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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D
管理番号 1044022
審判番号 不服2000-9234  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-06-21 
確定日 2001-08-15 
事件の表示 平成 9年特許願第315046号「作業車輌の走行伝動装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 5月12日出願公開、特開平10-119812]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年4月24日に出願された特願平2-109890号を、平成9年11月17日に分割して新たな特許出願としたものであって、本願の請求項1に係る発明は、平成12年7月19日付けの手続補正書によって全文補正された明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。
「センターギヤ14と、該センターギヤ14に対して逆回転可能な左右の回転体7、7と、前記センターギヤ14と回転体7、7との何れかに選択的に係合可能な左右のサイドクラッチギヤ19、19と、該サイドクラッチギヤ19、19に噛み合う左右の出力ギヤ21、21と、前記左右の回転体7、7を逆回転状態に切換え可能な伝動状態切換え手段Sを備えた作業車輌であって、前記回転体7、7とクラッチギヤ19、19との間に多板式の動力伝達具3、3を設けたことを特徴とする作業車輌の走行伝動装置。」

2.引用刊行物及びその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願である特願平2-109890号の出願前である昭和58年4月1日に日本国内において頒布された実願昭56-145537号(実開昭58-48569号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、移動農機における超信地旋回装置に関して、次の事項が記載されている。
a)「1はミッションの入力軸2に取付けた入力プーリーであって、入力軸2のギヤ3は第1変速軸4の固定ギヤ5に噛合しており、一方の変速ギヤ6を第2変速軸7のギヤ8に噛合させると、ギヤ9はサイドクラッチ軸10のセンターギヤ11を回転させ、該センターギヤ11の両側に軸支されているサイドクラッチギヤ12,12をセンターギヤ11の側面のクラッチに噛合させると、それらに噛合した単軸ギヤ13,13及び車軸14,14が正回転して機体は1速で前進する。」(第3頁6〜15行)
b)「前記第2変速軸7にはミッションケースの内側面に設けたクラッチ爪19と前記ギヤ17の側面のクラッチ爪17aとに断続する超信地クラッチギヤ20が回転並びに摺動自在に軸支されており、該超信地クラッチギヤ20を左右動させるシフターの軸21に固定したシフターアーム22は、第2図に示す如く操縦部に設けた超信地ペタル23と油圧シリンダー24のピストン24aとに連繋してある。」(第4頁1〜9行)
c)「油圧シリンダー24のピストン24aはシフターアーム22を押して超信地クラッチギヤ20をギヤ17のクラッチ爪17aに噛合させ、超信地クラッチギヤ20は、中間軸30を駆動し、その両端に固定したギヤ31,31は逆転ギヤ32,32を逆回転駆動する。
この状態でサイドクラッチレバーdを操作して一方のサイドクラッチギヤ12をそれと対向する逆転ギヤ32に噛合させると一方の車軸ギヤ13が逆回転し、機体は超信地旋回する。」(第5頁12行〜第6頁1行)
d)「なお、第1図に示す如く超信地クラッチギヤ20をクラッチ爪19に噛合させた状態でサイドクラッチギヤ12を逆転ギヤ32に噛合させると、その側の車軸14が停止し、機体は信地旋回する。」(第6頁10行〜13行)」
e)第1図には、サイドクラッチギヤ12,12と逆転ギヤ32,32がセンターギヤ11の左右に形成され、逆転ギヤ32,32とクラッチギヤ12、12との間にクラッチ爪17aと同じような動力伝達具が介在していることが記載されている。
上記引用例の移動農機における超信地旋回装置は、上記a)、c)、e)の記載から、センターギヤ11と、該センターギヤ11に対して逆回転可能な左右の逆転ギヤ32,32と、前記センターギヤ11と逆転ギヤ32,32との何れかに選択的に係合可能な左右のサイドクラッチギヤ12、12と、該サイドクラッチギヤ12、12に噛み合う左右の単軸ギヤ13,13を有する走行伝動装置であり、上記b)〜e)の記載から、左右の逆転ギヤ32,32を、超信地クラッチギヤ20を左右動させることによって逆回転状態に切換える伝動状態切換え手段を備え、c)、e)の記載から、逆転ギヤ32,32とクラッチギヤ12、12との間に動力伝達具が設けられているものと認める。
したがって、上記引用例には、
「センターギヤ11と、該センターギヤ11に対して逆回転可能な左右の逆転ギヤ32,32と、前記センターギヤ11と逆転ギヤ32,32との何れかに選択的に係合可能な左右のサイドクラッチギヤ12、12と、該サイドクラッチギヤ12、12に噛み合う左右の単軸ギヤ13,13と、前記左右の逆転ギヤ32,32を逆回転状態に切換え可能な伝動状態切換え手段を備えた移動農機であって、前記逆転ギヤ32,32とクラッチギヤ12、12との間に動力伝達具を設けた移動農機の走行伝動装置。」
の発明が記載されているものと認める。

3.本願発明と引用例に記載された発明の対比
本願発明と、引用例に記載された発明とを対比すると、引用例に記載された発明の「逆転ギヤ」、「単軸ギヤ」は、それぞれ、本願発明の「回転体」、「出力ギヤ」 に相当し、移動農機は作業車輌の一種であるから、本願発明は、引用例に記載された発明と、
「センターギヤと、該センターギヤに対して逆回転可能な左右の回転体と、前記センターギヤと回転体との何れかに選択的に係合可能な左右のサイドクラッチギヤと、該サイドクラッチギヤに噛み合う左右の出力ギヤと、前記左右の回転体を逆回転状態に切換え可能な伝動状態切換え手段を備えた作業車輌であって、前記回転体7とクラッチギヤとの間に動力伝達具を設けた作業車輌の走行伝動装置。」
である点で一致し、以下の相違点で相違している。
<相違点>
本願発明の動力伝達具は、多板式の動力伝達具であるのに対し、引用例に記載された発明の動力伝達具は、どのような動力伝達具であるかが明らかでない点。

4.相違点の検討
作業車輌の走行伝動装置において、多板式の動力伝達具を、逆回転可能な回転体と車軸に回転を伝達するクラッチギヤとの間に設けることは周知技術(例えば、特開平1-101273号公報における多板クラッチ5a、5b、特開昭49-7930号公報における多板クラッチ28,38を参照)であり、この技術を、引用例の発明の逆転ギヤ32,32とクラッチギヤ12、12との間の動力伝達に適用することに、格別な困難性は認められない。してみれば、上記相違点は上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。
そして、本願発明の効果も、上記引用例に記載された発明と上記周知技術から、当業者が容易に予測しうる程度のものでしかない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に記載された発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-05-09 
結審通知日 2001-05-29 
審決日 2001-06-11 
出願番号 特願平9-315046
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤井 昇  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 刈間 宏信
ぬで島 慎二
発明の名称 作業車輌の走行伝動装置  

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