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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1045979
審判番号 審判1999-6675  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-04-23 
確定日 2001-08-23 
事件の表示 平成 6年特許願第125722号「多層フレキシブル回路基板の屈曲部構造」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年11月28日出願公開、特開平 7-312469]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本件に係る出願は、平成6年5月16日付けの特許出願であって、その請求項1に係る発明は、平成10年7月28日付手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載の以下の事項により特定されるものである。

【請求項1】 導体箔で所要の配線パターンが形成された複数の配線導体間に接着剤層を使用することなく少なくとも一層の可撓性絶縁ベース材を接合してなる無接着剤型片面銅張板を所要数積層して構成された多層フレキシブル回路基板に於いて、この多層フレキシブル回路基板の屈曲部に於ける前記可撓性絶縁ベース材が少なくとも一方面で前記配線導体又は他の可撓性絶縁ベース材と接合されないように非接合部を設け、この非接合部が前記配線導体の屈曲部内側に位置するように構成した多層フレキシブル回路基板の屈曲部構造。

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である、実願昭62-39329号(実開昭63-147868号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には、以下の記載がある。
「フレキシブルプリント基板1は、・・つまり、図中、上から絶縁フィルム11、接着層12、銅箔パターン13、接着層14を順次積層し、更に、この接着層14を介して絶縁フィルム15、接着層16、銅箔パターン17、接着層18と重ね、この接着層18を介して更に、絶縁フィルム19・・絶縁フィルム23を重ねた13層を、一体に積層圧着して構成されている。」(明細書第6頁第5〜16行)
「・・各接着層12(14、16、18、20、22)に、適当幅のクラック防止用接着層切欠き部3を基板1幅方向へ形成した点にある。
実施例では、接着層切欠き部3は、接着層22、20、18の3層にそれぞれ設けた例を示している。
・・つまり、基板1の全面と等しい面積を有する接着層に対し、折曲げ部に対応する部分に、接着層を省略した空間部を形成する。・・
・・接着層16、14、12の全接着層に対して接着層切欠き部3を設けても良く、或いは接着層18のみ、・・設けても良い。」(明細書第7頁第10行〜第8頁第14行)
これら記載と図面の記載とを総合すると、引用文献には、以下の発明が記載されるものと認められる。
銅箔パターンを接着層12、16、20を使用して少なくとも1層の絶縁フィルムと接合してなる片面に銅箔を有する絶縁フィルムを、接着層14、18、22を介して所要枚数積層して構成した多層のフレキシブルプリント基板の折曲げ部における、前記絶縁ベースが少なくとも一方面で前記銅箔と接合されないように接着層切欠き部を設け、この接着層切欠き部が全接着層または接着層18に位置する多層のフレキシブルプリント基板の折曲げ部の構造

ここで、本件請求項1に係る発明と引用文献に記載された発明とを比較すると、引用文献に記載の「銅箔パターン」は、導体である銅を用いて配線に用いられるものであるから、本件請求項1に係る発明の「導体箔で所要の配線パターンが形成された配線導体」に相当するものと認められるとともに、両発明はそれらを複数用いるものである点で差異はなく、引用文献に記載の「絶縁フィルム」は、その機能から見て、本件請求項1に係る発明の「可撓性絶縁ベース材」に相当するものと認められる。
また、本件請求項1にいう配置である「非接合部が前記配線導体の屈曲部内側に位置する」の裏付けをなす記載であり、本件の実施例として段落番号【0011】に「 このような図1の多層フレキシブル回路基板の屈曲部構造では、接着剤の無い屈曲部の非接合部12に於いては複数の単層のフレキシブル回路基板が隣接した状態の構造となるので、曲げによる各配線導体2,7の伸縮は単層のフレキシブル回路基板同士の滑りによって吸収され、従って屈曲部に於ける耐屈曲性を好適に向上させることができる。」と例示される「非接合部12」及び段落番号【0012】に「 図2に示す多層フレキシブル回路基板の屈曲部構造は、各単層のフレキシブル回路基板・・これらを上記実施例の如く屈曲部は接合しないような非接合部12を設け、それ以外の領域では相互に接合する為の接合部11を形成するように各単層のフレキシブル回路基板を相互に積層形成したものである。」と例示される「非接合部12」及び段落番号【0014】及び【0015】に「 また、図3のような多層フレキシブル回路基板の屈曲部構造は、一方のフレキシブル回路基板に於ける配線導体2の表面に表面保護層4を形成する場合、屈曲部には接着剤を設けない非接合部14を形成し、それ以外の領域では接着接合する接合部13を設け、また、他のフレキシブル回路基板は配線導体7の為の表面保護層を設けることなく形成し、この他のフレキシブル回路基板を上記一方のフレキシブル回路基板に積層接合する場合には、その一方のフレキシブル回路基板の可撓性絶縁べース材1の外面に他のフレキシブル回路基板の配線導体7が対面するように配置して、屈曲部では相互に接着しない非接合部16を設ける一方、他の領域には相互接着の為の接合部15を形成するように構成した例である。」、「 この構造のような、所謂、多層フレキシブル形態の屈曲部には複数の非接合部14,16を形成することが可能となり、この場合には各非接合部14,16が屈曲部の内側に位置するように構成されるので、各配線導体2,7の屈曲部に於ける引張り応力を更に軽減させることができる。」と例示される「非接合部16」と、引用文献に記載の接着層18に設けた接着層切り欠き部の接着対象に対する配置とは、配置関係において格別の差異はなく、しかも、引用文献には、「全接着層に対して接着層切欠き部3を設けても良い」旨記載されているので、両発明は、
導体箔で所要の配線パターンが形成された複数の配線導体間に少なくとも一層の可撓性絶縁ベース材を接合してなる片面に銅を張った板を所要数積層して構成された多層フレキシブル回路基板に於いて、この多層フレキシブル回路基板の屈曲部に於ける前記可撓性絶縁ベース材が少なくとも一方面で前記配線導体又は他の可撓性絶縁ベース材と接合されないように非接合部を設け、この非接合部が前記配線導体の屈曲部内側に位置するように構成した多層フレキシブル回路基板の屈曲部構造。
の発明である点で一致し、以下の点で相違するものと認める。
相違点
本件請求項1に係る発明は、導体箔で所要の配線パターンが形成された複数の配線導体間に接着剤層を使用することなく少なくとも一層の可撓性絶縁ベース材を接合してなる無接着剤型片面銅張板を積層するものであるのに対して、引用文献のものでは、銅箔パターンを接着層12、16、20を使用して少なくとも1層の絶縁フィルムと接合してなる片面に銅箔を有する絶縁フィルムを所要枚数積層している点
しかしながら、接着剤層を使用することない無接着剤型形面銅張板自体は、原査定の理由に引用文献3として例示された「特開平3-89586号公報」にも見られるように周知のものであり、上記相違点は、引用文献のものに周知の技術を採用して、当業者が容易になし得たものと認める。

したがって、本件請求項1に係る発明は、引用文献及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-06-12 
結審通知日 2001-06-22 
審決日 2001-07-04 
出願番号 特願平6-125722
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 和加子  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 藤井 昇
刈間 宏信
発明の名称 多層フレキシブル回路基板の屈曲部構造  
代理人 鎌田 秋光  

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