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審決分類 |
審判 一部申し立て 判示事項別分類コード:533 C08G 審判 一部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 C08G 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 C08G 審判 一部申し立て 2項進歩性 C08G |
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管理番号 | 1048388 |
異議申立番号 | 異議1999-70970 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-09-10 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-03-17 |
確定日 | 2001-07-14 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2799381号「オルガノポリシロキサンジアミンおよびその製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2799381号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
[1] 手続きの経緯 本件特許第2799381号発明は、1986年6月20日を優先権主張日(優先権主張国米国)として昭和62年6月19日に日本に出願した特願昭62-153199号の分割出願として平成8年2月8日に出願され、平成10年7月10日にその特許の設定がなされ、その後、小山憲一より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、特許権者より特許異議意見書及び上申書の提出がなされ、特許権者に対して審尋通知がなされ、特許権者より回答書の提出がなされ、取消理由通知がなされ、同日に訂正請求がなされたものである。 [2] 訂正の適否についての判断 1.訂正事項 (1)訂正事項1:本件特許明細書の特許請求の範囲の第1項の 「少なくとも5,000の分子量および一般式: 【化12】 (式中、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニル基、フェニル基もしくは置換フェニル基であり; Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり: Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環を形成するアルキレン基またはフェニルであり; nは50またはそれ以上の数である)を有することを特徴とする、モノ官能性および非官能性ポリシロキサン不純物及び汚染物を実質的に含まないオルガノポリシロキサンジアミン。」を、 「少なくとも5,000の分子量および一般式: 【化12】 (式中、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニル基、フェニル基もしくは置換フェニル基であり; Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり: Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環を形成するアルキレン基またはフェニルであり; nは50またはそれ以上の数である)を有するオルガノポリシロキサンジアミンであり、このオルガノポリシロキサンジアミンは、一般式 【化16】 (式中、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニル基、フェニル基もしくは置換フェニル基であり、Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり、Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環を形成する炭素原子1〜10個のアルキレン基またはフェニルである)のアミン官能基含有末端封鎖剤と、環状シロキサンとを、触媒量のテトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレート触媒の存在下で反応させることにより、一般式 【化17】 (式中、R、YおよびDは上で定義されたとおりであり、xは4〜40の数である)を有する分子量約2000未満の低分子量のオルガノポリシロキサンジアミンを作り、そして次に、上記環状シロキサンを更に添加して上記低分子量オルガノポリシロキサンジアミンを所定の分子量にすることにより得られることを特徴とする、モノ官能性および非官能性ポリシロキサン不純物及び汚染物を実質的に含まないオルガノポリシロキサンジアミン。」とする訂正 (2)、訂正事項2:本件特許明細書の段落番号【0007】の「形成する」と「アルキレン」との間(本件特許公報第6欄第33行)に「炭素原子1〜10個の」を加入する訂正 (3)、訂正事項3:本件特許明細書の段落番号【0025】の「好ましいアミンシラノレート触媒は、……の触媒量は、」(本件特許公報第11欄第7行〜第9行)を、「本発明で使用する触媒は、テトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレートである。この触媒の量は、」とする訂正 (4)、訂正事項4:本件特許明細書の段落番号【0038】の「式VIIによって表わされる無水アミン官能基含有シラノレート」(本件特許公報第13欄第18行〜第19行)を「テトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレート」とする訂正 2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、物の発明に係る特許請求の範囲第1項に、特許請求の範囲第2項の製造方法の要件を全て追記して特許請求の範囲第2項の製造方法の限定を付すものであるところ、もともと本件の物の発明はこのような特定の製造方法により得られるものであってみれば、かかる訂正は特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、何ら特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 訂正事項2、3及び4は、訂正事項1によって特許請求の範囲第1項が訂正されたことに伴い、それに整合するように発明の詳細な説明を訂正しようとするものであるから、これらの訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、何ら特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。 3.独立特許要件 本件訂正後の発明はその出願の際独立して特許を受けることができるものである。その理由は以下の特許異議申立についての判断の項で述べるのでここでは省略する。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号。以下「平成六年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第百二十条の四第三項において準用する平成六年改正法による改正前の特許法第百二十6条第1項ただし書、第二項及び第三項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 [3] 特許異議申立てについての判断 1.特許異議申立理由の概要 特許異議申立人小山憲一は、甲第1〜3号証の刊行物を挙げ、 (1)本件特許請求の範囲第1項に係る発明は、甲第1号証もしくは甲第2号証に記載された発明である。 それ故、本件特許請求の範囲第1項に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。 (2)仮に本件特許請求の範囲第1項に係るの発明をオルガノポリシロキサン-ポリ尿素ブロックコポリマー用に限定したとしても、甲第1号証もしくは甲第2号証に記載された発明に甲第3号証に記載された発明を併せれば、当業者が容易に発明をすることができたものである。 それ故、本件特許請求の範囲第1項に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。 (3)特許請求の範囲の第1項において、モノ官能性および非官能性ポリシロキサン不純物及び汚染物を実質的に含まないことの意義が不明確であるところ、それが何ppm以下であれば実質的に含まないことになるのか明記されていないので、特許請求の範囲の第1項の記載は不備である。 それ故、本件特許請求の範囲第1項に係る発明の特許は特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、取り消されるべきものである。 と主張している。 2.本件発明 本件特許請求の範囲第1項に係る発明は、訂正後の明細書の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載されたとおりの次のものにその要旨があるものと認める。 「少なくとも5,000の分子量および一般式: 【化12】 (式中、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニル基、フェニル基もしくは置換フェニル基であり; Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり: Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環を形成するアルキレン基またはフェニルであり; nは50またはそれ以上の数である)を有するオルガノポリシロキサンジアミンであり、このオルガノポリシロキサンジアミンは、一般式 【化16】 (式中、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニル基、フェニル基もしくは置換フェニル基であり、Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり、Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環を形成する炭素原子1〜10個のアルキレン基またはフェニルである)のアミン官能基含有末端封鎖剤と、環状シロキサンとを、触媒量のテトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレート触媒の存在下で反応させることにより、一般式 【化17】 (式中、R、YおよびDは上で定義されたとおりであり、xは4〜40の数である)を有する分子量約2000未満の低分子量のオルガノポリシロキサンジアミンを作り、そして次に、上記環状シロキサンを更に添加して上記低分子量オルガノポリシロキサンジアミンを所定の分子量にすることにより得られることを特徴とする、モノ官能性および非官能性ポリシロキサン不純物及び汚染物を実質的に含まないオルガノポリシロキサンジアミン。」(以下「本件発明」という。) 3.刊行物の記載事項 (1)甲第1号証:特開昭58-104926号公報 該刊行物には、以下の事項が記載されている。 「両末端にアミノ基をもつビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンの存在下にオクタメチルシクロテトラシロキサンを重合することを特徴とする両末端にアミノ基を有するポリジメチルシロキサンの製造方法」(特許請求の範囲)、 「実施例1 ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンとオクタメチルシクロテトラシロキサンとを混合し、強塩基触媒を開始剤とするアニオン重合を行う。強塩基触媒は、70℃で減圧下に5時間乾燥したKOH1.0gを蒸留によって精製したイソプロパノールに溶かし、全量を100mlに濃縮したものを予め用意しておく。重合を135℃で24時間攪拌して行い、アミノ末端PDMS(ポリジメチルシロキサン)を得た。この反応を式で示すと次のとおりである。 上記の方法において、オクタメチルシクロテトラシロキサンとビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンとのモル濃度の比を適宜調節して重合度(n)の異なるポリマーを得ることができる。反応の例を次表に示す。 」(第2頁右上欄第1行〜同頁左下欄下から第5行)、 「オクタメチルシクロテトラシロキサン50mlとビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1mlの混合液を窒素雰囲気下、100℃で1時間攪拌し、乾燥KOH10mgとMe2SO 0.5mlを加えて100℃で攪拌して重合した。反応液をエーテルに溶かし、水でよく振ってから無水K2CO3で乾燥後、濾液を乾固して得たポリマーについて、GPCの時間変化を追跡した。その結果反応開始20分後にはビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンは殆どすべてが鎖状ポリシロキサンの末端に導入され、オクタメチルシクロテトラシロキサンと高分子量ポリシロキサンとの平衡混合物が得られることがわかった。」(第3頁左上欄第12行〜同頁右上欄第5行)、 「アミノ末端PDMSの合成は、オクタメチルシクロテトラシロキサンとビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンの混合物に0.1〜0.2%KOHと1%のMe2SOを加え、120附近の温度で24時間反応させるのが最良である。また上記の方法で精製したアミノ末端PDMSはさらにMeOHと混合し、デカンテーションを繰り返したのち乾燥して使用することが望ましい。」(第3頁右上欄第18行〜同頁左下欄第6行)。 (2)甲第2号証:「Epoxy Resin Chemistry II」 Ronald S.Bauer,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY WASHINGTON、D.C 1983 、第21頁〜第54頁 該刊行物には、以下の事項が記載されている。 「これらの官能性シロキサンの存在下で環状4量体の重合を導くために、4モルの環状4量体(D4)と1モルの純粋なテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを反応させることによりシロキサノレート触媒を製造する。」(第24頁第28〜31行)、 「アミノ末端ジシロキサンの平衡化 先に論じたように、アミノ末端ジシロキサンはハイドロシレーション法により作ることが原則として可能であるが、ペトラーチから入手した。環状4量体をビス(アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンと0.5重量%のシロキサノレート触媒の存在下で80℃で44時間反応させることにより平衡化を行った。こうした条件は、エポキシ末端オリゴマーについての先の広範な研究に基いて選定した。環状体の抽出前に150℃で3時間反応させることにより触媒を分解した。生成するアミノ末端オリゴマーの分子量は、環状4量体のジシロキサンに対する比率により大きく支配される。エポキシ系と類似の方法で仕上げた。すなわち、真空ストリッピングかメタノール処理のどちらかで。」(第25頁下から第15行〜下から第1行)、 「この時点では、オリゴマーも環状体を含んでいる。環状体を除去するために、約0.5ないしltorrというメカニカルポンプ真空下で粗オリゴマーをストリッピングした。ストリッピングしたものを下記したように同定した。ストリッピングしたものは完全に透明であった。粗オリゴマーを生成する別の方法は、平衡環状体をメタノールのような溶剤で抽出することである。メタノールは環状体を溶解するが、分子量が1000以上のオリゴマーを溶解しない。」(第25頁21行〜第30行)、 「結論 エポキシ、アミノプロピル、ヒドロキシピベラジンまたはピベラジン末端基を持つ官能性シロキサンオリゴマーは、環状4量体と適当なジシロキサンを平衡化重合することにより合成した……しかし、ガラス転移点は短いシロキサン材料により低下した。分子量5000までのオリゴマーは、ネットワークのガラス転移点を約150℃というコントロール値から低下させなかった。……。」(第52頁下から第3行〜第53頁23行)。 甲第3号証:POLYMER,1984,Vol.25,December,第1800頁〜第1806頁 該刊行物には、以下の事項が記載されている。 「シロキサン-ウレア 結合セグメントコポリマーはα,ω-ビス(アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンオリゴマーと例えば、MDI、TDI、H-MDIのような各種の芳香族や脂環族ジイソシアネートから合成される。(要約)、 「α,ω-ビス(アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンオリゴマーは、我々の実験室で合成した。この目的のために、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、水酸化カリまたは相当するシラノレート開始剤を使用して環状オクタメチルテトラシロキサン(D4)を1,3‐ビス(アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンとバルクで平衡化させた。反応は、80〜100℃で少なくとも24時間行った。これは平衡化に十分な時間であった。触媒を不活性化した後、試料を高真空下でストリッピングした。こうした平衡化反応では12〜15%のレベルで通常存在する低分子量環状副生物を除去するためである。本研究で合成され、使用されたオリゴマーのリストが第1表に掲げられている。」(第1801頁の左欄第11行〜第25行)。 4.対比判断 (1)甲第1号証に記載された発明との対比 甲第1号証の実施例1において、ジメチルシロキシ単位の重合度が80であるということは、分子量に換算すると74×80=5920であり、甲第1号証には分子量が5000を超すものが記載されているといえる。 本件発明と甲第1号証に記載された発明を対比すると、両者は、両末端にアミノ基をもつビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(本件発明におけるV式のアミン官能基含有末端封鎖剤においてRが全てメチル基であり、Yがプロピレン基であり、Dが水素原子であるものに相当)とオクタメチルシクロテトラシロキサン(本件発明における環状シロキサンの一つ)とを、触媒の存在下に反応させることにより、得られた両末端にアミノ基を有する少なくとも5000の分子量を有するポリジメチルシロキサン」である点で、一致している。 しかし、(1)本件発明では触媒としてテトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレートを使用してポリマーを得ているのに対し、甲第1号証に記載された発明では触媒としてKOHを使用してポリマーを得ている点、及び、(2)本件発明では環状シロキサンを2回に分割添加して2段階法で反応させポリマーを得ているのに対し、甲第1号証に記載された発明では環状シロキサンを一挙に添加し1段階で反応を行ってポリマーを得ている点で少なくとも両者は相違している。 そして、それによって、本件発明のポリマーは甲第1号証のポリマーに較べて、-SiOH末端がずっと少ないことは、平成12年5月8日付けで特許権者が提出した上申書に添付した追試実験の結果から認められることである。 即ち、該上申書の表5によれば、本件発明の追試例であるA(分子量8611)およびB(分子量14339)では-SiOH末端基はそれぞれ2.0%と2.7%であるのに対し、甲第1号証に記載された発明の追試例である対照1A(分子量12057)および対照1B(分子量19495)では-SiOH末端基はそれぞれ48.9%と60.0%である。 してみれば、本件発明と甲第1号証に記載された発明は同一ではない。 (2)甲第2号証に記載された発明との対比 甲第2号証には、分子量5000までのオリゴマーが得られる旨記載されているので、この点は実質的に本件発明における5,000の分子量に等しいといえる。 本件発明と甲第2号証に記載された発明を対比すると、両者は、両末端にアミノ基をもつビス(アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(本件発明におけるV式のアミン官能基含有末端封鎖剤においてRが全てメチル基であり、Yがプロピレン基であり、Dが水素原子であるものに相当)と環状4量体(これが環状シロキサンであることは自明、本件発明における環状シロキサンに相当)とを、触媒の存在下に反応させることにより、得られた両末端にアミノ基を有する少なくとも5000の分子量を有するポリジメチルシロキサン」である点で一致している。 しかし、(1)本件発明では触媒としてテトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレートを使用してポリマーを得ているのに対し、甲第2号証に記載された発明で使用する触媒は環状4量体(D4)とテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを反応させることにより得られたシロキサノレート触媒を使用してポリマーを得ている点、及び、(2)本件発明では環状シロキサンを2回に分割添加する2段階法で反応させてポリマーを得ているのに対し、甲第2号証に記載された発明では環状シロキサンを一挙に添加し1段階で反応を行ってポリマーを得ている点で少なくとも両者は相違している。 そして、それによって、本件発明のポリマーは甲第1号証のポリマーに較べて、-SiOH末端がずっと少ないことは、平成12年5月8日付けで特許権者が提出した上申書に添付した追試実験の結果から認められることである。 即ち、該上申書の表5によれば、本件発明の追試例であるA(分子量8611)およびB(分子量14339)では-SiOH末端基はそれぞれ2.0%と2.7%であるのに対し、甲第2号証に記載された発明の追試例である対照2A(分子量8234)および対照2B(分子量13263)では-SiOH末端基はそれぞれ7.3%と12.2%である。 してみれば、本件発明と甲第2号証に記載された発明は同一ではない。 (3)進歩性 特許異議申立人は、仮に特許設定登録時の本件特許請求の範囲第1項の発明をオルガノポリシロキサン-ポリ尿素ブロックコポリマー用に限定したとしても、甲第1号証もしくは甲第2号証に記載された発明に甲第3号証に記載された発明を併せれば、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張するが、本件発明は訂正により特許異議申立人が想定したものと全く異なるものとなったため、特許異議申立人の主張はその主張の基礎を失ったというべきである。 しかも、本件発明では、(1)触媒としてテトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレートを使用してポリマーを得ている他、(2)環状シロキサンを2回に分割添加する2段階法で反応させてポリマーを得ているのであり、このようなことは甲第1〜3号証のいずれにも記載されていないことであり、また、それによって、-SiOH末端の少ないポリマーが得られることは既に(1)および(2)の欄で述べたとおりのことである。 してみれば、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件明細書の記載不備 本件明細書の段落番号【0035】には「実質的に純粋なオルガノポリシロキサンジアミンが製造できる」との記載があり、また、段落番号【0039】には「この2段階法を使用することによって、モノ官能性及び非官能性ポリシロキサン不純物によって殆ど汚染されていない、優れた二官能性価を有する5,000〜約70,000の任意の所望の分子量で式IIのシリコーンジアミンを一貫して製造できる。」との記載があり、一方、従来技術に関する記載である段落番号【0041】には「過剰量非官能性水和触媒の使用により、最終生成物中の不純物として有意パーセントの非アミン末端シリコーンポリマーが生成される。」との記載があり、本件発明に関する記載と従来技術に関する記載を相対的に比較すると、本件発明の「不純物及び汚染物を実質的に含まない」とは「有意パーセントの非アミン末端シリコーンポリマー」を含まないようなものであることが窺われるのである。 そしてそのようなポリマーを得るための手段として、本件発明は特定の触媒を使用して2段階法で得られたということを要件としているのであるから、その結果得られたポリマーの不純物が何ppm以下なのかということについては記載がないとしても、本件発明が当業者にとって実施困難と言うものでもないし、また、上記上申書に添付された追試実験によれば本件発明のものは-SiOH末端基が2.0%と2.7%であり、従来技術である甲第1号証や甲第2号証に記載された発明のものに較べれば格別の少なさであり、本件発明が従来技術のものに較べれば「有意パーセントの非アミン末端シリコーンポリマーを実質的に含まない」ものといえることがわかるのである。 してみれば、本件特許明細書が特許法第36条第4項及び第5項に違反するほどの記載不備があるとはいえない。 [5] むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件特許請求の範囲第1項に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許請求の範囲第1項に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号)附則第十4条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成七年政令第二百五号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 オルガノポリシロキサンジアミンおよびその製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも5,000の分子量および一般式: 【化12】 (式中、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニル基、フェニル基もしくは置換フェニル基であり; Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり: Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環を形成するアルキレン基またはフェニルであり; nは50またはそれ以上の数である)を有するオルガノポリシロキサンジアミンであり、このオルガノポリシロキサンジアミンは、一般式 【化16】 (式中、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニル基、フェニル基もしくは置換フェニル基であり、Yは炭素原子1〜10個のアルキレン基であり、Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環を形成する炭素原子1〜10個のアルキレン基またはフェニルである)のアミン官能基含有末端封鎖剤と、環状シロキサンとを、触媒量のテトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレート触媒の存在下で反応させることにより、一般式 【化17】 (式中、R、YおよびDは上で定義されたとおりであり、xは4〜40の数である)を有する分子量約2,000未満の低分子量オルガノポリシロキサンジアミンを作り、そして次に、上記環状シロキサンを更に添加して上記低分子量オルガノポリシロキサンジアミンを所定の分子量にすることにより得られることを特徴とする、モノ官能性および非官能性ポリシロキサン不純物及び汚染物を実質的に含まないオルガノポリシロキサンジアミン。 【請求項2】 少なくとも5,000の分子量および一般式: 【化13】 (式中、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニル基、フェニル基もしくは置換フェニル基であり; Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり: Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環を形成するアルキレン基またはフェニルであり; nは50またはそれ以上の数である)を有することを特徴とする、モノ官能性および非官能性ポリシロキサン不純物及び汚染物を実質的に含まないオルガノポリシロキサンジアミンの製造方法において (i)(a)一般式 【化14】 (式中、Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり);そして、 Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニル基、フェニル基または置換フェニル基であり; Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環式環を形成する炭素原子1〜10個のアルキレン基またはフェニルである)のアミン官能基含有末端封鎖剤; (b)前記のアミン官能基含有末端封鎖剤と反応して約2,000末満の分子量および一般式 【化15】 (式中、R、YおよびDは上記の定義と同じであり、そして、xは約4〜40の数である)を有する比較的低分子量のオルガノポリシロキサンジアミンを形成するのに十分な環状シロキサン; (c)触媒量のテトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレート を反応条件下で化合させ; (ii)前記のアミン官能基含有末端封鎖剤の実質的に全部が消費されるまで前記の反応を続け;そして、 (iii)前記オルガノポリシロキサンジアミンが得られるまで追加の環状シロキサンを添加する ことを特徴とする前記の方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、オルガノポリシロキサン-ポリ尿素ブロックコポリマー製造のための前駆物質として有用なオルガノポリシロキサンジアミン及びその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 ブロックコポリマーは、フィルム、接着剤および成形物品のような各種製品における所望の性能特性を得るために長い間使用されてきた。ブロックコポリマーは、ブロック(blocks)を所望特性に最適になるように化学的に注文通りにできるために特に有用である。 【0003】 シロキサンポリマーは、主としてシロキサン結合の物理的並びに化学的特質に由来する独特の性質を有する。かような性質には、低ガラス転移温度、高い熱的並びに酸化安定性、耐UV性、低表面エネルギー、および疎水性、良好な電気的性質、および多くの気体に対する高い透過性が含まれる。これらはまた非常に良好な生物適合性を有し、従って、血液の存在下で体内で使用できる生物学的物質として非常に興味がある。 【0004】 これらの望ましい特徴にも拘らず、残念ながら大部分のポリジメチルシロキサンポリマーは引張強さのないポリジメチル-シロキサンを基剤としている。そのため数種の文献ではシロキサンポリマー、特にエラストマーの強度を都合良く増加させる方法が提案されている。例えば、ポリシロキサンポリマーの機械的性質は「軟質の」(soft)ポリシロキサンブロックまたはセグメントおよび任意の各種の他の「硬質の」(hard)ブロックまたはセグメント例えばポリウレタンを反復単位として含むブロックコポリマーを製造することによって実質的に改良できることが各種の文献に提案されている。例えば、1985年6月5日公告の(Ward)U.K.P.GB2 140 444B、(Cavezzan等)U.S.P.No.4,518,758、(Nyilas)U.S.P.No.3,562,352および(Kira)U.S.P.No.4,528,343を参照されたい。 【0005】 シリコーンジアミンとジイソシアネートとから製造された約4,000未満のシリコーンセグメント分子量を有するセグメントポリジメチルシロキサンポリ尿素エラストマーが、Polymer、25巻1800〜1816頁、1984年12月に記載されている。この文献には、比較的高分子量のシリコーンセグメントの合成は、開示されている方法によっては得られないことが明らかにされている。著者には認識されていないが、約4,000以上のシリコーンセグメント分子量を有するエラストマーを製造できないのは、この著者の製造方法に固有の多数の因子によるものと考えられる。本発明が出る前には認識できなかった前記の方法の欠陥は、過度に多い量の触媒の使用、水の汚染および非効率な反応方法の選択によって生じたもので、これらのすべての因子が著者のモノ-官能性および非官能性シリコーン汚染物でシリコーンジアミン生成物を汚染させたものと考えられる。これらの汚染物は、かようなジアミンから製造されたポリ尿素エラストマー中に留まる。非官能性シリコーン油は、エラストマーの引張強さを弱めるのみならず、時間の経過と共にエラストマーから惨出する可塑剤としての作用をする。非官能性汚染物は、所望のポリ尿素の最大分子量に達するのを妨げ、従ってポリマーを弱化させる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 有効な大きな分子量のポリシロキサンブロックと共に所望の尿素の最大分子量のブロックの組み合わせを達成させ、そして低ガラス転移温度、高い熱安定性、高い酸化安定性、耐UV性、低表面エネルギーおよび疎水性、良好な電気的性質、多数の気体に対する透過性、優れた機械杓特性およびエラストマー特性を兼ね備えて有する、オルガノポリシロキサン-ポリ尿素ブロックコポリマーが得られることが所望され、したがってそのブロックコポリマーを首尾よくそして容易に製造することが出来る前駆物質を開発することが所望される。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明によれば、少なくとも5,000の分子量および一般式 【化4】 (式中、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニレン基、フェニル基もしくは置換フェニル基であり;Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり:Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環を形成する炭素原子1〜10個のアルキレン基またはフェニルであり;nは50またはそれ以上の数である)を有することを特徴とするオルガノポリシロキサンジアミンが提供される。 【0008】 また、本発明によれば (i)(a)一段式、 【化5】 (式中、Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり;そして、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニレン基、フェニル基または置換フェニル基であり;Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環式環を形成する炭素原子1〜10個のアルキレン基またはフェニルである)のアミン官能基含有末端封鎖剤;(b)前記のアミン官能基含有末端封鎖剤と反応して約2,000末満の分子量および一般式 【化6】 (式中、R、YおよびDは上記の定義と同じであり、そして、xは約4〜40の数である)を有する比較的低分子量のオルガノポリシロキサンジアミンを形成するのに十分な環状シロキサン;(c)触媒量のテトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレートを反応条件下で化合させ; (ii)前記のアミン官能基含有末端封鎖剤の実質的に全部が消費されるまで前記の反応を続け;そして、(iii)式IIのオルガノポリシロキサンジアミンが得られるまで追加の環状シロキサンを添加することを特徴とする、オルガノポリシロキサンジアミンの製造方法が提供される。 【0009】 本発明のジアミンによって、低ガラス転移温度、高い熱的および酸化安定性、耐UV性、低表面エネルギーおよび疎水性、良好な電気的性質および多数の気体に対する透過性のポリシロキサンに関連する通常のすぐれた性質およびすぐれた機械的並びにエラストマー特性を有する追加の望ましい性質を備えたオルガノポリシロキサン-ポリ尿素ブロックコポリマーが提供される。本発明のジアミンによって得られるオルガノポリシロキサン-ポリ尿素ブロックコポリマーは、良好な生物適合性を有し、しかも、慣用のポリシロキサンポリマー物質が使用できる状況下で使用できるものと考えられている。本発明のジアミンによって得られるオルガノポリシロキサン-ポリ尿素ブロックコポリマーは、相溶性粘着性増強樹脂で粘着性を増強させたとき、感圧接着剤組成物として特に有用である。 【0010】 本発明のジアミンによって得られるオルガノポリシロキサン-ポリ尿素ブロックコポリマーは、二官能価オルガノポリシロキサン(軟質セグメントを生成する)とジイソシアネート(硬質セグメントを生成する)との重縮合によって得られる(AB)n型のセグメントコポリマーであり、そして、二官能価アミンもしくはアルコールまたはそれらの混合物のような二官能価連鎖延長剤を含有することができる。 【0011】 さらに特別には、本発明のジアミンを使用して次の式I: 【化7】 〔式中、Zは、フェニレン、アルキレン、アラルキレンおよびシクロアルキレンから選ばれる二価基であり;Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり;Rは、少なくとも50%がメチルであり、残余の全R基の100%が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニレン基、フェニル基または置換フェニル基であり;Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成して複素環を形成するアルキレン基またはフェニルであり;Bは、アルキレン、アラルキレン、シクロアルキレン、フェニレン、ポリエチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリカプロラクトンまたはそれらの混合物などから選ばれる二価基であり;Aは-O-または-NG-(式中、Gは水素、炭素原子1〜10個のアルキル基、フェニルまたはBを含めて環構造を完成し、複素環を形成するアルキレン基である)から選ばれる二官能基含有部分であり;nは、50またはそれ以上の数であり、そして、mは、0〜約25の数である〕によって表わされる反復単位から成るオルガノポリシロキサン-ポリ尿素ブロックコポリマーが提供される。 【0012】 好ましいブロックコポリマーにおいては、Zはヘキサメチレン、メチレンビスー(フェニレン)、イソホロン、テトラメチレン、シクロヘキシレン、およびメチレンジシクロヘキシレンから成る群から選ばれ、そして、Rはメチルである。 【0013】 上記オルガノポリシロキサン-ポリ尿素ブロックコポリマーの製造方法は: (i)少なくとも5,000の分子量および次の式II: 【化8】 (式中、R、Y、Dおよびnは上記の定義と同じである)によって表わされる分子構造を有する本発明のジアミン; 【0014】 (ii)式III OCN-Z-NCO III (式中、Zは上記の定義と同じである)によって表わされる分子構造を有する少なくとも1種のジイソシアネート;および、 【0015】 (iii)式IV: H-A-B-A-H IV (式中、AおよびBは上記の定義と同じである)によって表わされる分子構造を有する95重量%までのジアミンまたはジヒドロキシ連鎖延長剤 を不活性雰囲気下および反応条件下で重合させることから成る。 【0016】 この反応におけるシリコーンジアミン、ジアミンおよび(または)ジヒドロキシ連鎖延長剤:ジイソシアネートの組合せモル比は、所望の性質を有するブロックコポリマーの形成に好適な比である。前記の比を1:0.95〜1:1.05の範囲内に維持することが好ましい。 【0017】 反応に有用なジイソシアネートは、トルエンジイソシアネートまたはp-フェニレンジイソシアネートのようなフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス-(フェニルイソシアネート)またはテトラメチレンジイソシアネートのようなアラルキレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネートまたはシクロヘキシルジイソシアネートのようなシクロアルキレンジイソシアネートである。 【0018】 新規の上記ブロックコポリマーを製造するための反応には、本発明の式IIによって表わされる新規のオルガノポリシロキサンジアミンの使用が含まれる。 【0019】 式IIによって表わされるオルガノポリシロキサンの製造方法も提供される。この方法には: 【0020】 (i)(a)次のような式V: 【化9】 (式中、D、RおよびYは上記の定義と同じである)によって表わされる分子構造のアミン官能基含有末端封鎖剤; 【0021】 (b)約2,000未満の分子量および次のような式VI: 【化10】 (式中、D、RおよびYは上記の定義と同じであり、xは約4〜40の範囲内の数である)によって表わされる分子構造を有する比較的低分子量のオルガノポリシロキサンジアミンを形成するために前記のアミン官能基含有末端封鎖剤と反応させるのに十分な環状シロキサン; 【0022】 (c)次のような式VII: 【化11】 (式中、D、YおよびRは上記の定義と同じであり、そして、M+はK+、Li+またはN(CH3)+4のようなカチオンである)によって表わされる分子構造の新規の本質的に無水のアミンシラノレート触媒を最終オルガノポリシロキサンジアミンの最終重量に基づいて約0.1重量%を超えない触媒量を不活性雰囲気下および反応条件下で化合させ; 【0023】 (ii)前記のアミン官能基含有末端封鎖剤の実質的に全部が消費されるまで反応を続け;そして 【0024】 (iii)式IIによって表わされる新規のオルガノポリシロキサンジアミンが得られるまで追加の環状シロキサンを添加する 工程が含まれる。 【0025】 本発明で使用する触媒は、テトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレートである。この触媒の量は、最後のオルガノポリシロキサンの最終重量に基づいて好ましくは0.5重量%未満、最も好ましくは0.005〜約0.03重量%である。 【0026】 好ましい反応条件は、約80°〜約90℃の反応温度範囲、約5〜7時間の反応時間および追加の環状シロキサンの滴下添加が含まれる。 【0027】 本発明のジアミンを使用してブロックコポリマーを製造する反応には、反応条件下で本発明のオルガノシロキサンジアミン、ジアミンおよび(または)使用する場合のジヒドロキシ連鎖延長剤およびジイソシアネートを混合し、それぞれジイソシアネートおよびオルガノポリシロキサンジアミンから誘導される硬質および軟質セグメントを有するブロックコポリマーを製造することが含まれる。この反応は典型的には反応溶媒中において行なわれる。 【0028】 好ましい反応溶媒は、ジイソシアネートと非反応性であり、かつ、重合反応の間を通じて反応体および生成物を完全に溶液中に保持する溶媒である。塩素化溶剤、エーテルおよびアルコールが脂肪族ジイソシアネートの場合最良であり、メチレンクロライド、テトラヒドロフランおよびイソプロピルアルコールが好ましい。4,4´-メチレン-ビス-フェノールイソシアネート(MDI)のような芳香族ジイソシアネートに対しては、テトラヒドロフランと10〜25重量%のジメチルホルムアミドのような双極性非プロトン性溶媒との混合物が好ましい。 【0029】 出発物質および反応溶媒は、通常、最初に精製し、乾燥させ、そして、反応を乾燥窒素またはアルゴンのような不活性雰囲気下で行う。 好適なジイソシアネートには、トルエンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートが含まれる。好ましいジイソシアネートには、4,4´-メチレンビス-フェニルイソシアネート(MDI)、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート(H-MDI)およびイソホロンジイソシアネートが含まれる。 【0030】 前記したように、オルガノポリシロキサンジアミンを製造する反応では式VIIによって表わされる無水アミン官能基含有シラノレート触媒を使用する。この重合における好ましい触媒は、3-アミノプロピルジメチルテトラメチルアンモニウムシラノレートであり、この物質自体が新規であり、還流下でテトラヒドロフラン中において1モル当量の1,3-ビス-(3-アミノプロピル)テトラメチルシロキサンと2モル等量のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド五水化物とを反応させ、次いで、真空下(0.1mm)60℃で5時間乾燥させることによって結晶性固体として得られる。 【0031】 ブロックコポリマーに他の特性を付与するために連鎖延長剤が他の反応体と共に配合できる。連鎖延長剤は、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、1,3-ジ(4-ピペリジル)プロパン(DIPIP)、ジ(-2-アミノエチル)プロピルメチルジメトキシシラン(DAS)、ピペラジンなどのような短鎖長ジアミンであり、ピペリジルプロパンが好ましい。 【0032】 ポリマージアミン並びにポリマーグリコールもポリシロキサンジアミン、ジイソシアネートおよび連鎖延長剤として他の所望の非シリコーン軟質セグメントと共に共重合させてシリコーンポリ尿素に追加の望ましい特性を付与する。 【0033】 得られた共重合状セグメントは、所望する得られたコポリマーの性質によってコポリマー配合物の5%と少ない量から95%の多い量まで含まれる。 【0034】 非シリコーン軟質セグメントとして有用なポリマージアミンは、分子量5,000〜25,000のポリテトラメチレンオキサイドジアミンのような2.0に近い官能価を使用して得られるジアミンであり、8,000〜15,000の範囲内の分子量のものが好ましい。好適なポリマージオールには、ポリテトラメチレンオキサイドグリコール、ポリエチレンオキサイドグリコール、ポリプロピレンオキサイドグリコール、ポリカプロラクトングリコールなどが含まれる。ポリシロキサンとポリテトラメチレンオキサイドジアミンとからポリ尿素を製造するためには、ジアミンをメチレンクロライドのような好適な溶剤中に溶解させ、ジイソシアネートおよび使用する場合の連鎖延長剤を好ましくは組合せアミン:ジイソシアネートのモル比1:0.95〜1:1.05で混合物中に導入する。ポリマーグリコールとシリコーンジアミンとを共重合させるには2段階法が必要であり、第1段階においてグリコールをトルエンまたはテトラヒドロフランのような不活性溶剤中において、オクタン酸第一錫またはジブチル錫ジラウレートのような錫化合物の触媒量を使用し、ジイソシアネートと共にイソシアネートで全アルコール基が封鎖されるのに十分な時間例えば30分〜1時間加熱する。第2段階において、ポリシロキサンジアミンを添加し、続いて、任意の所望のジアミン連鎖延長剤を添加して、アミンプラスアルコール:イソシアネートの組合せモル比を好ましくは1:0.95〜1:1.05を保持し、反応を完結させてポリエーテルまたはポリエステルポリウレタンポリシロキサンポリ尿素ブロックコポリマーを得る。 【0035】 本発明の意義ある特徴は、すぐれた二官能性を有し、5,000を超える予め選定した所望の分子量を有する実質的に純粋なオルガノポリシロキサンジアミンが製造できることを見出したことである。かようなオルガノポリシロキサンジアミンは製造の間に次の、かぎとなる工程条件の存在のためにかような高純度の該ジアミンが本発明によって製造されるものと考えられる: 【0036】 (i)テトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレートのような無水アミノアルキル官能基含有シラノレート触媒の使用; 【0037】 (ii)製造されるシリコーンジアミンの重量に基づいて、好ましくは0.05重量%である前記の触媒の最少量の使用;および (iii)上記のように反応の2段階での実施。 【0038】 反応の第1段階において、式VIによって定義したような構造を有する低分子量シリコーンジアミンを、式Vによって表わされる型のアミン官能基含有ジシロキサン末端封鎖剤と、環状シロキサンとを窒素またはアルゴンのような不活性雰囲気下で触媒量のテトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレート触媒の存在下で反応させることによって製造する。使用する触媒の量は、得られたジアミノシリコーンの重量に基づいて0.05重量%未満、好ましくは0.005〜約0.03重量%である。理論に拘束されたくないが、最少量の無水アミン官能基含有シラノレート触媒の使用によって、触媒分子および偽水(spurious water)によって生成される不活性連鎖末端の数が最小に保持されるためと考えられる。 【0039】 反応は典型的に正味80〜90℃で行なわれ、そして、これらの条件下では気相クロマトグラフィーによって測定される反応混合物中の末端封鎖剤の実質的に完全な消滅によって判断されるように通常約0.5〜2時間で完了する。約2,000未満の分子量および式VIによって表わされる分子構造を有する中間体オルガノポリシロキサンジアミンが得られる。 【0040】 反応の第2段階には、所望の分子量にするのに必要な残余の環状シロキサンの徐々の添加が含まれ、環状シロキサンが添加されたらできるだけ迅速にポリマーに配合されるような速度での滴下が好ましく、通常80〜90℃の反応温度で約5〜7時間内である。5,000を超える分子量および式IIによって定義した構造の所望のオルガノポリシロキサンが製造される。最少量のアミン官能基含有無水シラノレート触媒を使用するこの2段階法を使用することによって、モノ官能性および非官能性ポリシロキサン不純物によって殆んど汚染されていない、すぐれた二官能価を有する約5,000〜約70,000の任意の所望の分子量で式IIのシリコーンジアミンを一貫して製造できる。 【0041】 環状シロキサン、アミン官能基含有ジシロキサンおよびテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドのような塩基性触媒またはシラノレートとの平衡化からアミン末端基シリコーンを製造する従来技術は、良好な二官能価を有し、4,000を超える分子量のジアミノオルガノポリシロキサンを得るためには不満足であることが証明されている。これらの不良な結果は、反応を1段階で行うかまたは触媒、アミン、官能基含有末端封鎖剤およびすべての環状シロキサンの全部を一度に反応を行うことを含めた従来技術の方法に固有の多くの有害要因によって生ずるものと考えられる。このため末端封鎖剤の不完全な配合および計算分子量より高い分子量になる。過剰量の非官能性水和触媒の使用により、最終生成物中の不純物として有意パーセントの非アミン末端基シリコーンポリマーが生成される。これらの結果は、上記のように2段階反応における最小濃度で本質的に無水のアミン官能基含有触媒を使用する本発明の方法によって解消される。 【0042】 本発明のジアミンを使用して得られるセグメントポリシロキサンブロックコポリマーは、軟質セグメント:硬質セグメントの比、連鎖延長剤の性質、使用される他のポリマー、およびポリシロキサンセグメントの分子量を変化させることによって広範囲の有用な性質に製造することができる。例えば、比較的低分子量(4,000〜7,000)のシリコーンセグメントと比較的高い硬質セグメント含量(30〜45%)との組合せで剛直、硬質しかも可撓性ゴムが得られる。 【0043】 これらのコポリマーは、各種の感圧接着剤のための剥離コーティングとして有用なことが見出されている。これらはモノ官能性または非官能性シロキサン不純物によって殆んど汚染されていない高度の二官能価を有し、再接着のような問題を実際に起さない。これらは溶液中において良好な安定性を有し、フィルム形成性であり、そして、異常に高い強度に加えて所望の機械的性質およびエラストマー性を有する。これに加えて、これらは感圧接着テープ製造において決定的利点である高温度硬化または長い加工時間を必要としない。 【0044】 前記したように、本発明のジアミンによって得られるセグメントコポリマーは、軟質セグメント:硬質セグメント比、使用する連鎖延長剤の量および性質、およびポリシロキサンセグメントの分子量を変化させることによって広い範囲の有用性質を備えたものが製造できる。これらの変更によって、剥離の量を例えば10g/cm未満〜約350g/cmに変化させうる。ある種のコポリマーはマスキングテープのような除去可能な感圧接着テープ用の低接着力バックサイズ(LABs)として特に有用である。ロール形態のテープ用のLABsは、理想的には約60〜350g/cm幅の剥離接着力を示す。剥離剤およびLABsとして使用されるコポリマーの硬質セグメントの好ましい量は、約15〜約70%である。好ましい範囲は、接着剤の種類およびそれの最終用途によって変化する、すなわち、マスキングテープに使用するLABsに対する好ましい範囲は、約25〜約60%である。この範囲を有するコポリマーは、新しいテープ上での適切な巻戻しおよび熱並びに湿度の不利な熟成後の適度の巻戻しの必要な組合せに加えて、受入れられるペンキマスキング性能、耐ペンキフレーキング性およびオーバーテーピング(overtaping)用途に使用したときの保持能力を示す。 【0045】 中程度分子量シリコーンセグメント(7,000〜25,000)のブロックコポリマー単独または15〜25%範囲内の他のエラストマーブロックとの組合せで、高度に弾性、弾力性、かつ、全く強力なシリコーンエラストマーが得られる。本発明の高い二官能価シリコーンジアミンを使用して、非常に高分子量のシリコーンセグメント(25,000〜70,000)および0.5〜10%と低い硬質セグメント含量のシリコーンエラストマーも製造できる。かようなポリマーは極めて軟かく、変形性であり、当然低引張強さであるが;これらのシリコーンポリ尿素を、General Electric Companyから「MQ」CR-524AおよびCR-525AのようなMQシリースとして商用として入手できるほぼ同重量のヒドロキシ官能基含有シリコーン粘着性増強樹脂と混合すると新規のシリコーン感圧接着剤が得られることが見出された。シリコーンの分子量および硬質セグメント含量を変化させることによって、粘着性、剥離接着力および剪断保持性の最適な均衡を有する感圧接着剤が後硬化反応を必要とせずに製造することができる。さらに、これらのポリマーの凝集強さは化学的架橋ではなく尿素基間の物理的引力によるために、これらのシリコーンポリ尿素感圧接着剤はホットメルト押出法によってテープ上に被覆できる。 【0046】 【発明の実施の形態】 本発明の範囲を限定することを意図しない次の実施例によってさらに説明する。 【0047】 実施例1: 触媒の製造: 磁気スターラー、アルゴン入口および乾燥チューブを有するコンデンサーを備えた100mlの三つ口丸底フラスコに、12.4g(0.05モル)の1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、18.1gのテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド五水化物および30mlのテトラヒドロフランを装入した。混合物をかく拌し、アルゴン雰囲気下の還流下で、気相クロマトグラフ(VPC)がジシロキサンピークの完全消失を示すまで11/2時間加熱した。冷去すると混合物は二層に分離した。ポット温度が75℃に達するまでテトラヒドロフランを留出させると黄色油が残り、これを油浴中60℃で真空下(0.1mm)で揮発物が留出しなくなるまで加熱(約5時間)した。黄色ろう状固体である粗生成物をアルゴン下でテトラヒドロフランから再結晶させ、濾過し、真空下で乾燥させて白色結晶性固体として3-アミノプロピルジメチルテトラメチルアンモニウムシラノレートを得た。化学的構造を核磁気共鳴分析(NMR)によって確認し、そして、生成物をアルゴン下の室温で貯蔵した。 【0048】 実施例2: シリコーンジアミンの製造: 温度計、機械かく拌機、滴下漏斗およびアルゴン入口を備えた500ml三つ口丸底フラスコに3.72gのビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンおよび前以て10分間アルゴンでパージした18gのオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)を装入した。油浴中でフラスコ内容物を80℃に加熱し、実施例1に記載の触媒の痕跡量(約0.03〜0.05g)をへらで添加した。反応物を80℃でかく拌し、30分のかく拌後に全く粘稠になった。VPCにより末端封鎖剤の完全な消失が示された。得られた反応混合物(分子量1,500のシリコーンジアミン、環状シロキサンおよび活性触媒から成る)に、6時間にわたって330gのアルゴンパージしたD4を滴下添加した、この結果粘度はさらに増加した。反応フラスコ内容物の80℃での加熱を一晩続けた。150℃で1/2時間加熱することにより触媒を破壊し、生成物を140℃、0.1mm圧力で揮発物が留出しなくなるまでストリップし(約1 1/2時間)310gの透明、無色の粘稠な油を得た(理論値の88%収率)。酸滴定によって測定した生成物の分子量は21,200であった。 【0049】 この方法を使用し、但し、末端封鎖剤:D4の比を変えて分子量4,000から70,000と高いシリコーンジアミンを製造した。 【0050】 実施例3: シリコーンポリ尿素の製造: アルゴン下で、65mlのメチレンクロライド中の実施例2に記載の21,200MWのシリコーンジアミン10.92gの溶液に、15mlのCH2Cl2中の0.80gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)溶液を一度に添加し、透明な溶液を得た。この透明溶液に10mlのCH2Cl2中の0.65gの1,3-ジピペリジルプロパン(DIPIP)溶液を滴下添加した。添加の終りに近ずくと磁気スターラーが殆んど停止するまで粘度が実質的に上昇し、シリコーンジアミン/DIPIP/IPDIのモル比1:6:7を有するシリコーンポリ尿素の透明溶液が得られた。この溶液をガラス板上に流延し、そして、溶剤を一晩蒸発させ、非常に強い、高弾性そして、5,210KPaの引張強さ、300%の伸びおよび5%の永久歪を有する透明フィルムが得られた。 【0051】 引張強さ、伸びおよび永久歪は、すべて破断時に測定した。前記の弾性物質の引張強さ、伸率および永久歪率は、約23℃の温度での周囲条件下でASTM D412-68によって測定した。この方法によって溶剤から流延させたエラストマー試料を乾燥させ、ダンベル型形状に切断し、このダンベルを破断点まで引張った。引張は引張強さ試験機を使用し、試験片が破断するまでの引張の間引張強さを記録した。この装置によって破断時の伸び率を殆んど10%近くまで測定した。永久歪率は、試料が破れてから10分後に試験ダンベルの破れた片を慎重に適合し、破れ、かつ伸ばされた試験片の組合せた長さを測定し、この測定した長さを引張る前の試料の元の長さで割り、その商に100を掛けることによって測定した。 【0052】 実施例4: シリコーンポリ尿素の製造: アルゴン下で、30mlのCH2Cl2中の2.06gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)溶液に20mlのCH2Cl2中の0.87gの1,3-ジピペリジルプロパン(DIPIP)溶液を添加した。次いで、10mlのCH2Cl2中の9.8gの分子量9,584のシリコーンジアミン溶液を滴下で添加した。添加が終りに近ずくと、反応混合物は非常に粘稠になった。1/2時間後に、得られた粘稠溶液をガラス板上に流延し、溶剤を蒸発させ、ジアミン/DIPIP/IPDIのモル比1:8:9を有し、透明でしかも剛直で8,453KPaの引張強さ、200%の伸びおよび15%の永久歪を有するシリコーンポリ尿素の弾性フィルムを得た。 【0053】 上記の実施例において説明した方法によって広範囲の弾性特性を有するシリコーンポリ尿素を製造した。これらの多数のシリコーンエラストマーの性質を実施例5〜15として下記の第I表に示す。 【表1】 【0054】 実施例16: 従来技術方法によるシリコーンジアミンの製造: アルゴンで前以て20分間パージした10gのオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)に、0.08gのテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド五水化物を添加した。アルゴン下80℃で30分間かく拌後に、混合物が非常に粘稠になったことは、テトラメチルアンモニウムシロキサノレート(実際の触媒)への転化が起ったことの証拠である。105gのD4中の2.5gのビス(アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン末端封鎖剤(0.01モル)を一度に添加し、透明な溶液が生成し、これをアルゴン下80〜85℃でかく拌し、理論分子量10,000を有するポリマーを概算収率85%で得た。 【0055】 透明溶液を24時間加熱後、実質的量の末端封鎖剤がポリマーに配合されていないことがVPCで測定された。48時間後に、VPCによって若干の非配合末端封鎖剤が存在することを認めたが、150℃に30分間加熱することによって反応を停止させた。得られた透明、無色の油を120°〜130℃でアスピレーターの減圧下で1時間ストリップし、全揮発物を除去し、103g(87%収率)の生成物が残った。 生成物を0.1N塩酸で滴定し、0.166meg/gのアミノ含量または生成物が完全に二官能価であると仮定して12,043の計算分子量を得た。 【0056】 実施例17: 従来技術のシリコーンジアミンを使用したシリコーンポリ尿素の製造: 100mlの一つ口丸底フラスコに、実施例16の12,043の分子量のシリコーンジアミン10.51gを装入し、50mlのCH2Cl2中に溶解させた。10mlのCH2Cl2中の0.91gのH-MDIの溶液をかく拌しながら一度に添加した。得られた透明溶液をかく拌しながら5mlのCH2Cl2中の0.55gの1,3-ビス(4-ピペリジル)プロパン(DIPIP)溶液の滴下によって処理した。添加の終りに近ずくと溶液は粘稠になったが透明のままであった。1/2時間後に、粘稠な溶液をガラス板上に流延し、溶剤を蒸発させると、シリコーンジアミン/DIPIP/H-MDIのモル比1:3:4を有するポリ尿素のエラストマーフィルムが残った。 【0057】 実施例18: 従来技術法のシリコーンジアミンおよび本発明のジアミンを使用して製造したシリコーンポリ尿素のエラストマー特性の比較: 実施例17のシリコーンポリ尿素従来技術エラストマーの引張強さ、インヘレント粘度、破断時伸びおよび永久歪を、同じ配合(シリコーンジアミン/DIPIP/H-MDIモル比1:3:4)であるが本発明による2段階法によって製造したシリコーンポリ尿素エラストマーのそれら特性と比較した。実施例12はジアミンが11,360の分子量を有する最も近似の配合物であった。結果を第II表に示す。 【表2】 【0058】 上記第II表において、実施例17は従来のジアミンを使用したエラストマーの例であり、実施例12は本発明のジアミンを使用して得られたエラストマーの例である。比較したすべての物理的性質は、本発明のジアミンを使用したエラストマー生成物が優れていることを示している。 【0059】 実施例19: シリコーン-ポリエーテルポリ尿素コポリマー: 8.2gの分子量8,215のシリコーンジアミン、7.3gの分子量7,300のポリテトラメチレンオキサイドジアミンおよび0.67gのDIPIPを、90mlのイソプロピルアルコールおよび50mlのCH2Cl2の溶媒系に溶解させた。室温でかく拌しながら、1.11gのイソホロンジイソシアネートを滴下添加した。添加の終りに近ずくと、溶液は全く粘稠になったが透明のままでゲルではなかった。粘稠溶液からフィルムに流延し、乾燥させ、そして、得られた結晶性透明シリコーン-ポリエーテルエラストマーは、19,458KPaの引張強さ、650%の伸びおよび6%の永久歪を有した。 【0060】 実施例20: シリコーン-ポリエステルポリポリウレタンポリ尿素コポリマーエラストマー: 1リットルの三つ口丸底フラスコに、19.2gの分子量2,000のポリカプロラクトンジオール(Union Carbide社製「Tone」-0240)および100mlのトルエンを装入した。この溶液を沸騰するまで加熱し、少量の溶剤をフラスコから留出させ、内容物を共沸蒸留によって乾燥させた。イソホロンジイソシアネート(9.92g)を添加し、次いで、3滴の触媒ジブチル錫ジラウレートを添加した。初期のはげしい反応の後に、透明溶液を還流下で1/2時間熱した。反応物を300mlのトルエンで希釈し、そして、50mlのトルエン中の24gの分子量10,350のシリコーンジアミンをかく拌しながら相当迅速に添加した。得られた透明、無色溶液をかく拌しながら100mlのイソプロピルアルコール中の6.88gの1,3-ビス(4-ピペリジル)プロパンの溶液で迅速に処理した。反応物は全く粘稠になったが透明のままであった。さらに1時間後、溶液をトレー中に流延し、溶剤を蒸発させた。得られたエラストマーのシリコーン-ポリエステルポリウレタンポリ尿素は、40%のシリコーンを含有し、透明であり、強く、かつ非常に弾性があった。 【0061】 実施例21: ポリシロキサンポリ尿素ブロックコポリマーを使用した感圧接着剤の製造: 200mlの丸底フラスコに23.23gの新しく製造した分子量21,213のシリコーンジアミンと35.3gのトルエンとを装入した。溶液を室温でかく拌し、0.29gのH-MDIを添加し、次いで、追加の28gのトルエンを添加した。20分後に、溶液は全く粘稠になった。General Electric社からCR-524Aとして入手できるMQシリコーン樹脂組成物のキシレン中の60%溶液39.2gを添加することによって感圧接着剤を製造した。10.3gのトルエンを追加添加して最終固形分含量を35%に調整した。得られた感圧接着剤溶液は、シリコーンポリ尿素ガム:MQ樹脂重量比1:1を有した。 【0062】 同様な方法によって、各種の分子量のシリコーンジアミンと等モル量のジイソシアネートとの反応によって得られたポリ尿素と同重量のMQシリコーン樹脂とを混合することによって多数の他のシリコーンポリ尿素感圧接着剤を製造した。これらを25〜33umの厚さにポリエステルフィルム上に被覆し、感圧接着剤可撓性シート物質を得た。 【0063】 これらの実施例生成物の性能を、ペンシルバニア州、フィラデルフィアのアメリカ材料試験協会(ASTM)およびイリノイ州、グレーンビュー感圧接着テープ協会(PSTC)に記載の2種の標準試験方法によって評価した。これらの方法は、方法No.1(剥離接着力)およびNo.7(剪断強さ)である。 【0064】 剥離接着力: ASTM P3330-78 PSTC-1(11/75) 剥離接着力は、特定の角度および剥離速度で測定した試験パネルから被覆した可撓性シート物質を除去するのに要する力である。実施例においてこの力は100mm幅の被覆シート当りのニュートン(N/100mm)で表わす。この方法は次の通りである: 【0065】 (i)12.5mm幅の被覆シートを少なくとも12.7線cmを有するきれいなガラス試験板にしっかり接触させて適用する。ストリップを適用するのに硬質ゴムローラーを使用する。 【0066】 (ii)被覆ストリップの自由端をそれ自体が殆んど接触するまで折りかえす、これで除去角度は180°になる。自由端を接着力試験機スケールに取付ける。 【0067】 (iii)ガラス試験板を、引張試験機のジョーに締めつける、該試験機はガラス板をスケールから2.3m/分の一定速度で引離すことができる。 【0068】 (iv)ニュートンで示されるスケールの読みをガラス表面からテープが剥されるのに伴って記録する。データは試験の間に観測した数の平均値として記録する。 【0069】 剪断保持強さ: (参照:ASTM:D3654-78:PSTC-7) 剪断強さは、接着剤の凝集力または内部強さの尺度である。これは接着ストリップを標準の平らな表面から、ストリップが一定の圧力で貼りつけられている表面に平行方向に引張るのに要する力の量に基づく。これは標準面積の接着剤被覆シート物質を、一定の応力、標準の荷重下でステンレス鋼試験パネルから引張るのに要する時間(分)によって測定される。 【0070】 この試験は、各ストリップの12.5mm部分をテープの一端を自由にしてパネルにしっかり接着させるようにステンレス鋼パネルに適用した接着剤被覆ストリップを使用して行う。被覆ストリップが接着しているパネルを伸びたテープの自由端と178°の角度になるようにラックで保持し、テープの自由端は被覆ストリップの自由端からの吊り下げ重りとして適用される1kgの力の適用により引張られる。すべての剥離力を消去するために180°より2°少ない角度を使用し、試験すべきテープの保持力の測定をより正確に行なえるように剪断力のみが測定できるようにした。試験パネルから離れる各テープ試料の時間経過を剪断強さとして記録する。 【0071】 連鎖延長剤なしでシリコーンポリ尿素から製造した感圧接着剤の実施例の剥離接着力および剪断結果を第III表に示す。 【表3】 【0072】 実施例25: 連鎖延長剤を使用したポリシロキサンポリ尿素を使用した感圧接着剤の製造: 100mlのメチレンクロライド中の17.55gの、分子量34,000のシリコーンジアミン(0.0585meq/g)の溶液を室温でかく拌しながら50mlのメチレンクロライド中の0.54gのメチレンビス〔4,4´-ジシクロヘキシル〕イソシアネート(H-MDI)の溶液に迅速に添加した。25mlのメチレンクロライド中の0.12gの1,3-ビス(4-ピペリジル)プロパン(DIPIP)の溶液を滴下によって徐々に添加し、シリコーン-ポリ尿素溶液を得た、これは次第に粘稠になったがこの第2の添加が完了してもゲル化しなかった。感圧接着剤を製造するために、30.7gのMQシリケート樹脂(CR-524A)の60%キシレン溶液を添加し、シリコーンブロックコーポリマー:粘着性増強剤重量比1:1にした。この接着剤を含有する溶液をポリエステル上に流延し33umの接着フィルムを製造し、これを感圧テープ協会(PSTC)法No.1(剥離接着力)およびNo.7(剪断強さ)によって試験した。この結果は、ガラスに対する50N/100mmの剥離接着力および10,000プラス分の剪断保持時間を示した。これは第IV表に示した多数の他の感圧接着剤組成物に匹敵した。 【表4】 【0073】 実施例26: 剥離剤として使用するためのコポリマーの製造: 【表5】 組成: PDMS (Mw-5560) 25重量部 PCL (Mw-1250) 35重量部 DIPIP/IPDI 40重量部 【0074】 方法: 触媒量(3滴)のジブチル錫ジラウレートの存在下でIPDIの全装入量(24.06g)を含有するトルエン中のポリカプロラクトンジオール(PCL)(35g)を窒素下で30分間還流させた。還流後、加熱を停止し、トルエンを添加して全量を500mlまで希釈した。室温まで冷却後PDMSジアミン(25.0g)を100mlのトルエンと共に添加し、15分間かく拌した。 【0075】 次いで、100mlのイソプロパノールに溶解させたDIPIP(15.94g)を2〜3分間にわたって徐々に添加し、そして、30分間かく拌した。5分以内に粘度の増加が観察された。この工程の間を通じて全溶液は透明かつ無色のままであった。トルエンによる最終希釈で、トルエン:イソプロパノール90:10の溶剤混合物中における固形分含量を約10%になるまで希釈した。 【0076】 1.5ミルのウレタン含浸平滑クレープ紙パッキングに第1走行でDuPont社製NeopreneTM (N-115)クロロプレンラテックスを下塗した。第2走行において、前記のパッキングの反対側に、トルエン/イソプロパノール中の50%固形分溶液を使用して計量ロールからLABを適用した。最後に第3走行において、下塗側にラテックス接着剤(45%天然ゴム/57%PiccolyteTM S-65、Hercules社製のポリβ-ピネン粘着性付樹脂であり、65℃の環球式軟化点を有する)を4.4mg/cm2の被覆重量で適用した。 【0077】 実施例27: 【表6】 【0078】 これを実施例26で使用した方法と同様に製造した。 【0079】 実施例28: 【表7】 組成: PDMS (Mw 5590) 10% PCL (Mw 1240) 60% DIPIP/IPDI 15% DAS/IPDI 15% これを実施例26で使用した方法と同様に被覆した。 【0080】 実施例29: 【表8】 組成: PDMS (Mw 4900) 23% PCL (Mw 1250) 42% DIPIP/IPDI 35% これを実施例26で使用した方法と同様に被覆した。上記の実施例から得られた試験結果を第V表に示す。 【0081】 実施例30: 【表9】 組成: PDMS (Mw 4900) 20% PCL (Mw 1250) 20% DIPIP/IPDI 60% これを実施例26に使用した方法と同様に被覆した。 【0082】 試験: 前記した剥離接着力および下記に示す巻出試験用の標準試験方法によって実施例26〜30の性能を試験した。 【0083】 巻戻し試験: Instron型試験機を使用し、90°の角度および90in/分の分離速度で試験した。 【表10】 【表11】 【0084】 RT=22℃/50%RH 65℃/16HRSはその後22℃/50%RHで24時間続けた。 90%-50%:テープを32℃/90%RHで2週間、これに続いて22℃/50%RHで1週間熟成させた。 【0085】 全実施例は計量ロールを使用してULTRAパッキング上に5%溶液から被覆した。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 特許第2799381号発明の明細書を本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりにすなわち、 (a)本件特許明細書の特許請求の範囲の第1項の 「少なくとも5,000の分子量および一般式: 【化12】 (式中、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニル基、フェニル基もしくは置換フェニル基であり;Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり: Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環を形成するアルキレン基またはフェニルであり; nは50またはそれ以上の数である)を有することを特徴とする、モノ官能性および非官能性ポリシロキサン不純物及び汚染物を実質的に含まないオルガノポリシロキサンジアミン。」を、特許請求の範囲の 減縮を目的として、 「少なくとも5,000の分子量および一般式: 【化12】 (式中、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニル基、フェニル基もしくは置換フェニル基であり; Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり: Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環を形成するアルキレン基またはフェニルであり; nは50またはそれ以上の数である)を有するオルガノポリシロキサンジアミンであり、このオルガノポリシロキサンジアミンは、一般式 【化16】 (式中、Rは、少なくとも50%がメチルであり、全R基100%の残余が炭素原子2〜12個を有する一価アルキルまたは置換アルキル基、ビニル基、フェニル基もしくは置換フェニル基であり、Yは、炭素原子1〜10個のアルキレン基であり、Dは、水素、炭素原子1〜10個のアルキル基またはYを含めて環構造を完成し、複素環を形成する炭素原子1〜10個のアルキレン基またはフェニルである)のアミン官能基含有末端封鎖剤と、環状シロキサンとを、触媒量のテトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレート触媒の存在下で反応させることにより、 【化17】 (式中、R、YおよびDは上で定義されたとおりであり、xは4〜40の数である)を有する分子量約2000未満の低分子量のオルガノポリシロキサンジアミンを作り、そして次に、上記環状シロキサンを更に添加して上記低分子量オルガノポリシロキサンジアミンを所定の分子量にすることにより得られることを特徴とする、モノ官能性および非官能性ポリシロキサン不純物及び汚染物を実質的に含まないオルガノポリシロキサンジアミン。」とする訂正 (b)明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落番号【0007】の「形成する」と「アルキレン」との間(本件特許公報第6欄第33行)に「炭素原子1〜10個の」を加入する訂正 (c)本件特許明細書の段落番号【0025】の「好ましいアミンシラノレート触媒は、……の触媒量は、」(本件特許公報第11欄第7行〜第9行)を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「本発明で使用する触媒は、テトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレートである。この触媒量は、」とする訂正 (d)本件特許明細書の段落番号【0038】の「式VIIによって表わされる無水アミン官能基含有シラノレート」(本件特許公報第13欄第18行〜第19行)を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「テトラメチルアンモニウム3-アミノプロピルジメチルシラノレート」とする訂正 |
異議決定日 | 2001-06-25 |
出願番号 | 特願平8-22759 |
審決分類 |
P
1
652・
113-
YA
(C08G)
P 1 652・ 532- YA (C08G) P 1 652・ 533- YA (C08G) P 1 652・ 121- YA (C08G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 谷口 浩行、宮坂 初男、橋本 栄和 |
特許庁審判長 |
三浦 均 |
特許庁審判官 |
村上 騎見高 船岡 嘉彦 |
登録日 | 1998-07-10 |
登録番号 | 特許第2799381号(P2799381) |
権利者 | ミネソタ マイニング アンド マニュファクチャリング カンパニー |
発明の名称 | オルガノポリシロキサンジアミンおよびその製造方法 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 樋口 外治 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 石田 敬 |