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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない B66C
審判 一部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正を認める。無効としない B66C
審判 一部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない B66C
審判 一部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない B66C
審判 一部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない B66C
管理番号 1040273
審判番号 審判1999-35501  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-09-14 
確定日 2000-12-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2644352号発明「クレーンの安全装置」の請求項1乃至9に係る特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2644352号の請求項1乃至13に係る発明についての出願は、平成1年4月6日(優先権主張1988年12月27日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成9年5月2日にその特許の設定登録がされた。
その後、本件請求項1乃至9に係る特許に対して、株式会社神戸製鋼所より特許無効審判の請求がされ、答弁書の提出期間内である平成11年12月24日付けで訂正請求がされたものである。

II.請求人の主張及び提出した証拠
【審判請求書(平成11年9月14日)での主張】
1.本件請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項である「スイッチ手段」による操作で入力される指令としては、(イ)スクリーン上に識別パターンを表示させる指令(以下、便宜上「パターン表示指令」と称する。)、(ロ)予め用意された複数の表示モードの中から特定のモードを選択してその表示に切換えさせる指令(以下、便宜上「表示切換指令」と称する。)、又は(ハ)クレーン機構模式図上で作業範囲の初期設定を行うための初期設定指令(以下、便宜上「初期設定指令」と称する。)か不明であり、その実体を特定することができないので、本件発明の特許は、特許法第36条第3項及び第4項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第4号の規定に該当する。(以下、「請求の理由1」という。)
2.(a)本件請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明であり、また、甲第1〜8号証及び甲第16号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(b)本件請求項2に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証に記載された発明であり、また、甲第1号証〜甲第8号証及び甲第16号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(c)本件請求項3〜6に係る発明は、甲第1号証〜甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(d)本件請求項7〜9に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証に記載された発明であり、また、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
上記(a)〜(d)に基づき、本件請求項1〜9に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定、または同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、特許法第123条第1項第2号の規定に該当する。(以下、「請求の理由2」という。)
【弁ぱく書(平成12年5月8日)での主張】、及び【平成12年8月29日の口頭審理での主張】
3.訂正請求書に添付した訂正明細書の請求項2(以下、訂正請求項2という。)に係る発明に記載された「基準」、「片側部分」、「識別を付した」は、願書に添付した明細書では「タッチキーパネル310BのキーBを押すと表示上ブーム先端Pの右側の斜線を引いたエリアが非作業範囲として設定される」(特許公報6頁12欄9〜11行)と示すのみで、それぞれの上位概念と考えられる「基準」、「片側部分」、「識別を付した」という概念については全く示されていない。
また、訂正請求項2に係る発明に記載された「識別(第5図、斜線)」は「識別」を斜線に限定する趣旨であるのか、「識別」の例示であるのか全く不明である。したがって、訂正請求項2に記載された「スクリーン上の基準から片側部分に識別を付した」は、願書に添付した明細書及び図面の記載から直接的かつ一義的に導かれる事項ではなく、明らかに新規事項であるので、該訂正は特許法第134条第5項で準用する同法第126条第2項の規定に違反する。(以下、「請求の理由3」という。)
4.訂正前の請求項1における「スイッチ手段」による操作で入力される指令としては、(イ)パターン表示指令(ロ)表示切換指令、又は(ハ)初期設定指令か不明であったが、訂正請求書に添付した訂正明細書の請求項1(以下、訂正請求項1という。同様に、訂正請求書に添付した訂正明細書の請求項3〜9も訂正請求項3〜9という。)に係る発明に記載された「スイッチ手段」による操作で入力される指令としては、(ロ)表示切換指令でないことが明らかにされたので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるので、該訂正は特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に違反する。(以下、「請求の理由4」という。)
5.(e)訂正請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明である。
また、もし仮に、甲第3号証記載の輪郭Rの表示がブーム作業範囲制限領域の表示と相違するものであるとしたところで、例えば甲第1号証や甲第4号証に記載されるように、ブーム作業範囲制限領域をクレーン模式図と相対的位置関係においてスクリーン上に表示することは本件出願前既に周知の技術であり、訂正請求項1に係る発明は、周知技術を適用したに過ぎないものである。また、複数モードの画面表示の中から選択されたモードの画面表示を行うことは、甲第5〜8号証記載のように周知である。してみれば、訂正請求項1に係る発明は、甲第3号証、甲第1,4号証及び甲第5〜8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(f)訂正請求項2に係る発明は、甲第3号証、甲第1,4号証及び甲第5〜8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
上記(e)、(f)に基づき、訂正請求項1、2に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定、または同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、特許法第134条第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反する。(以下、「請求の理由5」という。)
6.請求人が提出した証拠
甲第1号証:特開昭57-170386号公報
甲第2号証:特開昭59-26891号公報
甲第3号証:特開昭60-258085号公報
甲第4号証:特開昭61一27896号公報
甲第5号証:実願昭61-55091号(実開昭62-169061号)のマイクロフイルム
甲第6号証:特開昭60-128195号公報
甲第7号証:実願昭60-77486号(実開昭61-195172号)のマイクロフイルム
甲第8号証:特開昭56-52410号公報
甲第9号証:特開昭62一111900号公報
甲第10号証:特開昭59-127104号公報
甲第11号証:特開昭63-62242号公報
甲第12号証:特開昭56-149995号公報
甲第13号証:特公昭55-51837号公報
甲第14号証:実願昭61-130791号(実開昭63-35800号)のマイクロフイルム
甲第15号証:実願昭60-2297号(実開昭61-119585号)のマイクロフイルム
甲第16号証:特開昭62-185932号公報

III.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)「【請求項1】クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、クレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの記号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなるクレーン安全装置。」を
「1.クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示におけるクレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなり、該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図を基準として描かれた障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)であるクレーン安全装置。」と訂正する。
(2)「【請求項2】請求の範囲第1項に記載のクレーン安全装置において、該模式図はクレーン機構のブームの模式図(第5図、B)であって、その形状が変化し且つ動くものであり、該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図ブームを基準として描かれたブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)であるクレーン安全装置。」を
「2.請求の範囲第1項に記載のクレーン安全装置において、該模式図はクレーン機構のブームの模式図(第5図、B)であって、その形状が変化し且つ動くものであり、該ブーム作業範囲を制限するための領域は、スクリーン上の基準から片側部分に識別(第5図、斜線)を付した非作業範囲エリアとして表示されるクレーン安全装置。」と訂正する。
(3)「【請求項3】請求の範囲第1項に記載のクレーン安全装置において、該模式図はクレーンの吊荷位置を示す模式図


であり、該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として所定範囲内の距離目盛を示す指標(第6図、605,606,613,614)であるクレーン安全装置。」を
「3.クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示におけるクレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン吊荷位置であるクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなり、該模式図はクレーンの吊荷位置を示す模式図


であり、該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として該基準からの距離に関し所定範囲内の距離目盛を示す指標(第6図、605,606,613,614)であるクレーン安全装置。」と訂正する。
(4)「【請求項4】請求の範囲第3項に記載のクレーン安全装置において、該模式図吊荷位置は、該スイッチ手段操作に応答して該スクリーン上の所定の固定位置に初期設定されるクレーン安全装置。」を
「4.請求の範囲第3項に記載のクレーン安全装置において、該模式図吊荷位置は、該スイッチ手段操作に応答して該スクリーン上の所定の固定位置に初期設定され、該指標を含む該スクリーン上の限定された範囲内を有効表示エリアとして現在のクレーンの吊荷位置に対応する模式図吊荷位置を示しているクレーン安全装置。」と訂正する
(5)「【請求項7】請求の範囲第1項に記載のクレーン安全装置において、該模式図はクレーン機構のブームの平面図の模式図(第7図、705)であって、ブームの旋回に従って基点を中心に旋回するよう表示されているものであり、該所定の識別パターンは、該ブーム平面模式図の基点を中心に描かれた安全荷重範囲曲線(第7図、A、B)であるクレーン安全装置。」を
「7.クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であつて、複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示におけるクレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなり、選択された第1のモードの画面表示における該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図を基準として描かれた障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)であり、選択された第2のモードの画面表示における該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該クレーン吊荷位置に対応する該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として該基準からの距離に関し所定範囲内の距離目盛りを示す指標(第6図、605,606,613,614)であり、選択された第3のモードの画面表示における該模式図はクレーン機構のブームの平面図の模式図(第7図、705)であって、ブームの旋回に従って基点を中心に旋回するように表示されているものであり、該所定の識別パターンは、該ブーム平面模式図の基点を中心に描かれたクレーンのアウトリガー設定条件に従って変化する安全荷重範囲曲線(第7図、A、B)であるクレーン安全装置。」と訂正する。
(6)「【請求項8】請求の範囲第7項に記載のクレーン安全装置において、該描かれた安全荷重範囲曲線は、クレーンのアウトリガー設定条件に従って変化するものであるクレーン安全装置。」を
「8.請求の範囲第7項に記載のクレーン安全装置において、該クレーン機構模式図表示手段と該所定の識別パターンを表示する手段は該模式図及び識別パターンの表示すべき座標を所定の周期で演算して決定している表示部CPUからなり、更に、該センサーからの信号とクレーン機構の仕様に従ったクレーンの動作状態各々に関する記憶された最大定格荷重データとを参照してクレーン機構の動作上の安全に関する警報信号を生成するための本体CPUを該表示部CPUとは別個に含み、該表示部CPUと該本体CPUが1つのクレーン上に載置された構成であるクレーン安全装置。」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否
(2-1)上記訂正(1)は、(i)「複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示における」及び「所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図を基準として描かれた障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)である」との構成要件を付加して構成を限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであり、(ii)誤記の訂正を目的として、「該センサーからの記号」を「該センサーからの信号」と訂正するものと認められる。そして、上記(i)の付加した構成要件は、願書に添付した明細書の「本発明に従うクレーンの安全装置は、複数のモードのクレーン動作……制御されている。」(特許公報3頁6欄17〜22行)、「表示ユニットBの……モード選択に応じ表示は第5図乃至第9図のごときが選択される。」(同公報4頁8欄33〜36行)の記載事項、及び訂正前の請求項2の「所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図ブームを基準として描かれたブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)である」の記載事項の範囲内にあるものと認められ、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないものと認められる。
【請求の理由1、4について】
請求人は当初、「スイッチ手段」による操作で入力される指令は不明であり、訂正請求後には表示切換指令でないことが明らかにされたので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものである旨主張した。しかしながら、「スイッチ手段」による操作で入力される指令は、特許請求の範囲の記載からは、スクリーン上に所定の識別パターンを表示させる指令であることは文章上も明らかであり、不明であるとは認めらない。したがって、訂正請求後に、「スイッチ手段」による操作で入力される指令が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものである旨の主張も認められない。
(2-2)【請求の理由3について】
上記訂正(2)は、訂正請求項1の訂正を伴うと共に、「該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図ブームを基準として描かれたブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)である」を削除し、「該ブーム作業範囲を制限するための領域は、スクリーン上の基準から片側部分に識別(第5図、斜線)を付した非作業範囲エリアとして表示される」との構成要件を付加して構成を限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであると認められる。そして、上記の付加した構成要件は、願書に添付した明細書の訂正前の請求項1の「そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として」、「識別パターンを表示する」の記載事項、及び第5図(A)〜(E)の図示された事項の範囲内にあるものと認められ、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないものと認められる。
また、請求の理由3において、請求人は、訂正請求項2に係る発明に記載された「識別(第5図、斜線)」は「識別」を斜線に限定する趣旨であるのか、「識別」の例示であるのか全く不明である旨を主張している。
この点を言及すると、特許請求の範囲においては図面に使用した引用符号等を用いることは許容されている。しかしながら、これはその発明の技術的創作の内容をより理解しやすくするための補助手段にすぎないから、当該発明の技術的内容を符号等を用いて図示されたもののみ限定解釈されるべきものではない。したがって、該主張は認められない。
(2-3)上記訂正(3)は、訂正請求項1の訂正と整合させ、しかも、請求項1の従属形式記載を独立形式記載に改め、更に、「該基準からの距離に関し」との構成要件を付加して構成を限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであると認められる。そして、上記の付加した構成要件は、願書に添付した明細書の「第6図の表示の実線で示すターゲット・インデックスマーク605と606は・・・夕ーゲット・インデックスマークの最内側のマークの一辺は15cm、次のマークの一辺は30cmそして最外側のマークの一辺は60cmの実際の距離に対応するようにされている。・・・吊荷の位置607はその0点からの距離で画面上に表示するようにする。」(同公報7頁13欄6〜16行)の記載事項及び第6図の図示された事項の範囲内にあるものと認められ、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないものと認められる。
(2-4)上記訂正(4)は、訂正請求項3の訂正を伴うと共に、「該指標を含む該スクリーン上の限定された範囲内を有効表示エリアとして現在のクレーンの吊荷位置に対応する模式図吊荷位置を示している」との構成要件を付加して構成を限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであると認められる。上記の付加した構成要件は、願書に添付した明細書の「点線613と614で示した枠は、第1と第2のポイントの座標系の有効表示エリアであり、・・・操作者は知ることができる。」(同公報7頁13欄27〜39行)の記載事項の範囲内にあるものと認められ、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないものと認められる
(2-5)上記訂正(5)は、訂正請求項1の訂正と整合させ、しかも、請求項1の従属形式記載を独立形式記載に改め、更に「該模式図はクレーン機構のブームの平面図の模式図(第7図、705)であって、ブームの旋回に従って基点を中心に旋回するよう表示されているものであり、該所定の識別パターンは、該ブーム平面模式図の基点を中心に描かれた安全荷重範囲曲線(第7図、A、B)である」を削除し、「選択された第1のモードの画面表示における該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図を基準として描かれた障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)であり、選択された第2のモードの画面表示における該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該クレーン吊荷位置に対応する該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として該基準からの距離に関し所定範囲内の距離目盛りを示す指標(第6図、605,606,613,614)であり、選択された第3のモードの画面表示における該模式図はクレーン機構のブームの平面図の模式図(第7図、705)であって、ブームの旋回に従って基点を中心に旋回するように表示されているものであり、該所定の識別パターンは.該ブーム平面模式図の基点を中心に描かれたクレーンのアウトリガー設定条件に従って変化する安全荷重範囲曲線(第7図、A、B)である」との構成要件を付加して構成を限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであると認められる。そして、上記の付加した構成要件は、訂正前の請求項2、3、7及び8の記載事項、並びに願書に添付した明細書の「画面上の安全荷重範囲エリア表示は設定されたアウトリガー条件によって変わる。」(同公報7頁14欄33〜34行)の記載事項の範囲内にあるものと認められ、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないものと認められる。
(2-6)上記訂正(6)は、訂正請求項7の訂正を伴うと共に、「該描かれた安全荷重範囲曲線は、クレーンのアウトリガー設定条件に従って変化するものである」を削除し、「該クレーン機構模式図表示手段と該所定の識別パターンを表示する手段は該模式図及び識別パターンの表示すべき座標を所定の周期で演算して決定している表示部CPUからなり、更に、該センサーからの信号とクレーン機構の仕様に従ったクレーンの動作状態各々に関する記憶された最大定格荷重データとを参照してクレーン機構の動作上の安全に関する警報信号を生成するための本体CPUを該表示部CPUとは別個に含み、該表示部CPUと該本体CPUが1つのクレーン上に載置された構成である」との構成要件を付加して構成を限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであると認められる。そして、上記の付加した構成要件は、「本発明に従うクレーン安全装置の実施例では、・・・本体CPUと表示部CPUを含み,夫々のCPUは本装置に必要な動作を分担し、・・・追従性の高い動的表示を可能にしている。」(同公報3頁6欄34〜39行)、「表示ユニットBは・・・表示を時々刻々と修正しクレーンの現在の動作状態をそのまま表示するようにしている。」(同公報4頁8欄10〜13行)、「本体ユニットAは、・・・最大定格荷重データをアクセスし、・・・自動停止されるべくクレーン機構A”を制御する信号を発する。・・・本体ユニットAと表示ユニットBには夫々プロセッサ(CPU)が含まれ、本体と表示ユニットAとBは個々独立に夫々のプログラムの下で走行している。」(同公報4頁8欄23〜44行)、「表示ユニットCPUは、・・・ビデオRAMにグラフィックデータを書込み必要なディスプレイ表示を行い、・・・本体ユニットCPUは・・・クレーンを自動停止させる等の制御信号を出力する。」(同公報8頁16欄39〜46行)、及び「ディスプレイ上への表示は所定の時間間隔例えば150ms毎にビデオRAMからグラフィックイメージデータを取出して・・・。即ち150ms毎に表示内容は更新されていく。」(同公報10頁19欄49行〜20欄3行)の記載事項、並びに訂正前の請求項10の記載事項の範囲内にあるものと認められ、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないものと認められる。
3.独立特許要件の判断
(1)訂正明細書の請求項1乃至9に係る発明
訂正請求書に添付した訂正明細書の請求項1乃至9に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載されたとおりの次のものと認める。
「1.クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示におけるクレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなり、該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図を基準として描かれた障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)であるクレーン安全装置。
2.請求の範囲第1項に記載のクレーン安全装置において、該模式図はクレーン機構のブームの模式図(第5図、B)であって、その形状が変化し且つ動くものであり、該ブーム作業範囲を制限するための領域は、スクリーン上の基準から片側部分に識別(第5図、斜線)を付した非作業範囲エリアとして表示されるクレーン安全装置。
3.クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示におけるクレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン吊荷位置であるクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなり、該模式図はクレーンの吊荷位置を示す模式図


であり、該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として該基準からの距離に関し所定範囲内の距離目盛を示す指標(第6図、605,606,613,614)であるクレーン安全装置。
4.請求の範囲第3項に記載のクレーン安全装置において、該模式図吊荷位置は、該スイッチ手段操作に応答して該スクリーン上の所定の固定位置に初期設定され、該指標を含む該スクリーン上の限定された範囲内を有効表示エリアとして現在のクレーンの吊荷位置に対応する模式図吊荷位置を示しているクレーン安全装置。
5.請求の範囲第3項又は第4項に記載のクレーン安全装置において、該指標は該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を中心とした2次元の閉じた領域であるクレーン安全装置。
6.請求の範囲第5項に記載のクレーン安全装置において、初期設定後におけるクレーン機構操作に応じ該模式図吊荷位置が該閉じた領域の境界からはみ出したとき、該境界近傍に沿って該模式図吊荷位置を表示しているクレーン安全装置。
7.クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であつて、複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示におけるクレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなり、選択された第1のモードの画面表示における該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図を基準として描かれた障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)であり、選択された第2のモードの画面表示における該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該クレーン吊荷位置に対応する該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として該基準からの距離に関し所定範囲内の距離目盛りを示す指標(第6図、605,606,613,614)であり、選択された第3のモードの画面表示における該模式図はクレーン機構のブームの平面図の模式図(第7図、705)であって、ブームの旋回に従って基点を中心に旋回するように表示されているものであり、該所定の識別パターンは、該ブーム平面模式図の基点を中心に描かれたクレーンのアウトリガー設定条件に従って変化する安全荷重範囲曲線(第7図、A、B)であるクレーン安全装置。
8.請求の範囲第7項に記載のクレーン安全装置において、該クレーン機構模式図表示手段と該所定の識別パターンを表示する手段は該模式図及び識別パターンの表示すべき座標を所定の周期で演算して決定している表示部CPUからなり、更に、該センサーからの信号とクレーン機構の仕様に従ったクレーンの動作状態各々に関する記憶された最大定格荷重データとを参照してクレーン機構の動作上の安全に関する警報信号を生成するための本体CPUを該表示部CPUとは別個に含み、該表示部CPUと該本体CPUが1つのクレーン上に載置された構成であるクレーン安全装置。
9.請求の範囲第7項又は第8項に記載のクレーン安全装置において、該描かれた安全荷重範囲曲線は閉じた曲線であるクレーン安全装置。」
(2)甲各号証に記載された発明
(A)甲第3号証
甲第3号証には、
(A-1)「同図において.11a,11b,11c,11dは、フロート9a〜9dに負荷された荷重P1〜P4を検出する荷重検出器であり、各荷重検出器11a〜11dの出力信号は重心位置演算手段12に入力される。この重心位置演算手段12は、初期データ設定手段13から受けるフロート間の間隔データL,l及び各荷重検出器11a〜11dから受ける荷重データP1〜P4をもとに前記(1)式に従って演算処理して重心GのX座標およびY座標(x,y)を求める。14は旋回角検出器で、例えば上部旋回体2が正面を向いているときを基準としてそこからの旋回角度φを検出するものであり、その検出信号は旋回位置演算手段15に入力される。この旋回位置演算手段15は上部旋回体2の輪郭QのX座標およびY座標を算出する。すなわち、上部旋回体2の輪郭Qは第7図に示すように7本の直線により形成されており、旋回位置演算手段15は、初期データ設定手段13からの7本の直線についての初期データ、すなわち、上部旋回体2が正面を向いているときの座標Q(xo,yo)および旋回角検出器14からの旋回角φに基づいて各直線についての旋回中心Oの廻りを旋回角φだけ回転したときのQ(x,y)を算出する。16は障害物位置設定手段で、例えはキ一ボード等によって障害物の位置をインプットすると、その障害物RのX座標、Y座標を示す信号を出力する。17は表示信号発生回路で、重心位置演算手段12の出力G(x,y)、旋回位置演算手段15の出力Q(x,y)および障害物位置設定手段16の出力R(x,y)を受け、受けたデータをそれそれ所定のアドレスに一時的に記憶するとともにそのデータに対して表示に必要な処理を施し、表示信号を例えばCRT等の表示体18へ送出する。表示体18は、このような表示信号発生回路17により、例えば第7図に示すように.障害物R(x,y)の位置と、時々刻々変化する重心G(x,y)および上部旋回体2の輪郭Q(x,y)の位置の表示制御を行う。」(公報5頁右下欄15行〜6頁右上欄15行)、
(A-2)「同図において、24は例えば、XーYマトリックス液晶表示体であり、その前面には第7図に示した各ラインI、Jおよびフロート9a〜9dを予め表示した透明板よりなる安定度表示手段としての領域表示板25が重ねられている。液晶表示体24には、重心G、上部旋回体2の模式的な輪郭Q、および障害物8の位置(輪郭)Rが表示される。以上のようにして、クレーンの上部旋回体2内のオペレータ7の前面に配置された液晶表示体10において、重心Gおよび上部旋回体2の位置Qが第7図に示すような各領域S,T,Uおよび障害物8の位置Rに対してそれぞれどのような位置関係にあるかを見ることにより、クレーンが安定状態にあるか否か、あるいはクレーンの周囲が作業を行うのに安全であるか否かを一目で判断することができる。また、重心Gの位置によりどの方角が最も危険であるかを事前に察知することが可能となる。このようにして、オペレータ単独で周囲の状況を把握しつつ安全にクレーンの作業を行うことができる。しかも従来のモーメントリミッタ表示方式では吊荷が揺動した場合、その状態を正確に把握することができなかったが、上記実施例によれば、トラッククレーン全体の重心位置が各領域の上を移動するのを視認できるので、吊荷の揺動による危険度合も明確かつ容易に把握できる。」(公報7頁右上欄20行〜右下欄6行)、
(A-3)「そして上部旋回体2の外部輪郭Qが障害物8の位置Rの近傍にあるときは、その上部旋回体2が障害物8に接触する虜れがあることを示す。」(公報5頁右下欄6行〜8行)、
(A-4)「障害物8の位置R(x,y)は一定と考えることができ、例えばクレーンの作業前に上部旋回体2を旋回させ、上部旋回体2の輪郭Q(x,y)の一部が障害物8に接触あるいは接触する直前の旋回角φにおける輪郭Q(x,y)をR(x,y)として求めることができる。」(公報5頁左下欄3行〜9行)、及び
(A-5)「また、各フロート9a〜9dからの距離を実測して設定することもできる。」、(公報5頁左下欄9行〜11行)の記載がある。
(A-6)上記(A-5)及び(A-1)中の「例えはキ一ボード等によって障害物の位置をインプットすると」の記載からは、障害物Rの位置データはキ一ボード等でインプット(数値入力)するものと認められ、(A-1)に記載されたように各データをそれぞれ所定のアドレスに一時的に記憶するとともにそのデータに対して表示に必要な処理を施すもので、障害物Rを独立表示可能なものであると認められる。
仮に、障害物Rの位置データはキ一ボード等でインプット(数値入力)するものでないとしても、上記(A-4)には、「旋回角φにおける輪郭Q(x,y)をR(x,y)として求めることができる。」と記載されているだけで、該記載は単に障害物Rの位置データを求めることができると記載されているにすぎない。即ち、(A-4)の記載には、「キーボード」の操作に応答して輪郭Qに対する障害物Rの位置に係るCRT上の表示の事項についての記載があるものとは認められない。以上から、上記(A-1)の記載は、CRT上に上部旋回体の輪郭Q、障害物R、重心G及びラインI,Jを、それぞれ相対位置関係において表示することが記載されているものと認められる。
特に、CRT上に上部旋回体の輪郭Qと障害物Rを相対位置関係において表示することは、上部旋回体の輪郭Qと障害物Rを、それぞれCRTの座標軸に対する表示すべき座標を決定して表示することであって、障害物Rを上部旋回体の輪郭Qを基準として表示するものではなく、結果として、上部旋回体の輪郭Qと障害物Rが相対位置関係において表示されているにすぎないものと認められる。
したがって、これらの記載及び図面等を参酌すると、甲第3号証には、
「クレーン機構の動作状態を検出する検出器からの信号を受信する手段とCRT等の表示手段とを含むクレーン安全装置であって、クレーン機構の一部の上部旋回体の輪郭Qを該CRT上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該検出器からの信号に応答して該CRTの座標軸に対する該上部旋回体の輪郭Qの表示すべき座標を決定しているクレーン機構旋回体表示手段、及びキーボード手段を含み、キーボードの操作に応答して、CRT上に上部旋回体の輪郭Q、障害物Rの位置、重心Gの位置及びラインI,Jの相対位置関係を表示する手段とからなり、障害物Rは、該キーボード操作時に上部旋回体の作業範囲を制限するための障害物の位置であり、重心Gの位置及びラインI,Jはアウトリガー設定条件に従って変化する安全荷重範囲曲線であるクレーン安全装置。」が記載されているものと認められる。
(B)甲第1号証
甲第1号証には、
(B-1)「状態量検測手段等を付して構成されるクレーンの安全操作指示盤」(公報1頁左欄第8〜9行)、
(B-2)「第5図は第2,4図に対応する指示部を搭載した旋回指針(47)を、その基点中心で設け全方位表示面上をクレーン旋回に応じ回動させ、表示面(44)上に支抗力圏線図(41)、障害物存在線図(52)を表示させ、」(公報1頁右欄第23行〜2頁左欄1行)、
(B-3)「(3)(23)は障害物迄の距離設定子、(5)(25)は過負荷限界設定子・・・設定子(3)(5)等は位置による電気抵抗での電圧信号を出し、対応値の電圧と比較判断させて警報出力を得る。」(公報1頁右欄第9〜15行)、及び
(B-4)「第6図は旋回角位置Bにおける、接地条件を入れた支抗力算定手法を示すもので・・・クレーンの倒れ防止抗力として旋回指針上のLWcosAと比較されるべきものである。」(公報2頁左欄第4〜10行)の記載がある。
(B-5)上記(B-2)の記載は、表示面に旋回指針、支抗力圏線図及び障害物存在線図を、それぞれ相対位置関係において表示するものと認められる。
これらの記載及び第5図等を参酌すると、甲第1号証には、
「クレーン機構の動作状態を検出する検測手段からの信号を受信する手段と表示面を有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、旋回指針を該表示面上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該検測手段からの信号に応答して該表示面の座標軸に対する該旋回指針の表示すべき座標を決定しているクレーン機構旋回指針表示手段、及び該表示面上に旋回指針、支抗力圏線図及び障害物存在線図の相対位置関係を表示する手段とからなり、障害物存在線図は障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域であり、支抗力圏線図は安全荷重範囲曲線であるクレーン安全装置。」が記載されているものと認められる。
(C)甲第4号証
甲第4号証には、
(C-1)「前記検出部1は、第2図に示すクレーンブーム6の旋回角度aを検出するために、図示しないが例えばブームの回転部分に装着されたアブソリュート式のロータリーエンコーダ等による旋回角度検出器と、第3図に示すクレーンブーム6の起伏角度bを検出するために、図示しないが例えばブームの伏仰部分に装着されたアプソリユート式のロータリーエンコーダ等による起伏角度検出器と、吊り荷7用のフック8に繋着されたワイヤ一9の長さcを検出するために図示しないが例えばワイヤ一の巻取部分に装着され巻上量を計測するアブソリュート式のロータリーエンコーダ等によるワイヤ一長さ検出器とを備えている。これらの各検出器は、クレーンの動作中におけるブームの旋回角度と起伏角度及びフックワイヤーの長さに関する計測を行って,このデータを順次端末制御部2に送り出す。」(公報2頁右上欄19行〜左下欄15行)、
(C-2)「ハ.中央制御部4から規制区域、建造物平面図、最大作業半径、クレーンの設置位置データ等の固定データが送信され、これを受信した端末制御部2ではデータをバッファにメモリさせると共に前記建造物断面データと合成して第4図および第5図に示すようなクレーンの水平面投影図と垂直面投影図をディスプレイの同一画面上に表示させる。」(公報3頁左下欄第3〜10行)、及び
(C-3)「へ.前記端末制御部2からの最初の検出データを受信した中央制御部4は、これをバッファに格納すると共に、前記の規制区域その他管理に必要な固定データを呼び出して検出データとの間で警報データの演算その他必要な演算処理を行う。これによりフック座標、ブーム旋回角、ブーム起伏角、ブームの平面、ブームの側面等の初期状態における第2図および第3図を作図に必要な表示データと、この初期状態において警報を発する必要があるか否かの警報データを作成し、これら表示データと警報データとをバッファに格納すると共に、端末制御部2に送信したのち次なる検出データを受入れできるようインタラプトコントローラーを初期化しておく。」(公報3頁右下欄4〜18行)の記載がある。
(C-4)上記(C-2)の記載は、ディスプレイ上に建造物断面データ、クレーン機構の水平面投影図、垂直面投影図を、それぞれ相対位置関係において表示するものと認められる。
これらの記載及び第4,5図等を参酌すると、甲第4号証には、
「クレーン機構の動作状態を検出する検出器からの信号を受信する手段とディスプレイを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、クレーン機構の水平面投影図、垂直面投影図を該ディスプレイ上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該検出器からの信号に応答して該ディスプレの座標軸に対する該平面投影図、垂直面投影図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構平面投影図、垂直面投影図の表示手段、及び、該ディスプレ上に建造物断面データ、クレーン機構の水平面投影図、垂直面投影図の相対位置関係を表示する手段とからなり、建造物断面データ及びクレーン機構の各投影図はブーム作業範囲を制限するための領域であるクレーン安全装置。」が記載されているものと認められる。
(D)甲5号証
甲第5号証には、
「続いて第6図、第7図によりこの装置による作業方法を説明する。第6図はディスプレイ装置の側面表示画面を示す図、第7図は正面表示画面を示す図である。作業開始にあたり、ディスプレイ装置70の電源スイッチ71をONにする。作業内容により画面の表示方式を表示画面選択スイッチ75と76により決める。まず第6図により側面表示による作業方法を説明する。・・・バケット先端を作業の基準となる適当な位置に置き作業内容を考慮してスケール設定選択スイッチ73、あるいは自動選択スイッチ74によりスケール目盛を調節し、垂直ボリューム77、水平ボリューム78によりカーソルを適当な位置に移動させる。その後、作業基準としてディスプレイ画面70Aにバケットのある位置をグランドライン84として表示する。次に作業予定ライン85をカーソルの位置から判断し入力キー79により入力表示させる。これにより以降バケット先端位置(つまりカーソル81,82)とグランドライン84および作業予定ライン85を比較しながらパワーシャベルによる作業を行なえば、現在の作業状況が確認される。以上による作業中、正面からの作業状況把握が必要な時は.正面表示スイッチ76により第7図に示される正面表示画面を呼びだす。」(公報8頁14行〜10頁2行)の記載があり、該記載及び第5〜7図等を参酌すると、甲第5号証には、パワーショベルのバケット位置確認機構の画面表示において、「側面表示画面、正面表示画面という複数モードの画面表示の中から選択されたモードの画面表示を行う」点が記載されているものと認められる。
(E)甲第6号証
甲第6号証には、
(E-1)「制御回路4は、作業モードとして走行モードが選択されている場合には.各種センサ群6の出力のうち、走行に関するセンサ7の出力のみを選択し、選択したセンサの出力内容に対応する画像データを作成して、それぞれ画像装置3の両面の適所に表示すべくその画像データをビデオラム5の対応するアドレスに蓄える。また、作業モードとして荷役モードが選択されている場合には、各種センサ群6の出力のうち、荷役に関するセンサの出力のみを選択するとともに、選択したセンサの出力から例えばモーメントや作業半径等の演算も実行し、選択したセンサの出力内容および上記演算内容に対応する画像データを作成して、それぞれ画像装置3の画面の適所に表示すべくその画像データをビデオラム5の対応するアドレスに蓄える。」(公報2頁右下欄4〜18行)、及び
(E-2)「上記ビデオロム1および2に格納されている画像データは、ラフテレインクレーンの走行と荷役の各操作モードを選択切り換えする切換スイッチS1,S2によっていずれか一方が選択され、制御回路4は、切換スイッチS1,S2によって選択されたビデオロムの画像データを呼び出し、これをビデオラム5に一時貯える。なお、上記切換スイッチS1とS2は連動して動作する。」(公報2頁右上欄9〜16行)の記載がある。これらの記載及び第2,3図等を参酌すると、甲第6号証には、クレーンの画面表示において、「走行と荷役という複数モードの画面表示の中から選択されたモードの画面表示を行う」点が記載されているものと認められる。
(F)甲第7号証
甲第7号証には、
(F-1)「同図に示すビデオROM1には.第2図に例示するような基本画像についての画像データが格納されている。またCPU2には、車両の各部に配置されたセンサ3・・・、選択スイッチ4およびテレビカメラ5の各出力が入力インターフェイス回路6を介して加えられている。なお上記テレビカメラ5は、車両の後方視界をとらえるべく該車両の適所に配議されている。」、(公報3頁20行〜4頁7行)、及び
(F-2)「一方、選択スイッチ4が接点bに接続されて表示モードIIが選択されると、・・・CRT9の画面には第4図に例示するようなTVカメラ5による画像が表示される。また、選択スイッチ4が接点cに接続されて表示モードIIIが選択されると、・・・CRT9において第5図に示すような画像が表示される。つぎに、選択スイッチ4が接点dに接続されて表示モードIVが選択されると、・・・第6図に示すような画像がCRT9に表示される。」(公報6頁7行〜7頁15行)の記載がある。これらの記載及び第3〜6図等を参酌すると、甲第7号証には、車両のモニタ画面表示において、「複数モードの画面表示の中から選択されたモードの画面表示を行う」点が記載されているものと認められる。
(G)甲第8号証
甲第8号証には、
「(1)機械の稼動状態を表わす数種の表示要素を表示器に表示する表示装置であって.前記表示要素を1個の継続表示要素と残りの選択表示要素に分け、後者は選択表示信号の入力によって表示され、前者は選択表示信号が入力していないとき表示されるようにしてなる機械の稼動状態表示装置。
(2)・・・・呼出信号の入力によって表示中の選択表示要素の表示が継続表示要素の表示に切換るようにしてなる機械の稼動状態表示装置。」(公報1頁特許請求の範囲の抜粋)と記載され、該記載と図面等を参酌すると、甲第8号証には、クレーンの画面表示において、「複数モードの画面表示の中から選択されたモードの画面表示を行う」点が記載されているものと認められる。
(H)甲第2号証
甲第2号証には、
(H-1)「同図において、13は、実吊荷重演算部であり、この実吊荷重演算部13において、モーメント応答値検出器9からの出力成分のうちから、ブーム自重成分を除いた実吊荷重成分のみが出力され、この出力信号が、関数発生器14へ入力されると、同関数発生器14は、この入力信号が定格荷重成分に相当する時の起伏角度θ1を出力し、この起伏角度信号と共に、ブーム長検出器10からのブーム長l信号を定格作業半径演算部15へ入力すると、この定格作業半径演算部15では、定格作業半径R1を出力する。16は、実作業半径演算部であり、現実の実作業半径Rを出力する。17は、荷重位置演算部であり、前記実作業半径Rと、旋回角度検出器12の旋回角度αの各信号を受けてブーム6の先端Pの座標(X0、Y0)を出力する。」(公報2頁右下欄3〜17行)、及び
(H-2)「次に、これら、R,R1,W(XO,Y0)の表示面上への表示につい説明すると、第5図において、18は表示面であり、同表示面18上には常時キャリア19の表示と寸法目盛20の表示が行われ、左右側方へ張り出し設置されるアウトリガ3の接地板を示す21及びキャリアの前部のアウトリガ3の接地板を示す22は、アウトリガの伸長量及びそ有無によってその位置を変えたり消滅するものであり、これらアウリガの状態は、各アウトリガ状態を検出するセンサー(図示せず)から表示部23へ入力され、同表示部23では、この入力に基づいて表面18上へ表示するものである。・・・25は、表示部23へ入力された荷重位置W(Xo,Yo)の入力信号に基づいて描かれた光点であり、同光点25とキャリア19の旋回中心19′は、直線25′で結ばれた表示が行なわれるようにしている。26は、表示部23へ入力された定格作業半径R1の入力信号に基づいて描かれた定格作業半径曲線である。・・・また、以上の実施例では、キャリアの前部のアウトリガの接地板22を接地してクレーンの吊上性能が全周同一となる場合について述べたが、接地板22を使用しない場合には、ブームを車両の進行側に位置せしめて作業するとクレーンの吊上性能がダウンする、所謂前方領域ができるが、この場合には、前記定格作業半径曲線26が、前方領域においては他の領域に比して旋回中心的19′側に近寄ってくること勿論である。」(公報3頁左上欄4行〜右上欄14行)の記載がある。
(H-3)上記(H-2)の記載は、スクリーン上に実作業半径、定格作業半径曲線を、それぞれ相対位置関係において表示するものと認められる。
これらの記載及び第5図等を参酌すると、甲第2号証には、
「クレーン機構の動作状態を検出する検出器からの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示部とを含むクレーン安全装置であって、クレーン機構の一部である実作業半径を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該検出器からの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該実作業半径の表示すべき座標を決定しているクレーン機構実作業半径表示手段、及びスクリーン上に実作業半径、定格作業半径曲線の相対位置関係を表示する手段とからなり、定格作業半径曲線はアウトリガー設定条件に従って変化する安全荷重範囲曲線であるクレーン安全装置。」が記載されているものと認められる。
(I)甲第9号証
甲第9号証には、
「又、コントロールパネル14には表示装置19が設けられ、その画面19aには第3図に示すようにプラットホーム13の可能作業範囲線Zを含む縦方向が高さ横方向が半径を示し、1升目が本実施例では1メートルの升目状の作業マッフ20とプラットホーム13を示す絵21及び下側アウタ及びインナブーム5,7を総称した下側ブームを示す絵22aと上側アウタ及びインナブーム9,11を総称した上側ブームを示す絵22bが表示される。」(公報3頁左上欄18行〜右上欄7行)と記載され、該記載及び図面等を参酌すると、甲第9号証には、高所作業車のプラットホームの画面表示において、「プラットホームと可能作業範囲線Zの相対位置関係を表示する」点が記載されているものと認められる。
(J)甲第10号証
甲第10号証には、
「従来この種の装置は第1図に示すようにテレビカメラ4で、目標位置を示すレチクル3と、目標物体であるターゲット2を重畳して画面として同時にとらえ、その画面を人間がモニターテレビでモニタしながら、マニュアルで目標位置に設定していた。ここで目標位置を示すレチクルは第2図に示すような上下左右の直線一本ずつと、数個の同心円で構成され、ターゲットの中心をレチクルの中心に適確に且つ迅速に合致せしめるために設置されている。」(公報1頁右欄6〜15行)と記載され、該記載と図面等を参酌すると、甲第10号証には、「目標位置を示すレチクルは上下左右の直線一本ずつと、数個の同心円で構成され、ターゲットの中心をレチクルの中心に適確に且つ迅速に合致せしめるターゲット設定装置」が記載されているものと認められる。
(K)甲第11号証
甲第11号証には、
(K-1)「ワイヤボンディングを行うためには、このワイヤボンディング装置に対してボンディング位置座標の入力を行わねばならない。この座標の入力方法として、最も一般的なのはティーチング作業を行う方法である。この方法は、ワイヤボンディングの対象物をTVカメラによつて局部的に拡大してモニタ上に映し出し、このモニタ上の画像を見ながらオペレータがボンディングすべき位置座標を指示するという作業を行うもので、」(公報2頁左上欄13行〜右上欄1行)、
(K-2)「ここでは、ボンディングパッドとインナリード先端部とを相互にボンディングする場合を考える。はじめにオペレータはボンディングパッドおよびインナリード先端部それぞれについて位置合わせに最適な照準マークを設定する。例えばボンディングパッドについては第2図(a)に示すような正方形状パターン2aを、インナリード先端部については第2図(b)に示すような円形パターン2bを、それぞれ設定すればよい。このとき、照準マークを表示する装置に、縦横が任意の寸法を有する四角形および半径が任意の寸法を有する円形のパターンを自由に表示できる機能を持たせておけば、オペレータは容易に最適なパターン設定を行うことができる。このようにして各目標パターン(ここではボンディングパッドとインナリード先端部)について設定された各照準マークは、装置内に記憶される。」(公報3頁左上欄20行〜右上欄16行)、及び
(K-3)「例えばボンディングパッド3についての位置指定を行う際には、第1図(a)に示すように正方形状パターン2aを選択して表示させ、インナリード4aまたは4bについての位置指定を行う際には、第1図(b)に示すように円形パターン2bを選択して表示させる。このようにして、位置指定のための入力操作に同期させて2つの照準マークを交互に切換えて表示させるようにすればボンディングパッド3の位置指定時には、これに最適の正方形状パターン2aを用いた位置合わせができ、インナリード4a,4bの位置指定時には、これに最適の円形パターン2bを用いた位置合わせができることになる。」(公報3頁左下欄8〜20行)の記載がある。これらの記載及び図面等を参酌すると、甲第11号証には、モニター上の画面を見ながらボンディングすべき位置の指定を行うワイヤボンディング装置において、「各目標パターンについて設定された各照準マークが2次元の閉じた領域である」点が記載されているものと認められる。
(L)甲第12号証
甲第12号証には、
(L-1)「すなわちクレーン1が作業現場の所定位置に設置されており、まず、車輌側面とビル等の四角柱状の障害物D1との平行面間距離に基づき直角座標系のX軸設定器を用いX軸方向の安全作業範囲の境界面Fxが設定される。・・・旋回角の安全作業範囲の境界面Fαが決定される。また、送電線等の障害物D3による高さ方向すなわちZ軸方向の安全作業範囲境界面Fzは直角座標系のZ軸設定器に高さhwに対応する信号を設定することにより決定される。以上により第8図及び第9図に示された複雑な形状の安全作業領域Wを実質的に画成することができる。」(公報3頁右下欄11行〜4頁左上欄7行)、及び
(L-2)「比較器の少なくとも1つからハイレベル信号を受入すると即刻警報信号或いは停止信号が発生し、これにより障害物との接触あるいは衝突の危険を防止している。」(公報3頁右下欄1〜4行)の記載がある。これらの記載及び第4、7〜9図を参酌すると、甲第12号証には、スクリーン上ではないが、作業現場の障害物とクレーン車輛の位置関係において、「予め初期設定により画成された安全作業領域から、車輛がはみでると、警報信号あるいは停止信号を発生する。」点が記載されているものと認められる。
(M)甲第13号証
甲第13号証には、
「一方第3図は作業現場の平面図であって、円a内はブーム4の先端のえがく平面的軌跡の最大範囲を示している。またbは鉄道、cは道路等であって、これらはいずれも上記円a内の一部を通過しているので、その円弧部分d,eはクレーンの作業制限範囲となる。」(公報2頁右欄29〜34行)の記載があり、該記載と第2〜4図を参酌すると、甲第13号証には、ブーム作業制限領域を特定の面積をもったエリアとして設定する技術が記載されているものと認められる。
(N)甲第14号証
甲第14号証には、
「ブームの起伏角度と、ブームの伸縮長さと、ブームの旋回位置と、アウトリガの張出し長さを検出して、ブームの作動範囲を規制するようにした転倒防止装置において、作業車に固有の性能により定められる円形の作業範囲と、アウトリガの張出し状態によって定められる直線状の作業範囲とを合成して規制作業範囲を構成するものである。」(公報2頁12〜19行)の記載があり、該記載と図面を参酌すると、甲第14号証には、周方向に半径の異なる転倒防止用規制作業範囲を構成する技術が記載されているものと認められる。
(O)甲第15号証
甲第15号証には、
「モーメント座標点が出力される表示部としてのCRT13には、パーソナルコンピュータ10の記憶部に予め記憶されたデータ、即ち吊荷重及び作業半径から決まるモーメント性能曲線データが、パーソナルコンピュータ10によって、安全、注意、危険等複数ゾーンに分けてグラフ表示されるようになっている。」(公報5頁19行〜6頁5行)の記載があり、該記載と第3図等を参酌すると、甲第15号証には、吊上荷重曲線及び現在の吊上状態ポイントを表示する技術が記載されているものと認められる。
(P)甲第16号証
甲第16号証には、
「上記モニタテレビ19の画面上に探削深度を数値表示させることも可能であり、またバケツト先端が探削深度をオ-バ-した場合にランプ、プザ-等の警報手段を作動させることも可能である。ところで、掘削作業には溝掘削作業の他にいわゆる法面掘削作業がある。この実施例はこの法面掘削作業にも適用でき、その場合、まず法面にバケット3が当接する位置まで作業機が伸ばされ、その位置におけるバケット先端点Dの座標(XD,YD)が図示されていないスイッチの操作でメモリ9に読込まれる。ついで法面角度設定器20で設定された法面角度θがCPU12に取込まれ、そして上記座標(XD,YD)を通りかつX軸に対し角度θをなす目標掘削ラインがCPU12で作成される。この目標掘削ラインはメモリ11に格納され、これによって第3図に示すモニタテレビ19の画面上にラインL’として表示される。」(公報3頁左下欄5行〜右下欄2行)の記載があり、該記載及び図面等を参酌すると、甲第16号証には、バケット先端位置を所望の位置に選択した状態で、図示しないスイッチを操作することにより、そのバケット先端の座標(XD,YD)がメモリに取込まれ、この座標を通る目標掘削ラインが設定表示される技術が記載されているものと認められる。
(3)対比・判断【請求の理由2,5について】
(3-1)【訂正請求項1に係る発明と甲各号証に記載された発明との対比・判断】
訂正請求項1に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、甲第3号証に記載された「検出器」、「CRT」、「上部旋回体の輪郭Q」、「キーボード手段」、及び「障害物Rの位置」は、それぞれの機能・構成に照らし、訂正請求項1に係る発明の「センサー」、「2次元スクリーン」、「模式図」、「スイッチ手段」、及び「識別パターン」に相当するから、両者は、
「クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、クレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、該スイッチ手段の操作に応答して、該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなるクレーン安全装置」の点で一致し、以下の3点で相違する。
(3-1-a)モードの画面表示に関し、本件訂正請求項1に係る発明が「複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示」であるのに対し、甲第3号証に記載のものは同一画面に上部旋回体の作業範囲を制限するための障害物の位置及びアウトリガー設定条件に従って変化する安全荷重範囲曲線を同時に表示する点、
(3-1-b)識別パターンの表示に関し、本件訂正請求項1に係る発明が「スイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する」のに対し、甲第3号証に記載のものはキーボードの操作に応答して、CRT上に上部旋回体の輪郭Q、障害物Rの位置、重心Gの位置及びラインI,Jの相対位置関係を表示する点、
(3-1-c)識別パターンの形状に関し、本件訂正請求項1に係る発明が「障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域である」のに対し、甲第3号証に記載にものは障害物の位置である点。
以下、各相違点について検討する。
【相違点(3-1-a)について】
クレーン・建設車輛等の表示装置において、複数のモードのクレーン・車輛動作に関する画面表示から選択されたモードの画面を表示する点は、甲第5〜8号証に示される如く、本件特許の出願前周知である。したがって、甲第3号証の同一画面に複数のモードを同時表示することに代えて、複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面を表示することは、当業者が容易に想到し得ることであり、上記相違点(3-1-a)における本件訂正請求項1に係る構成は、当業者が容易に想到し得る事項にすぎないものと認められる。
【相違点(3-1-b)について】
請求人は、甲第3号証には「キーボードの操作に応答して、CRT上に旋回体の輪郭Q、障害物Rの位置、重心Gの位置及びラインI,Jの相対位置関係を表示する手段」が記載されているので、この相対位置関係の表示が、本件訂正請求項1の「スイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段」である旨主張している。しかしながら、上記III.3.(2)(A)の(Aー6)に示したように、甲第3号証に記載の上記相対位置関係の表示は、キーボードの操作に応答して、輪郭Qに対する障害物Rの位置に係るCRT上の表示に関するものであるものとは認められず、上部旋回体の輪郭Qと障害物Rを、それぞれCRTの座標軸に対する表示すべき座標を決定して表示することであって、障害物Rを上部旋回体の輪郭Qを基準として表示するものではなく、結果として、上部旋回体の輪郭Qと障害物Rが相対位置関係において表示されているにすぎないものと認められる。
したがって、甲第3号証に記載された発明には、訂正請求項1記載の
(b-イ)識別パターンを「スクリーン上に表示されている模式図を基準として」表示する点、及び
(b-ロ)操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、「そのとき該スクリーン上に表示されている模式図」を基準として、「該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する」点、
の構成は記載されているものとは認められない。
そして、甲第1、2、4及び5〜16号証に記載されたものは、いずれも、訂正請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項である「スイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段」を備えるものではない。
したがって、相違点(3-1-b)の訂正請求項1に係る構成は、甲第1〜8号証、もしくは甲第1〜16号証に記載されたものに基づいて、当業者が容易に想到し得たものとすることもできない。
【相違点(3-1-c)について】
甲第1,4号証には、識別パターンの形状が、障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域である点が記載されている。甲第3号証の障害物の位置に代えて、ブーム作業範囲を制限するための領域とすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、上記相違点(3-1-c)における本件訂正請求項1に係る構成は、当業者が容易に想到し得る事項にすぎないものと認められる。
そして、訂正請求項1に係る発明は、相違点(3-1-b)の訂正請求項1に係る構成により、訂正明細書記載の顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、本件訂正請求項1に係る発明が甲第1〜4号証に記載された発明であるとすることはできないし、本件訂正請求項1に係る発明が甲第1〜8号証、もしくは甲第1〜16号証に記載されたものに基づいて、当業者が容易に想到し得たものとすることもできない。
(3-2)【訂正請求項2に係る発明と甲各号証に記載された発明との対比・判断】
訂正請求項2に係る発明は、訂正請求項1に係る発明に「模式図はクレーン機構のブームの模式図(第5図、B)であって、その形状が変化し且つ動くものであり、該ブーム作業範囲を制限するための領域は、スクリーン上の基準から片側部分に識別(第5図、斜線)を付した非作業範囲エリアとして表示される」という構成要件を付加して限定したものであるから、訂正請求項2に係る発明は、訂正請求項1に係る発明と同様の理由で、甲第1〜4号証に記載された発明であるとすることはできないし、本件訂正請求項2に係る発明が、甲第1〜8号証、もしくは甲第1〜16号号証に記載されたものに基づいて、当業者が容易に想到し得たものとすることもできない。
(3-3)【訂正請求項3に係る発明と甲各号証に記載された発明との対比・判断】
訂正請求項3に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、甲第3号証に記載された「検出器」、「CRT」、「上部旋回体の輪郭Q」、「キーボード手段」、及び「障害物Rの位置」は、それぞれの機能・構成に照らし、訂正請求項3に係る発明の「センサー」、「2次元スクリーン」、「模式図」、「スイッチ手段」、及び「識別パターン」に相当するから、両者は、
「クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、クレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、該スイッチ手段の操作に応答して、該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなるクレーン安全装置」の点で一致し、以下の4点で相違する。
(3-3-a)モードの画面表示に関し、本件訂正請求項3に係る発明が「複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示」であるのに対し、甲第3号証に記載のものは同一画面に上部旋回体の作業範囲を制限するための障害物の位置及びアウトリガー設定条件に従って変化する安全荷重範囲曲線を同時に表示する点、
(3-3-b)識別パターンの表示に関し、本件訂正請求項3に係る発明が「スイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する」のに対し、甲第3号証に記載のものはキーボードの操作に応答して、CRT上に上部旋回体の輪郭Q、障害物Rの位置、重心Gの位置及びラインI,Jの相対位置関係を表示する点、
(3-3-c)模式図の形状に関し、本件訂正請求項3に係る発明が「クレーンの吊荷位置を示す模式図」であるのに対し、甲第3号証に記載のものはクレーンの上部旋回体の輪郭である点、
(3-3-d)識別パターンの形状に関し、本件訂正請求項3に係る発明が「スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として該基準からの距離に関し所定範囲内の距離目盛を示す指標」であるのに対し、甲第3号証に記載のものは障害物の位置である点。
次に上記各相違点について検討するが、少なくとも、上記相違点(3-3-b)の訂正請求項3に係る構成は、上記【相違点(3-1-b)について】の箇所で記載したとおり、甲第1〜16号証のいずれも備えるものではない。したがって、その余の相違点である(3-3-a)、(3-3-c)、(3-3-d)を検討するまでもない。
以上から、本件訂正請求項3に係る発明が甲第1〜16号証に記載されたものに基づいて、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
(3-4)【訂正請求項4に係る発明と甲各号証に記載された発明との対比・判断】
訂正請求項4に係る発明は、訂正請求項3に係る発明に「模式図吊荷位置は、該スイッチ手段操作に応答して該スクリーン上の所定の固定位置に初期設定され、該指標を含む該スクリーン上の限定された範囲内を有効表示エリアとして現在のクレーンの吊荷位置に対応する模式図吊荷位置を示している」という構成要件を付加して限定したものであるから、訂正請求項4に係る発明は、訂正請求項3に係る発明と同様の理由で、甲第1〜16号証に記載されたものに基づいて、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
(3-5)【訂正請求項5に係る発明と甲各号証に記載された発明との対比・判断】
訂正請求項5に係る発明は、文言上訂正請求をされていないが、訂正請求項3又は4の従属形式記載であるため、実質的に訂正請求がされているものと認められる。しかしながら、訂正請求項5に係る発明は、訂正請求項3又は4に係る発明と同様の理由で、甲第1〜16号証に記載されたものに基づいて、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
(3-6)【訂正請求項6に係る発明と甲各号証に記載された発明との対比・判断】
訂正請求項6に係る発明は、文言上訂正請求をされていないが、訂正請求項5の従属形式記載であるため、実質的に訂正請求がされているものと認められる。しかしながら、訂正請求項6に係る発明は、訂正請求項5に係る発明と同様の理由で、甲第1〜16号証に記載されたものに基づいて、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
(3-7)【訂正請求項7に係る発明と甲各号証に記載された発明との対比・判断】
訂正請求項7に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、甲第3号証に記載された「検出器」、「CRT」、「上部旋回体の輪郭Q」、「キーボード手段」、及び「障害物Rの位置」は、それぞれの機能・構成に照らし、訂正請求項1に係る発明の「センサー」、「2次元スクリーン」、「模式図」、「スイッチ手段」、及び「識別パターン」に相当するから、両者は、
「クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、クレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、該スイッチ手段の操作に応答して、該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなるクレーン安全装置」の点で一致し、以下の2点で相違する。
(3-7-a)モードの画面表示、模式図の形状及び識別パターンの形状に関し、本件訂正請求項7に係る発明が「複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示であって、選択された第1のモードの画面表示における該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図を基準として描かれた障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)であり、選択された第2のモードの画面表示における該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該クレーン吊荷位置に対応する該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として該基準からの距離に関し所定範囲内の距離目盛りを示す指標(第6図、605,606,613,614)であり、選択された第3のモードの画面表示における該模式図はクレーン機構のブームの平面図の模式図(第7図、705)であって、ブームの旋回に従って基点を中心に旋回するように表示されているものであり、該所定の識別パターンは.該ブーム平面模式図の基点を中心に描かれたクレーンのアウトリガー設定条件に従って変化する安全荷重範囲曲線(第7図、A、B)」であるのに対し、甲第3号証に記載のものは同一画面に上部旋回体の作業範囲を制限するための障害物の位置及びアウトリガー設定条件に従って変化する安全荷重範囲曲線を同時に表示し、模式図はクレーンの上部旋回体の輪郭であり、識別パターンは障害物の位置及びアウトリガー設定条件に従って変化する安全荷重範囲曲線である点、
(3-7-b)識別パターンの表示に関し、本件訂正請求項7に係る発明が「スイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する」のに対し、甲第3号証に記載のものはキーボードの操作に応答して、CRT上に旋回体の輪郭Q、障害物Rの位置、重心Gの位置及びラインI,Jの相対位置関係を表示する点。
次に上記各相違点について検討するが、少なくとも、上記相違点(3-7-b)の訂正請求項7に係る構成は、上記【相違点(3-1-b)について】の箇所で記載したとおり、甲第1〜16号証のいずれも備えるものではない。したがって、その余の相違点である(3-7-a)を検討するまでもない。
以上から、本件訂正請求項7に係る発明が甲第1〜16号証に記載されたものに基づいて、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
(3-8)【訂正請求項8に係る発明と甲各号証に記載された発明との対比・判断】
訂正請求項8に係る発明は、訂正請求項7に係る発明に「クレーン機構模式図表示手段と該所定の識別パターンを表示する手段は該模式図及び識別パターンの表示すべき座標を所定の周期で演算して決定している表示部CPUからなり、更に、該センサーからの信号とクレーン機構の仕様に従ったクレーンの動作状態各々に関する記憶された最大定格荷重データとを参照してクレーン機構の動作上の安全に関する警報信号を生成するための本体CPUを該表示部CPUとは別個に含み、該表示部CPUと該本体CPUが1つのクレーン上に載置された構成である」という構成要件を付加して限定したものであるから、訂正請求項8に係る発明は、訂正請求項7に係る発明と同様の理由で、甲第1〜16号証に記載されたものに基づいて、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
(3-9)【訂正請求項9に係る発明と甲各号証に記載された発明との対比・判断】
訂正請求項9に係る発明は、文言上訂正請求をされていないが、訂正請求項7又は8の従属形式記載であるため、実質的に訂正請求がされているものと認められる。しかしながら、訂正請求項9に係る発明は、訂正請求項7又は8に係る発明と同様の理由で、甲第1〜16号証に記載されたものに基づいて、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
(3-10)以上のとおりであるから、訂正請求項1乃至9に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明とすることはできない。
4.まとめ
よって、上記訂正請求による訂正は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第134条第2項及び第5項で準用する同法126条第2〜4項の規定に適合するから、当該訂正を認める。

IV.本件特許発明についての判断
本件特許の請求項1乃至9に係る発明は、訂正請求による訂正が認められるので、上記III.3.(1)に記載の、訂正請求書に添付した訂正明細書の訂正請求項1乃至9に記載されたとおりのものと認める。
そして、請求人が主張する理由及び提出した証拠によっては、上記【III.2.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否】、及び【III.3.(3)対比・判断】に記載した理由により、本件特許の請求項1乃至9に係る発明の特許を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
クレーンの安全装置
(57)【特許請求の範囲】
1.クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、
複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示におけるクレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及び
スイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなり、
該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図を基準として描かれた障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)であるクレーン安全装置。
2.請求の範囲第1項に記載のクレーン安全装置において、
該模式図はクレーン機構のブームの模式図(第5図、B)であって、その形状が変化し且つ動くものであり、
該ブーム作業範囲を制限するための領域は、スクリーン上の基準から片側部分に識別(第5図、斜線)を付した非作業範囲エリアとして表示されるクレーン安全装置。
3.クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示におけるクレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及び
スイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン吊荷位置であるクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなり、

該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として該基準からの距離に関し所定範囲内の距離目盛を示す指標(第6図、605,606,613,614)であるクレーン安全装置。
4.請求の範囲第3項に記載のクレーン安全装置において、
該模式図吊荷位置は、該スイッチ手段操作に応答して該スクリーン上の所定の固定位置に初期設定され、
該指標を含む該スクリーン上の限定された範囲内を有効表示エリアとして現在のクレーンの吊荷位置に対応する模式図吊荷位置を示しているクレーン安全装置。
5.請求の範囲第3項又は第4項に記載のクレーン安全装置において、
該指標は該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を中心とした2次元の閉じた領域であるクレーン安全装置。
6.請求の範囲第5項に記載のクレーン安全装置において、
初期設定後におけるクレーン機構操作に応じ該模式図吊荷位置が該閉じた領域の境界からはみ出したとき、該境界近傍に沿って該模式図吊荷位置を表示しているクレーン安全装置。
7.クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、
複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示におけるクレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及び
スイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなり、
選択された第1のモードの画面表示における該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図を基準として描かれた障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)であり、
選択された第2のモードの画面表示における該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該クレーン吊荷位置に対応する該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として該基準からの距離に関し所定範囲内の距離目盛りを示す指標(第6図、605,606,613,614)であり、
選択された第3のモードの画面表示における該模式図はクレーン機構のブームの平面図の模式図(第7図、705)であって、ブームの旋回に従って基点を中心に旋回するように表示されているものであり、該所定の識別パターンは、該ブーム平面模式図の基点を中心に描かれたクレーンのアウトリガー設定条件に従って変化する安全荷重範囲曲線(第7図、A、B)であるクレーン安全装置。
8.請求の範囲第7項に記載のクレーン安全装置において、
該クレーン機構模式図表示手段と該所定の識別パターンを表示する手段は該模式図及び識別パターンの表示すべき座標を所定の周期で演算して決定している表示部CPUからなり、
更に、該センサーからの信号とクレーン機構の仕様に従ったクレーンの動作状態各々に関する記憶された最大定格荷重データとを参照してクレーン機構の動作上の安全に関する警報信号を生成するための本体CPUを該表示部CPUとは別個に含み、該表示部CPUと該本体CPUが1つのクレーン上に載置された構成であるクレーン安全装置。
9.請求の範囲第7項又は第8項に記載のクレーン安全装置において、
該描かれた安全荷重範囲曲線は閉じた曲線であるクレーン安全装置。
10.クレーン機構の少なくとも一部の模式図及びデータ表示を2次元スクリーン上表示するための本体部と表示部とを含むクレーン安全装置であって、
該本体部は本体CPU、クレーンの動作状態パラメータを検出するセンサーからのデータを該本体CPUに入力する端子、該本体CPUが該表示部とのデータの送・受信を行う端子及びクレーンの仕様に従ったクレーンの動作状態各々に関する限界荷重データを記憶しているメモリを含み、
該表示部は、表示部CPU、ディスプレイ、該ディスプレイ上に表示する該クレーン機構模式図とデータ表示とからなるパターンを記憶したメモリ、入力キーからのクレーン機構設定データを入力する端子及び該表示部CPUが該本体部とのデータの送・受信を行う端子とを含み、
該本体部は、センサーからのデータ及び該表示部からのクレーン機構設定データに従って該メモリ内の限界荷重データを参照してクレーン機構の安全に関する信号を生成しており、
該表示部は、該クレーン機構設定データと該本体部から受信した該センサーからのデータに従って所定の周期でクレーン機構模式図とデータ表示とからなるパターンに関し該スクリーン上の形状と座標を決定して該スクリーン上の表示を更新しているクレーン安全装置。
11.請求の範囲第10項に記載のクレーン安全装置において、
該本体部CPUと表示部CPUにおけるデータの入力に係る処理は、データの取込みはその期間中他のハード割込みを禁止するハード割込みルーチンによって行われ、データ取込み後の処理はハード割込みルーチンによって起動されるその期間中他のハード割込みを許容するソフト割込みルーチンによって実行されているクレーン安全装置。
12.クレーン機構の少なくとも一部の模式図及びデータ表示を2次元スクリーンに表示するための本体部と表示部とを含むクレーン安全装置であって、
該本体部は、クレーンの動作状態パラメータを検出するセンサーからのデータを入力する端子、制御装置、入力キーからのクレーン機構設定データを入力する端子及びクレーンの仕様に従ったクレーンの動作状態各々に関する限界荷重データを記憶しているメモリを含み、
該表示部は、ディスプレイ、該ディスプレイ上に表示する該クレーン機構模式図とデータ表示とからなるパターンを記憶したメモリ及び該本体部と該メモリとの間のデータの送・受信を行う端子とを含み、
該制御装置は、センサーからのデータ及びクレーン機構設定データに従って該メモリ内の限界荷重データを参照してクレーン機構の動作停止の指示及び該動作停止の原因を示す監視信号を生成し、該クレーン機構設定データと該センサーからのデータに従って所定の周期でクレーン機構模式図とデータ表示とからなるパターンに関し該スクリーン上の形状と座標を決定して該スクリーン上の表示を更新し、そして、該監視信号の生成時に該動作停止の原因に対応しそれを視覚的に表示する所定の表示イラスト(第4A図、412;第4B図)を選択して該スクリーン上に該選択された表示イラストを表示しているクレーン安全装置。
13.クレーン機構の少なくとも一部の模式図及びデータ表示を2次元スクリーンに表示するための本体部と表示部とを含むクレーン安全装置であって、
該本体部はクレーンの動作状態パラメータを検出するセンサーからのデータを入力する端子、制御装置、入力キーからのクレーン機構設定データを入力する端子及びクレーンの仕様に従ったクレーンの動作状態各々に関する限界荷重データを記憶しているメモリを含み、
該表示部は、ディスプレイ、該ディスプレイ上に表示する該クレーン機構模式図とデータ表示とからなるパターンを記憶したメモリ及び該本体部と該メモリとの間のデータの送・受信を行う端子とを含み、
該制御装置は、センサーからのデータ及びクレーン機構設定データに従って該メモリ内の限界荷重データを参照してクレーン機構の安全に関する信号を生成し、該クレーン機構設定データと該センサーからのデータに従って所定の周期でクレーン機構模式図とデータ表示とからなるパターンに関し該スクリーン上の形状と座標を決定して該スクリーン上の表示を更新し、そして、該入力されたクレーン機構設定データに対応する限界荷重データを該本体部メモリからアクセスして該表示部へ送信し、該送信されてきた限界荷重データを荷重を縦軸そして作業半径を横軸とする座標上に作業状態性能カーブ (第8図、803)のデータ表示として表示すると共に、現時点で作業中の実荷重と作業半径を示すクレーン模式図(第8図、804)を該座標上に表示しているクレーン安全装置。
【発明の詳細な説明】
発明の技術分野
本発明はクレーンの安全装置、特に複数の画面表示モードを有し選択された画面表示に応じてクレーンの動作状態の設定と安全操作とを操作者に提供することのできるクレーンの安全装置に係る。
発明の背景
従来、センサーで検出されたクレーンの動作状態を決定する種々の動作パラメータ(ブーム長、ブーム角、アウトリガー張出し、ジブの有無等)が入力されそれらの動作パラメータから特定される動作状態に対し個々のクレーンの仕様に応じ予じめデジタルメモリに記憶されている定格荷重をアクセスし、アクセスされた定格荷重と現時点の実荷重とを比較し実荷重が安定荷重に近くなったとき警告を発し一致したときクレーンの動作を自動的に停止させる機能を有するクレーン安全装置が提案されている(特公昭56-47117)。従来のこのようなクレーンの安全装置は例えば第2図に示すような表示位置を有するものである。クレーンのアウトリガー張出し、ジブ等の作業状態の設定を表示板上のスイッチで行いそして現時点のブーム長、ブーム角度等が数値として刻々と表示されている。表示板の上部に安全度計がありその時のクレーン動作状態の定格荷重に対する実荷重による安全度をバーグラフで示している。
このような従来技術にあっては、クレーン自体の転倒・破壊についての警報、自動停止は与えられても他の建物等に対するクレーンの作業範囲を制限するような機能を有してはいなかった。
一方、特開昭58-74496はタワークレーンの作業範囲を規制する方法を開示するものであり、スクリーン上ヘクレーンブームと障害物が模式的に表示され、実際のブームの操作につれて動くスクリーン上の模式的表示ブームが模式的表示障害物に接触することを検出するものである。しかし、この場合障害物の表示についてはスクリーン上にその座標を正しく指定してやらねばならず、作業範囲の初期設定が容易とは言えなかった
更に、従来技術にあって操作者の運転位置から視覚的に見えない所での作業を適格・安全に行う機能も有してはいなかった。
このような従来技術の別な問題点は単に定格荷重に対する実荷重としての安全度を示すだけであり、そして実際に行われている作業の安全度を示すだけである。操作者はこれから行おうとする作業の危険性について十分な認識ができなかった。
更に、従来技術はクレーンの作業内容の各々に応じて適格にクレーン操作を行うに必要な表示パターンを選択的に表示するための機能を有してはいなかった。
発明の概要
本発明に従うクレーンの安全装置は、複数のモードのクレーン動作に関する画面表示を予じめ記憶しているメモリを有する。操作者により選択されたモードの画面表示は入力されるクレーンの動作パラメータ及び操作者設定データに従って時々刻々その時のクレーン動作状態を模式的に示すよう制御されている。
本発明に従うクレーン安全装置は、クレーン機構の一部の模式図をスクリーン上に表示する手段であって、センサーからの信号に応答してスクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及び
キーを含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者によるキー操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準としてスクリーン上に所定の識別パターンを固定的に表示する手段とからなることを構成上の特徴としている。
本発明に従うクレーン安全装置の実施例では、クレーンの安全装置を監視すると同時にクレーン機構の一部の模式図をスクリーン上に動的に表示するものであり、本体CPUと表示部CPUを含み、夫々のCPUは本装置に必要な動作を分担しクレーン機構の模式図のスクリーン上の追従性の高い動的表示を可能にしている。
実施例の説明
-本装置の基本構成-
本発明に係るクレーン安全装置の基本構成は第2A図に示すところのものである。それは本体ユニットAと表示ユニットBとからなる。本装置の動作中本体CPUと表示CPUは常時指令とデータのやりとりを行っている。
電源ONされると、先ずクレーン作業状態(アウトリガーの段数設置、ジブの段数等)を設定しなければならないがそれは表示ユニットで行われる。操作者は複数の表示モードの中から選ばれた第3図のごとくの作業状態設定モード表示をディスプレイB″で参照しながら設定キー群B´の所定のキー操作で行われる。表示ユニットは第3図のごときの表示をグラフィックデータとして記憶しているメモリを有し、ROM中の表示制御プログラムに従いCPUは第3図表示をメモリから選択的に読出しビデオRAMに書込みそこから読出したデータに従ってディスプレイB″に表示する。操作者が設定キーにより設定したアウトリガーの段数設置等のデータは表示ユニットCPUに取込まれ、表示ユニットCPUは設定データに対応するようディスプレイでの表示を修正する表示制御をすると共にその設定データをデータDBとして本体制御部Aに送っておく。こうして作業状態モードでの設定を終えると表示ユニットは自動クレーン安全度監視モードに移り第4A図に示すごときの表示をディスプレイB″で行う。この第4A図の表示内容もメモリ中に予じめ記憶されており、CPUが選択的にこれを読み出し表示するのである。
本体ユニットAは、表示ユニットBから送られてきたクレーン作業状態設定データDBの他にクレーンが操作されるのに伴い刻々変化するクレーン機構の動作状態を示す動作パラメータデータ(ブーム長1、ブーム角θ、旋回角φ等)をセンサー群A´から取込む。これらの動作パラメータデータはそのまま若しくはCPUで加工されてデータAとして表示ユニットBに送られる。表示ユニットBはデータAに基づいてディスプレイB″上の表示を時々刻々と修正しクレーンの現在の動作状態をそのまま表示するようにしている。
本体ユニットAには、そのクレーン個々の仕様に基いたデータが記憶されている。代表的データはクレーンの動作状態における最大定格荷重である。例えば、第2B図はアウトリガー中間(5.0m)張出(側方)、ジブ無しの作業状態設置に対しブーム長8.9mにおける定格総荷重データの曲線を示している。異なる作業状態設置内容及び異なるブーム長毎にこの定格総荷重曲線はクレーン個々の仕様として定まっている。これらの大量のデータは本体制御部AのROMに記憶されている。
本体ユニットAは、表示ユニットBからのクレーン作業状態設定データDBとセンサー群A´からの刻々変化するクレーンの動作状態パラメータに従ってROM中に記憶されている最大定格荷重データをアクセスし、その時々のクレーン動作状態に対応する最大定格荷重データを得る又はそのデータを演算処理して得られた最大荷重値と実荷重を比較し現在のクレーン動作状態が危険ゾーンであるとき警報を発する又は1及びクレーンの動作を自動停止させるべくクレーン機構 A″を制御する信号を発する。
表示ユニットBのメモリには複数のモードに対応する複数の表示が記憶されている。設定キーによるモード選択に応じ表示は第5図乃至第9図のごときが選択される。操作者は先に述べた従来一般的に行われていた第4A図の自動クレーン安全監視モード以外にクレーンを操作する際に有効なクレーンの動作内容の設定及び監視をディスプレイに表示されたモードに従って行うことができる。夫々のモードについての取扱いの詳細は後述される。
本体ユニットAと表示ユニットBには夫々プロセッサ(CPU)が含まれ、本体と表示ユニットAとBは個々独立に夫々のプログラムの下で走行している。本体ユニットAと表示ユニットBとの間の指令とデータの送・受信は割込み処理により行われている。
-本装置の具体的構成-
第2C図を参照するに、本体CPU200は実荷重データを圧力センサー201から入力し、他のクレーン動作パラメータデータをクレーン構体の夫々の個所に配置された旋回角センサー202、ブーム長センサー203、ブーム角センサー204、ブームトップ対地角センサー205、ジブ対地角センサー206及び圧力センサー208から入力する。ブームの頂部に配置されたセンサー205〜 206のデータはブーム頂部のトップターミナル207に集められ、ブームの根本にあるコードリール210迄を光ファイバーケーブル209で送られ、そこで光-電気変換されて本体CPU200に送られている。表示部CPU211は本体CPU200からライン217で電力供給されている。表示部CPUと本体CPU200との間の指令・データの送信は双方向シリアルライン214と215で行われている。ディスプレイ212はマトリックス型の動的駆動液晶ディスプレイ(LCD)である。クレーンは一般に屋外で用いられるから強い外光時も容易に表示が見える点、LCDは他のCRT、LED、プラズマディスプレイ等より好ましい。夜間にあってはLCD212は後方照明される。設定スイッチキー群は幾つかの設定事項に対応する複数のタッチキーからなるものである。クレーン機構を制御するための信号はプランジャー218又は電磁バルブ等に出力される。
-表示部モード-
▲1▼ 作業状態設定モード
第3図を参照するに、電源投入後表示制御CPUは自動的に作業状態設定モードとなり、図示のごとくの表示を行う。301にモード表示が示される。表示上のブーム状態を示す数字302が点滅をしているが操作者が数字を設定することで定常点灯となる。先ず、これから作業を行うブーム作業状態に合わせるタッチパネル310Aの10キーの数字を選択的に押す。数字0はジブ、ルースタ不使用でメインブームのみの使用、1はルースター、2はジブ1段、そして3はジブ2段使用時である。ブーム作業状態設定が完了すると同一画面で右側アウトリガー状態303を示す数字が点滅する。数字3は最大張出、2は中間張出、1は小張出そして0が最少張出、4はアウトリガー設置なし、そして5は荷を吊って走行することを意味する。操作者はブーム作業状態設定と同様にして10キーにより所望の数字をタッチパネル310A上で選択する。右側アウトリガー設定に続いて左側アウトリガー状態304の設定が行われる。
表示制御CPUは、設定された数字をディスプレイ上で点滅から定常点灯に変える制御を行うと共に設定されたブームとアウトリガー状態データを本体CPUに送信する。
▲2▼ 自動クレーン安全度監視モード
作業状態モードの入力が完了すると自動的に第4A図に示す画面表示を行う自動クレーン安全度監視モードに表示制御CPUは入る。表示制御CPUは本体CPUからの情報に従って現在のクレーンの動作状態、即ちアウトリガー設定表示404、旋回位置表示405、作業半径表示406、ブーム角度表示407、吊荷重表示410、揚程表示409、ブーム長表示402を行う。尚、ブーム長の長さは模式的に伸縮するバー403で示している。
クレーンの現在の動作状態がクレーンの安全上の限界に対する表示411がバーグラフで指示される。安全度の数値的表意は413に指示される。その時々のクレーンの動作状態に対する限界(最大)荷重が数値表示408として指示されている。クレーンの動作状態が限界近傍領域に入った時(バーグラフ411が黄のゾーンに伸びた時)、警報が発せられそして限界になったときクレーンは自動的に停止される。クレーンの実際の動作状態は本体CPUが各種センサーからのデータにより監視し、その動作状態に対する限界最大荷重をメモリからアクセスし、実際の荷重がアクセスされた限界最大荷重以下であるかをチェックし、そして実際の荷重がその時のクレーンの動作状態における限界最大荷重になったときのクレーンの操作機構をロックさせる信号を本体CPUは発する。自動クレーン安全度監視モード表示中、表示制御CPUは操作者にクレーンの動作状況を視覚的に示す役割をしている。尚、クレーンの動作状態が限界になるのは、限界最大荷重の点の他に後述する(第5図)作業範囲を操作者が設定したときもその作業範囲限界にクレーンの動作状態が至ると同様に警報・停止が行われる。
本実施例におけるユニークな画面表示の1つは自動停止原因表示412である。自動クレーン安全度監視表示モードにおけるクレーン作業中クレーンが自動停止した場合、操作者はどの原因で自動停止したのかを即座に判断することは困難である。そのクレーン動作状態時の荷重オーバーによるクレーン自体の転倒・破壊以外に特に後述する(第5図)のクレーン作業範囲を設定しておいて、自動クレーン安全度監視モードで作業をしているような場合特にそうである。又、クレーンの操作において例えばワイヤは一定の長さであるからワイヤの捨巻を続けワイヤ長以上に捨巻を行ってしまうと逆巻が生ずるのでこのような場合も自動停止がなされる。本実施例の自動クレーン安全度監視モード表示にあっては自動停止時どの原因で自動停止をしたかイラスト的に指示する412が画面に現われる。
第4B図の(a)-(n)に自動停止原因を指示する表示イラストが示され、夫々下記の内容を表わしている。これらの表示イラストの自動クレーン安全度監視モード指示は、自動停止原因が複数あるときはそれら複数の表示イラストが画面上に示される。
表示
イラスト 自動停止の原因
(a) モーメント(限界荷重)による自動停止
(b) 下限角による自動停止
(c) 上限角による自動停止
(d) ブーム最起立による自動停止
(e) 右旋回自動停止
(f) 左旋回自動停止
(g) 過巻自動停止
(h) 捨巻自動停止
(i) 半径制限自動停止
(j) 揚程制限自動停止
(k) 下限角制限自動停止
(l) 上限角制限自動停止
(m) 右旋回制限自動停止
(n) 左旋回制限自動停止
上記の自動停止原因表示において、例えばモーメント自動停止表示出力の条件は、(実荷重≧限界荷重)&操作レバー危険操作→モーメント自動停止表示である。実荷重が限界荷重近くに至っているとき操作者がブームをより伏せる操作、ブームをより伸ばす操作及びウインチを差上げるレバー操作は危険側操作である。即ち、本体CPUはこれらレバー操作の危険側操作に関しロックする信号を発すると共に表示制御CPUにあって表示イラスト(a)を画面上に指示する。操作者は自動停止となったときに指示された自動停止原因表示イラスト(a)から現在のクレーンにあってブーム伏せたり、伸したりすることはできないが他の操作例えばブームを起すことによりクレーンの危険状態から脱することができる。即ち、クレーンを伏側に操作し、実荷重が限界荷を超えたとき、自動停止状態となり表示もモーメント自動停止表示を表示する。この時、クレーン操作レバーを中立にもどすと、クレーンの自動停止は解除されかつ表示も消燈する。このとき、クレーン操作レバーをブーム伸に入れると再度自動停止状態となり表示も再度モーメント自動停止を示す。このとき、クレーン操作レバーをブーム伸しでなくブーム起、ブーム縮あるいはウインチ巻下方向に操作した場合は、自動停止せず、かつ表示もしない。
各自動停止原因によりその時のクレーンの危険側操作内容は異なっている。本体CPUは、クレーンの自動停止原因の各々に応じ操作レバーをロックする方向をデータとして記憶して有している。例えば、ブーム上限制限により自動停止原因となったとき、ブームをより起す方向の操作レバーに関してロックするがより伏せる方向についてはロックはしない信号を本体CPUはクレーン機構に発している。
このように自動停止原因が数多くあるよう設定された自動クレーン安全度監視モードにあって、自動停止原因が何にかを操作者に視覚的に知らせることはクレーン操作を極めて容易にする。
▲3▼ 作業範囲制限モード
クレーンの作業範囲としてクレーン自体の転倒・破壊限界とは別に、ブームが周囲の建物等に接触しないようにブームが可動できる範囲を予じめ設定しておき、実際の作業中ブームがその設定可動範囲からはずれようとするとき警告を発したり又は自動的に停止させたりすることができたら望ましい。タッチキーパネル 310BのキーAを押すことに応答して表示制御CPUは作業範囲制限モードに入り、第5図に示す表示を行う。501に作業範囲制限モードの指示がされる。画面の右側にブームが模式的にBとして示されブーム先端Pが+印で示されている。模式表示ブームBは実際のブームの動きに対応しており、本体CPUから送られてきた動作パラメータに従って実際のブームの動きにつれて動くよう表示CPUにて表示制御がなされている。操作者は、ブームの作業半径制限を設定するに実際のブームを制限ポイント迄移動させておいて(模式表示ブームBはそれに対応して動いている)、タッチキーパネル310BのキーBを押すと表示上ブーム先端Pの右側の斜線を引いたエリアが非作業範囲として設定される。このときの作業半径Rは507に作業半径制限数値として□内に表示されている。同様にして半径制限(A)の他に上限角、下限角及び揚程についても制限を(B)〜 (D)のように個々に設定できる。このような設定の特徴は、実際のブームを制限ポイント迄持っていって、そこで設定キーを押すことにより設定がなされることで、操作者が仮想的に即ちクレーンを制限ポイントにもっていくことをせず予じめ数値的に制限半径等を設定するのではないことである。現場において、実際にブームを移動させることで作業範囲を決めることができる点、この設定の仕方は利点を有する。半径制限等を個々に設定した(A)〜(D)の総合的作業制限範囲は(E)に示されている。その結果ブームは斜線の引かれていないエリアでのみ移動が可能となるようにされる。画面にはブームの実際の状態を数値的に示すようブーム角度表示509、実半径表示508、ブーム長表示506および揚程表示505を指示される。
画面の左側はブームの旋回角範囲制限を設定するものである。エリア511内の模式的表示ブームBは実際のブームの回動につれて動くようになっている。ブーム旋回限界ポイントにブームを移動させてからタッチキーパネルの設定キーによりそこを旋回限界ポイントとして設定する。旋回制限は(F)のように片側設定又は(G)のように両側設定が可能である。ブーム旋回表示画面には予じめ行われているアウトリガーの設定状態512が指示されている。
尚、この画面には参照用に吊荷重表示503、最大荷重表示504が指示されている。
作業範囲制限モード表示画面で設定した内容は数値データとして表示部CPUで発生され本体CPUに転送される。ブームの長さがIiでブーム角度θiのとき半径制限設定キーが押されれば、制限半径はRL=IisinIiとして数値データが得られる。表示CPUは画面上RLより右の部分を斜線表示する。設定された作業制限範囲外にブームが移動しようとすると、本体CPUでそれが検知された警告を発したり自動停止が行われるが、操作者は画面上で(E)のごとく作業可能範囲エリア内をブームが移動する様子を非作業範囲エリアとの相対関係において視覚的に認識できるので予測性のある作業を行うことができる点大きな利点である。
▲4▼ ターゲットモード
タッチキーパネル310Bのモード選択キーの操作により、第6図に参照する表示を行うターゲットモードに表示制御CPUは入る。ターゲットモードは吊荷がクレーンにおける操作者の運転席からは吊荷を下ろす位置が視覚的に見えないときに利用される。第6図の表示の実線で示すターゲット・インデックスマーク605と606は2つのターゲットポイントの設定に用いられる。ターゲット・インデックスマークの最内側のマークの一辺は15cm、次のマークの一辺は30cmそして最外側のマークの一辺は60cmの実際の距離に対応するようにされている。初め、実際の吊荷をクレーンで操作し目的場所に位置させ、そこでタッチキーパネル310Bのキー操作でその目的場所を第1のターゲットとして指定する。即ち、その目的場所が座標点の0点として設定され、吊荷の位置607はその0点からの距離で画面上に表示するようにする。初めのターゲット指定以後は、操作者は直接吊荷を見なくとも吊荷の目的場所に対する位置関係を画面表示を参照して知ることができる。クレーンの操作において、ブームを旋回させて荷を第1のポイントから第2のポイントへ移す繰り返し作業はよく行われることである。この場合、ターゲット・インデックスマーク605を第1のポイントに指定しターゲット・インデックスマーク606を第2のポイントに指定しておく。画面表示において、インデックスマーク605と606とは互いに独立して座標系であり、2つのインデックスマーク605と606との間の画面上の距離は実際の第1と第2のポイントとは無関係である。点線613と614で示し枠は、第1と第2のポイントの座標系の有効表示エリアであり、例えば100cm角大きさに対応している。吊荷がこの有効表示エリア内にあるとき

マークでその吊荷位置を指示するが吊荷がこのエリア外になってしまっても

マークは点線上に607´のように移動するよう指示されているので吊荷の位置方向については操作者は知ることができる。操作者はターゲット・インデックスマークに対する画面上の

マークを参照しながら、現実の場所を視覚的にみることはできなくとも第1と第2のポイントの間での荷の移動のくり返し作業を実行することができる。
画面上方に、吊荷の第1ポイント及び第2ポイント迄の距離が数値的に603と604に表示される。より便宜的に、画面左下にアウトリガー設定表示609とブームの旋回位置表示608が指示されている。又、参照用に吊荷重表示612、最大荷重表示611が指示されている。尚、601はモード表示であり、602はその時の作業における安全度数値表示である。
実際の吊荷の位置は、各種センサーからのデータとクレーンの構造上のデータから本体CPUで演算され吊荷位置データとして表示部CPUに与えられている。ある位置でそこをターゲット・インデックスマーク605に指示するように表示部のタッチキー操作がなされると、表示部CPUはその時の吊荷位置データをインデックスマーク605の0点とする。そして表示部CPUは以後の吊荷位置データと指定時吊荷位置データとの差に従って吊荷位置607をインデックスマークに対して画面上に表示を行っている。しかし、インデックスマークの最外枠角からはずれたときは点線613に沿って移動させて吊荷位置の方向表示のみを行う。そして吊荷位置は第1又は第2のポイントの近くになったとき(即ちインデックスマークの際外枠角内に入ったとき)その位置表示を再び行う。
第6図に例示の画面表示は、互に独立した2つの平面的ターゲット・インデックスマークの場合であるがより多くのインデックスマークを表示したり又立体的なインデックスマークを表示することも可能である。
▲5▼ 限界荷重-旋回モード
クレーンの吊荷能力は、クレーンの構造上前後・左右で異なるものである。従って、クレーンにおけるブームの旋回は注意を払わなければならない操作である。タッチキーパネル310Bのキー操作で、表示部CPUが限界荷重-旋回角モードに入ると第7図のごとき表示が画面上になされる。画面右側中央にクレーンが模式的に示され、アウトリガー設定表示706がされている。ブーム旋回位置を示す模式的ブーム705が指示されている。模式的ブーム705の先端のX印 704は現時点状況表示を意味する。実線A又は点線Bで示すものは安全荷重範囲エリア表示703で、そのエリア内に×印704がある限り操作が安全であるとされている。画面上の安全荷重範囲エリア表示は設定されたアウトリガー条件によって変る。クレーン操作者は旋回操作の際このモードを用いると好都合である。
参照用に、モード指示701、安全度数値指示702、ブーム長さ数値指示 707、ブーム作業状態指示708、ブーム角度指示709、実荷重指示710、揚程指示711、作業半径指示712、及び最大荷重指示713が画面上に表示される。
▲6▼ 性能カーブ表示モード
クレーンの安全操作上、第2B図に示すような作業半径に対する吊上荷重曲線が代表的なものである。操作者はこの安全指標曲線に対し現在の作業状態を視覚的に位置付けることで作業の余裕度を知ることができれば好都合である。タッチキーパネル310B上のモード切換キーの操作で表示部CPUは性能カーブ表示モードに入り第8図の表示を画面上に行う。性能カーブは、アウトリガーの張出し状態、ブーム長、ジブの使用の有無、旋回角等の総合的クレーン動作パラメータの組合せで決定されるものである。本体CPUは種々のその時々のそのような動作パラメータを得、予じめ記憶されているところの個々のクレーン仕様に従った作業半径に対する定格荷重のデータをアクセスし表示部CPUに送る。表示部CPUは画面右に示されるような作業状態性能カーブ803を表示する。そして現時点で作業中の作業半径と実荷重とから+印として現時点状況表示804を座標上に位置づける。操作者はこの+印と曲線との相対的関係から作業の余裕度を知ることができる。+印のわきに余裕作業半径を数値的に表示806で指示する。この数値的表示806は+印804の移動に伴って移動するように表示しているので操作者は具体的余裕度の数値的認識に視覚上好都合である。
参照用に、その時々の定格荷重表示805、現時点作業半径表示807、現時点での実荷重指示811、ブーム旋回状態表示808、アウトリガー設定表示 809、ブーム作業状態表示810が性能カーブ表示モードとの関連で画面上に示される。尚、画面表示801と802は夫々モードと安全度数値を指示するものである。
▲7▼ 性能表示モード
クレーンの安全操作に参照されるものとして第9A図に示すような定格総荷重表がある。これは、アウトリガーの設定状態とブーム長が決められたときにおける作業半径に対する定格荷重を個々のクレーンの仕様に応じ示すものである。この表から操作者はこれから行う作業に対し、例えば設定したアウトリガー及びブーム長が目的とする吊上物体の荷重そして作業半径に対して十分なものか否かを予測することができる。タッチキーパネル310Bのキー操作で表示部CPUは性能表モードに入り第9B図の表示を画面上に行う。このモードはこれから行う作業についての検討を行うものであるから、クレーンの実際の動作は必ず自動停止されている。操作者は先ず、カーソルが点滅している902の位置に調べてみたい設定ブーム長をテンキー310Aを用い数値で書込む。ブーム長が表示上設定されても実際のブームがこのモードの時はその設定値にされることはない。その後カーソルは903の位置に移って点滅するから続いて旋回角を数値で書込む。尚、アウトリガー状態等は先の作業状態モード(第3図)で設定既である。これらの入力が設定されると、表示部CPUは本体CPUからこの条件下における作業ブーム角θに対する定格最大荷重データWtを受けとり(若しくは表示部自体にこのデータを持つこともできる)、画面上に数値表904として表示する。もし、この表示されたデータにより目的の作業に対し設定したブーム長等が不適当とされるとこの数値の記入された表はリセットされ再びブーム長等を設定し直すことになる。
参照用に、モード表示901、ブーム作業状態表示907、アウトリガー設定表示906及び旋回角表示905がこのモードとの関連で画面に表示されている。
-本装置の動作シーケンス-
本発明の実施例の装置構成では本体ユニットと表示ユニットとに夫々CPUを含み組立に走るプログラムの下に動作シーケンスが行われ、本体制御部は各センサーよりの動作パラメータ及び表示制御部から作業範囲設定データを受信した実荷重、作業半径、限界荷重等を演算で求めクレーン機構の自動停止の制御を行うと共に、それらのデータを表示部へ送信する。表示制御部は選択されたモードに対応する画面表示を本体制御部からのデータに基いて行うと共に設定キーからの入力に応じその画面を修正すると共に設定入力データを本体制御部の送信する。このように本体制御部と表示制御部は独立に走るシーケンスであるが指令とデータのやりとりを割込みによって行い相互動作を実行する。
夫々のユニットのCPUをシーケンス制御するプログラムはROMに含まれている。表示ユニットはビデオRAMを含む。選択された表示モードに応じたディスプレイグラフィックデータはこのRAMに書込まれており、その内容はクレーンの動作状態の変化に従い修正されていく。ビデオRAM内のグラフィックデータは例えば150ms毎にディスプレイに転送されその表示が更新される。
本体ユニットと表示ユニット間のデータDA、DBの送受信は調歩同期によるデータ通信の形態をとっている。本体ユニットで表示ユニットに送信されるべきデータが構成される毎に本体CPUに送信要求割込みがかかりデータ送信が実行されると、表示ユニットでは受信要求の割込みが生じそのデータが表示ユニットに取込まれる。表示ユニットから本体ユニットヘのデータ送受信も同様である。
種々のセンサーからのクレーン動作状態を示すデータは、A/D変換器を介して本体ユニットのCPUに取込まれるが、A/D変換器の所定の動作タイミングに対応した一定間隔でセンサーデータ読込み要求割込みがCPUにかかり、CPUはセンサーデータを取込んでいる。
表示ユニットにおけるキー入力データについては、決められた周期でキー入力状態をチェックし、キーが押されているとそのキーに係る処理が実行される。
所定の時間経過毎に行われるべき処理を実行するタイマー割込みが本体と表示CPU夫々にかかり、その処理を実行している。
表示ユニットCPUは、表示ユニットに取込まれたデータに従ってビデオRAMにグラフィックデータを書込み必要なディスプレイ表示を行い又本体ユニットヘも作業限界設定データ等を与えている。
本体ユニットCPUは、本体ユニットに取込まれたデータに従って、ブーム半径、揚程、実荷重、限界荷重を演算し、クレーンの仕様に応じた性能データとの比較でクレーンを自動停止させる等の制御信号を出力する。
(1)本体ユニット動作シーケンス
本装置に電源投入後又はリセットキー操作に応答して本体ユニットは第10図に示す主フローシーケンスS1a-S6aを行う。
最初のステップS1aで本装置が適正状態にあるかのチェック及び以後のシーケンスを正しく行うためのCPUのセッティングの初期手続を実行する。この初期手続を行う前に割込禁止にしておき初期手続完了後ステップS2aで割込禁止を解除する。
続いてステップS3aにおいてディスプレイへ送信するデータの有無及びディスプレイより受信したデータの有無をチェックし、それ等が有る場合は夫々のデータに対して送受信処理を行う。尚、送信データの本体ユニットヘの取込み自体はセンサーからのデータの取込みと同様ハード割込によるルーチンによって行われる。
その後、これ迄に取込まれ処理されたデータに対して種々の演算処理をステップS4aで行う。即ち、ブーム長、ブーム角、圧力等のデータから実荷重、ブーム半径、揚程等のクレーンの動作状態を示すパラメータ及びそれ等パラメータとクレーンの仕様に応じ予じめ記憶してある限界荷重データから限界荷重を求める。
ステップS4aで求められた演算結果からクレーンの動作に関する安全度を計算し及び設定された作業限界値に対するクレーンの動作状態を比較し、クレーンの動作が危険又は作業限界に至っていると停止信号を発生する自動停止処理をステップS5aで行う。
以上のシーケンスステップを経た後ステップS6aで本体ユニットのCPUは停止(HALT)状態になる。停止状態のCPUは外部からのデータ取込み等に係る割込み要求(IREQ)によるハード割込があるとそれを受けつけ割込み処理(第11図の内容)を行い割込処理後ループを経てループ開始点に戻る。即ちCPUはハード割込がない限りステップS6aで停止している。尚、第10図ではハード割込をCPUのステップS6aとループ開始点との間に例示しているが、ハード割込みはステップS3a-S6aのシーケンス中での任意に入ることはできる。
主フローにあって、本体ユニットヘのデータの取込み又は表示ユニットヘのデータの送出に関しては割込みによって行われ、新しいデータの1回の取込み・送出があったら一連のディスプレイとのデータの送受信処理、データの演算及び自動停止処理を行っている。
割込ルーチン(第11図)はハード割込で起動される。ハード割込みで起動された割込みルーチンにはデータ取込み・送出の他ソフト割込み1と2ルーチン (第12図)が組込まれている。ハード割込毎にデータ取込み・送出が行われ、所定回数のハード割込のデータ取込み・送出でデータ量が1ブロックサイズになるとソフト割込1起動フラッグが立つ。ソフト割込1フラッグが立つことにより割込ルーチンにおけるソフト割込み1処理が実行される。ソフト割込み1処理においてソフト割込2起動フラックが立てられる。ソフト割込2起動フラッグが立つことによりソフト割込み2処理が実行され得る。
即ち、ハード割込み、ソフト割込1及びソフト割込2は層構造になっている。単なるデータの取込みのような短時間処理はハード割込み毎に行われその処理中は他のハード割込を禁止している。少し時間のかかる処理はソフト割込1で行い更に時間のかかる処理をソフト割込2で行うようにしているが、ソフト割込みが処理中ではハード割込が許容されている。このようにしておくと、割込禁止期間を短くすることができ、データの高速入出力処理が可能となる。
第11図を参照するに、第10図の主フローにハード割込が入るとステップ S1bで先ず他の割込を禁止させる。
続いて、ステップS2b〜S9bにおいてディスプレイよりの受信又はへの送信割込か、センサーよりの受信割込か、タイマー割込かの割込タイプを識別し、その割込タイプに応じたハード割込処理を実行する。即ちディスプレイよりの受信データをディスプレイ受信一時記憶領域へ格納、ディスプレイへ送信するデータを一時記憶領域から送信装置へとセットして送信又はセンサーからの受信データを一時記憶領域へ格納する処理を行う。何回かのハード割込みの結果データの送受信量が所定のデータ数からなる1ブロックになるとソフト割込が1起動フラップを立てる。
ソフト割込み処理が終了するとソフト割込み1シーケンスS3b(第12図)に入る。ソフト割込み1シーケンスが終了すると第10図の主フローに戻る(RET0)。
第12図を参照するに、ソフト割込み1シーケンスに入るとソフト割込み1処理中フラッグを見て(ステップS1c)、フラッグがセットされておらず処理中でないとするとソフト割込み1起動フラッグがセットされているかと見(ステップS2c)処理対象のデータ数が不十分でまだソフト割込み起動フラグがセットされていないとステップS8cに移動し、又ソフト割込み2処理中でもなくソフト割込み2起動フラッグもセットされていないとステップS9c、S10cを経てステップS16cに起動し、ハード割込み開始の際の状態設定レジスタを復帰すると共に第11図のステップS1bで行った割込み禁止を解除して第10図の主フローRET0に戻る。
即ち、この場合は主フローにハード割込みが入り第11図のステップS3bでのデータの取込みを行っただけで再び主フローに戻る場合である。
第12図のステップS2cでソフト割込み起動フラッグがセットされているとソフト割込み1処理中に入るのでソフト割込み1処理中フラッグをセットする(ステップS3c)。ソフト割込み1処理中はハード割込みを許容しているので第11図のステップS1bで行った割込み禁止を解除し(ステップS4c)、ソフト割込み1処理を行う(ステップS5c)。このソフト割込1処理の際そのソフト割込1の起動フラッグをリセットすると共に条件に従ってソフト割込み2起動フラッグがセットされる。その処理が終了すると再びハード割込禁止して(ステップS6c)ソフト割込1処理中フラッグをリセット(S7c)してからステップS2cの前のループ開始点に戻る。この時ソフト割込み1起動フラグがリセットされているのでステップS2cからステップS8cのソフト割込2処理シーケンスに移動する。そしてソフト割込2処理中でもなくソフト割込み2起動フラッグがセットされていないとするとステップS9c、S10cを経てステップS16cに移行し、割込み開始の際の状態設定レジスタ復帰しステップS5cで行った割込み禁止を解除して第10図の主フローRET0に戻る。
この場合は、ハード割込みでデータを取込みそのデータの取込みの結果データ数が1ブロックとなったので割込み1処理起動フラグをセットし、1ブロックデータについての割込み1処理を行ってから主フローに戻ったシーケンスである。
ハード割込みは、割込みシーケンス中のソフト割込み1処理中では許容されているのでステップS4cのソフト割込み1処理中にも入ることはできる。ソフト割込み1処理中にハード割込みが入るとステップS5cの途中から割込みルーチンに入り第11図のステップS1b、S2b及びS3bでデータの取込みを行ってから第 12図のステップS1cに入りステップS17cに移行しレジスタ復帰と割込み禁止解除してからステップS5cの途中のRET1に戻り中断したソフト割込み1処理を再開する。即ち、ソフト割込み1処理中ではハード割込みによるデータの取込みは可能なのである。
ソフト割込み1処理が実行されその際ソフト割込み2起動フラッグがセットされたとする。ソフト割込み1処理が完了しソフト割込み1起動フラグがリセットされてしまうと、ステップS2cからステップS8cのソフト割込み2処理シーケンスに移行する。ソフト割込み2処理中でないとステップS9cからS10cに移行し更にステップS10´c、S11c、S12c、S13c及びS14cを経てソフト割込み2処理を実行してループ開始点に戻る。そしてその時ソフト割込2起動フラグはリセットされているのでステップS16cを経て主フローのRET0に戻り、一連の割込みを終了する。
ソフト割込み1処理中と同様ステップS12cのソフト割込み2処理中でもハード割込みが許可されており、この処理中にハード割込みが入ると第11図のデータ取込みを行いステップS1c、S2c、S8c、S9cを経てステップS15cに移行しレジスタ復帰と割込禁止解除を行い中断されたステップS12cのソフト割込み2処理にRET2に戻る。
▲2▼ 表示ユニット動作シーケンス
第13図に表示ユニット主フローが示されている。ステップS1dで以後のシーケンスを適正に実行するための初期手続を行ってからステップS2dで割込禁止解除を行う。
ディスプレイ上ヘモードに応じそして刻々変化するクレーンの動作状態を表示する手法は、先ずビデオRAMにモードに応じ及びクレーンの動作状態に従って決定されたグラフィックイメージを書込んでおく。ディスプレイ上への表示は所定の時間間隔例えば150ms毎にビデオRAMからグラフィックイメージデータを取出してそのデータ内容でディスプレイを駆動することにより行われる。即ち150ms毎に表示内容は更新されていく。ビデオRAM内のグラフィックイメージデータは、本実施例ではイメージを構成する各線分の両端の座標点を数値として記憶してあるものである。ステップS3dで表示更新フラグがセットされているとステップS5dでビデオRAMからディスプレイヘのデータ転送を行って表示内容の更新を行う。
電源ON又はリセット後はビデオRAM中には初期手続きステップS1dで初期画面データが記憶されているのでその内容を表示することになる。CPUはその後停止(HALT)状態に入りハード割込みが与えられる迄次の実行を行わない。
表示ユニットCPUへのハード割込みは、タイマー割込そして本体CPUとのデータ送受信要求によって発生され、その割込みタイプに応じた設定情報、送受信データの取込み・送出を行なう(第15図)。
割込が終了して主フローに戻ると第14図に示す各モードに応じた処理を実行する。これらのモード処理は常にハード割込みによって起動されることになる。モード処理中にもハード割込みが許容されており、割込みが禁止されるのは短時間処理であるハード割込処理際中だけである。
表示ユニット動作開始後タイマー割込により所定の時間後自動的に作業状態入力モードフラグをセットする(第15図)。そのタイマー割込み処理が終了すると第14図のステップS1eの判断を経てステップS2eの作業状態入力モード処理のルーチンを行う。そのルーチンは先ずビデオRAMに作業状態入力表示のグラフィックイメージデータを書込む。そして第13図の主フローのステップS3d前のループ開始点に戻る。次にCPUはステップS3dとS5dでビデオRAMの作業状態入力表示のグラフィックイメージデータをディスプレイに転送しディスプレイはその表示を行う。そしてCPUは停止する。操作者がその表示を見ながら、ジブの張出し段の設定キーを押すと、ジブ設定データがCPUに読み込まれる。続いてCPUはそのジブ設定データに応じてビデオRAMのグラフィックイメージデータ内容を修正する。ビデオRAM内の修正された作業状態入力表示のグラフィックデータは続いてステップS3dとS5dでディスプレイ上に表示される。
ステップS2eのモード処理は、上述の表示画面に関する処理の他に本体ユニットの送信データを一時記憶領域に蓄積する等の処理を行っている。
ステップS3e〜S14eの内容は、処理内容自体は夫々のモードで異なっている。
キーデータ取込は、タイマー割込を使用し、規定時間毎にキーデータをチェックし、所定のキーが押された時そのキーデータにより処理を実行している。
表示ユニットのソフト割込フローは、個々の処理内容は異なるがシーケンス自体は第12図の本体ユニットソフト割込みフローと同一である。
▲3▼ 個々の処理内容
受信、送信処理とも処理内容は次の3つの内容に分けられる。
受信処理▲1▼:本体(表示)より送られるシリアルデータをバッファ指定領域に順番に格納し、1ブロックのデータが受信終了すると送られたデータをチェックし異常がないと受信処理▲2▼の起動フラグをセットする。この受信処理は第11図及び第15図に示すハード割込によって行なわれる。
受信処理▲2▼:本体(表示)より送られた1ブロックのデータの内容を判断しバッファからCPUがそのアドレスをアクセスすることのできるメモリの所定の格納領域にデータを格納する。この受信処理は第12図のソフト割込1による処理 S5cで行なわれる。
受信処理▲3▼:本体(表示)より送られたメモリに格納されているデータによる最終処理を実行する。この受信処理は第12図のソフト割込2の処理S12c又は第10図の主フローの受信データ処理S3aで行なわれる。
送信処理▲1▼:本体(表示)へ送るデータがあるかをチェックし、ある場合は、そのデータを送信指定し送信処理▲2▼の起動をかける。この送信処理は第10図の全フローの処理S3a又は第12図の処理S12cで実行される。
送信処理▲2▼:送信可能かどうかをチェックし、送信可能なら、送信データが入っている領域よりデータを取り出し、シリアルで送るデータに加工し、送信領域へ格納し、送信処理▲3▼の起動をかける。この送信処理は第12図のソフト割込1処理S5cで行なわれる。
送信処理▲3▼:送信領域のデータを順番にシリアル送信する。この送信処理は第 11図の送信データ処理S7bで行なわれる。
第13図に示すように表示ユニットの主フロー中にデータ送・受信の処理を含めていないが、これは表示ユニットのデータ送・受信処理は、ソフトタイマー割込1において、処理されている。何故、本体ユニットでは、主フローの中に入れたかというと本体ユニットの主な仕事は演算処理と自動停止であり、この処理が主フローにあるかぎり、ディスプレイより送られるデータがソフト割込にあっても、何のメリットもなく演算処理と自動停止処理が遅くなるというデメリットの方がある。又、それでは演算処理及び自動停止処理を主フローでなくソフト割込の中に入れれば良いが、演算処理には時間がかかり、かつ、演算処理に必要なデータが多い為主フローにある方が良いのである。表示ユニットでは主フローでなく、ソフトタイマー割込で送・受信処理をしているが、主フローでも良いが主フローのパネルスイッチによる各モードの処理時間が大幅に異なり、かつ、ソフト割込処理内で、本体よりのデータを使用する関係より、表示ユニットでは受信処理は、ソフト割込による方がメリットが多い。
送信処理についても、ディスプレイより本体の送るデータは、主フローで作成するのでなくパネルスイッチデータを送る事より、主フローよりソフト割込にある方が良いのである。以上の理由で本体の処理全体の内容とディスプレイの処理全体内容が異なる為、送・受信処理の位置が異なる。
タイマー割込は、本体においては10ms毎にハード割込がかかる。この他ソフトタイマーとして16chのタイマーがソフトで作られ、その内8chがソフト割込1のタイマーで他の8chがソフト割込2のタイマーとなっている。ソフトタイマーとはタイマースタート/ストップフラグと動作カウンタと繰返しカウンタで構成され、ソフト割込1のソフトタイマーは動作カウンタ及び繰返しカウンタが1バイト構成でソフト割込2のソフトタイマーは、動作カウンタ、繰返しカウンタは2バイト構成となっている。タイマースタート/ストップフラグは、ソフトタイマーの動作をコントロールフラグで、ソフト割込1タイマーで1バイト(8BIT)あり、各ビットが8個のタイマーに対応している。このフラグのビットが“1”の時動作し、“0”の時、ソフトタイマーが停止する。例えばタイマースタート/ストップフラグのどれかのビットが1になったとすると、これ以後ハードタイマー割込が入る毎に動作カウンタのデータが1だけデクリメントされ、動作カウンタが“0”になるとタイムアウトしたという事より、ソフト割込1もしくはソフト割込2のフラグがセットされる。そして動作カウンタには繰返しカウンタのデータがセットされる。これがタイマースタート/ストップフラグが “0”になるまで繰返す。これより、ソフト割込1タイマーは、10ms〜2.55secまでソフトタイマーをセット出来る又ソフト割込2タイマーは50ms〜 54.6125minまでコントロール可能である。
このタイマー割込は、どの様に使用されているかというと、ディスプレイユニットでは、パネルスイッチの取込みを、所定時間前に実行する。又、ディスプレイ表示更新フラグのセット、点滅フラグのセット、初期ルーチンタイマー等が実行される。本体ユニットでは、音声タイマー、初期ルーチンタイマー、通信エラーチェックタイマー等が実行される。タイマー繰り返しカウンタが10でタイマー動作カウンタの最初からの時、タイマーフラグはタイマースタート/ストップフラグがセットされてから約5×(タイマー割込周期)でセットされ、その後約10×タイマー割込周期でセットを繰返す。これはタイマースタート/ストップフラグがストップされるまでつづく。第16図のタイマーフラグ信号がソフト割込1もしくはソフト割込2のフラグとなり、このフラグはそのフラグにより起動される処理が実行されるとその段階でリセットする。
尚、以上に開示された発明にあってクレーンとは車載機構だけでなく一般的にブームを用いて吊荷を操作する例えば設置式作業用クレーン及びパケットを上下左右に移動させる高所作業車等をも含む意味で用いられている。
【図面の簡単な説明】
第1図は従来のクレーン安全装置のパネル表示の例を示す図、
第2A図は本発明装置の基本構成を示すブロック図、
第2B図は本発明装置に記憶される定格総荷重データ曲線の例を示す図、
第2C図は本発明装置の具体的構成を示すブロック図、
第3図は本発明装置の作業状態設定モードの画面上表示パターンを示す図、
第4A図は本発明装置の自動クレーン安全監視モードの画面上表示パターンを示す図、
第4B図は本発明装置である画面上に指示される自動停止原因表示イラストを示す図、
第5図は本発明装置の作業範囲設定モードの画面上表示パターンを示す図、
第6図は本発明装置のターゲットモードの画面上の表示パターンを示す図、
第7図は本発明装置の限界荷重-旋回角モードの画面上の表示パターンを示す図、
第8図は本発明装置の性能カーブ表示モードの画面上の表示パターンを示す図、
第9A図はクレーンの定格総荷重表の一部を示す図、
第9B図は本発明装置の性能表モードの画面上の表示パターンを示す図、
第10図は本体ユニットの動作シーケンス主フローのチャート図、
第11図は本体ユニットハード割込フローのチャート図、
第12図は本体ユニット及び表示ユニットソフト割込フローのチャート図、
第13図は表示ユニットの動作シーケンス主フローのチャート図、
第14図は表示ユニットの主フローにおける表示モード各々での処理を示すチャート図、
第15図は表示ユニットハード割込フローのチャート図、そして
第16図はタイマー割込に係る信号を示す図である。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
1.「【請求項1】クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、クレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの記号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなるクレーン安全装置。」を特許請求の範囲の減縮を目的として、
「1.クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示におけるクレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなり、該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図を基準として描かれた障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)であるクレーン安全装置。」と訂正する。
2.「【請求項2】請求の範囲第1項に記載のクレーン安全装置において、該模式図はクレーン機構のブームの模式図(第5図、B)であって、その形状が変化し且つ動くものであり、該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図ブームを基準として描かれたブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)であるクレーン安全装置。」を特許請求の範囲の減縮を目的として、
「2.請求の範囲第1項に記載のクレーン安全装置において、該模式図はクレーン機構のブームの模式図(第5図、B)であって、その形状が変化し且つ動くものであり、該ブーム作業範囲を制限するための領域は、スクリーン上の基準から片側部分に識別(第5図、斜線)を付した非作業範囲エリアとして表示されるクレーン安全装置。」と訂正する。
3.「【請求項3】請求の範囲第1項に記載のクレーン安全装置において、該模式図はクレーンの吊荷位置を示す模式図

であり、該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として所定範囲内の距離目盛を示す指標(第6図、605,606,613,614)であるクレーン安全装置。」を特許請求の範囲の減縮を目的として、
「3.クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示におけるクレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン吊荷位置であるクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなり、該模式図はクレーンの吊荷位置を示す模式図

であり、該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として該基準からの距離に関し所定範囲内の距離目盛を示す指標(第6図、605,606,613,614)であるクレーン安全装置。」と訂正する。
4.「【請求項4】請求の範囲第3項に記載のクレーン安全装置において、該模式図吊荷位置は、該スイッチ手段操作に応答して該スクリーン上の所定の固定位置に初期設定されるクレーン安全装置。」を特許請求の範囲の減縮を目的として、「4.請求の範囲第3項に記載のクレーン安全装置において、該模式図吊荷位置は、該スイッチ手段操作に応答して該スクリーン上の所定の固定位置に初期設定され、該指標を含む該スクリーン上の限定された範囲内を有効表示エリアとして現在のクレーンの吊荷位置に対応する模式図吊荷位置を示しているクレーン安全装置。」と訂正する
5.「【請求項7】請求の範囲第1項に記載のクレーン安全装置において、該模式図はクレーン機構のブームの平面図の模式図(第7図、705)であって、ブームの旋回に従って基点を中心に旋回するよう表示されているものであり、該所定の識別パターンは、該ブーム平面模式図の基点を中心に描かれた安全荷重範囲曲線(第7図、A、B)であるクレーン安全装置。」を特許請求の範囲の減縮を目的として、
「7.クレーン機構の動作状態を検出するセンサーからの信号を受信する手段と2次元スクリーンを有する表示手段とを含むクレーン安全装置であって、複数のモードのクレーン動作に関する画面表示から選択されたモードの画面表示におけるクレーン機構の一部の模式図を該スクリーン上にクレーン機構の動き・形状の変化に従って動的に表示する手段であって、該センサーからの信号に応答して該スクリーンの座標軸に対する該模式図の表示すべき座標を決定しているクレーン機構模式図表示手段、及びスイッチ手段を含み、クレーン機構が選択されたクレーン動作状態に操作されたときの操作者による該スイッチ手段の操作に応答して、そのとき該スクリーン上に表示されている模式図を基準として該スクリーン上に所定の識別パターンを表示する手段とからなり、選択された第1のモードの画面表示における該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該スクリーン上に表示されている該模式図を基準として描かれた障害物に対しブーム作業範囲を制限するための領域(第5図、510)であり、選択された第2のモードの画面表示における該所定の識別パターンは、該スイッチ手段操作時に該クレーン吊荷位置に対応する該スクリーン上に表示されている模式図吊荷位置を基準として該基準からの距離に関し所定範囲内の距離目盛りを示す指標(第6図、605,606,613,614)であり、選択された第3のモードの画面表示における該模式図はクレーン機構のブームの平面図の模式図(第7図、705)であって、ブームの旋回に従って基点を中心に旋回するように表示されているものであり、該所定の識別パターンは、該ブーム平面模式図の基点を中心に描かれたクレーンのアウトリガー設定条件に従って変化する安全荷重範囲曲線(第7図、A、B)であるクレーン安全装置。」と訂正する。
6.「【請求項8】請求の範囲第7項に記載のクレーン安全装置において、該描かれた安全荷重範囲曲線は、クレーンのアウトリガー設定条件に従って変化するものであるクレーン安全装置。」を特許請求の範囲の減縮を目的として、
「8.請求の範囲第7項に記載のクレーン安全装置において、該クレーン機構模式図表示手段と該所定の識別パターンを表示する手段は該模式図及び識別パターンの表示すべき座標を所定の周期で演算して決定している表示部CPUからなり、更に、該センサーからの信号とクレーン機構の仕様に従ったクレーンの動作状態各々に関する記憶された最大定格荷重データとを参照してクレーン機構の動作上の安全に関する警報信号を生成するための本体CPUを該表示部CPUとは別個に含み、該表示部CPUと該本体CPUが1つのクレーン上に載置された構成であるクレーン安全装置。」と訂正する。
審決日 2000-10-03 
出願番号 特願平1-504196
審決分類 P 1 122・ 531- YA (B66C)
P 1 122・ 532- YA (B66C)
P 1 122・ 113- YA (B66C)
P 1 122・ 121- YA (B66C)
P 1 122・ 841- YA (B66C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 久雄  
特許庁審判長 藤田 豊比古
特許庁審判官 関谷 一夫
西野 健二
登録日 1997-05-02 
登録番号 特許第2644352号(P2644352)
発明の名称 クレーンの安全装置  
代理人 朝日 伸光  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 小谷 悦司  
代理人 村松 敏郎  
代理人 岡部 正夫  
代理人 植木 久一  
代理人 岡部 正夫  

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