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審決分類 審判 全部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  C04B
審判 全部申し立て 特29条の2  C04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C04B
管理番号 1044930
異議申立番号 異議2000-71611  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-11-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-04-17 
確定日 2001-05-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2965957号「湿式吹付用不定形耐火組成物」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2965957号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.本件の経緯
本件特許第2965957号は、平成10年4月30日に出願し、平成11年8月13日に設定登録され、同年10月18日に特許公報に掲載されたところ、平成12年4月17日に大光炉材株式会社から、平成12年4月18日に旭硝子株式会社から特許異議の申立を受けたものであって、その後、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月4日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否の判断
2-1、訂正事項
(a-1)特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(a-2)[0012]段落の記載を削除する。
(a-3)[0013]段落の「また、本発明は、」を、「即ち、本発明は、」と訂正する。
(a-4)[0017]段落の記載を削除する。
(a-5)[0018]段落の「また、シリカを主体とする超微粉の効果と同様の目的で、」を、「本発明の湿式吹付用不定形耐火組成物では、湿式吹付時の凝集性を良好にし、高接着性を維持するため、」と訂正する。
(a-6)[0027]段落の【表1】を削除し、[0028]段落の【表2】中の本発明品7〜9を削除する。
(a-7)[0033 ]段落の「シリカを主体とした超微粉や」の記載(2カ所)を削除する。
(b-1-1)特許請求の範囲の請求項2の「粗粒〜超微粉に粒度調整された耐火性原料を少なくとも含有してなる不定形耐火組成物・・・」を、「粗粒〜超微粉に粒度調整された耐火性原料及び硬化剤からなる不定形耐火組成物・・・」と訂正する。
(b-1-2)[0013]段落の「・・・粗粒〜超微粉に粒度調整された耐火性原料を少なくとも含有してなる不定形耐火組成物・・・」を、「・・・粗粒〜超微粉に粒度調整された耐火性原料及び硬化剤からなる不定形耐火組成物・・・」と訂正する。
(b-2-1)特許請求の範囲の請求項2の「アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体またははそれらの縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上」を、「アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上」と訂正する。
(b-2-2)[0013]段落の「アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体またははそれらの縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上」を、「アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上」と訂正する。
(b-2-3)[0018]段落の「アクリル酸またはカルボン酸の誘導体あるいはそれらの重合、共重合体を主体とする水溶性高分子化合物」を、「アクリル酸またはカルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主体とする水溶性高分子化合物」と訂正する。
(b-2-4)[0018]段落の「ポリカルボン酸カルシウム、ビスフェノールスルホン酸ナトリウム等のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩やそれらの」を、「ポリカルボン酸カルシウム等のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩の」と訂正する。
(b-2-5)[0033]段落の「アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体あるいはそれらの縮合体」(2箇所)を、「アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体」と訂正する。
(b-3-1)特許請求の範囲の請求項2の「含有してなる」を、「含有してなり、耐火性原料の耐火性超微粉が耐火性粘土、超微粉アルミナ、超微粉マグネシア、アルミナ・マグネシア組成の超微粉スピネル、超微粉チタニア、超微粉ジルコニア、超微粉クロミア、フライアッシュ、超微粉カーボン、炭化硼素超微粉及び炭化珪素超微粉の1種または2種以上であり、且つ硬化剤がハイアルミナセメント、珪酸ソーダ、リン酸塩、熱硬化性の澱粉、珪酸ソーダガラス、リン酸ソーダガラス、合成樹脂エマルジョンの1種または2種以上である」と訂正する。
(b-3-2)[0013]段落の「含有してなること」を、「含有してなり、耐火性原料の耐火性超微粉が耐火性粘土、超微粉アルミナ、超微粉マグネシア、アルミナ・マグネシア組成の超微粉スピネル、超微粉チタニア、超微粉ジルコニア、超微粉クロミア、フライアッシュ、超微粉カーボン、炭化硼素超微粉及び炭化珪素超微粉の1種または2種以上であり、且つ硬化剤がハイアルミナセメント、珪酸ソーダ、リン酸塩、熱硬化性の澱粉、珪酸ソーダガラス、リン酸ソーダガラス、合成樹脂エマルジョンの1種または2種以上であること」と訂正する。
(b-3-3)[0021]段落の「ρ-アルミナ等の活性アルミナ、」を削除する。
(b-3-4)[0029]段落の【表3】中の「本発明品13」を、「本発明品1」と訂正する。
(c-1)特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(c-2)[0014]段落の記載を削除する。
(c-3)[0019]段落の記載を削除する。
(c-4)[0028]段落の【表2】の本発明品10及び11並びに[0029]段落の【表3】の本発明品12,14ないし16を削除する。
(d-1)請求項1の削除に伴い、訂正後の請求項2の項番号を1に繰り上げ、請求項1とする。
(d-2)段落及び表の削除に伴い、以降の段落及び表が通し番号となるように段落番号、表番号を順次繰り上げる。
2-2.訂正の目的の適否
上記(a-1)および(c-1)の訂正は、特許請求の範囲の請求項を削除するものであり、上記(b-1-1)、(b-2-1)および(b-3-1)の訂正は、特許請求の範囲の請求項2をより限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。また、これら以外の(a-2)〜(d-2)の訂正は、特許請求の範囲の上記訂正に伴い、それに整合させるため、発明の詳細な説明中の記載を合わせたり、もはや実施例でなくなった例を削除したり、請求項番号や段落番号等を繰り上げるものであるから、特許請求の範囲の減縮に伴って生じた明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
2-3.新規事項の有無
上記訂正事項について、設定登録時の本件明細書の記載をみると、上記(b-1-1)および(b-1-2)の訂正事項は、「0012」段落、「0021」段落や【表3】中の本発明品13に記載されており、上記(b-2-1)、(b-2-2)および(b-2-3)の訂正事項は、[0013]段落や[0020]段落等に記載されており、上記(b-3-1)および(b-3-2)の訂正事項は、[0016]段落および[0021]段落に記載されており、上記(a-5)の訂正は、[0017]段落に記載されているから、結局、上記(a-1)〜(d-2)の訂正事項は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
2-4.拡張・変更の有無
上記(b-1-1)〜(b-1-2)および(b-3-1)〜(b-3-2)の訂正では、設定登録時の請求項2の「粗粒〜超微粉に粒度調整された耐火性原料」の超微粉の種類を特定し、また、硬化剤を含むことを規定したが、設定登録時の請求項2の「不定形耐火組成物」において含み得る成分を具体的に特定した程度のものにすぎないから、結局、上記(a-1)〜(d-2)の訂正は、設定登録時の請求項2を拡張したり、変更したりするものではない。
2-5.訂正の可否
上述したように、上記訂正は、特許法第120条の4の第2項第1号または第3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同条第3項で準用する同法第126条第2項および第3項の規定に適合するものであるから、上記訂正を認める。
3.特許異議の申立についての判断
3-1.訂正後の本件発明
訂正後の本件発明は、訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のものである。
[請求項1]粗粒〜超微粉に粒度調整された耐火性原料及び硬化剤からなる不定形耐火組成物に所定量の水を混練して得られた混練物を圧送機にて吹付ノズルへ圧送し、該吹付ノズルにて、アルカリ性ゲル化剤を圧搾空気にて添加、混合した後、吹付施工することからなる湿式吹付に使用するための不定形耐火組成物において、前記耐火性原料100重量%に対して、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上を外掛で0.01〜0.5重量%含有してなり、耐火性原料の耐火性超微粉が耐火性粘土、超微粉アルミナ、超微粉マグネシア、アルミナ・マグネシア組成の超微粉スピネル、超微粉チタニア、超微粉ジルコニア、超微粉クロミア、フライアッシュ、超微粉カーボン、炭化硼素超微粉及び炭化珪素超微粉の1種または2種以上であり、且つ硬化剤がハイアルミナセメント、珪酸ソーダ、リン酸塩、熱硬化性の澱粉、珪酸ソーダガラス、リン酸ソーダガラス、合成樹脂エマルジョンの1種または2種以上であることを特徴とする湿式吹付用不定形耐火組成物。
3-2.申立人の主張
特許異議申立人大光炉材株式会社(以下、「申立人A」という。)は、甲第1〜3号証を提出して次のような主旨の主張をしている。
(1)本件請求項1〜3に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
(2)本件請求項1〜3に係る発明は、本件特許の出願前に出願し、本件特許の出願後に出願公開された甲第2号証に係る先願の出願当初の明細書に記載された発明と同一であって、しかも、本件特許の発明者は先願の発明者と同一ではないし、また、本件特許の出願の時に、本件特許の出願人が先願の出願人と同一ではないから、本件請求項1〜3に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。
また、特許異議申立人旭硝子株式会社(以下、「申立人B」という。)は、甲第1〜2号証を提出して次のような主旨の主張をしている。
(3)本件請求項1〜3に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
(4)本件請求項1〜3に係る発明は、本件特許の出願前に出願した甲第2号証に係る先願の発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができないものである。
(5)特許権者(出願人)は、拒絶理由通知後の手続補正の際、請求項1について、硬化剤を含有する点とこの硬化剤が熱硬化性ではない点を追加したが、この「硬化剤が熱硬化性ではない」という構成は出願時の明細書には記載されていないから、この補正は新規事項に相当し、特許法第17条の2第3項の規定を満たしていない。
(6)本件明細書の記載が不備であるから、本件請求項1〜3に係る特許は、その明細書が特許法第36条第4項及び6項の規定を満たしていない出願に対してされたものである。
3-3.対比・判断
申立人Aの上記(1)の主張について
甲第1号証(特開平9-315872号公報)には、「粒径10mm以下の耐火性骨材67〜97.5重量%と、粒径10μm以下の耐火性超微粉2〜25重量%と、アルミナセメント0.5〜8重量%とからなる耐火組成物100重量%に対して、分散剤0.01〜1.0重量%を外掛けで添加してなることを特徴とするローセメントキャスタブルを予めミキサーで水と混練して流し込みの作業性にしたものを圧送ポンプで吹付けノズルに輸送し、前記吹付けノズルで圧搾空気とともに、珪酸アルカリ溶液[SiO2/R2Oモル比が2.0〜3.3で(R2Oはアルカリ金属酸化物)、15℃でのBe(ボーメ度)換算比重が40以上]を保形性付与剤として前記ローセメントキャスタブル粉体100重量%に対して外掛けで0.1〜1.5重量%添加し、吹付け施工することを特徴とする湿式吹付け施工法。」(特許請求の範囲の請求項1)が記載されているが、そこでいう分散剤は、[0013]段落に、「分散剤としてはヘキサメタリン酸ソーダ等の縮合燐酸のアルカリ金属塩及び珪酸のアルカリ金属塩、あるいはカルボン酸、フミン酸、アルキルスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機酸及びそのアルカリ金属塩等のうち、1種以上を用いることができる。」と記載されてだけで、訂正後の本件請求項1に係る発明の、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物を使用することは示されていない。
そして、カルボン酸やフミン酸やアルキルスルホン酸や芳香族スルホン酸等の有機酸やそのアルカリ金属塩から、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物を使用する場合の効果が予測できるものではない。
また、甲第3号証(JISハンドブック、「耐火物」、日本規格協会、1993、R-2511)には、耐火物用ハイアルミナセメントについてが記載されているにすぎない。
してみると、訂正後の本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるとは認められないし、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。
したがって、上記(1)の主張は理由がない。
申立人Aの上記(2)の主張について
甲第2号証(特開平10-182247号公報)に係る先願(特願平8-345068号)の出願当初の明細書には、「0.5〜15重量%の水硬性遷移アルミナ、0.5〜20重量%の流動性助剤、0.01〜0.5重量%の解膠剤と、残部が耐火性の骨材及び微粉とからなる固形分100重量%を、水とで混練した第1成分であって、前記水が混練された第1成分のポンプ圧送可能なコンシステンシイの達成に足りる量で存在する前記ポンプ圧送可能第1成分、及び、施工時に第1成分に対して添加される第2成分の凝集剤とからなる非スランプ性水硬性遷移アルミナ系ボンドキャスタブル組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)および「型及び型枠の使用なしで、スイング弁ポンプ及び付帯吹付けノズルを用いてキャスタブル組成物を吹付け施工する方法であって、0.5〜15重量%の水硬性遷移アルミナ、0.5〜20重量%の流動性助剤、0.01〜0.5重量%の解膠剤と、残部が耐火性の骨材及び微粉とからなる固形分100重量%を、前記スイング弁ポンプ及び吹付けノズルを介してポンプ圧送及び吹き付け可能なコンシステンシイの達成に足りる量の水とで混練したポンプ圧送可能な第1成分を作り、前記第1成分の吹付け直前に吹付けノズル内で第2成分の凝集剤を、第1成分に対して添加する吹付け施工方法。」(特許請求の範囲の請求項3)等が記載されている。
そこで、訂正後の本件請求項1に係る発明と、先願の出願当初の明細書に記載された発明とを対比すると、甲第2号証に係る先願の出願当初の明細書に記載された発明は、水硬性遷移アルミナを必須成分として含み、しかも、この水硬性遷移アルミナを使用することを技術的な特徴としているものであり、この水硬性遷移アルミナは、先願明細書中の「水硬性遷移アルミナとしては、・・・として得られるρ-アルミナ含有物を使用する。・・・ρ-アルミナは復水によりアルミナ水和物となり水硬性を示し、」(第13段落)の記載からみて、ρ-アルミナを意味するところ、上記訂正により、訂正後の請求項1に係る発明は、硬化剤として、ρ-アルミナのような上記水硬性遷移アルミナを使用しないものに特定されている。
したがって、訂正後の本件請求項1に係る発明は、甲第2号証に係る先願の出願当初の明細書に記載された発明と同一であるとは認められないから、上記(2)の主張も理由がない。
申立人Bの上記(3)の主張について
申立人Bが提出した甲第1号証(特開平9-315872号公報)は、申立人Aが提出した甲第1号証と同じであり、上記(3)の主張は、申立人Aの上記(1)の主張についての項で述べたものと同様の理由により採用できないものである。
申立人Bの上記(4)の主張について
甲第2号証(特許第2972179号明細書、本件特許と同一出願人の先願である特願平10-117227号の特許公報)の特許請求の範囲の請求項1には、「粗粒〜超微粉に粒度調整された耐火性原料を少なくとも含有してなる不定形耐火組成物に所定量の水を混練して得られた混練物を圧送機にて吹付ノズルへ圧送し、該吹付ノズルにて、アルカリ性ゲル化剤を圧搾空気にて添加、混合した後、吹付施工することからなる湿式吹付に使用するための不定形耐火組成物において、不定形耐火組成物は、アルミナ含有量70重量%以上のアルミナセメントを5〜15重量%、粒度が1.0mm以下のマグネシア原料を3〜15重量%、アルミナ原料及び/またはスピネル原料を66〜92重量%、及びシリカを主体とする超微粉を0.2〜4重量%含有してなる配合物100重量%に対して、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体またはそれらの縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上を外掛で0.01〜0.5重量%含有してなることを特徴とする湿式吹付用不定形耐火組成物。」が記載されている。
しかし、訂正後の本件請求項1に係る発明は、シリカを主体とする超微粉を含有するものではないのに対して、この先願の発明の湿式吹付用不定形耐火組成物は、シリカを主体とする超微粉を0.2〜4重量%含有するものである点で相違している。
したがって、訂正後の本件請求項1に係る発明は、甲第2号証に係る先願の発明と同一であるとは認められないから、上記(4)の主張も理由がない。
申立人Bの上記(5)の主張について
訂正前の本件請求項1は、上記訂正により削除され、上記(5)の主張は、理由のないものとなった。
申立人Bの上記(6)の主張について
申立人Bが、36条違反であると指摘している点は、以下のものである。
(A)、本件明細書には、特許請求の範囲および発明の詳細な説明において「粗粒〜超微粉に粒度調整」と記載されているが、耐火性原料の超微粉について具体的な粒度の定義がされておらず、また、耐火性原料中の超微粉の配合比についても記載がないから、本件各発明は、その外延が明確でなく不明瞭である。
(B)本件請求項1には、「硬化剤が熱硬化性ではない」と記載しているが、これは硬化剤について「熱硬化性ではない」と否定的表現で規定しているため発明の外延を理解することができないし、本件明細書には、具体的にどのような硬化剤が熱硬化性でないのかが充分説明されていないから、どのような硬化剤が熱硬化性でないのか明瞭でない。
したがって、本件請求項1の「硬化剤が熱硬化性ではない」という記載は不明瞭である。
(C)本件明細書の実施例には「ポリカルボン酸カルシウム」という物質が分散剤として使用されているが、実施例でいう「ポリカルボン酸カルシウム」は具体的にどのようような化合物であるのか不明であるから、本件各発明は、当業者が容易に実施をすることができない。
(D)本件明細書の実施例には、「ビスフェノールスルホン酸ナトリウム」という物質が分散剤として使用されているが、この「ビスフェノールスルホン酸ナトリウム」という名称の化合物は存在せず、これがどのような物質であるのか不明である。
また、通常ビスフェノールは高分子ではないが、本件明細書では、「ビスフェノールスルホン酸ナトリウム」を高分子として記述しているから、この点でも不可解である。
したがって、この「ビスフェノールスルホン酸ナトリウム」がどのような構造の物質なのか特定できず、本件各発明は当業者が容易に実施をすることができない。
以下、(A)〜(D)について検討する。
上記(A)について : 甲第1号証(特開平9-315872号公報)でも用いられているように、不定形耐火組成物において、「耐火性超微粉」はよく用いられる技術用語であって、「粒度」を特定しないと、これに該当するものが想定できないという程のものではないし、また、本件発明における耐火性超微粉の「配合比」が特定されないと、本件発明の「不定形耐火物組成物」が想定されてないというものではない。なお、特定配合比に技術的な特徴がなく、配合比が特定されていない発明において、該当する範囲か否かを配合比によって区別することが困難であるとしても、その配合比が特定されていないこともって、直ちに、その発明が不明確であるということはできない。
上記(B)について : 訂正前の本件請求項1は、上記訂正により削除され、上記(B)については理由のないものとなった。
上記(C)について : 実施例で使用されているポリアクリル酸ナトリウムは、「ポリカルボン酸金属塩」であり、当業者がこれを参考にすれば、「ポリカルボン酸カルシウム」とは、例えば、「ポリ(メタ)アクリル酸カルシウム)」等が該当するものとして理解できるといえるものである。なお、平成13年1月9日付特許異議意見書の第8頁24〜27行で、特許権者は、本件明細書の【表1】、【表2】および【表3】に記載された本発明品並びに比較品に使用しているポリカルボン酸カルシウムは、具体的には、ポリメタクリル酸カルシウムのことである旨釈明している。
上記(D)について : 上記訂正により、本件明細書中の「ビスフェーノールスルホン酸」という記載は削除され、上記(D)については理由のないものとなった。
結局、上記(A)〜(D)の点は、いずれも採用できない。

4.むすび
以上のとおりであるから、訂正後の本件請求項1に係る特許は、特許異議の申立の理由および証拠によっては取り消すことができない。
また、他に訂正後の本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
湿式吹付用不定形耐火組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 粗粒〜超微粉に粒度調整された耐火性原料及び硬化剤からなる不定形耐火組成物に所定量の水を混練して得られた混練物を圧送機にて吹付ノズルへ圧送し、該吹付ノズルにて、アルカリ性ゲル化剤を圧搾空気にて添加、混合した後、吹付施工することからなる湿式吹付に使用するための不定形耐火組成物において、前記耐火性原料100重量%に対して、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上を外掛で0.01〜0.5重量%含有してなり、耐火性原料の耐火性超微粉が耐火性粘土、超微粉アルミナ、超微粉マグネシア、アルミナ・マグネシア組成の超微粉スピネル、超微粉チタニア、超微粉ジルコニア、超微粉クロミア、フライアッシュ、超微粉カーボン、炭化硼素超微粉及び炭化珪素超微粉の1種または2種以上であり、且つ硬化剤がハイアルミナセメント、珪酸ソーダ、リン酸塩、熱硬化性の澱粉、珪酸ソーダガラス、リン酸ソーダガラス、合成樹脂エマルジョンの1種または2種以上であることを特徴とする湿式吹付用不定形耐火組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窯炉内張り用耐火物として使用される湿式吹付用不定形耐火組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高炉樋、溶銑鍋、混銑車、VOD鍋を含む溶鋼取鍋、RH真空脱ガス炉、タンディッシュ、各種炉蓋、焼却炉やセメント用プレヒーターなどの窯炉内張り用耐火物として、緻密質のキャスタブルが適用され、高耐用性が得られている。しかし、キャスタブルの施工には施工部位に枠を設置して流し込む作業が必要であり、省力化の面ではれんが施工よりも簡便なものの煩雑性を有していることには変わりない。一方、吹付施工工法は施工するための枠が不要であり、かつ局部的な補修も可能であるため、省力化の観点からは格段に有利な施工方法である。吹付工法には、乾式吹付工法、半乾式吹付工法及び湿式吹付工法があり、発塵による作業環境の悪化等を防止する目的で、発塵の殆ど無い湿式吹付工法が注目され、特公昭57-7350号公報にその吹付システムが記載されている。
【0003】
即ち、特公昭57-7350号公報には、泥漿状の不定形耐火物を圧送機によって輸送管で圧送し、該輸送管の先端に設けられた先絞りノズルで圧搾空気と共に、硬化促進剤を添加し吹付けることを特徴とする不定形耐火物の吹付施工法を開示している。
【0004】
また、特開平9-25175号公報には、耐火性骨材、耐火性粉末及び少量の分散剤を含む不定形耐火物用粉体組成物に水を加えて混練した自己流動性を有する坏土を圧送ポンプと圧送配管によって施工現場に圧送し、圧送配管の下流部に設けた圧縮空気注入口及び急結剤注入口からそれぞれ圧縮空気と所要量の急結剤を坏土中に注入し、圧縮空気とともに坏土をノズル配管でその先端に接続した吹付けノズルに送り、吹付けノズルから坏土を施工箇所に吹付けることを特徴とする不定形耐火物の吹付け施工方法が開示されている。
【0005】
更に、特開平9-26267号公報には、耐火性骨材、耐火性粉末及び少量の分散剤を含む不定形耐火物用粉体組成物に水を加えて混練した自己流動性を有する坏土を、圧送ポンプと圧送配管によって施工現場に圧送し、圧送配管の下流部に設けた圧縮空気注入口及び急結剤注入口からそれぞれ圧縮空気と所定量の急結剤を坏土中に注入し、注入した圧縮空気とともに急結剤が混入した坏土をノズル配管によってその先端に接続した吹付けノズルに送り、吹付けノズルから坏土を施工箇所に吹付けることを特徴とする不定形耐火物の吹付け施工方法が開示されている。
【0006】
また、特開平9-241080号公報には、キャスタブル固形分を含み、耐火性骨材、アルミン酸カルシウムセメント、流動助剤、解膠剤、及び水から主としてなる混練されたポンプ圧送可能第1成分であって、その水が混練された第1成分のポンプ圧送可能なコンシステンシィを達成するのに足りる量で存在する上記ポンプ圧送可能第1成分;及びキャスタブルに少なくとも約1.92g/cm3の乾燥嵩密度を与えるに足りる量で施工時に第1成分に対して添加されるべき第2成分としての凝集剤からなる実質的に非スランプ性の、高密度、低水分、低セメントキャスタブル組成物が開示されている。
【0007】
更に、特開平9-250880号公報には、不定形耐火物粉体と溶媒との混練物をノズルまでポンプ圧送し、ノズル内でこの混練物に硬化促進剤を混合したうえ、加圧空気によって施工面に吹付けることを特徴とする不定形耐火物の吹付け方法が開示されている。
【0008】
また、特開平9-315872号公報には、粒径10mm以下の耐火性骨材67〜97.5重量%と、粒径10μm以下の耐火性超微粉2〜25重量%と、アルミナセメント0.5〜8重量%とからなる耐火組成物100重量%に対して、分散剤0.01〜1.0重量%を外掛けで添加してなることを特徴とするローセメントキャスタブルを予めミキサーで水と混練して流し込み作業性にしたものを圧送ポンプで吹付けノズルに輸送し、前記吹付けノズルで圧搾空気とともに、珪酸アルカリ溶液[SiO2/R2Oモル比が2.0〜3.3で(R2Oはアルカリ金属酸化物)、15℃でのBe(ボーメ度)換算比重40以上]を保形性付与剤として前記ローセメントキャスタブル粉体100重量%に対して外掛けで0.1〜1.5重量%添加し、吹付け施工することを特徴とする湿式吹付け施工法が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような施工方法並びに組成物は、以前から公知のポンプを利用してキャスタブルを圧送し吹付する施工方法や、セルフフローキャスタブル、ローセメントキャスタブルあるいは可塑剤を添加したキャスタブルを使用した圧送吹付施工方法用の材質であり、キャスタブルに近似した品質は得られているものの、30mm以上の施工体厚みとなる施工体を構築する場合、剥離等の問題が発生し、未だ耐用性的にキャスタブルと同等とは言い難いのが現状である。
【0010】
従って、本発明の目的は、キャスタブルと同等以上の耐用性を有する湿式吹付用不定形耐火組成物の施工方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、湿式吹付用耐火組成物の耐用性向上を図るため、混練した耐火原料を圧送し吹付ノズルにてアルカリ性ゲル化剤を圧搾空気で添加、混練する時の凝集システムに着目し、吹付施工厚みが厚い施工体を構築する場合にも均一な施工体が得られる吹付用不定形耐火組成物の施工方法について鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、粗粒〜超微粉に粒度調整された耐火性原料及び硬化剤からなる不定形耐火組成物に所定量の水を混練して得られた混練物を圧送機にて吹付ノズルへ圧送し、該吹付ノズルにて、アルカリ性ゲル化剤を圧搾空気にて添加、混合した後、吹付施工することからなる湿式吹付に使用するための不定形耐火組成物において、前記耐火性原料100重量%に対して、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上を外掛で0.01〜0.5重量%含有してなり、耐火性原料の耐火性超微粉が耐火性粘土、超微粉アルミナ、超微粉マグネシア、アルミナ・マグネシア組成の超微粉スピネル、超微粉チタニア、超微粉ジルコニア、超微粉クロミア、フライアッシュ、超微粉カーボン、炭化硼素超微粉及び炭化珪素超微粉の1種または2種以上であり、且つ硬化剤がハイアルミナセメント、珪酸ソーダ、リン酸塩、熱硬化性の澱粉、珪酸ソーダガラス、リン酸ソーダガラス、合成樹脂エマルジョンの1種または2種以上であることを特徴とする湿式吹付用不定形耐火組成物を提供することにある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の湿式吹付用不定形耐火組成物に使用可能な耐火性原料は、特に限定されるものではなく、例えば焼結アルミナ、電融アルミナ、ボーキサイト、バン土頁岩、ムライト、カイヤナイト、アンダリュサイト、シャモット、ロー石、珪石、天然に産するマグネサイトやその焼成物、海水より得られる海水マグネシアや電融マグネシア、アルミナ・マグネシアスピネル組成の焼結スピネル、電融スピネルあるいは合金精錬時に副産物として発生するスピネル鉱物を主体とした合金滓の粉砕物、クロム鉱、焼結あるいは電融マグネシア・クロム、ジルコン、ジルコニア、炭化珪素、黒鉛、ピッチ、処理コークスなどやそれらを原料として使用したれんが(使用後品も含む)等を例示することができ、慣用の湿式吹付用不定形耐火組成物と同様に粗粒〜超微粉に粒度調整された1種または2種以上を併用することができる。
【0014】
また、耐火性原料の耐火性超微粉として、耐火性粘土、仮焼アルミナなどの超微粉アルミナ、超微粉マグネシア、アルミナ・マグネシア組成の超微粉スピネル、超微粉チタニア、超微粉ジルコニア、超微粉クロミア、フライアッシュ、カーボンブラック等の超微粉カーボンや炭化硼素、炭化珪素超微粉の1種または2種以上を併用することもできる。
【0015】
本発明の湿式吹付用不定形耐火組成物では、湿式吹付時の凝集性を良好にし、高接着性を維持するため、アクリル酸またはカルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主体とする水溶性高分子化合物の1種あるいは2種以上を外掛で0.01〜0.5重量%配合することができる。該水溶性高分子化合物としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリカルボン酸カルシウム等のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩の重合体、共重合体の1種または2種以上が使用できる。この配合量が0.01重量%未満の場合には、吹付後の吹付材が吹付面から流れ出して接着率が低下すると同時に30mm以上の施工厚みの吹付施工体を構築することが困難となる。また、該配合量が0.5重量%を超えると、施工そのものには問題はないが、耐火物価格が上昇し、コマーシャルベースにはなり難い。
【0016】
ここで、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体あるいはそれらの縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種であるポリアクリル酸あるいはポリカルボン酸やそれらの塩は、シリカゾル、アミンシリケート、エチルシリケートなどの珪酸質結合剤のゲル化時間調整剤として使用すること(特開平7-149575号公報)や低セメントキャスタブルの分散剤として使用することは公知であるが、本発明のように、これら水溶性高分子化合物を湿式吹付用不定形耐火組成物に使用すると、吹付用ノズルにて添加されるアルカリ性ゲル化剤と容易に反応して凝集し、緻密な厚肉の吹付施工が可能になることはこれまで知られていなかった。
【0017】
また、本発明の湿式吹付用不定形耐火組成物には、吹付後に凝集した耐火組成物の硬化剤として、ハイアルミナセメント、珪酸ソーダ、リン酸塩や熱硬化性の澱粉、珪酸ソーダガラス、リン酸ソーダガラス、合成樹脂エマルジョンなどの1種または2種以上をが耐火性原料に混合、混練して使用できる。また、耐火性原料がマグネシアなどの塩基性物質でない場合には、混練溶液として、シリカゾル、アミンシリケート、エチルシリケートなどのコロイダルシリカを併用してもかまわない。
【0018】
更に、必要に応じて、アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末、発泡剤、金属ファイバー、有機ファイバー、セラミックファイバー、縮合燐酸塩などの分散剤を本発明の効果を阻害しない範囲で添加してもよい。
【0019】
吹付ノズルにて、本発明の湿式吹付用不定形耐火組成物へ圧搾空気にて添加するアルカリ性ゲル化剤としては、種々のアルカリ性物質が使用できる。例えば珪酸ソーダ、珪酸カリウム、硫酸塩、珪酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化カリウム等の粉末またはそれらの水溶液等が使用できるが、広く市販されており、容易に入手可能で、且つ分散性が良好な珪酸ソーダや珪酸カリウム溶液が望ましい。このアルカリ性ゲル化剤の添加量は、混練後の圧送材料に対して外掛で0.1〜3.0重量%(固形分として)が望ましい。ここで、添加量が0.1重量%未満の場合には、吹付時の接着性が低下するために好ましくなく、該添加量が3.0重量%を超えると、吹付ノズル内で凝集が始まり、施工性が低下するために好ましくない。
【0020】
吹付施工は、本発明の湿式吹付用不定形耐火組成物に水を4〜12重量%(外掛)添加、混練し、ピストンポンプやスクイズポンプあるいはスクリューポンプ等の圧送機器を使用し、配管内を圧送して配管先端に取り付けられた吹付ノズルにて圧搾空気にて送られたアルカリ性ゲル化剤と混合して吹付けられる。
【0021】
吹付は缶体鉄皮に直接行うか、永久張りとして施工されている断熱れんが、断熱ボード、耐火れんがあるいは吹付材や流し込み材の上に実施することができる。また、れんがや吹付材、流し込み材を使用した後の冷間補修用や使用時の熱間補修材としても使用できる。
【0022】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明する。
実施例1
本発明例と比較例の湿式吹付用不定形耐火組成物の配合割合と試験結果を表1に示す。表1に示す各配合物を所定量の水と混練した後、市販のピストン式コンクリートポンプを使用する湿式吹付工法にて吹付け、次に、105℃で24時間乾燥することによって施工体を得た。その後、該施工体を40mm×40mm×160mmの形状に切断して各試験用に試料を得た。試験結果を表1に併記する。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
表1中、コロイダルシリカとしては、SiO2固形分含量20重量%のものを使用した。更に、接着率は、施工面に接着した材料の重量を測定し、施工に使用した材料の総重量を100とした時の指数として表示したものである。また、曲げ強さは、JIS R2553に準じ、105℃乾燥後及び1500℃焼成後の各試料について測定したものである。更に、圧縮強さは、JIS R2555に準じ、105℃乾燥後及び1500℃焼成後の各試料について測定したものである。
【0027】
【発明の効果】
本発明の湿式吹付用不定形耐火組成物により下記の効果が得られる:
(1)冷間における吹付時の接着率が95%以上であり、従来の乾式や半乾式の吹付材の85%、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物を添加していない同様の湿式吹付材の90%の接着率と比較して高接着性である;
(2)また、従来の乾式、半乾式の吹付材や、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物を添加していない同様の湿式吹付材と比較して、本発明においては、施工時の組織ムラがなく、30mmを超える厚肉吹付施工体においても、均一な施工体を構築することができる;
(3)均一な施工体を構築することが可能であることにより、使用中の組織ギャップに起因した剥離の発生がなく、同様の組成を有する流し込み材と同等の耐用性が得られる。
 
訂正の要旨 特許第2965957号の明細書中、特許請求の範囲の減縮を目的として、
(a-1)特許請求の範囲の請求項1を削除し、
明りょうでない記載の釈明を目的として、
(a-2)[0012]段落の記載を削除し、(a-3)[0013]段落の「また、本発明は、」を、「即ち、本発明は、」と訂正し、(a-4)[0017]段落の記載を削除し、(a-5)[0018]段落の「また、シリカを主体とする超微粉の効果と同様の目的で、」を、「本発明の湿式吹付用不定形耐火組成物では、湿式吹付時の凝集性を良好にし、高接着性を維持するため、」と訂正し、(a-6)[0027]段落の【表1】を削除し、[0028]段落の【表2】中の本発明品7〜9を削除し、(a-7)[0033]段落の「シリカを主体とした超微粉や」(2カ所)を削除し、(b-1-2)[0013]段落の「粗粒〜超微粉に粒度調整された耐火性原料を少なくとも含有してなる不定形耐火組成物」を、「粗粒〜超微粉に粒度調整された耐火性原料及び硬化剤からなる不定形耐火組成物」と訂正し、
特許請求の範囲の減縮を目的として、
(b-2-1)特許請求の範囲の請求項2の「アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体またははそれらの縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上」を、「アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上」と訂正し、
明りょうでない記載の釈明を目的として、
(b-2-2)[0013]段落の「アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体またははそれらの縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上」を、「アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上」と訂正し、(b-2-3)[0018]段落の「アクリル酸またはカルボン酸の誘導体あるいはそれらの重合、共重合体を主体とする水溶性高分子化合物」を、「アクリル酸またはカルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体または重合体または共重合体を主体とする水溶性高分子化合物」と訂正し、(b-2-4)[0018]段落の「ポリカルボン酸カルシウム、ビスフェノールスルホン酸ナトリウム等のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩やそれらの」を、「ポリカルボン酸カルシウム等のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩の」と訂正し、(b-2-5)[0033]段落の「アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体あるいはそれらの縮合体」(2箇所)を、「アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体の縮合体」と訂正し、
特許請求の範囲の減縮を目的として、
(b-3-1)特許請求の範囲の請求項2の「含有してなる」を、「含有してなり、耐火性原料の耐火性超微粉が耐火性粘土、超微粉アルミナ、超微粉マグネシア、アルミナ・マグネシア組成の超微粉スピネル、超微粉チタニア、超微粉ジルコニア、超微粉クロミア、フライアッシュ、超微粉カーボン、炭化硼素超微粉及び炭化珪素超微粉の1種または2種以上であり、且つ硬化剤がハイアルミナセメント、珪酸ソーダ、リン酸塩、熱硬化性の澱粉、珪酸ソーダガラス、リン酸ソーダガラス、合成樹脂エマルジョンの1種または2種以上である」と訂正し、
明りょうでない記載の釈明を目的として、
(b-3-2)[0013]段落の「含有してなること」を、「含有してなり、耐火性原料の耐火性超微粉が耐火性粘土、超微粉アルミナ、超微粉マグネシア、アルミナ・マグネシア組成の超微粉スピネル、超微粉チタニア、超微粉ジルコニア、超微粉クロミア、フライアッシュ、超微粉カーボン、炭化硼素超微粉及び炭化珪素超微粉の1種または2種以上であり、且つ硬化剤がハイアルミナセメント、珪酸ソーダ、リン酸塩、熱硬化性の澱粉、珪酸ソーダガラス、リン酸ソーダガラス、合成樹脂エマルジョンの1種または2種以上であること」と訂正し、(b-3-3)[0021]段落の「ρ-アルミナ等の活性アルミナ、」を削除し、(b-3-4)[0029]段落の【表3】中の「本発明品13」を、「本発明品1」と訂正し、
特許請求の範囲の減縮を目的として、
(c-1)特許請求の範囲の請求項3を削除し、
明りょうでない記載の釈明を目的として、
(c-2)[0014]段落の記載を削除し、(c-3)[0019]段落の記載を削除し、(c-4)[0028]段落の【表2】の本発明品10及び11並びに[0029]段落の【表3】の本発明品12,14ないし16を削除し、(d-1)請求項1の削除に伴い、訂正後の請求項2の項番号を1に繰り上げ、請求項1とし、(d-2)段落及び表の削除に伴い、以降の段落及び表が通し番号となるように段落番号、表番号を順次繰り上げる。
異議決定日 2001-04-19 
出願番号 特願平10-120830
審決分類 P 1 651・ 16- YA (C04B)
P 1 651・ 537- YA (C04B)
P 1 651・ 832- YA (C04B)
P 1 651・ 113- YA (C04B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 加藤 孔一
特許庁審判官 唐戸 光雄
西村 和美
登録日 1999-08-13 
登録番号 特許第2965957号(P2965957)
権利者 品川白煉瓦株式会社
発明の名称 湿式吹付用不定形耐火組成物  
代理人 福井 宏司  
代理人 曾我 道治  
代理人 望月 孜郎  
代理人 高石 橘馬  
代理人 古川 秀利  
代理人 福井 宏司  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 池谷 豊  
代理人 曾我 道治  
代理人 池谷 豊  
代理人 望月 孜郎  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 古川 秀利  
代理人 曾我 道照  
代理人 曾我 道照  

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