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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C03B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03B
管理番号 1048376
異議申立番号 異議2000-72183  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-07-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-26 
確定日 2001-07-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2982959号「ガラス溶解炉用材料、ガラス溶解炉、ガラス製品の製造方法及びガラス溶解炉用材料の精製方法」の請求項1ないし24に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2982959号の訂正後の請求項1ないし14に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2982959号の請求項1〜24に係る発明についての出願は、平成10年10月21日に特許出願(優先日 平成10年4月27日、平成10年10月13日)されたものであって、平成11年9月24日にその発明について特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、板倉栄子より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内に平成12年10月25日付けで訂正請求がなされ、その後再度取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成13年5月17日付けで新たな訂正請求がなされ、上記平成12年10月25日付けの訂正請求が取り下げられ、その後平成13年5月28日付けで手続補正指令(方式)がなされ、その指定期間内の平成13年6月13日付けで手続補正書(方式)がなされたものである。
2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を上記平成13年6月13日付け手続補正書(方式)で補正された平成13年5月17日付け訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
(1)訂正事項a
発明の名称の記載の「【発明の名称】ガラス溶解炉用材料、ガラス溶解炉、ガラス製品の製造方法及びガラス溶解炉用材料の精製方法」を、「【発明の名称】ガラス製品の製造方法」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の【請求項1】から【請求項24】の記載を、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した清澄槽にて、溶解ガラスの脱泡処理することで、前記壁面からの泡の発生を抑える清澄工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した調整槽にて、前記清澄槽からの溶解ガラスを所定の均一温度に調整することで、前記壁面からの泡の発生を抑える調整工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した攪拌槽にて、調整槽からの溶融ガラスを攪拌することで、前記壁面からの泡の発生を抑える攪拌工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した成形部にて、前記攪拌槽からの溶解ガラスを板ガラスに成形することで、前記壁面からの泡の発生を抑える成形工程と、を含むことを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項2】請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項3】請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記清澄工程の前に、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した溶解槽にて、ガラスを溶解することで、前記壁面からの泡の発生を抑える溶解工程を、更に含むことを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項4】請求項3記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項5】請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項6】請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項7】請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項8】請求項2記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項9】請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項10】請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項11】請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×106ポアズを超えないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項12】請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×102ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項13】請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、ガラス製品が光学用ガラスであるときに、その溶融ガラスの粘度が、7×10ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項14】請求項12又は請求項13記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法。」
と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書中の段落【0001】の記載を、
「【0001】【発明の属する技術分野】
本発明は、白金もしくは白金合金を主成分としたガラス溶解炉用材料を使用したガラス製品の製造方法に関する。」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書中の段落【0009】〜【0035】の記載を、
「【0009】
そこで、ガラス溶解炉用材料は、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmとし、下限値が1ppmとする。オスミウムの上限値を20ppmとし、下限値を1ppmとすれば泡の発生を抑えることができるからである。
【0010】
又ガラス溶解炉用材料は、オスミウム含有量を10ppmに抑える。ガラス素材の成分の変動を考慮すればオスミウムの上限を抑えるには余裕がほしい。そして、泡の発生の点からオスミウムは少ないほど良いから、安全率を2倍として、20ppmの半分の10ppmにすることが好ましい。
【0011】
請求項1は、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した清澄槽にて、溶解ガラスの脱泡処理することで、前記壁面からの泡の発生を抑える清澄工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した調整槽にて、前記清澄槽からの溶解ガラスを所定の均一温度に調整することで、前記壁面からの泡の発生を抑える調整工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した攪拌槽にて、調整槽からの溶融ガラスを攪拌することで、前記壁面からの泡の発生を抑える攪拌工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した成形部にて、前記攪拌槽からの溶解ガラスを板ガラスに成形することで、前記壁面からの泡の発生を抑える成形工程と、を含むことを特徴としたガラス製品の製造方法である。
【0012】
オスミウム含有量が上限値が20ppmで、下限値が1ppmのガラス溶解炉用材料を使用した設備にて、清澄工程、調整工程、攪拌工程を泡の出にくい、ガラス溶解炉用材料を使用した設備及び成形工程を実施するので、泡のない高品質のガラス製品を製造することができる。
【0013】
請求項2は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0014】
請求項3は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記清澄工程の前に、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した溶解槽にて、ガラスを溶解することで、前記壁面からの泡の発生を抑える溶解工程を、更に含むことを特徴としたガラス製品の製造方法である。
【0015】
清澄工程、調整工程、攪拌工程及び成形工程と共に溶解工程をも泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用した設備で実施するので、より泡のない高品質のガラス製品を製造することができる。
【0016】
請求項4は、請求項3記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。溶解工程も10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0017】
請求項5は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。泡が少ないので、高品質の電子部品用ガラス部材を製造することができる。
【0018】
請求項6は、請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。泡が少ないので、高品質の液晶用ガラス基板を製造することができる。
【0019】
請求項7は、請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法である。泡が少ないので、高品質の無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを製造することができる。
【0020】
請求項8は、請求項2記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の電子部品用ガラス部材を製造することができる。
【0021】
請求項9は、請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の液晶用ガラス基板を製造することができる。
【0022】
請求項10は、請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを製造することができる。
【0023】
請求項11は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×106ポアズを超えないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が2×106ポアズ以下のところに限定した。溶融ガラスの粘度が2×106ポアズを超えたところに使用しても効果が薄いからである。従って、設備費用の高騰を効果的に抑えることができる。
【0024】
請求項12は、請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×102ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が2×102ポアズ以上のところに限定した。すなわち、接触する溶融ガラスの粘度が2×102〜2×106ポアズの範囲にある箇所だけ、泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用することで、設備費用の高騰を効果的に抑えることができる。
【0025】
請求項13は、請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、ガラス製品が光学用ガラスであるときに、その溶融ガラスの粘度が、7×10ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。ガラス製品が光学用ガラスであるときに、オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が7×10ポアズ以上のところに限定した。すなわち、接触する溶融ガラスの粘度が7×10〜2×106ポアズの範囲にある箇所だけ、泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用することで、設備費用の高騰を一層効果的に抑えることができる。
【0026】
請求項14は、請求項12又は請求項13記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。」と訂正する。
(5)訂正事項e
明細書中の段落番号【0036】〜【0088】を、【0027】〜【0079】と訂正する。
(6)訂正事項f
明細書中の段落【0089】〜【0115】の記載を、
「【0080】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。請求項1は、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した清澄槽にて、溶解ガラスの脱泡処理することで、前記壁面からの泡の発生を抑える清澄工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した調整槽にて、前記清澄槽からの溶解ガラスを所定の均一温度に調整することで、前記壁面からの泡の発生を抑える調整工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した攪拌槽にて、調整槽からの溶融ガラスを攪拌することで、前記壁面からの泡の発生を抑える攪拌工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した成形部にて、前記攪拌槽からの溶解ガラスを板ガラスに成形することで、前記壁面からの泡の発生を抑える成形工程と、を含むことを特徴としたガラス製品の製造方法である。
【0081】
オスミウム含有量が上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を使用した設備にて、清澄工程、調整工程、攪拌工程及び成形工程を実施するので、泡のない高品質のガラス製品を製造することができる。
【0082】
請求項2は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0083】
請求項3は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記清澄工程の前に、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した溶解槽にて、ガラスを溶解することで、前記壁面からの泡の発生を抑える溶解工程を、更に含むことを特徴としたガラス製品の製造方法である。
【0084】
清澄工程、調整工程、攪拌工程及び成形工程と共に溶解工程をも泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用した設備で実施するので、より泡のない高品質のガラス製品を製造することができる。
【0085】
請求項4は、請求項3記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。溶解工程も10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0086】
請求項5は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。泡が少ないので、高品質の電子部品用ガラス部材を製造することができる。
【0087】
請求項6は、請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。泡が少ないので、高品質の液晶用ガラス基板を製造することができる。
【0088】
請求項7は、請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法である。泡が少ないので、高品質の無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを製造することができる。
【0089】
請求項8は、請求項2記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の電子部品用ガラス部材を製造することができる。
【0090】
請求項9は、請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の液晶用ガラス基板を製造することができる。
【0091】
請求項10は、請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを製造することができる。
【0092】
請求項11は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×106ポアズを超えないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が2×106ポアズ以下のところに限定した。溶融ガラスの粘度が2×106ポアズを超えたところに使用しても効果が薄いからである。従って、設備費用の高騰を効果的に抑えることができる。
【0093】
請求項12は、請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×102ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が2×102ポアズ以上のところに限定した。すなわち、接触する溶融ガラスの粘度が2×102〜2×106ポアズの範囲にある箇所だけ、泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用することで、設備費用の高騰を効果的に抑えることができる。
【0094】
請求項13は、請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、ガラス製品が光学用ガラスであるときに、その溶融ガラスの粘度が、7×10ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。ガラス製品が光学用ガラスであるときに、オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が7×10ポアズ以上のところに限定した。すなわち、接触する溶融ガラスの粘度が7×10〜2×106ポアズの範囲にある箇所だけ、泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用することで、設備費用の高騰を一層効果的に抑えることができる。
【0095】
請求項14は、請求項12又は請求項13記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。」と訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
上記訂正事項bは、(あ)訂正前の請求項1〜7、12、13、24を削除し、訂正前の請求項8〜11、14〜23をそれぞれ請求項1〜14と繰り上げ、それに伴い引用項を訂正し、(い)訂正後の請求項1において、含む不純物としてのオスミウム含有量の下限値を1ppmに限定し、また、調整工程の後に「母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した攪拌槽にて、調整槽からの溶融ガラスを攪拌することで、前記壁面からの泡の発生を抑える攪拌工程」を付加し、(う)訂正後の請求項1において、上記(い)の訂正に伴って、成形部にて攪拌槽からの溶解ガラスを板ガラスに成形する訂正とし、(え)訂正後の請求項3において、含む不純物としてのオスミウム含有量の下限値を1ppmに限定する訂正である。
上記(あ)は請求項の削除とそれに伴う引用請求項の訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、上記(い)と(え)の、下限値を1ppmに限定する訂正は、下限を明確にしたのであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、上記(い)と(う)の調整工程の後に攪拌工程を付加する訂正は、成形部の前の工程をさらに限定することであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
そして、特許明細書中の表3、表5(本件特許掲載公報第7、8頁)において、白金中のオスミウム含有量の1.0ppmでの泡の数1(個/cm2・hr)以下であることが記載されていることや、訂正前の請求項12に調整工程の後の攪拌工程について記載されていることから、訂正事項bの上記(い)〜(え)の訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。また、上記訂正によって別個の新たな目的及び効果をもたらすものではないから実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、上記訂正事項a、c〜fは、特許請求の範囲の減縮を目的とする上記訂正事項bの訂正に伴うものであり、減縮された特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるために、明りょうでない記載の釈明を行うことを目的とする訂正に該当するものであり、しかも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
2-3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項、第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立てについて
3-1.本件訂正発明
特許権者が請求した上記訂正は、上述したとおり、認容することができるから、訂正後の本件請求項1〜14に係る発明は上記訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜14に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、本件訂正発明1〜14という。)。
「【請求項1】母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した清澄槽にて、溶解ガラスの脱泡処理することで、前記壁面からの泡の発生を抑える清澄工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した調整槽にて、前記清澄槽からの溶解ガラスを所定の均一温度に調整することで、前記壁面からの泡の発生を抑える調整工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した攪拌槽にて、調整槽からの溶融ガラスを攪拌することで、前記壁面からの泡の発生を抑える攪拌工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した成形部にて、前記攪拌槽からの溶解ガラスを板ガラスに成形することで、前記壁面からの泡の発生を抑える成形工程と、を含むことを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項2】請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項3】請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記清澄工程の前に、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した溶解槽にて、ガラスを溶解することで、前記壁面からの泡の発生を抑える溶解工程を、更に含むことを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項4】請求項3記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項5】請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項6】請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項7】請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項8】請求項2記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項9】請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項10】請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項11】請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×106ポアズを超えないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項12】請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×102ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項13】請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、ガラス製品が光学用ガラスであるときに、その溶融ガラスの粘度が、7×10ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項14】請求項12又は請求項13記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法。」
3-2.特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立人板倉栄子は、証拠方法として甲第1〜10号証を提出し、請求項1、2に係る発明は、甲第1、2号証に記載の発明であるか、甲第1、2、6号証に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3〜24に係る発明は、甲第1〜10号証に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜24に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号、第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである旨主張している。
上記2-2.で述べたように訂正前の請求項1、2に係る発明は削除されたから、以下、本件訂正発明1〜14の特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるか否かを検討する。
3-3.甲号各証の記載内容
甲第1号証の1:「Materials Transactions,JIM 」Vol.37,NO.3(1996)p353、354(以下、訳文)
(a)「高い融点および高い耐酸化性を有し、かつ、溶融ガラスに対し不活性であるので、白金および白金合金は、ガラス溶融産業において広く使われている」(第353頁左欄I.Introduction第1〜3行)
(b)第354頁表1には、インゴット(白金のサンプル)No.(A-1,A-2,B-1,B-2,C)の不純物濃度(ppm)が示されており、各インゴットの不純物濃度の最大値は各成分の最大値を加算すると9.4、9.2、11.6、10.7、8.4であることが示されている。そして、各成分の中には、0.1未満の濃度のものが示されており、表の欄外にオスミウムは、検出レベル未満であると記載されている。
甲第1号証の2:「THERMEC’97 International Conference on Thermomechanical Processing of Steels & Other Materials」第1647、1648頁(1997)(以下、訳文)
(c)「高い融点および高い耐酸化性を有し、かつ、溶融ガラスに対し不活性であるので白金および白金合金は、ガラス溶融産業において広く使われている」(第1648頁Introduction第1〜2行)
(d)第1648頁表1には、インゴット(白金のサンプル)No.(UPP-2,UPP-6,UPP-8,IND-1)の不純物濃度(ppm)が示されており、各インゴットの不純物濃度の最大値は各成分の最大値を加算すると9.4、7.4、10.0、259であることが示されている。そして、各成分の中には、0.1未満の濃度のものが示されており、表の欄外にオスミウムは、検出レベル未満であると記載されている。
(e)「それらのうち3つ(UPP-2、6、8)は、高純度であり、1つ(IND-1)は、工業グレードである。」(第1648頁下から第26〜24行)
甲第2号証の1:田中貴金属工業株式会社白金加工品カタログ昭和62年3月12日発行(このカタログは裏表紙右下に「白620312文5」と記載されており、昭和62年3月12日発行のものと認められる。)
(f)「現在ガラス工業に広く用いられているPtおよびPt合金は、当社が創立当初から手がけてきました代表材料のひとつであります。特に光学レンズ各種、テレビブラウン管、表示板など高品質を要求されるガラス溶解装置に適した材料です。・・・当社で精製しています高純度Ptは、不純物トータルが5PPM以下という優れた品質を有し、レーザー部門をはじめとして光学ガラス部門に広く利用されています。」(第3頁)
甲第2号証の2:田中貴金属工業株式会社白金加工品カタログ(記載内容は上記甲第2号証の1と同じ。このカタログには裏表紙右下に「95400500YG改2」の記載があるが、「950405」という記載でないので、特許異議申立人が云うように1995年4月5日発行のものであるとは直ちに認められない。)
甲第3号証の1:実願昭49-136414号(実開昭51-62564号)のマイフロフィルム
(g)「そして白金使用箇所とは、間歇溶解炉に於ける白金坩堝や連続溶解炉に於ける原料溶解、清澄、均質化等の機能を司る白金槽及び該白金槽が複数個ある場合の連結管等である」(第2頁第7〜10行)
(h)第5頁図面には、ガラス融液4と接する箇所は、白金内壁1となっていることが示されている。
甲第3号証の2:特開平7-10546号公報
(i)「・・・少なくともガラスと接触する面が、PtまたはPtを主成分とする合金からなり、その面粗さがRmaxで4μm以上、20μm以下であることを特徴とするガラス溶融ルツボ。」(請求項1)
甲第4号証の1:特開昭63-139020号公報
(j)「保護耐火物槽に白金もしくは白金合金からなる受槽を内接させまたは保護耐火物槽の内面に白金もしくは白金合金をライニングすることにより構成したことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の板ガラスの成形用型」(請求項2)
(k)「流出パイプ2より流入した溶融ガラス5は、直ちにこの受槽4から流出することはなく、誘導傾斜部6の頂部まで溜め込まれた後、連続的に流出リップ部7の先端より流れ出る。このとき、誘導傾斜部6は、その頂部に向けて幅が緩やかに拡大する構造を有しているため、溶融ガラス5は、それに応じた幅をもつようになる。そして誘導傾斜部6の頂部よりオーバーフローしたガラスは、その幅を維持したまま流出リップ部7の下り勾配面を伝って流れ落ちる。・・・流出リップ部7の先端より離れたガラスは、直ちにロール8,9の間を通り、一定の厚さの板ガラス10となって徐冷炉(図示せず)へと送り込まれる」(第2頁左下欄第18行〜第3頁左上欄第1行)
甲第4号証の2:特公昭43-12885号公報
(l)「第1図は・・・1は原料が溶融される部分で、これは泡切れ攪拌槽2と隔壁16で区分されている。溶融したガラスを受け取る均質化攪拌槽4と 泡切れ攪拌槽2の間は連結管あるいは樋8で連結され、泡切れ攪拌槽4にはおのおの適当な速さで回転し得る攪拌装置10および11が挿入されており、均質化攪拌槽には溶融ガラスを連続的に取り出す為の流出管15が設置されている。」(第2頁右欄第37〜47行)
(m)「第2図は・・・1は原料溶融槽、2は泡切れ攪拌槽、3は清澄槽、4はガラスを均質にする攪拌槽、5は溶融ガラスを作業温度に調節する温度調節槽である。」(第3頁左欄第29〜33行)
(n)「これらの槽連結管、覆蓋および攪拌装置は溶融ガラスに侵蝕され難い耐火物または白金等の金属で造られ、・・・」(第3頁左欄第40〜42行)
甲第5号証の1:作花済夫他編著「ガラスハンドブック」朝倉書店 第87〜89頁(1981年8月1日)
(o)「溶融槽は一般に高温ガラスの場合や大型炉の場合タンクブロックが用いられるが、ガラスによっては白金の必要があり、ガス加熱や直接通電の方法もある。清澄槽は主として脱泡を、均質槽は主として脈理の拡散を、また調整槽はガラスの粘性を成形に適した値にするのに用いられ、各槽の形状は方法によりまちまちで、また撹拌の有無、方式もまちまちである」(第87頁3.3.5連続溶融法第3〜7行)
甲第5号証の2:実願昭59-41621号(実開昭60-152642号)のマイクロフィルム
(p)「原料熔解槽及び1又は2以上の白金清澄槽及び白金かくはん槽を直列に連結してなるガラス連続製造装置において、前記原料熔解槽が白金熔解槽である場合・・・ガラス連続製造装置。」(実用新案登録請求の範囲)
甲第5号証の3:特開昭58-41729号公報
(q)「溶融槽は耐火物槽であり、作業槽および清澄槽は白金又は白金合金槽である特許請求の範囲第1項又は第2項記載のガラスの溶融方法。」(特許請求の範囲第3項)
(r)「・・・脈を完全に除去するための撹拌棒13を設けた作業槽4からなり・・・」(第2頁右下欄第5〜6行)
(s)「溶解槽は・・・通常の耐火物槽でよく、安価に製作できる等の効果がある。」(第3頁右上欄第15〜18行)
甲第6号証の1:田中貴金属工業株式会社編「貴金属のおはなし」日本規格協会 第173、174頁(1989年2月8日)
(t)「オスミウムは白金族金属中で最も酸化されやすく、空気中で加熱すると急激に酸化します。微粉末のオスミウムは常温でも酸化されます。」(第173頁第19〜21行)
(u)「オスミウムの酸化物(OsO4)は毒性が強いうえ容易に生成するので、・・・」(第174頁第3、4行)
甲第6号証の2:田中清一郎監修「貴金属の科学 応用編」田中貴金属工業株式会社 第153、154頁(1985年11月30日)
(v)第154頁、図5-3には、「大気中におけるPt族の高温揮発損失量」が示されており、オスミウムの高温揮発損失量がPt族の中で最も大きいことが示されている。
甲第7号証:特開昭64-61329号公報
(w)「モル%表示で、SiO2 58〜63、Al2O3 8〜11、B2O3 4〜6・・・の成分組成からなる実質的にアルカリ成分を含まないことを特徴とする無アルカリガラス。」(特許請求の範囲第1項)
(x)「本発明は、電子工業分野における電子部品として用いられる実質的にアルカリ金属酸化物を含有しない、・・・基板用の無アルカリガラスに関し、特にECD、ELや液晶等の各種ディスプレーならびに太陽電池やフォトマスクのガラス基板として使用される無アルカリガラスに関する。」(第1頁右下欄第6〜12行)
(y)「第1表の実施例No.1〜No.9は本発明のガラス成分組成の例であり、・・・白金ルツボを用い、電気炉にて雰囲気温度で約1450〜1580℃において3〜6時間加熱溶融し、溶融の途中から白金スターラを用いて8〜20rpmで攪拌して均質化をはかり、その後溶融ガラスを流し出して板状体を形成し、」(第4頁左上欄第20行〜右上欄第8行)
甲第8号証:特開平4-325436号公報
(z)「モル%で表示して、実質的に、56〜68%のSiO2、7〜17%のB2O3、5〜13%のAl2O3・・・実質的にアルカリ金属酸化物を含有しないことを特徴とする無アルカリガラス。」(請求項1)
(aa)第4頁表1にはTv℃の欄に、「1173、1094、1185、1145・・・」が記載されており、第4頁の段落番号【0026】にはTvについて、「ガラスの成形温度、ガラスの粘度が104ポイズになる温度」と記載されている。
甲第9号証:特開平6-263473号公報
(ab)「・・・該ガラスが、アルカリ金属酸化物を実質的に含まず、酸化物基準のモルパーセントで表して、64-70%のSiO2、9.5-14%のAl2O3、5-10%のB2O3・・・ガラス。」(請求項1)
(ac)「前記ガラスが、1675℃より低い温度で約20Pa・s(200ポアズ)の溶融粘度を示すことを特徴とする請求項1記載のガラス。」(請求項4)
(ad)第9頁〜第11頁の表IIおよび表II(続き)のMeltの欄には、「1645、1560、1670・・・」と記載されており、第8頁の段落番号【0038】には「溶融温度[℃で示したMelt](ガラスの溶融物が200ポアズ[20Pa・s]の粘度を示した温度」と記載されている。
また、表IIおよび表II(続き)に示されているガラスのうち、実施例16〜22、25〜27および32〜43のガラスのMeltの欄の温度範囲は1560〜1670℃であることが示されている。
甲第10号証「光応用技術1993 IV-3 光学ガラス」日本オプトメカトロニクス協会 第34、35頁(1993年4月30日)
(ae)第35頁の図2.16には、「ガラスの粘性と重要な作業温度域との関係」が示されており、7×10ポアズは、溶融温度域の範囲内にあることが示されている。
3-4.対比・判断
(1)本件訂正発明1について
本件訂正発明1は、白金もしくは白金合金を主成分としたガラス溶解炉用材料を使用したガラス製品の製造方法の技術的課題、すなわち白金が99.95重量%(不可避的不純物が0.05重量%)もの高純度の工業用白金を採用したにもかかわらず、認められる泡の発生を抑制するものであって(本件訂正明細書段落【0004】)、ガラス溶解炉用材料である白金又は白金合金中のオスミウム含有量の上限値を20ppmとし下限値を1ppmとすることにより泡の発生を抑えることができるとの知見(本件訂正明細書 表3、表5参照)から、その解決手段として、分説すると、以下のA〜Dの工程からなるガラス製品の製造方法である。
「(A)母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した清澄槽にて、溶解ガラスの脱泡処理することで、前記壁面からの泡の発生を抑える清澄工程と、
(B)母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した調整槽にて、前記清澄槽からの溶解ガラスを所定の均一温度に調整することで、前記壁面からの泡の発生を抑える調整工程と、
(C)母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した攪拌槽にて、調整槽からの溶融ガラスを攪拌することで、前記壁面からの泡の発生を抑える攪拌工程と、
(D)母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した成形部にて、前記攪拌槽からの溶解ガラスを板ガラスに成形することで、前記壁面からの泡の発生を抑える成形工程と、を含むことを特徴としたガラス製品の製造方法。」
すなわち、本件訂正発明1は、
(A)の清澄工程、(B)の調整工程、(C)の攪拌工程、(D)の成形工程の全ての工程において、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を使用することにより、上記技術的課題を解決するというものである。
これに対して、甲第1〜10号証には、上記技術的課題も、その解決手段についても記載も示唆もされていない。
以下、詳述する。
甲第1号証の1には、ガラス溶融産業において、白金又は白金合金が広く使用されていることは記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生の関係とについては何も記載されておらず、かつ不純物としてのオスミウムの濃度は、他の不純物の濃度が小数点第1位等のppm濃度を示している中で「検出レベル未満」であるとされている。このことから、甲第1号証の1記載のオスミウムの含有量が1ppm以下であることは明らかである。してみると、甲第1号証の1には泡の発生を抑えるために「母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を使用する」ことは記載も示唆もされていないと云える。
次に、甲第1号証の2には、甲第1号証の1と同じにガラス溶融産業において、白金又は白金合金が広く使用されていることは記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係については何も記載されておらず、かつ不純物としてのオスミウムの濃度は、他の不純物の濃度が小数点第1位等のppm濃度を示している中で「検出レベル未満」であるとされている。したがって、甲第1号証の2についても上述のように甲第1号証の1と同じことが云える。
次に甲第2号証の1には、高品質を要求されるガラス溶解装置に適した高純度Ptは不純物トータルが5ppm以下であることが記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係やオスミウムの含有量について記載も示唆もされていない。なお、上記(b)、(d)をみても、高純度の白金において不純物濃度が10ppm未満の場合、オスミウムは検出レベル以下となるのが普通であると認められるから、不純物トータルが5ppm以下であるとき、オスミウムが1ppm以上になるとは云えない。
したがって、甲第2号証の1には、泡の発生を抑えるために「母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を使用する」ことは記載も示唆もされていないと云える。 また、甲第2号証の2の記載内容は甲第2号証の1と同じなので、甲第2号証の2についても甲第2号証の1と同じことが云える。
次に甲第3号証の1には、ガラス溶融において原料溶解、清澄、均質化等の機能を司る白金槽及び連結管に白金を使用することは記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、オスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
次に甲第3号証の2には白金又は白金を主成分とする合金からなるガラス溶融ルツボについては記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、オスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
次に、甲第4号証の1には白金もしくは白金合金を使用した板ガラスの製造方法が記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、オスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
次に、甲第4号証の2にはガラス溶融において原料溶融槽、攪拌槽、清澄槽、均質槽、調整槽を連設し、槽連結管、覆蓋、攪拌装置に白金を使用することは記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、オスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
次に甲第5号証の1には、ガラス溶融において溶融槽、清澄槽、均質槽、調整槽を連設し、溶融槽に白金を使用することは記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、オスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
次に甲第5号証の2には、白金原料熔解槽、白金清澄槽、白金かくはん槽は記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、オスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
次に甲第5号証の3には、ガラス溶融において溶融槽、作業槽、清澄槽を連設し、作業槽及び清澄槽に白金又は白金合金を使用することは記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、オスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
次に甲第6号証の1には、オスミウムは白金族金属中でもっとも酸化されやすいことは記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、白金中のオスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
次に甲第6号証の2には、オスミウムの高温揮発損失量が白金族の中で最も大きいことが記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、白金中のオスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
次に甲第7号証には、白金ルツボ、白金スターラ等を使用して無アルカリのアルミノ硼珪酸ガラスの板ガラスを製造することは記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、白金中のオスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
次に甲第8号証には、アルミノ硼珪酸ガラスの成形温度が1100℃程度で、粘度が104ポイズであることは記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、白金中のオスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
次に甲第9号証には、アルミノ硼珪酸ガラスの溶融温度が1600℃程度で、粘度が200ポアズであることは記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、白金中のオスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
次に甲第10号証にはガラスの溶融温度域の粘度が7×10ポアズであることは記載されているが、ガラス溶融における白金中のオスミウムと泡の発生との関係や、白金中のオスミウムの含有量については記載も示唆もされていない。
特許異議申立人は、甲第6号証の2においてガラスの溶融温度である千数百度の高温において、白金の不純物中オスミウムの揮発量は他の不純物に比べて格段に高いことが公知であり、甲第6号証の1からオスミウムが白金金属中でもっとも酸化され易く、容易にオスミウム酸化物を生成することが公知であり、ガラス溶解炉中で溶解中のガラス内に揮発した白金からのオスミウムの一部はガラス中の空気によって揮発性であるオスミウムの酸化物となり気泡をが発生するものであるから、ガラス溶解炉材料としての白金中のオスミウムの量を減少させることは当業者にとって容易に想到し得る程度のことにすぎず、20ppmという上限値を実験によって導出したとしても当業者にとって容易になし得る程度のことである旨主張している(特許異議申立書第18頁第27行〜第19頁第20行)。
そこで、検討すると、上述のように、甲第6号証の2には、オスミウムの高温揮発損失量が白金族の中で最も大きいことが記載されており、甲第6号証の1には、オスミウムは白金族金属中でもっとも酸化されやすいことは記載されている。
しかしながら、オスミウムの高温揮発損失量が白金族の中で最も大きいことや、オスミウムは白金族金属中でもっとも酸化されやすいことが知られていたとしても、ガラス溶解炉中で溶解中のガラス内に揮発した白金からのオスミウムの一部がガラス中の空気によって揮発性であるオスミウムの酸化物となり気泡が発生するということが知られていたとは云えないし、ましてやオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであれば泡の発生を抑制できることが当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。
以上のことから、本件訂正発明1は甲第1〜10号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができない。
(2)本件訂正発明2〜14について
本件訂正発明2〜14は、いずれも本件訂正発明1をさらに限定したものであるから、上記(1)で述べた理由と同じ理由で、本件訂正発明2〜14は甲第1〜10号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができない。
4.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、訂正後の本件請求項1〜14係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件請求項1〜14に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ガラス製品の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した清澄槽にて、溶解ガラスの脱泡処理することで、前記壁面からの泡の発生を抑える清澄工程と、
母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した調整槽にて、前記清澄槽からの溶解ガラスを所定の均一温度に調整することで、前記壁面からの泡の発生を抑える調整工程と、
母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した
攪拌槽にて、調整槽からの溶融ガラスを攪拌することで、前記壁面からの泡の発生を抑える攪拌工程と、
母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した成形部にて、前記攪拌槽からの溶解ガラスを板ガラスに成形することで、前記壁面からの泡の発生を抑える成形工程と、
を含むことを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項2】 請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項3】 請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記清澄工程の前に、
母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した溶解槽にて、ガラスを溶解することで、前記壁面からの泡の発生を抑える溶解工程を、
更に含むことを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項4】 請求項3記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項5】 請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項6】 請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項7】 請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項8】 請求項2記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項9】 請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項10】 請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項11】 請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×106ポアズを超えないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項12】 請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×102ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項13】 請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、ガラス製品が光学用ガラスであるときに、その溶融ガラスの粘度が、7×10ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項14】 請求項12又は請求項13記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、白金もしくは白金合金を主成分としたガラス溶解炉用材料を使用したガラス製品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラスにストーンや脈理や泡が存在するとガラス製品の欠陥となる。
ストーンは文字通り石であるが、鉱物の結晶体である。このストーンは視野の妨げとなるのみならず、強度低下の要因となる。
脈理は筋状の非結晶体であり、屈折率に影響し、像を歪めることになる。
泡は視界の妨げになる。しかも、LCD(Liquid Crystal Display)基板では、泡が表面に介在すると回路の断線の原因となる。
従って、液晶表示に用いるガラス板や光学レンズは、上記欠点を取り除く必要がある。
【0003】
耐火材で内張りした溶解炉でガラスを溶解し、調整するときに、耐火材の微細な粉がストーンの要因となることがあり、耐火材がガラス中に溶け込んで脈理を発生し、耐火材と接触することで泡が発生することか知られている。
そこで、白金又は白金合金を内張りすることで、粉の発生及び筋状欠陥の発生を防止するという対策が講じられている。泡についてはガラス原料中に一定量の脱泡剤を添加することで泡を除去するという対策も講じられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記対策で一定の成果が得られたが、電子部品用ガラス部材(例えば液晶表示用)では、ごく少量の泡であっても許容されない。一方、白金が99.95重量%(不可避的不純物が0.05重量%)もの高純度の工業用白金を採用したにも拘らず、少量ではあるが泡の発生が認められた。すなわち、ガラスの更なる品質向上を図るにはこの泡の対策が不可欠であることが分かった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、設備を全体的に点検したが泡の発生箇所を容易に特定するには至らなかった。そこで、溶解ガラスに接している白金に泡の発生要因があるのではないかと考え始めた。
そこで、白金を調べたところ、現実に使用している工業用白金は、その産地、製造ロットの違い、古い白金を再溶解して再使用するか否か、によって残存する不純物の成分がばらつくことが分かった。次の表はその一例を示す。
【0006】
【表1】

【0007】
パラジウム(Pd)は安定元素であり、泡の発生要因とは考えにくい。
ロジウム(Rh)は白金の強度を高めるために添加する元素であり、泡の発生要因とは考えにくい。
一方、オスミウム(Os)は酸化されやすく、その酸化物は低温で蒸発するものであり、含有量も際立って多いことから泡の発生に関与している可能性は高い。
イリジウム(Ir)はオスミウムほどではないが、800℃以上で酸化され、1000℃以上で揮発する。しかし、ガラス溶解用ルツボの材料として実績があり、このことから泡の発生要因とは考えにくい。
砒素(As)は、それ自体で、若しくは酸化されて蒸発しやすい物質である。しかし、ガラスに溶解しやすく、泡になるとは考えられない。
【0008】
そこで本発明者らは、オスミウムの量と泡の発生数との関係を調べた。
図1は本発明に係るオスミウムの含有量と泡の数の関係を示すグラフであり、詳細な実験条件及び実験結果は後述するが、横軸を白金中のオスミウム含有量、縦軸を泡の数としたときに、加熱温度が1150℃でのグラフと1300℃でのグラフを記載した。オスミウムが20〜31ppmの範囲で泡の数が製品品質上問題になるレベルに増加する。安全を見て点P1,P2で示した点、すなわちオスミウムの上限値を20ppmとすれば泡の発生を抑えることができるといえる。
【0009】
そこで、ガラス溶解炉用材料は、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmとし、下限値が1ppmとする。
オスミウムの上限値を20ppmとし、下限値を1ppmとすれば泡の発生を抑えることができるからである。
【0010】
又ガラス溶解炉用材料は、オスミウム含有量を10ppmに抑える。
ガラス素材の成分の変動を考慮すればオスミウムの上限を抑えるには余裕がほしい。そして、泡の発生の点からオスミウムは少ないほど良いから、安全率を2倍として、20ppmの半分の10ppmにすることが好ましい。
【0011】
請求項1は、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した清澄槽にて、溶解ガラスの脱泡処理することで、前記壁面からの泡の発生を抑える清澄工程と、
母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した調整槽にて、前記清澄槽からの溶解ガラスを所定の均一温度に調整することで、前記壁面からの泡の発生を抑える調整工程と、
母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した攪拌槽にて、調整槽からの溶融ガラスを攪拌することで、前記壁面からの泡の発生を抑える攪拌工程と、
母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値を1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した成形部にて、前記攪拌槽からの溶解ガラスを板ガラスに成形することで、前記壁面からの泡の発生を抑える成形工程と、を含むことを特徴としたガラス製品の製造方法である。
【0012】
オスミウム含有量が上限値が20ppmで、下限値が1ppmのガラス溶解炉用材料を使用した設備にて、清澄工程、調整工程、攪拌工程を泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用した設備及び成形工程を実施するので、泡のない高品質のガラス製品を製造することができる。
【0013】
請求項2は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0014】
請求項3は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記清澄工程の前に、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した溶解槽にて、ガラスを溶解することで、前記壁面からの泡の発生を抑える溶解工程を、更に含むことを特徴としたガラス製品の製造方法である。
【0015】
清澄工程、調整工程、攪拌工程及び成形工程と共に溶解工程をも泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用した設備で実施するので、より泡のない高品質のガラス製品を製造することができる。
【0016】
請求項4は、請求項3記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
溶解工程も10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0017】
請求項5は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
泡が少ないので、高品質の電子部品用ガラス部材を製造することができる。
【0018】
請求項6は、請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
泡が少ないので、高品質の液晶用ガラス基板を製造することができる。
【0019】
請求項7は、請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
泡が少ないので、高品質の無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを製造することができる。
【0020】
請求項8は、請求項2記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の電子部品用ガラス部材を製造することができる。
【0021】
請求項9は、請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の液晶用ガラス基板を製造することができる。
【0022】
請求項10は、請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを製造することができる。
【0023】
請求項11は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×106ポアズを超えないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が2×106ポアズ以下のところに限定した。溶融ガラスの粘度が2×106ポアズを超えたところに使用しても効果が薄いからである。従って、設備費用の高騰を効果的に抑えることができる。
【0024】
請求項12は、請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×102ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が2×102ポアズ以上のところに限定した。
すなわち、接触する溶融ガラスの粘度が2×102〜2×106ポアズの範囲にある箇所だけ、泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用することで、設備費用の高騰を効果的に抑えることができる。
【0025】
請求項13は、請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、ガラス製品が光学用ガラスであるときに、その溶融ガラスの粘度が、7×10ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
ガラス製品が光学用ガラスであるときに、オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が7×10ポアズ以上のところに限定した。
すなわち、接触する溶融ガラスの粘度が7×10〜2×106ポアズの範囲にある箇所だけ、泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用することで、設備費用の高騰を一層効果的に抑えることができる。
【0026】
請求項14は、請求項12又は請求項13記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図2は本発明に係るガラス溶解炉及びガラス成形用型の基本構成図であり、ガラス溶解炉1は、溶解槽2、清澄槽3、調整槽4、攪拌槽5、成形部6をこの順に配列したものであり、内壁に本発明の白金系又は白金合金系材料を張り付けたことを特徴とする。白金系材料については後述する。
【0028】
ガラス溶解炉1の全設備に白金系又は白金合金系材料を張り付けることが不経済であれば、清澄槽3の下流側の設備である調整槽4、攪拌槽5、成形部6を「後部設備」と称し、この後部設備にのみ白金系又は白金合金系材料を張り付ければよい。
【0029】
ここで、白金合金は、白金に例えばロジウム元素を加えた合金および、酸化ジルコニウム、酸化カルシウムを含有させたいわゆる均一分散型強化白金を含む。
【0030】
溶解槽2では、ガラス原料を溶解する。
清澄槽3では、溶解槽2から供給される溶解ガラス中の泡及び溶在ガス成分をガラス原料中に加えた脱泡剤の働きで除去する。
調整槽4では、脱泡済みの溶解ガラスを保持若しくは冷却して均一な温度にする。
攪拌槽5では、一定温度の溶解ガラスを攪拌して脈理現象を防止する。なお、9は白金製攪拌棒である。
成形部6では、溶解ガラスを引き伸ばして板ガラスにする。
この様な一連のプロセスを連続的に実行できるものがガラス溶解炉1である。
【0031】
清澄槽3で脱泡処理するから、溶解槽2及び清澄槽3で発生した泡も含めて除去可能である、一方、調整槽4、攪拌槽5、成形部6又は排出部7及びガラス成形用型8において新たに泡が発生した場合には泡はそのまま残ることが多い。
そこで、本発明では、少なくとも後部設備(調整槽4、攪拌槽5、成形部6又は排出部7及びガラス成形用型8)に本発明の白金系材料、すなわち泡の出にくい白金系材料を内張りする。これで新たに泡が発生する心配はない。
【0032】
なお、清澄槽3で脱泡処理を容易にするために、溶解槽2及び清澄槽3で発生する泡の量は少ないほど良い。そこで、溶解槽2及び清澄槽3をも泡の出にくい白金系材料で内張りすることは望ましい。
すなわち、本発明では泡の出にくい白金系材料を、設備全部又は調整槽4以降の後部設備に内張りすることを特徴とする。後部設備にのみ内張りするのであれば設備費をある程度圧縮することができる。
【0033】
なお、泡や脈理に関する要求品質がそれ程厳しくないときには調整槽4を省略することは可能である。又、溶解槽2及び清澄槽3を一体構造にすることも可能のである。
図2に示したとおりに攪拌槽5から直接ガラス成形用型8へ溶解ガラスを送る若しくは攪拌槽5から排出部7を介してガラス成形用型8へ溶解ガラスを送り、ガラス成形用型8で型ガラスを製造するようにしてもよい。
【0034】
図2に示す溶解槽2、清澄槽3、調整槽4、攪拌槽5、成形部6を連結する連結部10を白金又は白金合金とする場合も、本発明のガラス溶解炉用材料を使用することが好ましい。
【0035】
ガラス原料には、ガラス成分の他、脱泡剤として酸化砒素、酸化アンチモン、酸化錫、塩化バリウム、硫酸バリウム、塩化カルシウムなどを含め、溶解ガラス中に残存させる。
そして、上記ガラス溶解炉1で処理するガラスの組成は、特に限定しないが、例えばアルミノ硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、アルカリ成分を実質的に含まない無アルカリガラス、たとえば無アルカリアルミノ硼珪酸ガラス等の建築用の窓ガラスのソーダーライムシリカ組成のガラスより歪点が高いガラスである。
【0036】
ただし、泡を極度に嫌う電子部品用ガラス部材、特に液晶用ガラス基板や無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを処理するのに本発明のガラス溶解炉1は好適である。
さらに、本発明は、液晶用ガラス基板ほどガラスの単位体積あたりの泡品質が要求されない、上記ガラス組成を用いた光導波路、光学レンズ、ガラスファイバーなどの光学用ガラスの溶解、成形についても好適である。
【0037】
【実施例】
本発明に係る実験例を次に説明する。
本発明は泡の出にくい白金系材料を確立したことを特徴とし、この確立のために実施した実験例を詳細に説明する。なお、実験は次の5種類を実施した。
[実験1]は液晶用ガラスを対象としてテストピースによるラボテスト。
[実験2]は光学用ガラスを対象としたテストピースによるラボテスト。
[実験3]及び[実験4]は、図2のガラス溶解炉を用いた実機テスト。
[実験5]は泡の出にくい白金系材料の精製実験。
【0038】
[実験1]:
ガラス原料:別紙表2に示す組成
白金ルツボ:容量200ml、オスミウム不純物がない(検出限界が約1ppmである発光分光分析で検出されなかった)白金地金から製造。
溶解温度:1600℃
溶解時間:3時間
清澄温度:1600〜1650℃
ガラスサンプル:清浄なステンレス上に流して、直径約70mm×高さ約5mmの煎餅型のサンプルを作成。
【0039】
【表2】

【0040】
白金板:母材が白金でオスミウムの含有量が1.0ppm、10.3ppm、20ppm、31ppm、976ppm、7460ppmである白金板を作成。白金板のオスミウムの含有量は発光分光分析で定量した。
【0041】
上記白金板に、1cm角に切出したガラスサンプルを載せ、高温顕微鏡にセットし、1050℃、1150℃、1200℃、1250℃、1300℃又は1600℃に加熱し、1時間保持し、この間に新たに発生した泡数をビデオ撮影して数えた。
【0042】
図3はガラスサンプルに発生した泡数を示す状態図である。
(a)図はオスミウム含有量が1ppmの白金板を用い、加熱温度1300℃でガラスサンプルに発生した泡数を示す状態図であり、(b)図はオスミウム含有量が7460ppmの白金板を用い、加熱温度1300℃でガラスサンプルに発生した泡数を示す状態図である。
【0043】
図において、11A,11Bはガラスサンプル、12A,12Bは白金板、13A,13Bは発生した泡である。
(a)図では泡13Aは1個であり、(b)図では泡13Bは非常に多い。
【0044】
表3中、太い黒枠内は計測した泡の数を示す。なお、新たに発生した泡の数を時間及び溶解ガラスが接する白金の面積で割った(除した)ために小数第一位を含む数となった。
【0045】
【表3】

【0046】
この表の一部をグラフ化したものが前記図1であり、図1から白金板に含まれるオスミウム含有量が増加するに伴い、泡の個数が増加することが判明した。そして、白金板中に含有される不純物のオスミウムに起因する泡は、白金板とガラスが高温で接していると発生することが判明した。
ガラス中の泡数を減少させるためには、白金部材に含まれるオスミウム量を極力少なくすることが有効であることが実験的に確認することができた。
【0047】
上記表3の右端に記載したものがガラスの粘度(ポアズ、poise)であり、温度が高くなるほど泡が発生することと、温度が高くなるほど粘度が小さくなることから、粘度が小さくなるほど泡が発生することとなり、粘度と泡の発生との間に相関があることが十分推定できる。
すなわち、高粘度であれば、仮に泡が発生してもその泡の移動速度(上昇速度)が極めて小さいため、新たな泡が発生しにくい。低粘度であれば、泡が盛んに上昇し、新たな泡が次々と誕生すると考えられる。
【0048】
図4は実験1における温度とガラス粘度とのグラフであり、横軸は温度、縦軸(対数目盛)はガラス粘度を示し、表3右欄の値をプロットして曲線で結んだものである。
そして、上記表3において、加熱温度1050℃、オスミウム20ppm以下で、泡の発生は0であり、逆に加熱温度1050℃から泡の発生が始まると言える。
そこで、図4のグラフにおいて1050℃のところに「泡発生」の矢印を記載した。
また、上述したとおり清澄温度は1500〜1650℃であり、以降の調整槽(1500℃)、攪拌槽(1500℃)及び成形部(1150〜1200℃)はそれ以下の温度であるため、実工程では清澄温度の1650℃が最高温度となる。この温度1650℃及び「清澄」の文字とをグラフに記載した。
【0049】
図4から泡の発生を考えなければならない範囲は、グラフの右に白抜き矢印で示したとおりであり、この範囲は2×102〜2×106ポアズとなる。この範囲だけ、オスミウムの含有量は20ppm、好ましくは10ppmを超えないようにガラス溶解炉用材料を決定すれば、泡の発生を低レベルに抑えることができる。逆に、2×102ポアズより低粘度、又は2×106ポアズより高粘度の領域において、オスミウムの含有量を20ppm、又は、10ppm以下にすることは、効果的でなく、設備費の高騰を招くことになる。
【0050】
[実験2]
ガラス原料:別紙表4に示す組成
白金ルツボ:容量200ml、オスミウム不純物がない(検出限界が約1ppmである発光分光分析で検出されなかった)白金地金から製造。
溶解温度:1350℃
溶解時間:3時間
清澄温度:1350〜1400℃
ガラスサンプル:清浄なステンレス上に流して、直径約70mm×高さ約5mmの煎餅型のサンプルを作成。
【0051】
【表4】

【0052】
白金板:母材が白金でオスミウムの含有量が1.0ppm、10.3ppm、20ppm、31ppm、976ppm、7460ppmである白金板を作成。白金板のオスミウムの含有量は発光分光分析で定量した。
【0053】
上記白金板に、1cm角に切出したガラスサンプルを載せ、高温顕微鏡にセットし、750℃、800℃、900℃、1000℃、1200℃又は1400℃に加熱し、1時間保持し、この間に新たに発生した泡数をビデオ撮影して数えた。泡の発生状況は前記図3(a),(b)と同様であるから、説明を省略する。
【0054】
表5中、太い黒枠内は計測した泡の数を示す。なお、新たに発生した泡の数を時間及び溶解ガラスが接する白金の面積で割った(除した)ために小数第一位を含む数となった。
【0055】
【表5】

【0056】
図5は実験2のグラフであり、横軸はオスミウム含有量、縦軸は泡の数であり、加熱温度が870℃でのグラフと1080℃でのグラフを記載した。オスミウムが20〜31ppmの範囲で泡の数が製品品質上問題になるレベルに増加する。安全を見て点P3,P4で示した点、すなわちオスミウムの上限値を20ppmとすれば泡の発生を抑えることができるといえる。
さらには、ガラス素材の成分の変動を考慮すればオスミウムの上限を抑えるには余裕がほしい。そして、泡の発生の点からオスミウムは少ないほど良いから、安全率を2倍として、20ppmの半分の10ppmにすることが好ましい。
【0057】
すなわち、実験2(図5参照)から、実験1(図1参照)と同様にオスミウムの上限値を20ppm、望ましくは10ppmとすべきであることが分かった。
【0058】
図6は実験2における温度とガラス粘度とのグラフであり、横軸は温度、縦軸(対数目盛)はガラス粘度を示し、表5右欄の値をプロットして曲線で結んだものである。
そして、上記表5において、加熱温度810℃、オスミウム10.3ppm以下で、泡の発生は0であり、逆に加熱温度810℃から泡の発生が始まると言える。
そこで、図6のグラフにおいて、810℃のところに「泡発生」の矢印を記載した。
また、上述したとおり清澄温度は1350〜1400℃であり、以降の調整槽(1300℃)、攪拌槽(1200℃)及び成形部(1050℃)はそれ以下の温度であるため、実工程では清澄温度の1400℃が最高温度となる。この温度1400℃及び「清澄」の文字をグラフに記載した。
【0059】
図6から泡の発生を考えなければならない範囲は、グラフの右に白抜き矢印で示したとおりであり、この範囲は7×10〜2×106ポアズとなる。この範囲だけ、オスミウムの含有量を20ppm、好ましくは10ppmを超えないようにガラス溶解炉用材料を決定すれば、泡の発生を低レベルに抑えることができる。逆に、7×10ポアズより低粘度、又は2×106ポアズより高粘度の領域において、オスミウムの含有量を20ppm、又は10ppm以下にすることは、効果的でなく、設備費の高騰を招くことになる。
【0060】
ところで、ガラスの成分が異なると温度による泡の管理は困難になる。しかし、粘度で泡の管理を実施すれば、この管理手法は各種成分のガラスに広く適用することができ便利である。
図6から対象ガラスの種類が、光学用ガラスである場合は、7×10〜2×106ポアズの範囲のときに、オスミウムの含有量を20ppm、好ましくは10ppmを超えないようにガラス溶解炉用材料を決定すれば、効果的であり、経済的である。
【0061】
また、図4の液晶用ガラスでは泡の発生を効果的に且つ経済的に低レベルに抑える粘度の範囲は2×102〜2×106ポアズである。この2×102〜2×106ポアズであれば、図6の光学用ガラスでも泡の発生をもちろん抑制できる。
従って、対象ガラスを、光学用ガラスに限らないとすれば2×102〜2×106ポアズの範囲に納めれば、オスミウムの含有量を20ppm、好ましくは10ppmを超えないようにガラス溶解炉用材料を決定すれば、効果的であり、経済的である。
【0062】
上記二種のガラスについての低粘度側の数値を示す温度は、それぞれのガラスについてのほぼ清澄温度に相当する。
【0063】
以上に述べた[実験1],[実験2]はテストピースによるラボテストであるから、実機(実際の装置)にそのまま適用できるか否かを確認する必要がある。そこで、[実験3]で実機テストを実施した。
【0064】
[実験3]:
ガラス原料:実験1と同一、即ち表2に示すガラス組成
実験設備:図2に示す設備、ただし白金系材料は、溶解槽を除く清澄槽調整槽、攪拌槽及、成形部及び連結部には次に示すものを採用
白金系材料:白金の不純物としてオスミウム含有量が20ppm、砒素含有量が4ppm、イリジウム含有量が5ppmの材料
溶解槽:ガラス原料を連続的に溶解槽に投入し、天然ガス燃焼と電気ブースタにより約1600〜1650℃に加熱して溶解
【0065】
清澄槽:天然ガス燃焼と電気ブースタによる加熱によってほぼ1600℃でガラス原料中に混入させたAs2O3清澄剤により脱泡
調整槽:約1500℃に電気加熱
攪拌槽:1500℃で白金製攪拌棒で攪拌
成形部:幅約1000mm×厚みが0.7mmのガラス板に成形
【0066】
ガラス板の成形開始からガラス板中に含まれる泡の数をガラスの単位重量当たりで計数した。ところ、ほぼ10個/kgから1個/kg以下になるまでに要した時間は「約5日」であった。
そして、その後泡の数はさらに減少し、泡品質は0〜0.3個/kgで安定した。
この泡品質は、液晶表示素子用の基板ガラスとして十分満足するものである。
【0067】
実験3の結果は、白金に含まれるオスミウム含有量を20ppmとしたので、発生する泡数が少なく、高品質のガラス製品を実現できることが判明した。
また、実験1および実験3の結果より、白金に含まれるオスミウム含有量を少なくすることが発生する泡数を少なくすることができ、白金に含まれるオスミウム含有量は10ppm以下が望ましい。
【0068】
[実験4]:
実験3と比較するため、白金材に含まれるオスミウム含有量は工業用グレードの50ppmとした。
実験3と同じ構造、規模のガラス溶解成形設備により、表2のガラス組成の巾が約1000mmの帯状ガラス板を製造し、切断して所定寸法のガラス板を連続的に大量に製造した。
このときに溶解ガラスと接触する部分に用いた白金部材は、清澄部と、成形部であって、これら白金の不純物としてのオスミウム含有量は、工業用グレードそのままの50ppm、砒素4ppm、イリジウム6ppmであった。
【0069】
ガラス板の成型開始からガラス板中に含まれる泡の数をガラスの単位重量当たりで計数したところ、ほぼ100個/kgから1個/kg以下になるまでに「約1ヶ月」を要し、その後もガラス中の泡の数は不安定であった。
実験3は約5日であったから、この実験4は実験3の6倍のウオーミングアップ時間を要することになる。
【0070】
ガラス溶解炉の清澄部や成形部等の高温の溶解ガラスと接触して用いられる白金部材の寿命は、ガラス溶解操業内容により異なるが、通常大略1年以下であることを考慮すると、実験3で示されるような泡欠点レベルが早期に安定化できることは、経済的に極めて有用である。
【0071】
以上の実験3,4は実験1に対する実機試験であった。説明は省略するが、実験2についても同様であることが実験で確認できた。
【0072】
以上の説明から母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppm、好ましくは10ppmであるガラス溶解炉用材料が、ガラス溶解炉を構成する上で、極めて重要であることが分かった。
そこで、次にガラス溶解炉用材料の精製実験を行ったので、その説明をする。
[実験5]:
供試材の寸法 30mm×30mm×1.2mm
供試材の主成分 白金
オスミウム含有量 30ppm
精製装置 電気炉
精製時間 100時間,360時間
【0073】
30ppmのオスミウムを含む供試材を電気炉に入れて、1600℃又は1700℃で加熱保持して、所定時間後のオスミウム含有量を計測した。
【0074】
図7はオスミウム含有量の変化を示すグラフであり、横軸は時間、縦軸はオスミウム含有量を示す。
処理温度が1600℃のときには、目標の20ppmに達するのに360時間かかった。これに対して処理温度を1700℃にすると、約260時間で20ppmに達し、360時間後には17ppmまで改善することができた。
すなわち、10ppm改善するのに、1700℃では260時間(11日)、1600℃では360時間(15日)を要する。
【0075】
白金中のオスミウムは、通常は金属として含有しているが、これを酸化雰囲気で高温で処理すると、表層のオスミウムが酸化オスミウム(OsO4)に変る。この酸化オスミウムは沸点が131℃と低く、この温度で蒸発し逸散する。すると、内部からオスミウムが表面に移動し、酸化されて蒸発し逸散する。オスミウムが表面へ移動することを拡散という。
この拡散と蒸発とが連続的に且つ並行して進行することで、白金中からオスミウムが抜けると考えられるが、蒸発に要するエネルギーより拡散に要するエネルギーが圧倒的に大きくなり、そのために加熱温度(処理温度)が高いほど処理時間が短くなると思われる。
【0076】
ところで、上記表1に示したとおりに、工業用白金のオスミウムの含有率は30〜84ppmである。84ppmであれば、64ppmを低減しなければならず、1700℃で処理すると、単純計算で、11日×6.4倍=70日、1600℃で処理すれば15日×6.4倍=96日となる。
処理温度が1500℃や1400℃でも、処理は可能であるが、処理時間は倍増する。
そこで、実験例5で示したとおりに、1600℃、好ましくは1700℃で処理することが処理時間短縮の上で望ましい。
【0077】
又は、白金地金供給者において、成分調整をする段階でオスミウムの含有率を限りなくゼロにすることは可能である。従って、そのような白金又は白金合金を購入するようにしてもよい。
【0078】
本発明の製造方法は、泡を極度に嫌う電子部品用ガラス部材の製造に好適である。泡がないので、良好な視界が確保でき、且つ像が歪む心配も無い。
本発明の製造方法は、特に液晶用ガラス基板の製造に好適である。泡が表面に介在すると回路の断線を心配しなければならないが、泡が無いのでその心配が無いからである。
また、本発明の製造方法は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスの製造に好適である。泡がないので、良好な視界が確保でき、且つ像が歪む心配も無いからである。
【0079】
尚、本発明の白金系材料をガラス溶解炉やガラス成形用型の溶解ガラスと接触する部分に張り付ければ泡防止効果が得られることは明らかである。従って、設備の内面全部に張るか溶解ガラスと接触する部分にのみ張るかは、任意に決定すればよい。
【0080】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した清澄槽にて、溶解ガラスの脱泡処理することで、前記壁面からの泡の発生を抑える清澄工程と、
母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した調整槽にて、前記清澄槽からの溶解ガラスを所定の均一温度に調整することで、前記壁面からの泡の発生を抑える調整工程と、
母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した攪拌槽にて、調整槽からの溶融ガラスを攪拌することで上前記壁面からの泡の発生を抑える攪拌工程と、
母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した成形部にて、前記攪拌槽からの溶解ガラスを板ガラスに成形することで、前記壁面からの泡の発生を抑える成形工程と、を含むことを特徴としたガラス製品の製造方法である。
【0081】
オスミウム含有量が上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を使用した設備にて、清澄工程、調整工程、攪拌工程及び成形工程を実施するので、泡のない高品質のガラス製品を製造することができる。
【0082】
請求項2は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0083】
請求項3は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記清澄工程の前に、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値か20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した溶解槽にて、ガラスを溶解することで、前記壁面からの泡の発生を抑える溶解工程を、更に含むことを特徴としたガラス製品の製造方法である。
【0084】
清澄工程、調整工程、攪拌工程及び成形工程と共に溶解工程をも泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用した設備で実施するので、より泡のない高品質のガラス製品を製造することができる。
【0085】
請求項4は、請求項3記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
溶解工程も10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0086】
請求項5は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
泡が少ないので、高品質の電子部品用ガラス部材を製造することができる。
【0087】
請求項6は、請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
泡が少ないので、高品質の液晶用ガラス基板を製造することができる。
【0088】
請求項7は、請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
泡が少ないので、高品質の無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを製造することができる。
【0089】
請求項8は、請求項2記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の電子部品用ガラス部材を製造することができる。
【0090】
請求項9は、請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の液晶用ガラス基板を製造することができる。
【0091】
請求項10は、請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを製造することができる。
【0092】
請求項11は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×106ポアズを超えないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が2×106ポアズ以下のところに限定した。溶融ガラスの粘度が2×106ポアズを超えたところに使用しても効果が薄いからである。従って、設備費用の高騰を効果的に抑えることができる。
【0093】
請求項12は、請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×102ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が2×102ポアズ以上のところに限定した。
すなわち、接触する溶融ガラスの粘度が2×102〜2×106ポアズの範囲にある箇所だけ、泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用することで、設備費用の高騰を効果的に抑えることができる。
【0094】
請求項13は、請求頂11記載のガラス製品の製造方法であって、ガラス製品が光学用ガラスであるときに、その溶融ガラスの粘度が、7×10ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
ガラス製品が光学用ガラスであるときに、オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が7×10ポアズ以上のところに限定した。
すなわち、接触する溶融ガラスの粘度が7×10〜2×106ポアズの範囲にある箇所だけ、泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用することで、設備費用の高騰を一層効果的に抑えることができる。
【0095】
請求項14は、請求項12又は請求項13記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るオスミウムの含有量と泡の数の関係を示すグラフ
【図2】
本発明に係るガラス溶解炉及びガラス成形用型の基本構成図
【図3】
ガラスサンプルに発生した泡数を示す状態図
【図4】
実験1における温度とガラス粘度とのグラフ
【図5】
実験2のグラフ
【図6】
実験2における温度とガラス粘度とのグラフ
【図7】
オスミウム含有量の変化を示すグラフ
【符号の説明】
1…ガラス溶解炉、2…溶解槽、3…清澄槽、4…調整槽、5…攪拌槽、6…成形部、7…排出部、8…ガラス成型用型、9…攪拌棒、10…連結部、11A,11B…ガラスサンプル、12A,12B…白金板、13A,13B…発生した泡。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2982959号発明の明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち、
(1)訂正事項a
発明の名称の記載の「【発明の名称】ガラス溶解炉用材料、ガラス溶解炉、ガラス製品の製造方法及びガラス溶解炉用材料の精製方法」を、「【発明の名称】ガラス製品の製造方法」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の【請求項1】から【請求項24】の記載を、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した清澄槽にて、溶解ガラスの脱泡処理することで、前記壁面からの泡の発生を抑える清澄工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した調整槽にて、前記清澄槽からの溶解ガラスを所定の均一温度に調整することで、前記壁面からの泡の発生を抑える調整工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した攪拌槽にて、調整槽からの溶融ガラスを攪拌することで、前記壁面からの泡の発生を抑える攪拌工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した成形部にて、前記攪拌槽からの溶解ガラスを板ガラスに成形することで、前記壁面からの泡の発生を抑える成形工程と、を含むことを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項2】請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項3】請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記清澄工程の前に、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した溶解槽にて、ガラスを溶解することで、前記壁面からの泡の発生を抑える溶解工程を、更に含むことを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項4】請求項3記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項5】請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項6】請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項7】請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項8】請求項2記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項9】請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項10】請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法。
【請求項11】請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×106ポアズを超えないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項12】請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×102ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項13】請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、ガラス製品が光学用ガラスであるときに、その溶融ガラスの粘度が、7×10ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項14】請求項12又は請求項13記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法。」と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書中の段落【0001】の記載を、
「【0001】【発明の属する技術分野】
本発明は、白金もしくは白金合金を主成分としたガラス溶解炉用材料を使用したガラス製品の製造方法に関する。」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書中の段落【0009】〜【0035】の記載を、
「【0009】
そこで、ガラス溶解炉用材料は、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmとし、下限値が1ppmとする。オスミウムの上限値を20ppmとし、下限値を1ppmとすれば泡の発生を抑えることができるからである。
【0010】
又ガラス溶解炉用材料は、オスミウム含有量を10ppmに抑える。ガラス素材の成分の変動を考慮すればオスミウムの上限を抑えるには余裕がほしい。そして、泡の発生の点からオスミウムは少ないほど良いから、安全率を2倍として、20ppmの半分の10ppmにすることが好ましい。
【0011】
請求項1は、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した清澄槽にて、溶解ガラスの脱泡処理することで、前記壁面からの泡の発生を抑える清澄工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した調整槽にて、前記清澄槽からの溶解ガラスを所定の均一温度に調整することで、前記壁面からの泡の発生を抑える調整工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した攪拌槽にて、調整槽からの溶融ガラスを攪拌することで、前記壁面からの泡の発生を抑える攪拌工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した成形部にて、前記攪拌槽からの溶解ガラスを板ガラスに成形することで、前記壁面からの泡の発生を抑える成形工程と、を含むことを特徴としたガラス製品の製造方法である。
【0012】
オスミウム含有量が上限値が20ppmで、下限値が1ppmのガラス溶解炉用材料を使用した設備にて、清澄工程、調整工程、攪拌工程を泡の出にくい、ガラス溶解炉用材料を使用した設備及び成形工程を実施するので、泡のない高品質のガラス製品を製造することができる。
【0013】
請求項2は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0014】
請求項3は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記清澄工程の前に、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した溶解槽にて、ガラスを溶解することで、前記壁面からの泡の発生を抑える溶解工程を、更に含むことを特徴としたガラス製品の製造方法である。
【0015】
清澄工程、調整工程、攪拌工程及び成形工程と共に溶解工程をも泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用した設備で実施するので、より泡のない高品質のガラス製品を製造することができる。
【0016】
請求項4は、請求項3記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。溶解工程も10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0017】
請求項5は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。泡が少ないので、高品質の電子部品用ガラス部材を製造することができる。
【0018】
請求項6は、請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。泡が少ないので、高品質の液晶用ガラス基板を製造することができる。
【0019】
請求項7は、請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法である。泡が少ないので、高品質の無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを製造することができる。
【0020】
請求項8は、請求項2記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の電子部品用ガラス部材を製造することができる。
【0021】
請求項9は、請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の液晶用ガラス基板を製造することができる。
【0022】
請求項10は、請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを製造することができる。
【0023】
請求項11は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×106ポアズを超えないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が2×106ポアズ以下のところに限定した。溶融ガラスの粘度が2×106ポアズを超えたところに使用しても効果が薄いからである。従って、設備費用の高騰を効果的に抑えることができる。
【0024】
請求項12は、請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×102ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が2×102ポアズ以上のところに限定した。すなわち、接触する溶融ガラスの粘度が2×102〜2×106ポアズの範囲にある箇所だけ、泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用することで、設備費用の高騰を効果的に抑えることができる。
【0025】
請求項13は、請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、ガラス製品が光学用ガラスであるときに、その溶融ガラスの粘度が、7×10ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。ガラス製品が光学用ガラスであるときに、オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が7×10ポアズ以上のところに限定した。すなわち、接触する溶融ガラスの粘度が7×10〜2×106ポアズの範囲にある箇所だけ、泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用することで、設備費用の高騰を一層効果的に抑えることができる。
【0026】
請求項14は、請求項12又は請求項13記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。」と訂正する。
(5)訂正事項e
明細書中の段落番号【0036】〜【0088】を、【0027】〜【0079】と訂正する。
(6)訂正事項f
明細書中の段落【0089】〜【0115】の記載を、
「【0080】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。請求項1は、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した清澄槽にて、溶解ガラスの脱泡処理することで、前記壁面からの泡の発生を抑える清澄工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した調整槽にて、前記清澄槽からの溶解ガラスを所定の均一温度に調整することで、前記壁面からの泡の発生を抑える調整工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した攪拌槽にて、調整槽からの溶融ガラスを攪拌することで、前記壁面からの泡の発生を抑える攪拌工程と、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した成形部にて、前記攪拌槽からの溶解ガラスを板ガラスに成形することで、前記壁面からの泡の発生を抑える成形工程と、を含むことを特徴としたガラス製品の製造方法である。
【0081】
オスミウム含有量が上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を使用した設備にて、清澄工程、調整工程、攪拌工程及び成形工程を実施するので、泡のない高品質のガラス製品を製造することができる。
【0082】
請求項2は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0083】
請求項3は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記清澄工程の前に、母材が白金又は白金合金で、含む不純物としてのオスミウム含有量の上限値が20ppmであり、下限値が1ppmであるガラス溶解炉用材料を、少なくとも溶解ガラスが接触する壁面に使用した溶解槽にて、ガラスを溶解することで、前記壁面からの泡の発生を抑える溶解工程を、更に含むことを特徴としたガラス製品の製造方法である。
【0084】
清澄工程、調整工程、攪拌工程及び成形工程と共に溶解工程をも泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用した設備で実施するので、より泡のない高品質のガラス製品を製造することができる。
【0085】
請求項4は、請求項3記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。溶解工程も10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。
【0086】
請求項5は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。泡が少ないので、高品質の電子部品用ガラス部材を製造することができる。
【0087】
請求項6は、請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。泡が少ないので、高品質の液晶用ガラス基板を製造することができる。
【0088】
請求項7は、請求項5記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法である。泡が少ないので、高品質の無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを製造することができる。
【0089】
請求項8は、請求項2記載のガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品は、電子部品用ガラス部材であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の電子部品用ガラス部材を製造することができる。
【0090】
請求項9は、請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、液晶用ガラス基板であることを特徴としたガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の液晶用ガラス基板を製造することができる。
【0091】
請求項10は、請求項8記載のガラス製品の製造方法であって、前記電子部品用ガラス部材は、無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスであることを特徴としたガラス製品の製造方法である。
オスミウムの含有量を10ppm以下にしたガラス溶解炉用材料を使用した設備で製造するので、より泡が少ない高品質の無アルカリアルミノ硼珪酸組成ガラスを製造することができる。
【0092】
請求項11は、請求項1記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×106ポアズを超えないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が2×106ポアズ以下のところに限定した。溶融ガラスの粘度が2×106ポアズを超えたところに使用しても効果が薄いからである。従って、設備費用の高騰を効果的に抑えることができる。
【0093】
請求項12は、請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、前記溶融ガラスの粘度は、2×102ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が2×102ポアズ以上のところに限定した。すなわち、接触する溶融ガラスの粘度が2×102〜2×106ポアズの範囲にある箇所だけ、泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用することで、設備費用の高騰を効果的に抑えることができる。
【0094】
請求項13は、請求項11記載のガラス製品の製造方法であって、ガラス製品が光学用ガラスであるときに、その溶融ガラスの粘度が、7×10ポアズを下回らないようにしたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。ガラス製品が光学用ガラスであるときに、オスミウムの含有量が20ppmを超えない泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用する箇所は、接触する溶融ガラスの粘度が7×10ポアズ以上のところに限定した。すなわち、接触する溶融ガラスの粘度が7×10〜2×106ポアズの範囲にある箇所だけ、泡の出にくいガラス溶解炉用材料を使用することで、設備費用の高騰を一層効果的に抑えることができる。
【0095】
請求項14は、請求項12又は請求項13記載のガラス製品の製造方法であって、前記オスミウム含有量の上限値を10ppmに抑えたことを特徴とするガラス製品の製造方法である。10ppm以下にしたことにより、許容値20ppmに対して十分な余裕を見込むことができ、より確実に泡の発生を抑え、良質なガラス製品を製造することができる。」と訂正する。
異議決定日 2001-06-26 
出願番号 特願平10-300203
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C03B)
P 1 651・ 113- YA (C03B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 深草 祐一  
特許庁審判長 加藤 孔一
特許庁審判官 唐戸 光雄
野田 直人
登録日 1999-09-24 
登録番号 特許第2982959号(P2982959)
権利者 エヌエッチ・テクノグラス株式会社
発明の名称 ガラス溶解炉用材料、ガラス溶解炉、ガラス製品の製造方法及びガラス溶解炉用材料の精製方法  
代理人 下田 容一郎  
代理人 下田 容一郎  

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