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審決分類 審判 一部申し立て 特29条の2  B24B
管理番号 1039256
異議申立番号 異議2000-74135  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-07-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-15 
確定日 2001-05-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3040926号「ウエハノッチ部の鏡面加工装置」の請求項1ないし5、7、8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3040926号の請求項1ないし5、7、8に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第3040926号の請求項1ないし18に係る発明についての出願は、平成6年12月16日(優先権主張平成6年10月17日)に特許出願され、平成12年3月3日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、平成12年11月15日に特許異議申立人堀内剛より請求項1ないし5、7、8に係る特許について特許異議の申立てがなされ、平成13年1月24日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年4月5日に特許異議意見書が提出されたものである。

2 本件発明
本件特許第3040926号の請求項1ないし5、7、8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明3」、「本件発明4」、「本件発明5」、「本件発明7」、「本件発明8」という。)は、登録時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5、7、8に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】 その周縁部及びノッチ部に所定角度面取りをした円盤状ウエハを固定するウエハ固定手段と、前記円盤状ウエハと交差して当接し、前記ノッチ部表面を回転しながら鏡面加工する円盤状鏡面加工手段と、前記ウエハ固定手段をウエハ水平位置から所定角度傾斜させるウエハ傾斜手段と、前記円盤状鏡面加工手段を回転させるための駆動手段と、該駆動手段で駆動されるとともにその一端が前記円盤状鏡面加工手段に連結された回転力伝達手段と、該回転力伝達手段を保持すると共に前記駆動手段を載置する主軸台と、該主軸台をスライドさせるスライド手段と、前記スライド手段を荷重する荷重手段とを備え、前記スライド手段を荷重することにより前記円盤状鏡面加工手段の回転中心に向けて前記ノッチ部鏡面加工箇所を当接させることを特徴とするウエハノッチ部の鏡面加工装置。
【請求項2】 前記円盤状鏡面加工手段は、リング状研磨布と該リング状研磨布を固定する手段とを備えてなることを特徴とする請求項1記載のウエハノッチ部の鏡面加工装置。
【請求項3】 前記円盤状鏡面加工手段は、その周縁部にリング状研磨布を保持する研磨布保持リングと、前記リング状研磨布及び前記研磨布保持リングを両側から挟持する2つの円盤状挟持部材とで構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のウエハノッチ部の鏡面加工装置。
【請求項4】 前記リング状研磨布は、積層をなした複数枚の研磨布から成ることを特徴とする請求項2又は3記載のウエハノッチ部の鏡面加工装置。
【請求項5】 前記円盤状鏡面加工手段は、研磨布保持リングと該研磨布保持リング周縁部に貼付された研磨布とで構成したことを特徴とする請求項1記載のウエハノッチ部の鏡面加工装置。
【請求項7】 前記荷重手段は、流体シリンダーであることを特徴とする請求項1記載のウエハノッチ部の鏡面加工装置。
【請求項8】 前記円盤状ウエハは、半導体ウエハであることを特徴とする請求項1記載のウエハノッチ部の鏡面加工装置。」

3 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人堀内剛は、次の甲第1ないし3号証を提示し、本件の請求項1ないし5、7、8に係る発明は、甲第1号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許に係る発明の発明者は甲第1号証に係る発明の発明者と同一ではなく、また、本件特許の特許出願時の出願人が甲第1号証に係る出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1ないし5、7、8に係る特許は取り消されるべきである旨を主張する。
甲第1号証:特開平7-24714号公報
甲第2号証:特公昭63-36909号公報
甲第3号証:実願昭62-155970号(実開平1-60865号)のマイクロフィルム

4 当審が通知した取消しの理由の通知の概要
当審が通知した取消しの理由は、上記甲第1号証に係る出願と上記甲第2及び3号証を引用し、本件の請求項1ないし5、7、8に係る発明は、甲第1号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許に係る発明の発明者は甲第1号証に係る発明の発明者と同一ではなく、また、本件特許の特許出願時の出願人が甲第1号証に係る出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1ないし5、7、8に係る特許は取り消されるべきであるというものである。

5 甲第1ないし3号証に記載された発明
(1)甲第1号証
甲第1号証は、本件特許に係る出願の日前の出願である特願平5-193195号に係るものであって、その願書に最初に添付された明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には、以下の記載がある。
a 明細書の段落番号【0005】
「ノッチ部32の内面は、ウェーハの厚さ方向中央部が径方向の外側に膨出した形状となっている。」
b 明細書の段落番号【0014】ないし【0016】
「このノッチ部研磨装置1は、ウェーハWを保持するテーブル2と、このテーブル2を正逆方向に回転脈動させることが可能なパルスモータ3を有している。このうちテーブル2には図示しない真空吸着装置が連結され、ウェーハWをテーブル2上に真空吸着によって保持できるようになっている。テーブル2はクランク4に保持され、クランク軸4aの一方は軸受け5に保持され、他方はパルスモータ(第2のモータ)6に連結されている。ここで、クランク軸4aはウェーハWの主面に平行で、かつ、その延長線がウェーハWのノッチ部32にほぼ接するように構成されている。
【0015】また、このノッチ部研磨装置1は回転バフ7を有し、この回転バフ7は、弾性材料、例えば発泡ポリウレタン等の合成樹脂によって形成されている。この回転バフ7は、該回転バフ7を回転させる電動モータ(第1のモータ)8に連結されるとともに、リンク機構9によって保持されている。なお、回転バフ7は、テーブル2に保持されるウェーハ面に平行な軸7aを中心に回転可能となっている。
【0016】リンク機構9は、リンク91、92を含んで構成されている。このリンク機構9は、固定リンク91の基板91aの中間部にブラケット91b,91bが立設され、このブラケット91b,91bに、軸92aを中心にシーソ動作可能にリンク92が取り付けられた構造となっている。このリンク92の一端には回転バフ7および電動モータ8が取り付けられている。一方、リンク92の他端と前記リンク91の上端との間にはエアシリンダ装置10が設置されている。つまり、エアシリンダ装置10は、シリンダ基端がリンク91に固着され、ロッド先端がリンク92と回り対偶をなすようにして設置されている。このエアシリンダ装置10は図示しないエア給排装置およびエア圧力調節装置に連結されている。」
c 明細書の段落番号【0019】
「エアシリンダ装置10を作動させ、回転バフ7をウェーハWのノッチ部32内面に対して押圧する。すると、回転バフ7の周面部が幾分弾性変形し、回転バフ7はウェーハWのノッチ部32に広く接触する。その後、電動モータ8によって回転バフ7を回転させるとともに、パルスモータ6によりテーブル2を図2に示すように、前記押圧力がノッチ部32内面に対して垂直方向に作用するようにゆっくり旋回させる。これにより、回転する回転バフ7がノッチ部32内面を倣うことになり、ノッチ部32内面の研磨が行われることになる。」
また、これらの記載を踏まえて【図1】を参照すれば、【図1】には次の事項が示されている。
回転バフが、ウェーハと交差して接触し、ノッチ部内面の研磨が行われること。
さらに、上記の明細書の記載を踏まえて【図2】を参照すれば、【図2】には次の事項が示されている。
テーブルを保持するクランクは、軸受けに保持され、ウェーハを水平とする位置から、傾斜させた位置に旋回可能とされていること。
エアシリンダ装置によりリンクを揺動させること。
以上より、先願明細書には、次の発明が記載されているものと認める。
その内面が厚さ方向中央部で径方向の外側に膨出した形状をなすノッチ部を有するウェーハを真空吸着によって保持するテーブルと、前記ウェーハと交差して接触し、前記ノッチ部内面を回転しながら研磨する回転バフと、前記テーブルを保持するクランクをウェーハ水平位置から旋回させる軸受けと、前記回転バフを回転させるための電動モータと、該電動モータを取付けたリンクと、該リンクを揺動自在に支持する軸と、前記リンクの一端に作用することにより前記リンクを揺動させるエアシリンダ装置とを備え、前記リンクを揺動させることにより押圧力がノッチ部内面に対して垂直方向に作用するように回転バフを前記ノッチ部内面に接触させるノッチ部研磨装置。

(2)甲第2号証
甲第2号証には、次の記載がある。
a 第3頁第6欄第23から29行
「図面にはボス2上に取付けられた2つの側面フランジ3をもつバフ加工または研磨車1が示されており、両側面フランジ3は織布、フエルト布、皮革、不織布、特殊紙等からなる円盤状の多層バフ加工または研磨挿入片4を間に挟んで、挿入片4の外周4aが側面フランジ3の外周3aから半径方向に突出するようになっている。」
この記載から、甲第2号証には、次の発明が記載されているものと認める。
バフ加工または研磨車を、織布、フエルト布、皮革、不織布、特殊紙等からなる円盤状の多層バフ加工または研磨挿入片と、該挿入片を挟む2つの側面フランジとで構成すること。

(3)甲第3号証
甲第3号証には、次の記載がある。
a 明細書第5頁第7行から第6頁第8行
「研磨具11は、電気ドリルなどの動力に取り付けらる取付軸17を有するとともに、その先端部には、側面部に砥石面またはバフ面を備える円形状の研磨部材18が取り付け固定されている。砥石面を備える研磨部材18はメッキ前の生地みがき用であり、例えば、ポリビニルアルコールのアセタール化物を結合剤とした弾性のある砥石材によって成形する。また、バフ面を備える研磨部材18はメッキ前後の仕上げつや出し用であり、布バフ、フエルトバフなどからなる。
この研磨部材18の両側部に位置し、かつ、同部材18の径より小さく成形した一対の円板状の保持部材19が、前記取付軸17に取り付け固定される。この保持部材19は、フエルト、天然ゴム、合成樹脂、木、金属など適宜素材からなり、前記研磨部材18の両側部を締め付けるように挟持してその反りを防止するとともに、同部材18を被研磨面に当てる際の位置決め案内板としても機能する。
20は研磨部材18および保持部材19を押さえるワッシャー、21は締め付けナットである。」
この記載から、甲第3号証には次の発明が記載されているものと認める。
研磨具を、布バフ、フエルトバフからなる研磨部材と、該研磨部材の両側部を挟持する一対の円板状の保持部材とで構成すること。

6 対比・判断
本件発明1と上記先願明細書に記載された発明とを対比すると、本件発明1は、「主軸台をスライドさせるスライド手段」を備え、スライド手段を加重することにより円盤状鏡面加工手段にノッチ部鏡面加工箇所を当接させる構成を有するのに対して、先願明細書に記載された発明には、主軸台に相当するものも、スライド手段に相当するものもなく、リンクを揺動させることにより回転バフにノッチ部内面を接触させる構成を有する点で相違する。
そして、上記「主軸台をスライドさせるスライド手段」に相当する構成は、甲第2号証及び甲第3号証にも記載されていない。
特許異議申立人は、特許異議申立書において、円盤状の回転砥石等をワークに当接させるのに、回転砥石等をワークに対して直線的に当接させるか、円弧動させて当接させるかはいずれも周知技術である旨を主張しているが、先願明細書に係る発明の出願当時、ウエハの鏡面加工装置において当該事項が周知技術であったことを裏付ける証拠はないから、本件発明1の「主軸台をスライドさせるスライド手段」が、技術常識を参酌することにより導き出せるものであるとは言えない。
したがって、本件発明1が先願明細書に記載された発明と同一であるとは認められない。
また、本件発明2ないし5、7、8は、本件発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものであるから、上記説示した理由と同様の理由により、先願明細書に記載された発明と同一であるとは認められない。

7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1ないし5、7、8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1ないし5、7、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-04-23 
出願番号 特願平6-333862
審決分類 P 1 652・ 16- Y (B24B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 小池 正利
特許庁審判官 播 博
中村 達之
登録日 2000-03-03 
登録番号 特許第3040926号(P3040926)
権利者 スピードファム株式会社
発明の名称 ウエハノッチ部の鏡面加工装置  
代理人 貞重 和生  
代理人 天野 正景  

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