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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1046651
異議申立番号 異議2000-73917  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-02-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-10-17 
確定日 2001-06-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3034482号「カセットからの基板取り出し装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3034482号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第3034482号は、平成2年4月16日に出願された特願平2-100667号を、平成9年4月15日に分割して新たな特許出願としたものであって、平成12年2月18日に設定登録(請求項の数1)されたものであるが、本件特許の請求項1の発明に関して、永田 誠より特許異議のの申立てがあったので、当審において、当該申立ての理由を検討の上、当審より平成13年1月16日付けで特許取消理由を通知したところ、その通知書で指定した期間内の平成13年3月30日に、特許異議意見書と共に訂正請求書が提出されたものである。

【2】訂正請求の可否
1.訂正の要旨
本件特許異議申立てに係る訂正請求における訂正の要旨は、次の1)〜4)のとおりである。
1)特許請求の範囲の請求項1中の「中心位置合わせを」を、「周辺に当接・離間して行う基板の中心位置合わせを、カセットの外側で」と訂正する。
2)本件特許明細書の【0005】中の「中心位置合わせを」を、「周辺に当接・離間して行う基板の中心位置合わせを、カセットの外側で」と訂正する。
3)本件特許明細書の【0006】中の「位置合わせ機構によって中心位置合わせがされる。」を、「位置合わせ機構によってカセットの外側で中心位置合わせがされる。」と訂正する。
4)本件特許明細書の【0012】中の「カセットCから取り出されて、位置合わせされた基板Wは、」を、「カセットCから取り出されて、カセットCの外側で位置合わせされた基板Wは、」と訂正する。

2.訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否
(1)訂正事項1)について
上記訂正事項1)は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1中の「中心位置合わせを」を、「周辺に当接・離間して行う基板の中心位置合わせを、カセットの外側で」と訂正することによって、特許請求の範囲を減縮するものであって、この訂正事項1)については、【0023】、【0024】及び第5図に記載されており、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2)〜4)について
上記訂正事項2)〜4)は、訂正事項1)の特許請求範囲の訂正によって生じる特許明細書の発明の詳細な説明と特許請求の範囲との齟齬を解消しようとするもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、上記訂正事項1)と同じく願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.訂正請求の認容について
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書きの各号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認容する。

【3】本件特許発明の認定
上記のとおり、平成13年3月30日付の訂正請求は認容されるので、本件特許の請求項1に係る発明は、平成13年3月30日付の訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本件発明」という。)。
「複数個のカセットを一列状に静止して載置するカセット載置台と、
高さ方向に移動してカセット内の基板の有無を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出されたカセット内の基板に対する位置に対して昇降し、前後動して基板の取り出しを行うとともに、前記カセット載置台に沿って水平移動可能に設けられて各カセットからの基板の取り出しに共用される基板支持アームと、
前記基板支持アームの近傍に配備され、基板支持アームによって取り出された基板の周辺に当接・離間して行う基板の中心位置合わせを、カセットの外側で行う位置合わせ機構とを備え、
前記基板支持アームと前記位置合わせ機構は、一体となってカセット載置台に沿って水平移動可能であるカセットからの基板取り出し装置。」

【4】取消理由の概要
平成13年1月16日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
本件特許の出願前に頒布された刊行物として、
刊行物1:特開昭59-175740号公報(甲第9号証)
刊行物2:特表昭64-500072号公報(甲第4号証)
刊行物3:実願昭62-131629号(実開昭64-37045号)のマイクロフィルム
を引用し、
上記刊行物1には、
「ウエハ4の収納箱を静止して載置する本体1と、高さ方向に移動して収納箱内のウエハ4の有無を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された収納箱内のウエハ4に対する位置に対して昇降し、前後動してウエハ4の取り出しを行う取出アーム9とを備えた収納箱からのウエハ取り出し装置」が記載されているものと認める。
上記刊行物2には、
「複数個のカセットを一列状に各テーブルに載置し、カセット内のウェーハに対する位置に対して移動してウェーハの取り出しを行うとともに、各テーブルに沿って水平移動可能に設けられて各カセットからのウェーハの取り出しに共用されるアーム432を備えたカセットからのウェーハ取り出し装置」が記載されているものと認める。
上記刊行物3には、
「アーム21の近傍に配備され、アーム21によって掬い上げられたウエハ3の中心位置合わせを行う位置合わせ機構を備え、前記アーム21と前記位置合わせ機構は、一体となって移動可能であるウエハキャリア2からのウエハ取り出し装置」が記載されているものと認める。

本件発明と上記刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1の「ウエハ4」、「収納箱」、「本体1」、「取出アーム9」は、それぞれ本件発明の「基板」、「カセット」、「カセット載置台」、「基板支持アーム」に相当するから、本件発明は上記刊行物1の発明と、
「基板のカセットを静止して載置するカセット載置台と、高さ方向に移動してカセット内の基板の有無を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出されたカセット内の基板に対する位置に対して昇降し、前後動して基板の取り出しを行う基板支持アームとを備えたカセットからの基板取り出し装置」である点で一致し、「本件発明のカセットは、カセット載置台に複数個一列状に載置され、基板支持アームはカセット載置台に沿って水平移動可能であるのに対し、上記刊行物1に記載された発明の収納箱は一個だけである」点と、「本件発明の基板支持アームは、その基板支持アームと一体となって水平移動し、基板支持アームによって取り出された基板の中心位置合わせを行う位置合わせ機構を、基板支持アームの近傍に備えているのに対し、上記刊行物1に記載された発明の取出アームは、そのような機構を備えていない」点で相違している。

上記相違点について検討すれば、
刊行物2には、複数個のカセットを一列状に各テーブルに載置し、アーム432を各テーブルに沿って水平移動可能に設けて各カセットからのウェーハの取り出しに共用する発明が記載されており、テーブルを複数個設けるのに代えて、一個のテーブルに複数個のカセットを載置することは当業者が適宜採用しうる設計事項であるから、刊行物1に記載された発明の収納箱を本体1に複数個一列状に載置し、取出アームを該本体1に沿って水平移動可能に設けて各収納箱からのウェーハの取り出しに共用することは、上記刊行物2の発明に基づいて当業者が容易に行うことができたものである。
刊行物3には、ウエハキャリア2からのウエハ取り出し装置において、アーム21の近傍に、アーム21と一体となって移動可能で、アーム21によって掬い上げられたウエハ3の中心位置合わせを行う位置合わせ機構を備える発明が記載されており、アーム21が水平移動すれば、位置合わせ機構もアーム21と一体となって水平移動することは当然であるから、刊行物1に記載された発明の取出アームに、刊行物3に記載された発明を適用して、取出アームの近傍に、その取出アームと一体となって水平移動し、取出アームによって取り出されたウエハの中心位置合わせを行う位置合わせ機構を備えることは、当業者が容易に行うことができたものである。
そして、本件発明の作用効果は、上記刊行物1〜3に記載された発明から予測しうる程度のものであるから、本件発明は、上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

以上のとおりであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるべき特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

【5】取消理由に対する当審の判断
刊行物1には、「複数個のカセットを一列状に各テーブルに載置し、カセット内のウェーハに対する位置に対して移動してウェーハの取り出しを行うとともに、各テーブルに沿って水平移動可能に設けられて各カセットからのウェーハの取り出しに共用されるアーム432を備えたカセットからのウェーハ取り出し装置」が記載され、「収納箱を本体1に複数個一列状に載置し、取出アームを該本体1に沿って水平移動可能に設けて各収納箱からのウェーハの取り出しに共用すること」、「取出アームの近傍に、その取出アームと一体となって水平移動し、取出アームによって取り出されたウエハの中心位置合わせを行う位置合わせ機構を備えること」は、それぞれ、上記刊行物2、3の発明に基づいて当業者が容易になし得るものと認められるが、刊行物1〜3には、いずれも「基板支持アームの近傍に配備され、基板支持アームによって取り出された基板の周辺に当接・離間して行う基板の中心位置合わせを、カセットの外側で行う位置合わせ機構とを備え、基板支持アームと位置合わせ機構は、一体となってカセット載置台に沿って水平移動可能である」点が記載されておらず、また、これを示唆する記載も認められない。
そして、本件発明は、該構成により、「基板支持アームと位置合わせ機構が一体となって移動するので、例えば、基板支持アームで取り出した基板を、定位置に設置された位置合わせ機構に搬送して位置合わせを行う場合に比べて、基板の取り出しから基板の位置合わせまでの一連の処理を効率よく行うことができ、カセットの外側で基板の位置決めを行っているので、そのときに発生した塵埃によってカセット内の基板が汚染されることがない。」という特有の効果を奏するものと認められる。
したがって、平成13年1月16日付けで通知した取消理由によっては本件の請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。

【6】特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、本件発明について、甲1号証ないし甲第9号証を提出して、本件発明は、甲第1号証と甲第2号証に記載された発明、あるいは甲第1号証から甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、さらに、甲第8号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定に違反しているから、特許を受けることができないものであり、本件発明の特許は取り消されるべきものである旨主張している。

【7】特許異議申立理由に対する当審の判断
特許異議申立人が提出した刊行物である甲1号証ないし甲第7号証の記載事項は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開平2-1113号公報
甲第1号証の第6頁右上欄5〜14行には、「基台101の側方には、ウエハ搬出搬入機構120が設けられている。この搬出搬入機構120には、処理前のウエハWBを収容したウエハカセット122、及び処理後のウエハWFを収容するウエハカセット123が設けられている。また、搬出搬入機構120はウエハWを吸着保持し、X,Y方向に移動が可能なピンセット121を備えており、このピンセット121により処理前のウエハをカセット122から取出し、また処理済みのウエハを搬送装置110のピンセットから受取る。」と記載されている。

甲第2号証:特開昭63-241948号公報
甲第2号証の第2頁左下欄14〜18行には、「カセット載置台6は、ハウジング17内に設けた軸受16によって軸方向に移動可能に案内支持された軸18の上端に取り付けられて、ウェハ2を収納したカセット1を上面に載置するようになっている。」と記載され、同右下欄7〜11行には、「カセット台6の上部で、カセット1内の最下位のウェハ2より下にウェハ検出センサ5を位置させて設け、該ウェハ2とウェハ検出センサ5との間に図示しない駆動装置によって出し入れ可能なアーム3を設け」と記載され、同右下欄第17〜19行には、「アーム3の根元側には第2図に示すように、ウェハ2の径に合わせた円弧状の当接部4が設けてあり」と記載され、第3頁左上欄5〜11行には、「ローラ22は第2図に示すように、当接部4の円弧の中心線から両側に少なくとも円弧端部にオリフラの一端を揃えて円弧部にウェハを当接したときのオリフラの他端と円弧の中心線との最短距離L2よりも広い距離L3でローラ22とウェハ2とが接し、中心線から接点までの距離がL3となるように配置してある。」と記載され、同右上欄2〜7行には、「ウェハ2が所定の位置すなわち、アーム3が挿入できる位置まで下降すると、ウェハ検出センサ5がこれを検出し制御装置に信号を送って、モー夕15を停止させる。
この位置で、制御装置によりアーム3をカセット1内へ挿入し、ウェハ2の下部に位置させる。」と記載され、同左下欄3〜5行には、「これにより、ウェハ2aはアーム3の当接部4に当たって、アーム3に対し位置決めされる。」と記載されている。

甲第3号証:特開平1-140739号公報
甲第3号証の第3頁右下欄14〜18行には、「すなわち、この発明によりロボット7の側方にはロボットアームに取付けられたウエハ保持具74の移動軌跡上に符号8で示すウエハセンタリング位置決め装置がロボット本体に支持具9を介して装着配備されている。」と記載され、第4頁右上欄9行〜同頁左下欄2行には、「ウエハ2はロボット7の操作によりウエハ保持具74を介してカセットより一枚宛取り出され、続くロボットアームの旋回操作による搬送行程の途上でプロセス処理装置へ受け渡す以前にウエハセンタリング位置決め装置9へ移送され、ここで後述するセンタリング修正操作を行った後にプロセス処理装置側に移送してその中継トレー6に受け渡しされる。
すなわちカセット1から取り出したウエハ2がロボット操作によりウエハ保持具74の上面に吸着保持されたままウエハセンタリング位置決め装置8まで移送されると、ここでウエハ保持具74をそのウエハ吸着面のセン夕01が案内基台10のセン夕02と一致するように両者を位置合わせして停止し」と記載されている。

甲第4号証:特表昭64-500072号公報)
甲第4号証の第9頁左下欄17〜25行には、「特に好適なウェーハハンドラー及びロードロックモジュール400(第1図)の別の実施例では、高速処理とウェーハガス放出を促進するために、3つ又はそれ以上のウェーハのカセットを分離したロードロックの真空中に供給する。第8図に示されているように、カセット402、404及び406は各々、ロードロックチェンバ408、410及び412内に示されている。カセットはドア414、416、418を通してクリーンルーム(clean room)から供給される。」と記載され、また、同右下欄9〜14行には、「2ピースアーム432がハンドリングアーム運転機構428上に取り付けられ、それによって運転される。アーム432はカセットからウェーハを取り上げ又はウェーハをカセットに戻すためにバルブ420、422、424のどの1つにも接触できるように用いられている。」と記載されている。

甲第5号証:特開平1-227451号公報
甲第5号証の第2頁右下欄11〜16行には、「また、これら2列の第1〜第4の処理室(1〜4)の列の第5の処理室(5)対向端側には、Al製で方形板状の載置台(6)が設けられており、この載置台(6)上に、被処理体例えば半導体ウエハ(7)を例えば25枚収納可能なカセット(8)が3個載置可能となっている。」と記載され、第3頁左上欄19行〜同右上欄8行には、「また、第1〜第5の処理室(1〜5)及び載置台(6)に囲まれる中央付近には、第3図に示す如く、X方向とY方向とθ方向(回転方向)とZ方向(上下方向)に半導体ウエハ(7)を図示しない保持手段例えば真空吸着等で保持可能な先端U字状のAl製アーム(16)で搬送可能な搬送ステージ(17)・・・を備えたステージが設けられている。」と記載されている。

甲第6号証:特開昭62-222906号公報
甲第6号証の第3頁左上欄13行〜同右上欄2行には、「この発明においては、上記の連結アーム把手をターンテーブルの上におき、その周囲に検査装置、ウエーハを収容したカセットを配置し、連結アーム把手の方向変更と先端の伸縮により目的とするウエーハを吸着把持し、カセットと検査装置の間を搬送するものである。なお任意のウエーハを搬送するため、カセットに対して、ターンテーブルを上下に移動することにより、連結アーム把手を任意のウエーハの位置に停止できる機構を持つものである。」と記載され、同頁左下欄2〜6行には、「図において点Aはウエーハ表面検査装置における、被検ウエーハ8aを載置する試料台11の回転中心で、点B,CおよびDは点Aとともに正方形の頂点の位置で、カセット10b,10cおよび10dに収容されているウエーハの中心である。」と記載されている。

甲第7号証:実開昭61-129340号公報
甲第7号証の第1図及び図面の簡単な説明には、カセット2、投光器4a及び受光器4bからなるウエハ検出手段が、記載されている。

甲第8号証:特開平2-132840号公報
甲第8号証の第3頁右上欄6〜17行には、「基台101の左側には、ウエハー搬入搬出機構120が設けられている。この搬入搬出機構120には、処理前の半導体ウエハーWBを収容したウエハーカセット122及び処理後のウエハーWFを収容するウエハーカセット123が設けられている。また、搬入搬出機構120はウエハーWの裏面を吸着保持するためのピンセット121を具備している。このピンセット121は、前記のピンセット112,113と同様の構成によりX,Y方向に平行移動が可能になっている。このピンセット121は、処理前のウエハーWBをカセット122から取出し、また処理済みのウエハWFをウエハーカセット123に収納する。」と記載され、同頁左下欄16行〜同右下欄1行には、「第2図および第3図A〜第3図Cに、上記ピンセット112,113,121を詳細に記載している。これらの図において、21はピンセット本体である。この本体21には3つの支点22,23,24が突設され、半導体ウエハーWはこれら支点によって三点支持される。」と記載され、同右下欄10行〜第4頁左上欄1行には、「ついで、第3図Bに示すように、ピンセットをストッパ部材26に向けて水平に移動させ、ウエハーWのオリエンテーションフラットWaがストッバ部材26に当接させる。その後、更に水平移動を続けることにより、半導体ウエハーWはピンセットの支点22〜24上をスライドし、最終的にはガイド部材25に当接して停止する。従って、もし第3図Aの状態でウエハーWの位置がピンセットの中央部からズレていたとしても、ガイド部材25に案内されることによって、ピンセット中央の所定位置にアラインメントすることができる。」と記載されている。

甲第9号証:特開昭59-175740号公報
甲第9号証の第2頁右上欄12行〜同左下欄3行には、「第3図、第4図は収納箱に入っているウエハ位置を検出する手段を説明する。 発光素子7から発射するビーム19はハーフミラ6を透過し、反射鏡3で反射したビーム19がもとの光軸を通って、ハーフミラ6に戻り受光素子8に入射される様にエレベーターに取り付けておき、本体1に対して平行にエレベーターが上下可動する様にしておく、下から上にエレベーターをスキャンする事で、収納箱内のウエハ4でビーム19に強弱がつき、受光素子8の微電流の変化が生じることによりウエハの位置を読み、RAMに記憶させる。」と記載されている。

しかしながら、上記各号証には、いずれも「基板支持アームの近傍に配備され、基板支持アームによって取り出された基板の周辺に当接・離間して行う基板の中心位置合わせを、カセットの外側で行う位置合わせ機構とを備え、基板支持アームと位置合わせ機構は、一体となってカセット載置台に沿って水平移動可能である」点が記載されておらず、また、これを示唆する記載も認められない。
そして、本件発明は、前述したように、該構成により、「基板支持アームと位置合わせ機構が一体となって移動するので、例えば、基板支持アームで取り出した基板を、定位置に設置された位置合わせ機構に搬送して位置合わせを行う場合に比べて、基板の取り出しから基板の位置合わせまでの一連の処理を効率よく行うことができ、カセットの外側で基板の位置決めを行っているので、そのときに発生した塵埃によってカセット内の基板が汚染されることがない。」という特有の効果を奏するものと認められる。
したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証と甲第2号証に記載された発明、あるいは甲第1号証から甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとも、また、甲第8号証に記載された発明と同一であるともいうことはできない。

【8】むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠方法、並びに当審の取消理由で引用した実願昭62-131629号(実開昭64-37045号)のマイクロフィルムによっては本件の請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
カセットからの基板取り出し装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数個のカセットを一列状に静止して載置するカセット載置台と、
高さ方向に移動してカセット内の基板の有無を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出されたカセット内の基板に対する位置に対して昇降し、前後動して基板の取り出しを行うとともに、前記カセット載置台に沿って水平移動可能に設けられて各カセットからの基板の取り出しに共用される基板支持アームと、
前記基板支持アームの近傍に配備され、基板支持アームによって取り出された基板の周辺に当接・離間して行なう基板の中心位置合わせを、カセットの外側で行う位置合わせ機構とを備え、
前記基板支持アームと前記位置合わせ機構は、一体となってカセット載置台に沿って水平移動可能であるカセットからの基板取り出し装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハ等の基板を多段に収納したカセットから基板を取り出したり、あるいはカセットへ基板を収納したりするためのカセットからの基板取り出し装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の基板取り出し装置として、次のようなものがある。
例えば、基板を収納したカセットを、カセット内の基板収納溝のピッチと同じピッチで間欠的に昇降し、所定位置に固定設置された光センサによってカセット内の各溝の基板の有無を検出していく。カセットに基板を出し入れするための基板支持アームは、カセットに対して前後動のみするように構成されている。カセットから基板を取り出す場合には、カセットを昇降させて、基板が有ることが検出された溝部分を基板支持アームの進入経路の高さにセットする。続いて、基板支持アームがカセット内に進入して、カセットから基板を取り出す。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来装置によれば、カセットを昇降させる際に、カセットが振動するためカセット内に付着していた塵挨が離脱して基板に付着したり、あるいは基板収納溝の内壁と基板端部とが擦れあって塵挨が発生するといった不都合がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、カセットからの基板の取り出しに際して、塵挨の発生を極力抑えることができるカセットからの基板取り出し装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係るカセットからの基板取り出し装置は、複数個のカセットを一列状に静止して載置するカセット載置台と、高さ方向に移動してカセット内の基板の有無を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出されたカセット内の基板に対する位置に対して昇降し、前後動して基板の取り出しを行うとともに、前記カセット載置台に沿って水平移動可能に設けられて各カセットからの基板の取り出しに共用される基板支持アームと、前記基板支持アームの近傍に配備され、基板支持アームによって取り出された基板の周辺に当接・離間して行なう基板の中心位置合わせを、カセットの外側で行う位置合わせ機構とを備え、前記基板支持アームと前記位置合わせ機構は、一体となってカセット載置台に沿って水平移動可能であることを特徴とする。
【0006】
【作用】
本発明の作用は次のとおりである。
まず、静止しているカセット内の高さ方向に検出手段が移動して基板の有り無しを検出する。そして、このカセットの位置に基板支持アームが水平移動した後、基板が検出されたカセット内の高さ位置まで基板支持アームが昇降し、前後動して基板の取り出しを行う。取り出された基板は、基板支持アームと一体となって移動可能な位置合わせ機構によってカセットの外側で中心位置合わせがされる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本装置の詳細な構成を説明する前に、図4および図5を参照して、本装置が使用される半導体製造装置の一例を簡単に説明する。
【0008】
図4に示した装置は、半導体ウエハ等の基板にフォトレジスト等をコーティングして熱処理するための装置であり、大きく分けて、カセットCから基板Wを取り出したり、カセットC内へ基板Wを搬入するための基板搬入・搬出ユニット1と、カセットCから取り出された基板Wに所要の処理を施すプロセスユニット2とから構成されている。
【0009】
図4、および図5の平面図に示すように、基板搬入・搬出ユニット1のカセット設置台3の上には、基板Wを多段に収納する複数個のカセットCが設置されており、このカセット設置台3の内部に基板検出装置の要部が設けられている。基板搬入・搬出ユニット1には、カセット設置台3に沿って水平移動する基板取り出し機構4が設けられている。
【0010】
基板取り出し機構4は、昇降および前後動(図5における上下方向)可能な基板吸着アーム5があり、この基板吸着アーム5によって各カセットC内の溝に収納された基板Wを取り出したり、あるいはカセットC内に処理済みの基板Wを収納したりするようになっている。
【0011】
基板取り出し機構4には、基板吸着アーム5によって取り出された基板Wを支持する昇降自在な3本の支持ピン61〜63、および前記支持ピン61〜63に支持された基板Wの中心位置合わせを行う位置合わせ板71,72などが備えられている。位置合わせ板71,72の上には、基板Wの外径と略同一曲率になるように配列された複数本の突起8があり、位置合わせ板71,72が水平往復動することにより、前記突起8が基板Wの周辺に当接・離間して、基板Wの中心位置合わせを行うようになっている。
【0012】
基板取り出し機構4によって、カセットCから取り出されて、カセットCの外側で位置合わせされた基板Wは、基板取り出し機構4によって基板受渡し位置(図4におけるP位置)に移送された後、プロセスユニット2に備えられた基板搬送機構9に受け渡される。
【0013】
基板搬送機構9は、Uの字状の基板支持アーム10に基板Wを載置した状態で基板Wを搬送し、プロセスユニット2に備えられたスピンナー部111,112や、熱処理部121〜123に基板Wを順にセッティングしていく。プロセスユニット2で処理された基板Wは、前記基板受渡し位置Pにおいて、基板搬送機構9から基板取り出し機構4へ受け渡された後、基板取り出し機構4によってカセットC内に戻される。
【0014】
以上のような半導体製造装置に備えられた基板検出装置の一例を、図1ないし図3を参照して説明する。図1は基板検出装置の一部破断正面図、図2は図1の02-02矢視断面図、図3は図2の03-03矢視断面図である。
【0015】
カセット設置台3に載置された各カセットCには、昇降自在なコの字状のブラケット21が付設されており、このブラケット21の先端部にカセットC内に収納された基板Wを検出するための投光素子22および受光素子23からなる光センサ24(検出手段)が取り付けられている。なお、投光素子22および受光素子23は、その光軸が水平方向に対して若干傾斜した角度(例えば、2〜3度)で取り付けられることによって、投光素子22からの照射光を基板Wの厚み以下にまで絞り込まなくても、基板Wの有無によって遮光・透光状態が得られるようになっている。
【0016】
図2に示すように、カセット設置台3の下方には、ブラケット21に一体に取り付けられた光センサ24を昇降させるための光センサ昇降機構25がある。光センサ昇降機構25は、支持板20に垂直方向に並設支持されたロッドレスシリンダ26とガイド棒27とを備え、これらに摺動自在に嵌入された可動部材28をカセット設置台3を貫通する縦部材29を介してブラケット21に連結した構成になっている。ロッドレスシリンダ26の上下端からエアーを供給してロッドレスシリンダ26内の図示しない磁石を上下動させると、これに伴って可動部材28が上下動することにより、ブラケット21に取り付けられた光センサ24がカセットCに沿って昇降するようになっている。なお、光センサ昇降機構25は、上述のようなロッドレスシリンダ26に限らず、通常のエアーシリンダや、モータによる螺子送り機構などで構成することも可能である。
【0017】
可動部材28には、櫛歯状のピッチ部材30が上下方向に連結されている。ピッチ部材30には、被検出部位としてのスリット31が、カセットCの収納溝と同じピッチで同数だけ形成されている。ピッチ部材30の各スリット31を検出するために、フォトインタラプタのようなタイミング検出センサ32が支持板20に取り付けられている。
【0018】
図6は、上述した基板検出装置の制御系の構成の概略を示したブロック図である。
基板検出用の光センサ24、タイミング検出センサ32、および光センサ昇降機構25は入出力インターフェイス33を介してCPU34に接続されている。CPU34は、光センサ24およびタイミング検出センサ32からの検出信号に基づき、メモリ35に基板有り無し情報を書き込んでいく。
【0019】
以下、図7に示したフローチャートを参照して、本実施例装置の動作を説明する。
ステップS1:カセットC内の基板検出に先立って、CPU34は内部カウンタの計数値Nを初期値に設定する。ここでは、計数値Nを「0」にセットしている。
【0020】
ステップS2:光センサ昇降機構25に光センサ24の上昇指令を出す。なお、ここでは、光センサ24の初期位置がカセットCの下端に設定されている。光センサ24の上昇指令が出されると、光センサ昇降機構25のロッドレスシリンダ26が駆動され、光センサ24が取り付けられたブラケット21が、カセットCの下端から上端に向けて連続的に駆動されるとともに、ピッチ部材30がこれに伴って上昇する。
【0021】
ステップS3:CPU34は、光センサ24の上昇指令を出した後、タイミング検出センサ32が透光状態になったかどうか、すなわち、ピッチ部材30のスリット31を検出したかどうかを監視する。
【0022】
ステップS4:スリット31を検出すると、計数値N(始動時には初期値「0」)に「1」を加算して、基板有り無し情報を書き込むためのメモリ35のアドレスAを指定する。N=iのときに指定されるアドレスAiは、カセットCの下からi段目の基板収納溝に対応している。
【0023】
ステップS5,S6:次に、光センサ24からの検出信号を取り込み、現在の計数値N(=1)に対応するメモリ35のアドレスA1領域に、光センサ24の検出信号から得られた基板有り無しの情報を書き込む。ここでは、基板有りの場合、「1」を、基板無しの場合、「0」が書き込まれる。
【0024】
ステップS7:次に、計数値Nが、カセットCの段数に応じて定められた数値Noになっているかどうかを判断する。計数値NがNoになっていれば、カセットC内の全ての溝について基板の有り無しを確認したことになるので、処理を終了する。計数NがNoでない場合は、ステップS8に進む。
【0025】
ステップS8:ここでは、ステップS3で検出されたスリット31を通過したかどうかを確認している。すなわち、タイミング検出センサ32が遮光状態になっていれば、ステップS3で検出したスリット31を通過したことになるので、ステップS3に戻って、次のスリット31が検出されたかどうかを監視し、以下、同様の処理を繰り返す。
以上のようにして、カセットC内の全ての溝について、基板有り無しの情報が、メモリ35の所定のアドレス領域に書き込まれる。
【0026】
図4に示した半導体製造装置では、あるカセットCから基板Wが取り出されている間に、他のカセットCについて、上述のような基板検出処理を行うことにより、各カセットC内の基板有り無し情報を予め採取している。そして、基板取り出し機構4によって、次のカセットC内の基板を取り出すときには、メモリ35に記憶された当該カセットCの基板有り無し情報を順に読み出して、基板Wが入っているカセットC内の溝を特定し、その溝の位置にまで基板吸着アーム5を連続的に昇降させて、基板Wの取り出しを行う。
【0027】
このように予め光センサ24を連続的に昇降させて、カセットCの基板有り無し情報を採取し、その採取した情報をもとに基板吸着アーム5を駆動するようにすれば、光センサを間欠送りしながらカセットC内の各溝ごとに基板の有り無しを確認して基板を取り出すという従来手法に比較して、基板の取り出しに要する時間が短縮され、この種の半導体製造装置の処理速度の向上を図ることができる。
【0028】
なお、本発明は次のように変形実施することも可能である。
(1)実施例では基板Wにフォトレジストを塗布する装置を例にとって説明したが、本発明はその他の半導体製造装置にも適用することができる。また、基板は半導体ウエハに限らず、液晶表示器用の基板など、カセットに収容される種々の基板の検出に用いることができる。
【0029】
(2)実施例では、光センサ24の昇降に伴ってピッチ部材30を動かし、固定設置されたタイミング検出センサ32でピッチ部材30のスリット31を検出したが、これはピッチ部材30を固定設置し、タイミング検出センサ32を移動させるものであってもよい。
【0030】
(3)また、カセットCが他の装置に移送される際に、実施例装置のメモリ35に書き込まれた基板有り無し情報を、前記カッセトCの移送に伴って、次の装置に伝送して利用するようにしてもよい。
【0031】
(4)本発明は、基板を収納したカセットを昇降させることなく、カセット内の基板の有無を検出し、これに基づいてカセットに対して基板の搬入・搬出を行うことを特徴とするものであるから、カセット内の基板の有無を検出する機構は、実施例のものに限定されない。例えば、パルスモータを使って、基板検出用の光センサをカセットに沿って上下に間欠送りすることによって、カセットを動かさずにカセット内の基板の有無を検出するようにしてもよい。
【0032】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、静止したカセットに沿って、検出手段を昇降させることにより、カセット内の基板の有り無しを検出しているので、基板の有無の検出のためにカセットを昇降させる必要がない。また、カセットから基板を取り出す際にも、カセットを静止させた状態で、基板支持アームを昇降させることにより、カセットの所望の収納溝から基板を取り出しているので、基板の取り出しのためにカセットを昇降させる必要がない。このように本発明によれば、カセットが昇降しないので、塵埃の発生が極めて少ない状態で基板の取り出しを行うことができる。
【0033】
さらに、基板支持アームと位置合わせ機構が一体となって移動するので、例えば、基板支持アームで取り出した基板を、定位置に設置された位置合わせ機構に搬送して位置合わせを行う場合に比べて、基板の取り出しから基板の位置合わせまでの一連の処理を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
実施例装置における、カセット内の基板検出装置を示した一部破断正面図である。
【図2】
図1の02-02矢視断面図である。
【図3】
図2の03-03矢視断面図である。
【図4】
実施例装置を使用した半導体製造装置の一例を示した外観斜視図である。
【図5】
図4の装置の基板搬入・搬出ユニットの平面図である。
【図6】
実施例装置の制御系の概略構成を示したブロック図である。
【図7】
動作フローチャートである。
【符号の説明】
C…カセット
W…基板
3…カセット載置台
5…基板吸着アーム(基板支持アーム)
24…光センサ(検出手段)
22…投光素子
23…受光素子
25…光センサ昇降機構
30…ピッチ部材
32…タイミング検出センサ
34…CPU
35…メモリ
 
訂正の要旨 本件特許異議申立てに係る訂正請求における訂正の要旨は、次の1)〜4)のとおりである。
1)特許請求の範囲の請求項1中の「中心位置合わせを」を、「周辺に当接・離間して行う基板の中心位置合わせを、カセットの外側で」と訂正する。
2)本件特許明細書の【0005】中の「中心位置合わせを」を、「周辺に当接・離間して行う基板の中心位置合わせを、カセットの外側で」と訂正する。
3)本件特許明細書の【0006】中の「位置合わせ機構によって中心位置合わせがされる。」を、「位置合わせ機構によってカセットの外側で中心位置合わせがされる。」と訂正する。
4)本件特許明細書の【0012】中の「カセットCから取り出されて、位置合わせされた基板Wは、」を、「カセットCから取り出されて、カセットCの外側で位置合わせされた基板Wは、」と訂正する。
異議決定日 2001-05-30 
出願番号 特願平9-96978
審決分類 P 1 651・ 161- YA (H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 柴沼 雅樹瀧内 健夫  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 鈴木 久雄
ぬで島 慎二
登録日 2000-02-18 
登録番号 特許第3034482号(P3034482)
権利者 大日本スクリーン製造株式会社
発明の名称 カセットからの基板取り出し装置  
代理人 杉谷 勉  
代理人 杉谷 勉  

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