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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03C
管理番号 1042912
審判番号 審判1999-18672  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-11-18 
確定日 2001-07-16 
事件の表示 平成10年特許願第237506号「内視鏡用フィルムカセット」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 5月28日出願公開、特開平11-143023]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年8月24日(優先権主張平成9年9月2日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年6月7日及び平成13年4月6日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「内視鏡用カメラに装填自在であって、それぞれが異なる複数種類のフィルムのうち、何れかを収容したフィルムカセット本体と、前記フィルムカセット本体内に収容されたフィルムの種類に応じて異なる抵抗値を有し、前記フィルムカセット本体の表面に設けられた、柔軟性を有する導電膜抵抗である粘着テープからなる抵抗体と、前記抵抗体と導通して前記フィルムカセット本体の表面に設けられ、前記抵抗体の抵抗値に基づき前記フィルムカセット本体内に収容された前記フィルムの種類を識別するフィルム識別回路と、前記フィルム識別回路に接続された電極とを有する内視鏡用カメラに前記フィルムカセット本体を装填したときに、前記フィルム識別回路に接続された前記電極と電気的に接続する接続部と、を備えたことを特徴とする内視鏡用フィルムカセット。」

2.引用例
これに対して、当審での拒絶理由に引用された、本願出願前日本国内において頒布された刊行物である、特開平2-108042号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
「カメラと装着自在で、かつ内部にフィルムを収納してなるカセット本体と、このカセット本体に設けられ複数のフィルム情報を設定してなる電気的情報設定素子と、この電気的情報設定素子で設定されたフィルム情報を前記カメラ側に出力するための接点とを具備したことを特徴とするフィルムカセット」(特許請求の範囲)
「この発明は、例えば内視鏡用カメラに装着されるフィルムカセットに関する。・・・
ところで、内視鏡写真においては、ファイバースコープ、硬性鏡に加えて、最近ではモニター撮影(工業用の写真)が加わり、かなりその分野が広くなってきている。それに応じて、各分野とも最高の画質のものが要求されてきている。
そのために、フィルム枚数、フィルム感度、フィルムの種類、色温度タイプ等を分野にに合せて設定した多くの種類のフィルムが専用に必要になってきた。
そこで、フィルム情報をカメラ側で読取って、カメラをそのフィルム情報にしたがって制御することが考えられる。
従来、こうしたフィルム情報の読取りには、DXコードと称されるパトローネに導電パターンを設け、このパターンに前記パターンの導通部分を種々決める接点を設ける方法が用いられている。そして、接点で設定される導通部分の組合わせから、フィルム情報、例えばフィルム感度をカメラ側で読み取らせるようにしている。」(第1頁左下欄第14行〜第2頁左上欄第1行)
「第1図および第2図は例えば内視鏡用カメラのフィルムカセットを示し、1はカセット本体である。カセット本体1は、フィルム2を巻回したスプール(図示しない)を内蔵したフィルム供給室3と、巻上げ用のスプール(図示しない)を内蔵したフィルム巻上室4とをブリッジ(図示しない)で連結した構造となっている。またブリッジの下端面には、フィルム供給室3とフィルム巻上げ室4との間をまたがるようにして帯状のブロック部分5が設けられている。そして、このブロック部分5の下面に、ROM6(電気的情報設定素子に相当)および該ROM6に読出し用の信号を発振する発振器7(第4図に図示)を搭載した基板8が埋設されている。詳しくは基板8は、ROM6がブロック部分5中に埋まるように、またROM6側とは反対の基板8の側面がブロック部分5の下面と面一になるようにして埋設されている。そして、このROM6に、各種のフィルム情報が設定されている。また基板8の外部に臨む面には、ROM6につながる三つの接点9,10,11が長手方向に沿いに並設されており、該接点9,10,11を使ってROM6に設定されたフィルム情報の内容をカメラ側に出力できるようにしている。
一方、第3図に示すように内視鏡用カメラのカメラ本体12内の後部には、カセット収容部13が設けられている。そして、このカセット収容部13に上記カセット本体1が脱着されるようになっている。なお、14はカセット収容部13の出入口を開閉するための蓋体を示す。またカセット収容部13を構成する底壁部13aには、カセット本体1の接点9,10,11の位置に対応して、接片で構成されるカメラ側の接点9a,10a,11aが設けられている。各接点9a,10a,11aは、カセット本体1をカメラ本体12に装着すると、各接点9,10,11と接触するようになっていて、ROM6に設定されたフィルム情報の内容をカメラ側に入力できるようにしている。そして、第4図に示されるように接点9a,10a,11aの一つは、カメラ本体12に設けた電源15に接続され、さらに一つはGNDに接続される。そして、残る接点はカメラ本体12に設けたCPU16に接続されている。そして、CPU16は撮影に必要な種々の駆動を制御するカメラ駆動部17に接続され、ROM6からの信号をCPU16で判別してカメラを駆動できるようにしている。」(第2頁右上欄第9行〜右下欄第15行)

この記載事項によると、引用例1には「内視鏡用カメラに装着自在で、内部にフィルムを収納してなるカセット本体と、フィルム枚数、フィルム感度、フィルムの種類、色温度タイプ等の複数のフィルム情報を設定し、カセット本体のブロック部分に埋設されたROMと、ROMが搭載された基板の外面に設けられ、ROMからの信号を判別するCPUと、CPUに接続された接点を有する内視鏡用カメラにカセット本体を装着したときに、CPUに接続された接点と接触する接点と、を備えたフィルムカセット」が記載されていると認められる。

同じく、当審での拒絶理由に引用された、本願出願前日本国内において頒布された刊行物である、特開平7-168237号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
「外表面を備えたハウジングを有し、またその外表面にてカートリッジのフィルムの使用状態を表示するための機能を有しているフィルムカートリッジであって、カートリッジの外表面に設けた抵抗器手段であって、常態では第1抵抗値を有する材料により形成された少なくとも1つの抵抗素子を含んでおり、この材料は、加えられた電気的励起に反応して第2抵抗値に変化することにより、カートリッジにおけるフィルムの所定の使用状態の変化を表示するようにした前記抵抗器手段と、前記抵抗素子と電気的に接続すると共に、写真フィルムカメラ側の電源回路及び検出回路に接続するようにした前記外表面に設けた端子であって、前記電源回路は、フィルムの使用状態の変化に応じて前記抵抗素子の抵抗値を第1抵抗値から第2抵抗値に変化させ、また前記検出回路は、前記抵抗素子の検出された抵抗値に応答して、その検出された抵抗値に従ってカメラの所定の制御を行うようにした前記端子と、を備え、これにより前記抵抗素子は、カメラにおける制御のためにフィルムの使用状態についての電気的に検出可能な表示を行うことを特徴とする二重露光を防止し得るフィルムカートリッジ。」(特許請求の範囲、請求項1)
「図1において、本発明の一実施例によるカメラ10は、カメラ本体11とヒンジ付けされた裏カバー20とにより構成される。カメラ本体11は通常的に、フィルムカートリッジ収納チャンバ12とフィルムフレーム露光アパーチャ14とフィルム巻上げチャンバ16とフィルム巻上げスプール18とを備えている。・・・(第29〜39行省略)・・・カートリッジ収納チャンバ12の湾曲表面には、1列の電気的接続端子26が配設されている。この端子26としては、一般的にカメラで採用されるタイプのものでよく、つまりカートリッジ内のフィルムのカメラ関連特性にデータを入力するために、フィルムカートリッジの側面に刻設されたDXコードを検出するようにしたものである。
【0011】図2において、カートリッジ30は、カートリッジの一端から延出する端部駆動のスピンドル36を有する内部スプールに巻回された1巻のフィルム34を収容するほぼ円筒状のハウジング32を含んでいる。本発明の特別な態様では、常態では第1抵抗値を有しているが、電気的励起に応じて第2抵抗値に変化する材料により形成された1もしくは複数の抵抗素子から成るカートリッジ外表面の抵抗器手段が設けられる。このような目的に適合する材料の例として、ペンシルバニア州,エルバーソンのメテック社によって製造・販売される導電性銀インク2512として知られているガーボンもしくは銀ベースの抵抗材料がある。そして同社から提供される銀ベースのものは、フレキシブル・カーボンコンダクタ2513として知られている。典型的には低電流を適用すると、かかる材料は、所与の厚さに対して単位矩形面積あたりの微弱な第1抵抗値を有する。比較的高電流を適用すると、その材料は第2の高抵抗値に遷移し、電位的にオープン回路状態となる。この代わりに、ポリスチレンフィルム上に蒸着したアルミニウム金属を用いて同様の効果を得ることができる。明らかなように、この第2抵抗値は、カートリッジ内のフィルムの使用状態の所定の変化を表示するのに有用である。
【0012】カートリッジは更に、1もしくは複数の抵抗素子38と電気的に接続するその外表面の複数の端子40を含んでいる。これらの端子40は、カメラ側のカートリッジ収納チャンバにおける端子26と整合して電気的接続を図るようになっている。」(第3頁右欄第24行〜第4頁左欄第22行)
「抵抗素子,接続端子及び視覚的インジケータ素子は、フィルムカートリッジの外表面に直接、被覆もしくはプリントされ、或いはまたフィルムカートリッジの製造もしくはフィルム収納工程の適宜の段階でカートリッジ表面に付設され得るラベル46を形成するように、フレキシブル基板上に被覆もしくはプリントされてよい。」(第4頁右欄第2〜8行)
また、引用例2の図2にはフィルムカートリッジの曲面部にラベル46を付設した図が記載されており、引用例2の図3にはフィルムカートリッジの外表面に設けたラベルの構成例が記載されている。

3.対比
そこで、本願発明と前記引用例1に記載されたものとを対比すると、引用例1に記載された「装着自在」、「内部にフィルムを収納してなるカセット本体」、「カセット本体の基板の外面」、「ROMからの信号を判別するCPU」、「CPUに接続された接点」及び「CPUに接続された接点と接触するカセット本体の接点」は、それぞれ本願発明の「装填自在」、「それぞれが異なる複数種類のフィルムのうち、何れかを収容したフィルムカセット本体」、「フィルムカセット本体の表面」、「フィルムの種類を識別するフィルム識別回路」、「フィルム識別回路に接続された電極」及び「フィルム識別回路に接続された前記電極と電気的に接続する接続部」に相当する。そうすると、両者は、
「内視鏡用カメラに装填自在であって、それぞれが異なる複数種類のフィルムのうち、何れかを収容したフィルムカセット本体と、前記フィルムカセット本体内に収容されたフィルムの種類を識別するための情報が設定された部材と、前記フィルムの種類を識別するための情報が設定された部材と導通して前記フィルムカセット本体の表面に設けられ、前記情報が設定された部材の情報に基づき前記フィルムカセット本体内に収容された前記フィルムの種類を識別するフィルム識別回路と、前記フィルム識別回路に接続された電極とを有する内視鏡用カメラに前記フィルムカセット本体を装填したときに、前記フィルム識別回路に接続された前記電極と電気的に接続する接続部と、を備えた内視鏡用フィルムカセット」の点で一致し、
フィルムの種類を識別するための情報が設定された部材が、本願発明では、「フィルムの種類に応じて異なる抵抗値を有し、前記フィルムカセット本体の表面に設けられた、柔軟性を有する導電膜抵抗である粘着テープからなる抵抗体」であるのに対し、引用例1に記載されたものは、フィルム枚数、フィルム感度、フィルムの種類、色温度タイプ等の複数のフィルム情報を設定し、カセット本体のブロック部分に埋設されたROMである点(以下、「相違点」という。)で両者は相違する。

4.当審の判断
そこで上記相違点について検討する。
引用例2には、フィルムカートリッジの表面に設けられた抵抗素子の抵抗値をカメラが検出するものにおいて、抵抗素子38、接続端子40をカートリッジ表面に付設され得るラベル46を形成するように、フレキシブル基板上に被覆もしくはプリントされてよいことが記載されており、電気的励起に反応して第1抵抗値から第2抵抗値に変化する抵抗素子38a,38b以外の抵抗素子38c(図3参照)の役割については特に記載されていないが、引用例2には「カートリッジ収納チャンバ12の湾曲表面には、1列の電気的接続端子26が配設されている。この端子26としては、一般的にカメラで採用されるタイプのものでよく、つまりカートリッジ内のフィルムのカメラ関連特性にデータを入力するために、フィルムカートリッジの側面に刻設されたDXコードを検出するようにしたものである。」と記載されているから、前記抵抗素子38cはカメラの電気的接続端子26によってDXコードを検出するために用いられることは明らかである。そうすると、引用例2に記載された、ラベルを形成するように抵抗素子、接続端子をフレキシブル基板上に被覆もしくはプリントされたものは、フィルムの種類に応じて異なる抵抗値を有し、フィルムカートリッジ表面に設けられた、柔軟性を有する抵抗体に相当する。さらに、引用例2に記載されたラベルは柔軟性を有するのであるからテープと格別な差異は認められず、抵抗素子は被覆もしくはプリントされてよいのであるから、引用例2に記載された抵抗素子は導電膜抵抗に相当する。そして、一般的なラベルを粘着により付設することは慣用の手段であり、引用例2に記載されたフィルムカートリッジは、フィルムを収容しカメラに装填自在なものとして本願発明と共通する分野に属するものであるから、引用例2に記載された柔軟性を有する抵抗体を、引用例1に記載されたROMに代えてカセット本体の表面に粘着により設けるようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。
また、そのことによる効果も格別のものではない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-05-01 
結審通知日 2001-05-15 
審決日 2001-05-29 
出願番号 特願平10-237506
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柏崎 康司越河 勉川俣 洋史吉川 陽吾  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 伊藤 昌哉
北川 清伸
発明の名称 内視鏡用フィルムカセット  

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