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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A21C
管理番号 1040941
審判番号 無効2000-35631  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-11-21 
確定日 2001-07-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第2761855号発明「捻り模様形成装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2761855号の請求項1,2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯の概要
本件特許第2761855号は、平成7年5月22日に特許出願され、平成10年3月27日に特許権の設定登録がなされ、平成12年11月21日に請求人レオン自動機株式会社より無効審判の請求がなされ、期間を指定して被請求人株式会社コバードに無効審判請求書の副本を送付して答弁書の提出を求めたところ、指定期間内に応答がなかったものである。
2.本件特許発明1及び2
本件特許第2761855号の請求項1及び2に係る発明(以後、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】先端側に湾曲板状または屈曲板状の摘み面52を有し、相称的に等間隔に配された複数の襞成形プレート5・5…を、前記各摘み面52の内側辺に形成された成形エッジ52aが互いに接近するように、相称配置中心側へそれぞれ移動可能に構成されており、
搬送手段Bにて搬送されてきた可塑性食品材料Fの上部を、前記襞成形プレート5・5…の各摘み面52にて一斉に挟むことにより、該食品材料Fの上部表面に摘み面52の成形エッジ52aを食い込ませて食品材料F上部に捻りエンボス模様を形成するようにしたことを特徴とする捻り模様形成装置。
【請求項2】周面に掛止凹部21が形成された掛止部材2を先端部に具備するシリンダロッド11を、流体圧にて進退動作せしめる下向き配置された流体圧シリンダ1と;
この流体圧シリンダ1の下部に前記シリンダロッド11を取り囲む如く固定され、複数の支軸31・31…が等間隔に設けられた環状の軸支部材3と;
この環状軸支部材3の支軸31・31…に各々揺動可能に軸支された複数のベルクランク部材であって、これらベルクランク部材の短腕41・41…が前記掛止部材2の掛止凹部21に掛止されていると共に、前記シリンダロッド11の進退縮動作により該ベルクランク部材の長腕42・42…が前記シリンダロッド11の鉛直中心線Pに対して放射状に開閉動作を行なうベルクランク4・4…と;
これらベルクランク4の長腕42・42…にそれぞれ固定され、先端側には湾曲板状または屈曲板状の摘み面52を有する襞成形プレート5・5…と;を包含し、
前記シリンダロッド11を退縮せしめ、放射状に軸支したベルクランク4・4…を介して襞成形プレート5・5…を前記中心線Pへ向けて一斉に回動させることにより、前記各摘み面52の内側辺に成形された成形エッジ52aを互いに接近せしめて、搬送手段Bにて中心線P位置にまで搬送されてきた可塑性食品材料Fの上部を、前記襞成形プレート5・5…の各摘み面52にて一斉に挟み、該食品材料F上部表面に成形エッジ52aを食い込ませて食品材料Fの上部に捻りエンボス模様を形成するようにしたことを特徴とする捻り模様形成装置。」
3.請求人の主張の概要
請求人レオン自動機株式会社は、概略次のとおり主張している。
(1)本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明と同一であり、また甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものであり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、かつ特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。
(2)本件特許発明2は、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。
〈証拠方法〉
甲第1号証;特許第2761588号公報
甲第2号証;特公平3-72268号公報
甲第3号証;特公昭61-56977号公報
甲第4号証;特公平4-19830号公報
4.無効理由に対する当審の判断
(1)甲第3号証及び甲第4号証の記載事項
請求人が提出した甲第3号証(特公昭61-56977号公報)には、まん頭やパン類のひねり成形装置に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
記載事項ア;「まん頭1をのせた金網せいろ2はアタッチメント付きチェーンコンベヤ3によって間欠的に送られる。」(第3欄7〜9行)
記載事項イ;「第3図を参照するに、絞り部Bの詳細が示されている。上下動テーブル10にピストン軸17が固着されている。ピストン軸17にはこれと共に上下動するピストン18が固着されている。
19はセットプレート20に下向きに取付けられた軸受台で、この下部に爪21が枢着されている。爪21を装着した軸受台19はピストン18の側方に計6個設けられ、合計6個の爪21は円周上に等配されている。夫々の爪21はピン21aで枢支され、ピストン軸17に対し放射方向に揺動可能である。17aはピン21aに固定されたリンクで、一端をピストン17の側部に枢支されている。
第1図の例ではこのような6個の爪21よりなる絞り装置が計5個チェーンの移動方向に縦設されている。これら絞り装置はセットプレート20にとりつけられていて、該セットプレート20は押え板22を介しナット23でとりつけている。24はピストンガイド、25は袋ナットで、前記ピストンガイド24は軸受台19と共にセットプレート20に固着されている。ピストン軸17はその上部で上下動テーブル10に固着されている。」(第3欄36行〜第4欄14行)
記載事項ウ;「絞り部Bに到ったならば、エヤシリンダ14を作動して上部ラック13を移動させると、歯車12→丸ラック11を介し、上下動テーブル10を上下動させる。するとピストン軸17→ピストン18が共に上下動し、リンク17a,ピン21aを介して爪21を開閉させる。かくして絞り装置の爪21によりまん頭1を上方から押え付けて6ケの溝を形成し、まん頭表面に襞状凹凸を形成する。」(第5欄3行〜11行)
同じく提出した甲第4号証(特公平4-19830号公報)には、中華饅頭などの皮の部分にひねりひだを自動的に付ける製造装置に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
記載事項エ;「先端に回転可能な3本の中爪4を有する、上下動可能な中軸3’と、該中軸3’を内蔵した上下動可能な外軸3の周りに等間隔で、各先端に外爪2,2’を有し、上端に滑車6を有する上下動可能な3本以上のフィンガー1,1’を支点8,9で枢動自在に取付け、フィンガーの上下動がテーパのついたガイド5、ガイドに設けたガイド溝7、該溝をスライドする滑車および支点とによりフィンガーの開閉をも行わせる構成である饅頭のひねりひだ付け装置。」(特許請求の範囲の欄)
記載事項オ;「第4図は、第1〜3図に示す本発明のひねりひだ付け装置を組込んだ付帯機器の主要部を示す図で、ベルトコンベア21に図の左方から饅頭生地30が送られてくると、ホルダー10が点線位置から実線位置まで下降し、同時に、下部先端に外爪2,2’……を有する3本以上のフィンガー1,1’……が降りてくる。この場合、各フィンガーは、ガイド5のガイド溝7にスライドするフィンガーの滑車6と支点9とにより第2図のように外軸3の周りに閉じた状態で下降し、第4図のように饅頭生地に外爪2,2’……が食い込む。各フィンガー1,1’は上端付近でバネ等のバイアス手段により求心的に付勢されている。外爪の形状は第5図に示すようなひねりひだ31となる、中心に向かって渦巻状の形状のものである。またフィンガーの数は3本以上、好ましくは6本以上であるが、軸の大きさや饅頭の大きさなどから最大12本程度が限度である。第4図中、符号12は外軸3のホルダーであり、図示しない油圧シリンダ装置等により外軸3と共に上下動可能になっている。」(第2欄23行〜第3欄17行)
記載事項カ;「本発明は中華饅頭を例にとって説明したが、パン、和菓子などにひねりひだを付ける場合にも適用でき応用範囲は広い。その際、各場合の対象物の大きさ等により、ひねりひだの模様、数、大きさ等は外爪、中爪の形状、数等を適宜変えればよい。」(第4欄5〜10行)
(2)本件特許発明1についての対比・判断
甲第3号証に記載された上記記載事項ア〜ウからみて、甲第3号証に記載された発明の「爪21」、「爪21の面(第3図で請求人が付記した52a)」、「チェーンコンベヤ3」、「まん頭1」及び「ひねり成形装置」は、各々本件特許発明1の「襞成形プレート5」、「成形エッジ52a」、「搬送手段B」、「可塑性食品材料F」及び「模様形成装置」に相当し、さらに、甲第3号証に記載された成形装置の6個の爪21も、円周上に等配されてピストン軸17に対し放射方向に揺動可能(相称的に等間隔に配された複数の襞成形プレートの各摘み面の内側辺に形成された成形エッジが互いに接近するように相称配置中心側へそれぞれ移動可能に相当)に構成されており、まん頭1の上部を6個の爪21の面にて上方から押え付ける(一斉に挟むことに相当)ことにより、まん頭1の上部表面に襞状凹凸を形成するものであるから、本件特許発明1の用語を使用して本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明を対比すると、両者は、「先端側に摘み面を有し、相称的に等間隔に配された複数の襞成形プレートを、前記各摘み面の内側辺に形成された成形エッジが互いに接近するように、相称配置中心側へそれぞれ移動可能に構成されており、搬送手段にて搬送されてきた可塑性食品材料の上部を、前記襞成形プレートの各摘み面にて一斉に挟むことにより、該食品材料の上部表面に摘み面の成形エッジを食い込ませて食品材料上部にエンボス模様を形成するようにした模様形成装置」で一致しており、下記の点で相違している。
相違点;本件特許発明1では、複数の襞成形プレート5の先端側に形成する摘み面を湾曲板状または屈曲板状にして、食品材料F上部に捻りエンボス模様を形成するものであるのに対して、甲第3号証に記載された発明では、複数の爪21の面は襞状凹凸を形成するような形状(第3,4図等参照)に形成されており、まん頭1の上部に襞状凹凸を形成するものである点。
上記相違点について検討するに、饅頭等の可塑性食品材料の表面にひねりひだ(捻りエンボス模様)を形成するために複数の外爪(襞成形プレートに相当)の形状を中心に向かって渦巻状(先端側に湾曲板状または屈曲板状の摘み面を形成することに相当)とすることは、甲第4号証にも記載(記載事項エ〜カ、第3〜5図等参照)されているように本願出願前当業者には知られた技術事項である。
そうすると、甲第4号証に記載された上記技術事項から、甲第3号証に記載された発明の爪21の形状に代えて甲第4号証に記載されたような外爪の形状を採用すれば、まん頭1の上部に本件特許発明1のような捻りエンボス模様を形成できることは、当業者であれば容易に理解することができることであるから、本件特許発明1のように複数の襞成形プレートの先端側に湾曲板状または屈曲板状の摘み面を形成することによって、食品材料上部に捻りエンボス模様を形成することは、当業者が必要に応じて容易に想到することができる程度の事項と認める。
また、本件特許発明1の効果について検討しても、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明から、当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
(3)本件特許発明2についての対比・判断
甲第3号証に記載された上記記載事項ア〜ウからみて、甲第3号証に記載された発明の「ピストン18の凹部(第3図で請求人が付記した21)」、「ピストン18」、「ピストン軸17」、「エヤシリンダ14」、「軸受台19」、「ピン21a」、「リンク17a」、「爪21」、「爪21の面(第3図で請求人が付記した52a)」、「チェーンコンベヤ3」、「まん頭1」及び「ひねり成形装置」は、各々本件特許発明2の「掛止凹部21」、「掛止部材2」、「シリンダロッド11」、「流体圧シリンダ1」、「軸支部材3」、「支軸31」、「ベルクランク4」、「襞成形プレート5」、「成形エッジ52a」、「搬送手段B」、「可塑性食品材料F」及び「模様形成装置」に相当し、さらに、甲第3号証に記載された成形装置でも、ピストン軸17の上昇(退縮に相当)により、放射状に軸支したリンク17aを介して6個の爪21をピストン軸17に対し放射方向に揺動させて(第3,4図参照)、各爪21の内側辺に成形された爪21の面を互いに接近せしめてまん頭1の上部を各爪の面にて一斉に上方から押え付け(挟み)、まん頭1の上部に襞状凹凸を形成するものであるから、本件特許発明2の用語を使用して本件特許発明2と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、両者は、「周面に掛止凹部が形成された掛止部材を先端部に具備するシリンダロッドを、流体圧にて進退動作せしめる流体圧シリンダと、前記シリンダロッドを取り囲む如く固定され、複数の支軸が等間隔に設けられた環状の軸支部材と、この環状軸支部材の支軸に各々揺動可能に軸支された複数のベルクランク部材であって、これらベルクランク部材の短腕が前記掛止部材の掛止凹部に掛止されていると共に、前記シリンダロッドの進退縮動作により該ベルクランク部材の長腕が前記シリンダロッドの鉛直中心線に対して放射状に開閉動作を行なうベルクランクと、これらベルクランクの長腕にそれぞれ固定され、先端側には摘み面を有する襞成形プレートとを包含し、前記シリンダロッドを退縮せしめ、放射状に軸支したベルクランクを介して襞成形プレートを前記中心線へ向けて一斉に回動させることにより、前記各摘み面の内側辺に成形された成形エッジを互いに接近せしめて、搬送手段にて中心線位置にまで搬送されてきた可塑性食品材料の上部を、前記襞成形プレートの各摘み面にて一斉に挟み、該食品材料上部表面に成形エッジを食い込ませて食品材料の上部にエンボス模様を形成するようにした模様形成装置。」で一致しており、下記の点で相違している。
相違点1;本件特許発明2では、シリンダロッド11を流体圧にて進退動作せしめる流体圧シリンダ1は下向きに配置されているのに対して、甲第3号証に記載された発明では、ピストン軸17を上下動させるエヤシリンダ14は横向きに配置され、上部ラック13等の伝達手段を介して上下動テーブル10を上下動させることによってピストン軸17とピストン18を上下動させるものである点。
相違点2;本件特許発明2では、襞成形プレート5の先端側に形成する摘み面を湾曲板状または屈曲板状にして、食品材料F上部に捻りエンボス模様を形成するものであるのに対して、甲第3号証に記載された発明では、爪21の面は襞状凹凸を形成するような形状(第3,4図等参照)に形成されており、まん頭1の上部表面に襞状凹凸を形成するものである点。
上記相違点1について検討するに、甲第3号証に記載された発明では、複数のピストン軸17を一つのエヤシリンダ14で上下動作させるために上部ラック13ないし上下動テーブル10を介在させているにすぎないものであって、本件特許発明2のように一つのエヤシリンダ(流体圧シリンダ)で一つのピストン軸(シリンダロッド)を上下(進退)動作させるものであれば、エヤシリンダを下向きに配置してその流体圧によりピストン軸を直接的に上下動させるように構成することは、当業者であれば当然に採用することができる程度の技術事項にすぎないものであって、格別困難なことではない。
次に、上記相違点2について検討するに、饅頭等の可塑性食品材料の表面にひねりひだ(捻りエンボス模様に相当)を形成するために複数の外爪(襞成形プレートに相当)の摘み面の形状を中心に向かって渦巻状(先端側に湾曲板状または屈曲板状に形成することに相当)とすることは、甲第4号証にも記載(記載事項エ〜カ、第3〜5図等参照)されているように本願出願前当業者には知られた技術事項である。
そうすると、甲第4号証に記載された上記技術事項から、甲第3号証に記載された発明の爪21の形状に代えて甲第4号証に記載されたような外爪の形状を採用すれば、まん頭1の上部に本件特許発明1のような捻りエンボス模様を形成できることは、当業者であれば容易に理解することができることであるから、本件特許発明1のように各々の襞成形プレートの先端側に湾曲板状または屈曲板状の摘み面を形成することによって、食品材料上部に捻りエンボス模様を形成することは、当業者が必要に応じて容易に想到することができる程度の事項と認める。
また、本件特許発明2の効果について検討しても、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明から、当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
(4)むすび
したがって、本件特許発明1及び2は、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.まとめ
以上のとおりであって、本件特許発明1、2は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当するので、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-04-20 
結審通知日 2001-05-08 
審決日 2001-05-21 
出願番号 特願平7-122473
審決分類 P 1 112・ 121- Z (A21C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 植野 浩志  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 吉国 信雄
船越 巧子
登録日 1998-03-27 
登録番号 特許第2761855号(P2761855)
発明の名称 捻り模様形成装置  
代理人 三好 秀和  
代理人 中村 友之  

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