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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1043917
審判番号 審判1999-6277  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-04-15 
確定日 2001-07-11 
事件の表示 平成 7年特許願第327701号「プラズマ酸化膜処理方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 6月24日出願公開、特開平 9-167755]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年12月15日の出願であって、その請求項1〜5に係る発明(以下、「本件発明1〜5」という。)は、平成10年2月2日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、それぞれ特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】基板側の電極である基板側電極と、該基板側電極に対峙している対基板側電極と、電源とを有すると共に、前記基板側電極の周辺部が炭化珪素で構成され、ガスをプラズマの状態で用いて試料に対してエッチング及びCVD処理を行なうためのプラズマ酸化膜処理装置において、CVD処理の際に生成される膜が二酸化珪素膜である場合にチャンバーエッチング処理を効率よく行なうためのプラズマ酸化膜処理方法であって、
前記基板側電極を前記電源に接続して電源基板電極として用い、
前記対基板側電極を、接地して接地電極として用い、
エッチングを行なう際に使用する前記ガスを、フロロカーボン系ガスに限定することを特徴とするプラズマ酸化膜処理方法。
【請求項2】電源と、基板側の電極である基板側電極と、該基板側電極に対峙した対基板側電極と、前記基板側電極又は前記対基板側電極のいずれか一方を前記電源に接続し且つ他方を接地する電源切換手段とを有すると共に、前記基板側電極の周辺部が炭化珪素で構成され、ガスをプラズマの状態で用いて試料に対してエッチング及びCVD処理を行なうためのプラズマ処理装置において、CVD処理の際に生成される膜が二酸化珪素膜である場合に、CVD処理及びチャンバーエッチングを効率よく行なうためのプラズマ酸化膜処理方法であって、
エッチングを行なう際に使用する前記ガスを、フロロカーボン系ガスに限定し、
CVD処理の際には、前記基板側電極を接地して接地基板電極とし、チャンバーエッチングの際には、前記基板側電極を前記電源に接続して電源基板電極とすることを特徴とするプラズマ酸化膜処理方法。
【請求項3】第1及び第2の電源と、基板側の電極である基板側電極と、該基板側電極に対峙した対基板側電極と、前記基板側電極に接続された第1の切換手段と、前記対基板側電極に接続された第2の切換手段とを有すると共に、該基板側電極の周辺部が炭化珪素で構成され、ガスをプラズマの状態で用いて試料に対してエッチング及びCVD処理を行なうためのプラズマ処理装置において、CVD処理の際に生成される膜が二酸化珪素膜である場合に、CVD処理及びチャンバーエッチングを効率よく行なうためのプラズマ酸化膜処理方法であって、
エッチングを行なう際に使用する前記ガスを、フロロカーボン系ガスに限定し、
CVD処理の際には、前記第1の切換手段により前記基板側電極を接地して接地基板電極とし、且つ、前記第2の切換手段により前記対基板側電極を前記第2の電源に接続して電源電極とし、
チャンバーエッチングの際には、前記第1の切換手段により前記基板側電極を前記第1の電源に接続して、電源基板電極とし、且つ、前記第2の切換手段により前記対基板側電極を接地して接地電極とすることを特徴とするプラズマ酸化膜処理方法。
【請求項4】請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のプラズマ酸化膜処理方法であって、
前記対基板側電極の周辺部も炭化珪素から構成することを特徴とするプラズマ酸化膜処理方法。
【請求項5】請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のプラズマ酸化膜処理方法であって、
高密度のプラズマを電子サイクロトロン共鳴により発生させて、該高密度のプラズマを用いて試料を処理することを特徴とするプラズマ酸化膜処理方法。」

2.刊行物に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由1に引用された刊行物1、2には次のような技術的事項が開示されている。

(1) 特開平6-84812号公報(以下、「引用例1」という。)には、「多電極プラズマ処理装置」について、図1、4とともに、次のイ〜チのとおりのことが記載されている。

イ.「支持体36は、囲いモジュール44を支持してチャック24を保持する棚46を含む。チャック24の底面46は、半導体ウェーハ22と接触する。熱容量の低いピン48、50は半導体ウエーハ22を支えてチャック24と接触させる。熱容量の低いピン48、50は、シャワーヘッド注入器54を含むシャワーヘッド組立体52で支持されている。」(第4頁左欄第32〜39行)

ロ.「プラズマ処理環境のハードウエア構成は、無線周波数エネルギー源又は電気接地に接続する3本の電極線を含む。これらは、(中略)シャワーヘッド組立体52への番号76で示す電極線E2と、チャック24に接続する、以前番号26で示した電極線E3とを含む。」(第4頁右欄第4〜10行)

ハ.「2つの高周波源100、132と100kHz低周波RF源108とを用いることにより、プラズマ処理およびその場で行われるクリーニングの多くの組み合わせができる。3つの電極E1、E2、E3のどれも、浮遊リード線、高周波RF源、低周波RF源、接地に、選択的に接続してよい。」(第5頁左欄下から第8〜2行)

ニ.「製作プロセス方法1(中略)電極線E276をスイッチ116により接点118で接地110に、また電極線E326をスイッチ134により接点138を経由して高周波RFチューナー122に接続する。これはプラズマ強化化学気相堆積(PECVD)の従来のモードで、」(第5頁右欄第2〜9行)

ホ.「製作プロセス方法4(中略)電極線E276を高周波RFチューナー122に、電極線E3を接地に接続する。これにより、ウエーハ上のイオン・エネルギーを減少して堆積またはエッチングを行なうことのできるプラズマ・プロセス環境を作る。」(第5頁右欄下から第7〜2行)

ヘ.「望ましい実施態様により、ウエーハのエッチングおよび堆積プロセスと共に実時間の効果的なその場での室のクリーニングができる。(中略)クリーニングは、二酸化珪素や窒化珪素やアモルファス珪素の堆積などの各PECVDプロセスの後に行なってよく、処置室10の内表面の残存堆積物を全て除去する。(中略)これらの残存堆積物を除去するため、室クリーニング剤はアルゴンとCF4、アルゴンとNF3、アルゴンとSF5の組み合わせなどのプラズマを含んでよい。」(第6頁右欄第5〜19行)

ト.「クリーニング・プロセス方法3(中略)E276を接地に、電極線E326を低周波RFチューナー104に接続する。この接続により、RFチャック24に残存堆積物があれば全てクリーニングする。」(第6頁右欄第34〜38行)

チ.「図10は、二酸化珪素堆積用の望ましい実施態様を用いて、クリーニング及びPECVD処理を実時間で時分割多重化する動作を示す。(中略)線208は、時刻t0でゼロレベル204で始まるNF3クリーニングガスの流量を表わす。(第7頁右欄第17〜24行)

以上の記載をまとめると、上記引用例1のニの部分には、製作プロセス方法1として、「電極線E276をスイッチ116により接点118で接地110に、また電極線E326をスイッチ134により接点138を経由して高周波RFチューナー122に接続する」ことが記載されており、そのトの部分には、クリーニング・プロセス方法3として「E276を接地に、電極線E326を低周波RFチューナー104に接続する」ことが記載されている。そしてこの製作プロセス方法及びクリーニング方法については、そのハの部分に記載されているように適宜「組み合わせ」ることができる。また、そのロの部分の記載から、「電極線E276」は「シャワーヘッド組立体52」に、「電極線E326」は「チャック24」にそれぞれ接続されている。さらに、そのヘの部分の記載から、クリーニングの際に使用するガスは、「アルゴンとCF4、アルゴンとNF3、アルゴンとSF5の組み合わせなど」である。

したがって、引用例1のイの部分の記載及び上記のまとめの記載を総合すると、製作プロセス方法1及びクリーニング・プロセス方法3を選択した場合として、引用例1には、
A.「チャック24と、チャック24に対峙しているシャワーヘッド組立体52と、RFチューナー(高周波及び低周波)とを有すると共に、ガスをプラズマの状態で用いて試料に対してエッチング及びPECVDを行うためのプラズマ酸化膜処理装置において、PECVD処理の際に生成される膜が、二酸化珪素や窒化珪素やアモルファス珪素である場合にクリーニングプロセスを効果的に行うためのプラズマ酸化膜処理方法であって、チャック24をRFチューナー(高周波及び低周波)に接続し、シャワーヘッド組立体52を接地に接続し、クリーニング・プロセスの際に使用するガスが、アルゴンとCF4、アルゴンとNF3、アルゴンとSF5の組み合わせなどであるプラズマ酸化膜処理方法」が記載されているものと認める。

また、引用例1のホの部分には、製作プロセス方法4として、「電極線E276を高周波RFチューナー122に、電極線E3を接地に接続する」ことが記載され、そのトの部分には、クリーニング・プロセス方法3として「E276を接地に、電極線E326を低周波RFチューナー104に接続する」ことが記載されている。そして、引用例1のロ及びニの部分には、シャワーヘッド組立体52に接続する電極線E276がスイッチ116に接続され、チャック24に接続する電極線E326がスイッチ134に接続されていることが記載されている。

したがって、製作プロセス方法4及びクリーニング・プロセス方法3を選択した場合として、引用例1には、
B.「RFチューナー104と、RFチューナー122と、チャック24と、チャック24に対峙しているシャワーヘッド組立体52と、チャック24に接続されたスイッチ134と、シャワーヘッド組立体52に接続されたスイッチ116とを有すると共に、ガスをプラズマの状態で用いて試料に対してエッチング及びPECVDを行うためのプラズマ酸化膜処理装置において、PECVD処理の際に生成される膜が、二酸化珪素や窒化珪素やアモルファス珪素である場合にクリーニング・プロセスを効果的に行うためのプラズマ酸化膜処理方法であって、クリーニング・プロセスの際に使用するガスが、アルゴンとCF4、アルゴンとNF3、アルゴンとSF5の組み合わせなどであり、PECVD処理の際には、スイッチ134によりチャック24を接地し、且つ、スイッチ116によりシャワーヘッド組立体52をRFチューナー122に接続し、クリーニング・プロセスの際には、スイッチ134によりチャック24をRFチューナー104に接続し、且つスイッチ116によりシャワーヘッド組立体52を接地するようにした、プラズマ酸化膜処理方法」が記載されているものと認める。

(2) 特開平2-70066号公報(以下、「引用例2」という。)には、「プラズマCVD装置」について、第1図とともに、次のリ〜ヲのとおりのことが記載されている。

リ.「プラズマCVD装置でシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜を連続して生成すると、電極などに反応生成物が付着し、ある付着量以上になると剥離して、プラズマ放電を阻害する。このため、所定枚数のウエアについて成膜処理が行われたら、プラズマエッチングにより電極などをクリーニングしなければならない。」(第2頁左上欄下から第7行〜最下行)

ヌ.「この発明は、接地基板電極を構成する金属製均熱板を有し、この金属製均熱板を加熱するための加熱手段を有するサセプタと、このサセプタ上の接地基板電極に対峙する高周波電極とを有するプラズマCVD装置において、前記サセプタ上の金属製均熱板の周囲は非金属系絶縁材のカバーで包囲されていることを特徴とする(中略)。この非金属系絶縁材のカバーは炭化ケイ素から構成されていることが好ましい。」(第2頁右上欄下から第3行〜左下欄第7行)

ル.「プラズマエッチングクリーニングに使用されるフロン-14(CF4)と絶縁カバーの材質のアルミナ(Al2O3)とが反応し、AlF3 が生成され、絶縁カバー全体を薄く覆ってしまうものと思われる。AlF3 は表面エネルギーが小さいために、この上にプラズマシリコン酸化膜またはプラズマシリコン窒化膜が堆積して膜厚が厚くなっていくと膜剥離が起こるものと考えられる。従来の金属のアルミナに代えて、非金属の炭化ケイ素(SiC)を使用すれば前記のような問題は起こらない。」(第2頁左下欄下から第4行〜右下欄第7行)

ヲ.「金属製シャワー電極22及び金属導体26は絶縁リング30により保持されている。(中略)また従来の装置では、前記の絶縁リング30はアルミナ(Al2O3)で出来ていたが、これを炭化ケイ素に代えることもできる。」(第3頁左上欄下から第2行〜右上欄下から第3行)

以上の記載をまとめると、引用例2には、
C)プラズマCVD装置において、CVD処理の際に生成される膜の材質が「二酸化珪素」である場合に、金属製均熱板の周囲を包囲するカバーの材質を「炭化珪素」で構成し、チャンバーエッチングの際に使用されるガスの成分をCF4 に限定することが記載されているものと認める。

3.対比
3-1.本件発明1について

(一致点・相違点)
本件発明1と引用例1に記載された発明とを比較すると、引用例1には、Aの部分で示した発明が記載されており、引用例1に記載された発明における「チャック24」、「シャワーヘッド組立体52」、「RFチューナー(高周波及び低周波)」、「PECVD」、及び「クリーニング・プロセス」は、それぞれ、本件発明1における「基板側電極」、「対基板側電極」、「電源」、「CVD処理」、及び「チャンバーエッチング」に相当するから、
両者は、基板側の電極である基板側電極と、該基板側電極に対峙している対基板側電極と、電源とを有すると共に、ガスをプラズマ状態で用いて試料に対してエッチング及びCVD処理を行うためのプラズマ酸化膜処理装置において、チャンバーエッチング処理を効率よく行うためのプラズマ酸化膜処理方法であって、前記基板側電極を前記電源に接続して電源基板電極として用い、前記対基板側電極を接地して接地電極として用いるようにした、プラズマ酸化膜処理方法である点で一致し、
CVD処理の際に生成される膜と基板側電極の周辺部の材質、チャンバーエッチングを行なう際に使用されるガスの組み合わせについて、本件発明1は、CVD処理の際に生成される膜の材質を「二酸化珪素」に、基板側電極の周辺部の材質を「炭化珪素」に、チャンバーエッチングを行なう際に使用されるガスの成分を「フロロカーボン系ガス」に限定されているのに対し、引用例1に記載された発明は、生成される膜すなわち堆積膜が、「二酸化珪素」、「窒化珪素」、「アモルファス珪素」のいずれかであり、チャンバーエッチングを行なうの際に使用されるガスも「アルゴンとCF4、アルゴンとNF3、アルゴンとSF5の組み合わせなど」としており、さらに、チャック24の周辺部、すなわち基板側電極の周辺部の材質については、何ら言及していない点で相違する。

(相違点の検討)
次に、相違点について検討する。相違点に関して、引用例1のチの部分には、堆積膜、すなわちCVD処理の際に生成される膜が二酸化珪素膜である場合に、チャンバーエッチングを行なう際に使用されるガスとして、NF3を使用する例が記載されている。このことからみて、引用例1に記載された発明においては、CVD処理の際に生成される膜とチャンバーエッチングを行なう際に使用されるガスの組み合わせについて、CVD処理の際に生成される膜として、二酸化珪素、窒化珪素、アモルファス珪素のいずれかの中から1つを選択し、チャンバーエッチングを行なう際に使用されるガスとして、CF4、NF3、SF5のいずれかの中から1つを選択しうるものと認める。
一方、引用例2には、Cの部分で示した発明が記載されており、引用例2に記載された発明における「カバーで包囲されている金属製均熱板の周囲」は、本件発明1における「基板側電極の周辺部」に相当するから、引用例2には、プラズマCVD装置において、CVD処理の際に生成される膜の材質が「二酸化珪素」である場合に、基板側電極の周辺部の材質を「炭化珪素」で構成し、チャンバーエッチングを行なう際に使用されるガスの成分をCF4 に限定することが記載されているものと認める。
そして、引用例1及び2のものは、いずれも、プラズマCVD装置においてチャンバーエッチング処理によりCVD処理の際に生成される膜の除去を効率的に行うためのものであり、引用例1に記載された発明において、そのCVD処理の際に生成される膜の除去を更に効果的なものとするために、そのCVD処理の際に生成される膜の材質と、基板側電極の周辺部の材質と、チャンバーエッチングを行なう際に使用されるガスの成分の組み合わせとして、前記記載のものから、引用例2に記載された、二酸化珪素と、炭化珪素と、CF4の組合わせを採用して、本件発明1のようにすることは、当業者ならば容易になし得たものである。
しかも、本件発明1の構成による格別顕著な作用効果は認められない。

(まとめ)
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-2.本件発明2について

(一致点・相違点)
本件発明2は、本件発明1において、基板側電極又は対基板側電極のいずれか一方を電源に接続し且つ他方を接地する電源切換手段を有すると共に、CVD処理の際には、前記基板側電極を接地して接地基板電極とし、チャンバーエッチングを行なう際には、前記基板側電極を前記電源に接続して電源基板電極とする点を新たな構成として付加したものであり、それ以外の構成については、本件発明1と何ら差異がないものと認める。

(相違点の検討)
そこで、新たに付加された構成の部分について検討すると、引用例1には、Bの部分で示した発明が記載されており、引用例1に記載された発明における「RFチューナー」、「チャック24」、「シャワーヘッド組立体52」、「スイッチ134、116」、「PECVD」及び「クリーニング・プロセス」は、それぞれ、本件発明2における「電源」、「基板側電極」、「対基板側電極」、「電源切換手段」、「CVD処理」及び「チャンバーエッチング」に相当するから、引用例1に記載された発明も、基板側電極又は対基板側電極のいずれか一方を電源に接続し且つ他方を接地する電源切換手段を有すると共に、CVD処理の際には、前記基板側電極を接地して接地基板電極とし、チャンバーエッチングを行なう際には、前記基板側電極を前記電源に接続して電源基板電極とするようにしたものであり、そうすると、新たに付加された構成の部分については、両者の間に、何ら差異が認められない。
したがって、本件発明2と引用例1に記載された発明との相違点は、本件発明1と引用例1に記載された発明との相違点と一致しており、その相違点のようにすることは、本件発明1の場合と同じ理由により、当業者ならば容易になし得たものである。
しかも、本件発明2の構成による格別顕著な作用効果は認められない。

(まとめ)
以上のとおりであるから、本件発明2は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-3.本件発明3について

(一致点・相違点)
本件発明3は、本件発明1において、第1及び第2の電源と、基板側電極に接続された第1の切換手段と、対基板側電極に接続された第2の切換手段とを有すると共に、CVD処理の際には、前記第1の切換手段により前記基板側電極を接地して接地基板電極とし、且つ、前記第2の切換手段により前記対基板側電極を前記第2の電源に接続して電源電極とし、チャンバーエッチングを行なう際には、前記第1の切換手段により前記基板側電極を前記第1の電源に接続して、電源基板電極とし、且つ、前記第2の切換手段により前記対基板側電極を接地して接地電極とする点を新たな構成として付加したものであり、それ以外の構成については、本件発明1と何ら差異がないものと認める。

(相違点の検討)
そこで、新たに付加された構成の部分について検討すると、引用例1には、Bの部分で示した発明が記載されており、引用例1に記載された発明における「RFチューナー104」、「RFチューナー122」、「チャック24」、「シャワーヘッド組立体52」、「スイッチ134」、「スイッチ116」、「PECVD」及び「クリーニング・プロセス」は、それぞれ、本件発明3における「第1の電源」、「第2の電源」、「基板側電極」、「対基板側電極」、「第1の切換手段」、「第2の切換手段」、「CVD処理」及び「チャンバーエッチング」に相当するから、引用例1に記載された発明も、第1及び第2の電源と、基板側電極に接続された第1の切換手段と、対基板側電極に接続された第2の切換手段とを有すると共に、CVD処理の際には、前記第1の切換手段により前記基板側電極を接地して接地基板電極とし、且つ、前記第2の切換手段により前記対基板側電極を前記第2の電源に接続して電源電極とし、チャンバーエッチングを行なう際には、前記第1の切換手段により前記基板側電極を前記第1の電源に接続して、電源基板電極とし、且つ、前記第2の切換手段により前記対基板側電極を接地して接地電極とするようにしたものであり、そうすると、新たに付加された構成の部分については、両者の間に、何ら差異が認められない。
したがって、本件発明3と引用例1に記載された発明との相違点は、本件発明1と引用例1に記載された発明との相違点と一致しており、その相違点のようにすることは、本件発明1の場合と同じ理由により、当業者ならば容易になし得たものである。
しかも、本件発明3の構成による格別顕著な作用効果は認められない。

(まとめ)
以上のとおりであるから、本件発明3は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-4.本件発明4について

(一致点・相違点及び相違点の検討)
本件発明4は、本件発明1乃至3において、対基板側電極の周辺部も炭化珪素から構成する点を新たな構成として付加したものであり、それ以外の構成については、本件発明1乃至3と何ら差異がないものと認める。
そこで、新たに付加された構成の部分について検討すると、引用例2のヲの部分には、「金属製シャワー電極22及び金属導体26」を保持する「絶縁リング30はアルミナ(Al2O3)で出来ていたが、これを炭化ケイ素に代えることもできる。」と記載されている。そして、引用例2に記載された発明における「絶縁リング」は、本件発明4における「対基板側電極の周辺部」に相当する。
そうすると、引用例1に記載された発明において、そのCVD処理の際に生成される膜の除去を更に効果的なものとするために、そのCVD処理の際に生成される膜の材質と、基板側電極の周辺部の材質と、チャンバーエッチングを行なう際に使用されるガスの成分の組み合わせとして、引用例2に記載された二酸化珪素と、炭化珪素と、CF4の組合わせを採用する際に、基板側電極の周辺部だけでなく、対基板側電極の周辺部も炭化珪素で構成して、本件発明4のようにする程度のことは、当業者ならば容易になし得たものである。
しかも、本件発明4の構成による格別顕著な作用効果は認められない。

(まとめ)
以上のとおりであるから、本件発明4は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-5.本件発明5について

(一致点・相違点及び相違点の検討)
本件発明5は、本件発明1乃至4において、高密度のプラズマを電子サイクロトロン共鳴により発生させて、該高密度のプラズマを用いて試料を処理する点を限定したものであるが、プラズマ酸化膜処理装置として、電子サイクロトロン共鳴によるものは、本願の出願前周知の構成であり(必要ならば、前審で既に引用されている、特開平4-131379号公報、特開平4-214873号公報を参照されたい。)、チャンバーエッチング処理を効率よく行なうことは、電子サイクロトロン共鳴によるプラズマ酸化膜装置とそれ以外のプラズマ酸化膜処理装置の間において共通の課題であるから、プラズマ酸化膜装置を電子サイクロトロン共鳴によるものに限定する点に、何ら困難性は見いだせない。
しかも、本件発明5の構成による格別顕著な作用効果は認められない。

(まとめ)
したがって、本件発明5は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本件発明1乃至5は、いずれも、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-04-19 
結審通知日 2001-05-08 
審決日 2001-05-21 
出願番号 特願平7-327701
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子▲高崎▼ 久子  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 中村 朝幸
中西 一友
発明の名称 プラズマ酸化膜処理方法  
代理人 京本 直樹  
代理人 河合 信明  
代理人 福田 修一  

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