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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
審判199835415 審決 特許
判定2007600007 審決 特許
審判199935072 審決 特許
無効200680144 審決 特許
無効200435069 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない A01N
管理番号 1048041
審判番号 無効2000-35545  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-11-18 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-10-10 
確定日 2001-10-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第2135308号発明「加熱蒸散殺虫方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯・本件発明の要旨

本件特許第2135308号に係る出願は、昭和59年1月31日に出願した特願昭59-16760号(以下、「原出願」という。)の一部を平成3年5月13日に新たな特許出願(以下、「本件出願」という。)としたものであって、出願公告(特公平5-63441号)された後、拒絶の査定がなされ、審判の請求がなされ、平成9年8月26日付けで手続補正がなされ、平成10年3月13日に特許権の設定登録がされたものである。
それに対して、平成12年10月10日に本件無効審判が請求され、被請求人より平成13年1月15日に答弁書が提出されたものである。

そして、本件発明の要旨は、明細書の記載からみて、その特許請求の範囲(平成9年8月26日付け手続補正による)に記載された次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液させると共に、該芯の上部を間接加熱して吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、殺虫液に含まれる殺虫剤としてピレスロイド系殺虫剤を用い、殺虫液に含まれる溶媒として脂肪族系の溶剤を含み且つ以下に記載の発熱体及び吸液芯の表面温度で蒸散するものを用い、前記吸液芯として以下に記載の発熱体及び吸液芯の表面温度での使用が可能であるものを用い、表面温度が70〜150℃の発熱体にて上記芯の上部を表面温度が60〜135℃となる温度に間接加熱することを特徴とする加熱蒸散殺虫方法。」

II.請求人の主張

これに対して請求人は、本件発明は、平成3年5月13日に出願分割をしたものであるが、分割要件を充足していないために、出願日の遡及は認められず、出願日は原出願が出願された昭和59年1月31日ではなく、現実の出願日である平成3年5月13日と見なされるところ、本件の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に示す原出願明細書の公開公報には、前記発明の要旨に係る技術内容が開示されており、本件発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第1号に該当し無効とすべきである旨主張し、以下の証拠方法を提出している。

甲第1号証の1:特公平5-63441号公報
甲第1号証の2:特公平5-63441号公報に対する平成11年2月3日付け訂正公報(平成6年9月5日付け手続補正書、及び平成9年8月26日付け手続補正書)
甲第2号証:特開昭60-161902号公報
甲第3号証:特開平4-330003号公報
甲第4号証:特願昭59-16760号における平成3年5月13日付け手続補正書
甲第5号証:特公平2-25885号公報に対する平成7年3月15日付け訂正公報

III.甲号各証について

1.甲第1号証の1は、本件の公告公報である特公平5-63441号公報であって、その特許請求の範囲には、
「 【請求項1】殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液させると共に、該芯の上部を間接加熱して吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、表面温度が70〜150℃の発熱体にて上記芯の上部を表面温度が135℃以下となる温度に間接加熱することを特徴とする加熱蒸散殺虫方法。
【請求項2】殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液させると共に、該芯の上部を間接加熱して吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、上記殺虫液として3-アリル-2-メチルシクロペンタ-2-エン-4-オン-1-イル、dl-シス/トランス-クリサンテマート、・・・(略)・・・から選択される少なくとも一種の殺虫剤有効成分を含有させた有機溶剤溶液を用い、吸液芯として吸液芯素材を結合剤及び/又は糊剤で結合させたものを用い、且つ表面温度が70〜150℃の発熱体にて上記芯の上部を表面温度が135℃以下となる温度に間接加熱することを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の加熱蒸散殺虫方法。
【請求項3】殺虫液が3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、・・・(略)・・・から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するものである特許請求の範囲第1項又は第2項に記載の加熱蒸散殺虫方法。
【請求項4】有機溶剤が沸点範囲150〜350℃の脂肪族系炭化水素グリセリン、プロピレングリコール、・・・(略)・・・から選択させるものである特許請求の範囲第2項に記載の加熱蒸散殺虫方法。
【請求項5】吸液芯が吸液速度40時間以下のものである特許請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の加熱蒸散殺虫方法。
【請求項6】吸液芯がフェルト芯、素焼芯、パルプ芯及び無機質成型芯から選択されるものである特許請求の範囲第4項に記載の加熱蒸散殺虫方法。
【請求項7】吸液芯がフェルト、木綿、・・・(略)・・・から選ばれる芯素材を石膏、ベントナイト、・・・(略)・・・から選ばれる結合剤乃至糊剤で固めたものである特許請求の範囲第5項に記載の加熱蒸散殺虫方法。」
が記載されている。

2.甲第1号証の2は、本件公告公報である特公平5-63441号公報の訂正公報であって、平成6年9月5日付け手続補正書及び平成9年8月26日付け手続補正書を含むものである。
平成6年9月5日付けで補正された特許請求の範囲には、
「【請求項1】殺虫液中に吸液芯の-部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液させると共に、該芯の上部を間接加熱して吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、表面温度が70〜150℃の発熱体にて上記芯の上部を表面温度が135℃以下となる温度に間接加熱することを特徴とする加熱蒸散殺虫方法。
【請求項2】吸液芯が吸液速度40時間以下のものである特許請求の範囲第1項に記載の加熱蒸散殺虫方法。
【請求項3】吸液芯がフェルト芯、素焼芯、パルプ芯及び無機質成型芯から選択されるものである特許請求の範囲第2項に記載の加熱蒸散殺虫方法。
【請求項4】吸液芯がフェルト、木綿、・・・(略)・・・から選ばれる芯素材を石膏、ベントナイト、・・・(略)・・・から選ばれる結合剤乃至糊剤で固めたものである特許請求の範囲第2項に記載の加熱蒸散殺虫方法。」
が記載され、平成9年8月26日付けで補正された特許請求の範囲の記載は、上記I.手続の経緯・本件発明の要旨、に記載したとおりである。

3.甲第2号証は、本件の原出願である特願昭59-16760号の公開公報である特開昭60-161902号公報であって、その特許請求の範囲には、
「【請求項1】殺虫剤の有機溶剤溶液中に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、・・・(略)・・・から選ばれた少なくとも1種の化合物(上記「3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン・・・化合物」を、以下、「化合物CA等」という。)を配合したことを特徴とする吸液芯用殺虫液組成物。」が記載されており、発明の詳細な説明には、
「第1図は本発明吸液芯用殺虫液組成物を適用するに適した吸上式加熱蒸散型殺虫装置の概略図であり、・・・上記容器内にその上部を突出して挿入された吸液芯(1)と、その上側面部を間接的に加熱するための中空円板状発熱体(4)・・・(略)・・・を有している。」
(第5頁左上欄19行〜同頁右上欄9行。「1A」という。)、
「本発明において殺虫剤としては、従来より害虫駆除に用いられる各種薬剤をいずれも使用できる。該薬剤には各種のピレスロイド系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤、有機リン系殺虫剤等が包含される。」(第3頁右上欄2〜6行。「1B」という。)、
「該殺虫剤溶液を調製するための溶剤としては、各種の有機溶剤、代表的には炭化水素系溶剤をいずれも使用できるが、特に沸点範囲が150〜350℃の脂肪族系炭化水素(パラフィン系炭化水素お帯不飽和脂肪族炭化水素)が好ましく、」(第4頁右上欄1〜6行。「1C」という。)、
「上記装置に利用される吸液芯(1)としては、通常用いられている各種素材、例えば、・・・(略)・・・が好ましい。」(第5頁右上欄10〜14行。「1D」という。)、
「本発明組成物を上記装置に適用して殺虫を行う方法は、・・・本発明組成物が吸液芯より蒸散し得る適当な温度に吸液芯を加熱すればよい。該加熱温度は、・・・通常約70〜150℃、・・・これは吸液芯表面温度約60〜135℃・・・に相当する。」(第5頁右下欄10〜18行。「1E」という。)、
「本発明は吸液芯用殺虫液組成物、詳しくは吸液芯利用による吸上式加熱蒸散型殺虫装置に適した改良されされ殺虫液組成物に関する。」(第2頁左上欄3〜5行。「1F」という。)、
「かくして本発明の吸液芯用殺虫液組成物の利用によれば、吸液芯の目づまりを確実に回避して、充分な殺虫効果を奏し得る殺虫剤濃度をもって殺虫剤を長時間持続して揮散さえ得る。」(第6頁左上欄1〜3行。「1G」という。)、の各記載がされている。
さらに、「実施例」というタイトルで実施例1〜64と比較例1〜14が記載されており、「上記実施例1〜64で調製した本発明組成物及び比較例1〜14で得た比較組成物の夫々50mlを、第1図に示す容器(3)に入れ、発熱体(4)に通電して吸液芯(1)の上側面部を温度135℃に加熱し、該加熱による組成物試料中の殺虫剤の蒸散試験を行なった。吸液芯(1)としては・・・を、また発熱体(4)は・・・を夫々用いた。」(第7頁右上欄7〜17行)と、具体的に加熱蒸散殺虫方法が説明されていて、ここで実施例1〜64では殺虫剤と化合物CA等と脂肪族系の溶剤とを含む組成物を使用しており、比較例1〜14では殺虫剤と脂肪族系の溶剤とを含む組成物を使用している。その効果に関しては、比較例においても、加熱開始より100時間後程度まで、殺虫剤揮散量をほとんど低下させることのないことが、窺える(第7頁右下欄〜第8頁左下欄。「1H」という。)。

4.甲第3号証は、本件の公開公報である特開平4-330003号公報であって、その特許請求の範囲には、
「【請求項1】殺虫剤の有機溶剤溶液中に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、・・・(略)・・・から選ばれた少なくとも1種の化合物を配合したことを特徴とする吸液芯用殺虫液組成物。」が記載されている。

5.甲第4号証は、本件の原出願である特願昭59-16760号の公告後になされた、特許法第64条第1項の規定による、平成3年5月13日付けの補正を記載した手続補正書であって、本件分割出願と同日になされた、原出願に対しての手続補正書である。

6.甲第5号証は、本件の原出願である特願昭59-16760号の公告後になされた、特許法第64条及び特許法第17条の3の規定による補正を掲載した、平成7年3月15日発行の訂正公報であって、現時点における、原出願の内容に相当するものである。その特許請求の範囲には、
「【請求項1】殺虫剤の有機溶剤溶液中に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン及び3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールから選ばれた少なくとも1種の化合物を約0.2重量%以上配合したことを特徴とする吸液芯用殺虫液組成物。
【請求項2】殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱することにより吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、上記殺虫液として、脂肪族炭化水素に殺虫剤と共に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン及び3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールから選ばれた少なくとも1種の化合物を約0.2重量%以上配合してなる殺虫液を用いると共に、吸液芯として無機粉体を糊剤で粘結させた吸液芯を用い、かつ、該吸液芯の上部を約60〜約135℃の温度に間接加熱することを特徴とする加熱蒸散殺虫方法。」
が記載されている。

IV.当審の判断

1.本件発明の出願日について

本件特許に係る出願は、昭和59年1月31日に出願された特願昭59-16760号の一部を平成3年5月13日に新たな特許出願としたものであるところ、本件発明の出願日を原出願の出願の日にしたものとみなすか、本件出願の現実の出願日とするかについて、検討する。

特許法第44条第1項によれば、特許出願の分割とは「願書に添付した明細書又は図面について補正をすることができる時又は期間内に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる」ものである。
ここで、「二以上の発明を包含する特許出願」とは、原出願を意味しており、「補正をすることができる時又は期間内に限り」分割をすることができるのであるから、原出願の分割直前明細書に「二以上の発明」が記載されていなければならない。
一方、「新たな特許出願」とは、本件出願を意味しており、出願後に補正又は訂正しうるものであるから、本件出願に係る発明とは、補正又は訂正された後の最新のもの、つまり、本件発明、と解すべきである。
そして、本件発明の出願が適法な分割出願であるなら、その出願日は原出願の出願の日とみなされるのであるから、本件発明は、原出願の分割直前明細書に記載されていると同時に、原出願の出願当初明細書にも記載されている必要がある。
さらに、分割出願がなされた後の原出願も、分割出願とは独立に補正又は訂正しうるものであるから、原出願に係る発明が補正又は訂正された結果、原出願に係る発明と本件発明とが、現時点において同一であってはならないし、かつ、将来においても同一になってはならない。

以上をまとめると、分割出願が適法であるとするためには、次の3条件を満たさねばならない。
(a)本件発明(特許第2135308号の、平成9年8月26日付け補正による特許請求の範囲に記載された発明。甲第1号証の2参照。)が原出願の分割直前明細書(特公平2-25885号公報。以下「原の分割直前明細書」という。)に記載されていること。(請求人は該文献について言及していない。)
(b)本件発明が、原出願の出願当初明細書(特開昭60-161902号公報。甲第2号証参照。以下、「原の出願当初明細書」という。)に記載されていること。
(c)本件発明が、現時点における原出願に係る発明(特願昭59-16760号の公告後になされた、特許法第64条及び特許法第17条の3の規定による補正を掲載した、平成7年3月15日発行の訂正公報において、補正された特許請求の範囲に記載された発明。甲第5号証参照。以下「原の現時点発明」という。)と同一でなく(c-1)、原出願に係る発明が補正又は訂正されたとしても、同一でないこと(c-2)。

以下、該3条件(a)〜(c)を検討する。

(a)について

本件発明を、請求人の主張のごとく、分節して記載する。
「A.殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液させると共に、該芯の上部を間接加熱して吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、
B.殺虫液に含まれる殺虫剤としてピレスロイド系殺虫剤を用い、
C.殺虫液に含まれる溶媒として脂肪族系の溶剤を含み且つ以下に記載の発熱体及び吸液芯の表面温度で蒸散するものを用い、
D.前記吸液芯として以下に記載の発熱体及び吸液芯の表面温度での使用が可能であるものを用い、
E.表面温度が70〜150℃の発熱体にて上記芯の上部を表面温度が60〜135℃となる温度に間接加熱することを特徴とする
F.加熱蒸散殺虫方法。」

原の分割直前明細書である特公平2-25885号公報には、次の記載がされている。
特許請求の範囲には、
「【請求項1】殺虫剤の有機溶剤容器中に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、・・・(略)・・・から選ばれた少なくとも1種の化合物を配合したことを特徴とする吸液芯用殺虫剤組成物。
【請求項2】殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱することにより吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、上記殺虫液として、脂肪族炭化水素に殺虫剤と共に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、・・・(略)・・・から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有させてなる殺虫液を用いると共に、吸液芯として無機粉体を糊剤で粘結させた吸液芯を用い、かつ、該吸液芯の上部を約60〜約135℃の温度に間接加熱することを特徴とする加熱蒸散殺虫方法。」
が記載されており、発明の詳細な説明には、
「第1図は本発明吸液芯用殺虫液組成物を適用するに適した吸上式加熱蒸散型殺虫装置の概略図であり、・・・上記容器内にその上部を突出して挿入された吸液芯1と、その上側面部を間接的に加熱するための中空円板状発熱体4、・・・を有している。」(第5頁第10欄38行〜第6頁第11欄3行。「2A」という。)、
「本発明において殺虫剤としては、従来より害虫駆除に用いられる各種薬剤をいずれも使用できる。該薬剤には各種のピレスロイド系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤、有機リン系殺虫剤等が包含される。」(第3頁第6欄2〜6行。「2B」という。)、
「該殺虫剤溶液を調製するための溶剤としては、各種の有機溶剤、代表的には炭化水素系溶剤をいずれも使用できる。特に沸点範囲が150〜350℃の脂肪族系炭化水素(パラフィン系炭化水素及び不飽和脂肪族炭化水素)は好ましく、」(第4頁第8欄31〜36行。「2C」という。)、
「上記装置に利用される吸液芯1としては、通常用いられている各種素材、例えば、・・・が好ましい。」(第6頁第11欄4〜8行。「2D」という。)、
「本発明組成物を上記装置に適用して殺虫を行う方法は、・・・本発明組成物が吸液芯より蒸散し得る適当な温度に吸液芯を加熱すればよい。該加熱温度は、・・・通常約70〜150℃、・・・これは吸液芯表面温度約60〜135℃・・・に相当する。」(第6頁第11欄40〜同頁第12欄4行。「2E」という。)、
「本発明は吸液芯用殺虫液組成物、詳しくは吸液芯利用による吸上式加熱蒸散型殺虫装置に適した改良された殺虫液組成物及びこれを利用した加熱蒸散殺虫方法に関する。」(第2頁第3欄27〜30行。「2F」という。)、
「かくして、本発明の吸液芯用殺虫液組成物の利用によれば、吸液芯の目づまりを確実に回避して、充分な殺虫効果を奏し得る殺虫剤濃度をもって殺虫剤を長時間持続して揮散さえ得る加熱蒸散殺虫方法が提供される。」(第6頁第12欄11〜15行。「2G」という。)
の記載がされている。
更に、実施例1〜64と比較例1〜14が記載されており、「上記実施例1〜64で調製した本発明組成物及び比較例1〜14で得た比較組成物の夫々50mlを、第1図に示す容器3に入れ、発熱体4に通電して吸液芯1の上側面部を温度135℃に加熱し、該加熱による組成物試料中の殺虫剤の蒸散試験を行なった。吸液芯1としては・・・を、また発熱体4は・・・を夫々用いた。」(第8頁15欄7〜16行)と、具体的に加熱蒸散殺虫方法が説明されていて、ここで実施例1〜64では殺虫剤と化合物CA等と脂肪族系の溶剤とを含む組成物を使用しており、比較例1〜14では殺虫剤と脂肪族系の溶剤とを含む組成物を使用している。その効果に関しては、比較例においても、加熱開始より100時間後程度まで、殺虫剤揮散量をほとんど低下させることのないことが、窺える(第8頁15欄〜第9頁18欄の第2表。「2H」という。)。

そこで、本件発明と原の分割直前明細書に記載された発明とを比較すると、本件発明の構成Aは上記「2A」に、同構成Bは上記「2B」に、同構成Cは上記「2C」に、同構成Dは上記「2D」に、同構成Eは上記「2E」に、同構成Fは上記「2F」に、それぞれ相当し、本件発明の効果も上記「2G」、「2H」に記載されるところである。
そうしてみると、本件発明は、すべての構成とその効果が原の分割直前明細書に記載されている。

(b)について

原の出願当初明細書である特開昭60-161902号公報に記載された事項は、上記III.3.に記載したとおりである。
そこで、本件発明と原の出願当初明細書に記載された発明とを比較すると、本件発明の構成Aは上記「1A」に、同構成Bは上記「1B」に、同構成Cは上記「1C」に、同構成Dは上記「1D」に、同構成Eは上記「1E」に、同構成Fは上記「1F」に、それぞれ相当し、本件発明の効果も上記「1G」、「1H」に記載されるところである。
そうしてみると、本件発明は、すべての構成とその効果が原の出願当初明細書に記載されている。

(c)について

(c-1)
原の現時点発明である、特願昭59-16760号の公告後になされた、特許法第64条及び特許法第17条の3の規定による補正を掲載した、平成7年3月15日発行の訂正公報の特許請求の範囲に記載された事項は、上記III.6.に記載したとおりである。
そこで、本件発明と原の現時点発明とを比較すると、原の現時点発明である請求項2に係る発明と本件発明はいずれも加熱蒸散殺虫方法に関するものであって、「殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱して吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、殺虫液に含まれる溶媒として脂肪族炭化水素を含み、吸液芯の上部を約60〜約135℃の温度に間接加熱することを特徴とする加熱蒸散殺虫方法。」で一致はするものの、本件発明においては、殺虫剤をピレスロイド系殺虫剤と特定しているのに対し、原の現時点発明においては殺虫剤を特定していない点、本件発明においては、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン及び3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールから選ばれた少なくとも1種の化合物を必須の成分としていないのに対し、原の現時点発明においては、該化合物を約0.2重量%以上配合してなる旨の特定をしている点、で互いに相違する。
また、原の現時点発明である請求項1に係る発明は吸液芯用殺虫液組成物に関するものであって、本件発明は、これと、加熱蒸散殺虫方法である点、殺虫剤をピレスロイド系殺虫剤と特定している点、発熱体の表面温度及び芯の上部の表面温度を特定している点、で相違する。
したがって、本件発明は、原の現時点発明と同一ではない。

(c-2)
原出願に係る発明が補正又は訂正されたとして、同一になる可能性の有無について検討すると、原出願の公告公報である特公平2-25885号公報の特許請求の範囲に記載されている発明(以下、「原の公告発明」という。)は、上記(a)に示したとおりであって、どのように補正又は訂正されたとしても、原出願に係る発明は、この特許請求の範囲を拡張又は変更することはできないのであるから、これと本件発明とを比較する。
そうしてみると、上記(c-1)と同様の理由により、即ち、
原の公告発明である請求項2に係る発明と本件発明はいずれも加熱蒸散殺虫方法に関するものであって、「殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱して吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、殺虫液に含まれる溶媒として脂肪族炭化水素を含み、吸液芯の上部を約60〜約135℃の温度に間接加熱することを特徴とする加熱蒸散殺虫方法。」で一致はするものの、本件発明においては、殺虫剤をピレスロイド系殺虫剤と特定しているのに対し、原の公告発明においては殺虫剤を特定していない点、本件発明においては、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール等から選ばれた少なくとも1種の化合物等を必須の成分としていないのに対し、原の公告発明においては、該化合物等を配合してなる旨の特定をしている点、で互いに相違する。
また、原の公告発明である請求項1に係る発明は吸液芯用殺虫液組成物に関するものであって、本件発明は、これと、加熱蒸散殺虫方法である点、殺虫剤をピレスロイド系殺虫剤と特定している点、発熱体の表面温度及び芯の上部の表面温度を特定している点、で相違する。
したがって、本件発明は、原の公告発明と同一ではないのであるから、将来においても、原出願に係る発明と本件発明が、同一になる可能性はないと解するのが自然である。

以上のとおり、本件発明は、現時点において上記(a)〜(c-1)の条件を満たしており、また、(c-2)に示したように、原出願に係る発明が更に補正又は訂正されたとしても、これらの条件を満たさなくなる可能性はない。したがって、原出願の確定を待つまでもなく、本件出願は、適法な分割出願であるものと認められる。

したがって、本件発明の出願日は、原出願の出願日である、昭和59年1月31日であるものとみなされる。

2.本件発明と甲第1号証の1〜甲第5号証に記載された発明との対比

甲第1号証の1〜甲第5号証は、いずれも、本件出願前に頒布された刊行物ではないから、これらの甲号証を特許法第29条第1項第3号を適用する際の証拠として採用することはできない。
したがって、本件発明の特許は、特許法第29条第1項に違反してされたものではない。

3.請求人提出の証拠方法及び主張についての補足

請求人は、本件出願が分割要件を充足していないとする理由として、(1)甲第3号証の特許請求の範囲に記載された発明と甲第4号証の特許請求の範囲に記載された発明とが同一であるから、本件出願は分割要件を満たしていないこと(請求の理由、第6.無効理由 2)、(2)甲第3号証の分割発明は、甲第5号証の原出願の最終段階の構成を包摂しているから、分割は適法でないこと(請求の理由、第6.無効理由 3)を挙げている。
しかしながら、分割出願がその出願後に補正しうるものであることは、上記IV.1.で述べたとおりであり、分割出願の適法性は、補正後の分割出願に係る発明を検討すべきであるから、請求人の指摘する(1)の点は正しくない。同様に、甲第5号証と比較すべき対象は、補正後の最新の分割出願に係る発明であるので、請求人の指摘する(2)の点も正しくない。

よって、請求人の主張は及び証拠方法は、採用できない。

V.むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-08-23 
結審通知日 2001-08-29 
審決日 2001-09-13 
出願番号 特願平3-107140
審決分類 P 1 112・ 113- Y (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柿沢 恵子平山 孝二脇村 善一  
特許庁審判長 花田 吉秋
特許庁審判官 西川 和子
佐藤 修
登録日 1998-03-13 
登録番号 特許第2135308号(P2135308)
発明の名称 加熱蒸散殺虫方法  
代理人 萼 経夫  
代理人 加藤 勉  
代理人 赤尾 直人  
代理人 小松 勉  
代理人 三輪 拓也  
代理人 佐木 啓二  
代理人 中村 壽夫  
代理人 朝日奈 宗太  
代理人 吉原 省三  
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