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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G11B |
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管理番号 | 1046930 |
異議申立番号 | 異議1999-70343 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-10-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-01-29 |
確定日 | 2000-01-19 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2782486号「光ディスク用保護コート剤及び光ディスク」の請求項1、4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2782486号の請求項1、4に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続の経緯 本件特許第2782486号の請求項1及び3に係る発明(特許公報において請求項1及び4に記載されている発明)は、平成4年3月31日に特許出願され、平成10年5月22日に特許の設定登録がなされ、その後、橘内崇より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内に訂正請求がなされ、これに対して訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内に訂正請求の補正がなされたものである。 (2)訂正の適否についての判断 ア.訂正請求に対する補正の適否について 当該訂正請求に対する補正は、訂正請求書の訂正事項a中の請求項1〜4(以下、「旧請求項1〜4」という。)について、旧請求項1の下位概念である旧請求項2の記載を併せて請求項1とし、旧請求項2を削除し、旧請求項3、4を請求項2、3に繰り上げ、かつ、請求項2を請求項1の、請求項3を請求項1及び2の従属形式にそれぞれ改めると共に、これに伴い明細書の記載を整合させるべく訂正事項bを補正するものであって、訂正請求書の要旨を変更するものではないから、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。 イ.訂正の内容 特許権者が求めている訂正の内容は次のA、Bのとおりである。 A、特許請求の範囲の旧請求項1、4を、下記の請求項1、3とすると共に、旧請求項2を削除し、旧請求項3、4を請求項2、3に繰り上げ、かつ、請求項2を請求項1の、請求項3を請求項1及び2の従属形式にそれぞれ改める訂正。 B、Aの訂正に伴い明細書の記載を整合させるための訂正。 請求項1「光硬化性樹脂を主成分とした保護コート剤を、ポリカーボネート樹脂を利用した光ディスク基板上に該光ディスク基板の温度が高い状態でスピンコーティングし、且つ、スピンコーティング時に振り切られた前記保護コート剤を回収して再利用される光ディスク用保護コート剤であって、前記光硬化性樹脂が、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートを主成分とし、硬化前の80℃の液体状態における前記保護コート剤100gに対する前記ポリカーボネート樹脂の溶解度を100mg以下としたことを特徴とする光ディスク用保護コート剤。」 請求項3「請求項1又は2記載の光ディスク用保護コート剤を用いて、ポリカーボネート樹脂を利用した光ディスク基板上に保護膜が形成されたことを特徴とする光ディスク。」 ウ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記Aの訂正は、旧請求項2を削除すると共に、請求項1の光硬化性樹脂を、「ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートを主成分とするもの」に限定するものであり、これに伴い、請求項1に従属する請求項2、3についても同様の限定が加えられたものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、上記Bの訂正は、明瞭でない記載の釈明に該当する。そして、上記A、Bのいずれの訂正も新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 エ.独立特許要件 (訂正明細書の請求項1及び3に係る発明) 訂正明細書の請求項1及び3に係る発明(以下、「本件発明1及び3」という。)は、上記イ.に記載したとおりのものである。 (引用刊行物) 本件発明1及び3に対して、当審が平成11年8月5日付けで通知した訂正拒絶理由において引用した刊行物1(特開平3-210369号公報)には、 「光ディスク用保護コート剤」に係る発明が記載されており、その実施例1、2には、特定組成の光ディスク用保護コート剤及び該保護コート剤をポリカーボネート基板上に塗布したディスクが記載されている。また、同じく引用した参考資料(異議申立人、橘内崇による実験成績証明書)は、上記実施例1、2の保護コート剤に対するポリカーボネート樹脂の溶解度を測定したものである。 (対比・判断) 本件発明1及び3と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1には、本件発明1及び3の必須の構成要件である「光硬化性樹脂として、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートを主成分とするものを用いる点」について記載も示唆もされていない。 そして、本件発明1及び3は、この点により、明細書の表1〜3からも明らかな当業者の予測できない顕著な効果を奏するものである。 してみると、本件発明1及び3は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。 したがって、本件発明1及び3は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 オ.むすび 以上のとおりであって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜4項の規定に適合するものであるから、当該訂正を認める。 (3)特許異議申立について ア.本件発明 本件発明1及び3は、上記(2)イ.に記載したとおりのものである。 イ.申立の理由の概要 特許異議申立人橘内崇は、甲第1〜8号証を提示して、本件発明1及び3は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから取り消されるべきである旨主張している。 ウ.判断 特許異議申立人橘内崇が提示した甲第1号証及び甲第2号証は、それぞれ、上記(2)エ.に示した引用刊行物1及び参考資料に該当する。 また、同甲第3号証(雑誌「光新時代」1990年No-16、3月号)は、「甲第2号証の実験で用いた光ディスク基板が本件特許の出願日前に一般的に用いられていたものであること」を証明するために提示されたものであり、同甲第4号証(特開昭62-155964号公報)には、「振切液の回収と再利用を目的とした紫外線硬化形樹脂用スピンコータ」に係る発明が、同甲第5号証(特開昭62-14347号公報)には、「光ディスクの連続製造方法及びその装置」係る発明が、それぞれ記載されており、同甲第6号証(「光メモリシンポジウム’88論文集」昭和63年9月発行)には、「光ディスクの製膜方式に関する知見」が、同甲第7号証(平成3年度「イオン応用真空機器の技術動向調査報告書」平成4年3月発行)には、「CDの連続製造方法に関する知見」が、同甲第8号証(「光メモリシンポジウム’86論文集」昭和61年12月発行)には、「光ディスク基板の光学特性に関する知見」が、それぞれ記載されている。 しかしながら、上記甲第1〜8号証のいずれにも、本件発明1及び3の必須の構成要件である「光硬化性樹脂として、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートを主成分とするものを用いる点」については記載も示唆もされていない。 そして、本件発明1及び3は、この点により、明細書の表1〜3からも明らかな当業者の予測できない顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件発明1及び3は、甲第1〜8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。 エ.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1及び3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1及び3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-12-21 |
出願番号 | 特願平4-108712 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YA
(G11B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 蔵野 雅昭 |
特許庁審判長 |
麻野 耕一 |
特許庁審判官 |
岡本 利郎 内藤 二郎 |
登録日 | 1998-05-22 |
登録番号 | 特許第2782486号(P2782486) |
権利者 | 日本ビクター株式会社 住友化学工業株式会社 |
発明の名称 | 光ディスク用保護コート剤及び光ディスク |