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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B01D
審判 一部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  B01D
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B01D
管理番号 1048367
異議申立番号 異議2000-73060  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-01-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-08-07 
確定日 2001-07-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3006976号「高透過性複合逆浸透膜の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3006976号の訂正後の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3006976号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成5年6月24日に特許出願されたものであって、平成11年11月26日にその発明について特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、東レ株式会社より請求項1に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内に平成12年12月28日付けで訂正請求がなされ、その後特許異議申立人に対して審尋がなされたが、その指定期間内に何ら応答がなかったものである。
2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
(1)訂正事項a
【請求項1】の「前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合溶液、あるいは、水と窒素化合物との混合溶液であって、」(本件特許掲載公報第1頁第1欄第8〜10行)を、「前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合比が水/アルコール=50〜90/50〜10(重量比)の混合溶液であって、」と訂正する。
(2)訂正事項b
【請求項2】の「前記窒素化合物がニトロメタン、ホルムアミド、メチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、エチルホルムアミドから選ばれる化合物であり、溶液Bが水非混和性有機溶剤溶液である」(本件特許掲載公報第1頁第2欄第10〜13行)を、「前記溶液Bが水非混和性有機溶剤溶液である」と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書中の「前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合溶液、あるいは、水と窒素化合物との混合溶液であって、」(本件特許掲載公報第2頁第3欄第44〜47行)を、「前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合比が水/アルコール=50〜90/50〜10(重量比)の混合溶液であって、」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書中の「溶液Aとしては、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合溶液、あるいは、水と窒素の窒素化合物との混合溶液、その他単独で溶解度パラメーターが10(cal/cm3)1/2以上ある溶媒と水との混合溶液が挙げられる。前記窒素化合物としては、ニトロメタン、ホルムアミド、メチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、エチルホルムアミドなどが好ましく用いられる。」(本件特許掲載公報第2頁第4欄第27〜34行)を、「溶液Aとしては、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合溶液が挙げられる。」と訂正する。
(5)訂正事項e
明細書中の「ここで上記溶液Aにおいて、水との混合割合は、その溶解度パラメーターが、それと後述する溶液Bの溶解度パラメーターとの差が前記の特定範囲になる限り特に限定されないが、例えば水/エタノール混合比を50〜90/50〜10(重量比)とすることができる。」(本件特許掲載公報2頁第4欄第35〜39行)を、「ここで上記溶液Aにおいて、水との混合割合は、水/アルコール混合比を50〜90/50〜10(重量比)とする。」と訂正する。
(6)訂正事項f
明細書中の「実施例4〜6」(本件特許掲載公報第5頁第9欄第1行)を、「実施例4〜5、比較例3」と訂正する。
(7)訂正事項g
明細書中の表2の「実施例6」(本件特許掲載公報第6頁)を、「比較例3」と訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
上記訂正事項aは、溶液Aが「水と窒素化合物との混合溶液」であることを削除し、かつ溶液Aの水/アルコールの混合比を「水/アルコール=50〜90/50〜10(重量比)」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
そして、特許明細書中の「例えば水/エタノール混合比を50〜90/50〜10(重量比)とすることができる」との記載(本件特許掲載公報第2頁第4欄第38、39行)からみて、訂正事項aは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。また、上記訂正によって別個の新たな目的及び効果をもたらすものではないから実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、上記訂正事項bは、上記訂正事項aに伴い、「前記窒素化合物がニトロメタン、ホルムアミド、メチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、エチルホルムアミドから選ばれる化合物であり、」を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、しかも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記訂正事項c〜gは、特許請求の範囲の減縮を目的とする上記訂正事項a、bの訂正に伴うものであり、減縮された特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるために、明りょうでない記載の釈明を行うことを目的とする訂正に該当するものであり、しかも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
2-3.独立特許要件
上記訂正事項bは特許異議の申立てがされていない請求項2についての訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当するから、訂正後の請求項2に係る発明の独立特許要件について検討する。
訂正後の請求項2に係る発明は、訂正後の請求項1に係る発明を引用しさらに限定した発明であるが、訂正後の請求項1に係る発明は、後述のように、特許異議申立人の提出した全刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができず、また、記載不備も認められないから、訂正後の請求項2に係る発明は、訂正後の請求項1に係る発明と同じ理由で、特許異議申立人の提出した全刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができず、また、記載不備も認められない。
したがって、訂正後の請求項2に係る発明は、出願の際、独立して特許を受けることができるものである。
2-4.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立てについて
3-1.本件訂正発明
特許権者が請求した上記訂正は、上述したとおり、認容することができるから、訂正後の本件請求項1、2に係る発明は訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものである(以下、本件訂正発明1、2という。)。
「【請求項1】多孔性支持体上に、2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物を含む溶液Aを被覆する工程、及び多官能性酸ハロゲン化物を含む溶液Bを上記溶液A相と接触させる工程を含む手段により、ポリアミド系スキン層を形成して複合逆浸透膜を製造する方法において、前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合比が水/アルコール=50〜90/50〜10(重量比)の混合溶液であって、前記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、2,4-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノアニソール、アミドール、キシリレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロへキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、2,5-ジメチルピベラジン、4-アミノメチルピペラジンから選ばれる少なくとも一つの化合物であって、前記溶液Aと溶液Bの溶解度パラメーターの差が7〜15(cal/cm3)1/2であることを特徴とする高透過性複合逆浸透膜の製造方法。
【請求項2】前記溶液Bが水非混和性有機溶剤溶液であることを特徴とする請求項1記載の高透過性複合逆浸透膜の製造方法。」
3-2.特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立人東レ株式会社は、証拠方法として甲第1〜3号証を提出し、請求項1に係る発明は、下記の理由(1)、(2)で取り消されるべきものである旨主張している。
(1)請求項1に係る発明は甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号、第2項の規定に違反してされたものである。
(2)本件特許発明の明細書は、発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に記載されているとは云えないので、特許法第36条第4項の規定に違反している。
3-3.上記理由(1)ついて
(1)甲号各証の記載内容
甲第1号証:特表平4-507216号公報
(a)「多孔質支持体にアミンと反応性でない極性-非プロトン溶剤を含有するポリアミンまたはビスフェノールの水溶液を塗布し、過剰の溶液を除去し、塗布された多孔質支持体をハロゲン化ポリアシル、ハロゲン化ポリスルホニルまたはポリイソシアネートの有機溶剤溶液と接触させて、多孔質支持体の内部および/または表面に反応生成物を形成し、得られた複合材料を硬化条件で硬化させて高フラツクス半透膜を形成することにより製造される高フラックス膜」(請求項1)
(b)「芳香族ポリアミンがm-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フエニレンジアミン、・・・よりなる群の少なくとも1種の員子である・・・」(請求項5)
(c)「極性-非プロトン溶剤がN-メチルピロリドン、2-ピロリドン類、N,N-ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ピリジン、ルチジン類、ピコリン類、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルホレン、ヘキサメチルホスホルアミド、トリエチルホスフィット、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリルおよびN,N-ジメチルプロピオンアミドよりな群の少なくとも1種の員子である・・・」(請求項8)
(d)「本発明方法に用いられる有機溶剤は水と非混和性のものからなり、たとえばn-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ナフサなど、またはハロゲン化炭化水素からなる。」(第3頁右下欄第19〜22行)
甲第2号証:特開昭57-144004号公報
(e)「多孔性基材に1分子中に2個以上の官能基を有する反応性基質の水溶液を塗布又は含浸し、次に上記官能基と反応し得る多官能性架橋剤にて上記反応性基質を界面反応させて架橋、重合させ、かくして半透性を有する緻密な超薄膜を形成させる複合半透膜の製造方法において、上記反応性基質の溶液に周期律表Ia,Ib,IIa,IIb,IIIa,IIIb,IVb,Vb,VIb,VIIb及びVIII族の金属並びにアンモニウムのハロゲン化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素酸塩、亜硝酸塩、ホウ酸塩、過ハロゲン酸塩から選ばれる少なくとも一種の水溶性の無機塩を反応基質100重量部について1〜1000重量部含有させることを特徴とする複合半透膜の製造方法」(特許請求の範囲第1項)
(f)「反応性基質の有する官能基がアミノ基又は水酸基である・・・」(特許請求の範囲第2項)
(g)「多官能性架橋剤が酸ハライド基、・・・から選ばれる2個以上の官能基を有する化合物である・・・」(特許請求の範囲第3項)
(h)「本発明においては、上記反応性基質と無機塩とを含む水溶液が多孔性基材に塗布又は含浸されるが、ここに水溶液はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数1〜4の脂肪族炭化水素を含有していてもよい。」(第3頁左上欄第8〜12行)
(i)「多孔性基材に原液を塗布後、この原液塗布層に多官能性架橋剤を接触させ、界面反応によって反応性基質を架橋、重合させるために、架橋剤は上記原液を形成する溶剤、即ち、水又は炭素数1〜4の脂肪族アルコールと水との混合溶剤と混和しない有機溶剤の溶液に調製されて、原液塗布層と接触せしめられる。」(第3頁右下欄第6行〜第4頁左上欄第5行)
(j)「実施例16 原液としてポリエチレンイミン0.5重量%、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン0.5重量%及び塩化ナトリウム0.5重量%の水-メタノール(1:2)溶液を用いる以外は実施例1と同様にして複合半透膜を得た。この場合半透膜の逆浸透性能は実施例1と同じ条件下で透水量0.80m3/m2・日、排除率99.0%であった。」(第5頁右下欄第12〜19行)
甲第3号証:特開昭63-12310号公報
(k)「多孔性支持膜と界面反応によって得られる架橋芳香族ポリアミドからなる超薄膜を有する半透性複合膜を製造する際に、アシル化触媒を用いて界面反応を行うことを特徴とする半透性複合膜の製造方法。」(請求項1)
(l)「本発明において、界面反応によつて得られる超薄膜は、架橋芳香族ポリアミドを主成分とするものであり、該架橋芳香族ポリアミドは2つ以上の反応性のアミノ基を有する芳香族アミンと、多官能芳香族ハロゲン化物の界面反応によって得ることができる。」(第2頁左下欄第10〜15行)
(m)「これらのアミノ化合物は、一般には水溶液の形で界面反応に供せられ、アミノ化合物水溶液におけるアミノ化合物の濃度は0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5.0重量とする。またアミノ化合物水溶液にはアミノ化合物と多官能性反応試薬との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒等が含まれていてもよい。」(第2頁右下欄第4〜11行)
(2)対比・判断
(2-1)本件訂正発明1について
本件発明訂正1は、多孔性支持体上にポリアミドを主成分とする薄膜を備えた高透過性複合逆浸透膜を製造する方法の技術的課題、すなわち高い脱塩性能を維持したまま高い水透過性を併せ有する複合逆浸透膜を製造するという課題を解決するものであって(本件訂正明細書段落【0004】、【0005】)、アミノ基含有化合物を含む溶液Aの溶解度パラメーターと多官能性酸ハロゲン化物を含む溶液Bの溶解度パラメーターの差が7(cal/cm3)1/2未満の場合は界面において薄膜が良好に形成されにくく、一方15(cal/cm3)1/2を越える場合は界面膜は良好に形成されるものの水透過性が低くなるという知見(本件訂正明細書段落【0008】)から、その解決手段として、分説すると、以下のA〜Dからなる高透過性複合逆浸透膜の製造方法である。
すなわち、本件訂正発明1は、
(A)多孔性支持体上に、2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物を含む溶液Aを被覆する工程、及び多官能性酸ハロゲン化物を含む溶液Bを上記溶液A相と接触させる工程を含む手段により、ポリアミド系スキン層を形成して複合逆浸透膜を製造する方法において、
(B)前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合比が水/アルコール=50〜90/50〜10(重量比)の混合溶液であって、
(C)前記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、2,4-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノアニソール、アミドール、キシリレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロへキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、2,5-ジメチルピベラジン、4-アミノメチルピペラジンから選ばれる少なくとも一つの化合物であって、
(D)前記溶液Aと溶液Bの溶解度パラメーターの差が7〜15(cal/cm3)1/2であること
を特徴とする高透過性複合逆浸透膜の製造方法である。
これに対して、甲第1〜3号証には、複合逆浸透膜の製造方法において、上記(A)、(C)の構成については記載されているものの、上記「(B)前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合比が水/アルコール=50〜90/50〜10(重量比)の混合溶液であって、」という構成をとることにより、上記「(D)前記溶液Aと溶液Bの溶解度パラメーターの差が7〜15(cal/cm3)1/2であること、」とすることについては記載も示唆もされていない。
以下、詳述する。
甲第1号証には、上記(a)、(b)から「多孔質支持体にアミンと反応性でない極性-非プロトン溶剤を含有するm-フェニレンジアミン等のポリアミンの水溶液を塗布し、過剰の溶液を除去し、塗布された多孔質支持体をハロゲン化ポリアシルの有機溶剤溶液と接触させて、多孔質支持体の内部および/または表面に反応生成物を形成し、得られた複合材料を硬化条件で硬化させて高フラツクス半透膜を形成する方法」が記載されている。この場合、ポリアミンとハロゲン化ポリアシルとの界面反応からポリアミドが形成されているのは明らかであるから、甲第1号証には、上記(A)、(C)の構成は記載されている。
しかしながら、上記「極性-非プロトン溶剤」は、上記(c)からみてN-メチルピロリドン等であり、アルコールではない。したがって、甲第1号証には上記(B)の構成をとることにより上記(D)の構成とすることは記載も示唆もされていないと云える。
なお、特許異議申立人は、甲第1号証において、溶液Aに相当するm-フェニレンジアミン、メチルピロリドン、水からなる溶液の溶解度パラメーターと、溶液Bに相当するナフサとトリメソイルクロリドとからなる溶液の溶解度パラメーターとの差が、上記(D)に規定する数値範囲内であるから、本件発明は甲第1号証に記載された発明である旨主張しているが、上記2-2.で述べたように、訂正により溶液Aから水と窒素化合物との混合溶液である場合が削除されたのであるから、特許異議申立人の主張を採用することができない。
次に、甲第2号証には、上記(e)〜(g)から「多孔性基材に1分子中に2個以上のアミノ基を有する反応性基質の水溶液を塗布又は含浸し、次に上記官能基と反応し得る酸ハライド基からなる多官能性架橋剤にて上記反応性基質を界面反応させて架橋、重合させ、かくして半透性を有する緻密な超薄膜を形成させる複合半透膜の製造方法において、上記反応性基質の溶液に一種の水溶性の無機塩を含有させることを特徴とする複合半透膜の製造方法」が記載されている。この場合、ポリアミドが形成されているのは明らかであるから、甲第2号証には、上記(A)、(C)の構成は記載されている。
また、上記(h)〜(j)から本件訂正発明1の溶液Aに相当する反応性基質の水溶液を、水とアルコールとの混合溶液とすることは記載されている。しかしながら、上記(j)から水/アルコールの比は1/2であるから、上記(B)の数値範囲からははずれる。しかも反応性基質の溶液には必ず、水溶性の無機塩を含有させているのであるから、結局甲第2号証には上記(B)の構成をとることにより上記(D)の構成とすることは記載も示唆もされていないと云える。
次に甲第3号証には、上記(k)、(l)から「多孔性支持膜と、2つ以上の反応性のアミノ基を有する芳香族アミンと多官能芳香族ハロゲン化物の界面反応によって得られる架橋芳香族ポリアミドからなる超薄膜を有する半透性複合膜を製造する際に、アシル化触媒を用いて界面反応を行うことを特徴とする半透性複合膜の製造方法」が記載されている。この場合、上記(A)、(C)の構成は記載されている。しかしながら、上記(m)からみても、芳香族アミンのアミノ化合物水溶液にアルコールが混合されているとは云えないから、甲第3号証には上記(B)の構成をとることにより上記(D)の構成とすることは記載も示唆もされていないと云える。
以上のことから、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明とすることはできないし、甲第1〜3号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
3-4.上記理由(2)について
特許異議申立人は、溶解度パラメーターの値が一義的に定まらず、本件特許発明の明細書は、当業者がその実施をすることができる程度に記載されているとは云えない旨主張している。しかしながら、溶解度パラメーターについては本件明細書においても定義されており(本件訂正明細書段落【0007】)、特許異議申立人も特許異議申立書の中で算出していることからみても、本件特許発明の明細書は当業者がその実施をすることができる程度に記載されていないとまでは云えない。加えて平成12年12月28日付けの特許異議意見書第8頁に記載されたように、「POLYMER HANDBOOK」の表から、各物質の溶解度パラメーターの数値が分かることから、各物質の溶解度パラメーターの数値は普通に知られているものと云える。したがって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
4.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、訂正後の本件請求項1係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、訂正後の本件請求項1に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高透過性複合逆浸透膜の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 多孔性支持体上に、2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物を含む溶液Aを被覆する工程、及び多官能性酸ハロゲン化物を含む溶液Bを上記溶液A相と接触させる工程を含む手段により、ポリアミド系スキン層を形成して複合逆浸透膜を製造する方法において、
前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合比が水/アルコール=50〜90/50〜10(重量比)の混合溶液であって、
前記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、2,4-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノアニソール、アミドール、キシリレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、1,3ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、4-アミノメチルピペラジンから選ばれる少なくとも一つの化合物であって、
前記溶液Aと溶液Bの溶解度パラメーターの差が7〜15(cal/cm3)1/2であることを特徴とする高透過性複合逆浸透膜の製造方法。
【請求項2】 前記溶液Bが水非混和性有機溶剤溶液であることを特徴とする請求項1記載の高透過性複合逆浸透膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、液状混合物の成分を選択的に分離するための複合逆浸透膜の製造方法に関し、詳しくは、多孔性支持体上にポリアミドを主成分とする薄膜を備えた高塩阻止率と高透過性を併せ有する複合逆浸透膜の製造方法に関する。かかる複合逆浸透膜は、超純水の製造、かん水の脱塩等に好適であり、また染色排水や電着塗料排水等の公害発生原因である汚れ等から、その中に含まれる汚染源あるいは有効物質を除去回収し、排水のクローズ化に寄与することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、非対称逆浸透膜とは構造の異なる逆浸透膜として、多孔性支持体上に実質的に選択分離性を有する薄膜を形成してなる複合逆浸透膜が知られている。
【0003】
現在、かかる複合逆浸透膜として、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物との界面重合によって得られるポリアミドからなる薄膜が、支持体上に形成されたものが多く知られている(例えば、特開昭55-147106号、特開昭62-121603号、特開昭63-218208号、特開平2-187135号等)。また、多官能芳香族アミンと多官能脂環式酸ハロゲン化物との界面重合によって得られるポリアミドからなる薄膜が、支持体上に形成されたものも知られている(例えば、特開昭61-42308号等)。
【0004】
上記複合逆浸透膜は、高い脱塩性能及び水透過性を有するが、さらに高い脱塩性能を維持したまま水透過性を向上させることが、効率面などの点から望まれている。これらの要求に対し、各種添加剤などが提案されている(例えば、特開昭63-12310号等)が、まだ現在の複合逆浸透膜では不十分であり、さらに高い水透過性を有する複合逆浸透膜が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高塩阻止率と高水透過性を併せ有する複合逆浸透膜を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、多孔性支持体上に、2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物を含む溶液Aを被覆する工程、及び多官能性酸ハロゲン化物を含む溶液Bを上記溶液A相と接触させる工程を含む手段により、ポリアミド系スキン層を形成して複合逆浸透膜を製造する方法において、
前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合比が水/アルコール=50〜90/50〜10(重量比)の混合溶液であって、前記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、2,4-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノアニソール、アミドール、キシリレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、4-アミノメチルピペラジンから選ばれる少なくとも一つの化合物であって、前記溶液Aと溶液Bの溶解度パラメーターの差が、7〜15(cal/cm3)1/2であることを特徴とする高透過性複合逆浸透膜の製造方法を提供する。
【0007】
ここで各溶液の溶解度パラメーターとは、液体のモル蒸発熱をΔHcal/mol、モル体積をVcm3/molとするとき、(ΔH/V)1/2(cal/cm3)1/2で定義される量をいう。
【0008】
本発明においては、アミノ基含有化合物を含む溶液Aの溶解度パラメーターと、多官能性酸ハロゲン化物を含む溶液Bの溶解度パラメーターの差を、7〜15(cal/cm3)1/2、好ましくは8〜14.5(cal/cm3)1/2とする。かかる溶解度パラメーターの差が7(cal/cm3)1/2未満の場合は、溶液Aと溶液Bの界面において薄膜が良好に形成されにくく、一方15(cal/cm3)1/2を越える場合は、界面膜は良好に形成されるものの、水透過性が低くなり、本発明の目的を達成することができない。
【0009】
本発明において用いる溶液Aおよび溶液Bは、上記特定の溶解度パラメーターの差を満たす溶液であって、溶液Aとしては、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合溶液が挙げられる。ここで上記溶液Aにおいて、水との混合割合は、水/アルコール混合比を50〜90/50〜10(重量比)とする。ここで溶液Aの溶解度パラメーターは、通常17〜23(cal/cm3)1/2である。
【0010】
また本発明で好ましく用いられる溶液Bとしては、水非混和性有機溶剤が挙げられ、特にヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロヘキサン等の炭化水素、四塩化炭素、トリクロロトリフルオロエタン、ジフロロテトラクロルエタン、ヘキサクロルエタンなどのハロゲン化炭化水素などが好ましい。ここで溶液Bの溶解度パラメーターは、通常5〜9.5(cal/cm3)1/2である。
【0011】
本発明で溶液Aに含まれるアミン成分は、2つ以上の反応性のアミノ基を有する多官能アミンであれば特に限定されず、芳香族、脂肪族、または脂環式の多官能アミンが挙げられる。
【0012】
かかる芳香族多官能アミンとしては、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、2,4-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノアニソール、アミドール、キシリレンジアミン等が挙げられる。また脂肪族多官能アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン等が挙げられる。また、脂環式多官能アミンとしては、例えば、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、4-アミノメチルピペラジン等が挙げられる。 これらのアミンは、単独として用いられてもよく、混合物として用いられてもよい。
【0013】
また本発明で溶液Bに含まれる多官能性酸ハロゲン化物は、特に限定されず、芳香族、脂肪族、脂環式等の多官能性酸ハロゲン化物が挙げられる。かかる芳香族多官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、トリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ビフェニルジカルボン酸クロライド、ナフタレンジカルボン酸ジクロライド等が挙げられる。また脂肪族多官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、プロパントリカルボン酸クロライド、ブタントリカルボン酸クロライド、ペンタントリカルボン酸クロライド、グルタリルハライド、アジポイルハライド等が挙げられる。また脂環式多官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、シクロプロパントリカルボン酸クロライド、シクロブタンテトラカルボン酸クロライド、シクロペンタントリカルボン酸クロライド、シクロペンタンテトラカルボン酸クロライド、シクロヘキサントリカルボン酸クロライド、テトラハイドロフランテトラカルボン酸クロライド、シクロペンタンジカルボン酸クロライド、シクロブタンジカルボン酸クロライド、シクロヘキサンジカルボン酸クロライド、テトラハイドロフランジカルボン酸クロライド等が挙げられる。
【0014】
本発明においては、前記アミン成分と、上記酸ハライド成分とを、界面重合させることにより、多孔性支持体上に架橋ポリアミドを主成分とする薄膜が形成された複合逆浸透膜が得られる。
【0015】
本発明において上記薄膜を支持する多孔性支持体は、薄膜を支持し得る物であれば特に限定されず、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンようなポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデンなど種々のものを挙げることができるが、特に、化学的、機械的、熱的に安定である点から、ポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホンからなる多孔性支持膜が好ましく用いられる。かかる多孔性支持体は、通常、約25〜125μm、好ましくは約40〜75μmの厚みを有するが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0016】
より詳細には、多孔性支持体上に、前記アミン成分を含有する溶液Aからなる第1の層を形成し、次いで前記酸ハライド成分を含有する溶液Bからなる層を上記第1の層上に形成し、界面重縮合を行って、架橋ポリアミドからなる薄膜を多孔性支持体上に形成させることによって得ることができる。
【0017】
多官能アミンを含有する溶液Aは、製膜を容易にし、あるいは得られる複合逆浸透膜の性能を向上させるために、さらに、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等の重合体や、ソルビトール、グリセリン等のような多価アルコールを少量含有させることもできる。
【0018】
また、特開平2-187135号公報に記載のアミン塩、例えばテトラアルキルアンモニウムハライドやトリアルキルアミンと有機酸とによる塩等も、製膜を容易にする、アミン溶液の支持体への吸収性を良くする、縮合反応を促進する等の点で好適に用いられる。
【0019】
また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤を含有させることもできる。これらの界面活性剤は、多官能アミンを含有する溶液Aの多孔性支持体への濡れ性を改善するのに効果がある。さらに、上記界面での重縮合反応を促進するために、界面反応にて生成するハロゲン化水素を除去し得る水酸化ナトリウムやリン酸三ナトリウムを用い、あるいは触媒として、アシル化触媒等を用いることも有益である。
【0020】
上記酸ハライドを含有する溶液B及び多官能アミンを含有する溶液Aにおいて、酸ハライド及び多官能アミンの濃度は、特に限定されるものではないが、酸ハライドは、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%であり、多官能アミンは、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
【0021】
このようにして、多孔性支持体上に多官能アミンを含有する溶液Aを被覆し、次いでその上に多官能酸ハライド化合物を含有する溶液Bを被覆した後、それぞれ余分の溶液を除去し、次いで、通常約20〜150℃、好ましくは約70〜130℃で、約1〜10分間、好ましくは約2〜8分間加熱乾燥して、架橋ポリアミドからなる水透過性の薄膜を形成させる。この薄膜は、その厚さが、通常約0.05〜1μm、好ましくは約0.15〜0.5μmの範囲にある。
【0022】
また本発明の複合逆浸透膜の製造方法において、特公昭63-36803号公報に記載されているように、次亜塩素酸等による塩素処理を行って塩阻止性能をさらに向上させることもできる。
【0023】
【発明の効果】
本発明により得られる複合逆浸透膜は、高塩阻止率と高透過性を併せ有し、比較的低圧で実用性のある脱塩を可能にする複合逆浸透膜を提供し、例えば、かん水、海水等の脱塩による淡水化や、半導体の製造に必要とされる超純水の製造等に好適に用いることができる。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1
m-フェニレンジアミン2.0重量%、ラウリル硫酸ナトリウム0.25重量%、トリエチルアミン2.0重量%、カンファースルホン酸4.0重量%を含有した水とエタノール混合液(溶解度パラメーター21.3(cal/cm3)1/2、水/エタノール混合比=80/20〔重量比〕)を溶液Aとして、多孔性ポリスルホン支持膜に数秒間接触させて、余分の溶液Aを除去して支持膜上に上記溶液Aの層を形成した。
【0025】
次いで、かかる支持膜の表面に、トリメシン酸クロライド0.10重量%及びイソフタル酸クロライド0.10重量%を含むヘキサン溶液(溶解度パラメーター7.3(cal/cm3)1/2を溶液Bとして接触させ、その後120℃の熱風乾燥機の中で5分間保持して、支持膜上に重合体薄膜を形成させ、複合逆浸透膜を得た。ここで、溶液Aと溶液Bの溶解度パラメーターの差は、14.0(cal/cm3)1/2であった。
【0026】
得られた複合逆浸透膜の性能は、1500ppmの塩化ナトリウムを含むpH6.5の食塩水を、15kg/cm2の圧力で評価したところ、透過液電導度による塩阻止率は99.5%、透過流束は1.0m3/m2・日であった。
【0027】
実施例2、3、比較例1、2
実施例1において、アミン溶液(溶液A)の水とエタノールの混合比率を変える以外は、実施例1と同様にして複合逆浸透膜を得た。その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例4〜5、比較例3
実施例1において、アミン溶液(溶液A)のエタノールを、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、ニトロメタンに変える以外は、実施例1と同様にして複合逆浸透膜を得た。その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
以上の結果から、本発明により得られる複合逆浸透膜は従来のものに比べ,高い塩阻止率と高い水透過性を併せ有することがわかる。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第3006976号発明の明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち、
(1)訂正事項a
【請求項1】の「前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合溶液、あるいは、水と窒素化合物との混合溶液であって、」(本件特許掲載公報第1頁第1欄第8〜10行)を、「前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合比が水/アルコール=50〜90/50〜10(重量比)の混合溶液であって、」と訂正する。
(2)訂正事項b
【請求項2】の「前記窒素化合物がニトロメタン、ホルムアミド、メチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、エチルホルムアミドから選ばれる化合物であり、溶液Bが水非混和性有機溶剤溶液である」(本件特許掲載公報第1頁第2欄第10〜13行)を、「前記溶液Bが水非混和性有機溶剤溶液である」と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書中の「前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合溶液、あるいは、水と窒素化合物との混合溶液であって、」(本件特許掲載公報第2頁第3欄第44〜47行)を、「前記溶液Aが、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合比が水/アルコール:50〜90/50〜10(重量比)の混合溶液であって、」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書中の「溶液Aとしては、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合溶液、あるいは、水と窒素の窒素化合物との混合溶液、その他単独で溶解度パラメーターが10(cal/cm3)1/2以上ある溶媒と水との混合溶液が挙げられる。前記窒素化合物としては、ニトロメタン、ホルムアミド、メチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、エチルホルムアミドなどが好ましく用いられる。」(本件特許掲載公報第2頁第4欄第27〜34行)を、「溶液Aとしては、水とエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれるアルコールとの混合溶液が挙げられる。」と訂正する。
(5)訂正事項e
明細書中の「ここで上記溶液Aにおいて、水との混合割合は、その溶解度パラメーターが、それと後述する溶液Bの溶解度パラメーターとの差が前記の特定範囲になる限り特に限定されないが、例えば水/エタノール混合比を50〜90/50〜10(重量比)とすることができる。」(本件特許掲載公報2頁第4欄第35〜39行)を、「ここで上記溶液Aにおいて、水との混合割合は、水/アルコール混合比を50〜90/50〜10(重量比)とする。」と訂正する。
(6)訂正事項f
明細書中の「実施例4〜6」(本件特許掲載公報第5頁第9欄第1行)を、「実施例4〜5、比較例3」と訂正する。
(7)訂正事項g
明細書中の表2の「実施例6」(本件特許掲載公報第6頁)を、「比較例3」と訂正する。
異議決定日 2001-06-12 
出願番号 特願平5-153331
審決分類 P 1 652・ 113- YA (B01D)
P 1 652・ 532- YA (B01D)
P 1 652・ 121- YA (B01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 奥井 正樹  
特許庁審判長 加藤 孔一
特許庁審判官 山田 充
野田 直人
登録日 1999-11-26 
登録番号 特許第3006976号(P3006976)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 高透過性複合逆浸透膜の製造方法  
代理人 林 孝  
代理人 林 孝  

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