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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47L
管理番号 1041485
異議申立番号 異議2001-71032  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-06-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-03 
確定日 2001-07-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第3095002号「食器洗浄機」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3095002号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件は、平成10年12月2日に出願され、平成12年8月4日に設定登録されたものであって、その発明は明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】洗浄機本体と、上方を開口して食器を収納し前記洗浄機本体から略水平方向に引き出し可能な洗浄槽と、この洗浄槽の開口部を覆う内蓋と、この内蓋と前記洗浄槽の開口部を密閉するシール部材とを備え、前記洗浄槽を引き出したとき、前記内蓋の内面側の水滴を除去する水滴除去手段を設けた食器洗浄機。
【請求項2】洗浄機本体と、上方を開口して食器を収納し前記洗浄機本体から略水平方向に引き出し可能な洗浄槽と、洗浄機本体の天面部で構成し前記洗浄槽の開口部を覆う蓋部と、この蓋部と前記洗浄槽の開口部とを密閉するシール部材とを備え、前記洗浄槽を引き出したとき、前記蓋部の内面側の水滴を除去する水滴除去手段を設けた食器洗浄機。
【請求項3】水滴除去手段を、洗浄槽の背面上部に設けた請求項1または2記載の食器洗浄機。
【請求項4】水滴除去手段で除去した洗浄水の受け部を、前記水滴除去手段と洗浄槽の少なくともいずれか一方に設けた請求項1〜3のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項5】水滴除去手段で除去した洗浄水を洗浄槽内部に戻す案内部を設けた請求項1〜4のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項6】シール部材に付着した洗浄水を除去する凸部を洗浄槽の背面上部に設けた請求項1〜5のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項7】洗浄機本体の底部に水位検知手段を設け、蓋部材とシール部材の少なくともいずれか一方から滴下した洗浄水を検知可能とした請求項1〜6のいずれか1項に記載の食器洗浄機。
【請求項8】水滴除去手段は、水滴付着面に圧接して移動するワイパーブレードで構成し、洗浄槽を洗浄機本体内に収納した状態で前記ワイパーブレードが水滴付着面に圧接しないよう凹部を設けた請求項1または2記載の食器洗浄機。」

2.申立ての理由の概要
特許異議申立人中森繁雄は証拠として甲第1号証(米国特許第2661750号明細書及び図面)、甲第1号証の1(甲第1号証の要部訳文)、甲第1号証の2(米国特許第2668091号明細書及び図面)、甲第1号証の2の1(甲第1号証の2の要部訳文)、甲第1号証の3(特表平7-502183号公報)、甲第2号証(特開平10-75927号公報)、甲第3号証(実願昭62-41186号(実開昭63-150665号)のマイクロフィルム)、甲第4号証(実公平5-17019号公報)、甲5号証(特開平4-15028号公報)、甲第5号証の2(特開平10-94509号公報)、甲第6号証(米国特許第2836186号明細書及び図面)、甲第6号証の1(甲第6号証の要部訳文)を提出し、請求項1乃至請求項8に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1乃至請求項8に係る発明の特許を取り消すべき旨主張している。

3.申立人が提出した甲号各証記載の発明
ア.申立人中森繁雄が提出した甲第1〜6号証には、以下の事項が記載されている。
(1)甲第1号証(米国特許第2661750号明細書及び図面)には、引き出し方向に出し入れできる洗浄層を備えた皿洗浄機に関して第1〜5図と共に、以下の点が記載されている。
i)「カウンターの下の適切な箇所又はカウンタそのものの別体部に、皿洗浄機4が配備される。」(第2欄第39〜41行;甲第1号証の1第1頁下から2乃至末行参照)、
ii)「皿洗浄機の主要部は、フレームに固定されたスライドトラック8等によって枠体の内部に引き出しのように支持された槽7と、・・・(中略)・・・槽の正面には、槽に固定されているがこの槽からは離間してフロントパネル14が設けられており、このフロントパネル14に取り付けられた槽引き出し具又は把手15によって、槽をキャビネットに対し出退するように構成されている。
タブの内部には、洗浄対象物品を支持する、通常の皿及び銀器の保持ラック16が配備される。」(第2欄第48行〜第3欄第11行;甲第1号証の1第2頁第2〜15行参照)、
iii)「操作用把手は、操作機構を起動させるのみならず、槽のカバー42の位置決めを行うものでもある。このカバーは、好適には比較的薄手の弾性シートメタル製であり、カバーが槽に対し強制的に降下された時、ガスケット48等によって槽の上縁部をシールする。このカバーは槽の上方かつカウンターの下に、圧縮バネ50を搭載したサイドアーム又は耳部49を備えた溝部材44によって支持されている。」(第5欄第3〜13行;甲第1号証の1第2頁第17〜末行参照)。
また、甲第1号証の2(米国特許2668091号明細書及び図面)、甲第1号証の3(特表平7-502183号公報)にも甲第1号証と同様な、引き出し式の洗浄槽を備えた食器洗浄機の技術が記載されている。

(2)甲第2号証(特開平10-75927号公報)には、洗浄機に関して図1〜10と共に、以下の点が記載されている。
i)「そして、そのほか、洗浄槽6の内部には、上かご7の下方から該上かご7内に向けて洗浄水を噴射する上噴水アーム14と、下かご8の下方から該下かご8内に向けて洗浄水を噴射する下噴水アーム15とを配設すると共に、洗浄時の洗浄水の加熱並びに乾燥時の空気の加熱に供するヒータ16(図2参照)を配設している。」(第2頁第2欄段落【0010】)、
ii)「そして、洗浄後には、ポンプ18を排水ポンプとして作動させることにより、洗浄槽6内から排水し、その後にヒータ16で洗浄槽6内の空気温度を上げ、送風機19により外気を導入して、排気口体20から排気することにより、被洗浄物22を乾燥させる。」(第3頁第3欄段落【0013】)、
iii)「図5ないし図8は本発明の第4実施例を示すもので、両扉9,10のうちの、特に洗浄水の接触によって生じる水滴が閉扉状態の角度の関係で流下しにくく残留しやすい上扉9の裏面9aに、親水性材料を塗布あるいは焼き付けして、該面9aを親水性材料で構成したものを示している。」(第3頁第4欄段落【0020】)、
iv)「図6の(a)は上扉9の裏面9aを親水性材料で構成した場合の、下面から見た水滴dの様子を表しており、(b)は側面から見た水滴dの様子を表している。これに対して、図7の(a)は上扉9の裏面9aを撥水性材料で構成した場合の、下面から見た水滴dの様子を表しており、(b)は側面から見た水滴dの様子を表している。」(第3頁第4欄〜第4頁第5欄段落【0022】)、
v)「更に、図8の(a)は上扉9の裏面9aを親水性材料で構成した場合の、側面から見た水滴dの様子を拡大して表しており、(b)は上扉9の裏面9aを通常の樹脂材料で構成した場合の水滴dの様子を、(c)は上扉9の裏面9aを撥水性材料で構成した場合の水滴dの様子をそれぞれ拡大して表している。」(第4頁第5欄段落【0023】)、
vi)「これらの違いから分かるように、上扉9の裏面9aを親水性材料で構成した場合には、撥水性材料で構成した場合よりはもとより、通常の樹脂材料で構成した場合よりも、水滴dが拡がって温風の熱がその内部に届きやすくなり、乾燥されやすくなる。かくして、乾燥後、水滴dを残留させたまま上扉9をスライドさせてしまうということがなくなり、そのスライドにより水滴dが落下して被洗浄物42,44をぬらしてしまうという不具合の発生を避けることができる。」(第4頁第5欄段落【0024】)。

(3)甲第3号証(実願昭62-41186号(実開昭63-150665号)のマイクロフィルム)には、食器洗浄機に関して第1〜14図と共に、以下の点が記載されている。
i)「機器本体の上部に矩形状の水平開口が形成され、その開口が、開口の対向する一組の開口縁に枢支した蓋体と、開口の上部に配設し、蓋体が開の状態に位置した際蓋体を収納するフレームとによって閉塞されてなり、
更に、収納状態の蓋体、又はこの蓋体とフレームの天板との間に配設され、フレームの天板から滴下する水滴を蓋上、又は蓋の上方から機器本体内に導く水滴処理手段を備えてなる食器洗浄機。」(実用新案登録請求の範囲第1項後段)、
ii)「第4〜5図に、この考案の第二の実施例を示す。食器洗浄機Caでは、蓋体3aのフレ-ム2a側の端縁21aに、板部材11aに付着している水滴19aを掃いて伝わり落下させるためのヘラ部22aが設けられている。
従って、板部材11aに付着した水滴19aの殆んどは、曲面形状の板部材11aに伝わってフレーム2a下方に落下する。しかし、落下しきれなかった水滴や汚れも、蓋体3aを開方向へ回動するとヘラ部22aが板部材11aの内側面に接触して回動し、そのヘラ部22aに拭き落される。」(明細書第6頁第7〜17行)、
iii)「第6〜7図に、この考案の第三実施例を示す。食器洗浄機Cbは食器洗浄機Caと同様に、蓋体3bのフレーム2b側の端縁21bにヘラ部22bが付設されている。そうして、そのヘラ部22bに水ヌキ用の通孔23bが開設されている。
従って、ヘラ部22bが蓋体3bの開への回動持に板部材11bに付着した水滴19bや汚れを曲面状の板部材11bにそって拭落す。この際、拭落されなかった水滴や汚れは蓋体11bの閉への回動するとヘラ部22bに拭取られ、通孔23bを通ってフレーム2b下方へ落下する。食器洗浄機Cbは、蓋体4bに水滴や汚れが付着することがなく、見栄を損うことはない。」(明細書第6頁第6〜16行)。
(4)甲第4号証(実公平5-17019号公報)には、食器洗い機の扉の下面から落下する水滴を捕集する技術で、当該落下する水滴をタンク外に漏らさないように、水滴受け部15より水抜き孔17を通してタンク前板部4に案内させて水滴をタンクに回収する技術が示されている。
(5)甲第5号証(特開平4-15028号公報)及び甲第5号証の2(特開平10-94509号公報)には、食器洗浄機の本体底部に水検知手段を設けて、洗浄槽外に漏れた水を検知する技術が示されている。
(6)甲第6号証(米国特許第2836186号明細書及び図面)には、皿洗浄機のシール構造として、ガスケット15を膨張させることによって槽2とカバー5の間を水密にシールする技術が開示されている。

4.当審の判断
(1)請求項1および請求項2に係る発明について
本件請求項1および請求項2に係る発明と上記甲第1〜6号証に記載の発明とを対比すると、後者はいずれも、前者に共通する発明の構成要件である「洗浄槽を引き出したとき、内蓋の内面側の水滴を除去する水滴除去手段」の構成を備えていない。
前者は、かかる構成要件により、「運転途中に洗浄槽を前方に引き出したとき、内蓋に付着した洗浄水が洗浄機本体の底面内部に滴下して洗浄機本体の外部に水漏れしたり、洗浄機本体を鋼板で構成している場合に鋼板が錆びるのを防止することができる。」という格別な作用効果を奏する。
一方、異議申立人は異議申立書の中で、
『甲第1号証には内蓋内面側の水滴を除去することは記載されていないが、甲第2号証には蓋内面(天面部)に付着している水滴の滴下により食器(被洗浄物)を濡らさないようにするために蓋内面の水滴を除去する技術が示唆されており、又、甲第3号証には蓋を開けたときに、天井内面の一部を構成する板部材に付着した水滴を除去する手段(ヘラ部)が示されている。
そして、本件請求項1に記載の発明の課題の一つである「乾燥行程終了後に洗浄槽を引き出したとき、蓋に付着した洗浄水が食器上に滴下して食器を濡らしてしまうという問題」は甲第2号証と同様であり、又、
「運転途中に洗浄槽を前方に引き出したとき、内蓋に付着した洗浄水が洗浄機本体の外部に水漏れしたりしないようにする」
技術は甲第3号証の技術であるから、本件請求項1の発明に奏するとされている効果(既述(a)の効果)も甲各号証から容易に予測できた程度の効果でしかない。
したがって、本件請求項1に記載の発明は甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に想到できた発明である。』(異議申立書第19頁第12〜25行)と主張し、請求項2に係る発明についても同様な理由で、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に想到できた発明であると主張する(同第21頁第9〜13行参照)。
しかしながら、甲第2号証記載の発明は、「上扉9の裏面9aを親水性材料で構成した場合には、撥水性材料で構成した場合よりはもとより、通常の樹脂材料で構成した場合よりも、水滴dが拡がって温風の熱がその内部に届きやすくなり、乾燥されやすくなる。かくして、乾燥後、水滴dを残留させたまま上扉9をスライドさせてしまうということがなくなり、そのスライドにより水滴dが落下して被洗浄物42,44をぬらしてしまうという不具合の発生を避けることができる。」(上記3.(2)vi))というものであり、本件請求項1に係る発明の構成要件である「洗浄槽を引き出したとき、前記内蓋の内面側の水滴を除去する水滴除去手段」を有さず、得られる効果も単に、上扉の水滴が乾燥され易くなるというものであって、本件発明のものとは相違する。
また、甲第3号証記載の発明は、「機器本体の上部に矩形状の水平開口が形成され、その開口が、開口の対向する一組の開口縁に枢支した蓋体と、開口の上部に配設し、蓋体が開の状態に位置した際蓋体を収納するフレームとによって閉塞されてなり、
更に、収納状態の蓋体、又はこの蓋体とフレームの天板との間に配設され、フレームの天板から滴下する水滴を蓋上、又は蓋の上方から機器本体内に導く水滴処理手段を備えてなる食器洗浄機。」(3.(3)i))であって、本件請求項1に係る発明のような「洗浄機本体と、上方を開口して食器を収納し前記洗浄機本体から略水平方向に引き出し可能な洗浄槽と、この洗浄槽の開口部を覆う内蓋と、この内蓋と前記洗浄槽の開口部を密閉するシール部材とを備え」たものではなく、得られる効果も単に、水滴を蓋上(外面)から処理できるというものであって、本件発明のものとは相違する。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
そして、請求項2に係る発明も内蓋の有無以外は請求項1に係る発明と共通する構成を有するので、同様な理由で甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
(2)請求項3乃至請求項8に係る発明について
本件請求項3乃至請求項8に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成を付加したものに相当するから、上記請求項1及び請求項2に係る発明に対するものと同様の理由により、甲第1〜6号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

5.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1乃至請求項8に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-06-06 
出願番号 特願平10-342861
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A47L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 熊倉 強
藤原 稲治郎
登録日 2000-08-04 
登録番号 特許第3095002号(P3095002)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 食器洗浄機  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  

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