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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  B23P
審判 全部申し立て 2項進歩性  B23P
管理番号 1035594
異議申立番号 異議2000-70397  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-02-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-24 
確定日 2001-03-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第2942462号「断熱耐火パネルの製造方法と装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2942462号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯・本件特許発明
本件特許第2942462号は、平成6年8月4日に特許出願され、平成11年6月18日に設定登録され、その後、請求項1ないし2に係る特許について申立人日新総合建材株式会社から特許異議の申立てがなされたものであり、当該請求項1ないし2に係る発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1,2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 上下の金属外皮間に複数本の短冊状の無機質芯材を充填させた断熱耐火パネルの製造方法であって、フープ材の上記金属外皮を連続して送り出し、金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部が形成され、その長さ方向を金属外皮の送り方向に沿う方向に長い短冊状の無機質芯材が上下の金属外皮間にひとまとまりにまとめられると共に、これらまとめられた無機質芯材群を斜め前方下方に流下状態で下の金属外皮上で上記芯材保持部間に金属外皮の送り速度よりも速い速度で送り込み、無機質芯材の先端面を先行する無機質芯材の後端面に突き合わせ、上の金属外皮を下の金属外皮に近接させて金属外皮間に無機質芯材を充填することを特徴とする断熱耐火パネルの製造方法。
【請求項2】 上下の金属外皮間に複数本の短冊状の無機質芯材を充填させた断熱耐火パネルの製造装置であって、フープ材の上記金属外皮を連続して送り出す送り出し装置と、金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部を形成する芯材保持部形成手段と、その長さ方向を金属外皮の送り方向に沿う方向に長い短冊状の無機質芯材をひとまとまりにまとめると共に、これらまとめられた無機質芯材群を斜め前方下方に流下状態で下の金属外皮上で上記芯材保持部間に、金属外皮の送り速度よりも速い速度で送り込む送り込みコンベヤと、上の金属外皮を下の金属外皮に近接させて金属外皮間に無機質芯材を充填する成形装置とを備えて成ることを特徴とする断熱耐火パネルの製造装置。」
【2】申立人が主張する取消理由の概要
1.取消理由の1
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である次の甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるべき出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(1)甲第1号証:特開平6-8372号公報
(2)甲第2号証:特開昭48-26880号公報
(3)甲第3号証:独国特許公開明細書第3824842号
(4)甲第4号証:特開昭58-112724号公報
(5)甲第5号証:特開平5-345400号公報
2.取消理由の2
本件特許の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に、「珪酸カルシウムにて形成された硬質の無機質芯材c、cが」(特許公報第5欄第7〜8行)と、また「ロックウール材にて形成された無機質芯材c……を」(特許公報第5欄第15〜16行)と記載されて、同じ符号「c」で表されている物のその構成素材が「珪酸カルシウム」から「ロックウール材」になっており、さらに、「上記ロックウール材の無機質繊維材d」(特許公報第5欄第18〜19行)とその名称が「無機質芯材」から「無機質繊維材」に変わると共にその符号も「d」に変わっており、当業者が容易に理解できないから、願書に添付した明細書の記載に不備があり、本件特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、取り消されるべきものである。
【3】取消理由の1について当審の判断
1.甲各号証に記載された発明
(1)甲第1号証
(い)「【請求項3】二枚の金属製の外皮間に、無機繊維を無機バインダーで結合させた芯材を介装させて成ることを特徴とする断熱耐火パネル。」
(ろ)「【請求項4】無機繊維を一定の方向に沿って無機バインダーで結合させて無機繊維の繊維軸が一定の方向となった無機繊維結合体を繊維軸と直交する方向に沿って分割切断すると共に分割体を結合させて芯材を構成して成ることを特徴とする請求項3記載の断熱耐火パネル。」
(は)「【0008】図3に示す断熱耐火パネルAにあっては、無機繊維4を一定の方向に沿って無機バインダーで結合させて図4(a)に示すように無機繊維4の繊維軸cが一定の方向となった無機繊維結合体8を繊維軸と直交する方向に沿って分割切断すると共に分割体8aを無機バインダーにより結合させて芯材5を構成している。芯材5はその繊維軸cを外皮1、2間の方向に沿わせて介装させることにより接着性を向上させると共に外皮1、2に加わる外力に対して耐抵抗性を確保している。又、図4(b)に示すように芯材5を三層で形成し、上下の層5a、5cの繊維軸を外皮1、2間の方向(厚み方向)に沿わせると共に中間層5bの繊維軸を外皮1、2と並行となるように介装すれば、中間層5bが緩衝効果を奏することになる。又、無機繊維4は白色のもの、例えばセラミックファイバーが内部輻射の関係で耐火性が向上することから好ましい。例えば、図3に示す構成において中間層5bをセラミックファイバーで形成し、強度を確保するために上下の層5a、5cをロックファイバーで形成すればよい。更に、図4(c)に示すように芯材5を二層で形成し、上下の層5a、5bの分割体8aをクロスさせることにより芯材5の厚み方向での繊維軸の連続性を遮断させてより高い断熱性を確保するようにしてもよい。」
(に)「【0009】更に、図5に示すように断熱耐火パネルAの端部の嵌合凸部6と嵌合凹部7は複雑な形状となっているので、例えば軽量押出セメントなどのような無機質材を充填して不燃部9を形成してもよい。この場合、無機質材として、ケイ酸カルシウムを使用すれば、その結晶水により嵌合部での温度上昇を抑えることができ、耐火性を向上させることができる。」
等の記載があり、これらの記載及び図面等を参照すると、
“上下の金属外皮間において、無機質材からなる不燃部9を両端部に有し、該両不燃部間に複数本の短冊状の無機質繊維の分割体8aを結合させた芯材5を有する断熱耐火パネル”
が記載されているものと認める。
(2)甲第2号証
(い)「 上下二枚の金属板を対向させて搬送しながら金属板の両側縁を内方に折返し成形し、次いで両金属板の側面に紙シート、アルミ箔等の薄シートを連続的に覆被せて両金属板の上下両側を2組のコンベアで挾持して搬送すると共に無機質繊維と発泡合成樹脂とを蛇行させながら両金属板間に充填して金属板周囲を恒温維持することを特徴とする難燃性の無機質繊維混入の独立発泡硬質ウレタン部材の製造方法」(第1頁左下欄第13行〜右下欄第2行)
(ろ)「ベイオフリール(12)(12)から巻戻された二枚の金属板(2)(2)は上方の角波成形機(13)および下方のロール(14)に通されて上方の金属板が角波状に成形されるように成され、角波成形機(13)、ロール(14)の後方には端部成形機(9)(9)が配置されて角波成形機(13)、ロール(14)を経た金属板(2)(2)の両側緑(1)(1)を内方に折曲するように成されている。」(第2頁右上欄第9〜15行)
(は)「独立発泡合成樹脂の硬質性に加えて無機質繊維の硬度が加味されて一層硬質なものとなり、併せて難燃で耐熱性、断熱性にも優れたものである。」(第3頁左下欄第17〜20行)
等の記載があり、これらの記載及び図面等を参照すると、
“リール(12)(12)から二枚の金属板を連続的に送り出し、その幅方向の両側縁を折曲げ成形する工程又は装置を有する断熱耐火パネルの製造方法又は製造装置”が記載されているものと認める。
(3)甲第3号証
(い)軽量で断熱性,耐火性のサンドイッチ状の建築ボードは、外側の被覆として2つの板(1,2)とこれらの板間の断熱性の充填材(3)とを有し、この場合全3層はポリウレタンにより接着されている。この建築ボードは30から60分の燃焼抵抗時間、0.59から0.34W/m2Kの熱伝導係数K、50から100mmの厚さを持っている。(第1頁第3〜10行参照)
(ろ)本発明によるこのような建築ボードの連続的な製造方法は、上側の板の層、断熱性充填材の層及び下側の板の層が別々に連続的に供給され、且つ上側の板と断熱性充填材との間と、下側の板と断熱性充填材との間の接着の前に重合により3つの層を接着する二成分系のポリウレタン接着剤を注入する。成形した板として0.5から0.8mmの厚さの亜鉛メッキ鋼板、亜鉛メッキカラー板、アルミ板又は銅板が使用される。断熱性の充填材としてはグラスウールが使用される。(第2頁第18〜26行参照)
(は)建築ボードの製造装置には2枚の成形した板1及び2が相互に平行にサンドイッチの外側の被覆として供給される。板1と2との間で充填材供給装置7から充填材ブロックから繊維に直角に切断された層状の断熱性充填材3が導入個所9に側面から導入される。層の結合の前に、上側の板1と断熱性充填材3の層の間では上の注入源5から、同じく下側の板と断熱性充填材3の層の間では下の注入源4から重合により全3層を接着する二成分系ポリウレタン接着剤が注入される。建築ボードの最終の形状は無端のダブルベルト6により形成され、建築ボードは完全な接着まで膨張領域8中で「熟成」させる。(第2頁第53〜61行参照)
等の趣旨の記載があり、図面を参照すると、隣接する断熱性充填材間に間隔が形成されているものでもないから、隣接する断熱性充填材は、金属外皮の送り速度よりも速い速度で送り込まれ、また、端面が突き合わせ状態にあるものと認められ、甲第3号証には、
“上下の金属外皮間にグラスウールを充填させた断熱及び耐火性建築ボードの製造方法又は製造装置であって、フープ材の上記金属外皮を連続して送り出し、グラスウールが、上下の金属外皮間に斜め前方下方に流下状態で下の金属外皮上で金属外皮の送り速度よりも速い速度で送り込まれ、グラスウールの先端面を先行するグラスウールの後端面に突き合わせ、上の金属外皮を下の金属外皮に近接させて金属外皮間にグラスウールを充填する建築ボードの製造方法又は製造装置。”
が記載されているものと認められる。
(4)甲第4号証
(い)「このように繊維方向を変更された切断片10は、移送コンベア12上を進み、さらに移送コンベア12と略同一高さに接続される搬送手段であるパンコンベア13上に乗り移る。このパンコンベア13のスピードは、移送コンベア8と同程度に、すなわち、移送コンベア12のスピードに比べて若干遅く調整されており、バンコンベア13上に次次と乗り移ってくる切断片10同志を水平方向において圧接集積することができる。」(第3頁左上欄第2〜10行)との記載があり、
(ろ)第4頁の第1図を参照すると、間隙を有して進行して来た切断片10同士が突き合わされ隙間なく整列されることが示されているものと認められる。
(5)甲第5号証
(い)「薄板片(a)が先行の、そして/または後続の薄板片グループと共に薄片マット(C)を形成するように長手方向に変位されてこのグループの個々の薄板片(a)は先行グループの対応する薄板の端面にて押され」 (第2頁第1欄第27〜31行)
(ろ)「薄板片の端は好ましくは直線状横断以外の形状となっており、このような端は互いに他の端と固定され結果的に一層強い接合部となる。」(第3頁第4欄第17〜20行)
等の記載があり、
(は)更に、第2図及びこれに関する記載から、その長さ方向がコンベヤベルト9の送り方向に沿う方向に長い短冊状の無機質芯材をひとまとまりにまとめる工程を備えると認められる。
2.対比・判断
2-1.請求項1に係る発明について
(1)本件請求項1に係る発明は、前記「【1】手続の経緯・本件特許発明」に説示のとおりのものと認められるところ、その構成要件「芯材保持部」について、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に「そして、無機質材e・・をまとめて装填するのに、このような無機質材e・・が装填されるのを保持する芯材保持部1bは、下の金属外皮bの両端部の端部保持片1,1とこれに沿って予め装填されている無機質繊維材d,dにて構成されるものである。このように、装填される無機質繊維材d・・を保持する構成を芯材保持部1bと総称する。また、端部保持片1を折り曲げ装置3にて折り曲げ、端部保持片1に沿って無機質材eを装填して芯材保持部1bを構成する構成を芯材保持部形成手段と総称する。」(段落[0017])との記載があり、そして、下の金属外皮bの両端部の端部保持片1,1に沿って予め装填されるものは、発明の詳細な説明の記載の全趣旨及び図面の記載から、「無機質材e」であり、「無機質材e」間にまとめて装填されるものは「無機質繊維材d」であることが明白であることを考慮すると、上記引用記載中の「そして、無機質材e・・をまとめて装填するのに、このような無機質材e・・が装填されるのを保持する芯材保持部1bは、下の金属外皮bの両端部の端部保持片1,1とこれに沿って予め装填されている無機質繊維材d,d」との記載は、「そして、無機質繊維材d・・をまとめて装填するのに、このような無機質繊維材d・・が装填されるのを保持する芯材保持部1bは、下の金属外皮bの両端部の端部保持片1,1とこれに沿って予め装填されている無機質材e,e」の誤記と認められるものの、本件請求項1の「芯材保持部が形成され、」とは、「端部保持片1が折り曲げ形成され、該端部保持片1に沿って無機質材eが装填される」ことを意味するものと認められる。
(2)そこで、まず、本件請求項1に係る発明と、上記甲1号証に記載されたものとを対比すると、甲第1号証に記載されたものは、前記「【3】取消理由の1」の「1.甲各号証に記載された発明」の「(1)甲第1号証 」に摘示のとおり“上下の金属外皮間において、無機質材からなる不燃部9を両端部に有し、該両不燃部間に複数本の短冊状の無機質繊維の分割体8aを結合させた芯材5を有する断熱耐火パネル”が記載されているのみで、その製造方法に係る記載はなく、特に、製造時の金属板の送り方向と不燃部9の位置との関係、および不燃部9の形成工程と複数本の短冊状の無機質芯材を充填する工程との前後関係を開示あるいは示唆するものではないから、甲第1号証に記載されたものは、本件請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項である
a.「フープ材の上記金属外皮を連続して送り出し、金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部が形成され」る工程
b.「その長さ方向を金属外皮の送り方向に沿う方向に長い短冊状の無機質芯材が上下の金属外皮間にひとまとまりにまとめられると共に、これらまとめられた無機質芯材群を斜め前方下方に流下状態で下の金属外皮上で上記芯材保持部間に金属外皮の送り速度よりも速い速度で送り込み、無機質芯材の先端面を先行する無機質芯材の後端面に突き合わせ」る工程
c.「上の金属外皮を下の金属外皮に近接させて金属外皮間に無機質芯材を充填する」工程
を備えていない。
(3) 次に、本件請求項1に係る発明と、上記甲2号証に記載されたものとを対比すると、甲第2号証に記載されたものは、「フープ材の金属外皮を連続して送り出し、金属外皮の幅方向の両端部を折り曲げる」工程は備えるものの、端部保持片1に沿って無機質材eを装填する工程を備えるものではないから、本件請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項である
a.「金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部が形成され」る工程
b.「その長さ方向を金属外皮の送り方向に沿う方向に長い短冊状の無機質芯材が上下の金属外皮間にひとまとまりにまとめられると共に、これらまとめられた無機質芯材群を斜め前方下方に流下状態で下の金属外皮上で上記芯材保持部間に金属外皮の送り速度よりも速い速度で送り込み、無機質芯材の先端面を先行する無機質芯材の後端面に突き合わせ」る工程
c.「上の金属外皮を下の金属外皮に近接させて金属外皮間に無機質芯材を充填する」工程
を備えていない。
(4) 次に、本件請求項1に係る発明と、上記甲3号証に記載されたものとを対比すると、甲第3号証に記載されたものは、本件請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項である
a.「金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部が形成され」る工程
b.「その長さ方向を金属外皮の送り方向に沿う方向に長い短冊状の」無機質芯材が上下の金属外皮間にひとまとまりにまとめられる工程
c.これらまとめられた無機質芯材群を「上記芯材保持部間に」送り込む工程
を備えていない。
(5) 次に、本件請求項1に係る発明と、上記甲4号証に記載されたものとを対比すると、甲第4号証に記載されたものは、本件請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項である
a.「金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部が形成され」る工程
b.「その長さ方向を金属外皮の送り方向に沿う方向に長い短冊状の無機質芯材が上下の金属外皮間にひとまとまりにまとめられると共に、これらまとめられた無機質芯材群を斜め前方下方に流下状態で下の金属外皮上で上記芯材保持部間に金属外皮の送り速度よりも速い速度で送り込」む工程
c.「上の金属外皮を下の金属外皮に近接させて金属外皮間に無機質芯材を充填する」工程
を備えず、また、製造されるものが「上下の金属外皮間に」無機質芯材を充填させたものでない。
(6) 次に、本件請求項1に係る発明と、上記甲5号証に記載されたものとを対比すると、甲第5号証に記載されたものは、その長さ方向がコンベヤベルト9の送り方向に沿う方向に長い短冊状の無機質芯材をひとまとまりにまとめる工程を備えると認められるものの、その工程は「上下の金属外皮間」において行われるものではないから、本件請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項である
a.「フープ材の上記金属外皮を連続して送り出し、金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部が形成され」る工程
b.その長さ方向を金属外皮の送り方向に沿う方向に長い短冊状の無機質芯材が「上下の金属外皮間」にひとまとまりにまとめられると共に、これらまとめられた無機質芯材群を「斜め前方下方に流下状態で下の金属外皮上で上記芯材保持部間に金属外皮の送り速度よりも速い速度で送り込」む工程
を備えていない。
(7)以上のとおり、「金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部が形成され、その長さ方向を金属外皮の送り方向に沿う方向に長い短冊状の無機質芯材が上下の金属外皮間にひとまとまりにまとめられ」、これらまとめられた無機質芯材群を「上記芯材保持部間に」送り込む点は、甲第1〜5号証のいずれにも記載されていない。
そして、この点が本件特許の出願前周知の事項であるとする証拠も提出されていない。
(8)また、甲第2号証に記載されたものは、フープ材の金属外皮を連続して送り出し、金属外皮の幅方向の両端部を折り曲げる工程は備えるものの、端部保持片に沿って無機質材を装填する工程を備えるものではなく、甲第1号証に記載されたものは、製造時の金属板の送り方向と不燃部9の位置との関係、および不燃部9の形成工程と複数本の短冊状の無機質芯材を充填する工程との前後関係を開示あるいは示唆するものではないから、甲第1号証に記載された物を甲第2号証に記載された方法によって製造しようとしても、上記「『金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部が形成され、その長さ方向を金属外皮の送り方向に沿う方向に長い短冊状の無機質芯材が上下の金属外皮間にひとまとまりにまとめられ』、これらまとめられた無機質芯材群を『上記芯材保持部間に』送り込む」点が直ちに得られるものではなく、また、甲第3〜5号証に記載されたものは、いずれも金属外皮の幅方向の両端部に折り曲げ部すら形成しないものであるから、この点は、甲第1〜5号証に記載されたものに基づいて当業者が容易に構成し得たものとすることはできない。
2-2.請求項2に係る発明について
(1)願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、「端部保持片1を折り曲げ装置3にて折り曲げ、端部保持片1に沿って無機質材eを装填して芯材保持部1bを構成する構成を芯材保持部形成手段と総称する。」(段落[0017])との記載があり、本件請求項2の「金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部を形成する芯材保持部形成手段」とは、「金属外皮の幅方向の両端部に、端部保持片1を折り曲げ装置3にて折り曲げ、端部保持片1に沿って無機質材eを装填して芯材保持部1bを構成する手段」を意味するものと認められる。
(2)そこで、本件請求項2に係る発明と、上記甲各号証に記載されたものとを対比すると、
「金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部を形成する芯材保持部形成手段」および「まとめられた無機質芯材群を上記芯材保持部間に送り込む送り込むコンベヤ」は、上記甲第1〜5号証のいずれにも記載されておらず、また、この「金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部を形成する芯材保持部形成手段」および「まとめられた無機質芯材群を上記芯材保持部間に送り込む送り込むコンベヤ」が、本件特許の出願前周知の事項であるとする証拠も提出されていない。
(3)また、甲第2号証に記載されたものは、フープ材の金属外皮を連続して送り出し、金属外皮の幅方向の両端部を折り曲げる手段は備えるものの、この折り曲げられた部分に限って、これに沿って無機質材を装填する手段を備えるものではなく、甲第1号証に記載されたものは、製造時の金属板の送り方向と不燃部9の位置との関係、および不燃部9の形成手段と複数本の短冊状の無機質芯材を充填する手段との関係を開示あるいは示唆するものではないから、甲第1号証に記載された物を甲第2号証に記載された装置によって製造しようとしても、上記「金属外皮の幅方向の両端部に芯材保持部を形成する芯材保持部形成手段」および「まとめられた無機質芯材群を上記芯材保持部間に送り込む送り込むコンベヤ」が直ちに得られるものではなく、また、甲第3〜5号証に記載されたものは、いずれも金属外皮の幅方向の両端部に折り曲げ部すら形成しないものであるから、この構成は、甲第1〜5号証に記載されたものに基づいて当業者が容易に構成し得たものとすることはできない。
【4】取消理由の2について当審の判断
1.明細書の記載
申立人が明細書の記載不備を主張する個所を含む段落[0009],[0010]には、「【0009】下の金属外皮bの搬送途中には、二箇所にわたって折り曲げ装置3,3が配備され、これら折り曲げ装置3,3にて後述する芯材を保持する芯材保持用の端部保持片1,1がロール成形される。この端部保持片1はパネルの接続のためのパネル接続片1aになるものである。その成形形状は、図3(a)(b)に示す。これらの折り曲げ装置3,3の下流側に接着剤の部分塗布装置10が配設され、この部分塗布装置10にて下の金属外皮bのパネルの幅方向の両端部に接着剤が部分的に塗布される。部分塗布装置10の下流側には、パネルの幅方向の両端部に挿入部21が配設され、挿入部21において、珪酸カルシウムにて形成された硬質の無機質芯材c,cが挿入されるようにしてある。しかして、部分塗布装置10にて接着剤が下の金属外皮bの幅方向の両端部に塗布され、その塗布箇所に金属外皮bの送り方向に長い短冊状の珪酸カルシウムの無機質芯材c,cが装填され、接着することができるようにしてある。」及び「【0010】珪酸カルシウムの挿入部21の後方には装填装置4が配設され、パネルの幅方向の両端部の珪酸カルシウムの無機質芯材cの間にロックウール材にて形成された無機質芯材c・・を装填させることができるようにしてある。ところで、無機質芯材cは、パネルの幅方向の中央部に配される上記ロックウール材の無機質繊維材dと、パネルの幅方向の両端部に配される上記珪酸カルシウムの無機質材eとから構成されるものである。このようなロックウールの無機質繊維材d・・を珪酸カルシウムの無機質材e,e間に装填させる装填装置4は、無機質繊維材dの繊維方向をパネルの厚さ方向に設定して金属外皮a,b間に装填させるものであり、以下その構成を詳述する。」と記載されているものと認める。
2.明細書の記載から認定できる事項
上記明細書の記載から、符号「c」,「d」,「e」を付した表現を抽出すると、「珪酸カルシウムにて形成された硬質の無機質芯材c」、「珪酸カルシウムの無機質芯材c」、「ロックウール材にて形成された無機質芯材c」、「無機質芯材c」、「ロックウール材の無機質繊維材d」、「珪酸カルシウムの無機質材e」、「ロックウールの無機質繊維材d」、「無機質繊維材d」とあり、「無機質芯材」に対して符号「c」を、「無機質繊維材」に対して符号「d」を、「無機質材」に対して符号「e」をそれぞれ付していることは、これらの表現から明らかであり、また、「無機質芯材c」に「無機質繊維材d」と「無機質材e」が含まれることは、本件発明によって製造される「断熱耐火パネル」の構成を示す明細書及び図面の記載から明白である。
3.特許法第36条第4項の要件違反の有無
「無機質芯材c」に「無機質繊維材d」と「無機質材e」が含まれることを考慮すると、特許異議申立人が指摘する明細書の不備は認められない。
【5】むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人が主張する理由および提出した証拠によっては、本件請求項1ないし2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-02-20 
出願番号 特願平6-183713
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B23P)
P 1 651・ 531- Y (B23P)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ぬで島 慎二  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 大島 祥吾
鈴木 久雄
登録日 1999-06-18 
登録番号 特許第2942462号(P2942462)
権利者 大同鋼板株式会社
発明の名称 断熱耐火パネルの製造方法と装置  
代理人 森 厚夫  
代理人 西川 惠清  
代理人 野間 忠之  

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