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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B62D
管理番号 1043296
異議申立番号 異議2000-72191  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-29 
確定日 2001-07-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第2983405号「電動式パワーステアリング回路装置」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2983405号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第2983405号は、平成5年3月23日に出願され平成11年9月24日に設定登録され、その後、請求項1〜6に係る特許について早川匡及び青谷成純からそれぞれ特許異議の申立てがなされたものであって、平成12年8月18日付けで、請求項1〜6に係る特許について、当審より取消理由の通知をしたところ、その指定期間内である平成12年10月23日付けで特許異議意見書が提出されたものである。
【2】本件特許発明
本件請求項1〜6に係る発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、それぞれ特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】車両のハンドルに対して補助トルクを出力するモータと、
前記モータを駆動するためのモータ電流を供給するバッテリと、
前記モータ電流のリップル成分を吸収するためのコンデンサと、
前記モータ電流を検出するためのシャント抵抗器と、
前記モータ電流を前記補助トルクに応じて切換えるための複数の半導体スイッチング素子からなるブリッジ回路と、
前記半導体スイッチング素子をブリッジ接続すると共に前記シャント抵抗器及び前記ブリッジ回路を接続する配線パターンと、
前記モータ及び前記バッテリを前記ブリッジ回路に接続するコネクタと、
前記ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサと、
前記車両の車速Vを検出する車速センサと、
前記ハンドルの操舵トルク及び前記車両の車速に基づいて前記補助トルクを演算すると共に前記モータ電流をフィードバックして前記ブリッジ回路を制御するための駆動信号を生成するマイクロコンピュータ及び周辺回路素子と、
前記マイクロコンピュータ及び前記周辺回路素子を前記ブリッジ回路に接続するための導電線とを備えた電動式パワーステアリング回路装置において、
絶縁層を介して接合配置された前記配線パターンを有すると共に前記シャント抵抗器及び前記ブリッジ回路を前記配線パターン上に実装するための金属基板と、
前記マイクロコンピュータ及び前記周辺回路素子を実装するための絶縁プリント基板とを設け、
前記金属基板及び前記絶縁プリント基板は、互いに所定間隔を介して重合されたことを特徴とする電動式パワーステアリング回路装置。
【請求項2】前記金属基板と前記絶縁プリント基板との間に、前記所定間隔を維持するための支持部材を設けたことを特徴とする請求項1の電動式パワーステアリング回路装置。
【請求項3】前記コンデンサは前記支持部材に取り付けられたことを特徴とする請求項2の電動式パワーステアリング回路装置。
【請求項4】前記コネクタは前記支持部材に取り付けられると共に延長端子部を有し、前記延長端子部は前記金属基板から突出したリードに接続されたことを特徴とする請求項2又は請求項3の電動式パワーステアリング回路装置。
【請求項5】前記絶縁プリント基板は複数に分割され、分割された前記絶縁プリント基板の一部は、前記金属基板に対して水平方向に並列配置されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかの電動式パワーステアリング回路装置。
【請求項6】前記絶縁プリント基板は、電磁ノイズを遮断するためのシールド板で被覆されたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかの電動式パワーステアリング回路装置。」
【3】取消理由の概要
上記取消理由の概要は、本件特許の出願前に頒布された刊行物として、
引用例1……実願昭61-164688号(実開昭63-69673号)のマイクロフィルム
引用例2……特開平2-212269号公報
引用例3……「平成4年電気学会全国大会 講演論文集」平成4年3月、社団法人電気学会発行 S.6-11〜S.6-14
引用例4……特開平3-218088号公報
引用例5……実願平3-49399号(実開平5-4574号)のCD-ROM
引用例6……特開平2-170597号公報
引用例7……特開平2-170381号公報
引用例8……特開平3-104151号公報
引用例9……特開平5-13911号公報
を引用し、
請求項1〜6に係る発明は、上記引用例1〜9に記載されたもの及び周知又は慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜6に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定により拒絶すべき出願に対してなされたものであるので、取り消されるべきものである、というものである。
【4】上記特許異議意見書における主張の概要
本件特許の特許権者は、
(1)引用例1に、制御回路29と電動機駆動回路36とを異なる基板に形成することは記載されているが、引用例1において、制御回路29と電動機駆動回路36を異なる基板に形成することの目的は、引用例1に明記されているように、駆動回路をバッテリ近傍に配置することによって駆動回路とバッテリとの間の配線を短縮して抵抗を小さくすること、及び、バッテリにコンデンサとしての機能を発揮させ、電動機への給電にともなう電圧変動を抑制して動作の安定化とともに全体の小型化を図ることである。
すなわち、引用例1において制御回路29と電動機駆動回路36は、異なる基板に形成されるだけでなく、引用例1の第1図に示されるように、それぞれが別々の箇所に配置されるものであり、したがって、本件の請求項1に係る発明の構成のように、発熱の対策を目的として、制御回路を実装した基板と、電動機駆動回路を実装した基板を互いに所定間隔を介して重合することを開示、示唆するものではなく、逆にこれらの基板を重合するなど同一位置に配置することを否定するものである。
したがって、発熱量の大きい電子部品と発熱量が大きくない電子部品とを異なる基板上に設け、前記発熱量の大きい電子部品は金属基板に絶縁層を介して接合配置された配線パターン上に実装し、また、発熱量が大きくない電子部品を絶縁プリント基板に実装し、前記金属基板及び前記絶縁プリント基板を、互いに所定間隔を介して重合して配置することが、引用例3、引用例4、引用例5、引用例6にも記載されるように、本件特許の出願前に周知の事項であるとしても、引用例1と組み合わせることは不可能である。
(2)請求項2〜6に係る発明は、何れも請求項1に従属するものであり、その請求項1が特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではないことは上述のとおりであり、したがって、請求項2〜6についても同様に特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。
特に、請求項3については、大きな取り付けスペースを必要とし、かつ金属基板に実装しにくい大容量のコンデンサを支持部材に取り付けることで、さらに小型化及びコストダウンが実現でき、組立を簡略化し、製造性を向上するという格別な効果を奏するものであり、単に2枚の基板の中間位置に電子部品を取り付けることとは全く構成が異なるものである。
また、請求項4については、コネクタの延長端子部と、金属基板から突出したリードを別体として、これらを接続するように構成することによって、より小型化及びコストダウンを実現すると共に、組立製造性を向上できるという格別な効果を奏するものであり、引用例に示されたものは、コネクタの延長端子部が直接金属基板に接続されており、金属基板から突出したリードに接続されたものではない。
【5】当審の認定・判断
1.引用例に記載された事項
(1)引用例1(実願昭61-164688号(実開昭63-69673号)のマイクロフィルム)
引用例1には、「電動パワーステアリング装置」に関し、
イ)「 制御回路(29)は第7図に示すように、操舵トルクセンサ(28)用のインターフェース回路(69)、繰舵回転センサ(27)用のインタ-フェース回路(70)、車速センサ(47)用のインターフェース回路(71)、警報ランプ(46)用の駆動回路(72)、電動機駆動回路(36)のリレー回路(73)用の駆動回路(74)、電動機駆動回路(36)の電流検出回路(75)用の増幅回路(76)、定電圧電源回路(77)、水晶発振回路(78)、マイクロコンピュータ回路(79)、昇圧回路(80)および出力回路(81)等を混成化して構成されている。」(明細書第13頁第11行〜第14頁第1行)
ロ)「増幅回路(76)は、電流検出回路(75)と前述のプリント配線(37)および組み配線(38)によって接続され、電動機(44)に通電されている電流値を表す信号をマイクロコンピュータ回路(79)へ出力する。」(明細書第14頁第13〜17行)
ハ)「マイクロコンピュ-タ回路(79)は、ROM、RAM、A/DコンバータおよびCPU等から構成され、ROMに記憶された制御処理のプログラムに従い前述した各センサ(27),(28),(47)および電流検出回路(75)の出力信号を処理して出力回路(81)および駆動回路(72),(74)へ信号を出力する。
出力回路(81)は、昇圧回路(80)から高圧電力を供給され、マイクロコンピュータ回路(79)から入力する信号に基づいてパルス幅変調駆動信号(PWM信号)(g),(h),(i),(j)を出力する。この出力回路(81)は、4つの出力端子がプリント配線(37)を介して電動機駆動回路(36)のブリッジ回路(83)へ接続されている。」(明細書第15頁第4〜17行)
ニ)「電動機駆動回路(36)は、4つの電界効果型トランジスタ(FET)(Q1),(Q2).(Q3),(Q4)を有するブリッジ回路(83)、リレー回路(73)および電流検出回路(75)を混成化して構成されている。ブリッジ回路(83)は、FET(Q1),(Q4)のドレインがリレー回路(45)を介してヒューズ回路(40)にソースがFET(Q2),(Q3)のドレインにそれぞれ接続され、また、FET(Q2),(Q3)のソースが接地され、これらFET(Q1),(Q2)のソース・ドレインとFET(Q3),(Q4)のソース・ドレインとの間に前記電動機(44)が接続されている。このブリッジ回路(83)は、各FET(Q1),(Q2),(Q3),(Q4)のゲートに出力回路(81)からPWM信号(g),(h),(i),(j)が入力し、FET(Q1),(Q3)またはFET(Q2),(Q4)がー体かつ選択的にON駆動されて電動機(44)へ通電する電流の方向と値とを制御する.なお、PWM信号(g)はFET(Q1)のゲートに入力し、以下同様に、PWM信号(h)がFET(Q2)、PWM信号(i)がFET(Q3)、PWM信号(j)がFET(Q4)のゲートに入力する。リレー回路(73)は制御回路(29)の出力信号に応じて電動機(44)とブリッジ回路(83)との間を接続・遮断し、また、電流検出回路(75)は電動機(44)に通電される電流値を検出して該電流値を表す信号を制御回路(28)へ出力する。」(明細書第16頁第6行〜第17頁10行)
ホ)「バッテリ(41)は、安定化用のコンデンサとしての機能も発揮して電動機(44)への給電にともなう電圧変動を抑制する。このため、電動機駆動回路(36)に大容量コンデンサ等を設ける必要がなくなり、その小型化が図れる。」(明細書第18頁第15〜19行)
ヘ)「制御回路(29)は、第1図および第2図に示すように、サイドケース(14)の下端に設けられたターミナル(85)にプリント配線(37)によって接続され、さらに、ターミナル(85)から配索された組み配線(38)によって電動機駆動回路(36)と接続されている。電動機駆動回路(36)はエンジンルーム内のバッテリ(41)の近傍で車体(87)に取り付けられたユニットケース(35)内に収納され、このユニットケース(35)からバッテリ(41)およびコラムカバー(7)に設けられたキースイッチ(39)(第7図参照)へそれぞれ組み配線(88)、(89)が配索されている。このユニットケース(35)には放熱フィン(35a)が形成されている。」(明細書第9頁第12行〜第10頁第4行)
ト)「 バッテリと駆動回路との間の配線の短縮を図り、電動機への給電にともなう電圧降下を低減し、また、バッテリにコンデンサとしての機能を果たさしめて駆動回路に設けられるコンデンサの小容量化による小型化を行うことを目的とする。」(明細書第4頁第5〜10行)
との記載があり、
チ)第7図の電気回路図および明細書の記述に基づけば、電動機駆動回路(36)と制御回路(29)とが別体であることが記載されているものと認められる。
そして、絶縁層に配線パターンを有するプリント基板上に電気回路を構成することが一般的であるから、引用例1には、
“車両のハンドルに対して補助トルクを出力する電動機(44)と、
前記電動機(44)を駆動するための電動機電流を供給するバッテリ(41)と、
前記電動機電流を検出するための電流検出回路(75)と、
前記電動機電流を前記補助トルクに応じて切換えるための複数の電界効果型トランジスタ(FET)(Q1),(Q2),(Q3),(Q4)からなるブリッジ回路(83)と、
前記電界効果型トランジスタ(FET)(Q1),(Q2),(Q3),(Q4)をブリッジ接続すると共に前記電流検出回路(75)及び前記ブリッジ回路(83)を接続する配線パターンと、
前記電動機(44)及び前記バッテリ(41)を前記ブリッジ回路(83)に接続する手段と、
前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ(28)と、
前記車両の車速を検出する車速センサ(47)と、
前記ハンドルの操舵トルク及び前記車両の車速に基づいて前記補助トルクを演算すると共に前記電動機電流をフィードバックして前記ブリッジ回路(83)を制御するための駆動信号を生成するマイクロコンピュ-タ回路(79)及び周辺回路素子と、
前記マイクロコンピュ-タ回路(79)及び前記周辺回路素子を前記ブリッジ回路(83)に接続するためのプリント配線(37)、組み配線(38)等の導電線と、
前記配線パターンを有すると共に電流検出回路(75)及びブリッジ回路(83)を配線パターン上に実装した電動機駆動回路(36)を構成する基板と、
前記マイクロコンピュ-タ回路(79)及び前記周辺回路素子を実装した制御回路(29)を構成するプリント基板
とを設けた電動パワーステアリング装置”
が記載されているものと認める。
(2)引用例3(「平成4年電気学会全国大会 講演論文集」平成4年3月、社団法人電気学会発行)
イ)「パワーデバイスが高性能化、高集積化され、その応用範囲も、家電、FA、カー等に拡大している。」(第S.6-11頁本文の第1〜2行)、
ロ)「そのポイントは、高hFEトランジスタチップの採用、低損失カレントセンスIGBTチップの採用によるドライブ電力の低減、アルミ金属絶縁基板の採用、2層組立構造(パワー素子は絶縁金属基板、プリドライブ回路等はプリント基板)の採用等による小型、軽量化パッケージ、そして、過電流短絡保護、過温度保護、アラーム機能を付加したプリドライバ回路のモノリシックIC化である。」(第S.6-13頁第5〜12行)、
ハ)「(1)CAR用ハイブリッドIC(ECU) 写真1は定速走行装置(ACC)のECUである。アルミ絶縁金属基板を回路基板兼シールドパッケージとして用い、パワーTRからマイコンまで全てをベアチップで組み込んでいる。放熱器、シールドケース、PCBをなくして従来比1/2のサイズと重量を達成して、小型化軽量化している。実装は、1〜4次実装と言える。」(第S.6-13頁第26〜33行)
等の記載があり、
ニ)第S.6-13頁に示された図5には、インテリジェントパワーモジュールの内部構造が図示されており、これによると、アルミ絶縁基板にシリコンチップを搭載するとともに、アルミ絶縁基板の端部側からパワー端子を引き出し、アルミ絶縁基板の上部方向に間隔を持ってプリント基板を配置し、そのプリント基板上に電子部品を実装した構造のものが示唆されている。
ホ)第S.6-14頁図6には、基板の間隔を維持する支持部材にコネクタを設け、コネクタの端子の一端を金属基板に接続する点が示されている。
(3)引用例4(特開平3-218088号公報)
イ)「金属製ステム10の底部には、窒化アルミニウムやアルミナからなる厚さが通常0.8mmの厚膜基板即ち絶縁基板12を錫-鉛-銀などの半田(図示せず)により固着する」(第3頁上左欄第6〜10行)
ロ)「厚膜基板12には、メタライズ層(図示せず)が形成されており更に、例えばバイモス型半導体素子14即ちハイブリッド集積回路出力段用回路部品を半田(図示せず)により固着し、メタライズ層は配線用としても機能させる。」(第3頁上右欄第2〜7行)
ハ)「ハーメチック法により金属製ステム10に固着したリード11,11間には、厚さ最大1mm程度のガラエポ基板即ち他の絶縁板15に設置した孔部に挿入の上半田16等を利用して固着するが、絶縁板12との距離は、ほぼ7〜8mmである。」(第3頁上右欄第8〜12行)
ニ)「ハイブリッド集積回路制御段用回路部品17が設置される他の絶縁板15及びキャップ13内面には、銅張フレキシブル基板即ち接続用の部材18が配置され、この銅からなる配線層を介して、制御段用回路部品17…を接続する。」(第3頁上右欄第13〜18行)
等の記載があるものと認める。
(4)引用例5(実願平3-49399号(実開平5-4574号)のCD-ROM)
「混成集積回路装置」に関して、
イ)「絶縁層を介して形成された回路を有する金属基板11上に発熱量の大きなトランス12,トランジスタ13,コンデンサ14を配置し、金属基板により所定間隔離間して支持されたプリント基板18に発熱量の小さなIC15等の電子部品を配置した。更に、プリント基板18のトランス12,トランジスタ13,コンデンサ14に望む部分に開口部21を設けた。」(第1頁下欄)
との記載があるものと認める。
(5)引用例6(特開平2一170597号公報)
イ)「具体的には、第1及び第2の回路基板16a、16bには、エンジン制御ユニットとしての機能を発揮するに必要なICチップ、抵抗体、コンデンサ等の回路素子が取り付けられている。詳細には、下方に位置する第1の回路基板16aには、所謂ロジック用の回路素子が接続され、上方に位置する第2の回路基板16bには、所謂パワー用の回路素子が接続されるよう設定されている。」(第2頁右下欄第15行〜第3頁左上欄第2行)、
ロ)「共通基板22は、…例えばアルミニウムから形成された基板本体22aと、…絶縁層22bと、…導電層22cと、…回路素子22dとから形成されている。」(第3頁左上欄第6行〜14行)、
ハ)「一方、上述した第3の回路基板16cは、従来より普通に使用されているガラスエポキシ樹脂の基板本体の上下両面に貼着され、…構成されている。そして、この第3の回路基板16cには、…セミパワー用の回路素子が実装されている。」(第3頁右上欄第15行〜第3頁左下欄第2行)、
等の記載があるものと認める。
ニ)また、第5図を参照すると、基板16a,16bを支持する部材にコネクタを設け、コネクタの端子の一端を金属基板に接続する点が示されている。
ホ)更に、第5図を参照すると、間隔を介して重合した基板の間に第3の基板16cを設けて、第3の基板16cに電子部品を取り付ける点が示されているものと認める。
(6)引用例7(特開平2-170381号公報)
「金属基板を有する集積回路」に関して、
イ)「複数の金属基板上に絶縁層を介して導電層が貼着され、各導電層に回路素子が固定された回路基板が、互いに隣接する導電層を接続基板を介して互いに接続された状態で備えた所の金属基板を有する集積回路」(第1頁下左欄特許請求の範囲)との記載があり、
ロ)また、第5図を参照すると、基板を支持する部材にコネクタを設け、コネクタの端子の一端を金属基板に接続する点が示されている。
(7)引用例8(特開平3-104151号公報)
「金属基板を有する集積回路」に関して、
イ)「金属基板上に絶縁層を介して所望形状の導電層が形成され、互いに対向された一対の回路基板と、これら回路基板を電気的に互いに接続する接続ケーブルと、……を具備することを特徴とする金属基板を有する集積回路。」(第1頁特許請求の範囲)との記載があり、
ロ)また、第5図を参照すると、基板を支持する部材にコネクタを設け、コネクタの端子の一端を金属基板に接続する点が示されている。
(8)引用例9(特開平5-13911号公報)
「混成集積回路装置」に関し、
イ)「本発明の混成集積回路装置は図3に示した入力インターフェース(40)を実装した第1の絶縁金属基板(14)、第1および第2のマイクロコンピュータ(42)(48)、ゲートアレイ(50)、ROM(44)(48)を実装した第2の絶縁金属基板(15)、出力インターフェース(52)を実装した第3の絶縁金属基板(16)、第1および第2の絶縁金属基板(14)(15)と第3の絶縁金属基板(16)とを所定間隔で離間配置し、これら絶縁金属基板間に封止空間を形成する樹脂製のケース(17)、第2および第3の絶縁金属基板(15)(16)の回路接続部を遮蔽する蓋(18)から構成される。」(段落[0012])との記載があり、
金属基板を分割形成し、並列配置及び対向(重合)配置した構成が記載されているものと認める。
2.対比・判断
(1)請求項1に係る発明について
(1-1) 請求項1に係る発明と上記引用例1に記載されたものとを対比すると、
両者は、
車両のハンドルに対して補助トルクを出力するモータと、
前記モータを駆動するためのモータ電流を供給するバッテリと、
前記モータ電流を検出するための手段と、
前記モータ電流を前記補助トルクに応じて切換えるための複数の半導体スイッチング素子からなるブリッジ回路と、
前記半導体スイッチング素子をブリッジ接続すると共に前記モータ電流の検出手段及び前記ブリッジ回路を接続する配線パターンと、
前記モータ及び前記バッテリを前記ブリッジ回路に接続する手段と、
前記ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサと、
前記車両の車速Vを検出する車速センサと、
前記ハンドルの操舵トルク及び前記車両の車速に基づいて前記補助トルクを演算すると共に前記モータ電流をフィードバックして前記ブリッジ回路を制御するための駆動信号を生成するマイクロコンピュータ及び周辺回路素子と、
前記マイクロコンピュータ及び前記周辺回路素子を前記ブリッジ回路に接続するための導電線とを備えた電動式パワーステアリング回路装置において、
前記配線パターンを有すると共に前記電流検出手段及び前記ブリッジ回路を前記配線パターン上に実装するための基板と、
前記マイクロコンピュータ及び前記周辺回路素子を実装するための絶縁プリント基板と
を設けた電動式パワーステアリング回路装置.
の点で一致し、次の相違点a〜dで相違する。
〈相違点a〉
請求項1に係る発明は、モータ電流のリップル成分を吸収するためのコンデンサを備えたのに対して、引用例1に記載されたものは、当該コンデンサを備えたものではない点、
〈相違点b〉
モータ電流を検出するための手段が、請求項1に係る発明は、シャント抵抗器であるのに対して、引用例1に記載されたものは、当該手段の構成が明示されていない点
〈相違点c〉
モータ及びバッテリをブリッジ回路に接続する手段が、請求項1に係る発明は、コネクタであるのに対して、引用例1に記載されたものは、コネクタを用いるものかどうか明示されたものでない点
〈相違点d〉
請求項1に係る発明は、前記電流検出手段及び前記ブリッジ回路を実装する基板を、「絶縁層を介して接合配置された配線パターンを有する金属基板」とし、この金属基板と、前記マイクロコンピュータ及び前記周辺回路素子を実装するための絶縁プリント基板とが、「互いに所定間隔を介して重合された」ものであるのに対して、引用例1に記載されたものは、前記電流検出手段及び前記ブリッジ回路を実装する基板が金属基板かどうか明示されたものではなく、また、「互いに所定間隔を介して重合された」ものでない点
(1-2) 上記各相違点について検討する。
〈相違点a〉について
コンデンサを備えて電流のリップル成分を吸収することは、本件特許の出願前に周知の技術であり、請求項1に係る発明において、モータ電流のリップル成分を吸収するためのコンデンサを備えた点は、周知の事項を単に付加したものにすぎない。
〈相違点b〉について
電流検出をシャント抵抗によって行うことは、本件特許の出願前に周知の技術であり、請求項1に係る発明において、電流検出手段をシャント抵抗とした点は、周知の事項を単に採用したものにすぎない。
〈相違点c〉について
基板に形成した電気回路と基板外部の電気部品とをコネクタを介して接続することは、本件特許の出願前に周知の技術であり、請求項1に係る発明において、コネクタによってモータ及びバッテリをブリッジ回路に接続した点は、周知の事項を単に採用したものにすぎない。
〈相違点d〉について
大きな電流が流れて発熱する電子部品を配置した基板を、絶縁層を介して接合配置された配線パターンを有する金属基板とし、金属基板に対して所定間隔を介して小電流の電子部品を配置した絶縁基板を重合することは、例えば上記引用例3〜6に記載される如く、本件特許の出願前に周知の技術であり、前記電流検出手段及び前記ブリッジ回路を実装する基板を、絶縁層を介して接合配置された配線パターンを有する金属基板とし、マイクロコンピュータ及び前記周辺回路素子を実装するための絶縁プリント基板と、互いに所定間隔を介して重合した構成とすることは、前記周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。
なお、特許権者は、特許異議意見書において、引用例1に記載されたものは、制御回路を実装した基板と、電動機駆動回路を実装した基板を互いに所定間隔を介して重合することを開示、示唆するものではなく、逆にこれらの基板を重合するなど同一位置に配置することを否定するものである旨主張するが、引用例1に記載されたものは、「バッテリと駆動回路との間の配線の短縮を図り、電動機への給電にともなう電圧降下を低減し、また、バッテリにコンデンサとしての機能を果たさしめて駆動回路に設けられるコンデンサの小容量化による小型化を行うことを目的」(引用例1についての前記摘示事項「ト)」参照)として、駆動回路をバッテリの近傍に配置したものであり、制御回路を実装した基板と電動機駆動回路を実装した基板とを互いに所定間隔を介して重合する構成を採用することを否定するものではない。
(1-3) そして、本件請求項1に係る発明の作用効果は、上記引用例1及び上記周知事項から予測し得る程度のものと認められる。
したがって、本件請求項1に係る発明は、上記引用例1に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)請求項2に係る発明について
(2-1)請求項2に係る発明と引用例1に記載されたものとを対比すると、上記相違点a〜dに加えて、 本件請求項2に係る発明は、前記2枚の基板の間に、所定間隔を維持するための支持部材を設けたものであるのに対して、引用例1に記載されたものはこのような構成を備えたものではない点(以下「相違点e」という。)、で相違する。
(2-2)しかしながら、上記引用例3〜8に記載される如く、2枚の基板を所定間隔を介して重合するものにおいて、前記2枚の基板の間に、前記所定間隔を維持する支持部材を設けた構成は、本件特許の出願前に周知の事項であり、相違点eにおける本件請求項2に係る発明の構成は、周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得る事項である。
また、相違点a〜dにおける請求項2に係る発明の構成は、前説示のとおり格別のものではない。
(2-3) そして、本件請求項2に係る発明の作用効果は、上記引用例1及び上記周知事項から予測し得る程度のものと認められる。
したがって、本件請求項2に係る発明は、上記引用例1に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)請求項3に係る発明について
(3-1)請求項3に係る発明と引用例1に記載されたものとを対比すると、上記相違点b〜eに加えて、 本件請求項3に係る発明は、モータ電流のリップル成分を吸収するためのコンデンサを設け、該コンデンサを前記支持部材に取り付けたものであるのに対して、引用例1に記載されたものは、コンデンサを設けたものでない点で相違する。
(3-2)しかしながら、コンデンサを備えて電流のリップル成分を吸収することは、本件特許の出願前に周知の技術であり、請求項3に係る発明において、モータ電流のリップル成分を吸収するためのコンデンサを設けた点は、周知の事項を単に付加したものにすぎず、また、所定間隔を介して重合して配置した2枚の基板の中間位置に電子部品を取り付けることが、前記引用例4、6に記載されているから、コンデンサの取り付け位置として、2枚の基板の中間位置となる基板の支持部材を選択することは、当業者が容易に決定できる選択事項にすぎない。
なお、特許権者は、特許異議意見書において「単に2枚の基板の中間位置に電子部品を取り付けることとは全く構成が異なる」旨主張するが、請求項3に係る発明は、支持部材に対する取り付け構造が特定されているものでもないから、金属基板とは異なる位置として、2枚の基板の中間位置にある支持部材を選択したものにすぎず、コンデンサの取り付け位置を支持部材とした点は、前記引用例4又は6に記載されたものから、当業者が容易に想到し得る構成とするのが相当である。
また、相違点b〜eにおける請求項3に係る発明の構成は、前説示のとおり格別のものではない。
(3-3) そして、本件請求項3に係る発明の作用効果は、上記引用例1及び、4又は6に記載された事項、並びに上記周知事項から予測し得る程度のものと認められる。
したがって、本件請求項3に係る発明、上記引用例1及び、4又は6に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)請求項4に係る発明について
(4-1)請求項2を引用する請求項4に係る発明と引用例1に記載されたものとを対比すると、上記相違点a,b,dに加えて、請求項4に係る発明は、モータ及びバッテリをブリッジ回路に接続する手段がコネクタであって、当該コネクタが、前記2枚の基板の間に設けた所定間隔を維持するための支持部材に取り付けられると共に延長端子部を有し、該延長端子部が前記ブリッジ回路を備えた基板から突出したリードに接続されたものであるのに対して、引用例1に記載されたものは、コネクタを用いるものかどうか明示されたものでなく、前記2枚の基板の間に所定間隔を維持するための支持部材を備えたものではない点で相違する。
(4-1)しかしながら、上記引用例3、6〜8に記載される如く、2枚の基板を所定間隔を介して重合するものにおいて、前記2枚の基板の間に、前記所定間隔を維持する支持部材を設けると共に、該支持部材に前記基板に接続される端子部をもつコネクタを取り付けることは、本件特許の出願前周知の事項と認められ、また、基板にリードを突出することは慣用技術であり、請求項4に係る発明はコネクタの延長端子部とリードとの接続部分の具体的構造を特定するものではなく、コネクタの延長端子部は基板の電気回路部分と電気的に接続されなければコネクタの端子として意味を持たないから、2枚の基板の所定間隔を維持するための支持部材を前記2枚の基板の間に設けると共に、該支持部材にモータ及びバッテリをブリッジ回路に接続するためのコネクタを取り付け、コネクタの延長端子部をブリッジ回路を設けた基板から突出するリードと接続する構成を採用することは、周知技術及び慣用技術に基づき当業者が容易に想到し得ることである。
また、相違点a,b,dにおける請求項4に係る発明の構成は、前説示のとおり格別のものではない。
(4-3) そして、本件請求項4に係る発明の作用効果は、上記引用例1に記載された事項及び上記周知事項及び慣用技術から予測し得る程度のものと認められる。
したがって、本件請求項4に係る発明は、上記引用例1に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)請求項5に係る発明について
(5-1)請求項1を引用する請求項5に係る発明と引用例1に記載されたものとを対比すると、上記相違点a〜dに加えて、請求項5に係る発明は、絶縁プリント基板が複数に分割され、分割された前記絶縁プリント基板の一部が、前記ブリッジ回路を備えた基板に対して水平方向に並列配置されたものであるのに対して、引用例1に記載されたものは、このような構成のものでない点で相違する。
(5-2)しかしながら、2枚の基板を水平方向に並列配置し、これら並列配置された基板に対して、所定間隔を介して第3枚目の基板を重合するという基板の配列構成が、上記引用例9に記載されているから、請求項5に係る発明において、絶縁プリント基板を複数に分割し、分割された前記絶縁プリント基板の一部を、前記ブリッジ回路を備えた基板に対して水平方向に並列配置した構成とすることは、上記引用例9に記載されたものに基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
また、相違点a〜dにおける請求項5に係る発明の構成は、前説示のとおり格別のものではない。
(5-3)そして、本件請求項5に係る発明の作用効果は、上記引用例1、9に記載された事項及び上記周知事項から予測し得る程度のものと認められる。
したがって、本件請求項5に係る発明は、上記引用例1、9に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)請求項6に係る発明について
(6-1)請求項1を引用する請求項6に係る発明と引用例1に記載されたものとを対比すると、上記相違点a〜dに加えて、請求項6に係る発明は、絶縁プリント基板が、電磁ノイズを遮断するためのシールド板で被覆されたものである点で相違する。
(6-2)しかしながら、電子機器を電磁ノイズを遮断するためのシールド板で被覆することは、慣用の技術であり、請求項6に係る発明の「前記絶縁プリント基板は、電磁ノイズを遮断するためのシールド板で被覆された」構成は、慣用の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
また、相違点a〜dにおける請求項6に係る発明の構成は、前説示のとおり格別のものではない。
(6-3) そして、本件請求項6に係る発明の作用効果は、上記引用例1に記載された事項及び上記周知事項及び慣用技術から予測し得る程度のものと認められる。
したがって、本件請求項6に係る発明は、上記引用例1に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
【6】むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1〜6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1〜6に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-05-29 
出願番号 特願平5-64289
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B62D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 川向 和実  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 鈴木 法明
鈴木 久雄
登録日 1999-09-24 
登録番号 特許第2983405号(P2983405)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 電動式パワーステアリング回路装置  
代理人 高瀬 彌平  
代理人 宮田 金雄  
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