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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1040684
審判番号 審判1998-17590  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-09-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-05 
確定日 2001-06-20 
事件の表示 平成 2年特許願第 9303号「反射型映写スクリーン」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年 9月19日出願公開、特開平 3-214148]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年1月18日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下、「本願発明1〜3」という。)
「(1) プラスチックフィルム又はシート上に、光反射性のインキ若しくは塗料などからなる光反射層と、光吸収性の無光沢又は比較的無光沢なインキ若しくは塗料などからなる面積率50%以下の細線状、微細点状、砂目状、細紋状の不規則的パターンの光吸収層とを備えたことを特徴とする反射型映写スクリーン。
(2) 光反射層として、粒径5μm〜50μm(平均粒径13μm)のノンリーフィングタイプのAL鱗片をフィラーとしたペーストインキからなる層を設けたことを特徴とする請求項1記載の反射型映写スクリーン。
(3) プラスチックフィルム又はシートが、塩ビ樹脂から成ることを特徴とする請求項1記載の反射型映写スクリーン。 」

2.引用刊行物に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された実願昭47-42412号(実開昭49-3528号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)、特開昭63-221333号公報(以下、「刊行物2」という。)、特公昭33-10481号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。
2-1.刊行物1〔実願昭47-42412号(実開昭49-3528号)のマイクロフィルム〕
「第2図は、本考案の明室スクリーンを示すもので、…13はスクリーン基板である。
基板13は、光透過性材料例えば透明プラスチック、透明ガラス等透明体の剛板、可撓性のいずれのものでもあってもよく、このような透明性の材料を使用した場合は、スクリーンの後方より映像をみるによい。また、基板13を光反射性の材料(光反射率の高い材料)で構成した場合は、スクリーンの前方より映像をみるによい。
本考案は、このようなスクリーン基板13の前方に、光不透過性の網状体14を設けたものである。網状体14は、例えば次のようにして作製することができる。
…また所望の模様と深さの凹版を作り、これに乾燥固化後は、不透明体となる物質よりなるインキを充填して印刷してもよい。」(3頁2行〜4頁2行)
この記載事項によると、刊行物1には、「光反射性の材料(光反射率の高い材料)で構成したスクリーン基板13上に、乾燥固化後は不透明体となる物質よりなるインキを印刷してなる光不透過性の網状体14を設けた、スクリーンの前方より映像をみるによいスクリーン」の発明が記載されていると認められる。
2-2.刊行物2〔特開昭63-221333号公報〕
「〔産業上の利用分野〕
本発明は、優れた反射性…を具えたコンポジット材料に関する。この反射性は、このコンポジット材料から作られたスクリーンにも関係する。」(2頁右下欄11〜15行)
「本発明によれば、このコンポジット材料は、少なくとも一つのベース層と、少なくとも一つのカバー層とを具え、…反射性を有する粒子がこれらの層の少なくとも一つに存在し、…
更に詳しくは、この材料は、ガラスや硬い合成材料又は可撓性の合成材料でできた少なくとも一つのベース層を有し、その光学面の少なくとも一つには外部ワニス層を具えている。」(3頁左上欄7〜末行)
「前記反射性の粒子は前記外部層の中に組み入れられている。
前記粒子はアルミニウム又はアルミ合金等の適当な金属で作られることが望ましく、且つ高い拡散反射能(ALBEDO)を有する。
前記粒子は、外部層の厚さに対して最大厚さを有する実質的に平行六面体の小板の形状をなしている。」(3頁右上欄18行〜左下欄5行)
「すべての実施例において、ベース層は硬い又は可撓性の材料で作られ、一方、カバー層は前記ベース層の少なくとも一つの面で前者に接着するように流動状態で塗られた硬化ワニスで作られている。
前記粒子はカバー層の少なくとも一つに埋入されていることが好ましい。」(3頁左下欄17行〜右上欄3行)
「多くの場合、20μm〜30μmで平均サイズが25μmの比較的大きいサイズの粒子で少なくともその一部が形成された反射性粒子を使用することが望ましい。」(4頁左下欄3〜6行)
「〔実施例〕
図示のようにコンポジット材料1で作られたアセンブリEは、ベース層11とカバー層10とから形成されている。…
図示の実施例においては、アセンブリEは二つの層10,11からなり、反射性の粒子3がカバー層10内に埋入されている。…
この材料1は、スクリーン用に使用することができる。
(1) (紙の上に)透明陽画、フィルム、映像の投射を受像するためのスクリーン。このスクリーンは不透明でなければならない。…このタイプのスクリーン用の粒子の平均サイズは、通常、4μmを超えてはならない。
このようなスクリーンは、層10の面101に対する入射角αの相当の範囲にわたって(170°程度まで)、実質的に全部の入射光2を反射させる。」(4頁左下欄12行〜5頁左上欄15行)
「(3) ビデオ映写によって得られた映像を取り出すために使用されるスクリーン。材料1は上述の第(1)項で説明したのと同じ方法で不透明に作られている。混合度は25%程度である。粒子3の平均サイズは25μmである。…」(6頁左上欄19行〜右上欄3行)
この記載事項によると、刊行物2には、「可撓性の合成材料でできていてもよいベース層11とワニスで作られているカバー層10の二つの層から形成され、カバー層にはアルミニウム等の適当な金属で作られた反射性粒子3が埋入されている、反射型スクリーン」の発明が記載されていると認められる。
2-3.刊行物3〔特公昭33-10481号公報〕
「本発明は硝子又は合成樹脂製の黒白透明球を互に接触させて接着又は沈着させる事を特徴とする映写幕に関するもので、実施例につきその詳細を説明すれば次の通りである。
実施例
硝子又は合成樹脂製の100メッシュ前後の白色透明球と黒色透明球とを7:3、又は6:4位の比率に均等に混合し、之を互に接触させる様に任意の接着剤により幕体に接着し、又は幕体面に塗布した塗料中に沈着させるのである。

従来此の種映写幕は専ら白球のみを接着したのであるが、本発明は白球と黒球とを一定の割合に均等に混合したものを接着したから、幕体面に投射された映像の蔭部が強調されて画調のコントラストを強調するのである。
即ち白球部に投射した光線は殆んど全反射され、黒球部に投射した光線は殆んど全部吸収されるから、フィルム上に表現した軟調の画像を投射すれば、幕体上に硬調の映像として表現され、画調のコントラストを強調するのである.
即ち本発明に依れば、反射効率を向上すると共に画調のコントラストを強調する等の諸効果がある。」(1頁左欄5行〜右欄12行)

3.対比・判断
3-1.対比
本願発明1と刊行物1に記載された発明を対比する。
本願発明1における「プラスチックフィルム又はシート」上に「光反射性のインキ若しくは塗料などからなる光反射層」を備えたものと、刊行物1に記載された発明における「光反射性の材料で構成したスクリーン基板13」は、ともに「光反射性のスクリーン基体」であるといえる。また、刊行物1に記載された発明における「乾燥固化後は不透明となる物質よりなるインキを印刷してなる光不透過性の網状体14」は、本願発明1における「光吸収性の無光沢又は比較的無光沢なインキ若しくは塗料などからなるパターンの光吸収層」に相当し、刊行物1に記載された発明における「スクリーンの前方より映像をみるによいスクリーン」は、本願発明1における「反射型映写スクリーン」に相当する。
したがって、両者は、
「光反射性のスクリーン基体と、光吸収性の無光沢又は比較的無光沢なインキ若しくは塗料などからなるパターンの光吸収層とを備えた反射型映写スクリーン」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)本願発明1では、光反射性のスクリーン基体が「プラスチックフィルム又はシート上に、光反射性のインキ若しくは塗料などからなる光反射層を備えた」ものから構成されているのに対し、刊行物1においては、光反射性のスクリーン基体については、「光反射性の材料(光反射率の高い材料)で構成」以上には、具体的には何ら記載されていない点。
(相違点2)本願発明1では、光吸収層は、「面積率50%以下の細線状、微細点状、砂目状、細紋状の不規則的パターン」のものであるのに対し、刊行物1においては、光吸収層すなわち光不透過性の網状体14は、不規則的パターンについて言及されていない点。
3-2.判断
まず、相違点1について検討する。
刊行物2には、可撓性の合成材料でできていてもよいベース層11とワニスで作られているカバー層10の二つの層から形成され、カバー層にはアルミニウム等の適当な金属で作られた反射性粒子3が埋入されている、反射スクリーンが開示されている。
したがって、刊行物1に記載された発明において、スクリーンの前方より映像をみるのによい反射型映写スクリーンとするために、光反射性のスクリーン基体として、刊行物1に記載されているようにスクリーン基体そのものを光反射性の材料(光反射率の高い材料)で構成する代わりに、刊行物2に開示されているような、可撓性の合成材料でできているスクリーン基体上にアルミニウム等の適当な金属で作られた反射性粒子が埋入されている光反射層を設ける構成としてもよいこと、すなわち、「プラスチックフィルム又はシート上に、光反射性のインキ若しくは塗料などからなる光反射層を備えた」ものとしてもよいことは、当業者に明らかである。
次に、相違点2について検討する。
刊行物3においては、「100メッシュ前後の白色透明球と黒色透明球とを7:3、又は6:4位の比率に均等に混合し、之を互に接触させる様に任意の接着剤により幕体に接着し、又は幕体面に塗布した塗料中に沈着させ」ているから、刊行物3に記載されたスクリーンでは、100メッシュ前後の黒色透明球により形成される黒色パターンの面積率は明らかに50%以下であり、微細点状である。また、刊行物3に記載されたスクリーンでは、白色透明球と黒色透明球とを均等に混合したものであるから、黒色透明球は当然ランダムすなわち不規則に現れるので、そのパターンも不規則的なものである。
したがって、刊行物3に記載された、反射効率を向上すると共に画調のコントラストを強調する等の効果のある、面積率50%以下の微細点状の不規則的パターンを、刊行物1に記載された、光不透過性の網状体14の印刷パターンとして採用して、本件発明1の構成「面積率50%以下の微細点状の不規則的パターン」とすることは、当業者にとって格別困難なこととは認められない。
なお、出願人は、印刷によれば、細線状、微細点状、砂目状、細紋状の不規則パターンが確実に得られるのに対し、刊行物3に記載された技術では不規則的パターンを確実に得ることは困難であり、本願発明1の「不規則的パターン」とは構成が相違することを、主張している。
しかし、上記したように、光吸収層としてのパターンを印刷することについては、すでに刊行物1に記載された発明において、網状体をインキで印刷することが開示されているし、また、不規則的パターンの構成についても、刊行物3に記載されたスクリーンでは、黒色透明球は当然ランダムすなわち不規則に現れ、そのパターンも微細点状の不規則的パターンであるといえるので、出願人の主張は採用できない。

4.むすび
したがって、本願発明1は、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-03-30 
結審通知日 2001-04-10 
審決日 2001-04-24 
出願番号 特願平2-9303
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 町田 光信末政 清滋越河 勉  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 柏崎 正男
矢沢 清純
発明の名称 反射型映写スクリーン  

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