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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1048285 |
審判番号 | 審判1999-20142 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-12-20 |
確定日 | 2001-11-09 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第336632号「プリント配線板及びその製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 6月30日出願公開、特開平10-178241]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成8年12月17日の出願であって、その発明の要旨は、平成9年5月28日付け、平成11年10月29日付け及び平成12年1月18日付けの手続補正書によって補正された明細書並びに図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された以下のとおりのものである。 【請求項1】銅箔と、この銅箔の厚さよりも厚い半硬化ないしは硬化状態の無機繊維質等を含有しない熱硬化性絶縁樹脂層と、硬化性絶縁樹脂及び無機繊維質または無機粉末等の充填材からなる絶縁コア材とを有し、前記銅箔に前記熱硬化性絶縁樹脂層と絶縁コア材とを順次積層して、銅箔に所望の回路をエッチング等によって形成した後、加熱加圧プレス機等によって前記熱硬化性絶縁樹脂層の軟化温度以上の温度の硬化温度で加熱加圧して前記回路を前記熱硬化性絶縁樹脂層の中に埋め込み、回路と前記熱硬化性絶縁樹脂層との表面が平滑となるように形成したことを特徴とするプリント配線板。 【請求項2】銅箔に、前記熱硬化性絶縁樹脂層が予めコーティング接着されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。 【請求項3】前記熱硬化性絶縁樹脂層が、絶縁樹脂からなるフィルムであることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。 【請求項4】絶縁コア材が、片面または両面銅張積層板から銅箔のみをエッチングして溶解除去したものまたは物理的に引き剥がしたものであることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。 【請求項5】絶縁コア材が、銅箔を有しないアンクラッド板であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。 【請求項6】絶縁コア材が、プリント配線板としての絶縁性能を保持する厚さを有する前記熱硬化性絶縁樹脂層であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。 【請求項7】絶縁コア材が、プリプレグ材であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。 【請求項8】平滑基板を複数積層して多層プリント配線板を形成したことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。 【請求項9】絶縁コア材が、片面または、両面銅張り積層板に回路形成されたもの、または、樹脂付き銅箔の樹脂面を対向接着させたものに回路形成されたもの、または、転写法または樹脂をコーティングした後研磨して形成した平滑基板からなることを特徴とする請求項1または8に記載のプリント配線板。 【請求項10】銅箔と、この銅箔の厚さよりも厚い半硬化ないしは硬化状態の無機繊維質等を含有しない熱硬化性絶縁樹脂層と、硬化性絶縁樹脂及び無機繊維質または無機粉末等の充填材からなる絶縁コア材とを有し、前記銅箔上に前記熱硬化性絶縁樹脂層と絶縁コア材とを順次積層して、銅箔に所望の回路をエッチング等によって形成した後、加熱加圧プレス機等によって前記熱硬化性絶縁樹脂の軟化温度以上の温度の硬化温度で加熱加圧して回路を前記熱硬化性絶縁樹脂の中に埋め込み、回路と前記熱硬化性絶縁樹脂層との表面が平滑となるように形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法 2.引用例 (1)特公昭56-32798号公報(以下、「引用例1」という。) (2)周知例 (a)特開昭49-103166号公報(以下、「周知例1」という。) (b)特開昭50-9072号公報(以下、「周知例2」という。) 3.対比・判断 (1)(引用例) 原査定の拒絶の理由に引用した引用例1には、(a)「金属箔及び硬質積層板と接する面に極性ポリオレフィンを用いて中間層に無極性ポリオレフィンとなるように架橋ポリオレフィン層を硬質積層板と印刷回路との間に介在せしめてなる印刷回路を加熱加圧し架橋ポリオレフィン層内に埋設して平滑なる回路模様を有する平滑なる印刷回路板の製法」(特許請求の範囲)について、(b)「ポリオレフィン層支持体の厚さとしては、回路に使用されている金属箔の厚さより大きければ充分である」(2頁右欄22行ないし24行)との記載、上記「硬質積層板とは、・・・フェノール樹脂含浸積層板、・・・エポキシ樹脂含浸積層板・・・等の一般に使用されている・・・積層板をいう。」(2頁右欄36行ないし40行)との記載があり、 (c)その実施例として「厚さ200μの低密度ポリエチレン・・・フィルムを中間層として片面に、厚さ50μのエチレン-アクリル酸共重合体・・・フィルム、片面に厚さ50μのエチレン-酢酸ビニル共重合体・・・フィルムとなるように積層して、35μ銅箔と・・・エポキシ樹脂含浸ガラスクロス基材積層板の間に上記3層フィルムと銅箔面とエチレン-アクリル酸共重合体面とが接するように介在して・・・加熱加圧条件により・・・プレスして・・・一体化した後、銅箔面より電子線照射法により架橋を行い、・・・印刷回路基板を作成した。次に銅箔のエッチングを・・・行ない、第1図に示す回路板を作成し、・・・加熱加圧条件下で・・・プレスして表面平滑なる印刷回路板を作成した。」(実施例1、3頁左欄42行ないし右欄15行)との記載がある。 そうすると、引用例1には、上記記載によれば、「銅箔と、この銅箔の厚さよりも厚い、無機繊維質等を含有しない架橋ポリオレフィン層と、フェノール樹脂含浸積層板、エポキシ樹脂含浸積層板等の硬質積層板とを有し、前記銅箔上にポリオレフィン層と前記硬質積層板とを順次積層して、銅箔面より電子線照射法により架橋を行ない、次に銅箔のエッチングによって回路板を作成し、加熱加圧条件下でプレスしてなる表面平滑な印刷回路板」が実質上開示されているものと認められる。 (2)(対比) そこで、本件請求項1 に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用例1に記載のものとを対比すると、 引用例1における上記硬質積層板の具体例として、フェノール樹脂含浸積層板、エポキシ樹脂含浸ガラスクロス基材積層板が例示されているので、上記硬質積層板は、本願発明における絶縁コア材に相当し、引用例1におけるポリオレフィン層は、積層した後に電子線照射法により架橋するものであって、絶縁樹脂層であることは明らかであるので、本願発明における熱硬化性絶縁樹脂層に対応するものと認められる。 したがって、(2-1)両者は、銅箔と、この銅箔の厚さよりも厚い、無機繊維質等を含有しない絶縁樹脂層と、硬化性絶縁樹脂及び無機繊維質等の充填材からなる絶縁コア材とを有し、前記銅箔上に前記絶縁樹脂層と絶縁コア材とを順次積層して、銅箔に所望の回路をエッチングによって形成した後、前記絶縁樹脂層の軟化温度以上の温度で加熱加圧して前記回路を前記絶縁樹脂の中に埋め込み、回路と前記絶縁樹脂層との表面が平滑となるように形成したプリント配線板である点で一致し、 (2-2)金属箔を貼着する絶縁樹脂層が、引用例1のものでは、ポリオレフィンであるのに対し、本願発明では、半硬化ないし硬化状態の熱硬化性絶縁樹脂層である点、 (2-3)銅箔をエッチングによって形成した所望の回路を加熱加圧条件下でプレス機等によって埋め込む絶縁樹脂及び埋め込む温度が、引用例1のものでは、架橋ポリオレフィン層であって架橋ポリオレフィン層よりなる絶縁樹脂層の軟化温度以上の温度であるのに対し、本願発明では、半硬化ないし硬化状態の熱硬化性絶縁樹脂層であって熱硬化性絶縁樹脂層の軟化温度以上の硬化温度である点において相違している。 (3)(判断) 上記相違点(2-2)について検討すると、「回路模様を形成する金属箔が絶縁基板中に埋設された平滑な印刷回路板」(引用例1の1頁右欄8行ないし10行参照)、「積層板中の樹脂を半硬化状態に保ちエッチング等の諸工程を経て回路図形を形成し、然る後に熱圧して完全に積層樹脂を硬化せしめると共に回路を基板中に埋設せる方法」(引用例1の1頁右欄11行ないし14行参照)及び「硬化後においてもなお加熱することによって圧縮されるに充分な可撓性を有する支持体樹脂中に金属箔回路を埋設する方法」(引用例1の1頁右欄32行ないし35行参照)並びに「金属箔層と半硬化状態の熱硬化性絶縁樹脂層とよりなる金属箔張積層板から常法によって得られた回路板の回路板のない側に熱硬化性樹脂をガラス繊維等の積層基材に含浸させて構成したプリプレグを重ね、加熱、加圧し一体に成形すると同時に表面を平滑化する方法」(例えば、上記周知例1〜2参照)は、既に周知であるから、銅箔とポリオレフィン層とを積層し、ポリオレフィン層を架橋することに代えて銅箔と半硬化又は硬化状態の熱硬化性絶縁樹脂層とを積層することは容易に想到しうることである。 次に、上記相違点(2-3)について検討すると、引用例1の実施例1においても、銅箔をエッチングによって形成した所望の回路を加熱加圧条件下でプレスして表面平滑なる印刷回路板を作成した(3頁右欄12行ないし15行参照)こと、すなわち、回路を加熱加圧プレス機等によって架橋ポリオレフィンよりなる絶縁樹脂層の軟化温度以上の温度で絶縁樹脂層内に埋め込んで表面を平坦化することが、実質上開示されている。そして、(2-2)において記載したように、「回路模様を形成する金属箔が絶縁基板中に埋設された平滑な印刷回路板」、「積層板中の樹脂を半硬化状態に保ちエッチング等の諸工程を経て回路図形を形成し、然る後に熱圧して完全に積層樹脂を硬化せしめると共に回路を基板中に埋設せる方法」及び「硬化後においてもなお加熱することによって圧縮されるに充分な可撓性を有する支持体樹脂中に金属箔回路を埋設する方法」並びに「金属箔層と半硬化状態の熱硬化性絶縁樹脂層とよりなる金属箔張積層板から常法によって得られた回路板の回路板のない側に同質の熱硬化性樹脂をガラス繊維等の積層基材に含浸させて構成したプリプレグを重ね、加熱、加圧し一体に成形すると同時に、表面を平滑化する方法」は、既に周知である。 そうすると、 銅箔をエッチングによって形成した所望の回路を加熱加圧して架橋ポリオレフィン層よりなる絶縁樹脂層内に埋め込んで表面を平坦化することに代えて、半硬化ないし硬化状態の熱硬化性絶縁樹脂層の軟化温度以上の温度の硬化温度で加熱加圧して、形成した所望の回路を熱硬化性絶縁樹脂層の中に埋め込み、回路と熱硬化性絶縁樹脂層との表面が平滑となるようにすることは容易に想到しうることであるというべきである。 そして、本願発明は、上記の構成を採択することにより格別の効果を奏するものとは認められない。 4.むすび したがって、本願発明は、引用例1に記載されたもの及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり決定する。 |
審理終結日 | 2001-08-17 |
結審通知日 | 2001-08-28 |
審決日 | 2001-09-21 |
出願番号 | 特願平8-336632 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 林 茂樹、亀ヶ谷 明久 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
鈴木 法明 井口 嘉和 |
発明の名称 | プリント配線板及びその製造方法 |
代理人 | 佐田 守雄 |