東京高等裁判所において上記決定を取り消す旨の判決が言渡されたものである。
2.本件発明
本件特許第2830316号の請求項1および2に係る発明は、上記のように訂正されたので、訂正後の特許請求の範囲の請求項1および2に記載の以下のとおりのものと認める。
(1)洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する1または2以上の弁機構および大気開放弁をユニット化したバルブユニットを便器本体に備えたことを特徴とする水洗式便器。
(2)前記バルブユニットはベースプレートを介して便器本体に取り付けられるとともに、前記ベースプレートに前記バルブユニットから排出される洗浄水をボウル部へ導くための導水路を形成したことを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
を前記ベースプレートに装着したことを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
(以下、請求項1および2に記載された発明を本件発明1および2という。)
3.特許異議申立人の理由の概要
特許異議申立人長屋千亜紀は、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出して、
(理由1)本件発明1は、発明の詳細な説明でいわゆる当業者が容易にその実施をすることができる程度に発明の構成及び効果を記載していないから、特許法第36条第3項若しくは第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない。
(理由2)本件発明1は、その出願前に日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明であり、新規性を有しないから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
(理由3)本件発明1は、その出願前日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明に甲第2号証および甲第3号証に記載された出願時の周知・慣用技術を単に組み合わせたに過ぎないものであり、進歩性を有しないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(理由4)本件発明2は、その出願前に日本国内において頒布された甲第4号証に記載された発明に出願時の周知・慣用技術を単に組み合わせたに過ぎないものであり、進歩性を有しないことから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1および2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものであると主張している。
4.特許法第36条違反(理由1)について
異議申立人は、
「請求項1の記載によれば、本件特許発明は、バルブユニット(12)が便器本体(2)に備えられた水洗式便器(1)であり、そのバルブユニット(12)は弁機構(12a、12d)と大気開放弁(12b、12c)とをユニット化したものであることがわかる。また、請求項1の記載によれば、その弁機構(12a、12d)は、洗浄水の供給を制御するものであり、その数は1又は2以上である。実施例では、特許公報第2頁右欄第10〜22行において、止水機能を備えた流量調節弁(12a)と二方向切替弁(12d)とで弁機構を具体化している。しかしながら、弁機構(12a、12d)と大気開放弁(12b、12c)とをユニット化するとはどういうことであろうか。かかる「ユニット」なる用語について、明細書中では何ら定義規定がないため、「unit」の一般的な意義の「一単位とすること」と解釈すると、弁機構(12a、12d)と大気開放弁(12b、12c)とは、各入口及び出口を全く考慮しなくとも、外観上一単位となってしまう。これでは、少なくとも弁機構(12a、12d)が洗浄水の供給を制御し得ないものとなってしまい、請求項1の構成によっても何ら効果を生じ得ないこととなってしまう。このため、その作用・効果Fを考慮すると、そこでは「各弁機構(12a、12d)、大気開放弁(12b、12c)間の配管接続が不要となり、」と記載されていることから、特許権者は、かかる「ユニット」なる用語を「配管を用いずに入口及び出口を接続して外観上-単位とすること」で用いていると考えられる。ところが、こうして善意に解釈するとしても、明細書及び図面には、例えば流量調節弁(12a)の入口を何の出口に接続し、流量調節弁(12a)の出口を何の入口に接続し、二方向切替弁(12d)の入口を何の出口に接続し、二方向切替弁(12d)の出口を何の入口に接続するのかについて、第7図のブロツク構成図に記載があるだけである。かかるブロック構成図からは、これらの入口及び出口を何に接続するかは明らかではあるが、それでは本件特許発明の構成要素「ユニット」を実現できない。どうやって各入口及び出口を接続したらユニットになるかを明らかにしなければならないはずである。さもなければ開示の代償は得られないはずである。」(異議申立書第9頁第2行〜第10頁第1行)と主張している。
しかしながら、訂正された明細書には、
「洗浄給水装置12は、バルブユニット12と制御回路部13から構成している。バルブユニット12は、給水を制御するための各種弁機構と大気開放弁等を一体にしたもので、給水管との接続部および各導水管17,21との嵌合接続部を備える。本実施例のバルブユニット12は、止水機能を備えた流量調節弁12aと、2個の大気開放弁12b,12cと、二方向切換弁12d,および、圧力センサ12eを一体化してユニットとしている。」(本件特許公報第2頁3欄第10〜17行参照)(注:当該箇所は訂正されていない。)、
と記載されており、「弁機構と大気開放弁をユニット化する」ことの意味が明細書中に示されている。
また、「弁機構および大気開放弁をユニット化する」にあたって、各弁機構の入口、出口をどのように接続するかは、「第7図は洗浄給水装置6のブロック構成図である。給水接続官12fから供給される洗浄水は、流量調節弁12aで流量を調節され、二方向切替弁12dで流路を指定され、大気開放弁12b,12cを介してリム給水管17またはジェット給水管21を通り」(本件特許公報第3頁5欄第30〜34行)の記載および第7図を見れば明らかであって、明細書には、本件発明1のバルブユニットの構成が、当業者が容易に実施できる程度に記載されているといえる。
また、明細書には、本件発明1の作用効果が記載されており、異議申立人の上記主張は、採用できない。
5.特許法第29条違反(理由2ないし4)について
5-1.異議申立人が提出した甲第1〜4号証の記載事項
(1)甲第1号証:特開平1-299929号公報
甲第1号証には、「大便器洗浄装置」に関する発明が記載されており、発明の詳細な説明の欄には、第1図を参照して、
「この実施例では、第1図に示すように、給水パイプ11に止水栓12,給水弁13,大気開放弁(バキュームブレーカ)14を直列に配設してなる給水系1を大便器3に接続してある。」(第2頁左上欄第18行〜同頁右上欄第1行)、
と図面とともに記載されている。
(2)甲第2号証:特開昭57-19437号公報
甲第2号証には、「節水トイレット装置」に関する発明が記載されており、
a.「ボールと、ボールの上部へ水洗水を供給する手段と、ボールの底部の排出ポートと、摩滅室と、ボール底部のポートと摩滅室とを接続する導管手段とからなり、前記摩滅室が、排出ポートと、摩滅室内に位置して水圧摩滅を行なう手段と、吸入側が摩滅室側に接続されて流水をボールから摩滅室へ誘導しかつ排出側が廃物パイプに接続されて処理された流水を摩滅室から除去するポンプと、水圧摩滅を行なう手段とポンプとを動作させる手段と、排出ポンプと水洗水を供給する手段との動作を制御して、予め定められた量の水洗水をボールに供給しかつそれと同等量の処理流水を摩滅室から排出する手段とを有することを特徴とする節水トイレット。」(特許請求の範囲)、
b.「節水型トイレットは、基本的には分離可能な2つの構造体10及び12を有し、構造体10はボール14と保持構造体16とを具備し、後者は構造体12を受容するための囲いとして構成され実質的に上記構造体12を隠蔽する。構造体12はシャーシ18を有し、該シャーシにはトイレットの機能部品がもうけられる。トイレットの機能部品は基本的には摩滅タンク20、第7図の摩滅羽根車22、第1図のバルブV、第1図及び第5図のポンプ24、第10図の制御回路C、及び以下に説明される鉛管類を有する。」(第1頁右下欄第15行〜第2頁左上欄第5行)、
c.「第1図から第9図に示されるように、サポーティングスカート16はボールの前部から側面の囲りに設けられており、これに保持されるシャーシ及び構成部品を容易に設置或いは調整や修理のために取りはずすことができるように、後部が開放されている。動作のための構成要素は、前に述べたように、シャーシ18に取り付けられ、該シャーシは孔74-74を有するフランジ72-72を具備する。シャーシが適当なボールの下に囲い込まれれば、シャーシの両側面におけるフランジ72,74が適所にもうけられた開口部76-76をまたぎ、孔70-70と74-74を介して押えボルト78-78によって受けとめられる。従って、動作装置とトイレットボールは互いに適当な位置に確実に結合される。」(第3頁右下欄第11行〜第4頁左上欄第5行)、
d.「パルセータPは、吸入口168と排出口170とを有する直方体室の形状をし、かつその内部に、室内を流れる水の脈動を発生させる複数個の球状ボールを有する。(中略)パルセータは柔軟な導管によってマニホールド32に接続される。カップリング174によってパルセータPがバルブVに接続され、このバルブVはパイプ176を介して適当な水源に接続される。作動時にはバルブVは水源からパルセータに水を供給し、水洗のサイクルが開始された時には、パルセータからジェットポートを経てボールへと水を供給する。(中略)次に動作を説明すると、サイクルは水洗ボタンS1の動作により開始され、同時に水圧羽根モータを駆動するモータと排出ポンプを駆動するモータとを起動する。摩擦室内の流水の水圧摩滅および流布された水流の排出は、水洗水がボールに供給されるまえに始まる。排出ポンプと摩滅羽根が始動した後の定められた時間に、水洗水がボールに定められた量だけ供給される。1回の水洗について好ましい量は2-3クォーツである。しかしながら、水があまり不足しない場所では、より多量の水、例えば5-6クォーツの水を使用してもよく、1回の水洗に14 1/2から28クォーツを必要とする従来のトイレットに比べて、かなり経済的である。水洗水が導入される際には処理された流水が排出されるが、この時両動作は、いかなる時にも処理流水と同じ量だけ水洗水が導入されるように、導入と排出の速度が同期し制御されるように、オーバーラップされる。処理流水の排出が先ず終り、次いで水洗水の導入が終了する。」(第5頁左上欄第17行〜同頁左下欄第14行)、
e.「バルブVには、水圧に応じて所望の量だけボールに供給される水洗水を計測することを可能にするための手動調節制御器180を設ける。」(第5頁右下欄第19行〜第6頁左上欄第1行)、
f.「第15図ないし第21図にトイレットシステムの他の実施例を示すが、図において、システムは基本的に2つの構造200と202とを含み、構造200はボール204と支持構造206を含み、そして構造202は、基本的に摩滅タンク210、動力駆動水圧摩滅手段212(第17図)、動力駆動ポンプ215(第18図)、制御回路C(第13図)および配管類を含むトイレットの動作部品が取り付けられるシャーシ208を含むが、以下に説明する。」(第6頁右上欄第6〜14行)、
g.「トイレットボールに水洗水を供給するための配管はソレノイド制御のバルブであるV1(第15図)を含み、バルブの出口ポート294は柔軟導管224に接続され、かつ入口ポート296は導管298の一端に接続され、導管298の他端はバルブV2を介して清浄水の水源に接続される。このバルブV2はシャットオフバルブである。バイパス導管299の一端がシャットオフバルブV3を介してV1に接続され、かつ他端がカップリング222によってT300に接続され、従ってバルブV1が動作しない場合には、水洗水がシャットオフバルブによってボールへ供給される。」(第7頁右上欄第20行〜同頁左下欄第11行)、
と図面とともに記載されている。
(3)甲第3号証:特開昭61―229036号公報)
甲第3号証には、「衛生洗浄装置におけるバルブユニット構造」に関する発明が記載されており、発明の詳細な説明には、
a.「(従来の技術)局部洗浄のための洗浄温水をノズルから噴出する衛生洗浄装置の水路構成としては、第5図に示されているように、給水部からの一次圧の変化(0.5kg・f/cm2〜7.5kg・f/cm2)に対して二次圧を常に一定(1kg・f/cm2程度以下)に保ち、吐出側の配管を樹脂化する等により簡素化するための減圧弁50、水路の開閉を自動的に行うための電磁弁51、(中略)減圧弁50の動作不良時に吐水側に加わる高水圧を防止するための安全弁55及び水道配管側が内圧より低圧になった場合に逆流が生じないように捨水側の配管を大気開放する逆止弁56等、多数の弁装置の組み合せから成っており、」(第1頁左欄第16行〜同頁右欄第13行)、
b.「衛生洗浄装置におけるバルブユニットは、減圧弁、電磁弁、絞り弁、オリフィス、安全弁及び逆止弁の各弁部を一個の基礎ブロック4に形成すると共に、該基礎ブロック4に構成された底面開放型流水溝を、該基部ブロック4の底面に固着された底板8によりシールして各弁部間を連通する通水路とし、一体化するという手段を講じている。」(第2頁左上欄第8〜15行)、
c.「バルブユニットは、減圧弁部Aの二次側に電磁弁部B、該電磁部Bの二次側に絞り弁Cと安全弁Dとオリフィス24a、該安全弁Dとオリフィス24aの二次側に逆止弁Eを配設したものである。」(第2頁第11〜14行)、
d.「上記逆止弁Eは、弁座20に対して弁盤21を下流側から離接されるようにして成るものであり」(第2頁右下欄第4、5行)、
e.「多数の弁体を基部ブロック4に形成された流水溝によって連通し、該流水溝面に底板を被設することによって連通流路を形成したものであるため、加工が極めて簡単になり、多数の弁装置を組込みユニット化することができたものである。」(第2頁右下欄第20行〜第3頁左上欄第5行)、
f.「衛生洗浄装置に用いる多数のバルブ装置を1個のユニットに組み込むことができ、配管作業を著しく省略することが可能であり、作業性の改善を計ることができる。また、配管が省略され継手部が無いため、配管系全体の信頼性が向上すると共に、装置のコンパクト化が計れる等の特徴を有し、本発明実施後の効果は極めて大きい。」(第3頁左上欄第7〜14行)、
と図面とともに記載されている。
(4)甲第4号証:実願昭58-46941号(実開昭59-156970号)のマイクロフィルム)
甲第4号証には、「衛生洗浄器」に関する考案が記載されており、考案の詳細な説明には、
a.「1は全体にコ字形をした本体で、両端に設けた収納部2,3の一方の収納部2にヒータを内装した温水タンク4を、他方の収納部3に温風機(図示せず)をそれぞれ収納している。」(第2頁第12〜16行)、
b.「かかる本体1は便器8の後部に載置状態にして固定され、しかもこの状態にて便座5は便器8上に載置されるとともにノズル7は便器8内の所定位置に配置されることとなる。」(第3頁第2〜5行)、
c.「第2図、第3図において、13は温水タンク4内に設けたフロートで、上端に作動杆14を一体に設けている。この作動杆14の上端は温水タンク4の蓋15に設けた孔16を貫通して外部に突出するとともにその下端にフロート13の上昇時に孔16を塞ぐラッパ状のパッキン17を取付けている。」(第3頁第11〜17行)、
d.「20は温水タンク4の蓋15の上面に孔16を囲むよう設けた仕切壁で、一部を切欠いて樋22を一連に形成している。23は本体1の内底面に一体に形成した排水溝で、一端を樋22の下方に対応位置し、他端に便器8の内部に対応位置して排水孔24を形成している。」(第4頁第1〜7行)
e.「かかる給水時においてパッキン17が蓋15に密着するまでに若干の水が孔16から溢れ出るが、溢れ出た水は樋22から排水溝23に流下し、導水材25の内部を排水孔24に向かって徐々に流れ、ついには排水孔24から便器8内に流れ落ちる。」(第5頁第4〜9行)、
と図面とともに記載されている。
5-2.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明は本件発明1の構成要件の一部である「洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する1または2以上の弁機構および大気開放弁」という構成を有しておらず、これを示唆する記載も認められない。
つまり、甲第1号証に記載された発明は、本件発明1と同様の「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器」であって、大便器に接続する給水系に1または2以上の弁機構および大気開放弁を配設したものではあるが、給水圧にかかわらず所定の流量に制御する点については何ら示されていない。
甲第2号証に記載された発明は、「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器」ではなく、摩滅室を採用した節水トイレット装置であり、また、水圧に応じてバルブの開口時間を制御して摩滅室から排出した処理流水と同量の水洗水をボールに供給するよう制御するものであって、給水圧にかかわらず所定の流量に制御するものではない。
甲第3号証に記載された発明は、「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器」ではなく、衛生洗浄装置における洗浄水の供給装置であり、また、衛生洗浄装置に備えられた減圧弁について、給水部からの一次圧の変化に対して二次圧を常に一定に保つようにしているものであって、給水圧にかかわらず所定の流量に制御するものではない。
甲第4号証に記載された発明は、衛生洗浄器に関する発明であって、給水圧及び洗浄水の流量等の制御について何ら記載されていない。
そして、本件発明1は上記構成を備えることにより、各弁機構、大気開放弁間の配管接続が不要となり、組立工数が削減されるとともに洗浄給水装置を小形にすることができるという明細書に記載された効果を有するものである。
したがって、本件発明1は、上記甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明のいづれかと同一であるとも、また上記甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものともすることはできない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用して、「前記バルブユニットはベースプレートを介して便器本体に取り付けられるとともに、前記ベースプレートに前記バルブユニットから排出される洗浄水をボウル部へ導くための導水路を形成した」と限定したものであるから、上記限定された事項について検討するまでもなく、上記(1)に記載したと同じ理由により、上記甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明のいづれかと同一であるとも、また上記甲第1号証ないし甲第4号証に記載されたものから当業者が容易に発明できたものともすることはできない。
6.結び
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由および証拠方法によっては、本件発明1および2の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1および2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-06-27 
出願番号 特願平2-52317
審決分類 P 1 652・ 113- Y (E03D)
P 1 652・ 532- Y (E03D)
P 1 652・ 533- Y (E03D)
P 1 652・ 121- Y (E03D)
P 1 652・ 531- Y (E03D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤原 伸二  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 憲子
宮崎 恭
伊波 猛
杉浦 淳
登録日 1998-09-25 
登録番号 特許第2830316号(P2830316)
権利者 東陶機器株式会社
発明の名称 水洗式便器  
代理人 坂口 嘉彦  

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