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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1041464
異議申立番号 異議2000-73893  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-10-17 
確定日 2001-07-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第3033128号「ドライエッチング方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3033128号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 [1]本件発明
本件特許第3033128号(平成2年5月25日出願、平成12年2月18日設定登録。)の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「シリコン系材料層上の面積の異なる被エッチング領域をエッチングすることにより該シリコン系材料層に所定のパターンを形成するドライエッチング方法において、
少なくとHBrとフッ素系ガスとN2ガスを含むエッチングガスにより、相対的に広い面積を有する被エッチング領域において相対的に狭い面積を有する被エッチング領域におけるよりも多い量のエッチング反応生成物及び/又は副反応生成物を堆積させながら異方性エッチングを行うことで、上記相対的に広い面積を有する被エッチング領域のエッチング速度を低下させ、上記相対的に狭い面積を有する被エッチング領域のエッチング速度に近づけることを特徴とするドライエッチング方法。」

[2]特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立人 高柳 馨は、次の甲第1、2号証及び参考資料1、2を提出して、本件発明は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消すべき旨主張する。

甲第1号証:特開昭58-204537号公報
甲第2号証:特開平2-86126号公報
参考資料1:米国特許第4842676号明細書
参考資料2:特開昭53-140240号公報

[3]提出された証拠の記載事項
(3-1)甲第1号証
上記甲第1号証の特開昭58-204537号公報には、逆テーパーエッチングを防止して試料の微細加工を可能とするプラズマエッチング方法に関する発明が、第1〜6図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「1.エッチングガスを導入してプラズマを形成し、上記プラズマ中の活性粒子を試料に入射させて上記試料の表面をエッチングするプラズマエッチング方法において、上記エッチングガスとして窒素ガスに換算して5〜13%の窒素を含んだガスが添加されたフッ素系ガスを使用することを特徴とするプラズマエッチング方法。
・・・
4.上記窒素含有ガスが窒素ガス、・・・からなる群から選ばれた少なくとも1つのガスからなることを特徴とする第1項記載のプラズマエッチング方法。
5.上記試料がシリコンからなる半導体基板であることを特徴とする第1項のプラズマエッチング方法
6.上記フッ素系ガスがSF6ガスからなることを特徴とする第1項記載のプラズマエッチング方法。」(特許請求の範囲)、
「ところで、第6図に示すようにN2をふやすとシリコン基板2の実効エッチ速度が減少することは避けられない。」(3頁左下欄19行〜右下欄1行)、 「従って、エッチング速度の減少はフッ素ラジカル量を減少させたためではなく、例えば、窒素ラジカルがシリコン基板2と反応してエッチングを妨げるとか、シリコン表面でフッ素ラジカルが横方向に動くのを妨げることなどが考えられる。」(4頁左上欄9〜14行)

以上、まとめると、甲第1号証には、フッ素系ガス(SF6ガス)を使用するシリコン基板のエッチングにおいて、N2を添加すると窒素ラジカルとシリコン基板との反応によってエッチングが妨げられ、エッチング速度が減少することにより、逆テーパーエッチングを防止することが開示されている。

(3-2)甲第2号証
上記甲第2号証の特開平2-86126号公報には、臭化水素によるシリコンの高選択性プラズマエッチングに関する発明が、第2a、b図とともに開示され、さらに、以下の事項が記載されている。
「1.シリコンを持つ材料の層を選択的にエッチングすることにより半導体を製造するに当り、(a)シリコンを持つ材料の層の上にエッチングする領域のみを露出させるようにパターン化したマスクを設け、(b)酸化物エッチングプラズマにより前記のシリコンを持つ層からすべての表面酸化物を除去し、(c)次いで前記のシリコンを持つ層を臭化水素プラズマにさらしてフォトレジスト及び酸化ケイ素に比べて前記のシリコンを持つ層を選択的にエッチングする段階をそなえるシリコンを持つ材料の層を選択的にエッチングすることによる半導体の製造方法。
・・・
3.前記臭化水素プラズマが不活性ガスと混合したHBrガスである請求項1記載の製造方法。
4.前記不活性ガスがHe、Ar又はN2である請求項3記載の製造方法。」

以上まとめると、甲第2号証には、HBrガスによりシリコンを持つ材料の層を高選択性エッチングする場合に,不活性ガスであるN2ガスを混合することが開示されている。

(3-3)参考資料1
上記参考資料1の米国特許第4842676号明細書には、タングステンをプラズマエッチングするための混合ガスとして、SF6、HBr、そして炭化水素源を含むことが開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「タングステンフィルムをエッチするプロセスで次のステップを含む、
(a)前記フィルムを低圧のプロセスチャンバに配置する;
(b)SF6、HBr、そして炭化水素源の混合物を含むガスからリモートプラズマを生起する;
・・・」(クレーム1)

(3-4)参考資料2
上記参考資料2の特開昭53-140240号公報には、グロー放電プラズマ中でアルミニウムまたはアルミニウム基合金を選択的にエッチングする場合に、アルミニウム基合金としてアルミニウム-シリコン、すなわちアルミニウムシリサイドを用いることが記載されている。

[4]対比・判断
本件発明と甲第1号証に記載された発明(以下、「甲第1発明」という。)とを対比すると、両者は、シリコン系材料層上の被エッチング領域をエッチングすることにより該シリコン系材料層に所定のパターンを形成するドライエッチング方法の点で一致する。
しかしながら、甲第1発明は、フッ素系ガス(SF6)に窒素ガスを添加したガスを使用することにより、シリコン半導体基板のエッチング速度を減少させて逆テーパーエッチングを防止するものであるのに対し、本件発明は、HBrとフッ素系ガスとを含む混合ガスをエッチングの基本ガスとして、これにN2ガスを添加することにより、相対的に広い面積を有する被エッチング領域において相対的に狭い面積を有する被エッチング領域におけるよりも多い量のエッチング反応生成物及び/又は副反応生成物を堆積させながら異方性エッチングを行うことで、上記相対的に広い面積を有する被エッチング領域のエッチング速度を低下させ、上記相対的に狭い面積を有する被エッチング領域のエッチング速度に近づけるようにした点で相違する。

そこで、上記相違点について、以下検討する。
甲第1発明では、フッ素系ガスに窒素ガスを添加することによりシリコン半導体基板のエッチング速度を減少させており、この作用は、本件発明の、N2ガスの添加による被エッチング領域のエッチング速度の低下という作用と同様のものである。
しかしながら、甲第1発明によるエッチング速度の低下の結果として、相対的に広い面積を有する被エッチング領域において相対的に狭い面積を有する被エッチング領域におけるよりも多い量のエッチング反応生成物及び/又は副反応生成物を堆積させながら異方性エッチングを行うことで、相対的に広い面積を有する被エッチング領域のエッチング速度を低下させ、相対的に狭い面積を有する被エッチング領域のエッチング速度に近づけることまでは明らかではない。
しかも、本件発明は、HBrとフッ素系ガスとを含む混合ガスをエッチングの基本ガスとしたものであるが、甲第1発明は、逆テーパーエッチングを防止するために、フッ素系ガスをエッチングの基本ガスとしたものであって、HBrを混合させるようなことは何も示唆されていない。
してみると、甲第2号証に記載された発明(以下、「甲第2発明」という。)において、フォトレジスト及び酸化ケイ素に比べてシリコンを持つ材料の層を選択的にエッチングするために,N2を混合したHBrガスを用いているからといって、甲第1発明のエッチングの基本ガスであるフッ素系ガスに解決課題の異なる甲第2発明のHBrガスを混合すべき理由は何もないから、本件発明を容易に想到することはできない。

これに対して、申立人は、申立人の提出した参考資料1には、タングステンをプラズマエッチングするために,SF6(フッ素系ガス)、HBr、そして炭化水素源の混合物を含むガスを用いることが開示されているから、甲第1、2発明を組み合わせて、シリコン系材料層のエッチングガスとして、HBrとフッ素系ガスとN2ガスを含むエッチングガスを用いることは容易に想到できる事項である旨主張している。
しかしながら、参考資料1に記載されたエッチングの対象物は、高融点金属であるタングステンであって、甲第1、2発明のように半導体であるシリコンではないから、参考資料1に、SF6(フッ素系ガス)とHBrの混合ガスを用いることが記載されているからといって、シリコンのエッチングの基本ガスとして、HBrとフッ素系ガスとを含む混合ガスを用いることは容易に想到できるということはできない。
また、申立人が提出した参考資料2には、グロー放電プラズマエッチングにおいて、アルミニウムのエッチングガスをアルミニウム-シリコン、すなわちアルミニウムシリサイドのエッチングガスとして使用できることが記載されているから、参考資料1に記載されたタングステンのエッチングに使用するエッチングガスをタングステンシリサイドのエッチングに使用できる旨主張している。
しかしながら、参考資料2に記載されたエッチングは、あくまでアルミニウム及びアルミニウムシリサイドのエッチングであって、参考資料1に記載されているようなタングステンのエッチングではないし、ましてや、タングステンのエッチングに使用したエッチングガスをタングステンシリサイドのエッチングにも使用することができることまで示唆しているということはできない。
よって、申立人の主張は採用できない。

そして、本件発明は、明細書に記載されているように、微細なパターンをエッチングする場合にもマイクロローデイング効果の影響を抑制しながら高異方性加工を行うことができ、過度のオーバーエッチングが不要となり、下地の損傷も防止できるとの顕著な作用効果を奏するものである。

したがって、本件発明は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

さらに、本件発明は、甲第1、2号証及び参考資料1、2を如何に組み合わせてみても容易に発明をすることができたものではない。

[5]むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願についてなされたものとは認めない。
よって、平成6年法律第116号第14条の規定に基づく平成7年政令第205号第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-06-29 
出願番号 特願平2-133978
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今井 淳一宮崎 園子▲高崎▼ 久子  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 雨宮 弘治
大橋 賢一
登録日 2000-02-18 
登録番号 特許第3033128号(P3033128)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 ドライエッチング方法  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 田村 榮一  
代理人 小池 晃  

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