• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1039179
異議申立番号 異議1999-74458  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-11-29 
確定日 2000-12-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2898316号「人体用エヤゾール製品」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2898316号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1. 手続きの経緯
特許第2898316号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成1年11月1日に特許出願され、平成11年3月12日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人 東洋エアゾール工業株式会社より特許異議の申立てがなされ、当審により取消理由の通知がなされた後、その指定期間内である平成12年9月4日に訂正の請求がなされたものである。
2. 訂正の適否についての判断
(1) 訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の「【請求項1】制汗効果を有する薬剤、粉体およびこれらの助剤からなる有効成分ならびに噴射剤としてジメチルエーテルが配合され、ステム孔径が0.4〜1.0mm、ハウジング下孔径が0.6〜2.0mm、ベーパータップ孔径が0.6〜2.0mmであって、ハウジング下孔径がべーパータップ孔径以下であるバルブが用いられてなる使用感のすぐれた人体用工ヤゾール製品。
【請求項2】噴射剤中のジメチルエーテルの量が5〜50重量%である請求項1記載の人体用エヤゾール製品。」という記載を
「1 制汗効果を有する薬剤、粉体およびこれらの助剤からなる有効成分ならびに噴射剤としてジメチルエーテル5〜50重量%および液化石油ガス50〜95重量%からなる混合物が配合され、ステム孔径が0.4〜1.0mm、ハウジング下孔径が0.6〜2.0mm、ベーパータップ孔径が0.6〜2.0mmであって、ハウジング下孔径がべーパータップ孔径以下であるバルブが用いられてなる使用感のすぐれた人体用エヤゾール製品。」と訂正する。
訂正事項b
(i) 明紬書4頁8〜13行(特許公報第1欄第22〜28行)の「本発明は……人体用エヤゾール製品に関する」という記載を、
「本発明は制汗効果を有する薬剤、粉体およびこれらの助剤からなる有効成分ならびに噴射剤としてジメチルエーテル5〜50重量%および液化石油ガス50〜95重量%からなる混合物が配合され、ステム孔径が0.4〜1.0mm、ハウジング下孔径が0.6〜2.0mm、ベーパータップ孔径が0.6〜2.0mmであって、ハウジング下孔径がべーパータップ孔径以下であるバルブが用いられてなる使用感のすぐれた人体用工ヤゾール製品に関する」と訂正する。
(ii)同6頁14〜16行(特許公報第4欄第14〜16行)の「ジメチルエーテルの量は噴射剤中5〜50%が好ましく、とくに好ましくは10〜45%である」を、「ジメチルエーテルの量は噴射剤中5〜50%であり、好ましくは10〜45%である」と訂正する。
(iii)同6頁18行(特許公報第4欄第17〜18行)の「発揮されなくなる傾向があり」を「発揮されなくなり」と訂正する。
(iv)同6頁末行〜7頁1行(特許公報第4欄第19行)の「使用感がわるくなる傾向がある」を、「使用感がわるくなる」と訂正する。
(v)同7頁14〜15行(特許公報第4欄第29〜30行)の「可燃性液化ガスとしては、たとえば液化石油ガス(LPG)などが用いられる」を、「可燃性液化ガスは、液化石油ガス(LPG)である」と訂正する。
(vi)同7頁15〜17行(特許公報第4欄第30〜32行)の「可燃性液化ガスの量は50〜95%が好ましく、とくに好ましくは55〜9 5%である」を、「可燃性液化ガスの量は50〜95%であり、好ましくは55〜95%である」と訂正する。
(vii)同8頁1行(特許公報第4欄第35〜36行)の「わるくなる傾向がある」を、「わるくなる」と訂正する。
(viii)同9頁15〜16行(特許公報第5欄第14行)の「なかんづく1.0〜1.7 5mmであるのが好ましい」を、「なかんづく1.0〜1.75mmである」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、および特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項aについて
訂正事項aは、実質的には、訂正前の請求項1を削除し、訂正前の請求項2に記載された人体用エアゾール製品について、噴射剤中のジメチルエーテルの配合量を5〜50重量%に限定するとともに、噴射剤中のジメチルエーテル以外の成分を液化石油ガスに特定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正前の明細書には、その対応特許公報第4欄第14〜16行にあるように、「ジメチルエーテルの量は噴射剤中5~50%が好ましく」と記載されており、また、同第4欄第28〜32行に、「本発明において25℃においてゲージ圧力を1〜2.5kg/cm2とするために配合される可燃性液化ガスとしては、たとえば液化石油ガス(LPG)などが用いられる。このような液化石油ガスの量は50〜95重量%が好ましく」と記載されているから、噴射剤をジメチルエーテル5~50重量%と液化石油ガス50〜95重量%からなる混合物とする上記訂正事項aは、特許明細書に記載された事項の範囲内のものである。
さらに、訂正前の請求項2が、請求項1に記載された人体用エヤゾール剤において、噴射剤中のジメチルエーテルの配合量を特定して記載していたことからもわかるように、訂正前の請求項1に記載されたものは、噴射剤がジメチルエーテルと他の成分との混合物をも含んでいたことが明らかであるから、訂正事項aは、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。
訂正事項bについて
(i)~(viii)の訂正は、すべて特許請求の範囲における前記訂正事項aに整合させるために発明の詳細な説明の欄における記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2) 独立特許要件の判断
後述の「3.特許異議申し立てについての判断」に記載した理由により、訂正後の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」ともいう。)は、独立して特許を受けることができるものである。
以上(1)、(2)のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条3項で準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3. 特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
本件特許の請求項1に係る発明は、訂正された特許明細書の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「制汗効果を有する薬剤、粉体およびこれらの助剤からなる有効成分ならびに噴射剤としてジメチルエーテル5〜50重量%および液化石油ガス50〜95重量%からなる混合物が配合され、ステム孔径が0.4〜1.0mm、ハウジング下孔径が0.6〜2.0mm、ベーパータップ孔径が0.6〜2.0mmであって、ハウジング下孔径がべーパータップ孔径以下であるバルブが用いられてなる使用感のすぐれた人体用エヤゾール製品。」
(2) 異議申立ての概要
異議申立人は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1〜6号証を提出し、訂正前の本件特許請求項1および2に係る発明は、これらの刊行物に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113第2号に該当するので、取り消されるべきものである旨主張する。
(3) 対比・判断
a)甲号証記載の発明
甲第1号証:特開昭57-75912号公報
アルミニウムクロロハイドレートなどの制汗効果を有する薬剤、タルクなどの粉体およびこれらの助剤よりなる有効成分をトリクロロトリフルオロエタンと可燃性液化ガスとともに配合した使用感のすぐれた人体用エアゾール製品が記載され、実施例には、可燃性液化ガスとして、ジメチルエーテルがプロパンやブタンとともに用いられた例が記載されている。
甲第2号証:米国特許第4174386号明細書(1979年)
甲第2号証第1欄第54〜66行には、従来技術として、米国特許第3148127号に記載されたヘアスプレーの加圧された自己投与性のパッケージであって、イソブタンまたは類似の噴射剤の相とヘアセット成分を含む水相を含むものが記載されている。さらに、バルブについては、0.030インチのベーパータップ径、0.030インチのリキッドタップ径および0.018インチのバルブステム径を有すると記載されている。
第2欄第13〜25行には、従来技術として、米国特許第3544258号に記載されたエアゾール剤について、「Presant による上記の米国特許第3544258号は、直径0.018インチのステム孔径、直径0.023インチのベーパータップ孔を有するべーパータップバルブを、直径0.0 5 0インチの毛細管状のディップチューブと共に開示している。該ボタン孔の直径は0.016インチであった。調製された該組成物は、アルミニウムクロロハイドロキサイド、水、アルコールおよびジメチルエーテルを含むアルミニウム制汗剤である。アルミニウムクロロハイドロキサイドは水溶液中にあり、従って、1つの液相だけがある。この組成物のために提供される孔の寸法は小さすぎるので、アストリンゼン塩の粒子を含むアルミニウム制汗剤を投与する際に、詰まりを避けることができない。」と記載されている。

甲第3号証:米国特許第4152416号明細書(1979年)
甲第3号証第1欄第44〜56行には、従来技術として、米国特許第3544258号に記載されたエアゾール剤につき、上記甲第1号証における記載と同一の記載がある。
甲第4号証:米国特許第3544258号明細書(1970年)
甲第4号証第6欄第18行~第7欄第13行には、実施例1として、アルミニウムクロロハイドロール5 0%水溶液、へキサクロロプロパン、ジメチルエーテルを含有する組成物を収容した容器に関し、以下のように記載されている。
「べーパータップバルブおよび毛管状ディップチューブを備えた被覆されたガラス瓶の中で、下記の処方が調製された。使用された該バルブは、精密バルブ(その夕イプは、図4に示され、毛管状ディップチューブが用いられている)で、以下に示す孔径を有する:0.050インチのディップチューブ、0. 018インチのステム、0.023インチのべーパータップ。該ボタンは、図7〜10に示されるような、孔径が0.016インチの、ワンピースタイプのメカニカルブレークアップ逆テーパーボタンである。」
甲第5号証:MONTFORT A. JOHNSEN, “THE AEROSOL HANDBOOK”, 2nd EDITION,1982年,WAYNE DORLAND COMPANY, U.S.A.
甲第5号証第165頁右欄第1行〜第41行には、エアゾールのバルブにつき、以下のように記載されている。
「テイルピースまたは主なハウジング孔は0.010〜0.260インチ(0.2 5〜6.6 0mm)まで広がる。
…(中略)…
べーパータップ孔は、液体の流れに蒸気相の少量の噴射剤を加えるのに一般的に使用され、よりよい分散性、より低い放出率およびより暖かいスプレーを与えるために作用する。例えば、多く制汗剤は、他の孔のサイズを小さくして、アルミニウム塩によるバルブの詰まりの危険性をとらずに、スプレー率を低下させるためにべーパータップを使用する。べーパータップ孔は、基部の近傍のボディの壁かショルダーの領域の何れかに穿孔される。それらは、成型されるか、0.010〜0.030インチ(0.25〜0.76mm)の範囲でレーザにより孔開けされる。レーザ裝置により0.005インチ(0.13mm)以下の孔が形成されると、詰まりやすく、ホイップクリームおよび他の製品に伴うテストでは、意義ある利益の提供が見られない。0.008インチ(0.20mm)のべーパータップ孔は、いくつかの供給者からの特別な注文に応じられるだろう。いくつかの場合、ベーパータップ孔は、倒立位置でのディスベンサーに伴う適当なスプレーを提供するために、逆の感覚で使用される。この場合、ボディ孔がべーパータップ孔になる。女性用衛生スプレーは、しばしば、この原理を適用する。テイルピースおよびべーパータップ孔径は、だいたい同じサイズであるか、または、容器を倒立してのスプレーが正立位置でのものより速いか遅いことが望ましい。」
甲第6号証:AEROSOL AGE, September 1982, Kelvin Claffey, New developments in aerosol antiperspirant technology, p.23-24
第23頁第3欄第3行~第2 4頁第1欄第11行には、以下のように記載されている。
「事実、リキッドタップ孔(径)に対するべーパータップ孔(径)の比率が大きいほど、炎の拡大(火炎長)は小さくなる。
この現象は、スプレーにおける噴射剤の液に対するガスの比率に関連する。
著者の経験では、スプレーにおける噴射剤の液滴の存在が、炎の存在下においてスプレーを発火させる主要な原因である。
噴射剤のガスだけからなる炭化水素スプレーが、ろうそく炎の上部に6インチの距離から向けられるならば、炎の拡大は全くない。他方、主に炭化水素の噴射剤の液滴から成る、ベーパータップのないバルブからのスプレーはかなり可燃性であり、バルブに向かってフラッシュバック(炎の逆流)する。
噴射剤のガスに対する噴射剤の液滴の比率が低いものを含むほど、炎の拡大はより小さくなる。
低い可燃性および最適な吐出割合を違成するために、ベーパータップ孔とリキッドタップ孔のサイズのバランスをとることは、多くの困難を有する。べーパータップ孔のサイズが大き過ぎると、噴射剤の消費が速すぎるために、かなりの量の濃縮物が缶の中に残る。同時に、吐出割合は、低すぎるか、消耗された製品として不安定になる。最も商業的なエアゾールである(APs)は、炎の拡大と吐出割合との間に妥協を提供する、リキッドタップに対するべーパータップ孔の比率を使用する。一般に、缶を直立させたポジションでスプレーされるとき、炎の拡大が18インチ末満にあって、活性成分の吐出割合はおよそ0.04g/秒である。しかしながら、もしこれらの製品が逆さのポジションでスプレーされると、スプレー中における、液化された噴射剤の量はべーパータップのサイズに従って増加し、炎の拡大は、より大きくなる。」
c)対比・判断
本件発明と上記甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は制汗効果を有する薬剤、粉体およびこれらの助剤からなる有効成分と、噴射剤として、ジメチルエーテルと液化石油ガスの混合物を配合した人体用エアゾール製品である点において一致し、一方、本件発明は、特定構造のバルブを用いているのに対し、上記甲第1号証には、バルブについては記載されていない点において相違する。
上記相違点につき検討する。上記甲第2号証の第1欄に記載されたヘアスプレー剤に用いられているバルブは、本件発明におけるバルブに関する条件を一応満たしているものである。しかしながら、上記甲第2号証第1欄に記載の製品は、不燃性成分としての水を含有し、ヘアスプレー用の水溶液を霧状にして適用するするためのものであるから、これに用いられているバルブを、本件発明のように、水やフロン類といった不燃性成分を必須とせず、しかも溶液ではなく粉体を含有する製品に適用することを、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
甲第2号証のその他の部分および甲第3〜5号証の記載を検討しても、本件発明において特定された構造を有するバルブは記載されていない。また、甲第6号証におけるリキッドタップ孔径すなわちハウジング下孔径と、ベーパータップ孔径に関する記載も、両孔径の比と火炎防止性の関係について、一定の方向性があることを示唆しているものの、実際には、吐出量とのバランスをとる必要があるために、具体的にこれら孔径を決定するのは困難であると記載するに留まり、ステム孔径、ハウジング下孔径、ベーパータップ孔径をどのように決定すればよいのか記載されていないのであるから、甲第6号証の記載をもってしても、火炎防止性があり、かつ、制汗剤としての効果が適正に得られるようなバルブを実際に想到することは、当業者にとって困難であったといわざるを得ない。
そして、本件特許明細書に記載の実施例と比較例の試験結果及び平成12年8月4日付で提出された実験成績証明書の結果を検討すると、本件発明は、噴射剤として、ジメチルエーテルと液化石油ガスを特定割合で配合した混合物を用い、併せて、ステム孔径、ハウジング下孔径、ベーパータップ孔径を特定の範囲内のものとし、さらに、ハウジング下孔径がベーパータップ孔径以下であるバルブを用いることにより、火炎長試験における火炎長が短く安全であり、かつ、エアゾール製品内での有効成分の再分散性に優れるという、エアゾール製品として望ましい2つの性質をあわせ有するという顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、上記甲第1〜6号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、上記結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
人体用エヤゾール製品
(57)【特許請求の範囲】
1 制汗効果を有する薬剤、粉体およびこれらの助剤からなる有効成分ならびに噴射剤としてジメチルエーテル5〜50重量%および液化石油ガス50〜95重量%からなる混合物が配合され、ステム孔径が0.4〜1.0mm、ハウジング下孔径が0.6〜2.0mm、ベーパータップ孔径が0.6〜2.0mmであって、ハウジング下孔径がベーパータップ孔径以下であるバルブが用いられてなる使用感のすぐれた人体用エヤゾール製品。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は新規な人体用エヤゾール製品に関する。さらに詳しくは、安全で使用感にすぐれた人体用エヤゾール製品、とくにエヤゾール制汗剤などとして好適に使用しうる人体用エヤゾール製品に関する。
[従来の技術]
近年、人体用エヤゾール製品、とくにエヤゾール制汗剤の使用量が増加してきている。制汗剤にはエヤゾールタイプ以外にもロールオンタイプ、スティックタイプなどがあるが、いずれも使用感においてエヤゾールタイプと比較すると劣るため、エヤゾールタイプが主流になってきている。さらにエヤゾールタイプの中には粉体を配合したタイプと主剤をアルコールなどの溶剤に溶解した粉体を配合しないタイプがある。粉体を配合したタイプのエヤゾール制汗剤は皮膚に粉体を付着させることが可能なので、皮膚のベトツキ感を減少することができる利点をもっている。
しかしながら、現在市販されている粉体を配合したタイプのエヤゾール制汗剤にはつぎのような欠点がある。
(1)ミストがこまかすぎて粉体が飛び散る。
(2)粉体が皮膚からはがれ落ちる。
(3)制汗効果が持続しにくい。
さらに現在使用されている噴射剤はフロン-11、フロン-12、フロン-114やLPGなどの混合物であるがアメリカ合衆国ではエヤゾール製品中、医薬品などの不可欠ものに用いる以外はその使用が禁止されている。
そこで、本件出願人は叙上の欠点を解消し、前記のごとくアメリカ合衆国での使用が制限されているフロン-11、フロン-12およびフロン-114を使用せずに現在の日本の法律上の規制に適合する安全なエヤゾール制汗剤を開発している(特公昭63-7163号公報)。
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、本発明者らは、前記人体用エヤゾール製品は充分に使用に供しうるとはいうものの、使用時における再分散性にやや難があるため、さらに再分散性にすぐれた人体用エヤゾール製品を開発するべく鋭意研究を重ねた結果、かかる再分散性にすぐれ、同時に安全性にもすぐれた人体用エヤゾール製品を見出し、本発明を完成するにいたった。
[課題を解決するための手段]
すなわち、本発明は制汗効果を有する薬剤、粉体およびこれらの助剤からなる有効成分ならびに噴射剤としてジメチルエーテル5〜50重量%および液化石油ガス50〜95重量%からなる混合物が配合され、ステム孔径が0.4〜1.0mm、ハウジング下孔径が0.6〜2.0mm、ベーパータップ孔径が0.6〜2.0mmであって、ハウジング下孔径がベーパータップ孔径以下であるバルブが用いられてなる使用感のすぐれた人体用エヤゾール製品に関する。
[作用および実施例]
本発明において用いられる制汗効果を有する薬剤としては、アルミニウムクロロハイドレートのほかにたとえばアルミニウムフェノールスルフォネートなどがあげられる。
本発明において用いられる粉体としては、タルクのほかにたとえばカオリン、ベントナイトなどがあげられる。
なお、アルミニウムクロロハイドレートは粉体としての働きもする。
また本発明において用いられる助剤としては活性剤や粉体の分散剤などがあげられる。
しかし本発明においては各成分は、それ単独でその働きをするのではなく相互に関連した複合的な働きをするために、一応前記のごとく分類はしたが、各成分を単純に分類することはむしろ困難である。そのためエヤゾール製品中では有効成分としてひとまとめにして取りあつかうほうが好ましいと考えられる。
本発明において配合する有効成分の量としては3〜15%(重量%、以下同様)が好ましく、とくに好ましくは5〜12%である。有効成分の量が3%よりも少ないばあいには制汗効果が低下し、15%よりも多いばあいには粉体が多くなりすぎたり、ベトツキを生じやすい活性剤や粉体の分散剤が多くなりすぎたり、さらにそれら両方の相剰作用のため、非常に粉っぽくなったり、ウェットな感じになったり、さらには極端な制汗効果が発揮されすぎたりして、いずれも好ましくない。
噴射剤としてジメチルエーテルを配合するのは本発明のひとつの大きな要素である。その理由のひとつは、ジメチルエーテルを用いたばあいにはエヤゾール製品内での有効成分の再分散性が格段に向上するからである。塩化メチレンなどは特有の臭いがありかつ皮膚に刺激を与えるので好ましくない。また、ペンタンも蒸発速度や蒸発の潜熱の点ではよいが、引火性が高いため好ましくない。
本発明において配合されるジメチルエーテルの量は噴射剤中5〜50%であり、好ましくは10〜45%である。ジメチルエーテルの配合量が5%よりも少ないばあいには再分散性が充分に発揮されなくなり、また50%よりも多いばあいには適切な噴射状態がえられないだけでなく、使用感がわるくなる。
本発明において配合される噴射剤は25℃においてゲージ圧力が1〜2.5kg/cm2となるように調整される。このように25℃においてゲージ圧力を1〜2.5kg/cm2とするのは、25℃においてゲージ圧力が1kg/cm2よりも小さなガスでは相対的にガス量を増加させる必要があり、25℃においてゲージ圧力が2.5kg/cm2よりも大きなガスでは取り扱いが困難であったり適切な噴霧状態がえられなくなり、いずれも好ましくないからである。
本発明において、25℃においてゲージ圧力を1〜2.5kg/cm2とするために配合される可燃性液化ガスは、液化石油ガス(LPG)である。このような可燃性液化ガスの量は50〜95%であり、好ましくは55〜95%である。配合量が50%よりも少ないばあいにはミストの状態が粗くなり使用感が劣り、また配合量が95%よりも多いばあいにはミストの状態がこまかくなりすぎ、有効成分の付着が非常にわるくなる。
以上のごとく、本発明におけるエヤゾール製品によれば前記した従来のエヤゾール製品の欠点が改良され、比較的乾燥性のよい溶剤と圧力が適度に高い噴射剤を使用して、適当なミストの状態をつくることにより、粉体の飛び散りや粉体の皮膚からのはがれ落ちを防止し、制汗効果などを持続させることが可能となり、さらに使用時における再分散性が格段に向上するのである。
また本発明の人体用エヤゾール製品は粉体を配合したタイプに関して述べたが、粉体を配合しないタイプにもすぐに応用のきくものである。
なお、現在のエヤゾール製品の安全基準は法律的な定めはないが、実質的に人体に使用するものに対しては、火炎長試験における火炎長を25cm未満とする必要があるが、本発明においてはステム孔径が0.4〜1.0mm、ハウジング下孔径が0.6〜2.0mm、ベーパータップ孔径が0.6〜2.0mmであって、ハウジング下孔径がベーパータップ孔径以下であるバルブが用いられているので、かかる安全基準は満足されるのである。前記ステム孔径は0.4mm未満であるばあいには、粉体の詰りにより噴霧をすることができなくなり、また1.0mmをこえると火炎長試験における火炎長が25cm未満であるという条件を満足しなくなるため、0.4〜1.0mm、なかんづく0.5〜1.0mmである。また、前記ハウジング下孔径は0.6mm未満であるばあいには、粉体の詰りにより噴霧することができなくなったり、適切な噴霧状態がえられなくなり、また2.0mmをこえるばあいには、使用時に内容物が多量に噴射され、火炎長を25cm未満とすることが困難となるので、0.6〜2.0mm、なかんづく1.0〜1.75mmである。また、前記ベーパータップ孔径は0.6mm未満であるばあい、使用時に勢いよく内容物が噴射されるので、皮膚に痛みを生じようになるとともに火炎長を25cm未満とすることが困難となり、また2.0mmをこえるばあい、全量を噴霧することが困難となるため、0.6〜2.0mm、なかんづく1.0〜2.0mmである。
また、火炎長が25cmをこえないようにし、使用時に内容物が勢いよく噴射されることを防ぐために、ハウジング下孔径はベーパータップ孔径以下であることが必要である。
なお、前記各種孔径はいずれも直径を示し、実質的に同一の断面積を有するものであれば、本発明はその形状などによって限定されるものではない。
つぎに本発明の人体用エヤゾール製品を実施例および比較例をあげて詳細に説明する。
実施例1〜5
第1表に示す各成分の配合組成に調製した本発明の人体用エヤゾール製品について試験を行なった結果を第1表に示す。
比較例1〜3
第1表に示す各成分の配合組成に調製された市販の人体用エヤゾール製品について試験を行なった結果を第1表に示す。
ここで実施例1〜5および比較例1〜3は粉体を配合したタイプのものである。
第1表から本発明の人体用エヤゾール製品はすべての試験において良好な結果を示しているが、粉体を配合したタイプの市販の人体用エヤゾール製品はいずれも何らかの点で劣り、すべての試験に合格するものではないことがわかる。
なお第1表において試験結果の評価はつぎの基準によった。
○:良 好
△:やや不良
×:不 良

[発明の効果]
本発明の人体用エヤゾール製品は、安全で使用感にすぐれ、しかも使用時に軽く振とうするだけで有効成分が製品内で均一に分散するという再分散性にすぐれたものであるので、たとえばエヤゾール制汗剤などとして好適に使用しうるものである。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項a
特許請求の範囲の「【請求項1】制汗効果を有する薬剤、粉体およびこれらの助剤からなる有効成分ならびに噴射剤としてジメチルエーテルが配合され、ステム孔径が0.4〜1.0mm、ハウジング下孔径が0.6〜2.0mm、ベーパータップ孔径が0.6〜2.0mmであって、ハウジング下孔径がベーパータップ孔径以下であるバルブが用いられてなる使用感のすぐれた人体用工ヤゾール製品。
【請求項2】噴射剤中のジメチルエーテルの量が5〜50重量%である請求項1記載の人体用エヤゾール製品。」という記載を
「1 制汗効果を有する薬剤、粉体およびこれらの助剤からなる有効成分ならびに噴射剤としてジメチルエーテル5〜50重量%および液化石油ガス50〜95重量%からなる混合物が配合され、ステム孔径が0.4〜1.0mm、ハウジング下孔径が0.6〜2.0mm、ベーパータップ孔径が0.6〜2.0mmであって、ハウジング下孔径がベーパータップ孔径以下であるバルブが用いられてなる使用感のすぐれた人体用エヤゾール製品。」と訂正する。
訂正事項b
(i)明細書4頁8〜13行(特許公報第1欄第22〜28行)の「本発明は……人体用エヤゾール製品に関する」という記載を、
「本発明は制汗効果を有する薬剤、粉体およびこれらの助剤からなる有効成分ならびに噴射剤としてジメチルエーテル5〜50重量%および液化石油ガス50〜95重量%からなる混合物が配合され、ステム孔径が0.4〜1.0mm、ハウジング下孔径が0.6〜2.0mm、ベーパータップ孔径が0.6〜2.0mmであって、ハウジング下孔径がベーパータップ孔径以下であるバルブが用いられてなる使用感のすぐれた人体用工ヤゾール製品に関する」と訂正する。
(ii)同6頁14〜16行(特許公報第4欄第14〜16行)の「ジメチルエーテルの量は噴射剤中5〜50%が好ましく、とくに好ましくは10〜45%である」を、「ジメチルエーテルの量は噴射剤中5〜50%であり、好ましくは10〜45%である」と訂正する。
(iii)同6頁18行(特許公報第4欄第17〜18行)の「発揮されなくなる傾向があり」を「発揮されなくなり」と訂正する。
(iv)同6頁末行〜7頁1行(特許公報第4欄第19行)の「使用感がわるくなる傾向がある」を、「使用感がわるくなる」と訂正する。
(v)同7頁14〜15行(特許公報第4欄第29〜30行)の「可燃性液化ガスとしては、たとえば液化石油ガス(LPG)などが用いられる」を、「可燃性液化ガスは、液化石油ガス(LPG)である」と訂正する。
(vi)同7頁15〜17行(特許公報第4欄第30〜32行)の「可燃性液化ガスの量は50〜95%が好ましく、とくに好ましくは55〜95%である」を、「可燃性液化ガスの量は50〜95%であり、好ましくは55〜95%である」と訂正する。
(vii)同8頁1行(特許公報第4欄第35〜36行)の「わるくなる傾向がある」を、「わるくなる」と訂正する。
(viii)同9頁15〜16行(特許公報第5欄第14行)の「なかんづく1.0〜1.75mmであるのが好ましい」を、「なかんづく1.0〜1.75mmである」と訂正する。
異議決定日 2000-11-16 
出願番号 特願平1-286596
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 典之  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 深津 弘
谷口 浩之
登録日 1999-03-12 
登録番号 特許第2898316号(P2898316)
権利者 株式会社大阪造船所
発明の名称 人体用エヤゾール製品  
代理人 佐々木 啓二  
代理人 朝日奈 宗太  
代理人 前田 勘次  
代理人 朝日奈 宗太  
代理人 大井 正彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ