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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03B
管理番号 1048360
異議申立番号 異議2000-74202  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-03-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-22 
確定日 2001-07-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3043485号「透過型スクリーン及びそれを用いた背面投写型画像ディスプレイ装置」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3043485号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 
理由 1、手続の経緯
特許第3043485号の請求項1ないし7に係る発明は、平成3年9月5日に特許出願され、平成12年3月10日にその特許の設定登録がなされ、その後、関口勝宏より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月13日に訂正請求がなされたものである。

2、訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容

訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を次のとおり訂正する。
「画像発生源側から画像観視側へ、フレネルレンズシート,レンチキュラーレンズシート,光吸収シートの順に配列して構成され、前記フレネルレンズシ-トは、その光出射面(22)の形状がフレネルレンズ形状をなし、前記レンチキュラーレンズシートは、その光入射面(31)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(32)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする光吸収帯を前記レンチキュラーレンズ相互間の境界部分にほぼ対向してスクリーン画面水平方向に複数配列した形状を成し、前記光吸収シートは、該光吸収シートの内部を通過してその光出射面(42)から出射する光の光量を減衰させるように構成され、かつその厚さが、前記レンチキュラーレンズシートの厚さよりも厚いことを特徴とする透過型スクリーン。」

訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2を削除し、請求項3、4、5、6及び7を、それぞれ新たな請求項2、3、4、5、及び6とする。

訂正事項c
特許明細書第3頁右欄第24行ないし同欄第32行(段落番号【0021】)の記載を以下のとおり訂正する。
「【0021】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の透過型スクリーンにおいては、従来の透過型スクリーンを構成するフレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシートに加えて、最も画像観視側に光吸収シートを配置する3枚構成とする。さらに、上記光吸収シートを、例えば着色することにより、その光吸収シート内部を通過して光出射面から出射する光の光量を減衰させるように構成した。更に、光吸収シートの厚さを、レンチキュラーレンズシートの厚さよりも厚くした。」

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a、bは、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当し、また、上記訂正事項cは、明瞭でない記載の釈明を目的とした訂正に該当するものであり、いずれの訂正事項も、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3、特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記2で述べたように上記訂正が認められることから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり(上記2-(1)の訂正事項a参照)、また、本件の請求項2ないし6に係る発明(以下、「本件発明2」ないし「本件発明6」という。)は、該訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項2】前記レンチキュラーレンズシートの光出射面(22)に形成された前記光吸収帯の相互間に、スクリーン画面垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを設けたことを特徴とする請求項1に記載の透過型スクリーン。

【請求項3】前記光吸収シートの光入射面(41)は、スクリーン画面水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列した形状を成すことを特徴とする請求項1または2に記載の透過型スクリ-ン。

【請求項4】前記光吸収シートは、その表面に帯電防止処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の透過型スクリ-ン。

【請求項5】前記光吸収シートが着色されていることを特徴とする請求項1に記載の透過型スクリーン。

【請求項6】請求項1乃至5のいずれかに記載の透過型スクリーンを用いたことを特徴とする背面投写型画像ディスプレイ装置。

(2)引用刊行物に記載された発明
当審が平成13年2月1日付で通知した取消理由において引用した刊行物1ないし7は、次のとおりのものであり、該刊行物には、それぞれ以下のような発明が記載されている。
刊行物1 実願昭62-74995号(実開昭63-187140号)のマイクロフイルム
刊行物2 特開平2-251945号公報
刊行物3 特開平1-210942号公報
刊行物4 実願平1-73322号(実開平3-12236号)のマイクロフイルム
刊行物5 実願昭56-198267号(実開昭58-98636号)のマイクロフイルム
刊行物6 実願昭57-147054号(実開昭59-53351号)のマイクロフイルム
刊行物7 特開平3-36536号公報

上記刊行物1には、
「本考案は、フレネルレンズを透過した像光によってレンチキュラーレンズ上に形成される画像をフレネルレンズ側とは逆側より観察するようにした透過型スクリーンにおいて、レンチキュラーレンズの観察側に、観察側が鏡面とされた半透明板を配するようにしたことにより、高画質化を図るようにしたものである。」(明細書第1頁第16行〜第2頁第3行)。
「第2図は背面投射型プロジェクターの一例の構成を示すものである。同図において、(1)は投射型陰極線管であり、この陰極線管(1)の画面上に表示された画像からの像光LBは、投射レンズ(2)、ミラー(3)〜(5)を介して透過型スクリーン(6)に投射され、この透過型スクリーン(6)上に画像が表示される。観察者(7)は、この画像を像光LBの投射側とは逆側から観察するようになされる。第3図は透過型スクリーン(6)の一例を示すものである。即ち、透過型スクリーン(6)は、像光LBの投射側に例えばアクリル製のフレネルレンズ(61)が配されると共に、観察者(7)側にストライプ方向が垂直方向とされ光拡散剤(63)が混入されたアクリル製のレンチキュラーレンズ(62)が配されて構成される。この場合、像光LBは、・・・このフレネルレンズ(61)で光路変更された像光LBは、レンチキュラーレンズ(62)のレンズ面によって水平方向に拡散されると共に、・・・所定方向からの観察が可能となるようになされている。」(明細書第2頁第5行〜第3頁第8行)。
「本考案は、フレネルレンズ(61)を透過した像光によってレンチキュラーレンズ(62)上に形成される画像をフレネルレンズ(61)側とは逆側より観察するようにした透過型スクリーン(6)であって、レンチキュラーレンズ(62)の観察側に、観察側が鏡面とされた半透明板(10)を配するものである。」(明細書第4頁第3行〜9行)。
「上述構成においては、レンチキュラーレンズ(62)の観察側に半透明板(10)が配されるので、レンチキュラーレンズ(62)が直接外光LOにさらされなく、またレンチキュラーレンズ(62)が観察者(7)の目に直接ふれなくなる。そのため、外光LOがレンチキュラーレンズ(62)に入射することによって画像が白っぽくなり、コントラストが低下するのを軽減し得る。」(明細書第4頁第11行〜18行)。
「本例においては、レンチキュラーレンズ(62)の観察側に、例えば黒く着色された半透明板(10)が配される。」(明細書第5頁第11行〜13行)。
「この鏡面はハードコーティングで施してもよい。」(明細書第5頁第14行〜15行)。
「なお、上述の実施例において、半透明板(10)のレンチキュラーレンズ(62)側の面(10B)は鏡面であってもよく、シボを付けたり、あるいは垂直方向の拡散に寄与するレンチキュラーレンズを形成するようにしてもよい。」(明細書第6頁第15行〜19行)。
「また、上述実施例においては、レンチキュラーレンズ(62)は一方の面がレンズ面とされたものであるが、他方の面もレンチキュラーレンズ面としてもよく、」(明細書第6頁第20行〜第7頁第3行)。
「また、上述実施例におけるレンチキュラーレンズ(62)のレンズ面は逆側であってもよく、」(明細書第7頁第6行〜7行)。
「また、上述実施例におけるレンチキュラーレンズ(62)の観察側にブラックストライプ(光吸収部)を設けるものにも本考案を同様に適用することができる。」(明細書第7頁第10行〜13行)。
なる各記載事項があり、該記載事項の「観察者(7)側にストライプ方向が垂直方向とされ光拡散剤(63)が混入されたアクリル製のレンチキュラーレンズ(62)が配されて構成される。」及びフレネルレンズで光路変更された像光LBがレンチキュラーレンズのレンズ面によって水平方向に拡散されるものである旨の記載から、レンチキュラーレンズはスクリーン画面垂直方向を長手方向とすること明らかであり、また、該レンチキュラーレンズの観察側にブラックストライプを設けるものへの適用も明記されるところである。そして、半透明板は例えば黒色に着色したものであり、その内部を通過する光の光量を減衰させることは明らかである。また、「レンチキュラーレンズ(62)は一方の面がレンズ面とされたものであるが、他方の面もレンチキュラーレンズ面としてもよく、」と記載されているから、第1図のレンチキュラーレンズ62の光入射面の形状を平坦ではなくレンチキュラーレンズを連続して複数配列した構成が刊行物1に記載されている。よって、刊行物1には、該記載事項と、図面の記載からして、以下のような発明が記載されている。即ち、
投射型陰極線管から観察側へ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、半透明板の順に配列して構成され、前記フレネルレンズは、その光出射面の形状がフレネルレンズ形状をなし、前記レンチキュラーレンズは、その光入射面の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その出射面の形状が、ブラックストライプを設けた形状を成し、前記半透明板は、該半透明板の内部を通過してその光出射面から出射する光の光量を減衰させるように構成された透過型スクリーン、が記載され、また、該スクリーンの上記半透明板は、着色されたものである構成と、その光入射面は、垂直方向の拡散に寄与するレンチキュラーレンズを形成したものである構成、が記載されている。

上記刊行物2には、
「第5図に示した透過型スクリーンは、投写器側から順に、フレネルレンズ板21、レンティキュラ板22、透光性板23と配置されたものである。・・・こうすると、レンティキュラ板22が薄く機械的強度が弱い場合には、透光性板23がレンティキュラ板22の変形を抑制することができる。」(公報、第3頁右下欄第8行〜第4頁左上欄第2行)。
「透光性板6の内部の光吸収剤により、本来の画像の輝度は低下するものの、外光は透光性板6を2回通過するために光強度が大きく減衰し、それだけコントラストが良くなる。」(公報、第3頁左上欄第16行〜20行)。
なる記載事項があり、該記載事項と図面、特に第5図の記載から、
投写器側から観察者側へ順にフレネルレンズ板(フレネルレンズシート)、レンティキュラ板(レンチキュラーレンズシート)、透光性板(光吸収シート)が配置された透過型スクリーンにおいて、透光性板による外光の光強度の減衰と、これによるコントラストの向上を図る構成と、該透光性板の機械的強度によりレンティキュラ板の変形を抑制する構成が記載されている。

上記刊行物3には、
「また、上記レンチキュラーシート2の入射面(フレネルシート1側の面)にはスクリーンの水平方向をピッチ方向として並ぶ第2のレンチキュラー2aが形成されるとともに、出射面(フレネルシート1の反対側)には上記第2のレンチキュラー2aと同じピッチで水平方向に並ぶブラックストライプ2b(第1図斜線部)が印刷等によって形成され、さらに、ブラックストライプ2bの各間隙の谷部には上記入射面の第2のレンチキュラー2aより幅の狭い第3のレンチキュラー2cが形成されている。」(公報第3頁右上欄第4行〜14行)。
なる記載事項があり、また、第1、2図からレンチキュラー(レンズ)の相互間の境界部分にほぼ対向してブラックストライプが複数配列されている点と、該ブラックストライプ(2b)の各間隙の谷部にレンチキュラー(レンズ)が形成されている点は明らかであるから、該記載事項と図面特に第1図、第2図の記載からして、
背面投写型プロジェクションテレビのスクリーン(透過型スクリーン)において、レンチキュラーシートはその光入射面の形状が水平方向をピッチ方向として並ぶ(スクリーン画面垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数配列)レンチキュラーを成すと共に、その出射面の形状が、レンチキュラーと同じピッチで水平方向(スクリーン画面垂直方向を長手方向とする)に並ぶブラックストライプをレンチキュラー(レンズ)相互間の境界部分にほぼ対向してスクリーン画面水平方向に複数配列した形状とした構成、が記載され、また、前記ブラックストライプの各間隙の谷部にレンチキュラー(レンズ)を形成した構成が記載されている。

上記刊行物4および7には、投影スクリーン(透過型スクリーン)における、静電気の帯電防止によるゴミやホコリの付着を防止する構成が記載され、また、前記刊行物4には、スクリーンの観察側に位置する表面板と称する着色された無機ガラス(光吸収シート)が記載され、該無機ガラスが特定波長を選択的に吸収する点と、その剛性によりスクリーン本体自体の反りや湾曲を防止する点を備える構成が記載されている。

上記刊行物5には、フレネルレンズやレンチキュラーレンズを備えた透過型スクリーンにおいて、スクリーン本体の観察側に着色透明樹脂板を配設し、外光によるコントラスト悪化の改善をなした構成が記載されている。

上記刊行物6には、フレネルレンズとレンチキュラーレンズとを有する背面投影スクリーンにおいて、該スクリーンの前面に外光吸収層を持つ着色前面板を設け、これにより外光を吸収し、コントラストの改善をなした構成が記載されている。

(3)対比・判断
a、本件発明1について、
本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「投射型陰極線管」、「観察側」、「フレネルレンズ」、「レンチキュラーレンズ」、「半透明板」、「ブラックストライプ」はそれぞれ、本件発明の「画像発生源」、「画像観視側」、「フレネルレンズシート」、「レンチキュラーレンズシート」、「光吸収シート」、「光吸収帯」に相当するから、両者は、
画像発生源側から画像観視側へ、フレネルレンズシート,レンチキュラーレンズシート,光吸収シートの順に配列して構成され、前記フレネルレンズシートは、その光出射面の形状がフレネルレンズ形状をなし、前記レンチキュラーレンズシートは、その光入射面の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面の形状が光吸収帯を配列した形状を成し、前記光吸収シートは、該光吸収シートの内部を通過してその光出射面から出射する光の光量を減衰させるように構成された透過型スクリーン。
で一致し、以下の点において相違している。
イ、本件発明1のレンチキュラーレンズシ-トの光出射面の形状が、該面に配列されるスクリーン画面垂直方向を長手方向とする光吸収帯を、該レンズシート光入射面側の複数レンチキュラーレンズに対して該レンズ相互間の境界部分にほぼ対向するような関係において、スクリーン画面水平方向に複数配列した形状を成すように構成されているのに対し、刊行物1に記載された発明の該レンズシートの光出射面の形状は、光吸収帯をレンチキュラーレンズの観察側に設けたものである構成以外の点については格別の記載がなく明らかではない点。
ロ、本件発明1の光吸収シートは、その厚さがレンチキュラーレンズシートの厚さよりも厚いものであるのに対し、刊行物1に記載された発明の光吸収シートは、その厚さについては格別な記載がなされていない点。

上記相違点について検討する。
先ず、イの点について検討すると、上記刊行物3に記載された発明には、上述のような光入射面にレンチキュラー(レンズ)を備えたレンチキュラーシート(レンチキュラーレンズシート)において、該シートの光出射面の形状が、該面に配列されるスクリーン画面垂直方向を長手方向とするブラックストライプ(光吸収帯)を、該シートの反対側の面である光入射面側に形成された複数のレンチキュラー(レンズ)に対して、該レンチキュラー(レンズ)相互間の境界部分の位置にほぼ対向するような関係においてスクリーン画面水平方向に複数配列した形状である構成が開示されており、また、上述したシートにおいては、上記ブラックストライプ(光吸収帯)のレンチキュラー(レンズ)に対する配列形状の採用は光学的作用からみてもきわめて自然な選択であるということができる。そして、刊行物1に記載された発明には、上述したようにレンチキュラーレンズシートのその光出射面に光吸収帯を設けた構成が記載されているところであり、該光吸収帯においてその配列形状として刊行物3に記載された発明の上述の光吸収帯の配列形状を適用することは何ら困難性を要することではなく、該適用により刊行物1に記載された発明の上記レンチキュラーレンズシートの光出射面の形状を本件発明1のこの点のように構成することは当業者が容易になし得たことである。

次に、ロの点について検討する。
ところで、本件発明1において光吸収シートの厚さをレンチキュラーレンズシートの厚さより厚くしたその理由をみると、透過型スクリーン全体としての機械的強度の確保であり、これにより該スクリーンの反りや変形を防止して高画質化を実現するものである。 しかしながら、光吸収シートの剛性を大きくしてスクリーンの反りや変形を防止するという技術思想は上記刊行物2および4に開示されているように従来公知もしくは周知の事項であり、そして、該光吸収シートの剛性を大きくする具体的手段として該シートの厚さの調整に着目した選択をなすことはきわめて自然であり、該シートの厚さをレンチキュラーレンズシートの厚さより厚くしたという構成は、該厚さの調整に着目した1つの選択結果にすぎず、この点は適宜なし得た設計上の選択事項である。

上述したことから明らかなように、上記両者の相違点には格別な点は存在しない。

b、本件発明2について、
本件発明2は、本件発明1において、そのレンチキュラーレンズシートの光出射面の構成を、該面に形成された光吸収帯の相互間に、スクリーン画面垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを設けたものとして構成したものであるが、上記刊行物3に記載された発明には、レンチキュラーレンズシートの出射面に複数配列されたブラックストライプ(光吸収帯)の各間隙の谷部(相互間)にレンチキュラー(レンチキュラーレンズ)を形成した構成が開示されており、しかも、該レンチキュラーはスクリーン画面垂直方向を長手方向とするもの(水平方向をピッチ方向として並ぶもの)であること明らかであり、該構成を本件発明1のブラックストライプを設けたレンチキュラーレンズシートの光出射面の構成に適用することは何ら困難性を要することではなく、該適用により本件発明1の該出射面を上述の構成として本件発明2のようになすことは格別なことではない。

c、本件発明3について、
本件発明3は、本件発明1または2において、その光吸収シートの光入射面の形状を、スクリーン画面水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列したものとして構成したものであるが、上記刊行物1に記載された発明には、半透明板(光吸収シート)の光入射面に垂直方向の拡散に寄与するレンチキュラーレンズ(実質的にスクリーン画面水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列した形状に相当)を形成する構成としてもよいことが記載されており、該構成を本件発明1または2の光吸収シートの光入射面に適用することは何ら困難性を要することではなく、該適用により本件発明1または2の光吸収シートの該入射面を上述の構成として本件発明3のようになすことは格別なことではない。

d、本件発明4について、
本件発明4は、本件発明1において、その光吸収シートの表面に耐電防止処理を施したものであるが、上記刊行物4および7に記載された発明には、透過型スクリーンにおける静電気の帯電防止技術が開示され、これにより該スクリーンへのゴミやホコリの付着を防止する構成が記載されており、該帯電防止技術を前記同様の課題認識のもとに本件発明1の透過型スクリーンに適用することは何ら困難性を要することではなく、しかも、該適用の対象部が該スクリ-ンにおける光吸収シートの表面である点にも前記課題からして格別の特徴が存するものではないから、該適用により本件発明1の光吸収シートの表面を上述した構成として本件発明4のようになすことは格別なことではない。

e、本件発明5について、
本件発明5は、本件発明1において、その光吸収シートを着色されたものとしたものであるが、光吸収シートに着色を施し、これによりスクリーンにおける外光によるコントラストの低下を防止する構成は、上記刊行物1、4、5および6にも開示されるように従来周知技術であり、該周知の技術を本件発明1の光吸収シートに適用することに何ら困難性はなく、該適用により本件発明1の光吸収シートを上述した構成として本件発明5のように構成することは格別なことではない。

f、本件発明6について、
本件発明6は、本件発明1ないし5のいずれかに記載の透過型スクリーンを用いた背面投写型画像ディスプレイ装置であるが、該透過型スクリーンを背面投写型画像ディスプレイ装置に用いることはきわめて普通の選択であるから、該用途の対象を上述の背面投写型画像ディスプレイとする点は単なる該透過型スクリーンの用途の限定にすぎず、本件発明6のように構成することは何ら格別なことではない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし6は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1ないし6についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認める。
よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
透過型スクリーン及びそれを用いた背面投写型画像ディスプレイ装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】画像発生源側から画像観視側へ、フレネルレンズシート,レンチキュラーレンズシート,光吸収シートの順に配列して構成され、
前記フレネルレンズシートは、その光出射面(22)の形状がフレネルレンズ形状をなし、前記レンチキュラーレンズシートは、その光入射面(31)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(32)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする光吸収帯を前記レンチキュラーレンズ相互間の境界部分にほぼ対向してスクリーン画面水平方向に複数配列した形状を成し、前記光吸収シートは、該光吸収シートの内部を通過してその光出射面(42)から出射する光の光量を減衰させるように構成され、かつその厚さが、前記レンチキュラーレンズシートの厚さよりも厚いことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項2】前記レンチキュラーレンズシートの光出射面(22)に形成された前記光吸収帯の相互間に、スクリーン画面垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを設けたことを特徴とする請求項1に記載の透過型スクリーン。
【請求項3】前記光吸収シートの光入射面(41)は、スクリーン画面水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列した形状を成すことを特徴とする請求項1または2に記載の透過型スクリーン。
【請求項4】前記光吸収シートは、その表面に帯電防止処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の透過型スクリーン。
【請求項5】前記光吸収シートが着色されていることを特徴とする請求項1に記載の透過型スクリーン。
【請求項6】請求項1乃至5のいずれかに記載の透過型スクリーンを用いたことを特徴とする背面投写型画像ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、透過型スクリーンとそれを用いた背面投写型画像ディスプレイ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】小型画像発生源としての投写型ブラウン管や液晶表示装置などに表示された画像を、投写レンズにより拡大し、透過型スクリーンに投写する背面投写型テレビジョン受像機等の背面投写型画像ディスプレイ装置は、近年、画質の向上が著しく、大画面による迫力ある臨場感を楽しむことができるため、家庭用、業務用に普及が進んでいる。
【0003】この背面投写型画像ディスプレイ装置においては、投写型ブラウン管を画像発生源として用いる場合、透過型スクリーン上の画面の輝度を十分に明るくするため、従来より、赤,緑,青の3原色についてそれぞれブラウン管と投写レンズを組み合わせ、透過型スクリーン上で3原色の画像の合成を行うようにしていた。
【0004】この構成の背面投写型画像ディスプレイ装置においては、従来より、たとえば特開昭58-93043号公報に記載のように、フレネルレンズシートと、内部に光を散乱する光拡散材の微粒子を分散してなるレンチキュラーレンズシートとを組み合わせた2枚構成の透過型スクリーンが一般に用いられていた。
【0005】図9は上記従来技術による透過型スクリーンの要部を示す斜視図である。図9において、1は透過型スクリーン、2は画像発生源(ブラウン管画面)側に配置されるフレネルレンズシート、3は画像観視側に配置されるレンチキュラーレンズシートである。20、30はそれぞれフレネルレンズシート2、レンチキュラーレンズシート3の基材であり、いずれも透明熱可塑性樹脂よりなる。このうち、レンチキュラーレンズシート3の基材30中には、光を散乱させる光拡散材の微粒子が分散されている。21、22はフレネルレンズシート2の、それぞれ光入射面,光出射面であり、光入射面21はスクリーン画面水平方向を長手方向とする第一のレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列した形状、光出射面22はフレネル凸レンズ面形状になっている。
【0006】また、31は、レンチキュラーレンズシート3の光入射面であり、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする第二のレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に複数並べた形状となっている。32はレンチキュラーレンズシート3の光出射面であり、光入射面31の第二のレンチキュラーレンズにほぼ相対して、同じような形状の第三のレンチキュラーレンズが複数配列されるとともに、隣り合うレンチキュラーレンズとの間には、凸形突起部33が設けられ、この凸形突起部33上に光吸収帯(ブラックストライプ)6が積層されている。
【0007】上記の従来の透過型スクリーンにおいては、投写型ブラウン管管面上の表示画像の各点から出射した光束は、投写レンズ(いずれも図示せず)を経て、フレネルレンズシート2の光入射面21に入射する。このとき、光入射面21が平面でレンチキュラーレンズがない場合には、上記の入射光束は、フレネルレンズシート2の光出射面22のフレネルレンズによりほぼ平行光束に変換され、レンチキュラーレンズシート3に入射する。
【0008】レンチキュラーレンズシート3に入射した光束は、光入射面31の第二のレンチキュラーレンズにより光出射面32上の第三のレンチキュラーレンズ面付近の焦点に向かい、その焦点からスクリーン画面水平方向に拡散するとともに、基材30内に分散された前記の光拡散材の微粒子により、スクリーン画面垂直方向及び水平方向に拡散されながら画像観視側に出射する。
【0009】しかし、フレネルレンズシート2の光入射面21には、図9に示すごとく、スクリーン直面水平方向を長手方向とする第一のレンチキュラーレンズがあるので、上記の入射光束は、この第一のレンチキュラーレンズによりスクリーン画面垂直方向の拡散特性を付与される。その後さらに、レンチキュラーレンズシート3の基材30内に分散された光拡散材の微粒子によってもスクリーン画面垂直方向の拡散特性を付与される。
【0010】図10は図9の透過型スクリーン1の垂直断面を示す断面図である。図10において、光入射面21の第一のレンチキュラーレンズのピッチは、通常、投写画像の走査線のピッチ、または画素のピッチより小さく設計される。このとき、入射光束14は、光入射面21の第一のレンチキュラーレンズ面から入射するとき、同じ走査線、または同じ画素であっても、入射位置によって入射角が異なるため、それぞれ異なる角度に屈折し、スクリーン画面垂直方向に拡散されることになる。しかも、上記の第一のレンチキュラーレンズの曲率半径を小さくすれば、入射光束14の入射角が大きくなり、光線はより広い角度範囲に拡散して指向特性が広がり、いわゆる視野角が増加する。
【0011】図11は図9の透過型スクリーン1におけるレンチキュラーレンズシート3の断面を示す断面図であり、図11(a)は光出射面32の一つのレンチキュラーレンズの幅方向中心における垂直断面を、図11(b)は水平断面を、それぞれ示している。
【0012】図11(a)及び図11(b)において、レンチキュラーレンズシート3の基材30内には、前述のように、光拡散材の微粒子が分散されており、これにより、入射光束14は光入射面31から入射後、スクリーン画面水平方向及び垂直方向に拡散しながら進み、光出射面32から画像観視側に出射する。そして、上記の光拡散材の量を増せば、光はより広い角度範囲に拡散して指向特性が広がり、視野角が増加する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来の透過型スクリーンにおいては、レンチキュラーレンズシート3の光入射面31への入射光束14は、図11(a)、図11(b)に示すように、光出射面32付近の焦点に至る前に前記の光拡散材により散乱されるために、一部の光束は再び光入射面31側に反射されたり、レンチキュラーレンズシート3内の迷光となったり、あるいは前記の光吸収帯6で吸収されたりして、光出射面32付近の焦点に到達しない。
【0014】また、照明光などの外光は、半分程度がレンチキュラーレンズシート3の光出射面32に設けられた前記の光吸収帯6により吸収されるが、光出射面32の第三のレンチキュラーレンズに入射した外光は、投写画像光と同様に、光拡散材により散乱される。
【0015】この結果、スクリーン画面垂直方向の指向特性を広げるために光拡散材を増量すると、投写光学系内の不要反射光が増し、この不要反射光が最終的にスクリーン画面(即ち、レンチキュラーレンズシート3の光出射面32)に到達すると、画像のコントラストの低下を招く。また、照明光などの外光に対しても、光拡散材の増量により拡散反射光が増し、画像のコントラストを低下させる。
【0016】したがって、画像のコントラストが低下しないようにスクリーン画面垂直方向の指向特性を拡大するためには、光拡散材の量を減らし、フレネルレンズシート2の光入射面21の第一のレンチキュラーレンズの曲率半径を小さくしなければならないことになる。
【0017】一方、図10に示すように、フレネルレンズシート2においては、入射光束14は、光入射面21の第一のレンチキュラーレンズの形状により屈折してスクリーン画面垂直方向に拡散されるため、フレネルレンズシート2を透過して光出射面22に到達したとき、画像観視側から見たときの光束の幅dは、入射光束14の幅より大きくなり、したがって、光出射面22における走査線幅あるいは画素サイズが大きくなり、結果としてフォーカス特性が低下することになる。
【0018】このとき、スクリーン画面垂直方向の指向特性を拡大するために、フレネルレンズシート2の光入射面21の第一のレンチキュラーレンズの曲率半径を小さくすると、光出射面22における走査線幅あるいは画素サイズが大きくなり、フォーカス特性はさらに低下する。
【0019】これらの点から、従来の透過型スクリーンでは、画像のコントラスト、フォーカス特性にトレードオフがないようにスクリーン画面垂直方向の指向特性を拡大するとはできないという問題点があった。
【0020】
本発明の目的は、従来の問題点は上記の如く色々あるが、結局のところ、画像のフォーカス特性及びコントラストを良好にした透過型スクリーン、及びそれを用いる背面投写型画像ディスプレイ装置を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の透過型スクリーンにおいては、従来の透過型スクリーンを構成するフレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシートに加えて、最も画像観視側に光吸収シートを配置する3枚構成とする。さらに、上記光吸収シートを、例えば着色することにより、その光吸収シート内部を通過して光出射面から出射する光の光量を減衰させるように構成した。更に、光吸収シートの厚さを、レンチキュラーレンズシートの厚さよりも厚くした。
【0022】
【作用】上記の構成の透過型スクリーンを用いた背面投写型画像ディスプレイ装置においては、投写型ブラウン管などの画像発生源からの出射光は、投写レンズを経て透過型スクリーンに入射し、透過型スクリーンの画像発生源側に配置されたフレネルレンズシートにおいてほぼ平行光となって通過し、次いでレンチキュラーレンズシートの光入射面の第二のレンチキュラーレンズによりスクリーン画面水平方向に拡散され、さらに光吸収シートを透過して画像観視側に出射する。
【0023】また、スクリーン画面垂直方向の光拡散は、主としてフレネルレンズシートの光入射面の第一のレンチキュラーレンズ、または光吸収シートの光入射面の第四のレンチキュラーレンズ、もしくはこの両者により行われる。このため、レンチキュラーレンズシート、もしくは光吸収シートの光拡散材は減量でき、投写光学系内の不要反射光が低減され、画像のコントラストが向上する。また、照明光などの外光に対しても、光拡散材の減量により拡散反射光が減ることから、画像のコントラストが向上する。
【0024】さらに、画像発生源から観視者に至る投写画像光は、光吸収シートを1回だけ透過するため、光量が光吸収シートの透過率に比例して減衰するのに対し、照明光などの外光が透過型スクリーンで反射されて観視者に至るときは、光吸収シートの最も画像観視側の光出射面で反射される光を除き、その外光の大部分は光吸収シートを少なくとも1往復通るため、光量が光吸収シートの透過率の2乗に比例して減衰する。したがって、投写光より外光の方が損失光の比率が大きくなり、照明光などの外光があるときのコントラストが向上する。
【0025】一方、フレネルレンズシートの光入射面にスクリーン画面垂直方向の光拡散を行うための第一のレンチキュラーレンズがある場合、フレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート、光吸収シートのうち、光吸収シートを最も厚さを厚くし、フレネルレンズシートの厚さを従来のスクリーンより薄くすることにより、画像のフォーカスが向上する。
【0026】さらに、スクリーン画面垂直方向の光拡散を、主として光吸収シートの光入射面の第四のレンチキュラーレンズによって行うことにより、画像のフォーカスはさらに良好なものとなる。
【0027】
【実施例】以下、本発明の第一の実施例を図1〜図6により説明する。図1は本発明の第一の実施例としての透過型スクリーンの要部を示す斜視図で
ある。
図1において、1は透過型スクリーン、2はフレネルレンズシート、3はレンチキュラーレンズシート、4は光吸収シートである。フレネルレンズシート2、レンチキュラーレンズシート3、光吸収シート4はそれぞれ端部(図示せず)で相互に固定されている。20、30、40はそれぞれフレネルレンズシート2、レンチキュラーレンズシート3、光吸収シート4の基材であり、このうち、光吸収シート4の基材40は半透明に着色された熱可塑性樹脂材料よりなり、他はいずれもほぼ透明な熱可塑性樹脂材料よりなる。
【0028】21はフレネルレンズシート2の光入射面であり、本実施例では平面である。22はフレネルレンズシート2の光出射面であり、フレネル凸レンズになっている。31はレンチキュラーレンズシート3の光入射面であり、スクリーン画面垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズ(以下、「第二のレンチキュラーレンズ」と記す)をスクリーン画面水平方向に連続して複数並べた形状となっている。
【0029】32はレンチキュラーレンズシート3の光出射面であり、スクリーン画面垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズ(以下、「第三のレンチキュラーレンズ」と記す)を光入射面31の第二のレンチキュラーレンズにほぼ対向してスクリーン画面水平方向に連続して複数並べた形状となっている。さらに第三のレンチキュラーレンズ相互間の境界部分には、凸形突起部33が設けられ、その上に有限幅の光吸収帯6が設けられている。
【0030】また、41は光吸収シート4の光入射面であり、スクリーン画面水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズ(以下、「第四のレンチキュラーレンズ」と記す)をスクリーン画面垂直方向に連続して複数並べた形状となっている。42は光吸収シート4の光出射面であり、平面で構成されている。
【0031】本実施例が、図9に示した従来の透過型スクリーンと相違する点は、図1に示すように、光吸収シート4が新たに構成要素として加わった点と、フレネルレンズシート2の光入射面21のスクリーン画面水平方向を長手方向とする第一のレンチキュラーレンズがなくなり、これに代って光吸収シート4の光入射面41にスクリーン画面水平方向を長手方向とする第四のレンチキュラーレンズが設けられた点と、レンチキュラーレンズシート3の基材30の中に光拡散材の微粒子が分散されていない点の3点である。
【0032】次に、図1に示した透過型スクリーン1を構成するフレネルレンズシート2、レンチキュラーレンズシート3、光吸収シート4について、まずフレネルレンズシート2から詳細に説明する。図2は図1の透過型スクリーン1を用いた背面投写型画像ディスプレイ装置の要部を示す断面図であり、また、図3は図2の背面投写型画像ディスプレイ装置の投写光学系を水平面上に展開したときの概略展開図である。
【0033】図2及び図3において、1は透過型スクリーン、7R、7G、7Bはそれぞれ赤、緑、青の投写型ブラウン管、8R、8G、8Bはそれぞれ投写型ブラウン管7R、7G、7B用の投写レンズ、10R、10G、10Bはそれぞれ赤、緑、青の投写光束である。11は投写光束10R、10G、10Bを折り返すための反射鏡であり、図3ではこの反射鏡11を省略した展開図となっている。また、12は筐体、13R、13G、13Bはそれぞれ投写レンズ8R、8G、8Bの光軸であり、透過型スクリーンしの中心付近の一点S0において、光軸集中角θで交わっている。
【0034】図2及び図3において、投写光束10R、10G、10Bは広がりながら透過型スクリーン1に入射している。これに伴い、透過型スクリーン1上の画像の各画素においては、特定の1色、たとえば赤の光線について見ると、各画素の主光線は平行ではなく、透過型スクリーン1の中心画素の主光線に対し互いに遠ざかる方向で透過型スクリーン1に入射する。このとき、透過型スクリーン1上の各画素については、それぞれの画素の主光線の方向が最も光の強度が強い方向となるため、一定位置にいる観視者にとっては、画像の一部分のみ明るく、その周囲は非常に暗く見えることになる。
【0035】これに対し、透過型スクリーン1において、フレネルレンズシート2は、光入射面21全体に入射する画像光の光束が、赤、緑、青の色ごとにほぼ平行光束となるように、光出射面22のフレネル凸レンズにより変換し、レンチキュラーレンズシート3に入射させる機能を有しており、透過型スクリーン1上の画面の明るさの分布を改善できる効果がある。
【0036】ただし、このとき、前述のように、図3において、緑の光軸13Gは、赤の光軸13R、青の光軸13Bと光軸集中角θで交わっている。これに伴い、透過型スクリーン1上の各画素においては、赤、緑、青の各主光線は互いに異なる角度でフレネルレンズシート2に入射し、異なる角度でフレネルレンズシート2から出射する。このため、赤、緑、青の光線のレンチキュラーレンズシート3への入射角も互いに異なる角度となる。
【0037】赤、緑、青の各色の投写光束がレンチキュラーレンズシート3によりスクリーン画面水平方向に拡散されるとき、各色は各画素ごとに主光線の方向が最も明るい方向となるため、観視者が画像を見る水平方向の位置によって、赤、緑、青の3原色の色のバランスが変化し、画像の色が変化して見える。この現象は「カラーシフト」と呼ばれている。
【0038】次に、レンチキュラーレンズシート3について説明する。レンチキュラーレンズシート3の光入射面31の第二のレンチキュラーレンズは、フレネルレンズシート2から出射した投写画像光の光束を、各画素ごとにスクリーン画面水平方向に拡散させ、画像観視側に出射させる機能を有している。これについてさらに詳しく説明する。
【0039】図4は図1の透過型スクリーン1におけるレンチキュラーレンズシート3の、光入射面31と光出射面32の1対のレンチキュラーレンズ部の水平断面を示す断面図であり、31L、32Lはそれぞれ光入射面31の第二のレンチキュラーレンズ面、光出射面32の第三のレンチキュラーレンズ面である。
【0040】図4において、光入射面31側の第二のレンチキュラーレンズ面31Lは、楕円柱面の一部であり、その楕円は、レンチキュラーレンズシート3の厚さ方向(矢印Aにより示す)を長軸方向とし、楕円の2焦点のうち1焦点F1が基材30の内部に位置し、他の1焦点F2が出射面32付近に位置するように構成されている。また、楕円の離心率eは、基材30の屈折率nのほぼ逆数となるように選ばれている。
【0041】さて、図4に示すように、xy座標をとると、第二のレンチキュラーレンズ面31Lの楕円は次式で表される。ただし、この楕円とx軸との交点Sの座標を、(-r,0)とする。
【数1】

このとき、楕円の焦点F1の座標は(-er,0)、焦点F2の座標は(er,0)で与えられる。
【0042】
ここで、基材30の屈折率nに対して、
【数2】

とすると、楕円の長軸に平行に第二のレンチキュラーレンズ面31Lに入射した光線は、全て光出射面32付近の焦点F2に収束し、この焦点F2からスクリーン画面水平方向に拡散される。
【0043】F2が焦点となる理由は、入射光線の、x=-rの平面から焦点F2に至る光路長Lが、光線のレンズ面への入射位置Pの座標を(x1,y1)とするとき、数1より
【数3】

が成り立つから、
【数4】

のように一定値となるためである。
【0044】一方、光出射面32側の第三のレンチキュラーレンズ面32Lは、光出射面32の表面において、第二のレンチキュラーレンズ面31Lの楕円柱面とほぼ対称な楕円柱面としている。この第三のレンチキュラーレンズ面32Lは、図4に示すように、赤、緑、青の入射光R、G、Bに対し、出射光の指向特性R´、G´、B´をほぼ平行にする機能を有しており、前述のカラーシフトを大幅に低減することができる効果がある。
【0045】また、前記のように、第二のレンチキュラーレンズ面31Lを上記の構成の楕円とした場合には、レンチキュラーレンズシート3への入射光は、図4に示すように、第三のレンチキュラーレンズ面32Lの中央付近の焦点F2の近傍を通り、中央付近の両側の、隣接するレンチキュラーレンズ面との境界部付近においては光は通らない。このため、その境界部分付近に凸形突起部33を設け、その上に有限幅の光吸収帯6が設けられている。
【0046】この光吸収帯6は、照明光などの外光が光吸収シート4の光出射面42から入射した場合、その外光の一部は光吸収シート4において吸収されずにレンチキュラーレンズシート3の光出射面32に入射するが、その外光のさらに一部を反射せず吸収する機能を有しており、照明光などの外光があるときの画像のコントラストを向上させる効果がある。
【0047】なお、レンチキュラーレンズシート3は、従来の透過型スクリーンと異なり、光拡散材を有していない。したがって、光入射面31への入射光線が光出射面32に至る前に光拡散材により散乱されて迷光を生じたりすることがなく、さらに、光出射面32に入射した外光が光拡散材により散乱されたりすることもないので、従来のスクリーンに比較して飛躍的に画像のコントラストが向上する効果がある。
【0048】次に、光吸収シート4について説明する。図5は図1の透過型スクリーン1の垂直断面を示す断面図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図5において、光吸収シート4の光入射面41には、スクリーン画面水平方向を長手方向とする第四のレンチキュラーレンズが設けられている。この第四のレンチキュラーレンズは、レンチキュラーレンズシート3から出射し光吸収シート4の光入射面41に入射する光束14を、スクリーン画面垂直方向に拡散する機能を有している。
【0049】これは、入射光束14が同じ走査線、または同じ画素の光線であっても、光入射面41への入射位置の違いにより入射角が違ってくるため、異なる角度に屈折する現象に基づいている。したがって、この第四のレンチキュラーレンズの曲率半径を小さくすれば、入射光束14の入射角が大きくなり、光はより広い角度範囲に拡散してスクリーン画面垂直方向の指向特性が広がり、垂直視野角が増加する。
【0050】ここで、第四のレンチキュラーレンズのピッチは、投写画像の走査線のピッチ、または画素のピッチより小さくなるよう構成する必要があり、さらには、画像の走査線とのモアレ、及び、画面上部と下部におけるフレネルレンズシート3のフレネル凸レンズの輪帯ピッチとのモアレを考慮して決める必要がある。
【0051】このうち、走査線のピッチと第四のレンチキュラーレンズのピッチによるモアレが特に注意を要するが、第四のレンチキュラーレンズのピッチを第二のレンチキュラーレンズのスクリーン画面水平方向のピッチより充分小さくし、さらに走査線のピッチよりも充分小さくするとともに、走査線のピッチと第四のレンチキュラーレンズのピッチが簡単な整数比にならないように設計すれば、モアレの強度は実用上問題とはならない水準となる。
【0052】たとえば、画面サイズが水平方向800mm、垂直方向600mm、透過型スクリーンのスクリーン画面水平方向のピッチが0.78mmのとき、その画面に450本の水平方向走査線が表示されるものとすると、走査線のピッチは1.33mmであるが、フレネル凸レンズの輪帯ピッチを0.105mm、第四のレンチキュラーレンズのピッチを0.091mm程度に選べば、モアレは非常に目立ちにくくなる。
【0053】さて、この光吸収シート4の光入射面41の第四のレンチキュラーレンズは、図9に示した従来の透過型スクリーン1におけるフレネルレンズシート2の光入射面21に設けられた第一のレンチキュラーレンズに代わるものである。従来の透過型スクリーン1におけるフレネルレンズシート2においては、スクリーン画面垂直方向の指向特性を拡大するために第一のレンチキュラーレンズの曲率半径を小さくすると、前述のようにフォーカス特性が低下した。
【0054】これに対し、本実施例において、スクリーン画面垂直方向の指向特性を拡大するために、第四のレンチキュラーレンズの曲率半径を小さくしても、フォーカス特性は低下することがない。
【0055】これは、図4に示すレンチキュラーレンズシート3の光入射面31の楕円柱面の焦点F2が光出射面32付近に存在し、光吸収シート4の光入射面41に近接していることによっている。即ち、本実施例では、入射光束14のスクリーン画面水平方向の拡散の開始点とスクリーン画面垂直方向の拡散の開始点とを近接させているので、フォーカス特性が低下することがないのである。
【0056】具体的には、図5に示すように、入射光束14は、レンチキュラーレンズシート3の光出射面32付近の焦点F2においてスクリーン画面水平方向に拡散されたのち、ただちに光吸収シート4の第四のレンチキュラーレンズ4においてスクリーン画面垂直方向に拡散されるので、画像観視側から見たときの光束の幅dは、図10に示した従来の透過型スクリーンによる光束の幅dより小さくなり、画像がぼやけることがない。
【0057】一方、光吸収シート4は、投写画像光より外光を多く吸収する機能をも有している。これは、画像発生源から観視者に至る投写画像光は、光吸収シート4を1回だけ透過するため、光量が光吸収シート4の透過率に比例して減衰するのに対し、照明光などの外光が透過型スクリーン1で反射されて観視者に至るときは、光吸収シート4の最も画像観視側の光出射面42で反射される光を除き、その外光の大部分は光吸収シート4を少なくとも1往復通るため、光量が光吸収シート4の透過率の2乗に比例して減衰することに基づいている。これにより、投写画像光より外光の方が損失光の比率が大きくなり、照明光などの外光があるときのコントラストが向上する効果がある。
【0058】さて、本実施例では、図4に示すように、レンチキュラーレンズシート3の光入射面31の第二のレンチキュラーレンズ面31しの楕円柱面の、2焦点のうち1焦点F2が光出射面32付近に位置するように構成されていることから、レンチキュラーレンズシート3のシート厚さに制限がある。これは、図9に示した従来の透過型スクリーンのレンチキュラーレンズシート3においても同様である。
【0059】したがって、従来の透過型スクリーンにおいては、透過型スクリーン1全体としての機械的強度を確保するために、フレネルレンズシート2のシート厚さをレンチキュラーレンズシート3のシート厚さより厚くすることが一般に行われていた。
【0060】これに対し、本実施例では、図5に示すように、フレネルレンズシート2のシート厚さをレンチキュラーレンズシート3のシート厚さと同程度とする一方、光吸収シート4のシート厚さを最も厚くして、透過型スクリーン1全体としての機械的強度を確保するようにした。
【0061】この様に、本実施例では、フレネルレンズシート2のシート厚さをレンチキュラーレンズシート3のシート厚さと同程度としているので、フレネルレンズシート2の光出射面22のフレネルレンズにおける、投写画像光の不要反射に起因するゴーストが目立たなくなる。以下、これについて説明する。
【0062】図6は従来の透過型スクリーンまたは図1の透過型スクリーンにおけるフレネルレンズシート2の垂直断面を示す断面図であり、図6(a)は図9に示す従来の透過型スクリーン1のフレネルレンズシート2、図6(b)は図1に示す本実施例のフレネルレンズシート2である。
【0063】一般に、フレネルレンズシート2では、入射光束14の大部分は出射光束15となるが、一部の光は光出射面22で反射され、さらに光入射面21で再度一部反射され、また光出射面22へ至ってゴースト光束16となる。
【0064】ここで、このとき、図6(a)の従来の透過型スクリーンにおけるフレネルンンズシート2では、シート厚さが厚いため、本来の画像の位置とゴーストの位置との距離Rがかなり大きくなり、ゴーストが非常に目立つ。これに対し、図6(b)の本実施例におけるフレネルレンズシート2では、シート厚さが薄いため、本来の画像の位置とゴーストの位置とが近接し、距離Rが小さくなることから、ゴーストが目立たなくなる。
【0065】以上のように、本実施例においては、レンチキュラーレンズシート3の基材30の中の光拡散材をなくし、光吸収シート4を新たに構成要素として加え、フレネルレンズシート2の光入射面21のスクリーン画面水平方向を長手方向とする第一のレンチキュラーレンズをなくし、光吸収シート4の光入射面41にスクリーン画面水平方向を長手方向とする第四のレンチキュラーレンズが設けたことから、画像のフォーカス特性及びコントラストを向上すると同時に、スクリーン画面垂直方向の指向特性を拡大できる効果がある。
【0066】なお、光吸収シート4については、画像観視側の光出射面42の表面に防眩処理、帯電防止処理、ハードコーティングなどの表面硬化処理等の処理を施してもよい。防眩処理を行った場合は、画面への、画像観視側の物体、あるいは照明光などの映り込みを低減できる効果がある。帯電防止処理を行った場合には、光吸収シート4表面の帯電により塵埃が付着するのを防止できる効果がある。また、表面硬化処理をした場合は、画像観視側から何らかの物体が衝突しても光吸収シート4の表面に傷がつきにくくなる効果がある。
【0067】本実施例においては、レンチキュラーレンズシート3の光出射面32に第三のレンチキュラーレンズとして、光入射面31の第二のレンチキュラーレンズの楕円柱面とほぼ同等の形状のレンチキュラーレンズを設ける構成としたが、この第三のレンチキュラーレンズは必ずしも楕円柱面である必要はなく、たとえば単純な円柱面であっても、同等の効果が得られる。また、レンチキュラーレンズシート3の光出射面32が単に平面で、前述の光吸収帯6のみが設けられている構成としてもよい。この場合、光出射面32に第三のレンチキュラーレンズを設ける場合と比較すると、画像のカラーシフトはやや大きくなるが、そのほかの性能については同等の効果が得られる。
【0068】また、本実施例においては、フレネルレンズシート2、レンチキュラーレンズシート3、光吸収シート4のいずれも光拡散材を有しない構成としたが、レンチキュラーレンズシート3、または光吸収シート4のいずれか、あるいはこの両方に光拡散材をごく少量分散させ、光拡散を補助的に行わせてもよい。この場合、光拡散材による光拡散が補助的なものである限りは、スクリーン画面垂直方向の指向特性を拡大しても、画像のフォーカス特性及びコントラストは良好となり、光拡散材を有しない場合に近い効果が得られる。
【0069】次に、本発明の第二の実施例を図7により説明する。図7は本発明の第二の実施例としての透過型スクリーンの要部を示す斜視図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0070】本実施例と図1に示した第一の実施例との違いは、フレネルレンズシート2の光入射面21が、第一の実施例においては図1に示したように平面であるのに対し、本実施例においては図7に示すようにスクリーン画面水平方向を長手方向とする第一のレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に複数並べた形状になっている点にある。
【0071】本実施例においては、スクリーン画面垂直方向の光拡散は、主として光吸収シート4の光入射面41の第四のレンチキュラーレンズにより行い、補助として上記の第一のレンチキュラーレンズにより行う構成とする。また、レンチキュラーレンズシート3は、光拡散材をほとんど有しない構成とする。
【0072】このとき、画像のフォーカス特性は、第一の実施例に比較して若干低下するが、従来の透過型スクリーンに比較すると、フレネルレンズシート2のシート厚さが薄いことから向上する。したがって、本実施例においても、画像のフォーカス特性及びコントラストを向上すると同時に、スクリーン画面垂直方向の指向特性を拡大できる効果がある。
【0073】次に、本発明の第三の実施例を図8により説明する。図8は本発明の第三の実施例としての透過型スクリーンの要部を示す斜視図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0074】本実施例と図7に示した第二の実施例との違いは、光吸収シート4の光入射面41が、第二の実施例においては図7に示したように第四のレンチキュラーレンズとなっているのに対し、本実施例においては図8に示すように平面となっている点にある。本実施例においては、レンチキュラーレンズシート3は、第二の実施例と同様に、光拡散材をほとんど有しない構成とする。
【0075】このとき、画像のフォーカス特性は、第二の実施例よりさらに若干低下する。しかしながら、従来の透過型スクリーンに比較すると、フレネルレンズシートのシート厚さが薄く、また、光拡散材がないことから、実用上問題ない水準である。したがって、本実施例においても、画像のフォーカス特性及びコントラストを向上すると同時に、スクリーン画面垂直方向の指向特性を拡大できる効果がある。
【0076】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、投写型ブラウン管などの画像発生源からの投写画像光は、投写レンズを経て、透過型スクリーンに入射し、スクリーン画面水平方向にはレンチキュラーレンズシートの光入射面の第二のレンチキュラーレンズにより拡散され、また、スクリーン画面垂直方向には主としてフレネルレンズシートの光入射面の第一のレンチキュラーレンズ、または光吸収シートの光入射面の第四のレンチキュラーレンズ、もしくはこの両者により拡散される。このため、スクリーン画面垂直方向の指向特性の拡大のためには第一または第四のレンチキュラーレンズの曲率半径を小さくすればよい。
【0077】したがって、レンチキュラーレンズシートの光拡散材は減量でき、投写光学系内の不要反射光が低減されるので、画像のコントラストを向上させると同時に、スクリーン画面垂直方向の指向特性を拡大できる効果がある。また、照明光などの外光に対しても、光拡散材の減量により拡散反射光が減ることから、画像のコントラストが向上する効果がある。
【0078】さらに、本発明においては、光吸収シートを画像観視側に配する構成とし、上記光吸収シートを、例えば着色することにより、その光吸収シート内部を通過して光出射面から出射する光の光量を減衰させるように構成したので、照明光などの外光があるとき、投写画像光より外光の方が損失光の比率が大きくなり、コントラストがさらに向上する効果がある。
【0079】また、本発明において、フレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート、光吸収シートのうち、光吸収シートを最もシート厚さを厚くし、フレネルレンズシートのシート厚さを従来の透過型スクリーンにおけるフレネルレンズシートより薄くすくしたとすれば、フレネルレンズシートの光出射面のフレネルレンズにおける投写画像光の不要反射に起因するゴーストが目立たなくでき、さらに、フレネルレンズシートの光入射面に第一のレンチキュラーレンズを設ける場合においても良好な画像のフォーカスが得られる効果がある。
【0080】また、スクリーン画面垂直方向の光拡散を、光吸収シートの光入射面の第四のレンチキュラーレンズによってのみ行う場合には、スクリーン画面垂直方向の指向特性を拡大しても良好な画像のフォーカスが得られる効果がある。
【0081】また、光吸収シートの光出射面の表面処理として、防眩処理を行ったときは、画像観視側の物体や照明光などのスクリーン画面への映り込みを防止できる効果がある。また、同じく帯電防止処理を行ったときは、光吸収シート表面の帯電により塵埃が付着するのを防止できる効果がある。さらに、ハードコーティング処理などの表面硬化処理を施したときは、画像観視側から何らかの物体が衝突しても光吸収シートの表面に傷がつきにくくなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例としての透過型スクリーンの要部を示す斜視図である。
【図2】図1の透過型スクリーンを用いた背面投写型画像ディスプレイ装置の要部を示す新面図である。
【図3】図2の背面投写型画像ディスプレイ装置の投写光学系を水平面上に展開したときの概略展開図である。
【図4】図1の透過型スクリーンにおけるレンチキュラーレンズシートの水平断面を示す断面図である。
【図5】図1の透過型スクリーンの垂直断面を示す断面図である。
【図6】従来の透過型スクリーンまたは図1の透過型スクリーンにおけるフレネルレンズシート2の垂直断面を示す断面図である。
【図7】本発明の第二の実施例としての透過型スクリーンの要部を示す斜視図である。
【図8】本発明の第三の実施例としての透過型スクリーンの要部を示す斜視図である。
【図9】従来技術による透過型スクリーンの要部を示す斜視図である。
【図10】図9の透過型スクリーンの垂直断面を示す断面図である。
【図11】図9の透過型スクリーンにおけるレンチキュラーレンズシートの断面を示す断面図である。
【符号の説明】
1…透過型スクリーン、2…フレネルレンズシート、3…レンチキュラーレンズシート、4…光吸収シート、5…光拡散材、6…光吸収帯、7R,7G,7B…投写型ブラウン管、8R,8G,8B…投写レンズ、9G…結合器、11…反射鏡、12…筐体、20,30,40…基材、21,31,41…光入射面、22,32,42…光出射面、33…凸形突起部。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を、その減縮を目的として次のとおり訂正する。
「画像発生源側から画像観視側へ、フレネルレンズシート,レンチキュラーレンズシート,光吸収シートの順に配列して構成され、前記フレネルレンズシートは、その光出射面(22)の形状がフレネルレンズ形状をなし、前記レンチキュラーレンズシートは、その光入射面(31)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(32)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする光吸収帯を前記レンチキュラーレンズ相互間の境界部分にほぼ対向してスクリーン画面水平方向に複数配列した形状を成し、前記光吸収シートは、該光吸収シートの内部を通過してその光出射面(42)から出射する光の光量を減衰させるように構成され、かつその厚さが、前記レンチキュラーレンズシートの厚さより厚いことを特徴とする透過型スクリーン。」
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2を削除し、請求項3、4、5、6及び7を、それぞれ新たな請求項2、3、4、5、及び6とする。
訂正事項c
特許明細書第3頁右欄第24行ないし同欄第32行(段落番号【0021】)の記載を、その明瞭でない記載の釈明を目的として以下のとおり訂正する。
「【0021】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の透過型スクリーンにおいては、従来の透過型スクリーンを構成するフレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシートに加えて、最も画像観視側に光吸収シートを配置する3枚構成とする。さらに、上記光吸収シートを、例えば着色することにより、その光吸収シート内部を通過して光出射面から出射する光の光量を減衰させるように構成した。更に、光吸収シートの厚さを、レンチキュラーレンズシートの厚さよりも厚くした。」
異議決定日 2001-05-08 
出願番号 特願平3-252831
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (G03B)
P 1 651・ 113- ZA (G03B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 越河 勉  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 伊藤 昌哉
綿貫 章
登録日 2000-03-10 
登録番号 特許第3043485号(P3043485)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 透過型スクリーン及びそれを用いた背面投写型画像ディスプレイ装置  
代理人 作田 康夫  
代理人 作田 康夫  

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