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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01K
管理番号 1045977
審判番号 審判1999-9479  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-10-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-06-10 
確定日 2001-08-24 
事件の表示 平成4年特許願第88193号「発電システム」拒絶査定に対する審判事件[平成5年10月5日出願公開、特開平5-256108]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成4年3月12日の出願であって、その請求項1〜4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1〜4にそれぞれ記載されたものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものであると認める。
「天然熱エネルギーによって強制的に気化された気体状態低沸点媒体の上昇運動を利用した発電装置部と、天然熱エネルギーによって強制的に液化された液体状態低沸点媒体の落下運動を利用した発電装置部とを、十分な高低差を有する一つの閉鎖型管路内に組み込んで、液体状態低沸点媒体の落下運動が、平均自由行路内への液体状態低沸点媒体の気化傾向を促進させ、気体状態低沸点媒体の上昇運動を利用した発電装置部の発電能力に関与し、他方、該平均自由行路内への液体状態低沸点媒体の気化促進が、平均自由行路側閉鎖型管路への液体状態低沸点媒体の移動方向を促進させ、液体状態低沸点媒体の落下運動を利用した発電装置部の発電能力に関与する相互扶助機構を構成するようにし、天然熱エネルギーによって強制的且つ交互に気化、液化を繰り返して相を変えて得られる上昇および落下の各運動エネルギーが補強されるようにしてなることを特徴とする発電システム。」
なお、請求項1には、「液体状態低沸点楳体の移動方向」と記載されているが、該記載中の「楳体」は「媒体」の誤記と認め、本願発明を上記のように認定した。

2.刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本出願前国内で頒布された特開昭61-98974号公報(以下、「刊行物1」という。)には、
(イ)「この発明の一実施例を図面に基づいて説明すると、低温でも高圧ガスとなり得るフロンなどの低沸点物質を作動媒体とする低沸点媒体タービン1並びに水車2による発電装置において、前記低沸点媒体タービン1の近傍に100℃以下の地熱温水加熱による蒸発器4を、また前記発電装置よりも高所に建設した水頭・落差を有する雪水ダム5に、低沸点媒体蒸気の凝縮器6を、それぞれ配設することにより、前記のタービン1を低沸点媒体の高圧蒸気により回すとともに、前記水車1を雪水ダムの融雪水の水頭・落差により回すシステムである。」(第1頁右下欄17行〜第2頁左上欄8行)、
(ロ)「(1)フロンなどの凝縮器6は雪水ダム5の雪水の中に設けられているので、凝縮器用の冷却水ポンプが不要となる、(2)また凝縮器6よりの凝縮液は蒸発器4へ水頭・落差でもって自然流下する」(第2頁右上欄3行〜7行)(なお、刊行物2原文においては、「(1)」及び「(2)」は丸数字の1及び丸数字の2で記載されている。)
と記載されており、これらの記載及び図面の記載からみて、刊行物1には、
「地熱温水の熱によって強制的に気化された低沸点媒体の蒸気の上昇運動を利用した、発電機3に連結される低沸点媒体タービン1を、十分な高低差を有する一つの閉鎖型管路内に組み込み、雪水によって上記閉鎖管路内の低沸点媒体の蒸気を強制的に液化し、上記地熱温水の熱エネルギー及び雪水によって、低沸点媒体の凝縮液を強制的且つ交互に気化、液化を繰り返して相を変えるようにした、発電システム」の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本出願前国内で頒布された特開昭56-47607号公報(以下、「刊行物2」という。)には、
(ハ)「第1図は本発明の一実施例を示し、図において1は地上面あるいはその近傍に設置した密閉型のタンクであり、内部には発電媒体である作動液体2を貯留している。この作動液体は比較的低い温度で蒸発してガス化する液体が好ましく、本実施例ではフロンを用いている。3は蒸発器であり、管路4を用いて前記タンク1内部に連通させ・・・ている。前記蒸発器3はタンク1から導出した作動液体を太陽熱7を利用して加熱し、かつこれをガス化するようになつており、・・・コンデンサ11は、前記したガスを冷却して元の作動液体に液化させるもので、前記タンク1に対してできるだけ高い位置に配設することが好ましく、液化した作動液体を一時的に貯えた後、管路12を通してタンク1内に流下するようになつている。また、このコンデンサ11は、内部に通風してガスを冷却する所謂エアクールドコンデンサとして構成している。・・・そして、前記コンデンサ11とタンク1とを連通する前述の管路12の途中には、ハイドロリックタービン17を配設し、管路12内を流下(落下)する液体によりタービン17を回転駆動させるようにしている。タービン17はなるべく下方位置に設けた方が、液体の位置エネルギを稼ぐ上で好ましい。このタービン17の回転出力軸は発電機18の駆動軸に連結し、タービン17の回転により発電機18を作動させるように構成していることは説明するまでもない。」(第1頁右下欄17行〜第2頁右上欄20行)
と記載されており、この記載及び第1図の記載からみて、刊行物2には、
「太陽熱7によって低沸点の作動液体2を強制的に気化し、気化されたガスを上昇させる蒸発器3と、通風によって強制的に液化された低沸点の作動液体2の落下運動を利用した、発電機18に連結されるハイドロリックタービン17とを、十分な高低差を有する一つの閉鎖型管路内に組み込み、上記太陽熱7及び通風によって、低沸点の作動液体2を強制的且つ交互に気化、液化を繰り返して相を変えるようにした、発電システム」が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「低沸点媒体の凝縮液」は、前者の「液体状態低沸点媒体」に相当し、また、後者の「発電機3に連結される低沸点媒体タービン1」は、気化された低沸点媒体の蒸気の上昇運動を利用して発電を行うものであるから、前者の「気体状態低沸点媒体の上昇運動を利用した発電装置部」に相当する。そして、本願発明において、低沸点媒体を強制的に気化させる「天然熱エネルギー」と低沸点媒体を強制的に液化させる「天然熱エネルギー」として具体的に使用されるのは、それぞれ、地熱、風力又は太陽熱と雪又は融雪水とであるから(本願明細書の段落【0013】参照)、後者の低沸点媒体を強制的に気化させる「地熱温水の熱」は、前者の低沸点媒体を強制的に気化させる「天然熱エネルギー」に、また、後者の低沸点媒体の蒸気を強制的に液化させる「雪水」は、前者の低沸点媒体を強制的に液化させる「天然熱エネルギー」に、それぞれ相当する。
さらに、後者においても、低沸点媒体は、閉鎖型管路内で、液化、落下、気化、上昇を繰り返し、該気体状態の低沸点媒体の上昇運動を利用して発電を行うものであるから、当然に前者と同様、「液体状態低沸点媒体の落下運動が、平均自由行路内への液体状態低沸点媒体の気化傾向を促進させ、気体状態低沸点媒体の上昇運動を利用した発電装置部の発電能力に関与」するとともに、「平均自由行路内への液体状態低沸点媒体の気化促進が、平均自由行路側閉鎖型管路への液体状態低沸点媒体の移動方向を促進させ、得られる上昇の運動エネルギーが補強され」るものであると認められる。
してみれば、両者は、
「天然熱エネルギーによって強制的に気化された気体状態低沸点媒体の上昇運動を利用した発電装置部を十分な高低差を有する一つの閉鎖型管路内に組み込み、天然熱エネルギーによって気体状態低沸点媒体を強制的に液化し、液体状態低沸点媒体の落下運動が、平均自由行路内への液体状態低沸点媒体の気化傾向を促進させ、気体状態低沸点媒体の上昇運動を利用した発電装置部の発電能力に関与し、他方、該平均自由行路内への液体状態低沸点媒体の気化促進が、平均自由行路側閉鎖型管路への液体状態低沸点媒体の移動方向を促進させ、天然熱エネルギーによって強制的且つ交互に気化、液化を繰り返して相を変えて得られる上昇および落下の各運動エネルギーが補強されるようにしてなる、発電システム」で一致し、以下の点で相違する。
【相違点】前者では、天然熱エネルギーによって強制的に液化された液体状態低沸点媒体の落下運動を利用した発電装置部も閉鎖型管路内に組み込むとともに、液体低沸点媒体の気化促進が液体状態低沸点媒体の落下運動を利用した発電装置部の発電能力に関与させる相互扶助機構を構成するのに対して、後者では、液体状態低沸点媒体の落下運動を利用した発電装置部を設けていない点。

4.当審の判断
上記の相違点につき検討するに、閉鎖型管路内で低沸点媒体を、液化、落下、気化、上昇を繰り返させ、液体状態の低沸点媒体の落下運動を利用する発電部を上記管路内に設けることは、刊行物2に記載されている(上記「2.刊行物記載の発明」の刊行物2の項参照)。そして、刊行物2記載の発明においても、低沸点媒体は、閉鎖型管路内で、液化、落下、気化、上昇を繰り返し、該液体状態の低沸点媒体の落下運動を利用して発電を行うものであるから、当然に本願発明と同様に、液体状態低沸点媒体の落下運動が、平均自由行路内への液体状態低沸点媒体の気化傾向を促進させるとともに、「平均自由行路内への液体状態低沸点媒体の気化促進が、平均自由行路側閉鎖型管路への液体状態低沸点媒体の移動方向を促進させ、液体状態低沸点媒体の落下運動を利用した発電装置部の発電能力に関与し、得られる落下の運動エネルギーが補強される」ものであると認められる。
ところで、刊行物2記載の発明は、刊行物1記載の発明と同じく、「天然熱エネルギーによって気化、液化を繰り返す低沸点媒体の運動を利用する発電システム」という技術分野に属するものである。
してみれば、刊行物1記載の発明において、液体状態低沸点媒体の落下運動を利用した発電装置部をも閉鎖型管路内に組み込んで、液体低沸点媒体の気化促進が液体状態低沸点媒体の落下運動を利用した発電装置部の発電能力に関与させる相互扶助機構とすることは、刊行物2記載の発明に基づき、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明の作用効果は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明から、当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。

5.むすび
したがって、本願発明は、刊行物1及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-06-13 
結審通知日 2001-06-22 
審決日 2001-07-03 
出願番号 特願平4-88193
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田澤 英昭佐藤 正浩亀田 貴志  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 田村 嘉章
栗田 雅弘
発明の名称 発電システム  
代理人 佐々木 實  

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