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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B62D 審判 全部申し立て 2項進歩性 B62D |
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管理番号 | 1041297 |
異議申立番号 | 異議1998-71308 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1989-02-01 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-03-16 |
確定日 | 2001-06-11 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2654620号「ゴムクロ-ラ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについてされた平成11年2月16日付け異議の決定に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決(平成11年(行ヶ)第130号、平成13年4月12日判決言渡)があったので、さらに審理の上、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2654620号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
【1】手続きの経緯 本件特許第2654620号は、昭和62年7月24日に出願され、平成9年5月30日に設定登録されたものであり、その後、オーツタイヤ株式会社により特許異議の申立てがなされ、平成10年7月8日付けで取消理由の通知がなされ、平成10年9月24日付けで特許異議意見書及び訂正請求書が提出され、この訂正請求に対して平成10年11月5日付けで訂正拒絶理由の通知がなされ、その指定期間内の平成11年1月19日付けで訂正請求書についての手続補正書が提出されたものである。 その後、平成11年2月16日付けで、特許第2654620号の特許を取り消す旨の特許異議申立てについての決定がなされたが、平成11年5月12日に当該決定の取り消しを求める訴え(平成11年(行ケ)第130号特許取消決定取消請求事件)が提出され、その係属中である平成11年10月12日付けで訂正審判の請求(平成11年審判第39081号)がなされ、平成12年2月9日にその訂正を認容する旨の審決があり、当該審決は平成12年3月13日に確定した。また、平成11年2月16日付け特許異議の申立てについての決定は、平成13年4月12日言渡の判決によって取り消された。 【2】本件特許発明 前記平成11年1月19日付け訂正請求は、この訂正請求よりも後に請求された訂正審判により願書に添付した明細書が訂正されたので、取り下げたものと認める。 本件特許発明は、平成11年審判第39081号の請求書に添付した訂正明細書及び図面の記載からみてその特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「走行駆動装置の駆動輪体と遊動輪との間に巻回されるとともに走行駆動装置の転輪が通過する転輪通過面を備えた無端帯状ゴム製のクローラシューと、クローラシューの長手方向適宜間隔おきに基部が埋設された芯金とを有するゴムクローラにおいて、 転輪通過面に対応する芯金面をクローラシューの長手方向に対して芯金の基部幅よりも大とした幅広芯金部に形成するとともに、前記転輪通過面に位置する幅広芯金部間のクローラシュー内周面の個所に前記幅広芯金部の先端における厚さ以上の深さの凹部を形成し、該個所のクローラシューの厚さをクローラシュー本来の厚さよりも薄くしたことを特徴とするゴムクローラ。」 【3】特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法 特許異議申立人は、「本件特許発明は甲第1号証に記載された発明であるから、当該特許に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、または、本件特許発明は甲第2、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、従って、上記特許はいずれも同法第113条第第1項第2号により取り消されるべきものである。」と主張し、次の甲第1〜3号証を提出している。 (1)甲第1号証 特開昭60-143187号公報 (2)甲第2号証 特開昭61-122085号公報 (3)甲第3号証 実願昭52-154015号(実開昭54-83139号)の願書に添付 した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム 【4】当審の認定・判断 1.甲各号証に記載された事項 (1)甲第1号証 「弾性帯クローラ」について、 イ)「短冊状平面部材の中央内部に1対の突起体を対向立設させ、各凸突体はT字型となさしめると共に対向間は一定寸法の外れ防止用溝に形成した芯金の多数を、ゴム質からなるクローラ本体内の長さ方向と直交する状態に埋設し、各突起体上面部はクローラ本体から突出させるのほか、芯金の突起体間を除く下面部にはスチールコードをクローラ本体内の長さ方向に並設し、外れ防止用溝を挟んで突起体上面を転輪の側胴部が回動する構成となされている」(第2頁左上欄第3〜13行) ロ)「本図で示す如く突起体PのT型上面はゴム質から露出するようになされているが、T字型突起体Pの両脇部fはゴムクローラ本体2と同様にゴム質で充満されている」(第2頁左下欄第7〜11行) と記載され、また、第2図Bには、 ハ)「芯金1間のクローラ本体2内周面の個所において、クローラ本体内周面から突出するT字型突起体P上面の先端までの高さは、突起体PのT字型の先端における厚み寸法以上の高さに形成されており、T字型突起体Pの両脇部fがゴムクローラ本体2と同様のゴム質で充満されている」状況が示されているものと認める。 また、甲第1号証に記載された弾性帯クローラは、走行駆動装置の駆動輪体と遊動輪との間に巻回されるものであることは自明のことと認められるので、甲第1号証には、 “無端帯状ゴム製のクローラ本体2とクローラ本体2の長手方向適宜間隔おきに短冊状平面部材が埋設された芯金1とを有し、走行駆動装置の駆動輪体と遊動輪との間に巻回される弾性帯クローラにおいて、転輪通過面を、クローラ本体2の長手方向に対して芯金1の前記短冊状平面部材幅よりも大とし、クローラ本体2内周面より突出した芯金1のT字型突起体Pの上面によって構成し、T字型突起体Pの両脇部fにクローラ本体2と同様のゴム質を充満した弾性帯クローラ.” が記載されているものと認める。 (2)甲第2号証 イ)「第1図において、芯金1が弾性材料から成形された無限の軌道帯本体10に埋設してあり、」(第2頁右上欄第3〜4行) ロ)「芯金1は、全体が軌道帯本体10に埋設される芯金基部2と、この芯金2の大略中間部から軌道帯本体10の内側に突出形成され一部が軌道帯本体10に埋設されている一対の突起部3,3と、これら突起部3,3からそれぞれ芯金基部2の両端に向かって芯金基部2上に形成されかつ軌道帯本体10の内側に突出形成された一対の補強リブ4,4とから成る。」(第2頁右上欄第11〜18行) ハ)「補強リブ4,4の途中に芯金基部2,2の幅方向へ張り出した張出部4A,4Aが形成してある。第9図に示すものは、張出部4A,4Aをさらに張り出したものであり、この張出部4A,4Aの上面を支え輪21,21が走行するように構成することもできる。」(第2頁右下欄第9〜15行) 等の記載があり、甲第2号証には、 “無端帯状弾性材料製の軌道帯本体10と軌道帯本体10の長手方向適宜間隔おきに基部2が埋設された芯金1とを有し、走行駆動装置の駆動輪体と遊動輪との間に巻回される弾性無限軌道帯において、支え輪21,21の通過面を、軌道帯本体10内周面より突出し、補強リブ4,4の途中に芯金基部2,2の幅方向へ張り出した形成した張出部4A,4A上面によって構成した弾性無限軌道帯.” が記載されているものと認める。 (3)甲第3号証 イ)「この考案は中転輪を使用するゴムクローラの改良に係り、埋設された芯金とゴム質との境界での接着剥離を防止し、かつ走行時の振動をも改善したゴムクローラである。」(第3頁第18行〜第4頁第1行) ロ)「この考案ではかかるゴムクローラ1において、芯金2のクローラ内面における投影位置に隣接して横溝7を形成する。この横溝7は……クローラ1の幅方向全長にわたってのびるものであっても良い。この横溝7を形成したことによって……芯金端とゴムとの境界における接着剥離が完全に防止されることになる。」(第5頁第14行〜第6頁第3行) ハ)「第8図は横溝7をゴムクローラ1の接地側まで貫通したものであり、……芯金2の端部2’とゴムとの接着剥離はほとんど解消されるのである。」(第6頁第13〜17行)等の記載があり、甲第3号証には、 “ゴムクローラ1の芯金2間に横溝7を設けて、芯金とゴムとの境界剥離を防止する”点、及び、 “芯金とゴムとの境界剥離を防止するためには、横溝7はゴムクローラ1の接地側まで貫通するものでもよい”点 が記載されているものと認める。 2.対比・判断 本件特許発明と上記甲各号証に記載されたものとを対比すると、これら甲各号証には、本件特許発明の構成に欠くことができない事項である「転輪通過面に位置する幅広芯金部間のクローラシュー内周面の個所に前記幅広芯金部の先端における厚さ以上の深さの凹部を形成し、該個所のクローラシューの厚さをクローラシュー本来の厚さよりも薄くした」点については、記載も示唆もされていない。 また、この点は、本件特許の出願前に周知の事項とも認めることはできず、上記甲各号証の構成を寄せ集めても容易に得られるものではない。 そして、本件特許発明は、明細書に記載された作用効果を奏するものと認められる。 【5】むすび 以上のとおり、本件特許発明は、甲第1〜3号証のいずれかに記載されたものと認めることも、甲第1〜3号証に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。したがって、特許異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-02-16 |
出願番号 | 特願昭62-185174 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B62D)
P 1 651・ 113- Y (B62D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大島 祥吾 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
溝渕 良一 藤井 俊明 刈間 宏信 井口 嘉和 |
登録日 | 1997-05-30 |
登録番号 | 特許第2654620号(P2654620) |
権利者 | 株式会社ブリヂストン |
発明の名称 | ゴムクロ-ラ |
代理人 | 安田 敏雄 |
代理人 | 増田 竹夫 |