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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1044274
審判番号 不服2000-3341  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-10-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-03-09 
確定日 2001-08-29 
事件の表示 平成 4年特許願第 55652号「非接触ICカードによる自動車管理システム」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年10月 8日出願公開、特開平 5-257941]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明

本願は、平成4年3月13日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年9月27日付けの手続補正によって補正された明細書と図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。

「少なくとも車両運転者が携帯し送受信手段を内蔵したICカードと、該ICカードと非接触で通信を行う外部親装置とからなり、前記ICカードは、少なくとも運転免許証記載情報を格納するターミナルメモリと、前記ターミナルメモリに格納された運転免許証記載情報を前記送受信手段を通じて前記外部親装置へ送信する送受信制御手段とを有し、前記外部親装置は、少なくとも運転免許証に対応する運転者履歴情報を格納するホストメモリと、前記ICカードからの運転免許証記載情報を受信した際に前記ホストメモリから前記運転免許証記載情報に対応した運転車履歴情報を索出し照合するホスト制御部とを有していることを特徴とする非接触ICカードによる自動車管理システム。」

2.引用例

(引用例1)

これに対し、原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開昭60-51988号公報(以下、「引用例1」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

「第2図において、(1)は本社または営業所に設置する基地局、(11)は基地局空中線、(12)は送受信機、(13)は送受信機(12)と後述の中央処理装置(14)との間の信号制御を行う通信制御装置、(14)はデータ処理などを行う中央処理装置、(15)は運転手乗務状況等を表示するCRT表示装置、(18)はプリンターである。(17)は車載機(6)と情報の送受信の起動、表示制御等を行う操作器である。(6)は車両に搭載する車載機、(7)はIDカードであり、(61)は運転手がIDカードを車外から挿入できるIDカード読取部、(62)は読取ったIDカード内容を処理したり記憶部データの読み出し、書き込みの制御を行う情報処理部、(63)はデータを記憶する記憶部、(64)はカード部(61)で読取った内容を情報処理部(62)で処理し、予め登録した内容と一致したら、動作する継電器部であり、この継電器部(64)の動作により乗降扉を開くことができるようになり、かつ、後述する送受信部(65)へ電気供給制御も行う。(65)は基地局(1)からのポーリング信号を受信し、折り返し記憶部(63)に一時記憶した内容を送信する送受信部であり、(66)は車載機空中線である。(67)は車載機(8)の電源部であり、通常、バッテリーから直接、接続されており、IDカードの挿入に対して車載機(6)がいつでも動作できるようになっている。」(公報第2頁右上欄第12行〜左下欄15行)
「IDカード(7)挿入により、運転手の識別番号、カードの挿入時刻、抜き取り時刻(時計回路を利用して行うが、ここでは省略する)及び車番等の情報が情報処理部(62)経由で記憶部(63)に記憶される。従って、車載機(6)側では、この状態で基地局(1)から信号受信待機に入る。
(略) 本社または営業所に設置された基地局(1)の操作器(17)側で、各車両(5)に対して乗務情報を送信しなさい、というポーリング信号を送信する。操作器(17)でポーリング信号送出の起動がかけられると、中央処理装置(14)経由で通信制御装置(13)に信号が送られ、更に送受信機(12)を通じて基地局空中線(11)からポーリング信号が出される。車載機(6)がこのポーリング信号を受信すると、自動的に以下の手順をふんで基地局に情報送信する。
このポーリング信号を各車両(5)の車載機(6)の空中線(66)で受信すると、送受信部(65)経由で情報処理部(62)に信号が送られる。
この信号受信タイミング後に各車載機から一斉に送信したのでは基地局側で混信するので、予めの所定時間に従って、各車載機(6)は記憶部(63)に、一時記憶されている各運転手の乗務情報を読出し、再度情報処理部(62)でデータ処理後、送受信部(65)を通じて空中線(66)から折り返し基地局(1)に対して乗務情報を送信する。各車載機(6)から送出される乗務情報は基地局空中線(11)経由で送受信機(12)で受信される。受信した信号は通信制御装置(13)経由で中央処理装置(14)に送られる。ここでデータ処理後、所用情報は記憶されると共に、所定の形式に従い、CRT表示装置(15)に各車両(5)の運転手の乗務情報を表示する。必要ならばプリンター(18)を使い記録もできる。」(公報第3頁左上欄第16行〜左下欄12行)

したがって、引用例1には、「運転手が携帯するIDカードと、車載機と、基地局からなり、前記車載機は、前記IDカード内容を読み取るIDカード読取部と、前記IDカード内容を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された乗務情報を基地局に送信する送受信部と、読取ったIDカード内容を処理したり記憶部に記憶された乗務情報の読み出し、書き込みの制御を行う情報処理部とを有し、前記基地局は、前記車載機からの乗務情報を受信する送受信機と、送受信機で受信した乗務情報のデータ処理を行う中央処理装置とを備えた運転手乗務管理装置。」(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

(引用例2)

また、同じく原査定の拒絶の理由において引用された、本願出願前に国内で頒布された刊行物である特開昭63-317876号公報(以下、「引用例2」という。)には、
「通行管理装置の主要部には、非接触式IDカード(1)とカードリーダ(3)とで構成されており、IDカード(1)内にはカードリーダ(3)との間で通信を行うためのアンテナ(2)と、登録された個人情報コード、いわゆる、IDコードを記憶するEPROM(6)と、アンテナ(2)から入力されたコードとEPROM(6)内に登録されたコードとを比較して両者が一致するか否かを判定するためのCPU(5)とが設けられている。
外部カードリーダ(3)からの送信信号(4)をアンテナ(2)が受信すると、この受信信号はコード化されてCPU(5)に送られる。このコードと予めEPROM(6)に登録されたコードとはCPU(5)により比較され、両者が一致した場合にはEPROM(6)内に登録された個人情報データはアンテナ(2)を介してカードリーダ(3)に発信される。
外部カードリーダ(3)ではこの子人情報データにより通行許可の判定を行い、図示しない扉等に解錠指令あるいは計算機へ通行不許可のアラーム等を発報する。」(公報第1頁右下欄第8行〜2頁左上欄第9行)
と記載があり、引用例2には、「非接触式IDカードを用いた管理装置において、非接触式IDカードは、個人情報を格納したEPROMと、カードリーダとの間で通信を行うアンテナと、メモリに格納された個人情報をアンテナを通じて外部端末機へ送信するCPUとを有し、カードリーダは、非接触式IDカードとの間で非接触で個人情報を送受信する手段を有することを特徴とする非接触式IDカードを用いた管理装置」(以下、「引用例2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.本願発明と引用例1記載の発明との対比

なお、上記特許請求の範囲の請求項1中の「ICカードと非接触で通信を行う外部親装置とからなり」の構成要素(以下、「当該構成要素」という。)の意味は、他の構成要素である「前記ICカードは、(略)前記ターミナルメモリに格納された運転免許証記載情報を前記送受信手段を通じて前記外部親装置へ送信する送受信制御手段とを有し」、「前記外部親装置は、(略)前記ICカードからの運転免許証記載情報を受信した際に」及び「非接触ICカードによる自動車管理システム」の記載からみて、非接触ICカードが外部親装置へ運転免許証記載情報を送信するとの意味であると解せられるが、
このような意味と解すると、非接触ICカードの送受信手段による通信可能な距離的範囲は近傍に限られていることが技術常識であることと矛盾が生じる。そこで、発明の詳細な説明中の当該構成要素に関連する記載を参酌して、当該構成要素の意味を検討する。
明細書段落43に、「図2は、本実施例1における非接触ICカードシステムの概略構成図である。 本実施例1の運転免許証管理システムは、非接触ICカード9、外部親装置としてのホストコンピュータ12、非接触ICカード9から受信した情報をホストコンピュータ12へ転送する外部端末機11とから構成される。」、
同48に、「次に、本実施例1における外部端末機11は、通信機17、プロセッサ18、メモリ19、テンキー20、ディスプレイ21を有し、これらは相互にデータバスによりデータの授受を行える。また、外部端末機11は、警察官による携帯が可能なものであることが好ましいが、警察車に固定してもさしつかえない。」、
同52に、「送受信親機22は、外部端末機11との間で非接触でデータの送受信を行うものである。ホストメモリ24は、運転免許証に対応する運転者の運転履歴情報を格納する。」の記載があり、
この記載からみて当該構成要素は、非接触ICカードと、外部端末機と外部親装置とからなり、その外部親装置は、外部端末機との間で非接触でデータの送受信を行う通信機を備えることを意味していると解した。

次に、本願発明(前者)と引用例1記載の発明(後者)とを対比すると、

(イ)後者において、「運転手が携帯するIDカード」は、運転手が携帯し管理に用いられるものであって、IDカード読取部によってIDカード内容が読み取られるものであるから、後者の「運転手が携帯するIDカード」は、その機能からみて前者の「車両運転者が携帯するカード」に相当し、

(ロ)後者において、車載機は、運転手が携帯するIDカードのカード内容を読取り、読み取ったカード内容を記憶部に記憶し、記憶部に記憶された情報を基地局に送信する機能を有するものであるから、後者の「記憶部」、「送受信部」、「車載機」は、その機能からみて前者の「メモリ」、「通信機」、「外部端末機」に相当し、

(ハ)後者において、基地局は、車載機からの情報を受信し、受信したカード内容について中央処理装置によりデータ処理を行う機能を有するものであるから、後者の「送受信機」、「中央処理装置」、「基地局」は、その機能からみて前者の「送受信親機」、「ホスト制御部」、「外部親装置」に相当し、

(ニ)後者の「運転手乗務管理装置」も、カード、外部端末機及び外部親装置を用いて車両運転者の管理を簡略化したものであるから、前者の「自動車管理システム」に相当する。

よって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]

「車両運転者が携帯するカードと、外部端末機の備える通信機を介して非接触で通信を行う外部親装置とからなり、
外部親装置は、外部端末機からのカード内容を受信した際にデータ処理を行うホスト制御部とを有していることを特徴とするカードによる自動車管理システム。」

[相違点]

(1)前者は、車両運転者が携帯するカードを非接触ICカードとし、非接触ICカードが、情報を格納するターミナルメモリと、送受信手段と、ターミナルメモリに格納された情報を送受信手段を通じて外部端末機へ送信する送受信制御手段とを有し、外部端末機は非接触ICカードとの間で非接触で通信を行う通信機とを有する構成であるのに対して、後者は、そのような構成を有していない点。

(2)前者は、カードに運転免許証記載情報を格納し、外部親装置は運転免許証に対応する運転者履歴情報を格納するホストメモリとを有することとし、これにより、外部親装置のホスト制御部は、カードからの運転免許証記載情報に対応した運転車履歴情報を索出し照合する構成であるのに対して、後者は、そのような構成を有していない点。

4.当審の判断

上記相違点について検討する。

相違点(1)について、

引用例2には、非接触ICカードを用いた管理装置において、非接触ICカードは、個人情報を格納したメモリと、送受信部と、メモリに格納された情報を送受信手段を通じて外部端末機へ送信する送受信制御手段とを有し、外部端末機は非接触ICカードとの間で非接触で個人情報を受信する手段を有するように構成することが記載されているから、後者の自動車管理システムに引用例2記載の発明を採用し、前者の構成とすることは、当業者が容易に推考できたものと認める。

相違点(2)について、

車両運転者が携帯するカードに運転免許証記載情報を格納し、ホストコンピュータにおいては、カードからの運転免許証記載情報に基づいて運転免許に関する情報を読出して照会する処理を行うことは、本願出願前に周知の技術手段(例えば、特開昭63-128472号公報参照)であり、ホストコンピュータを索出照合の対象となる情報を格納するホストメモリを有する構成とすることも当業者が通常行うことであるから、後者の自動車管理システムに当該周知の技術手段を採用し、前者の構成とすることは、当業者が容易に推考できたものと認める。

そして、前者の効果は、後者、引用例2記載の発明及び周知の技術手段に記載の発明の効果から予測できる程度のものと認める。

5.むすび

したがって、本願発明は、引用例1及び2並びに周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-06-12 
結審通知日 2001-06-19 
審決日 2001-07-09 
出願番号 特願平4-55652
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 相田 義明岩間 直純  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 鳥居 稔
石川 正二
発明の名称 非接触ICカードによる自動車管理システム  
代理人 遠山 勉  

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