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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C03B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03B
管理番号 1041467
異議申立番号 異議2000-73389  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-08-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-09-05 
確定日 2001-06-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第3017491号「光ファイバ―用ガラス母材延伸装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3017491号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.本件の経緯
本件特許第3017491号は、平成11年2月10日に出願し、同年12月24日に設定登録され、平成12年3月6日に特許公報に掲載されたところ、同年9月5日に滝口賢一郎から特許異議の申立を受けたものである。
2.本件発明
本件発明は、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1および2に記載された次のものである。
[請求項1]光ファイバー用のガラス母材を加熱炉で溶融軟化させガラスロッドに延伸する装置において、該加熱炉に装備される円筒形状の発熱体の長さLおよび内径Dと、ガラス母材の外径Cとの関係が、L/C=0.7〜4で、かつD/C=1.1〜4であることを特徴とする光ファイバー用ガラス母材延伸装置。
[請求項2]前記したLおよびDと、Cとの関係が、L/C=0.7〜2.1で、かつD/C=1.1〜2.3であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバー用ガラス母材延伸装置。
3.特許異議申立人の主張
特許異議申立人滝口賢一郎は、甲第1〜3号証を提出して次の主張をしている。
(a)本件請求項1および2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証または甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
(b)本件請求項1および2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(c)本件請求項1および2の記載からは特許を受けようとする発明が明確に把握できないから、本件請求項1および2に係る特許は、その明細書が特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない出願に対してされたものである。
4.特許異議申立人の主張についての検討
4-1.上記(a)の主張について
甲第1号証(特開昭62-167236号公報)には、「鉛直方向に貫通した開口を有するガラス母材加熱炉と、該ガラス母材加熱炉の上方に設置され且つガラス母材の両端部に一体的に設けられた把持棒の一方を把持する上チャックと、前記ガラス母材加熱炉の下方に設置され且つガラス母材のもう一方の把持棒を把持する下チャックと、前記上下のチャックで把持棒が把持されたガラス母材を前記ガラス母材加熱炉に通して加熱した状態で前記上下のチャックの一方を前記ガラス母材加熱炉に対して相対的に近付け且つ他方のチャックを前記ガラス母材加熱炉に対して相対的に遠ざける機構とを備えてなることを特徴とする光ファイバ母材延伸装置。」(特許請求の範囲第1項)等が記載されており、また、その第5頁右下欄12〜19行には、「外径d1=57.5mmの光ファイバ母材を外径d2=14.5mmの光ファイバ母材に縮径・延伸することができた。この際加熱炉ヒータ13部の温度は1920℃、ヒータ13の内径は100mm、上チャックの加熱炉への接近相対速度v1は、v1=5mm/分、下チャックの加熱炉に対する相対速度v2は、v2=80mm/分であった。」と記載されている。
この光ファイバ母材の外径d1=57.5mmとヒータ13の内径100mmという値から計算すると、本件請求項1および2に係る発明でいう発熱体の内径Dとガラス母材の外径Cとの比D/Cは、100mm/57.5mmで約1.74となり、それは本件請求項1および2で規定されているD/C=1.1〜4およびD/C=1.1〜2.3のいずれにも含まれる比であることが分かるものの、甲第1号証には、ヒータの長さが記載されておらず、本件請求項1および2に係る発明における、発熱体の長さLとガラス母材の外径Cとの比L/Cは示されていない。
甲第3号証(特開平10-231136号公報)には、「断面が円形のインゴットを加熱延伸し、円形ロッドを曳き出す装置において、該インゴットの加熱炉と、該インゴットの回転手段と、該インゴットの該加熱炉への挿入手段と、該円形ロッドを該インゴットと同期回転して把持する把持手段と、該円形ロッドを曳き出す延伸手段とを有し、該加熱炉に該インゴットの外径を測定する外径センサが取り付けられ、該外径センサで測定した外径値を基準円の外径値と比較して信号を出力する制御回路と、該信号によって駆動する該インゴットの偏心調節装置を有することを特徴とするインゴットの延伸装置。」(特許請求の範囲の請求項1)等が記載されており、その[0002]段落の「通信分野などで多く使用される光ファイバは、合成石英などのインゴットを線曳きして製造される。大型の合成石英インゴットは、取り扱い上不便であるため、延伸装置で延伸して小型の合成石英ロッドにした後に線曳きされることがある。」の記載から、甲第3号証に記載されたインゴットの延伸装置は光ファイバー用ガラス母材を延伸するものであるといえるが、甲第3号証には、発熱体9の長さや内径およびインゴット1の外径が記載されておらず、本件請求項1および2に係る発明における、発熱体の長さLとガラス母材の外径Cとの比L/Cや、発熱体の内径Dとガラス母材の外径Cとの比D/Cは示されていない。
してみると、本件請求項1および2に係る発明は、甲第1号証または甲第3号証に記載された発明とは認められない。
なお、特許異議申立人は、本件請求項1および2に係る発明におけるL/CおよびD/Cは、延伸されるガラス母材の外径Cに依存するから該装置を特定する事項でない旨(特許異議申立書第8頁13〜18行)を主張しているが、該装置を構成する発熱体の長さLや内径D等が本件発明を特定する事項であることは明らかであり、該事項をガラス母材の外径Cとの関係で表現することのみで、該装置を特定する事項から除外されるものではない。
したがって、上記(a)の主張は理由がない。
4-2.上記(b)の主張について
甲第1号証および甲第3号証には、既に検討したように、本件請求項1および2に係る発明における発熱体の長さLとガラス母材の外径Cとの比L/Cは示されていない。
そこで、上記相違点について検討すると、甲第2号証(特開平1-148725号公報)には、「外径50mm以上のクラッド用ガラスパイプの中空部分に、該クラッド用ガラスパイプの内径より小さい直径のコア用ガラスロッドを挿入し、これを長さ30mm以上100mm以下のヒータを有する電気炉中でヒータ温度1800〜2000℃で5mm/分以上20mm/分以下の速度でトラバースさせながら加熱することにより、該クラッド用ガラスパイプと該コア用ガラスロッドを一体化してコア及びクラッドを有してなるガラスロッドを得ることを特徴とする光ファイバ用母材の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)等が記載されており、その実施例1および2には、クラッド用ガラスパイプの外径やヒータの長さが記載されている。
しかし、甲第2号証に記載された方法は、光ファイバー用ガラス延伸装置に関するものではなく、クラッド用ガラスパイプとコア用ガラスロッドを一体化してコア及びクラッドを有するガラスロッドを得るものであり、甲第2号証に記載された発明におけるヒータの長さとクラッド用ガラスパイプの外径の比を、甲第1号証や甲第3号証に記載された光ファイバ母材延伸装置等にそのまま適用できるものではない。
また、本件請求項1および2に係る発明が、L/CおよびD/Cを規定したことによって、延伸したガラスロッドの寸法安定性が向上する等の効果を奏することは、本件明細書の表1および図4や図5に示されているところである。
してみると、甲第1〜3号証の記載を総合しても、本件請求項1および2に係る発明は、それらに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、上記(b)の主張も理由がない。
4-3.上記(c)の主張について
特許異議申立人は、本件請求項1および2では、L/CおよびD/Cが装置に係る発明を特定するための事項として記載されているが、「これらの要件はいずれもガラス母材の外径Cに依存しているので方法的特徴を表すとしても装置の構成を特定する要件としては認められない。」から、特許を受けようとする発明が明確に把握できず、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない、と主張する。
しかし、光ファイバー用ガラス母材延伸装置にはガラス母材が当然に使用され、そのガラス母材の具体的な外径は、本件特許に係る出願時の当業者にとって容易に想定され得るものであり、そのガラス母材の外径Cと、上記比であるL/CおよびD/Cにより、該装置を構成する発熱体の長さLや内径Dの径が特定できるといえる。してみると、ガラス母材の外径Cを記載していることのみで、本件請求項1および2に係る発明が装置の発明として不明確であるということはできない。
したがって、上記(c)の主張は理由がない。
5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由および証拠によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-05-22 
出願番号 特願平11-32237
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C03B)
P 1 651・ 537- Y (C03B)
P 1 651・ 113- Y (C03B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 深草 祐一  
特許庁審判長 加藤 孔一
特許庁審判官 西村 和美
唐戸 光雄
登録日 1999-12-24 
登録番号 特許第3017491号(P3017491)
権利者 信越化学工業株式会社
発明の名称 光ファイバ―用ガラス母材延伸装置  

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