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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  D06F
管理番号 1044942
異議申立番号 異議2000-72626  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-06-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-06-27 
確定日 2001-05-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3006440号「スチームアイロン」の請求項1、3、6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3006440号の請求項1、2、5に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕手続の経緯
特許第3006440号の請求項1〜6に係る発明についての出願は、平成6年11月30日に特許出願され、平成11年11月26日にその発明についての特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人東芝ホームテクノ株式会社より請求項1、3、6に係る特許につき特許異議の申立てがされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年1月19日に訂正請求がされたものである。

〔2〕訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
a)特許請求の範囲の請求項1に記載される「前記気化室への水の供給制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体を具備した」を「前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体を具備し、前記開口部をノズル部の直下に位置させた」と訂正する。
b)特許請求の範囲の請求項2を削除する。
c)特許請求の範囲の請求項3を新たな請求項2とし、同請求項2中の「・・・前記気化室への水の供給制御する開閉装置・・・」を「・・・前記気化室への水の供給を制御する開閉装置・・・」と訂正する。
d)特許請求の範囲の請求項4〜6を新たな請求項3〜5とする。
e)発明の詳細な説明の段落【0021】中の「前記気化室への水の供給制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体を具備した」を「前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体を具備し、前記開口部をノズル部の直下に位置させた」と訂正する。
f)発明の詳細な説明の段落【0022】中の記載を削除する。
g)発明の詳細な説明の段落【0023】中の「・・・前記気化室への水の供給制御する開閉装置・・・」を「・・・前記気化室への水の供給を制御する開閉装置・・・」と訂正し、「・・・第3の課題解決手段・・・」を「・・・第2の課題解決手段・・・」と訂正する。
h)発明の詳細な説明の段落【0024】中の「・・・第4の課題解決手段・・・」を「・・・第3の課題解決手段・・・」と訂正する。
j)発明の詳細な説明の段落【0025】中の「・・・第4の課題解決手段・・・」を「第3の課題解決手段・・・」と訂正し、「・・・第5の課題解決手段・・・」を「・・・第4の課題解決手段・・・」と訂正する。
k)発明の詳細な説明の段落【0029】中の「・・・確実に行える。」を「・・・確実に行えるとともに、ノズル部から滴下した水が水通路内に溜まることなく、気化室側へ供給することができるようになり、スチーム使用時の気化応答性を向上させることができる。」と訂正する。
l)発明の詳細な説明の段落【0030】中の記載を削除する。
m)発明の詳細な説明の段落【0031】中の「また、第3の課題解決手段により、・・・発生をなくすることができる。」を「また、第2の課題解決手段により、・・・発生をなくすることができる。そして、気化室が水の気化温度以下になると、バイメタルがその温度を感知して下方へ反転動作し、熱応動弁装置を介して導水路を閉じる。この状態ではポンプ装置を動作させても水は気化室へ供給されず、水通路に吐出された水は、ノズル部の小穴を下流側から逆流してタンク内に戻される。このとき、小穴をタンク側から通過する通常の緩やかな水の流れでは、取り除くことができないノズル部の上面に付着しているゴミ等も、ポンプ装置によって水を逆方向から勢いよく小穴を通過させることによって簡単に除去することができ、常に安定して水を滴下させることができる。」と訂正する。
n)発明の詳細な説明の段落【0032】中の「・・・第4の課題解決手段・・・」を「・・・第3の課題解決手段・・・」と訂正する。
o)発明の詳細な説明の段落【0033】中の「・・・第5の課題解決手段・・・」を「・・・第4の課題解決手段・・・」と訂正する。
p)発明の詳細な説明の段落【0065】中の「前記気化室への水の供給制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体を具備した」を「前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体を具備し、前記開口部をノズル部の直下に位置させた」と訂正し、「増量スチームを噴出させることができる。」を「増量スチームを噴出させることができ、さらに、ノズル部から滴下した水を直接に気化室側へ供給することができ、気化応答性を向上させて素早くスチームを噴出させることができる。」と訂正する。
q)発明の詳細な説明の段落【0066】中の記載を削除する。
r)発明の詳細な説明の段落【0067】中の「・・・前記気化室への水の供給制御する開閉装置・・・」を「・・・前記気化室への水の供給を制御する開閉装置・・・」と訂正する。

イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更
上記訂正事項aは、「開口部をノズル部の直下に位置させた」という構成要件をスチームアイロンに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当するものであり、特許明細書に記載された事項の範囲内においてスチームアイロンを限定するものといえるから、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

上記訂正事項bは、請求項を削除するものであるから減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

上記訂正事項cは、単なる誤記の訂正を目的とし、上記訂正事項dは、明りょうでない記載の釈明を目的とし、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。

上記訂正事項e〜rは、上記訂正事項a〜dの訂正にともない、詳細な説明の記載事項を整合するための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

〔3〕特許異議申立てについての判断
ア.本件発明
上記〔2〕で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1、請求項2、請求項5に係る発明(以下「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明3」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2、5に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】ヒータによって加熱するベースと、このベースに形成した気化室と、前記ベースの上方に配設した把手と、前記気化室へ供給する水を貯えるタンクと、このタンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体とを具備し、前記開口部をノズル部の直下に位置させたスチームアイロン。
【請求項2】ヒータによって加熱するベースと、このベースに形成した気化室と、前記ベースの上方に配設した把手と、前記気化室へ供給する水を貯えるタンクと、このタンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆って気化室側への水通路を形成する開口部を有した蓋体と、前記開口部の下流側に形成した気化室へ通じる導水路と、前記気化室が水の気化温度に加熱されているときに前記導水路を開く熱応動弁装置とを具備したスチームアイロン。
【請求項5】開閉装置とポンプ装置および蓋体をタンクに設けるとともに、このタンクをアイロン本体に対して着脱自在に構成した請求項1〜4のいずれか1項に記載のスチームアイロン。」

イ.引用刊行物に記載された発明
当審で通知した取消の理由で引用した刊行物1(実公平4-9999号公報、以下「刊行物1」という。)には、第1〜3図とともに、以下のとおりの事項が記載されている。
(1)「本考案の実施例を図面に基づいて説明する。1は、熱良導性材料からなるベースで、ヒータ2を有し、且つ凹所を設け該凹所をベース蓋3により覆って気化室4を形成している。又、ベース1は、気化室4と連通するスチーム孔5を形成している。尚、気化室4内は図示しない複数のリブによって区画されており、後述する夫々の連通孔10,11,12からの滴下水による蒸気は、まず後方に移動し、そして左右に分岐して前方に移動し前記スチーム孔5より噴出される様にしている。従って、後述する連通孔10が最上流側に位置し、連通孔10からの滴下水による蒸気が一番長くベース面に触れることになり、一番多い加熱量を受けることになる。6は、前記ベース蓋3の上面に配設されるパッキングで、中央に案内筒7を垂下形成した係合筒8を有し、その後方を延接してベース蓋3の上面との間に水平方向の水通路9を形成し、ベース蓋の熱で予備加熱されるようにしている。而して、この水通路9に位置するベース蓋3には、前記案内筒7と対向する位置に第1連通孔10、そしてこの第1連通孔の後方に順に第2連通孔11、第3連通孔12が形成されており、前記第1、第2連通孔10,11には、バネ材により常時閉塞する弁装置13,14が設けられている。15は、前記パッキング6を固定する取付板で、前記パッキング6の係合筒8を突出せしめると共に前記第2連通孔11の弁装置14と対向するパッキング6の部分に透孔15′を設けている。16は、前記取付板15の上方に設けた断熱板で、前記パッキング6の係合筒8の上面を露呈せしめている。17は前記断熱板16の上面に設置した基台で、上部に握り部18を設け、且つ握り部18の前部を前方に延設して膨出部19を設けている。20は前記断熱板16と膨出部19の間に着脱自在に設けたタンクで、前面に注水口21を設け、そしてこの注水口をスライド自在な蓋体22により閉塞自在としている。又、タンク20の底部には、開閉杆23により開閉されるノズル24と、ポンプ装置25の各々の送水路26,27を形成したシリコンゴムよりなる仕切部材28’を内装し、そして、底部にこれら送水路26,27を1つに結合して外部に連絡せしめる吐出口28を形成したノズル部材29が設けられている。このノズル部材29はタンク20の装着時前記パッキング6の上面に密着し、吐出口28を介して案内筒7に水を供給することになる。」(第2欄第18行〜第3欄第39行)
(2)「尚、吐出口28の開口面積は、案内筒7の開口面積より小さくされている。而して、このノズル部材29により、ノズル24とポンプ装置25をタンク20に設けてもパッキング6との結合部を1ケ所することができる。前記開閉杆23は、常に下方に向かって広がろうとする力を有したC状のバネ板30の一端に連係しており、このバネ板30の他端側に設けた突起部材31を基台17の膨出部19に設けた切換ボタン32と連係する操作棒33により押圧操作することで上下動することになる。尚、第1図は、ノズル24を開いた状態であり、第2図は閉じた状態を示す。又、ポンプ装置25のシリンダー34は、切換ボタン32の後方に設けたパワーボタン35の操作により上下動し、それに伴なうポンプ作用で送水路27にタンク20内の水を吐出する。36は、一端を前記第2連通孔11の弁装置14と対応し取付板15の透孔15′て露呈せしめられた前記パッキング6の部分に位置せしめ、他端を基台17内を通して上方まで延設せしめ、前記パワーボタン35の後方に設けたスチーム調節ボタン37に連係せしめた作動杆で、スチーム調節ボタン37を押圧操作するとこの作動杆36は、パッキング6を介して弁装置14を押圧し、第2連通孔11を開くものである。38は、前記タンク20に係合する係合部材39を操作し、タンク20を着脱自在とする着脱ボタンである。」(第4欄第4〜30行)
(3)「以上の構成における動作を説明する。まず、切換ボタン32によりノズル24を開くと、送水路26、パッキング6の案内筒7を介して水通路9内に水が滴下される。この時、スチーム調節ボタン37によって第2連通孔11を閉じている時は、第3連通孔12によって気化室4に滴下される水の量が制御され、普通のスチームがスチーム孔より噴出される。また、第2連通孔11が開いている時は、前者に比べ増量のスチームが噴出されることになる。また、パワーボタン35を操作してポンプ装置25を駆動すると、ポンプ装置25より送水路27を介して吐出される水は、その水圧で第1連通孔10の弁装置を押し下げてこの孔10を開く。従って気化室4内に水が勢いよく流入し、瞬間的に強力なスチームが噴出されることになる。而して、気化室4内に流入する水は、ノズル24からの水に比べるとその量は多いが、前述した様に第1連通孔10に対応する気化室4の部分がその他の部分に比べ気化能力が大きいので、その全てを十分気化することができる。」(第5欄第10行〜第6欄第1行)

同じく引用した刊行物2(特開平1-153186号公報、以下「刊行物2」という。)には、第1〜3図とともに以下の事項が記載されている。
(4)「36はベース22に設けた凹部37内に配置した反転式バイメタル等の熱応動部材で、その上方には一端に弁装置29の弁軸38を固定した可動板39を設けるとともに、その一部に前記熱応動部材36に向かって折曲部40を形成し、熱応動部材36が反転したときに上方へ押上げられるもので、下方に押しつけられた他端を支点として弁軸38を上昇させる。上記可動板39はスプリング41により常に熱応動部材36側に付勢され、これにより弁軸38も下方に付勢され、これにより弁軸38も下方に付勢され 一体に設けた錐形部42の下部に配した弁パッキン43で水路25を閉じることができ、常閉の弁装置29をベース22に形成することができる。44はタンク26の底部に設けた熱応動部材36と水路の気化室24側出口の間に配したノズルで、前記錐形部の直上に配してありタンク26内の水を制限して気化室24へ供給することができ、開閉装置27により使用者がベース22温度とは無関係に開閉することができる。上記構成において、アイロン本体20をスタンド32から取り外してスチームを利用してアイロンがけをする場合について説明する。温度制御手段35によりヒーター21への通電を制御してベース22を任意の温度に加熱を開始する。次にスチーム釦28の押圧を解除し、開閉装置27を上昇させ、ノズル44の開口を開放する。ヒータ21への通電初期のようにベース22の温度が熱応動部材36の設定温度以下の時は熱応動部材36は第1図の実線で示す状態にあり、弁装置29は水路25を閉塞している。従って、水路25内には水が流入せず、ノズル44が開放されても気化室24内へ供給されることはない。そして、ヒータ21によりベース22が加熱され熱応動部材36の設定温度、すなわち水を気化する為に適正な温度に達した時、熱応動部材は第2図の鎖線のように反転し、可動板39を介して弁軸38を上昇させ、弁装置29により水路を開放する。」(第2頁右下欄第4行〜第3頁右上欄第1行)

ウ.対比・判断
本件発明1と、刊行物1、2に記載されたものを対比すると、
刊行物1には、「ヒータによって加熱するベースと、このベースに形成した気化室と、前記ベースの上方に配設した把手と、前記気化室へ供給する水を貯えるタンクと、このタンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体とを具備し」た構成を有しており、
刊行物2には、「ヒータによって加熱するベースと、このベースに形成した気化室と、前記ベースの上方に配設した把手と、前記気化室へ供給する水を貯えるタンクと、このタンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、タンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続する」構成を具備しているが、
本件発明の必須構成要件である「開口部をノズル部の直下に位置させた」構成を具備していない。
そして、本件発明は、上記構成を具備することにより、「開口部をノズル直下に位置させたから、ノズル部から滴下した水を直接に気化室側へ供給することができ、気化応答性を向上させて素早くスチームを噴出させることができる。」という明細書に記載の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1、2に基づいて当業者が容易に想到できるものとは認められない。

本件発明2と刊行物1、2に記載されたものを対比すると、
刊行物1には、「ヒータによって加熱するベースと、このベースに形成した気化室と、前記ベースの上方に配設した把手と、前記気化室へ供給する水を貯えるタンクと、このタンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆って気化室側への水通路を形成する開口部を有した蓋体と、前記開口部の下流側に形成した気化室へ通じる導水路とを具備したスチームアイロン」の構成を有しており、
刊行物2には、「ヒータによって加熱するベースと、このベースに形成した気化室と、前記ベースの上方に配設した把手と、前記気化室へ供給する水を貯えるタンクと、このタンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、気化室へ通じる導水路と、前記気化室が水の気化温度に加熱されているときに前記導水路を開く熱応動弁装置とを具備したスチームアイロン」の構成を有している。
しかしながら、本件発明2は、「タンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆って気化室側への水通路を形成する開口部を有した蓋体と、前記開口部の下流側に形成した気化室へ通じる導水路と、前記気化室が水の気化温度に加熱されているときに前記導水路を開く熱応動弁装置とを具備した」ものであり、
これらの構成を有することにより、「ノズル部から滴下した水と、ポンプ装置から吐出される多量の水の両方を、気化室へ供給されないようにしたことにより、使用中の誤動作による不用意な熱湯の流出を確実に防止することができるとともに、熱応動弁装置を介して導水路が閉じられている状態でポンプ装置を動作させた場合は、ノズル部から滴下した水と、ポンプ装置から吐出される多量の水の両方を、気化室へ供給されないように導水路を閉じているため、水通路に吐出された水は、ノズル部の小穴を下流側から勢いよく通過してタンク内に戻すことができ、通常の緩やかな水の流れでは取り除くことができないノズル部に付着しているゴミ等を除去することができきるため、常に安定して水を滴下させることができる。」という格別の効果を奏するものである。

したがって、本件発明2は、刊行物1、2に記載された発明を組み合わせることによって、当業者が容易に想到できるものということはできない。

本件発明3は、本件発明1、2に構成を付加し減縮したものであって、本件発明1、2が刊行物1、2により当業者が容易に発明できたものと認められないのと同様の理由により、刊行物1、2により当業者が容易に発明することができたものと認められない。

〔4〕むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1、2、5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スチームアイロン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ヒータによって加熱するベースと、このベースに形成した気化室と、前記ベースの上方に配設した把手と、前記気化室へ供給する水を貯えるタンクと、このタンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体とを具備し、前記開口部をノズル部の直下に位置させたスチームアイロン。
【請求項2】 ヒータによって加熱するベースと、このベースに形成した気化室と、前記ベースの上方に配設した把手と、前記気化室へ供給する水を貯えるタンクと、このタンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆って気化室側への水通路を形成する開口部を有した蓋体と、前記開口部の下流側に形成した気化室へ通じる導水路と、前記気化室が水の気化温度に加熱されているときに前記導水路を開く熱応動弁装置とを具備したスチームアイロン。
【請求項3】 水通路と連通するポンプ装置の吐出口を可撓性材料からなる筒状の逆止弁で閉塞した請求項1記載のスチームアイロン。
【請求項4】 逆止弁をタンクの底部を構成するタンク底部材と蓋体で挟持した請求項3記載のスチームアイロン。
【請求項5】 開閉装置とポンプ装置および蓋体をタンクに設けるとともに、このタンクをアイロン本体に対して着脱自在に構成した請求項1〜4のいづれか1項に記載のスチームアイロン。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、衣類等に水分を与えてしわ伸ばしを行うスチームアイロンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のスチームアイロンは、例えば特開昭60-129095号公報に示されているように、図8のような構成になっていた。すなわち、ヒータ1で加熱されるベース2に気化室3が設けられており、タンク4内の水をノズル部5から気化室3へ滴下させてスチームを噴出させるもので、ノズル部5はスチーム釦6で操作する開閉装置7により開閉される。
【0003】
そして、アイロンがけを行う衣類のしわ伸ばし効果を高めるためにポンプ装置8を有し、一時的に多量の水を気化室3へ強制的に供給して増量スチームを噴出させることができるようになっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の構成では、タンク4に設けられたノズル部5とポンプ装置8は、各々別々に気化室3と結合させているため、シール構成が複雑であるとともに、長期に亘って結合部からの水漏れを防止することが難しいという問題があった。
【0005】
また、ヒータ1に通電した後、気化室3が水の気化温度に到達する以前に、使用者が誤ってスチーム釦6を操作し、ノズル部5を開いて使用を開始した場合、気化室3に滴下した水が蒸発せずに熱湯のまま流出し、衣類を汚してしまうという問題があった。
【0006】
また、アイロンがけ作業中にポンプ装置7を多用した場合、気化室3が水によって急速に冷やされて水の気化温度以下に低下すると、前記と同様に気化室3に供給された水が蒸発せずに熱湯のまま流出し、衣類を汚してしまうという問題があった。
【0007】
また、使用後もタンク4内に水を残した状態でノズル部5を閉じるのを忘れると、保管中にタンク4内の水が気化室3へ漏出して腐食させるという問題があった。
【0008】
このような問題を解消するために、例えば特開昭61-263493号公報に示されているようなスチームアイロンが考えられている。具体的には図9に示すように、タンク4と気化室3を連結した導水路9に熱応動弁装置10を設け、気化室3が水の気化温度に加熱されているとき、バイメタル11がベース2の熱を感知して上方へ反転し、熱応動弁装置10を押上げて導水路9を開くようにしたものである。
【0009】
そして、導水路9にはポンプ装置12が連設してあり、このポンプ装置12は操作部13を上下動させることにより、タンク4内の水を導水路9からシリンダ14内に引き込んだ後、導水路9の気化室3側に吐出して多量の水を気化室3へ供給し、増量スチームを噴出させることができる。
【0010】
また、このポンプ装置12の操作部13を下方へ押し下げた状態に維持することにより導水路9を閉じることができ、タンク4から気化室3への水の供給を停止することができるとともに、操作部13を上方へ押し上げられた状態に維持することにより導水路9を開くことができ、気化室3に水を供給して通常のスチームを噴出させることができる。
【0011】
このような構成の場合、タンク4の水出口とポンプ装置12および熱応動弁装置10を、水平方向に位置をずらせて配設しなければならない構造上の制約から、導水路9の入口から出口までの距離がベース2の上面に沿って長くなるため、導水路9の開閉操作を行ってからスチームが噴出,停止するまでに時間的なずれが生じて応答性が悪いという問題があった。
【0012】
また、スチームを止めた状態で使用すると導水路9がベース2からの熱を受けて過熱されるため、このような状態からスチームを噴出させるべく導水路9に水を流入させると、水が導水路9内で沸騰して気泡が溜まり、この気泡が狭い導水路9を塞いで水の円滑な流動を阻害して安定したスチームを噴出させることができなくなるという問題があった。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
本発明は、このような従来の問題を解消して使い勝手のよいスチームアイロンを実現するもので、タンクと気化室の水密接続を確実にするとともに、タンクから気化室へ水を円滑に供給して良好なスチームと増量スチームを得ることを目的としている。
【0020】
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するために、ヒータによって加熱するベースと、このベースに形成した気化室と、前記ベースの上方に配設した把手と、前記気化室へ供給する水を貯えるタンクと、このタンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体とを具備し、前記開口部をノズル部の直下に位置させたことを第1の課題解決手段としている。
【0022】
【0023】
また、ヒータによって加熱するベースと、このベースに形成した気化室と、前記ベースの上方に配設した把手と、前記気化室へ供給する水を貯えるタンクと、このタンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆って気化室側への水通路を形成する開口部を有した蓋体と、前記開口部の下流側に形成した気化室へ通じる導水路と、前記気化室が水の気化温度に加熱されているときに前記導水路を開く熱応動弁装置とを具備したことを第2の課題解決手段としている。
【0024】
また、水通路と連通するポンプ装置の吐出口を可撓性材料からなる筒状の逆止弁で閉塞したことを第3の課題解決手段としている。
【0025】
また、第3の課題解決手段の逆止弁を、逆止弁をタンクの底部を構成するタンク底部材と蓋体で挟持したことを第4の課題解決手段としている。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【作用】
本発明は、上記第1の課題解決手段により、ノズル部から滴下する水とポンプ装置から吐出される水を1つの開口部から気化室側へ供給できるようになり、気化室とタンクとのシール結合が確実に行えるとともに、ノズル部から滴下した水が水通路内に溜まることなく、気化室側へ供給することができるようになり、スチーム使用時の気化応答性を向上させることができる。
【0030】
【0031】
また、第2の課題解決手段により、気化室に至る導水路の長さを短くすることができるようになり、導水路内での水の過熱を防止して気泡の発生をなくすことができる。そして、気化室が水の気化温度以下になると、バイメタルがその温度を感知して下方へ反転動作し、熱応動弁装置を介して導水路を閉じる。この状態ではポンプ装置を動作させても水は気化室へ供給されず、水通路に吐出された水は、ノズル部の小穴を下流側から逆流してタンク内に戻される。このとき、小穴をタンク側から通過する通常の緩やかな水の流れでは、取り除くことができないノズル部の上面に付着しているゴミ等も、ポンプ装置によって水を逆方向から勢いよく小穴を通過させることによって簡単に除去することができ、常に安定して水を滴下させることができる。」
【0032】
また、第3の課題解決手段により、アイロンがけによる振動や衝撃によって逆止弁が開くの防止することができるようになり、ノズル部を閉じた状態で使用しているときに、ポンプ装置内にある水が水通路を経て気化室へ漏出するのを防止することができる。
【0033】
また、第4の課題解決手段により、逆止弁を押し下げて吐出した水を水通路内に勢いよく拡散させることができるようになり、水通路内の不純物を洗い流すことができる。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を添付図面にもとづいて説明する、図1〜図6において、20はヒータ21によって加熱されるベースで、気化室蓋22で覆われた気化室23を形成している。24は前記ベース20の上面側を覆う耐熱樹脂製のカバーで、このカバー24の後部上面に前後方向に握り部25を設けた把手26を取り付けている。
【0038】
27は前記気化室23に供給する水を貯えるタンクで、前記カバー24上に着脱自在に取り付けられており、このタンク27を取り付けた状態に保持する解除可能なロック装置(図示せず)が把手26に設けられている。
【0039】
また、このタンク27はその上面を構成するタンク上部材27aと、タンク27の底部を構成するタンク底部材27bと、タンク上部材27aの上方前部に取り付けた注水部27cを有しており、この注水部27cの前面にはタンク27に水を入れるための注水口27dを設けている。
【0040】
そして、タンク上部材27aの先端には、注水部27cの下端より前方へ膨出させた膨出部27eを形成するとともに、この膨出部27eと注水部27cの間には窪み27fが設けてある。この窪み27fは、実質的にベース2の底面に対する膨出部27eの傾斜角度α1と、このα1より大きい注水部27cの傾斜角度α2の違いにより形成されている。
【0041】
また、この膨出部27eはカバー24前部の上面と側面を外側から覆っており、カバー24の露出する側面が前部に向かって徐々に小さくなるように下方へ傾斜させて、膨出部27eがタンク底部材27bより低い位置に設けられている。
【0042】
28はタンク底部材27bに設けたノズル部で、タンク27内の水を前記小穴28aによって所定の量に制限して気化室23側へ滴下させる。そして、このノズル部28は、金属,セラミック,樹脂等の材料で構成するとともに、タンク底部材27bに対して超音波溶着,インサート成型,或いはパッキングを介在させてネジ止する等、一般的な手段により水密的に固着するほか、タンク底部材27bに直接小穴28aを設けて形成してもよい。
【0043】
29は下端を前記ノズル部28に対向させて上下動自在に設けた開閉装置で、スプリング30で上方へ付勢されるとともに、スチーム釦により構成した第1の操作部31の手動による上下動操作により、ノズル部28を開閉して気化室23への水の供給を制御する。
【0044】
そして、この第1の操作部31はタンク27の上面に突出させてあり、注水部27cに内蔵したラチェットスプライン機構により、ノズル部28を閉じた状態と開いた状態に保持することができるようになっている。
【0045】
32はタンク27内の水を気化室23へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置で、シリンダ33内に設けたピストン34の往復運動により、タンク27内の水を吸い込み口35から吸引し、タンク底部材27bに開放した吐出口36から排出する。前記ピストン34はタンク27の上面に突出させた第2の操作部37で手動操作され、スプリング38により上方に付勢されている。
【0046】
39はポンプ装置32の吐出口36とノズル部28の出口側を覆ってタンク底部材27bに固着した蓋体で、前記タンク底部材27bとの間に水通路40を形成するとともに、気化室23へ通じる開口部41をノズル部28の直下に設けてあり、この開口部41はノズル部28の小穴28aより大径に形成している。
【0047】
42はポンプ装置32の吐出口36に対向して水通路40内に設けた逆止弁で、可撓性材料により有底筒状に形成してあり、タンク底部材27bと蓋体39で挟持している。
【0048】
前記開閉装置の第1の操作部31と、ポンプ装置32の第2の操作部37は、アイロンの前後方向に延びている握り部25方向と、交差する方向に並べて配置するとともに、第2の操作部37の上部に設けている平らな操作面37aの面積を、第1の操作部31の上部に設けている平らな操作面31aの面積より大きくしている。
【0049】
43は開口部41と気化室23を接続してタンク27内の水を気化室23へ導く導水路で、ベース20上に取り付けた支持体44上に構成してベース20とカバー24の間に形成されている空間部に配設されており、タンク27を取り付けたときにカバー24の上面に臨ませてベース20側に固着したパッキング45により、蓋体39の開口部41と水密的に接続される。
【0050】
46は導水路43に設けられた熱応動弁装置で、ベース20に反転自在に設けたバイメタル47の動作に連係して導水路43を開閉するもので、開口部41の下方に配置されており、気化室23が水の気化温度に加熱されているときに上方へ変位して導水路43を開き、気化温度以下のときは下方へ変位して導水路43を閉じるように構成している。
【0051】
次に、上記一実施例における作用を説明する。まず、ヒータ21に通電して気化室23が水の気化温度に加熱されると、バイメタル47が上方へ反転動作して熱応動弁装置46を上方へ変位させて導水路43を開き、タンク27と気化室23を連通させる。
【0052】
ここで、第1の操作部31を操作してノズル部28を開くと、貯えられたタンク27内の水は小穴28aから開口部41を通して導水路43内に滴下して気化室23に流入し、気化してスチーム穴48からスチームが噴出する。
【0053】
スチームの噴出を停止するときは、第1の操作部31を操作してノズル部28を閉じることにより気化室23への水の供給を停止することができ、第1の操作部31を操作に応答して素早く切替えることができる。
【0054】
そして、衣類に多量の水分を供給するときは、第2の操作部37を上下動させることによってポンプ装置32を動作させることができる。ピストン34の往復運動により、シリンダ33内の水は吐出口36を閉じている逆止弁42の付勢力に抗してこの逆止弁42を押し下げ、開かれた吐出口36から水通路40内へ水が勢いよく押し出される。
【0055】
水通路40に吐出された水は、水通路40から開口部41を通して導水路43内に入り、気化室23に流入して多量のスチームを発生させ、スチーム穴48から増量スチームを噴出させる。この増量スチームは気化室23の温度低下に関連して、第2の操作部37の操作により所定時間継続することができる。
【0056】
そして、気化室23が水の気化温度以下になると、バイメタル47がその温度を感知して下方へ反転動作し、熱応動弁装置46を介して導水路43を閉じる。この状態ではポンプ装置32を動作させても水は気化室23へ供給されず、水通路40に吐出された水は、ノズル部28の小穴28aを下流側から逆流してタンク27内に戻される。
【0057】
このとき、小穴28aをタンク27側から通過する通常の緩やかな水の流れでは、取り除くことができないノズル部28の上面に付着しているゴミ等も、ポンプ装置32によって水を逆方向から勢いよく小穴28aを通過させることによって簡単に除去することができ、常に安定して水を滴下させることができる。
【0058】
このように、タンク27の異なった2箇所から出される水の両方を、開口部41から気化室23へ供給することができ、気化室23側との接続を簡素化して確実に水密結合させることができる。
【0059】
また、熱応動弁装置46を開口部41の下方に設けているため、この熱応動弁装置46を通過した水をすぐに気化室23へ供給することができ、ベース20の上面に沿って延びる導水路43の長さを短くすることができる。
【0060】
また、ポンプ装置32の吐出口36に対向して設けた逆止弁42を、筒状に形成した可撓性材料で閉じる方向に付勢した構成としているため、アイロンがけによる振動や衝撃によって開くことがなく、ノズル部28を閉じた状態で使用しているときに、シリンダ33内にある水が水通路40へ漏出するのを防止して、スチームの停止状態を確実に保持することができる。
【0061】
図7は本発明の他の実施例を示したものである。なお、第1の実施例と同じ構成のものは同一符号を付して説明を省略する。図に示すように、この実施例は着脱自在なタンク27に代えて、把手49とカバー50でタンク51を構成したものである。
【0062】
すなわち、ポンプ装置32の吐出口36とノズル部28の出口側を覆って、カバー50の下面側に蓋体39を固着したもので、この蓋体39とカバー50との間に水通路40を形成するとともに、気化室23に通じる開口部41をノズル部28の直下に設けたものである。
【0063】
この実施例においても、前記と同様にタンク51の異なった2箇所から出される水の両方を、開口部41から気化室23へ供給することができ、気化室23側との接続を簡素化して確実に水密結合させることができる。
【0064】
なお、開口部41と気化室23を導水路43で接続し、この導水路43を熱応動弁装置46によって開閉することができることはいうまでもない。
【0065】
【発明の効果】
以上のように本発明のスチームアイロンは、ヒータによって加熱するベースと、このベースに形成した気化室と、前記ベースの上方に配設した把手と、前記気化室へ供給する水を貯えるタンクと、このタンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体とを具備し、前記開口部をノズル部の直下に位置させたから、ノズル部から滴下する水とポンプ装置から吐出される水を、気化室に通じる開口部から供給することができ、気化室とのシール結合部を少なくしてタンクと気化室を確実に水密接続することができるとともに、タンク内の水を気化室へ円滑に供給して良好なスチームと増量スチームを噴出させることができ、さらに、ノズル部から滴下した水を直接に気化室側へ供給することができ、気化応答性を向上させて素早くスチームを噴出させることができる。
【0066】
【0067】
また、ヒータによって加熱するベースと、このベースに形成した気化室と、前記ベースの上方に配設した把手と、前記気化室へ供給する水を貯えるタンクと、このタンクの底部に設けたノズル部と、このノズル部を開閉して前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆って気化室側への水通路を形成する開口部を有した蓋体と、前記開口部の下流側に形成した気化室へ通じる導水路と、前記気化室が水の気化温度に加熱されているときに前記導水路を開く熱応動弁装置とを具備したから、導水路の入口から出口までの長さを短くしてタンク内の水を素早く気化室へ供給することができるとともに、誤操作による不用意な熱湯の流出を確実に防止することができる。
【0068】
また、水通路と連通するポンプ装置の吐出口を可撓性材料からなる筒状の逆止弁で閉塞したから、ノズル部を閉じた状態、すなわち、ドライで使用しているときのスチームの噴出を確実に防止することができ、アイロンがけする衣類から短時間で水分を取り除くことができる。
【0069】
また、逆止弁をタンクの底部を構成するタンク底部材と蓋体で挟持したから、ポンプ装置を動作させるたびに勢いよく水通路内に水を拡散させて、同水通路内を洗浄することができ、常に安定したスチームと増量スチームを噴出させることができる。
【0070】
【0071】
【0072】
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のスチームアイロンの一実施例を示した要部断面図
【図2】
同スチームアイロンのタンクの要部断面図
【図3】
同スチームアイロンのベースの要部上面図
【図4】
同スチームアイロンのベースのA-A断面図
【図5】
同スチームアイロンの要部上面図
【図6】
同スチームアイロンの側面図
【図7】
本発明のスチームアイロンの他の実施例を示した要部断面図
【図8】
従来のスチームアイロンの要部断面図
【図9】
従来の他のスチームアイロンの要部断面図
【図10】
従来の他のスチームアイロンの要部断面図
【符号の説明】
20 ベース
21 ヒータ
23 気化室
26 把手
27 タンク
28 ノズル部
29 開閉装置
32 ポンプ装置
39 蓋体
40 水通路
41 開口部
 
訂正の要旨 特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
a)特許請求の範囲の請求項1に記載される「前記気化室への水の供給制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体を具備した」を「前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体を具備し、前記開口部をノズル部の直下に位置させた」と訂正する。
b)特許請求の範囲の請求項2を削除する。
c)特許請求の範囲の請求項3を新たな請求項2とし、同請求項2中の「・・・前記気化室への水の供給制御する開閉装置・・・」を「・・・前記気化室への水の供給を制御する開閉装置・・・」と訂正する。
d)特許請求の範囲の請求項4〜6を新たな請求項3〜5とする。
e)発明の詳細な説明の段落【0021】中の「前記気化室への水の供給制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体を具備した」を「前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体を具備し、前記開口部をノズル部の直下に位置させた」と訂正する。
f)発明の詳細な説明の段落【0022】中の記載を削除する。
g)発明の詳細な説明の段落【0023】中の「・・・前記気化室への水の供給制御する開閉装置・・・」を「・・・前記気化室への水の供給を制御する開閉装置・・・」と訂正し、「・・・第3の課題解決手段・・・」を「・・・第2の課題解決手段・・・」と訂正する。
h)発明の詳細な説明の段落【0024】中の「・・・第4の課題解決手段・・・」を「・・・第3の課題解決手段・・・」と訂正する。
j)発明の詳細な説明の段落【0025】中の「・・・第4の課題解決手段・・・」を「第3の課題解決手段・・・」と訂正し、「・・・第5の課題解決手段・・・」を「・・・第4の課題解決手段・・・」と訂正する。
k)発明の詳細な説明の段落【0029】中の「・・・確実に伝える。」を「・・・確実に伝えるとともに,ノズル部から滴下した水が水通路内に溜まることなく、気化室側へ供給することができるようになり、スチーム使用時の気化応答性を向上させることができる。」と訂正する。
l)発明の詳細な説明の段落【0030】中の記載を削除する。
m)発明の詳細な説明の段落【0031】中の「また、第3の課題解決手段により、・・・発生をなくすることができる。」を「また、第2の課題解決手段により、・・・発生をなくすることができる。そして、気化室が水の気化温度以下になると、バイメタルがその温度を感知して下方へ反転動作し、熱応動弁装置を介して導水路を閉じる。この状態ではポンプ装置を動作させても水は気化室へ供給されず、水通路に吐出された水は、ノズル部の小穴を下流側から逆流してタンク内に戻される。このとき、小穴をタンク側かう通過する通常の緩やかな水の流れでは、取り除くことができないノズル部の上面に付着しているゴミ等も、ポンプ装置によって水を逆方向から勢いよく小穴を通過させることによって簡単に除去することができ、常に安定して水を滴下させることができる。」と訂正する。
n)発明の詳細な説明の段落【0032】中の「・・・第4の課題解決手段・・・」を「・・・第3の課題解決手段・・・」と訂正する。
o)発明の詳細な説明の段落【0033】中の「・・・第5の課題解決手段・・・」を「・・・第4の課題解決手段・・・」と訂正する。
p)発明の詳細な説明の段落【0065】中の「前記気化室への水の供給制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体を具備した」を「前記気化室への水の供給を制御する開閉装置と、多量の水を気化室へ供給して増量スチームを発生させるポンプ装置と、このポンプ装置の出口と前記ノズル部の出口を覆ってタンクの下方に水通路を形成して気化室側と接続するとともに、前記ノズル部の小穴より大径の開口部を有する蓋体を具備し、前記開口部をノズル部の直下に位置させた」と訂正し、「増量スチームを噴出させることができる。」を「増量スチームを噴出させることができ、さらに、ノズル部から滴下した水を直接に気化室側へ供給することができ、気化応答性を向上させて素早くスチームを噴出させることができる。」と訂正する。
q)発明の詳細な説明の段落【0066】中の記載を削除する。
r)発明の詳細な説明の段落【0067】中の「・・・前記気化室への水の供給制御する開閉装置・・・」を「・・・前記気化室への水の供給を制御する開閉装置・・・」と訂正する。
異議決定日 2001-03-16 
出願番号 特願平6-296582
審決分類 P 1 652・ 121- YA (D06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 藤原 稲治郎
和泉 等
登録日 1999-11-26 
登録番号 特許第3006440号(P3006440)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 スチームアイロン  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 岩橋 文雄  

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