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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない A47L
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない A47L
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない A47L
審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない A47L
管理番号 1040275
審判番号 審判1999-35659  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-11-12 
確定日 2000-12-21 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2140629号発明「電気掃除機用集塵フィルター及びこれを使用した電気掃除機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
(1)本件特許第2140629号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、昭和58年5月11日に出願された特願昭58-81007号の一部を、平成6年7月11日に新たな特許出願としたものであって、平成8年1月10日に特公平8-101号として出願公告がなされ、平成11年4月23日に本件特許の設定登録がなされたものである。
(2)これに対して、請求人は、本件特許出願は分割出願の要件を備えておらず、本件特許発明は甲第3号証、甲第4号証及び甲第10号証に記載の技術的事項、あるいは甲第3号証乃至甲第10号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(以下、「無効理由1」という。)、また、仮に本件特許出願が分割出願であると認められたとしても、本件特許発明は甲第4号証に記載された発明と同一、あるいは少なくとも甲第4号証乃至甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(以下、「無効理由2」という。)、更に、本件特許明細書には特許法第36条第3項及び第4項の規定に違反する記載不備がある(以下、「無効理由3」という。)と主張し、証拠方法として甲第1号証乃至甲第12号証を提出している。
(3)被請求人は、平成12年4月10日に訂正請求書を提出して訂正を求めた。当該訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、即ち、以下のa)乃至c)のとおりに訂正しようとするものである。
a)特許請求の範囲の【請求項1】における、「該使い捨て式集塵フィルターの外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず内側に微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施して成る」を「前記袋支持部材は、使い捨て式集塵フィルターの外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず使い捨て式集塵フィルターの内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施して成る」と、また、【請求項2】における、「該使い捨て袋状の集塵フィルターは、外側に微生物などの駆除薬剤処理を施さず内側に微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理が施されている」を「該使い捨て袋状の集塵フィルターの袋支持部材は、集塵フィルター外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず集塵フィルター内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理が施されている」と、それぞれ訂正する。
b)明細書の段落【0008】における、「該使い捨て式集塵フィルターの外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず内側に微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施して成る」を「前記袋支持部材は、使い捨て式集塵フィルターの外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず使い捨て式集塵フィルターの内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施して成る」と、また、「該使い捨て袋状の集塵フィルターは、外側に微生物などの駆除薬剤処理を施さず内側に微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理が施されている」を「該使い捨て袋状の集塵フィルターの袋支持部材は、集塵フィルター外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず集塵フィルター内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理が施されている」と、それぞれ訂正する。
c)明細書の段落【0009】における、「このゴミは、内側に微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施した使い捨て袋状集塵フィルターの袋支持部材のダスト吸込口を通り、紙袋内に捕集される。」を「このゴミは、使い捨て式集塵フィルターの内側に微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施した袋支持部材のダスト吸込口を通り、紙袋に捕集される。」と訂正する。

2.訂正の適否に対する判断
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
これらの訂正事項について検討すると、上記a)の訂正は、微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施す対象個所を、使い捨て式集塵フィルターにおける袋支持部材に限定し且つ明確にしたものであり、また、出願当初の明細書の段落【0027】乃至【0029】及び図6乃至図8の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明に該当し、新規事項の追加に該当しない。
また、上記b)及びc)の訂正は、上記a)の訂正に伴ってなされたものであり、明りょうでない記載の釈明に該当し、新規事項の追加に該当しない。
そして、上記いずれの訂正も、掃除機運転によって一度捕集したダニ、その他の有害微生物の繁殖を大幅に抑制するという課題に変更を及ぼすものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(2)独立特許要件
a)訂正明細書に記載の発明
訂正明細書に記載の発明(以下、「訂正発明」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
電動送風機の吸込気流によって取り込まれる塵埃を集塵する紙袋と、該紙袋の吸入口部に取り付けられ塵埃吸込口を有する袋支持部材とを備え、電気掃除機の集塵部に着脱自在に装着される使い捨て式集塵フィルターであって、前記袋支持部材は、使い捨て式集塵フィルターの外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず使い捨て式集塵フィルターの内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施して成ることを特徴とする電気掃除機用集塵フィルター。
【請求項2】
塵埃を吸い込む吸口体と、掃除機本体に設けられた電動送風機によって前記吸口体を介して吸い込まれた塵埃が集塵される集塵室を備え、前記集塵室は袋支持部材取付部を備え、
前記電動送風機の吸込気流によって取り込まれる塵埃を集塵する紙袋と、該紙袋の吸入口部に取り付けられ塵埃吸込口を有する袋支持部材とを構成部材とした使い捨て袋状の集塵フィルターが前記袋支持部材取付部に装着され、該使い捨て袋状の集塵フィルターの袋支持部材は、集塵フィルター外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず集塵フィルター内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理が施されていることを特徴とする電気掃除機。」
b)新規性進歩性の判断
i)分割出願の適否について
請求人は、本件特許発明は、塵埃を集塵する紙袋と、該紙袋支持部材を備えた使い捨て式集塵フィルターにおいて、前記支持体に薬剤処理を施さず、紙袋内部のみに薬剤処理を施した使い捨て式集塵フィルターを含むものであるが、このような態様の使い捨て式集塵フィルターは出願当初の明細書中に何等記載されていないから、本件特許出願は分割出願の要件を満足しておらず、その出願日は、本件特許の現実の出願日である旨の主張をしている。
しかしながら、訂正発明では、微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施す対象個所を使い捨て式集塵フィルターにおける袋支持部材に限定したことにより、上記の態様の使い捨て式集塵フィルターが除外されているのは明らかであるから、請求人の上記主張は認められない。
したがって、本願は原出願を適正に分割したものであり、出願日は、原出願の出願日である昭和58年5月11日とみなす。
ii)甲号証
請求人の提出した甲第3号証(特開昭59-207124号公報)、甲第5号証(特開昭58-153516号公報)、甲第10号証(ドイツ連邦共和国特許出願公開第3905565号明細書)は、本件出願日の後に頒布されたものであるから、公知文献として採用することはできない。
同甲第4号証(ドイツ連邦共和国特許出願公開第2911004号明細書)には、「1.送風される空気の流れの中に配置された少くとも一つのフィルターを備えた吸引集塵機であって、(前記)フィルターに抗菌性及び/又は抗細菌性薬剤処理を施したことを特徴とする吸引集塵機。」(クレーム1)、「8.(前記)薬剤処理された繊維が、フィルターの塵挨が衝突する側に付与されているクレーム1又はそれに続く各項のいずれかに記載される吸引集塵機。」(クレーム8)、「家庭用又は業務用の吸引集塵機について、吸引された塵埃がフィルターによって、吸引されている空気の流れから分離されることは一般に知られている。この空気の流れには、塵埃以外に『かび』や『細菌』も取込まれている。これらの『かび』や『細菌』は殊の外、微小なため、使用されている塵埃用フィルターでは完全に濾過しきれず、本来、清浄化されている吸引された空気の流れと共に清掃されるべき空間に還流される恐れがある。」(第4頁第2段)、「図3は外側に覆われている袋状フィルターである。図4は内側に覆われている袋状フィルターである。」(第5頁第5段)、「図1のように、吸引集塵機のハウジング1にはブロアー2が配置されており、該ブロアーによって、塵埃を巻込んだ空気は清掃すべき平面から吸引集塵機の吸込口3を経由して吸込まれる。塵埃を巻込んた空気はブロアー2によって、集塵室5内に配置されているフィルター4の中に送られる。(そして)濾過された空気は集塵室5から柄6を通して、清掃中の空間に還流される。フィルター4は紙又は織物製とすることができ、抗菌性及び/又は抗細菌性の薬剤を付与することができる。フィルター4はその際、塵埃が付着するその内面に前記薬剤を付与することができ、そのため、単に空気が通過する際、かびや細菌を殺すだけでなく、ブロアー2のスイッチを切った後も、少くとも、集塵袋の壁面に付着していて、かび及び細菌を含む(集められた)塵埃の層を殺菌(又は滅菌)することができる」(第5頁第6段〜第6頁第1段)、「図3の「外側に設けられる袋状フィルター」は、その外側は塵埃を濾過する効果の高い素材で出来ていて、その内側は抗菌性又は抗細菌性薬剤が付加されている繊維8が積層されている。これに対して図4の内側に設けられるフィルターは、内面に抗菌性及び抗細菌性コート層を有する繊維(層)8が配置されている。」(第7頁第2段)、「前記浸透薬剤は、フィルター、フィルターの内面、繊維あるいは、所謂バクテリア・フィルターに含浸、ローラー塗布、吹付けによって、フィルターの製造工程中あるいは、その後工程で付与される。」(第8頁第2段)、「複数のフィルターの内、少なくとも一つのフィルターに抗菌性及び/又は抗細菌性薬剤処理を施したクレーム1記載の吸引集塵機。」(クレーム2)と記載されている。
同甲第6号証(実願昭56-69725号(実開昭57-181253号)のマイクロフィルム)には、第1図と共に、「従来、集塵袋にためられた塵埃を集塵袋とともに捨てるようにした電気掃除機がある。集塵袋の取付手段の代表的なものとしては、第1図に一部を示すように、集塵ケース(図示せず)に収納される集塵袋(1)の開口縁にフランジ(2)を固定し、このフランジ(2)を集塵ケース内に形成したコの字形の取付枠(3)に挿着してフランジ(2)を吸込口(4)側へ圧接するようにしたものが存する。」(明細書第1頁下4行〜第2頁4行)と記載されている。
同甲第7号証(米国特許第3361334号明細書)には、「第1図に示す袋は、その両端17および18が上記した方法で閉鎖された、典型的な真空掃除機に用いる使い捨てのフィルターバッグであり、開口部19は壁12に切込まれており、真空掃除機の吸込口と連結される、厚紙または実質的に硬い材料でできた通常の補強カラー20によってその(開口部19の)周囲が取り囲まれている。」(第3欄53〜58行)、「本発明は、広く言えば袋に関し、例えば真空掃除機に用いられる使い捨てフィルターバッグのような袋に関する(中略)。真空掃除機用の使い捨てフィルターバッグは一般に、紙または他の繊維性の柔軟で、多孔性材料からなっている。このような袋は、通常、一方または両方の端部が閉鎖されており、互いに対向する(前後)壁を有し、これらの壁は、袋がふくらみやすいように複数のひだを有する(両)側壁によって連結されている。更に袋の一端部か、またはその1つの壁の上のいずれかに、真空掃除機のケーシングの空気吸入口開口部と接続されるよう、1箇所の開口部が設けられている」(第1欄27行〜41行)と記載されている。
同甲第8号証(「月刊消費者」No.282 1983年2月号)には、「全体に紙袋式が好評でしたが、紙袋は使い捨てなので、袋代(一枚九十円〜百二十円)がかかります。」(第10頁上欄2〜4行)、「ゴミ処理は、ホコリも立たず、手も汚さないなどで紙袋式が好評でした。しかし、前述したように、袋代(一枚九十円〜百二十円)がかかります。」(第13頁下欄8〜11行)、「もっとも、収じん量が多ければいいとは必ずしもいえません。というのは、集めたゴミからダニが発見されているからです。このダニはコナヒョウダニといい、ふとんやじゅうたんなどに多くいるということです。つまりゴミとともに、ダニも吸い取る掃除機の収じん部は、ダニの“たまり場”になっていることも十分予想されます。たまったゴミはなるべくこまめに捨てるとよいでしょう。」(第10頁中欄14行〜下欄6行)、「・インジケーター ゴミがいっぱいになったことを教えてくれるインジケーターの見やすさを調べてみました。」(第12頁下欄1〜3行)と記載されている。
同甲第9号証(特開昭57-99939号公報)には、「本発明は、紙等の濾材により袋状体を形成して吸入された塵埃を濾過し、この袋状体を塵埃とともに捨てるように形成した集塵袋方式」(第1頁左下欄下3〜1行)、「第1細目集塵フイルター19は、第2図、第8図に示すように袋状体65と支持板66とから構成されており、袋状体65は薄い通気性を有する可撓性の紙で形成され、支持板66はボール紙等の硬質紙で形成され、支持板66と袋状体65は接着剤により接着されている。支持板66は塵埃吸込口67及びふさぎ蓋部68を有し」(第3頁左上欄13〜19行)、「第1細目集塵フイルター19のダストケース2への取り付けは次の如く行う。第6図のようにふさぎ蓋部68を開きフイルター支持板36の凹部38に差し込むとともに袋状体65をダストケース2内に挿入し、支持板66の上部と下部を受部39,40に嵌めることにより、第1細目集塵フイルター19はダストケース2の第1細目集塵フイルター用開口部側に保持される。」(第3頁右上欄15行〜同頁左下欄2行)、「塵埃の充満した第1細目集塵フイルター19をダストケース2から外し、新しい第1細目集塵フイルター19を取り付ける。」(第6頁左上欄18行〜同頁右上欄1行)と記載されている。
同甲第11号証(米国特許第3214861号明細書)には、「運転時に、モータ48の付勢はシャフト49及びプロペラ56を回転させる。プロペラ56の回転は、チューブ32の朝顔形に拡がった部分を通して強力に空気を取込む。空気は下に向かって、容器44内に配置されている通気性の袋46の中に強制的に送られる。チューブ32の端部を通して取込まれた空気の中に捕捉された昆虫もしくは類似のものは何でも、空気と共に内方に移動させられ、その結果、袋46の中に堆積される。もし望むならば、少量のスプレー殺虫剤、もしくは類似のものを容器44の中に入れ、袋46にしみ込ませることができる。もし、昆虫が回転するプロベラを通過することですでに死んでいなければ、こうすることによって、この殺虫スプレー剤で昆虫を殺すことができる。その後、空気はカバーエレメント40の頂面に設けられている穴を通して排出される。これらの穴は、容器44の適当な位置に配置することができる。もし、望むならば、容器を使用せず、袋だけを用いることもできる。袋46の中に集められた昆虫は、袋46をチューブ状部分38の端部42から外し、それを空にするか、あるいは袋を(廃棄)処分することで、便利に(廃棄)処理することができる。袋46は、目の粗い紙のような、高価でない通気性材料で作ることができ、袋は1度使われた後もしくは袋が一杯になったとき、(廃棄)処分することができる。(後略)」(第3欄63行〜第4欄10行)と記載されている。
同甲第12号証(米国特許第4279095号明細書)には、「(開示の)摘要
アタッチメントは真空掃除機のホースに取付けられる。それはハンドルと尖ったサクション・ノズルを有するキャニスターを備えている。ノズルの中ではバキューム(プレナム)チャンバーが、パーティションと連結されている。そのパーティションは、その周辺に堅牢で、しかも曲がりやすい一列のフィンガーと、(同じく)その周辺に複数の柔軟な環状のチューブを備え、バキューム・プレナム(チヤンバー)に通じている。アタッチメントからは排気パイプが後方に伸びていて家庭用真空掃除機のホースに連結される。ノズルを犬や猫などのペットの毛を横断して動かし、蚤を動物から取り除く。キャニスターの中には動物の毛からサクションで除去され、運び出された蚤および蚤の卵を殺す化学薬品を含む使い捨てのチューブ状の袋が存在する。」(第2欄第1〜13行)と記載されている。
iii)対比・判断
訂正発明と甲第4号証、甲第6号証乃至甲第9号証、甲第11号証及び甲第12号証に記載のものとを比較すると、上記甲各号証には、訂正発明を特定する事項である「袋支持部材は、使い捨て式集塵フィルターの外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず使い捨て式集塵フィルターの内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施して成る(又は、駆除薬剤処理が施されている)」とする点が記載されておらず、また、かかる事項を示唆する記載も見あたらない。そして、訂正発明はかかる事項により、「使い捨て集塵フィルターの内部だけに有害微生物の駆除薬剤処理を施したので、フィルターの交換時に薬剤処理個所に直接手が触れることがなく、この種フィルターの使い勝手を良くすることができる。」という明細書に記載の効果を奏するものである。
確かに、甲第4号証には、内側に薬剤処理を施した袋状集塵フィルターが記載されており、甲第9号証には、袋部材と袋支持部材とから構成される使い捨て式集塵フィルターが記載されてはいるが、仮に、これらを組み合わせたとしても、使い捨て式集塵フィルターの袋部材の内側に薬剤処理を施したものが出来上がるに止まり、訂正発明に至らないことは明らかである。
そうすると、訂正発明が、上記甲各号証に記載されているとも、上記甲各号証に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
c)記載不備についての判断
請求人は、発明の詳細な説明中に記載された「ダニ類」は、特許請求の範囲に記載された「微生物」と言う概念に含まれるものではなく、本件明細書は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明中の記載が不一致、あるいは特許請求の範囲に記載の発明は発明の詳細な説明中に開示されていない発明であり、特許法第36条第3項及び第4項の要件を満足していない旨主張している。
しかしながら、微生物とは、請求人の提出した甲第1号証(「広辞苑 第二版」岩波書店、1867頁、昭和44年5月16日発行)には、「顕微鏡的なきわめて小さい生物の総称」と定義され、同甲第2号証(「化学大事典7」共立出版株式会社、393頁、1987年2月15日縮刷版第30刷発行)には、「微小で,顕微鏡を用いて拡大しなければ見分けられないような生物」と定義されているところ、ダニ類も顕微鏡により見分けられる微小な生物と捉えられるため、微生物の概念にはダニ類が含まれると解するのが妥当である。
さらに、訂正明細書の段落【0005】には、「掃除機運転によって一度捕集したダニ、その他の有害微生物の繁殖を大幅に抑制し」と記載(この記載は、訂正前と同じ。)され、さらに同段落【0007】には、「フィルターを掃除機から外してゴミを捨てた後も薬による効果を持続して、ゴミからダニや菌類が繁殖するのを防止する」と記載(この記載は、訂正前と同じ。)されており、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された「微生物」の対象としてダニ類や菌類などの微生物が相当することも明らかであるから、訂正明細書には、請求人の主張する如き記載不備は存在しない。
(3)したがって、平成12年4月10日付けの訂正は、特許法第134条第5項の規定によって準用する同法第126条第2乃至4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件特許発明に対する判断
以下、上記の訂正発明を本件特許発明といい、上記の訂正明細書を本件特許明細書という。
(1)本件特許発明
本件特許発明は、上記2.(2)a)で認定したとおりのものである。
(2)無効理由1及び2について
上記2.(2)b)で検討したように、請求人の提出した甲各号証によっては、本件特許発明の新規性あるいは進歩性を否定することはできない。
(3)無効理由3について
上記2.(2)c)で検討したように、本件特許明細書中には、請求人の主張する記載不備は認めることができない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定を適用する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電気掃除機用集塵フィルター及びこれを使用した電気掃除機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機の吸込気流によって取り込まれる塵挨を集塵する紙袋と、該紙袋の吸入口部に取り付けられ塵挨吸込口を有する袋支持部材とを備え、電気掃除機の集塵部に着脱自在に装着される使い捨て式集塵フィルターであって、前記袋支持部材は、使い捨て式集塵フィルターの外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず使い捨て式集塵フィルターの内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施して成ることを特徴とする電気掃除機用集塵フィルター。
【請求項2】
塵挨を吸い込む吸口体と、掃除機本体に設けられた電動送風機によって前記吸口体を介して吸い込まれた塵挨が集塵される集塵室を備え、前記集塵室は袋支持部材取付部を備え、
前記電動送風機の吸込気流によって取り込まれる塵挨を集塵する紙袋と、該紙袋の吸入口部に取り付けられ塵挨吸込口を有する袋支持部材とを構成部材とした使い捨て袋状の集塵フィルターが前記袋支持部材取付部に装着され、該使い捨て袋状の集塵フィルターの袋支持部材は、集塵フィルター外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず集塵フィルター内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理が施されていることを特徴とする電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、使い捨て式の電気掃除機用集塵フィルター及びこのフィルターを使用した電気掃除機に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近における都市部のゴミを分析した結果、大量のケナガコナダニが発生しており、これにつれて、ケナガコナダニの天敵である家ダニも発生している。
【0003】
そして、その原因は、都市部の過密化によって高層住宅が出現するにしたがい、各室の密閉度が高まるとともに、古来から自然の建築材料が果たしていた適度の室内乾湿調整がくずれ、その結果として、床面畳床の湿度増大が一因となっていることは否めない。
【0004】
ところで、ケナガコナダニの虫体や死骸は、ぜんそくなどの呼吸器系の病気や川崎病の原因ではないかともいわれている。また、家ダニは、人体から直接血を吸うなどし、腫れや痒みを与える。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、前記したごとき有害微生物が発生してくるようになると、これら有害微生物をゴミとともに捕集する電気掃除機の機能も、従来のように、単にゴミを捕集するというだけでは不足であり、掃除機運転によって一度捕集したダニ、その他の有害微生物の繁殖を大幅に抑制し、さらにはたとえ掃除機本体から脱出するダニ類があっても、これを短時間のうちに死に至らしめる対策の必要が緊急の課題になっている。
【0006】
なお、袋状をなす電気掃除機用集塵フィルター内にダニ類を捕集し、長時間放置した場合、餌がゴミの中にありかつ、湿度40%以上、温度の上限が50度程度であれば、前記集塵フィルターの中で大量のダニ類が繁殖することが実験により確認されている。
【0007】
本発明は、使い捨て式電気掃除機用集塵フィルターの使用中、およびフィルター交換後であるゴミ捨て後の使われ方を考慮してなされたものであって、その目的とするところは、掃除機運転によって袋状集塵フィルターに一度捕集した家ダニ、ケナガコナダニなどの有害微生物のうち、たとえ前記集塵フィルターから脱するダニ類があっても、これを短時間のうちに死に至らしめ、これらダニ類の大量繁殖を防止して、衛生的にゴミ処理をおこなうことに加えて、フィルターを掃除機から外してゴミを捨てた後も薬による効果を持続して、ゴミからダニや菌類が繁殖するのを防止する一方、掃除機そのものには、使い捨て式フィルターの交換によって常に薬による効果を甦らせることのできる、環境衛生上優れた電気掃除機用集塵フィルター及びこのフィルターを使用した電気掃除機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電気掃除機用集塵フィルターは、電動送風機の吸込気流によって取り込まれる塵挨を集塵する紙袋と、該紙袋の吸入口部に取り付けられ塵挨吸込口を有する袋支持部材とを備え、電気掃除機の集塵部に着脱自在に装着される使い捨て式集塵フィルターであって、前記袋支持部材は、使い捨て式集塵フィルターの外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず使い捨て式集塵フィルターの内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施して成ることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電気掃除機は、塵挨を吸い込む吸口体と、掃除機本体に設けられた電動送風機によって前記吸口体を介して吸い込まれた塵挨が集塵される集塵室を備え、前記集塵室は袋支持部材取付部を備え、
前記電動送風機の吸込気流によって取り込まれる塵挨を集塵する紙袋と、該紙袋の吸入口部に取り付けられ塵挨吸込口を有する袋支持部材とを構成部材とした使い捨て袋状の集塵フィルターが前記袋支持部材取付部に装着され、該使い捨て袋状の集塵フィルターの袋支持部材は、集塵フィルター外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず集塵フィルター内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理が施されていることを特徴とするものである。なお、上記発明に関する具体的一例は、後述の図6及び図7に開示されている。
【0009】
【作用】
そして、本発明によれば、モータを回転して吸口からゴミを吸い込むと、このゴミは、使い捨て袋状集塵フィルターの内側に微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施した袋支持部材のダスト吸込口を通り、紙袋内に捕集される。
【0010】
捕集されたゴミで紙袋がいっぱいになると、インジケータが動作し、風量低下を使用者に知らせる。
【0011】
これにより、使用者は電源を切り、集塵装置にセットされている集塵フィルターを集塵装置から引き出して捨てた後、新しい集塵フィルターを集塵装置にセットする。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を、図1〜図5の一実施例にもとづいて説明すると、図1は本発明に係る使い捨てフィルター10を組み込んだ電気掃除機の全体的内部構造を示す縦断側面図、図2は図1に符号6で示す前蓋装置を開いて袋状集塵フィルター10を取り出した状態の斜視図、図3は図1に符号4で示す集塵装置の斜視図、図4は前記集塵フィルター10の拡大正面図、図5は図4の斜視図である。
【0013】
図1および図2において、1は掃除機の本体ケース、2はモータ、3はコードリール、4は集塵装置、5は除塵装置、6は前蓋装置を示している。
【0014】
しかして、本体ケース1は、その上部にハンドル7を有し、下部にキャスター8と車輪9とを有し、また上部前方には、後述する集塵フィルター10の目詰りを表示するインジケータ11と、前蓋装置6を開閉するためのクランプ12とを有する。
【0015】
モータ2は、モータ室13内に位置して、前側防振ゴム14と後側防振ゴム15とにより防振支持され、モータ室13の後部には、排気室16が設けられており、コードリール3には、コード17が巻かれている。
【0016】
集塵装置4は、図3に示すように、サブ集塵フィルター18(なお、このサブ集塵フィルター18は、集塵フィルター10の手持ち、すなわち予備の分がない場合に、間に合わせに掃除ができるよう、従来と同様、集塵装置4に組み込まれている)と、集塵フィルター10の紙袋10aと、紙袋支持部材10bと、紙袋支持部材10bと一体に連設されたゴミ排出防止蓋10c(図2〜図5)と、紙袋支持部材10bを支持する紙袋支持部材支持部19と、紙袋支持部材10bを集塵装置4内で位置決めさせる紙袋支持部材位置決めピン20と、フィルターパッキン21と、ネットフィルター22とにより構成されている。
【0017】
また、前記紙袋支持部材10bには、ダスト吸込口23(図3)があり、このダスト吸込口23は、前蓋装置6のホース口24に対し、シールパッキン25を介して接続される。
【0018】
さらに、前記集塵装置4の後部には、周知の除塵装置5が設けられており、この除塵装置5によって集塵装置44の除塵をおこなう。
【0019】
以上の構成において、モータ2を回転し、吸口(図示せず)からゴミを吸い込むと、このゴミは、延長管(図示せず)およびホース(図示せず)を通り、前蓋装置6のホース口24から紙袋支持部材10bのダスト吸込口23を通り、紙袋10a内に捕集される。捕集されたゴミで紙袋10aがいっぱいになると、インジケータ11が動作し、風量低下を使用者に知らせる。
【0020】
これにより、使用者は電源を切り、図2に示すごとく、前蓋装置6のクランプ12を押して前蓋装置6を開き、集塵装置4にセットされている集塵フィルター10のゴミ排出防止蓋10cを、これと一体に連設されている紙袋支持部材10bの境界部で折り、ゴミ捨てに際してダスト吸込口23からゴミがこぼれないように、該ダスト吸込口23に蓋をする。
【0021】
そして、その後、紙袋支持部材10bの両側を持ち、集塵装置4から集塵フィルター10を引き出して捨てた後、新しい集塵フィルター10を集塵装置4にセットする。
【0022】
しかして、本発明においては、電気掃除機の集塵部に着脱自在に装着される使い捨て式集塵フィルターの内部に、微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施すようにしたものであり、これにより、紙袋10a内を歩きまわるダニ類などの有害微生物と駆除薬剤との接触頻度が高くなるため、駆除薬剤と接触した有害微生物には、その毛穴などから体内に駆除薬剤が入り、紙袋10a内における有害微生物の繁殖を大幅に抑制することができ、さらにはたとえ集塵フィルターから脱出するダニ類などの有害微生物があっても、これを短時間のうちに死に至らしめる。
【0023】
なお、駆除薬剤がいくら人体に影響がないとは云っても、使用者によっては触れたくないという向きを考慮して、集塵フィルター10の交換時に直接手が触れる紙袋支持部材10bの部分には駆除薬剤を施さないようにすれば、先の使用者にしてみれば、紙袋支持部材10bの部分に駆除薬剤を施す場合に比べてこの種フィルター10の使い勝手は良くなり、また袋支持部材10bには微生物などの駆除薬剤処理を施さないようにすれば、使用者が駆除薬剤に直接触れるのを防止することができる。
【0024】
さらに、紙袋支持部材10bの部分には駆除薬剤を施さないようにすれば、その分、駆除薬剤の使用量を少なくすることができ、経済的であり、価格の低減化に寄与する。
【0025】
なお、ダニ類などの有害微生物は紙袋10a内を歩きまわるうちに駆除薬剤と接触する頻度が高いため、紙袋支持部材10bの部分に駆除薬剤を施さなくても、商品としての評価に耐えられないほど大きな影響はない。
【0026】
図6は本発明フィルターの第2の実施例を示すダスト吸込口23付近の縦断面図であり、紙袋支持部材10bのうち、10b’は防虫およびダニ殺虫剤を浸透させない紙袋支持部材、10b”は防虫およびダニ殺虫剤を浸透させた紙袋支持部材である。これを換言すると、本実施例は、紙袋支持部材10b’と紙袋支持部材10b”とを2層に貼り合わせ、防虫およびダニ殺虫剤を浸透させた紙袋支持部材10b”の内側に紙袋10aを接合したものである。
【0027】
すなわち、前記構成は、いくら人体に影響がないといっても、使用者によっては触れたくないという向きを考慮して、集塵フィルター10の交換時に直接手が触れる紙袋支持部材10b’の部分に防虫およびダニ殺虫剤を浸透させないよう配慮したものである。
【0028】
図7は本発明フィルターの第3の実施例を示すダスト吸込口23付近の縦断側面図、図8は図7のA矢視図であり、10bはその裏面、すなわち紙袋10aとの接合面に防虫およびダニ殺虫剤の混合接着糊26を塗布した紙袋支持部材である。
【0029】
しかして、本実施例も図6の実施例と同様、集塵フィルター10の交換時に直接手が触れる紙袋支持部材10bの表面に防虫およびダニ殺虫剤を塗布しないように配慮したものであり、本実施例によれば、図6の実施例に比較して、紙袋支持部材の枚数が1枚少なくて済み、価格の低減化に寄与する。
【0030】
図9は本発明フィルターの第4の実施例を示す正面図、図10のイ,ロ,ハはそれぞれ図9に示す集塵フィルター10の使用状態を順を追って説明するダスト吸込口23付近の斜視図であり、10bは集塵フィルター10の紙袋支持部材、10cは紙袋支持部材10bと一体に連設されたゴミ排出防止蓋を示し、前記紙袋支持部材10bとゴミ排出防止蓋10cとには、防虫およびダニ殺虫剤が塗布または浸透されている。27はゴミ排出防止蓋10cの一面(換言すると、ゴミ捨て時、紙袋支持部材10bとの境界部でゴミ排出防止蓋10cを折り曲げたときに、紙袋支持部材10bに設けられているダスト吸込口23と対向する面)に塗布した接着剤、28はゴミ排出防止蓋10cの一面(接着剤27を塗布した側の面)を覆った保護シートを示す。
【0031】
すなわち、本実施例においては、ゴミ排出防止蓋10cにほどこした接着剤27の表面を剥離自在な保護シート28で覆っておき、ゴミ捨て時、ゴミ排出防止蓋10cを折り曲げるときに保護シート28をはがし、ゴミ排出防止蓋10cを接着剤27で紙袋支持部材10bに接合することにより、当該紙袋支持部材10bのダスト吸込口23を密封するようにしたものであり、その効果としては、紙袋10a内を密封状態とすることにより、当該紙袋10a内に位一度捕集したダニ類の紙袋10a外への脱出を確実に防止することができる。
【0032】
しかして、前記各実施例において、紙袋10aに防虫およびダニ殺虫剤を施せば、紙袋10a内を歩きまわるダニ類と防虫およびダニ殺虫剤との接触頻度が高くなるため、当該紙袋10a内におけるダニ類の繁殖を大幅に抑制することができる。
【0033】
なお、参考までに、含水量15%に調製した粉末飼料50gと供試ダニ0.5gとを紙袋内に入れ、よく混合させて、湿度80〜100%の恒温槽に紙袋(この紙袋には、我が国で一般に市販されている防虫およびダニ殺虫剤をほどこした)ごとに保存し、10日後に紙袋を取り出し、紙袋内から供試ダニ0.1gを取って、顕微鏡下で生きているダニの数を数える実験を3回ずつおこなった平均結果は図11,図12のとおりであり、実験によれば、図11に示すように、紙袋に対して防虫およびダニ殺虫剤の含有量を1.23/m2以上含有させた場合、特に良好なダニ殺虫率が得られることを確認した。
【0034】
また、図12(紙袋開封後月数-ダニ殺虫率特性線図)には、前記結果にもとづく殺虫剤紙袋含有量(1.23/m2)の場合を示した。
【0035】
以上に述べたところをも総合して、前記実施例によれば、要約して、次のような効果を奏することができる。
【0036】
すなわち、
(1)掃除機運転によって袋状集塵フィルター10に一度捕集した家ダニ、ケナガコナダニなどの有害微生物の該集塵フィルター10内での繁殖を大幅に抑制し、さらにはたとえ集塵フィルター10から脱出するダニ類があっても、これを短時間のうちに死に至らしめることができ、生活環境の微生物での再汚染を防止することができる。
【0037】
(2)前記(1)の結果、ゴミを収容した集塵フィルター10を長時間ゴミ箱に放置しておいても、フィルター10は殺菌効果を持続し、紙袋10a内のダニ類がゴミ箱の中に出て繁殖することがない。
【0038】
(3)図3〜図5に示すように、紙袋支持部材10bと一体に、ゴミ捨てに際して前記紙袋支持部材10bのダスト吸込口23を塞ぐ、折曲げ自在なゴミ排出防止蓋10cを連設することにより、ゴミ捨て時、ダスト吸込口23から不慮にゴミがこぼれるのを防止することができる。
【0039】
(4)図6に示すように、防虫およびダニ殺虫剤をほどこさない紙袋支持部材10b’と防虫およびダニ殺虫剤をほどこした紙袋支持部材10b”とを2層に貼り合わせ、防虫およびダニ殺虫剤をほどこした紙袋支持部材10b”の内側に紙袋10aを接合することにより、集塵フィルター10の交換時に直接手が触れる紙袋支持部材10b’の部分に防虫およびダニ殺虫剤をほどこさないように配慮した。すなわち、いくら人体に影響がないといっても、使用者によっては触れたくないという向きを考慮して、集塵フィルター10の交換時に直接手が触れる紙袋支持部材10’の部分に防虫およびダニ殺虫剤をほどこさないように配慮した。
【0040】
(5)図7および図8に示すように、紙袋支持部材10bの裏面である紙袋取付側に位置して、防虫およびダニ殺虫剤をほどこすことにより、図6の実施例と同様、集塵フィルター10の交換時に直接手が触れる紙袋支持部材10bの表面に防虫およびダニ殺虫剤を塗布しないように配慮することができ、また図7および図8の実施例によれば、図6の実施例に比較して、紙袋支持部材の枚数が1枚少なくて済み、価格の低減化に寄与する。
【0041】
(6)図9および図10に示すように、紙袋支持部材10bと一体に連設されかつ、ゴミ捨てに際して前記紙袋支持部材10bのダスト吸込口23と対向するゴミ排出防止蓋10cの面部に接着剤27を塗布し、この接着剤27の表面を,剥離自在な保護シート28で被覆することによりゴミ捨て時、ゴミ排出防止蓋10cを折り曲げるときに保護シート28をはがし、ゴミ排出防止蓋10cを接着剤27で密封することができ、その効果としては、紙袋10a内を密封状態とすることにより、当該紙袋10a内に位一度捕集したダニ類の紙袋10a外への脱出を確実に防止することができる。
【0042】
なお、電気掃除機用集塵フィルターそのものではないが、「排気の殺菌方法」と題する特開昭50-128677号公報には、電気掃除機本体内の空気通路周辺に殺菌剤を塗布する技術が開示されている。
【0043】
しかして、同公報に記載の技術が解決しようとしている課題は、掃除機本体から排出される空気流中の雑菌除去にある。
【0044】
しかしながら、前掲特開昭50-128677号公報に記載の技術によれば、掃除機本体内の空気通路周辺に塗布された殺菌剤が、該掃除機本体内に高速吸引されたゴミ、特に硬いゴミと接触して剥離することが十分に考えられ、これが長期にわたって繰返しおこなわれると、前記殺菌剤による排気流中の雑菌除去効果も損なわれることは否めない。
【0045】
これに対し、掃除機本体内の空気通路周辺に塗布した殺菌剤が剥離した場合、あるいは定期的に、前記空気通路の周辺に殺菌剤を塗布し直すことが考えられるが、掃除機本体内の空気通路のように、狭い空間部分に一般のユーザーが殺菌剤を塗布する作業は難しく、一方、この作業を、その都度、業者に委託するのも煩わしさをともない、面倒であり、現実的な方法であるとは云い難い。
【0046】
他方、前掲特開昭50-128677号公報に記載の殺虫方法によって処理された電気掃除機を使用した場合、次のような問題もある。
【0047】
すなわち、特開昭50-128677号公報に記載の電気掃除機を用いた場合であっても、ダスト集塵部がゴミで一杯になった場合は、このゴミを掃除機本体から取り出して捨てる訳であるが、前記のようにして捨てられたゴミは、周囲に障壁となる物体(例えば紙袋の袋壁)が存在しないため、ゴミ内で生き残ったダニなどの害虫が容易に周囲に這い出す不具合がある。これを換言すると、特開昭50-128677号公報に示す従来技術にあっては、掃除機本体内でいっぱいになったゴミを該掃除機本体内から取り出し、捨てた後の害虫対策である環境衛生保護の点についてまで認識しておらず、この点で改良の余地がある。
【0048】
これに対し、本発明によれば、掃除機運転によって袋状集塵フィルターに一度捕集した家ダニ、ケナガコナダニなどの有害微生物の該集塵フィルター内での繁殖を大幅に抑制し、さらにはたとえ集塵フィルターから脱出するダニ類があっても、これを短時間のうちに死に至らしめることができ、生活環境の微生物での再汚染を防止することができる。
【0049】
なお、前記実施例においては、防虫およびダニ殺虫剤を用いた場合について例示したが、これと同等の効果を有する微生物殺虫剤を用いることができる。
【0050】
本発明によれば
▲1▼集塵フィルターが集塵を終えて使い捨てられた後も集塵フィルター内に有害微生物の駆除作用が有効に働いて、その繁殖を防止することができる。
▲2▼従来の使い捨て式集塵フィルターがもっている取り扱いの容易性並びに日常の室内清掃習慣の中で比較的定期化されたゴミ捨てサイクルにより、集塵フィルターと交換される使い方との相乗効果により、集塵フィルターが適度な間隔で交換されることにより、駆除薬剤の有効性が適度に更新され,掃除機での駆除薬剤の効果をその薬効がなくなる前に甦らせるといった機能を維持することができる。
▲3▼使い捨て集塵フィルターの内部だけに有害微生物の駆除薬剤処理を施したので、フィルターの交換時に薬剤処理箇所に直接手が触れることがなく、この種フィルターの使い勝手を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例を示す、使い捨てフィルター10を組み込んだ電気掃除機の全体的内部構造の縦断側面図である。
【図2】
図1に符号6で示す、前蓋装置を開いて袋状集塵フィルター10を取り出した状態の斜視図である。
【図3】
同じく図1に符号4で示す集塵装置の斜視図である。
【図4】
前記集塵フィルター10の拡大正面図である。
【図5】
図4の斜視図である。
【図6】
本発明フィルターの第2の実施例を示すダスト吸込口23付近の縦断側面図である。
【図7】
本発明フィルターの第3の実施例を示すダスト吸込口23付近の縦断側面図である。
【図8】
図7のA矢視図である。
【図9】
本発明フィルターの第4の実施例を示す正面図である。
【図10】
(イ),(ロ),(ハ),はそれぞれ図9に示す集塵フィルター10の使用状態を順を追って説明するダスト吸込口23付近の斜視図である。
【図11】
実験結果の参考例を示す説明図である。
【図12】
同じく実験結果の参考例を示す説明図である。
【符号の説明】
10…集塵フィルター、10a…紙袋、10b…紙袋支持部材、10c…ゴミ排出防止蓋、23…ダスト吸込口。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
a.特許第2140629号明細書における特許請求の範囲を以下のように訂正する。
「【請求項1】 電動送風機の吸込気流によって取り込まれる塵挨を集塵する紙袋と、該紙袋の吸入口部に取り付けられ塵挨吸込口を有する袋支持部材とを備え、電気掃除機の集塵部に着脱自在に装着される使い捨て式集塵フィルターであって、前記袋支持部材は、使い捨て式集塵フィルターの外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず使い捨て式集塵フィルターの内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施して成ることを特徴とする電気掃除機用集塵フィルタ一。
【請求項2】 塵挨を吸い込む吸口体と、掃除機本体に設けられた電動送風機によって前記吸口体を介して吸い込まれた塵挨が集塵される集塵室を備え、前記集塵室は袋支持部材取付部を備え、
前記電動送風機の吸込気流によって取り込まれる塵挨を集塵する紙袋と、該紙袋の吸入口部に取り付けられ塵挨吸込口を有する袋支持部材とを構成部材とした使い捨て袋状の集塵フィルターが前記袋支持部材取付部に装着され、該使い捨て袋状の集塵フィルターの袋支持部材は、集塵フィルター外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず集塵フィルター内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理が施されていることを特徴とする電気掃除機。」
b.明細書の段落【0008】の記載を次のように訂正する。
「【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電気掃除機用集塵フィルターは、電動送風機の吸込気流によって取り込まれる塵挨を集塵する紙袋と、該紙袋の吸入口部に取り付けられ塵挨吸込口を有する袋支持部材とを備え、電気掃除機の集塵部に着脱自在に装着される使い捨て式集塵フィルターであって、前記袋支持部材は、使い捨て式集塵フィルターの外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず使い捨て式集塵フィルターの内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施して成ることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電気掃除機は、塵挨を吸い込む吸口体と、掃除機本体に設けられた電動送風機によって前記吸口体を介して吸い込まれた塵挨が集塵される集塵室を備え、前記集塵室は袋支持部材取付部を備え、
前記電動送風機の吸込気流によって取り込まれる塵挨を集塵する紙袋と、該紙袋の吸入口部に取り付けられ塵挨吸込口を有する袋支持部材とを構成部材とした使い捨て袋状の集塵フィルターが前記袋支持部材取付部に装着され、該使い捨て袋状の集塵フィルターの袋支持部材は、集塵フィルター外側には微生物などの駆除薬剤処理を施さず集塵フィルター内側には微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理が施されていることを特徴とするものである。なお、上記発明に関する具体的一例は、後述の図6及び図7に開示されている。」
c.明細書の段落【0009】を次のように補正する。
「【0009】
【作用】
そして、本発明によれば、モータを回転して吸口からゴミを吸い込むと、このゴミは、使い捨て式集塵フィルターの内側に微生物などの繁殖を抑制する駆除薬剤処理を施した袋支持部材のダスト吸込口を通り、紙袋に捕集される。」
審理終結日 2000-10-03 
結審通知日 2000-10-17 
審決日 2000-10-30 
出願番号 特願平6-158714
審決分類 P 1 112・ 532- YA (A47L)
P 1 112・ 113- YA (A47L)
P 1 112・ 531- YA (A47L)
P 1 112・ 121- YA (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅田 幸秀杉野 裕幸小谷 一郎  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 藤本 信男
熊倉 強
登録日 1999-04-23 
登録番号 特許第2140629号(P2140629)
発明の名称 電気掃除機用集塵フィルター及びこのフィルターを使用した電気掃除機  
代理人 小川 勝男  
代理人 小川 勝男  
代理人 川島 利和  
代理人 田中 恭助  
代理人 田中 恭助  

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