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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K |
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管理番号 | 1040423 |
審判番号 | 審判1998-14787 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-09-17 |
確定日 | 2001-05-23 |
事件の表示 | 平成8年特許願第179723号「有機薄膜多層配線基板の切断方法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年1月27日出願公開、特開平10-27971]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願は、平成8年7月10日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成10年9月17日提出の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。 「【請求項1】 有機薄膜多層配線基板の切断方法であって、切断ライン上の有機薄膜層をエキシマレーザで除去する工程と、しかる後に前記切断ライン上の除去ラインの幅よりも狭い幅のブレードを使用して前記切断ライン上の有機薄膜層を除去した側から基板切断をなす工程とを含み、前記切断ライン上の有機薄膜層をエキシマレーザで除去する工程には、前記エキシマレーザ照射後に発生する煤をアルコールあるいはプラズマアッシングにより除去する工程を含むことを特徴とする有機薄膜多層配線基板の切断方法。」 2.各刊行物記載の発明 2-1.刊行物1記載の発明 当審からの拒絶の理由(平成12年12月1日付け拒絶理由通知)で引用され、本願の出願前の平成4年2月5日に頒布された刊行物である特開平4-35051号公報(以下、「刊行物1」という。)には、 (ア)「本発明の目的は、金属パターンにおけるメッキ領域や、切断領域における高分子材料の薄膜を簡単かつ的確に除去して」(上記公報第2頁右下欄第15〜17行) と記載され、また、金属パターンにおけるメッキ領域の高分子材料の薄膜を除去する実施例に関して、 (イ)「第1図に示されるような構成のレーザ照射装置20によって、セラミックス基板1に形成された金属パターン2を全面にわたって覆っている高分子材料膜3の選択的な除去処理を行う」(上記公報第4頁左上欄第7〜10行) (ウ)「レーザ21の照射領域にある高分子材料膜3は、瞬時に分解/飛散して消失する。 このとき、上記の除去作業中に飛散する異物などは、高分子材料膜3を覆っているレジスト膜4の上に付着し、当該高分子材料膜3の残存領域に直接付着して汚染することはない。」(上記公報第4頁右上欄第18行〜左下欄第4行) (エ)「本実施例の場合には、レーザ21の波長として、・・・たとえば波長308nmのエキシマレーザを用いる。」(上記公報第4頁左下欄第15〜18行) と記載され、また、切断領域における高分子材料の薄膜を除去する実施例に関して、 (オ)「この実施例2の配線基板の場合には、セラミックス基板1を覆って被着形成された高分子材料膜3の、切断領域1bを覆う部分を、前述のようなレーザ照射によって選択的に除去し、その後、高速に回転するダイサブレード30の研削作用によって切断作業を行うようにしたものである。」(上記公報第5頁左上欄第14〜19行) と記載され、また、切断領域における高分子材料の薄膜を除去する実施例に関する第5図には、 (カ)「高分子材料膜3」が除去された幅よりも狭い幅の「ダイサブレード30」を使用して「セラミックス基板1」の切断を行う工程が図示されている。 上記の(ア)〜(カ)の記載及び図示からみて、刊行物1には、 ”セラミックス基板1を覆って被着形成された高分子材料膜3を有する配線基板の切断方法であって、切断領域1bを覆う部分の高分子材料膜3をエキシマレーザ照射によって選択的に除去し、その後、高分子材料膜3が除去された幅よりも狭い幅のダイサブレード30によってセラミックス基板の切断を行う切断方法” が記載されているものと認める。 2-2.刊行物2記載の発明 当審からの拒絶の理由(平成12年12月1日付け拒絶理由通知)で引用され、本願の出願前の平成7年4月19日に頒布された刊行物である特公平7-36466号公報(以下、「刊行物2」という。)には、 (キ)「この発明において用いられる印刷配線用絶縁基板材料の種類としては・・・ポリイミド樹脂・・・などがある。 この発明において、基板材料がレーザーにより外形加工される。レーザーの種類は・・・エキシマレーザーなどがある。」(上記公報第3欄第28〜40行) (ク)「レーザーにより所定の外形に切断された基板用材料は、次いで、O2プラズマ処理される。この発明のこの処理で、レーザー加工で生じた基板の燃焼残留物、すなわち炭化物が除去される。」(上記公報第4欄第10〜13行) と記載されている。 2-3.刊行物3記載の発明 当審からの拒絶の理由(平成12年12月1日付け拒絶理由通知)で引用され、本願の出願前の平成4年12月10日に頒布された刊行物である特開平4-356387号公報(以下、「刊行物3」という。)には、 (ケ)「高分子物質にレーザ光を照射したときに発生しこれに付着するフラグメントを、オゾン処理あるいはプラズマ処理して除去する」(上記公報第1欄第2〜4行) (コ)「【0010】本発明に用いられるレーザ光には・・・エキシマレーザなど・・・が挙げられる。 ・・・【0013】高分子物質としては・・・ポリイミド樹脂」(上記公報第3欄第33行〜第4欄第25行) と記載されている。 2-4.刊行物4記載の発明 当審からの拒絶の理由(平成12年12月1日付け拒絶理由通知)で引用され、本願の出願前の平成6年1月11日に頒布された刊行物である特開平6-684号公報(以下、「刊行物4」という。)には、 (サ)「レーザによる表面処理方法、特に紫外線照射による表面処理方法では、レーザ照射領域近傍に飛散した物質が材料に付着するため、レーザ処理後に除去する必要がある。特に有機物、高分子材料での付着物は顕著である。その除去方法は、アルコールなどの有機溶剤による洗浄が主流であり」(上記公報第1欄第29〜34行) と記載されている。 2-5.刊行物5記載の発明 当審からの拒絶の理由(平成12年12月1日付け拒絶理由通知)で引用され、本願の出願前の平成3年11月18日に頒布された刊行物である特開平3-258475号公報(以下、「刊行物5」という。)には、 (シ)「エキシマレーザを有機系材料に照射した場合、材料の煤が発生し、周囲に黒く付着する。・・・ この付着したカーボンは外観を損なうが、アルコール等で拭き取れば目視上は除去できる。」(上記公報第1頁右下欄第20行〜第2頁左上欄第7行) と記載されている。 3.本願発明と刊行物1記載の発明との対比及び判断 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1の「配線基板」は、「セラミックス基板1」の上を覆うように、「高分子材料膜3」を形成しているから、有機薄膜配線基板であるということができる。また、刊行物1の「高分子材料膜3」、「ダイサブレード30」及び「切断領域1b」が、本願発明の「有機薄膜層」、「ブレード」及び「切断ライン」に相当することは明らかであるし、刊行物1の「高分子材料膜3」のうち、「切断領域1b」を覆う部分であって、エキシマレーザ照射によって選択的に除去された部分が、本願発明の「切断ライン上の除去ライン」に相当するから、両者は、 「有機薄膜配線基板の切断方法であって、切断ライン上の有機薄膜層をエキシマレーザで除去する工程と、しかる後に前記切断ライン上の除去ラインの幅よりも狭い幅のブレードを使用して基板切断をなす工程とを含む有機薄膜配線基板の切断方法。」 である点で一致し、以下の3点で相違する。 <相違点1>本願発明は、有機薄膜多層配線基板を切断しているのに対して、刊行物1記載の発明では、有機薄膜配線基板を切断しているものの、配線が多層かどうかまでは明確でない点。 <相違点2>ブレードを使用して基板切断を行うにあたり、本願発明では、「前記切断ライン上の有機薄膜層を除去した側から」切断するのに対して、刊行物1記載の発明では、切断ライン上の有機薄膜層を除去した側から切断していない点。 <相違点3>切断ライン上の有機薄膜層をエキシマレーザで除去する工程について、本願発明では、「前記エキシマレーザ照射後に発生する煤をアルコールあるいはプラズマアッシングにより除去する工程を含む」のに対して、刊行物1記載の発明では、エキシマレーザ照射後に発生する煤をアルコールあるいはプラズマアッシングにより除去する工程を含んでるか否か明確でない点。 そこで、上記相違点1について検討すると、有機薄膜多層配線基板それ自体は周知の技術事項であり(例えば、特開平6-104574号公報の【従来の技術】の欄を参照されたい。)、通常、基板の切断は、配線の無い部分で行われるものであることを考慮すると、刊行物1に記載された基板の切断方法を、「有機薄膜多層配線基板」の切断に適用できることは、当業者にとって容易に予測できることであって、刊行物1の基板の切断方法を、「有機薄膜多層配線基板」の切断方法としたことは、当業者が容易になし得たものである。 次に、上記相違点2について検討すると、刊行物1記載の発明の「配線基板」を切断するためには、「高分子材料膜3」を除去した側から切断するか、それとも、その反対側から切断するかの、いずれかが考えられるところ、刊行物1には、「高分子材料膜3」を除去した側とは反対側から「配線基板」を切断することを推奨する記載又は示唆があるわけではなく、また、「高分子材料膜3」を除去した側から「配線基板」を切断することを禁ずる記載又は示唆があるわけでもない。 ブレードを使用して基板を切断するにあたり、「前記切断ライン上の有機薄膜層を除去した側から」切断するように構成したことは、当業者が二つの側から二者択一して決定すればよい程度の事項にすぎないし、出願人が主張する、ブレードの光学的位置合わせについての効果は、「前記切断ライン上の有機薄膜層を除去した側から」切断するように構成したことにより結果的に得られる程度のものであって、格別なものではない。 次に、上記相違点3について検討すると、上記(ウ)にあるように、刊行物1の切断方法においても、レーザにより分解および飛散した高分子材料膜の異物によって基板が汚染されることが予測される。そして、そのような汚染をアルコールにより除去することは、刊行物4,5に示すように周知であり、プラズマアッシングにより除去することは、刊行物2,3に示すように周知であって、アルコールによる汚染の除去も、プラズマアッシングによる汚染の除去も、いずれもレーザ照射を行うことに付随して行うべき工程であるから、刊行物1の切断方法において、切断ライン上の有機薄膜層をエキシマレーザで除去する工程に、エキシマレーザ照射後に発生する煤をアルコールあるいはプラズマアッシングにより除去する工程を含むように構成したことは、当業者が容易に想到し得たものである。 4.むすび したがって、本願発明は、刊行物1〜5に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-08 |
結審通知日 | 2001-03-21 |
審決日 | 2001-04-04 |
出願番号 | 特願平8-179723 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡田 和加子 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 大島 祥吾 |
発明の名称 | 有機薄膜多層配線基板の切断方法 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 京本 直樹 |
代理人 | 河合 信明 |