ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60S |
---|---|
管理番号 | 1040440 |
審判番号 | 審判1999-2204 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-08-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-02-12 |
確定日 | 2001-05-31 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第 20340号「洗車機」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 8月24日出願公開、特開平 5-213162]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年2月6日の出願であって、本願の請求項1に係る発明は、平成11年3月15日付けの手続補正書によって全文補正された明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。 「左右一対のレールに支持案内されて前後方向に移動自在な洗車機本体を備え、 洗車される車両を前記洗車機本体とは逆方向に移動する一対の正逆駆動ローラコンベヤを、前記レールの内方に沿って、車両の前輪間の間隔で配置し、 前記ローラコンベヤは、前記車両の乗降時そのローラの回転が停止され、前記ローラと前記車両の車輪との接触によって車両を搬送する構成としたこと を特徴とする洗車機。」 2.引用刊行物及びその記載事項 これに対して、当審における平成12年12月8日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願の出願前である昭和49年9月14日に日本国内において頒布された特開昭49-97464号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 a)「1は車輌がくぐり抜けられるよう門型に形成される走行フレームで、このフレームの下端に軸支される駆動輪2,2及び従動輪3,3は、基礎B上に敷設される案内レール4,4に載設され、図示しない駆動装置に連動する駆動輪2,2の駆動により走行フレーム1は案内レール4,4上を往復走行することができる。」(第1頁右下欄10〜16行) b)「基礎B上の前記案内レール4,4の内方には他の一対の案内レール6,6が敷設されており、これらの案内レール6,6上には、被洗浄車輌Vを搭載しうる方形状のスライドベース7が走行軸8,8‥を介して自由に走行し得るよう搭載されている。」(第2頁右上欄2行〜7行) c)「スライドベース7上に洗浄すべき車輌Vを搭載し、これをタイヤストッパー13,13等によってスライドベース7に固定した後、走行フレーム1を右方向に走行すると、スライドベース7は第一索条10,10に牽引されて左方向、すなわち走行フレーム1側に向つて走行フレーム1と等速で走行し、走行フレーム1内に浸入して、そこをくぐり抜けることができ、また走行フレーム1を左方向に走行すると、スライドベース7は第二索条12,12に牽引されて右方向、すなわち走行フレーム1から遠ざかる方向に走行し、結局走行フレーム1とスライドベース7の相対往復動に伴つて車輌Vは走行フレーム1に支持される洗浄ブラシ群5によつて車両の車体面を往復洗浄することができる」(第2頁右上欄6行〜左下欄4行) d)「走行フレーム1を走行させるとこれに関連して、車輌Vを搭載したスライドベース7を走行フレーム1と反対方向に等速で相対走行させることができるので、従来の車輌を固定して走行フレームを移動させるようにしたものに比べて走行フレーム1の走行距離が略半分で足りきわめて狭隘なスペースで走行フレーム1と車輌Vを相対移動させ、能率良く迅速に車輌の洗浄、乾燥等を行うことができる」(第2頁左下欄5〜13行) e)第2図には、案内レール4,4が、走行フレーム1の左右に一対設けられていることが記載されている。 b)〜d)の記載から、スライドベース7は、被洗浄車輌Vを搭載して車輪を固定することによって、走行軸8,8‥を介して自由に走行し、被洗浄車輌Vを走行フレーム1とは逆方向に移動する正逆駆動搬送装置であると認められ、a)、e)の記載から、走行フレーム1は左右一対の案内レール4,4に支持案内されて前後方向に移動自在であると認められ、c)の記載からスライドベース7は、車輌Vを搭載した後に操行を開始するものと認められるから、上記引用例には、 「左右一対の案内レール4,4に支持案内されて前後方向に移動自在な走行フレーム1を備え、洗車される車輌Vを前記走行フレーム1とは逆方向に移動する正逆駆動搬送装置であるスライドベース7を、前記レールの内方に沿って配置し、スライドベース7は車輌Vの乗降時に停止され、スライドベース7に車輌Vの車輪を固定して車輌Vを搬送する構成とした洗車機。」 の発明が記載されているものと認める。 3.本願発明と引用例に記載された発明との対比 本願発明と、引用例に記載された発明とを対比すると、引用例に記載された発明の「案内レール4,4」、「走行フレーム1」、「車輌V」は、それぞれ、本願発明の「レール」「洗車機本体」、「車両」に相当し、本願発明のローラコンベヤと、引用例に記載された発明のスライドベース7は、共に車両の乗降時に、該搬送装置を停止させて車両を乗降させる搬送装置であるものと認める(ローラの回転を停止させることによって、ローラコンベヤの停止が行われることは当然である。)。 したがって、本願発明は引用例に記載された発明と、 「左右一対のレールに支持案内されて前後方向に移動自在な洗車機本体を備え、洗車される車両を前記洗車機本体とは逆方向に移動する一対の正逆駆動搬送装置を、前記レールの内方に沿って配置し、搬送装置は車両の乗降時に停止される構成とした洗車機。」 である点で一致し、以下の相違点で相違している。 <相違点> 本願発明では、搬送装置として正逆駆動ローラコンベヤを用いて、これを車両の前輪間の間隔で一対配置し、ローラと車両の車輪との接触によって車両を搬送しているのに対し、第1引用例に記載された発明では、搬送装置として正逆駆動される一個のスライドベース7を用い、車両をこれに固定して搬送している点。 4.相違点の検討 車両を搬送する搬送装置として、車両の前輪間の間隔で配置された一対のコンベヤを用い、車輪をコンベヤに固定せず、コンベヤと車両の車輪との接触によって搬送させることは、当審における平成12年12月8日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願の出願前である昭和55年8月20日に日本国内において頒布された実公昭55-35245号公報におけるコンベア3、同じく引用した本願の出願前である昭和57年5月6日に日本国内において頒布された特開昭57-71964号公報におけるローラーコンベア5のように従来周知の技術である。 また、車両を搬送するコンベヤとして正逆駆動ローラコンベヤを用いることも、上記特開昭57-71964号公報におけるローラーコンベア5のように従来周知の技術である。 してみれば、搬送装置として正逆駆動ローラコンベヤを用いて、これを車両の前輪間の間隔で一対配置し、ローラと車両の車輪との接触によって車両を搬送した点は、これら従来周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。 そして、本願発明の効果も、上記引用例に記載された発明と上記従来周知の技術から、当業者が容易に予測しうる程度のものでしかない。 なお、審判請求人は、平成13年2月16日付けの意見書で、「ローラと車両の車輪との接触によって車両を搬送することにより、車両を駆動ローラコンベヤへ乗降させる際に停止していたローラの回転を自動的に起動でき、自動化を図ることができる」と述べているが、本願の明細書には、このようにローラの回転を自動的に起動することは、一切述べられておらず、逆に、本願の明細書の【0012】、【0013】には以下のような記載がある。 「【0012】 以下、制御装置11による洗車機本体1とローラコンベヤ7の移動動作を図4のフローチャートにしたがって説明する。 図1,図2に示すように、洗車開始前においては、洗車機本体1は最奥部のホームポジションHに位置している。そして、車両4を斜行路9を通って、移動がロックされたローラコンベヤ7に乗り入れ、車両4を停止する。このとき車両4は洗車機本体1に対して左右方向の中心に配置される。また、車載検出スイッチ10が動作し、車載検出信号が入力される(ステップ-1)。 【0013】 その後、操作パネル6の洗車スタートスイッチが操作され、そのスタート信号が入力されると(ステップ-2)、洗車機本体1の走行駆動装置3を前方に駆動し(ステップ-3)、ローラコンベヤ7の作動装置8を後方に作動させる(ステップ-4)。これにより、図1,図2に示すように、洗車機本体1は外側レール2に支持案内されてホームポジションHから前方へ走行移動し、ソニックセンサ5により車両4が検出されると、洗車装置により所定の洗車を行う(ステップ-5)。このとき、ローラコンベヤ7は洗車機本体1と逆方向に作動されることから、車両4は洗車機本体1と逆方向に移動する。以て、洗車の際、洗車機本体1の移動距離を短縮して洗車し得る。」 上記記載によれば、車両4をローラコンベヤ7に乗り入れると、車載検出スイッチ10が動作して車両4がローラコンベヤ7に乗ったことが検出され、その後、操作パネル6の洗車スタートスイッチが操作されることによって、はじめてローラコンベヤ7の作動装置8が作動されるのであって、ローラの回転が自動的に行われるものではない。 したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に記載された発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-21 |
結審通知日 | 2001-03-30 |
審決日 | 2001-04-10 |
出願番号 | 特願平4-20340 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B60S)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川向 和実 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 ぬで島 慎二 |
発明の名称 | 洗車機 |
代理人 | 森本 義弘 |