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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する E03D
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する E03D
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する E03D
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する E03D
管理番号 1038430
審判番号 訂正2000-39090  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-11-12 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2000-08-10 
確定日 2000-10-31 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2830316号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2830316号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続きの経緯
特許第2830316号に係る発明についての出願は、平成2年3月2日に特許出願され、平成10年9月25日にその特許の設定登録がなされ、平成11年6月2日に特許異議申立がなされ、平成12年6月27日付けで異議の決定がなされたものである。
2.審判請求の要旨
本件審判請求の要旨は、本件特許第2830316号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを求めるものである。
その訂正内容は、次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1中の「洗浄水の給水を制御する」の前に、明りょうでない記載の釈明を目的として、「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、」を加入し、特許請求の範囲の請求項1中の「洗浄水の供給を制御する」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する」と訂正する。
(2)訂正事項2
訂正事項1に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるために、明細書第3頁11行(特許公報第3欄第19行)に記載した「1または2以上の弁機構」の前に、「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する」を加入する。
(3)訂正事項3
訂正事項1に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるために、明細書第12頁3行乃至7行(特許公報第6欄第21行乃至第25行)に記載した「1または2以上の弁機構および大気開放弁をユニット化してバルブユニットとしたので、各弁機構、大気開放弁間の配管接続が不要となり、組立工数が削減されるとともに洗浄給水装置を小型にすることができる。」を「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する1または2以上の弁機構および大気開放弁をユニット化してバルブユニットとしたので、各弁機構、大気開放弁間の配管接続が不要となり、組立工数が削減されるとともに洗浄給水装置を小形にし便器本体にすることができる。」に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書第7頁第6行(特許公報第4欄第38行)の「ジェットノズル19」を、誤記の訂正を目的として「ジェットノズル18」と訂正する。
3.当審の判断
3-1 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項1の前段は、「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、」を加入することによって、本件特許請求の範囲の請求項1に記載された「水洗式便器」を定義付けして広義の水洗式便器と区別して明りょう化したものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件訂正明細書の請求項1に係る発明の水洗便器は明細書全体の記載から見てサイホン(ゼット)式の水洗便器であり、建設省の外郭団体である財団法人ベターリビングが制定する衛生器具の認定基準、性能試験方法、評価項目一覧によって、代用汚物と試験用紙が横引長さが10mである試験用排水管路路外へ完全に搬送されることが、便器の洗浄・排出・搬送機能試験で要求される水洗便器(サイホン便器等)の性能として記載されていることを考慮すれば、上記定義付けは当業者の常識とするところである。
したがって、上記訂正事項1の前段は、当業者の常識に沿ってなされたものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項を逸脱するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項1の後段は、「洗浄水の供給を制御する」を「前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する」と限定したものであって、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に相当するものである。そして、明細書第10頁9行乃至12行(特許公報第5欄第41行乃至44行)に「また、制御回路部13は、圧力センサ12eからの給水圧力信号に基づいて流量調節弁12aの開度を調節して給水圧力にかかわらず所定の流量が得られるように制御している。」と記載されており、上記訂正事項1の後段は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)上記訂正事項2、3は、訂正事項1に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させたものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する不明りょうな記載の釈明に相当するものである。
そして、上記訂正事項2、3は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正かもしくは当業者の常識に沿ってなされたものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項を逸脱するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4は、ジェットノズル18と記載すべきところを、誤ってジェットノズル19と記載したことに鑑み、当該誤記を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第2号に規定する誤記の訂正に相当するものである。
そして、上記訂正事項4は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないから、特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
3-2 独立特許要件
3-2-1 本件訂正発明
本件訂正明細書の請求項1ないし3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである(以下、請求項1ないし3に記載された発明を本件訂正発明1ないし3という)。
「(1)洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する1または2以上の弁機構および大気開放弁をユニット化したバルブユニットを便器本体に備えたことを特徴とする水洗式便器。
(2)前記バルブユニットはベースプレートを介して便器本体に取り付けられるとともに、前記ベースプレートに前記バルブユニットから排出される洗浄水をボウル部へ導くための導水路を形成したことを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
(3)便器本体に前記ベースプレートを取り付け、このベースプレートに導水管の流入側端部を固定し、給水管への接続部と前記導水管の流入側端部との嵌合接続部を有するバルブユニットを前記ベースプレートに装着したことを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。」
3-2-2 引用刊行物記載の発明
(1)刊行物1:特開平1-299929号公報
刊行物1には、「大便器洗浄装置」に関する発明が記載されており、発明の詳細な説明の欄には、第1図を参照して、
「この実施例では、第1図に示すように、給水パイプ11に止水栓12,給水弁13,大気開放弁(バキュームブレーカ)14を直列に配設してなる給水系1を大便器3に接続してある。」(第2頁左上欄第18行〜同頁右上欄第1行)、
と記載されている。
(2)刊行物2:特開昭57-19437号公報
刊行物2には、「節水トイレット装置」に関する発明が記載されており、
a.「ボールと、ボールの上部へ水洗水を供給する手段と、ボールの底部の排出ポートと、摩滅室と、ボール底部のポートと摩滅室とを接続する導管手段とからなり、前記摩滅室が、排出ポートと、摩滅室内に位置して水圧摩滅を行なう手段と、吸入側が摩滅室側に接続されて流水をボールから摩滅室へ誘導しかつ排出側が廃物パイプに接続されて処理された流水を摩滅室から除去するポンプと、水圧摩滅を行なう手段とポンプとを動作させる手段と、排出ポンプと水洗水を供給する手段との動作を制御して、予め定められた量の水洗水をボールに供給しかつそれと同等量の処理流水を摩滅室から排出する手段とを有することを特徴とする節水トイレット。」(特許請求の範囲)、
b.「節水型トイレットは、基本的には分離可能な2つの構造体10及び12を有し、構造体10はボール14と保持構造体16とを具備し、後者は構造体12を受容するための囲いとして構成され実質的に上記構造体12を隠蔽する。構造体12はシャーシ18を有し、該シャーシにはトイレットの機能部品がもうけられる。トイレットの機能部品は基本的には摩滅タンク20、第7図の摩滅羽根車22、第1図のバルブV、第1図及び第5図のポンプ24、第10図の制御回路C、及び以下に説明される鉛管類を有する。」(第1頁右下欄第15行〜第2頁左上欄第5行)、
c.「第1図から第9図に示されるように、サポーティングスカート16はボールの前部から側面の囲りに設けられており、これに保持されるシャーシ及び構成部品を容易に設置或いは調整や修理のために取りはずすことができるように、後部が開放されている。動作のための構成要素は、前に述べたように、シャーシ18に取り付けられ、該シャーシは孔74-74を有するフランジ72-72を具備する。シャーシが適当なボールの下に囲い込まれれば、シャーシの両側面におけるフランジ72,74が適所にもうけられた開口部76-76をまたぎ、孔70-70と74-74を介して押えボルト78-78によって受けとめられる。従って、動作装置とトイレットボールは互いに適当な位置に確実に結合される。」(第3頁右下欄第11行〜第4頁左上欄第5行)、
d.「パルセータPは、吸入口168と排出口170とを有する直方体室の形状をし、かつその内部に、室内を流れる水の脈動を発生させる複数個の球状ボールを有する。(中略)パルセータは柔軟な導管によってマニホールド32に接続される。カップリング174によってパルセータPがバルブVに接続され、このバルブVはパイプ176を介して適当な水源に接続される。作動時にはバルブVは水源からパルセータに水を供給し、水洗のサイクルが開始された時には、パルセータからジェットポートを経てボールへと水を供給する。(中略)次に動作を説明すると、サイクルは水洗ボタンS1の動作により開始され、同時に水圧羽根モータを駆動するモータと排出ポンプを駆動するモータとを起動する。摩擦室内の流水の水圧摩滅および流布された水流の排出は、水洗水がボールに供給されるまえに始まる。排出ポンプと摩滅羽根が始動した後の定められた時間に、水洗水がボールに定められた量だけ供給される。1回の水洗について好ましい量は2-3クォーツである。しかしながら、水があまり不足しない場所では、より多量の水、例えば5-6クォーツの水を使用してもよく、1回の水洗に14 1/2から28クォーツを必要とする従来のトイレットに比べて、かなり経済的である。水洗水が導入される際には処理された流水が排出されるが、この時両動作は、いかなる時にも処理流水と同じ量だけ水洗水が導入されるように、導入と排出の速度が同期し制御されるように、オーバーラップされる。処理流水の排出が先ず終り、次いで水洗水の導入が終了する。」(第5頁左上欄第17行〜同頁左下欄第14行)、
e.「バルブVには、水圧に応じて所望の量だけボールに供給される水洗水を計測することを可能にするための手動調節制御器180を設ける。」(第5頁右下欄第19行〜第6頁左上欄第1行)と記載されている。
(3)刊行物3:特開昭61―229036号公報)
刊行物3には、「衛生洗浄装置におけるバルブユニット構造」に関する発明が記載されており、発明の詳細な説明には、
a.「(従来の技術)局部洗浄のための洗浄温水をノズルから噴出する衛生洗浄装置の水路構成としては、第5図に示されているように、給水部からの一次圧の変化(0.5kg・f/cm2〜7.5kg・f/cm2)に対して二次圧を常に一定(1kg・f/cm2程度以下)に保ち、吐出側の配管を樹脂化する等により簡素化するための減圧弁50、水路の開閉を自動的に行うための電磁弁51、(中略)減圧弁50の動作不良時に吐水側に加わる高水圧を防止するための安全弁55及び水道配管側が内圧より低圧になった場合に逆流が生じないように捨水側の配管を大気開放する逆止弁56等、多数の弁装置の組み合せから成っており、」(第1頁左欄第16行〜同頁右欄第13行)、
b.「衛生洗浄装置におけるバルブユニットは、減圧弁、電磁弁、絞り弁、オリフィス、安全弁及び逆止弁の各弁部を一個の基礎ブロック4に形成すると共に、該基礎ブロック4に構成された底面開放型流水溝を、該基部ブロック4の底面に固着された底板8によりシールして各弁部間を連通する通水路とし、一体化するという手段を講じている。」(第2頁左上欄第8〜15行)、
c.「多数の弁体を基部ブロック4に形成された流水溝によって連通し、該流水溝面に底板を被設することによって連通流路を形成したものであるため、加工が極めて簡単になり、多数の弁装置を組込みユニット化することができたものである。」(第2頁右下欄第20行〜第3頁左上欄第5行)、
d.「衛生洗浄装置に用いる多数のバルブ装置を1個のユニットに組み込むことができ、配管作業を著しく省略することが可能であり、作業性の改善を計ることができる。また、配管が省略され継手部が無いため、配管系全体の信頼性が向上すると共に、装置のコンパクト化が計れる等の特徴を有し、本発明実施後の効果は極めて大きい。」(第3頁左上欄第7〜14行)
と記載されている。
(4)刊行物4:実願昭58-46941号(実開昭59-156970号)のマイクロフィルム)
刊行物4には、「衛生洗浄器」に関する考案が記載されており、考案の詳細な説明には、
a.「1は全体にコ字形をした本体で、両端に設けた収納部2,3の一方の収納部2にヒータを内装した温水タンク4を、他方の収納部3に温風機(図示せず)をそれぞれ収納している。」(第2頁第12〜16行)、
b.「かかる本体1は便器8の後部に載置状態にして固定され、しかもこの状態にて便座5は便器8上に載置されるとともにノズル7は便器8内の所定位置に配置されることとなる。」(第3頁第2〜5行)、
c.「第2図、第3図において、13は温水タンク4内に設けたフロートで、上端に作動杆14を一体に設けている。この作動杆14の上端は温水タンク4の蓋15に設けた孔16を貫通して外部に突出するとともにその下端にフロート13の上昇時に孔16を塞ぐラッパ状のパッキン17を取付けている。」(第3頁第11〜17行)、
d.「23は本体1の内底面に一体に形成した排水溝で、一端を樋22の下方に対応位置し、他端に便器8の内部に対応位置して排水孔24を形成している。」(第4頁第4〜7行)
e.「かかる給水時においてパッキン17が蓋15に密着するまでに若干の水が孔16から溢れ出るが、溢れ出た水は樋22から排水溝23に流下し、導水材25の内部を排水孔24に向かって徐々に流れ、ついには排水孔24から便器8内に流れ落ちる。」(第5頁第4〜9行)、
という記載がある。
3-2-3 対比・判断
(1)本件訂正発明1と、刊行物1ないし4に記載された発明とを対比すると、刊行物1ないし4に記載された発明は本件訂正発明1の構成要件の一部である「洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する1または2以上の弁機構および大気開放弁」という構成を有しておらず、これを示唆する記載も認められない。
つまり、刊行物1に記載された発明は、本件訂正発明1と同様の「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器」であって、大便器に接続する給水系に1または2以上の弁機構および大気開放弁を配設したものではあるが、給水圧にかかわらず所定の流量に制御する点については何ら示されていない。
刊行物2に記載された発明は、「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器」ではなく、摩滅室を採用した節水トイレット装置であり、また、水圧に応じてバルブの開口時間を制御して摩滅室から排出した処理流水と同量の水洗水をボールに供給するよう制御するものであって、給水圧にかかわらず所定の流量に制御するものではない。
刊行物3に記載された発明は、「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器」ではなく、衛生洗浄装置における洗浄水の供給装置であり、また、衛生洗浄装置に備えられた減圧弁について、給水部からの一次圧の変化に対して二次圧を常に一定に保つようにしているものであって、給水圧にかかわらず所定の流量に制御するものではない。
刊行物4に記載された発明は、衛生洗浄器に関する発明であって、給水圧及び洗浄水の流量等の制御について何ら記載されていない。
そして、本件訂正発明1は上記構成を備えることにより、各弁機構、大気開放弁間の配管接続が不要となり、組立工数が削減されるとともに洗浄給水装置を小形にすることができるという明細書に記載された効果を有するものである。
したがって、本件訂正発明1は、上記刊行物1ないし4に記載されたものから当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用して、バルブユニットはベースプレートを介して便器本体に取り付けられるとともに、前記ベースプレートに前記バルブユニットから排出される洗浄水をボウル部へ導くための導水路を形成したと限定したものであるから、上記限定された事項について検討するまでもなく、上記上記(1)と同様の理由により、上記刊行物1ないし4に記載されたものから当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
(3)本件訂正発明3について
本件訂正発明3は、本件訂正発明1を引用して、便器本体に前記ベースプレートを取り付け、このベースプレートに導水管の流入側端部を固定し、給水管への接続部と前記導水管の流入側端部との嵌合接続部を有するバルブユニットを前記ベースプレートに装着したと限定したものであるから、上記限定された事項について検討するまでもなく、上記(1)と同様の理由により、上記刊行物1ないし4に記載されたものから当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
3-3 まとめ
したがって、本件訂正発明1ないし3は、特許出願の際、独立して特許を受けることができない発明でもないから、特許法第126条第4項の規定に適合するものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ないし第4項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
水洗式便器
(57)【特許請求の範囲】
(1)洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する1または2以上の弁機構および大気開放弁をユニット化したバルブユニットを便器本体に備えたことを特徴とする水洗式便器。
(2)前記バルブユニットはベースプレートを介して便器本体に取り付けられるとともに、前記ベースプレートに前記バルブユニットから排出される洗浄水をボウル部へ導くための導水路を形成したことを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
(3)便器本体に前記ベースプレートを取り付け、このベースプレートに導水管の流入側端部を固定し、給水管への接続部と前記導水管の流入側端部との嵌合接続部を有するバルブユニットを前記ベースプレートに装着したことを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
この発明は便器本体内部に洗浄給水装置を収納した水洗式便器に関する。
(従来の技術)
第10図は洗浄給水装置を内蔵した従来の水洗式便器の縦断面図である。
従来の水洗式便器100は、便器本体101の後部上方に設けたボックス102内に、ボウル部への給水を行なう弁機構103と、ジェットノズル104を介してトラップ排水路105内へ噴射させる洗浄水の給水を制御する弁機構106および大気開放弁107を設け、これらを相互に配管接続して洗浄給水装置を構成している。なお、第10図中の108は各弁機構103,106の開閉駆動を行う給水制御部、109は給水制御部108へ洗浄起動信号を与えるための操作部である。
(発明が解決しようとする課題)
このように従来の水洗式便器は、洗浄給水装置を構成する各弁機構103,106ならびに大気開放弁107との間を個々に配管接続しているので、組立に工数がかかる。また、配管の取りまわし等のスペースが必要であるため、洗浄給水装置を小形にすることが困難である。このため、第10図に示したように便器本体101の後部上方にボックス102を設けたり、もしくは便器本体の後部側方にボックス部を設けたり等して、洗浄給水装置を収容するため、便器が大形となる。また、大気開放弁107からは洗浄水が漏れるので、そのための対策が必要である。
この発明はこのような課題を解決するためなされたもので、その目的は洗浄給水装置の小形化をはかるとともに、組立ならびに保守点検性に優れた水洗式便器を提供することにある。
(課題を解決するための手段)
前記課題を解決するためこの発明に係る水洗式便器は、洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する1または2以上の弁機構と大気開放弁とを一体化したバルブユニットを便器本体に備えたことを特徴とする。
なお、このバルブユニットは、ベースプレートを介して便器本体に取り付けられるとともに、このベースプレートにはバルブユニットから排出される洗浄水をボウル部へ導くための導水路を形成してもよい。また、この発明に係る水洗式便器は、便器本体にベースプレートを取り付け、このベースプレートに導水管の流入側端部を固定し、給水管への接続部と導水管の流入側端部との嵌合接続部を有するバルブユニットをベースプレートに装着してもよい。
(作用)
各弁機構ならびに大気開放弁との間の配管接続が不要となり、同一機能部分を小形に構成できる。
バルブユニットから排出された洗浄水はベースプレートに形成した導水路によりボウル部へ排出される。また、ベースプレートに洗浄水供給管の流入側端部を固定し、バルブユニットを装着することにより、バルブユニットと洗浄水供給管との接続がなされる。
(実施例)
以下、この発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
第1図は、この発明に係る水洗式便器の縦断面図、第2図は同便器のカバー、便蓋および便座を取り外した状態の平面図、第3図は第1図のIII-III線断面図である。
水洗式便器1は、陶器製の便器本体2と、合成樹脂製等の便器3および便蓋4ならびに合成樹脂製等のカバー5を備えるとともに、内部に洗浄給水装置6を備える。
便器本体2は、隔壁7で区画されたボウル部8とトラップ排水路9を有し、トラップ排水路9の上方、すなわち、便器本体2の後部上面に開口10を形成している。
トラップ排水路9は、ボウル部8の底部に開設した流入口9aと、便器本体2の後部底面に開設した流出口9bとを略逆U字状に曲折して連絡している。そして、トラップ排水路9の曲折部9cの上方ならびに側方に、洗浄給水装置6をベースプレート11を介して便器本体2に取り付け、便器本体2の開口10および洗浄給水装置6をカバー5で覆っている。このカバー5は、その上面が便蓋4の上面と略同一面になるよう形成している。
洗浄給水装置6は、バルブユニット12と制御回路部13から構成している。バルブユニット12は、給水を制御するための各種弁機構と大気開放弁等を一体にしたもので、給水管との接続部および各導水管17、21との嵌合接続部を備える。本実施例のバルブユニット12は、止水機能を備えた流量調節弁12aと、2個の大気開放弁12b,12cと、二方向切替弁12d、および、圧力センサ12eを一体化してユニットとしている。また、このバルブユニット12は、給水接続管12fを備えるとともに、リム用導水管17との嵌合接続部12gおよびジェット用導水管21との嵌合接続部12hを備える。給水接続管12fは、その先端が便器1の後部より外方へ突出するよう形成され、ベースプレート11に起設された給水接続支持部11aで固定される。
ボウル部8の上端周縁のリム部14には、リム通水路15をボウル部8の内方へ突出するよう環状に形成し、このリム通水路15の底面にリム射水路16…を適宜間隔毎に、ボウル部8に対して斜めに開設している。リム通水路15は、リム用導水管17を介してバルブユニット12のリム用の嵌合接続部12gへ接続している。なお、本実施例では、バルブユニット12を上方から装着できるよう、各嵌合接続部12g,12hをバルブユニット12の下側に設けている。このためリム用導水管17は略U字状に曲折させて、リム用導水管17の流入側端部が略垂直向きになるよう形成している。
ボウル部8の底部に、ジェットノズル18をその噴射孔18aがトラップ排水路9の堰曲折部9cを指向して取着する。このジェットノズル18は、ボウル部8の内面側から挿入され、ボウル部8の底部側から固定用ナット19で締付固定する。ジェットノズル18と取付用孔との間にはパッキン20を設けている。ジェットノズル18に、ジェット用導水管21の一端を袋ナット22を介して接続し、他端はバルブユニット12のジェット用嵌合接続部12hへ接続する。
第3図に示すように、ベースプレート11には、下方へ略コ字状に突出させた導水管固定部11bを形成している。そして、第4図および第5図に示すようにこの給水管固定部11bに設けた導水管取付孔11cにリム用導水管17、ジェット用導水管21の先端を下方から挿入し、平面視C型のスナップリング23を用いて各導水管17,21を固定する。各導水管17,21には上下2個所に拡径段部24a,24bが形成されており、その間にガタ止め用リング25が設けられている。また、各導水管17,21の先端部にはシールリング26が装着されている。
そして、第6図の分解斜視図に示すように、ベースプレート11にリム用導水管17およびジェット用導水管21を前述の方法で固定した後、上方からバルブユニット12をリム用およびジェット用嵌合接続部12g,12hがリムおよびジェット用導水管17,21と嵌合するよう装着して固定する。
なお、ベースプレート11にはボルト等の締結部材の径よりも比較的大きな穴径の取付孔11d…が形成されている。そして、第3図に示すように比較的外径の大きい座金等27を介してボルト等の締結部材28を用いてベースプレート11を便器本体2へ固定する構造としている。便器本体2は陶器製で寸法精度が低いが、このような構造にすることでベースプレート11の取付位置を所定の位置に調節することができる。
また、本実施例では流量調節弁12aに外部パイロット式のダイヤフラム弁を用いているため、給水時にパイロット水路の吐水口12i(第2図参照)から吐水させる水を外部へ排出する必要がある。そこで、第1図および第2図に示すようにボウル部8の後部で隔壁7の上方側に排水升29を形成し、排水升29の下部とボウル部3側とを連通路30で連通するとともに、第6図に示すようにベースプレート11に凹部を形成し、ここを導水路11eとして前述のパイロット流路の吐水口12iから吐水される水を排水升29へ導くよう構成している。
さらに、各大気開放弁12b,12cの大気連通口12j,12k(第2図参照)から漏れる洗浄水についても、導水路11eを介して排水升29へ導く構成としている。
第7図は洗浄給水装置6のブロック構成図である。
給水接続管12fから供給される洗浄水は、流量調節弁12aで流量を調節され、二方向切替弁12dで流路を指定され、大気開放弁12b,12cを介してリム給水管17またはジェット給水管21を通り、リム射水孔16またはジェットノズル18からボウル部8またはトラップ排水路9へ供給される。二方向切替弁12dの上流側には圧力センサ12eを設けている。
制御回路部13は、例えばマイクロコンピュータ等を用いて構成され、洗浄起動入力が与えられると、予め設定された順序で流量調節弁12a、二方向切替弁12dを駆動して洗浄水の給水を行う。また、制御回路部13は、圧力センサ12eからの給水圧力信号に基づいて流量調節弁12aの開度を調節して給水圧力にかかわらず所定の流量が得られるよう制御している。第2図において、図示を省略しているが、この制御回路部13とバルブユニット12との間はコネクタ等を用いて接続されている。また、制御回路部13は全体をシリコン樹脂等で封水した防水構造としている。
第8図は洗浄給水順序の一例を示すタイムチャートである。
この実施例では、ボウル部の前洗浄を行った後にジェットノズル18へ給水してトラップ排水路9内にサイホン作用を発生させ、ボウル部8内の汚水、汚物を排出させる。さらに、サイホン作用が終了した後もしばらくの間ジェットノズル18への給水を継続してボウル部8の底部の汚物や浮遊汚物をトラップ排水路9内へ押込み(ブロー効果)、その後、封水のための給水を行う順序としている。
第9図は洗浄給水装置の他の実施例を示すブロック構成図である。
第9図に示す洗浄給水装置6は、流量調節弁12aと二方向切替弁12dとの間に2個の大気開放弁12b,12cを上下方向に所定の距離を設けて配設している。このような構成にすることにより給水停止時には2個の大気開放弁12b,12cにより効率よく水抜きがおこなわれ、所定のエアーギャップが確保される。よって、流量調節弁12aを開弁状態にした時に給水管側が負圧状態になっていても、便器本体2側の汚水等が給水管側へ逆流するのを防止することができる。
(発明の効果)
以上説明したようにこの発明に係る水洗式便器は、洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する1または2以上の弁機構および大気開放弁をユニット化してバルブユニットとしたので、各弁機構、大気開放弁間の配管接続が不要となり、組立工数が削減されるとともに洗浄給水装置を小形にすることができる。
また、このバルブユニットをベースプレートを介して便器本体に取り付けるとともに、ベースプレートに導水管を形成してバルブユニットから排水もしくは漏れる水をボウル部へ排水する構成としたので、従来必要であった排水のための配管を不要とすることができ、組立工数の削減ならびに構造の簡略化を図ることができる。さらに、便器本体に取り付けたベースプレートに便器へ洗浄水を供給する導水管の流入側端部を固定し、バルブユニットの嵌合接続部を導水管の流入側端部へ嵌合させて装着する構成としたので、現場での便器取付時には給水管との間の配管工事を行えば良く、現場施工性に極めて優れ、また、保守点検も容易である。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明に係る水洗式便器の縦断面図、第2図は同便器のカバー、弁蓋および便座を取り外した状態の平面図、第3図は第1図のIII-III線断面図、第4図はリムおよびジェット給水管の固定構造を示す斜視図、第5図は同固定状態の断面図、第6図はバルブユニットのリムおよびジェット給水管との接続構造を示す分解斜視図、第7図は洗浄給水装置のブロック構成図、第8図は洗浄給水順序の一例を示すタイムチャート、第9図は洗浄給水装置の他の実施例を示すブロック構成図、第10図は洗浄給水装置を内蔵した従来の水洗式便器の縦断面図である。
1……水洗式便器、2……便器本体、6……洗浄給水装置、8……ボウル部、9……トラップ排水路、11……ベースプレート、11e……導水路、12……バルブユニット、12a………流量調節弁、12b,12c………大気開放弁、12d……二方向切替弁、12e……圧力センサ、12f……給水接続管、12g,12h……嵌合接続部、12i……パイロット流路の吐水口、12j,12h……大気連通口、13……制御回路部、17,21……導水管、29……排水升。
【図面】



 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1中の「洗浄水の給水を制御する」の前に、明りょうでない記載の釈明を目的として、「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、」を加入し、特許請求の範囲の請求項1中の「洗浄水の供給を制御する」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する」と訂正する。
訂正事項2
訂正事項1に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるために、明細書第3頁11行(特許公報第3欄第19行)に記載した「1または2以上の弁機構」の前に、「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する」を加入する。
訂正事項3
訂正事項1に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるために、明細書第12頁3行乃至7行(特許公報第6欄第21行乃至第25行)に記載した「1または2以上の弁機構および大気開放弁をユニット化してバルブユニットとしたので、各弁機構、大気開放弁間の配管接続が不要となり、組立工数が削減されるとともに洗浄給水装置を小型にすることができる。」を「洗浄水によって便器内の封水と汚物とを加勢し、該封水と汚物とが所定距離だけ搬送される勢いで、便器外へ排出する水洗式便器であって、前記洗浄水の供給を給水圧にかかわらず所定の流量に制御する1または2以上の弁機構および大気開放弁をユニット化してバルブユニットとしたので、各弁機構、大気開放弁間の配管接続が不要となり、組立工数が削減されるとともに洗浄給水装置を小形にし便器本体にすることができる。」に訂正する。
訂正事項4
明細書第7頁第6行(特許公報第4欄第38行)の「ジェットノズル19」を、誤記の訂正を目的として「ジェットノズル18」と訂正する。
審決日 2000-10-17 
出願番号 特願平2-52317
審決分類 P 1 41・ 853- Y (E03D)
P 1 41・ 852- Y (E03D)
P 1 41・ 856- Y (E03D)
P 1 41・ 851- Y (E03D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤原 伸二  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 憲子
宮崎 恭
登録日 1998-09-25 
登録番号 特許第2830316号(P2830316)
発明の名称 水洗式便器  
代理人 坂口 嘉彦  
代理人 坂口 嘉彦  

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