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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G03G 審判 全部申し立て 2項進歩性 G03G |
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管理番号 | 1044552 |
異議申立番号 | 異議2000-70158 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1990-11-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-01-18 |
確定日 | 2001-03-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2935870号「剥離剤塗布装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2935870号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2935870号発明は、平成2年4月2日(優先権主張1989年4月7日、米国)の特許出願であって、平成11年6月4日にその特許の設定登録がなされ、その後、ミノルタ株式会社から特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年11月15日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否 ア.訂正の内容 a)訂正事項a 本件特許請求の範囲の請求項1に、 「更に、前記加圧ロールと定着ロールとのニップにおいて、ウエブ部材の線速度を一定にして該ウエブ部材を駆動するように、モータの動作を変化させる制御手段を備え、該制御手段は、前記ウエブ部材の線速度を一定にするため、前記巻取り芯のウエブ部材の半径の増大を補償するように、作動時間の累積に応じて、前記モータの速度を徐々に減少させる手段を有する」 とある記載を、 「更に、所定のコピー数以内の複写実行のとき、前記加圧ロールと定着ロールとのニップにおいて、ウエブ部材の線速度を一定にして該ウエブ部材を駆動するように、モータの動作を変化させる制御手段を備え、該制御手段は、前記所定のコピー数以内の複写実行のとき、前記ウエブ部材の線速度を一定にするため、前記巻取り芯のウエブ部材の半径の増大を補償するように、作動時間の累積に応じて、前記モータの速度を徐々に減少させる手段を有し、」 と訂正する。 b)訂正事項b 本件特許請求の範囲の請求項1に、 「ことを特徴とする装置」 とあるを、 「前記制御手段は、前記所定のコピー数を超える複写実行のとき、前記一定の線速度より大きな線速度で前記ウエブを駆動するように、前記モータの速度を増大する手段を有することを特徴とする装置」 と訂正する。 ウ.訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否 1)訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載された「モータの動作を変化させる制御手段」を、「ウェブ部材の線速度を一定にするため、前記巻取り芯のウェブ部材の半径の増大を補償するように、作動時間の累積に応じて、前記モータの速度を徐々に減少させる手段」を有する点に加えて、「制御手段」は、「所定のコピー数以内の複写実行のとき、加圧ロールと定着ロールとのニップにおいて、ウェブ部材の線速度を一定にして該ウェブ部材を駆動するように、モータの動作を変化させる」点に減縮するとともに、「制御手段」の「モータの速度を徐々に減少させる手段」が、「前記所定のコピー数以内の複写実行のとき、ウェブ部材の線速度を一定にするため、巻取り芯のウェブ部材の半径の増大を補償するように、作動時間の累積に応じて、モータの速度を徐々に減少させる」点に減縮するものである。 2)訂正事項bは、訂正前の請求項1に記載された「制御手段」が更に、「所定のコピー数を超える複写実行のときには、前記一定の線速度より大きな線速度でウェブを駆動するように、モータの速度を増大する手段」を含むものである点を付加することで、「制御手段」の構成を更に減縮するものである。 3)これらの訂正事項a及びbは、本件明細書第18頁第10行〜第19頁第7行(本件特許掲載公報第8欄第31行〜第46行) 「この2mm/分のウェブ進め速度は、1複写実行が最大20コピー程度ならは、満足できる結果が得られることがわかった。しかし、20コピー以上の長い複写実行の場合は、より多量の剥離剤を必要とすることもわかった。これは、定着ロールゴムの剥離剤消耗性のためである。 したがって、約20コピーまでの複写実行の場合は、ほぼ一定の速度でウェブを進めて剥離剤を一定の割合で定着ロールへ供給すればよいが、複写実行が所定コピー数以上の場合は、ウェブをより大きな速度で進めるように複写機の制御装置をプログラムすることができる。例えば20コピーまでの複写実行の場合は、2mm/分の速度でウェブを進めてもよいが、定着ロールに対し同じ剥離剤供給レベルを維持するためには、ウェブ進め速度を約50%増、すなわち、3mm/分のすることが望ましいことがわかった。」 の記載において、1複写において所定枚数(20枚)以下の場合、ウェブの線速度を一定(2mm/分)に維持する点、すなわち訂正事項aが、 また、1複写において所定枚数(20枚)を超える場合、ウェブの線速度を前記一定速度より大きい別の一定速度(3mm/分)にする点、すなわち訂正事項bが、それぞれ示されていることに根拠をおくものである。 また、本件特許明細書第24頁第15行〜第25頁第6行(本件特許掲載公報第10欄第43行〜第11欄第3行) 「2〜2.5mm/分の目標速度に対する第2の例外は、既にのべたように、長い複写実行のときである。20コピー(これは複写機の始動から停止までのコピー枚数である)以上のどんな複写実行でも、ウェブは、その最大速度まで150%の速度で進められる。定着装置の性質として、定着ロールはシリコン油を吸収し、待機中にある程度回復する傾向がある。長い複写実行の場合、定着ロールは待機によるこの恩恵を受けないので、この厳しい条件のために、制御装置が定着ロールを通過するウェブ部材の速度を増大させて、利用できる剥離剤の量を増やしている。」 の記載において、所定のコピー数を超える複写実行のときには、剥離剤の消耗が多いのでウェブの線速度を通常の一定速度より増大した別の速度にすることによって剥離剤を定着ロールに多く供給して、定着を適正に維持する作用効果が明らかにされている。 4)したがって、前記訂正事項a及びbは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当しない。 そして、これらの訂正事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 5)よって、前記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条の第2項、第3項の規定に適合するので、この訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 1)特許異議の申立ての理由の概要 特許異議申立人:ミノルタ株式会社は、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証(特開昭58-182671号公報)に記載された発明と同一若しくは同号証をもとに容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号の規定若しくは同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべきと主張している。 2)本件請求項1に係る発明 前記2.で示したように、前記訂正が認められるから、本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された以下のとおりのものである。 【特許請求の範囲】 【請求項1】 定着ロールにオフセット防止用の液状剥離剤を塗布する装置において、 供給用の芯と、回転可能な巻取り用芯と、前記供給芯から前記巻取り芯へ移動させられる、前記剥離剤を含浸したウエブ部材と、該ウエブ部材を前記供給芯から前記巻き取り芯へ駆動するモータと、前記ウエブ部材に係合する加圧ロールであって、対向配置された前記定着ロールと協働して前記ウエブ部材のための接触ニップを提供するように配置された加圧ロールとを備え、ウエブ部材を定着ロールに接触させることによって該ウエブ部材から剥離剤を定着ロールに移しており、 更に、所定のコピー数以内の複写実行のとき、前記加圧ロールと定着ロールとのニップにおいて、ウエブ部材の線速度を一定にして該ウエブ部材を駆動するように、モータの動作を変化させる制御手段を備え、該制御手段は、前記所定のコピー数以内の複写実行のとき、前記ウエブ部材の線速度を一定にするため、前記巻取り芯のウエブ部材の半径の増大を補償するように、作動時間の累積に応じて、前記モータの速度を徐々に減少させる手段を有し、 前記制御手段は、前記所定のコピー数を超える複写実行のとき、前記一定の線速度より大きな線速度で前記ウエブを駆動するように、前記モータの速度を増大する手段を有することを特徴とする装置。 3)刊行物及びその記載内容 特許異議申立人が証拠:甲第1号証として提示した刊行物には、以下のような発明が記載されている。 刊行物:特開昭58-182671号公報(甲第1号証) ウェブクリーニング装置に関するものである。 (1)第2頁右下欄第5行〜第18行 「本発明はウェブクリーニング装置の従来の定量送り装置の上述した欠点を改良し、確実に定量送りが実現され構造簡単なものを得ることを目的とする。 本発明の一実施例では一回のウェブ巻き取り量を巻き取り軸の累計運転時間に対応して巻き上げモータの回転時間を制御してウェブの定量送り機構を実現した。 巻き始めは巻き上げモータの通電時間(回転時間)を長く(クロックパルス数で変化させる)巻き径がふえるにしたがって徐々になめらかに通電時間を短くしてゆく。こうすることによってウェブを最少必要一定量でコピーに対応して送ることが可能である。」 (2)第3頁左上欄第16行〜右上欄第11行、第1図 「ウェブ1が図示矢印の方向に回転する回転自在に支持されたウェブ押えローラ4によって定着ローラ10に押しつけられている。このウェブ1はローラ上の残留トナーをクリーニングする為に不織布や紙、布、フェルト等でつくられている。 ウェブ1は最初回転自在に支持された巻き出し軸上の符号2の部分に巻かれており、回転駆動される巻き取り軸によって徐々に巻き取られ符号3の部分にたまってゆく。ウェブ1の移動方向は定着ローラ10と接する部分において定着ローラ10外周の移動方向と逆方向である。 ウェブ1は巻き取り軸6、巻き出し軸5,及びウェブ押えローラ4とともにケース7に収められている。」 (3)第3頁右上欄第19行〜左下欄第3行 「又ウェブ1には、オフセット防止剤としてシリコンオイルがしみ込ませてある。このシリコンオイルがウェブの移動とともに徐々に定着ローラ10上にコーティングされ、複写紙17の定着ローラ10への巻き付きを防止している。」 (4)第4頁左上欄第12行〜第15行 「ウェブの残量はウェブの全長及びウェブの巻き上げモータの回転速度が一定である為ウェブ巻き上げモータの合計通電時間から知ることが可能である。」 (5)第4頁右上欄第2行〜第14行、第5図 「コピー動作が始まると、コピーに対応して、ウェブモータ24が運転され一定時間ウェブの巻き取り軸6が駆動されてウェブ1が巻き取り軸6に巻き上げられる。 巻き上げモータ24の回転数はほぼ一定である為に、マイコンのウェブモータ24の回転合計時間のメモリをクリアしてからの合計通電時間によりウェブ1の巻き取り径が計算できる。ウェブ1の巻き取り径が大きくなってゆくのに対応してウェブ1の巻き上げモータ24の通電時間を徐々に短くしてゆくことによってクリーニングに必要な一定量のウェブを巻き取ることが可能である。」 (6)第4頁左下欄第14行〜第17行 「尚、コピー一枚ごとに通電時間を変えるのではなく100枚ごと或は1000枚ごとにモータ24への通電時間を短縮してもよい。」 (7)第4頁右下欄第18行〜第8頁左上欄第4行 「以上各説明はウェブの巻き取り軸の累計運転時間に応じてウェブの一回の巻き取り時間を変化させてウェブの定量送りを行うものであるが、ウェブの巻き取り軸6の累計回転数を検出する手段を備え、該累計回転数に従って巻き取り軸6のクリーニング動作一回の回転量を制御するようにしてもよい。」 これらの記載事項(1)〜(7)からみて、当該刊行物には、 ウェブクリーニング装置ではあるものの、定着ローラにオフセット防止用の液状剥離剤を塗布する構成を備え、 ウェブ押えローラ4とこれに対向配置された定着ローラ10との間のニップ部をウェブ1が通過するように、ウェブ押えローラ4が配置されている構成を備えるものにおいて、 加圧ロールと定着ロールとのニップにおいて、ウェブ部材の線速度を一定にして該ウェブ部材を駆動するように、モータの動作を変化させる制御手段を備えており、その制御手段は、ウェブ部材の線速度を一定にするため、巻取り芯のウェブ部材の半径の増大を補償するように、モータ作動時間の累積に応じて、モータの作動時間を徐々に減少させる制御手段を有する発明、 が記載されている。 4)対比・判断 本件発明と、前記刊行物に記載の発明とを対比すると、 本件発明における「供給用の芯」、回転可能な「巻取り用芯」、供給芯から前記巻き取り用芯へ移動させられる剥離剤を含浸した「ウェブ部材」、ウェブ部材を前記供給用の芯から前記巻取り用芯へ駆動する「モータ」、及びウェブ部材に係合する「加圧ロール」が、それぞれ、 前記刊行物に記載の発明における「巻き出し軸5上の符合2の部分」、「巻き取り軸6上の符合3の部分」、「ウェブ1」、「モータ24」、及び「ウェブ押えローラ4」に相当することは明らかである。 そして、本件発明における、ウェブ部材に係合する加圧ロール(実施例ではフォームピンチロール64)が、対向配置された定着ロールと協働してウェブ部材のための接触ニップを提供するように配置された構成は、刊行物に記載の発明における、ウェブ押えローラ4とこれに対向配置された定着ローラ1-との間のニップ部をウェブ1が通過するように、ウェブ押えローラ4が配置されている構成に相当している。 よって、本件発明における、ウェブ部材を定着ロールに接触させることによってウェブ部材から剥離剤を定着ロールに移す構成は、刊行物に記載の発明における、ウェブ1を定着ローラに接触させ、ウェブ1からシリコンオイル(剥離剤)を定着ローラ10に移す構成に相当している。 したがって、当該刊行物に記載された発明は、本件発明を特定する事項の内、 「定着ロールにオフセット防止用の液状剥離剤を塗布する装置において、 供給用の芯と、回転可能な巻取り用芯と、前記供給芯から前記巻取り芯へ移動させられる、前記剥離剤を含浸したウエブ部材と、該ウエブ部材を前記供給芯から前記巻き取り芯へ駆動するモータと、前記ウエブ部材に係合する加圧ロールであって、対向配置された前記定着ロールと協働して前記ウエブ部材のための接触ニップを提供するように配置された加圧ロールとを備え、ウエブ部材を定着ロールに接触させることによって該ウエブ部材から剥離剤を定着ロールに移しており、」の前段部分の構成要件を備えている。 また、当該刊行物に記載された発明は、前記摘示箇所(5)、(7)に示したように、モータ通電時間の制御を、ウェブ巻き取り軸の累計運転時間、即ち作動時間の累積時間に応じて制御されるものであることからして、本件発明を特定する事項の内、 「前記加圧ロールと定着ロールとのニップにおいて、ウエブ部材の線速度を一定にして該ウエブ部材を駆動するように、モータの動作を変化させる制御手段を備え、該制御手段は、前記所定のコピー枚数以内の複写実行のとき、前記ウエブ部材の線速度を一定にするため、前記巻取り芯のウエブ部材の半径の増大を補償するように、作動時間の累積に応じて、前記モータの速度を徐々に減少させる手段を有し、」の中部分の構成要件をも備えている。 しかしながら、前記刊行物に記載の発明においては、本件発明を特定する事項である中段部分の構成要件を、「所定のコピー数以内の複写実行のとき、」を条件として、前記の「前記ウェブ部材の線速度を一定にするため、前記巻き取り芯のウェブ部材の半径の増大を補償するように、作動時間の累積に応じて、前記モータの速度を徐々に減少させる手段」として機能させる特定は記載も示唆もされていない。 加えて、前記刊行物に記載の発明においては、本件発明を特定する事項である後段部分の構成要件 「前記制御手段は、前記所定のコピー数を超える複写実行のとき、前記一定の線速度より大きな線速度で前記ウエブを駆動するように、前記モータの速度を増大する手段を有する」ことは記載も示唆もされていない。 さらに、当該刊行物以外のもので、このような「所定のコピー数を超える複写実行」において必要とされる制御を示唆する先行文献は発見できない。 そして、本件発明は、前記の各制御手段を備えることにより、ウェブ部材を移動させるモータの駆動を制御する手段は、所定のコピー枚数以内の複写実行のとき、前記ウェブ部材の線速度を一定にするため、巻き取り芯のウェブ部材の半径の増大を補償するように、作動時間の累積に応じて、前記モータの速度を徐々に減少させて、剥離剤含浸ウェブ部材の線速度を一定に保ち、剥離剤の定着ロールへの塗布を適正な量に維持して、適正にオフセットを防止し、更に、前記所定のコピー数を超える複写実行のときには、前記一定の線速度より大きな別の線速度でウェブを駆動して、定着ロールへの剥離剤の塗布量を適正に増加して、コピー数に対応した一定の塗布量に保ち適正にオフセットを防止するという、顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件発明は、前記刊行物に記載のものと同一といえないと共に、それから容易に発明をすることができたものともいえない。 4.むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件請求項1に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものとは認められない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める制令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 剥離剤塗布装置 (57)【特許請求の範囲】 (1) 定着ロールにオフセット防止用の液状剥離剤を塗布する装置において、 供給用の芯と、回転可能な巻取り用芯と、前記供給芯から前記巻取り芯へ移動させられる、前記剥離剤を含浸したウエブ部材と、該ウエブ部材を前記供給芯から前記巻取り芯へ駆動するモータと、前記ウエブ部材に係合する加圧ロールであって、対向配置された前記定着ロールと協働して前記ウエブ部材のための接触ニップを提供するように配置された加圧ロールとを備え、ウエブ部材を定着ロールに接触させることによって該ウエブ部材から剥離剤を定着ロールに移しており、 更に、所定のコピー数以内の複写実行のとき、前記加圧ロールと定着ロールとのニップにおいて、ウエブ部材の線速度を一定にして該ウエブ部材を駆動するように、モータの動作を変化させる制御手段を備え、該制御手段は、前記所定のコピー数以内の複写実行のとき、前記ウエブ部材の線速度を一定にするため、前記巻取り芯のウエブ部材の半径の増大を補償するように、作動時間の累積に応じて、前記モータの速度を徐々に減少させる手段を有し、 前記制御手段は、前記所定のコピー数を超える複写実行のとき、前記一定の線速度より大きな線速度で前記ウェブを駆動するように、前記モータの速度を増大する手段を有することを特徴とする装置。 【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、静電写真式複写機のための定着装置、詳細にはロール式定着装置の剥離剤塗布装置に関するものである。 発明が解決しようとする課題 今日広く使用されている静電写真式複写機について簡単に説明すると、一般に、絶縁性光導電性部材が一様な電位に帯電された後、複写する原稿書類の光像にさらされる。この露光により、光導電性表面の露光された領域、すなわち背景領域が放電されて、原稿書類に含まれている像すなわち情報に対応する静電潜像が光導電性表面に形成される。上記の代わりに、変調させた光線を使用し、光導電性表面の帯電した部分を選択的に放電させて、光導電性表面に所望の情報を記録することもできる。この方式では、一般に、レーザー光線が使用される。光導電性表面に記録された静電潜像は、続いて、トナーと呼ばれる粉末現像剤で現像され可視化される。大部分の現像装置は、帯電キャリヤ粒子と、そのキャリヤ粒子に摩擦電気作用で付着している帯電トナー粒子から成る現像剤を使用している。現像剤が光導電性表面に塗布されると、光導電性表面の像領域の電荷パターンによって、キャリヤ粒子からトナー粒子が引き付けられて、光導電性表面上に粉末像が形成される。続いて、このトナー像を像支持体、例えば複写用紙へ転写し、次に加熱または加圧もしくはそれらを組み合わせて使用し、複写用紙へ永久的に定着することができる。 トナー像を加熱して複写用紙に永久的に固定すなわち定着するには、トナー粒子の成分が溶融して粘着状態になる点まで、トナー像の温度を上昇させる必要がある。この加熱作用により、トナーがある程度複写用紙の繊維間すなわち細孔に流れ込んだり、またはその表面に流れる。その後、冷却すると、トナーが凝固して複写用紙にしっかり結合する。 複写用紙上のトナー像を加熱定着する1つの方法は、未定着のトナー像を有する複写用紙を、少なくとも一方のロールが内側から加熱された一対のロールの間を通過させる方法である。この形式の定着装置の動作中、トナー像が静電気作用で付着している複写用紙がロール間のニップを通過すると、トナー像が定着ロールに接触して、加熱される。この形式の典型的な定着装置は、2ロール式定着装置であって、定着ロールが不粘着性物質、例えばシリコンゴム、その他の低表面エネルギーエラストマー、例えばデュポン社からテフロンの商標で販売されているテトラフルオロエチレン樹脂で被覆されたものである。しかし、この形式の定着装置の場合、熱でトナー像が粘着性を帯びるので、複写用紙に付着しているトナー像の一部が定着ロールによって保持されて、複写用紙の表面に浸透しないことがよく起きる。また、この粘着化したトナーは、定着ロールの表面にくっついて次の複写用紙へ転移したり、あるいは複写用紙が定着ニップを通過してないときに加圧ロールへ転移し、そのため、定着ロール、加圧ロールおよび印刷されたコピーが汚れる。 上記のほかに、トナー剥離剤、例えばシリコン油、詳細にはポリジメチルシリコン油を定着ロールに約1ミクロン程度の厚さに塗布する方法が提案された。これらの物質は、比較的低い表面エネルギーを有し、加熱定着ロールの環境において使用するのに適した物質であることがわかった。実際には、加熱定着ロールの表面にシリコン油の薄い層を塗布して、複写用紙上のトナー像とロール表面との間に境界面を形成する。この結果、定着ニップを通過するトナー像に対し、容易に剥離する低表面エネルギー層が提供されるので、複写用紙から定着ロールの表面ヘトナーが転移するのが防止される。 液体剥離剤を定着ロールへ供給するため、油に浸積させロールや灯心のほか、油を含浸させたウェブを使用する方式を含む、いろいろな剥離剤供給方式が使用されてきた。しかし、油に浸積させたロールや灯心は、一般に、供給した剥離剤が定着ロールへ転移して消耗するので、ロールや灯心に油を補給するための油溜りが必要であるという難点がある。その上、灯心は、約10,000コピー程度で使用不能になり、寿命が比較的短いという難点もある。さらに、浸積ロールまたは灯心方式は、定着ロールと接触する面が一定であるため、特にトナーによって容易に汚染され、その汚染がそれらの有効寿命をさらに短くするという難点がある。これに対し、含浸ウェブ方式は、一般に、定着ロールに均一に接触して、剥離剤をばらつきなく塗布することが難しいという欠点がある。さらに、ウェブ方式は、余分のロールや機械的リンク機構を備えた複雑でかなり高価な機械式装置のものが多い。 従来の技術 米国特許第4,393,804号は、巻出し芯と巻取り芯の間を移動する分出しウェブ装置を開示している。この装置では、フェルト塗布器が供給槽から油をウェブへ供給する。巻取り芯はスリップクラッチによって加圧ロールの速度より大きな速度で駆動されるので、ウェブに張力が作用する。ウェブは、厚さが1〜2mmであり、200〜1,000コピーにつき5cmの一定速度で動く。 また、含浸ウェブを使用している幾つかの市販自動プリンタがある。例えば、キャノン3225,3725,3000シリーズ、4000シリーズおよび5000シリーズのすべての製品は、巻出しロールと巻取りロールの間に支持され、連続気泡フォームピンチロールによって定着ロールに圧接された液体剥離剤含浸ウェブを有している。 本発明の第1の目的は、巻出しロールから巻取りロールへ巻き取られる剥離剤含浸ウェブを備えた改良型剥離剤塗布装置を提供することである。第2の目的は、巻取りロール上のウェブの直径に応じてウェブ駆動装置の速度を変える制御手段を提供することである。第3の目的は、定着ロールへ均一に剥離剤を供給するためウェブ駆動装置の動作周期を変える制御手段を提供することである。本発明のその他の利点は、説明が進むにつれて明らかになるであろう。また発明の特徴は、特許請求の範囲に詳しく記載してある。 課題を解決するための手段 上記の目的を達成するため、本発明が提供する、定着ロールにオフセット防止液すなわち剥離剤を塗布する装置は、巻出しロール、回転可能な巻取りロール、巻出しロールから巻取りロールへ動くように構成された剥離剤含浸ウェブ部材、巻取りロールに機械的に連結されていて、ウェブ部材を巻出しロールから巻取りロールへ動かすためのモーター、定着ロールと共にウェブ部材が通過する接触ニップを形成するように配置され、ウェブ部材を押して定着ロールに接触させ、ウェブ部材から定着ロールへ剥離剤が転移するようにする加圧ロール、および前記接触ニップにおけるウェブ部材の線速度を比較的一定に保つためにモーターの動作周期を変える制御手段を備えている。制御手段は、モーターの累積動作時間を監視するタイマーと、累積動作時間に応じてモーターの動作周期を漸次減少させる手段を有している。このように、モーターの動作周期を漸次減少させることで、巻取りロール上のウェブ部材の半径の増大を補償して、接触ニップにおけるウェブ部材の線速度を比較的一定に維持している。 発明の理解を助けるため、添付図面を参照して説明するが、類似の部品は、同じ参照番号で表示してある。 実施例 第1図に、実例として、本発明を組み入れた定着装置を有する自動静電写真式複写機10を示す。複写機10は、原稿書類からコピーを作成するためいろいろな処理部を備えている。本発明を組み入れた定着装置は、自動静電写真式複写機において使用するのに特に適しているが、以下の説明を読まれれば、他の静電写真式装置を含む、多種多様な処理装置にも同様に使用することが可能であり、その利用は、必ずしもここに記載した実施例に限定されないことは理解されるであろう。 第1図の複写機10は、矢印13の方向に、複写機の本体に挿入し、引き出すことができる着脱式処理カートリッジ12を採用している。カートリッジ12は、外周表面が適当な光導電性表面15で被覆された像形成ベルト状部材14を有する。ベルトは、カートリッジ12の中に、被駆動搬送ロール16とアイドラーロール18のまわりを回転するように適当に取り付けられており、ベルトの内側に示した矢印の方向に移動して、その像形成表面を動かし多数のゼログラフィー処理部を次々に通過させる。原稿入力情報の忠実な再生像を最終的支持シート31例えば複写用紙、等に記録するため、駆動力を提供し、複写機の多数の連動構成要素の運動を調整する適当な駆動手段、例えばモーター(図示せず)が設置されている。 最初に、ベルト14は、光導電性表面15を動かして帯電部19を通過させる。ここでは、帯電コロトロン20が、像形成処理に先立って、既知のやり方で光導電性表面に静電荷を置き、ベルト14を一様に帯電させる。次に、ベルト14は光導電性表面の帯電した部分を露光部21へ進める。ここでは、帯電した光導電性表面15が原稿入力情報の光像にさらされて、露光領域の電荷が選択的に消去され、原稿入力情報が静電潜像の形で記録される。 静電潜像を生成する光学装置は、像形成プラテン23上の原稿書類Dを走査する走査キャリッジ(図示せず)に取り付けられたランプ17とミラーM1,M2,M3、および光導電性ベルトへ光像を送るミラーM4,M5,M6から成っている。走査キャリッジの速度と光導電性ベルトの速度は、原稿書類を忠実に再生するように同期されている。露光後、光導電性表面15に記録された静電潜像は現像部24へ運ばれる。ここでは、ベルト14の光導電性表面15に現像剤が塗布されて静電潜像が可視化される。現像部には、後で詳しく説明するが、粗い磁性キャリヤ粒子とカラートナー粒子から成る磁化可能混合現像剤を塗布する現像ロール25を有する磁気ブラシ現像装置が設置されている。 最終的支持シート31すなわち複写用紙は、昇降式用紙トレイ26にスタック状に支持されている。スタックが上昇位置にある状態で、シート分離給送ロール27がトレイ26から原稿書類を整合ピンチロール対28へ一枚づつ送り込む。続いて、複写用紙31は、ベルト14の光導電性表面15上のトナー像に正しく整合した状態で転写部29へ送られる。光導電性表面15上のトナー像は、転写部29で複写用紙31に接触し、転写コロトロン30によって光導電性表面15から複写用紙31の接触面へ転写される。トナー像の転写後、複写用紙31(所望により、紙、プラスチック、等でもよい)は、アイドラーロール18のまわりを通るとき、それ自体の曲げ強度によってベルト14から分離される。トナー像を有する複写用紙は、次に定着部41へ送られる。ここでは、転写されたトナー像がロール式定着装置52によって複写用紙31に定着される。トナー像が複写用紙へ定着された後、複写用紙31は出力ロール33によって出力トレイ34に積み重ねられる。 転写の際、大部分の粉末トナーは複写用紙31へ転写されるが、必ず若干の残留トナーが光導電性表面15に付着して残っている。転写後、光導電性表面に残っている残留トナー粒子は清掃部35においてベルト14から除去される。清掃部35には、ベルト14の外周表面と接触して残留トナー粒子をふき取る清掃ブレード36が清掃ハウジング48内に設置されている。清掃ハウジング48の上流側開口には、清掃シール50が取り付けられている。上記の代わりに、周知の清掃ブラシを用いて、光導電性表面から残留トナー粒子を機械的に清掃することもできる。 以上、本発明を組み入れた定着装置を装備することができる自動静電写真式複写機10の一般的動作について説明したが、十分に理解されたものと信じる。 次に、第2図および第3図を参照し、定着装置について詳細に説明する。第2図に示すように、定着ロール52は、エラストマーの薄い層43で被覆された芯49からできている。芯49は、各種の金属、例えば鉄、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、等や、各種の合成樹脂から作ることができる。アルミニウムは芯49の材料として好ましいが、これは必要条件ではない。芯49は中空であり、一般に、その内部に、定着処理のとき熱を供給する加熱要素47が配置されている。この目的に適した加熱要素は多数知られているが、石英管の内部にタングステン抵抗加熱要素が配置された石英管封入ヒーターがよい。本発明にとって、必要な熱を与える方法自体は重要ではないので、内部加熱手段、外部加熱手段、またはそれらの組合せで定着部材を加熱することができる。上記のすべての加熱手段によってトナーを複写用紙に定着させる十分な熱が得られることはよく知られている。薄いエラストマー層43は、周知の物質、例えば、RTVやHTVシリコンエラストマーから作ることができる。 定着ロール52とバックアップロールすなわち加圧ロール51は、互いに圧接している。加圧ロール51は、耐熱層45で被覆された金属芯46から成っている。この組立体において、定着ロール52と加圧ロール51は、互いに十分な圧力で押し合ってニップ44を形成するように偏位した軸受(図示せず)に取り付けられている。このニップ44において、前に述べた溶融作用すなわち定着作用が行われる。耐熱層45は、周知の材料、例えばフッ化エチレンプロピレン共重合体またはシリコンゴムから作ることができる。 液体剥離剤塗布装置は、典型的な一体成形プラスチック部材であるハウジング63を有する。ハウジング63には、ウェブ巻出しロール60、ウェブ巻取りロール61および連続気泡フォームピンチロール64の取付け用溝穴または孔などの取付け要素が設けられている。巻出しロール60と巻取りロール61は、液体剥離剤塗布装置が所定場所にあるとき、巻出しロール60と巻取りロール61のどちらか一方が定着ロール52の一の側に、そして他方が定着ロール52の他の側にあり、かつ可動ウェブ62が縦軸に平行な通路に沿って定着ロール52と接触した状態になるようにハウジング63内に支持されている。また、可動ウェブ62は、ウェブ62をはさんで定着ロール52の反対側に配置された連続気泡フォームピンチロール64に押されて定着ロール52に接触し、剥離剤を塗布する。 ウェブの表裏使用を可能にするため、巻出しロール60と巻取りロール61は、それぞれ互換性のある回転可能な管状支持芯67,68でできている。巻出しロールの芯67には、剥離剤が含浸されたウェブ62が巻かれている。ハウジング63の各端面に取り付けられ、取付けカラー70を芯67に押し入れている板ばね69は、ウェブ62に張力を付与し、巻出しに抵抗を与える。ウェブ62と定着ロール52の間に圧力を加えて十分な量の剥離剤を確実に定着ロールへ供給するため、同様に液体剥離剤が含浸されたフォームピンチロール64が、2個のコイルばね73,74(ピンチロール取付け溝穴75,76にそれぞれ1個づつ)によって定着ロールに弾力的に押し付けられている。このように、ピンチロール64にも剥離剤が含浸されているので、剥離剤の量が十分でないかも知れないウェブ材のどの部分にも剥離剤が確実に補給される。 巻出しロール60から含浸ウェブを巻き取るため、巻取りロール61は駆動軸77に取り付けられている。駆動軸77は、その被駆動端に、軸受78、歯車79および2個の保持リング80が付いており、専用モーター81、例えば交流同期歯車モーターまたはクロックモーターによって駆動される。巻取りロール61が巻き出されるのを防止するため、駆動軸77の駆動歯車79とかみ合う回転防止クリップ84がハウジング63に設けられている。巻出しロール60は、板ばね69にある2個の取付けカラー70(ハウジング63の各端面に1個づつ)に取り付けられる。巻取りロール61は、その駆動軸の一端がハウジングの孔85に取り付けられており、駆動歯車のある他端がハウジングのスナップ嵌め溝穴86に取り付けられる。同様に、ピンチロール軸も2個の溝穴75,76に取り付けられる。 ウェブ材料は、225℃程度の定着温度に耐えることができる適当な材料を使用することができる。一般に、ウェブ材料は、少なくとも25g/m2の液体剥離剤を含浸させることが可能である。ウェブ材料は、織布でもよいし、不織布でもよい。ウェブの厚さは、所望する寿命のために必要な最小限度の量の剥離剤を供給することができる程度にすることができる。例えば、約30g/m2の剥離剤を保有することができるウェブ材料の場合、厚さを0.07mmの厚さにすれば、約10,000コピーを定着することができる量の剥離剤を供給することができる。ウェブの基本的機能は、剥離剤の供給であり、定着ロールの清掃は二次的機能であることを理解されたい。 ウェブは、ウェブ進め速度を一定に保つために一連の減少動作周期でロール駆動軸を駆動するクロックモーターによって進められ、定着ロールとフォームピンチロール間のニップを通過する。一般に、この進め速度は、2mm/分程度であり、複写用紙が定着ニップに入る直前に始まり、複写用紙が複写ニップを出た直後に終わる時間の間、ウェブは、前記の速度で進められる。この2mm/分のウェブ進め速度は、1複写実行が最大20コピー程度ならば、満足できる結果が得られることがわかった。しかし、20コピー以上の長い複写実行の場合は、より多量の剥離剤を必要とすることもわかった。これは、定着ロールゴムの剥離剤消耗性のためである。 したがって、約20コピーまでの複写実行の場合は、ほぼ一定の速度でウェブを進めて剥離剤を一定の割合で定着ロールへ供給すればよいが、複写実行が所定コピー数以上の場合は、ウェブをより大きな速度で進めるように複写機の制御装置をプログラムすることができる。例えば20コピーまでの複写実行の場合は、2mm/分の速度でウェブを進めてもよいが、定着ロールに対し同じ剥離剤供給レベルを維持するには、ウェブ進め速度を約50%増、すなわち3mm/分にすることが望ましいことがわかった。厚さが0.07mm、長さが13,500mm、少なくとも25g/m2の剥離剤を含浸することが可能な、ポリエステル繊維結合剤を有する好ましい不織布アラミドウェブは、80,000〜110,000コピーに対して剥離剤を供給することができる。 連続気泡フォームピンチロールは、225℃程度の高い定着温度に耐え、硬化しない適当な材料を使用することができる。一般に、これに適した材料は、剥離剤を貯蔵するため最大寸法が約0.5mm以下の連続気泡を有する成形シリコンゴムフォーム材料である。 液体剥離剤は、従来使用されてきた物質から選ぶことができる。典型的な剥離剤としては、機能油と非機能油の両方を含む、従来使用されてきた多数のシリコン油がある。剥離剤は、定着装置の残りの要素にも適合するものが選ばれる。特に好ましい剥離剤は、粘度が約11,000センチストークスのユニモダル低分子量ポリシロクサンである。この剥離剤を、前述の剥離剤供給装置(厚さが0.07mmのウェブに少なくとも25g/m2の剥離剤が含浸され、シリコンゴムフォームロールにも剥離剤が含浸されている。)に使用した場合、その消費量は1コピー当たり約0.3μlである。 作用 前に述べたように、ウェブは、コピーが定着装置に入る直前と定着装置から離れた直後の時間の間だけ進められて、剥離剤を定着ロールへ塗布する。制御装置は、複写実行が所定コピー数までは、ほぼ一定の割合で剥離剤を定着ロールへ塗布するようにプログラムされている。 さらに、制御装置は、例えば、モーター動作時間の情報を得ることによってウェブの消耗を監視し、巻出しロールの含浸ウェブ材料が使い尽くされる直前であることを、表示パネルに適当なコードでオペレータに指示する。例えば、巻出しロールに残っているウェブ材料が約2,000コピーに相当する量になったとき、最初にオペレータに警告し、次に1,000コピーに相当する量になったとき再び警告するようにすれば、動作を確実に継続させるため適切な処置を取ることができる。前に述べたように、可動ウェブ巻出しロールと巻取りロールは、位置を逆にしてハウジングに取り付けて液体剥離剤を塗布できるようになっており、ウェブ材料が使い尽くされたとき、またはその直前になったら、巻出しロールと巻取りロールの位置を逆にして、含浸ウェブの第2面を定着ロールに接触させ、剥離剤を定着ロールへ塗布することができる。これは、互換性のある管状支持芯を有する巻出しロールと巻取りロールを、手で取付け部から取り外し、裏返して、反対の位置に再挿入することによって簡単にできる。 新しい巻出しロール(含浸ウェブの第1面を使用したときの巻取りロール)上の含浸ウェブが使い尽くされたとき、またはその直前になったら、巻出しロールと巻取りロールを取り外して、新品の巻出しロールおよび巻取りロールと交換する。これらのロールは、前と同様なやり方で使用することができる。すなわち、最初は、含浸ウェブの第1面を定着ロールに接触させて剥離剤を定着ロールへ塗布し、ウェブが使い尽くされたら、両ロールの位置を逆にして、含浸ウェブの第2面を定着ロールに接触させて剥離剤を定着ロールへ塗布する。このプロセスにおいて、連続気泡フォームピンチロール内の剥離剤の量はほぼ平衡しており、含浸ウェブの第1面が剥離剤を定着ロールへ塗布しているとき、ウェブの第2面はフォームピンチロールに接触して剥離剤をフォームピンチロールへ再供給していることに注目されたい。 好ましい実施例の場合、ウェブ装置すなわち剥離剤塗布装置は、特定の長さのウェブ部材に、前もって適切な量の剥離剤すなわちシリコン油が含浸され、巻出しロール芯に巻かれ、その先端が巻取りロールに結合された状態で提供されるので、このウェブ装置を複写機に取り付ける。巻取りロールは、1/10回転/分の速度を有する定速クロックモーターによって駆動される。この速度情報は定着ロールを横切るウェブの速度を計算する基準になる。 ウェブ部材は一定の回転速度で巻取りロールを巻くので、その直径は既知の割合で増大し、その結果、その表面速度が所定の割合で増大すると想定される。この表面速度は、ニップすなわち定着ロールとの接点におけるウェブの線速度になる。 この線速度(定着ロールとの接点における)は、本発明に従って制御される。さらに、剥離剤の枯渇によって損傷が生じる前に剥離剤を補給することができるように、ウェブ部材が使い果たされる時点を予測できることが必要である。 適切な量のシリコン油すなわち剥離剤を定着ロールへ塗布するウェブの最適速度が約2mm/分であることはわかっている。制御装置は、一般に、この速度を2〜2.5mm/分に維持する。この制御速度が意図的に増大される例外が2つある。剥離剤すなわち油が多すぎるまたは少なすぎることは、共に容認できない状態であるが、剥離剤塗布装置は、剥離剤が多すぎる場合の誤差に対しより寛大である。 2〜2.5mm/分の目標速度に対する第1の例外は、新しいウェブを最初に使用するときである。新しい定着装置を最初に使用するとき、定着ロールは、通常量より多くの油を必要とする試運転期間が欠かせない。また、新しいウェブ装置の性質として、ウェブ部材の最初の部分が含んでいる単位面積当たりの油量は、ウェブの残りの部分が含んでいる単位面積当たりの油量より少ない。上記2つの理由で、新しいウェブは、最初の1,000コピーについては最大速度で使用される。 2〜2.5mm/分の目標速度に対する第2の例外は、既にのべたように、長い複写実行のときである。20コピー(これは複写機の始動から停止までのコヒー総数である)以上のどんな複写実行でも、ウェブは、その最大速度まで150%の速度で進められる。定着装置の性質として、定着ロールはシリコン油を吸収し、待機中にある程度回復する傾向がある。長い複写実行の場合、定着ロールは待機によるこの恩恵を受けないので、この厳しい条件のために、制御装置が定着ロールを通過するウェブ部材の速度を増大させて、利用できる剥離剤の量を増やしている。 ウェブ巻取りロールは、定速クロックモーターで駆動される。しかし、巻取りロールの直径が増大するのに伴って、ニップにおけるウェブの線速度が増大する。したがって、ニップにおけるウェブ速度を比較的一定に保つには、モーターの動作周期をそれに比例して減少させなければならない。動作周期の期間は、3秒であり、ウェブ制御アルゴリズムが取り扱う最小増分時間は20ミリ秒である。したがって、最大速度まで、1/150の精度(約2/3%の精度)で、速度を制御することが可能である。制御装置は、ウェブ駆動モーターの全累積動作時間から定着ニップにおけるウェブ速度の情報を得ることができる。すなわち、ウェブ駆動モーター動作時間は巻出しロールから巻取りロールへ動いたウェブ部材の長さを表し、この長さは巻取りロールの直径を表しているので、巻取りロールの表面速度を決定することができる。ウェブ速度に直接関係するこの全累積動作時間は、速度を制御する現在の動作周期を決定するため使用されるほか、寿命終了状態を宣言する適当な時期を決定するためにも使用される。 上記の情報に基づいて、ウェブを2/3%の許容誤差内で比較的一定の速度に制御することが可能である。しかし、このやり方は、不必要かつ実状にそぐわない大量のソフトウェア制御コードを生み出すであろう。したがって、通常の状態の場合は、ウェブ線速度を2〜2.5mm/分に制御すれば、剥離性能は十分であり、速度制御のそれ以上の正確さは必要ないことが実証されている。このことから、合計モーター「オン」時間に関して、限定された数の区切り点を計算し、第4図に示すように、ウェブ線速度を2〜2.5mm/分に維持するため、ウェブ駆動モーターの動作周期をこれらの区切り点に関連付けてある。 第4図は、合計モーター「オン」時間(分)の関数として、ウェブ駆動モーター動作周期(%)およびウェブ速度(mm/分)をプロットしたものである。最初、動作周期(点線で示したステップ関数)は100%である。モーターが動作して200分後、動作周期は47%へ減少し、400分後には38%へ減少した。その後、動作周期は、段階的に減少し、1640分後には14%まで減少した。 曲線に見える鋸歯(実線)は、モーター動作中の実際のウェブ線速度を表す。図示のように、ウェブ速度は、巻取りロールの直径が増すために、各動作周期期間の終りに向かって増大し始めているが、ウェブ線速度の平均値はかなり一定に保たれている。 そのほかに、全ウェブ消費量を表すウェブ駆動モーター「オン」時間を測定し、その情報から、ウェブの交換が必要なことを指示するメッセージを複写機の制御パネルへ与える時点と、このメッセージが守られなかった場合に、ウェブが交換されるまで複写機の動作を停止する時点が決定される。制御パネルへ送られるこれらのメッセージは、最初は、ウェブの寿命が終りに近付いていることを意味する“L4”である。“L4”が表示されたとき、ウェブは、実際に、計算寿命の99.4%に達している。寿命の真の終りはU4-6で指示されるので、ウェブを交換し、複写機を起動させる前にウェブ駆動モーター動作時間をリセットする必要がある。また、診断モードの場合は、寿命の70%のとき、“L4”が表示される。この指示はウェブ上の視覚赤色ストライプと同時に行われ、技術者は、この指示によりウェブを交換し、おそらく保守要請はしないであろう。 次表は、ウェブ駆動モーター動作時間の区切り点とそれらに関連するモーターの動作周期のほか、“L4”とU4-6の区切り点を示す。 好ましい実施例の場合、3個のメモリバイトすなわちソフトウェアカウンタを使用してモーターの動作周期を制御している。動作周期の期間は3秒であり、制御装置は20ミリ秒の増分で動作する。全部で150個の20ミリ秒の増分は、 3秒の動作周期期間に等しい。第1のカウンタに、150のカウントがロードされ、全3秒の動作周期の間にゼロまでカウントダウンする。第2のカウンタには、ウェブ駆動モーターの動作周期のパーセントに相当するカウンタ数がロードされる。例えば、47%の動作周期が必要であれば、この第2のカウンタに47%動作周期に相当する71のカウントがロードされる。この第2のカウンタがゼロまでカウントダウンすると、モーターが停止される。このように、実際に、約47%の時間の間モーターが「オン」にされる。第3のカウンタは、異なる各増分の動作周期へ、例えば100%から47%、38%、等へ進ませるために、複写機の累積「オン」時間を保持するカウンタである。 最初、ウェブの出発点で、この第3のカウンタに150のカウントがロードされる。9,000のカウントまで加算するまで、すなわち180分の全時間まで、このカウンタに150のカウントが連続的に加算される。これは次の動作が始まることを意味する。第2のカウンタは、150のカウンタを受け取らず、代わりに、47%動作周期に相当する71のカウントがロードされ、ゼロまでカウントダウンしモーターを停止する。また、累積カウンタは、累積時間が150%における割合の47%だけ増すので、当然、150のカウントでなく、71のカウントによって増分される。巻取りロールの直径が増すに伴って、第4図に示すように、動作周期を不連続にステップ状に減少させることにより、定着ニップにおけるウェブの速度をかなり一定に保つことが可能である。 以上、現時点で本発明の好ましい実施例と思われる実施例について説明したが、この分野の専門家は、これらの実施例から多くの代替物、修正物および均等物を考えつくであろう。しかし、本発明の真の精神および範囲に含まれるすべての代替物、修正物および均等物は本発明に含まれるべきものである。 【図面の簡単な説明】 第1図は、本発明を組み入れた定着装置を有する自動静電写真式複写機の略断面図、 第2図は、第1図の定着装置の拡大断面図、 第3図は、第1図の剥離剤供給装置の分解斜視図、および 第4図は、本発明によるウェブ駆動動作周期の制御を示すグラフである。 符号の説明 D…原稿書類、M1〜M6…ミラー、10…複写機、12…着脱式処理カートリッジ、13…移動方向、14…像形成部材(ベルト)、15…光導電性表面、16…被駆動搬送ロール、17…ランプ、18…アイドラーロール、19…帯電部、20…帯電コロトロン、21…露光部、22…レンズ、23…プラテン、24…現像部、25…現像ロール、26…複写用紙トレイ、27…給送ロール、28…整合ピンチロール対、29…転写部、30…転写コロトロン、31…複写用紙、33…出力ロール、34…出力トレイ、35…清掃部、36…清掃ブレード、41…定着部、43…薄いエラストマー層、44…ニップ、45…耐熱層、46…金属芯、47…加熱要素、48…清掃ハウジング、49…芯、50…清掃シール、51…加圧ロール、52…定着ロール、60…巻出しロール、61…巻取りロール、62…ウェブ、63…ハウジング、64…連続気泡フォームピンチロール、67,68…管状支持芯、69…板ばね、70…取付けカラー、73,74…コイルばね、75,76…ロール取付け溝穴、77…駆動軸、78…軸受、79…駆動歯車、80…保持リング、81…モーター、84…回転防止クリップ、85…孔、86…スナップ嵌め溝穴。 |
訂正の要旨 |
【訂正の要旨】 a.訂正事項a 本件特許請求の範囲の請求項1に、 「更に、前記加圧ロールと定着ロールとのニップにおいて、ウエブ部材の線速度を一定にして該ウエブ部材を駆動するように、モータの動作を変化させる制御手段を備え、該制御手段は、前記所定のコピー枚数以内の複写実行のとき、前記ウエブ部材の線速度を一定にするため、前記巻取り芯のウエブ部材の半径の増大を補償するように、作動時間の累積に応じて、前記モータの速度を徐々に減少させる手段を有する」 とある記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、 「更に、所定のコピー枚数以内の複写実行のとき、前記加圧ロールと定着ロールとのニップにおいて、ウエブ部材の線速度を一定にして該ウエブ部材を駆動するように、モータの動作を変化させる制御手段を備え、該制御手段は、前記所定のコピー枚数以内の複写実行のとき、前記ウエブ部材の線速度を一定にするため、前記巻取り芯のウエブ部材の半径の増大を補償するように、作動時間の累積に応じて、前記モータの速度を徐々に減少させる手段を有し、」 と訂正する。 b.訂正事項b 本件特許請求の範囲の請求項1に、 「ことを特徴とする装置」 とあるを、特許請求の範囲の減縮を目的として、 「前記制御手段は、前記所定のコピー数を超える複写実行のとき、前記一定の線速度より大きな線速度で前記ウエブを駆動するように、前記モータの速度を増大する手段を有することを特徴とする装置」 と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-02-19 |
出願番号 | 特願平2-88109 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(G03G)
P 1 651・ 113- YA (G03G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大仲 雅人 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
水垣 親房 川上 益喜 |
登録日 | 1999-06-04 |
登録番号 | 特許第2935870号(P2935870) |
権利者 | ゼロックス コーポレーション |
発明の名称 | 剥離剤塗布装置 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 貞重 和生 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 竹内 英一 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 天野 正景 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 串岡 八郎 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 串岡 八郎 |
代理人 | 竹内 英人 |