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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B62D
管理番号 1048609
異議申立番号 異議2000-74335  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-01 
確定日 2001-10-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第3049285号「ゴムクロ-ラ用芯金」の請求項1、2に係る発明についての特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3049285号の請求項1、2に係る発明についての特許を取り消す。 
理由 1本件発明
本件特許第3049285号の請求項1及び2に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみても、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりの次のものと認める。
「【請求項1】 ゴムクロ-ラの基体となるゴム弾性体と接着される芯金であって、当該芯金の表面をリン酸亜鉛の付着量(皮膜重量)が5〜15g/m2とした化成処理を施した後に加硫同時型接着剤を塗布乾燥してなることを特徴とするゴムクロ-ラ用芯金。
【請求項2】 リン酸亜鉛の化成皮膜が針状結晶である請求項第1項記載のゴムクロ-ラ用芯金。」

2引用刊行物及び周知例に記載の発明
先の取消理由通知において引用した刊行物1に記載の発明は、ゴムクローラに関するものであって、明細書の3頁2行〜7行に「コア3はゴム5の内部に埋込まれ接着剤にて接着されている。
コア3の接着面積を多くするために、コア3の両面または片面に波状溝4又は複数の凹凸を設けて表面積を増加することにより接着面積を増加し、強度を増加することができる。」と記載されている。

刊行物2に記載された発明は、防振マウントについての技術であるが、リン酸塩化成皮膜層について記載されている。
そして、明細書中に、「上記保持板21、22と上記接着層31a、32aおよび防錆層31b、32bの間には、それぞれリン酸塩化成皮膜層41、42が形成してある。上記化成皮膜層41、42としては、例えばリン酸亜鉛、リン酸亜鉛カルシウム等のリン酸塩からなる化成皮膜が好適に使用される。」(公報2頁左下欄5行目〜10行目)と記載されている。
また、「まず、上記保持板21、22を第1リン酸亜鉛と遊離リン酸を主成分とする化成処理液、またはこれに第1リン酸カルシュウムを添加したものに浸漬し、上記保持板21、22表面に化成皮膜層41、42を形成する。次いで上記保持板21、22にハロゲン化エラストマーを主成分とする接着剤31、32を塗布、乾燥した後、これらを成形金型内に配し、未加硫の天然ゴムを注入して、加硫し、上記防振ゴム体1となすとともに接着を行なう。」(公報2頁左下欄12行目〜右下欄1行目)とも記載されている。

刊行物3には、その4頁5.リン酸塩皮膜の性質(2)皮膜重量として「厚い皮膜10〜20g/m2 中程度の皮膜5〜8g/m2 薄い皮膜2〜5g/m2」と記載されている。

刊行物4には、その917ないし918頁 13・7・12化成処理法 a.リン酸塩処理の図13・68「リン酸亜鉛結晶皮膜の電子顕微鏡写真 ホパイト(Zn3(P04)2・4H20)」で、針状結晶が示されている。

周知例1(特開平1―203763号公報)に記載の発明はシリンダーヘッドガスケット用積層板に関するもので、その実施例には、「ステンレス鋼板の表面に、《中略》リン酸亜鉛の結晶性被膜を順次形成させた後、そこに接着剤を塗布し、次いで《中略》ゴム層を形成させる。このゴム層は、180℃、50kg/cm2、5分間の条件で加圧加硫された。」と記載されている。

周知例2(特開昭64―58823号公報)に記載の発明は、防振マウントに関するもので、その実施例には、「鋼鉄または鋳鉄製の保持板21、22が《中略》、リン酸亜鉛化成被膜層4が形成してある。《中略》次いで上記保持板21に下塗り接着剤61及び上塗り接着剤62を塗布した後、未加硫の天然ゴム材料を配し、加硫して上記防振ゴム体1となすと同時に接着を行う。」と記載されている。

周知例3(特開昭52―52980号公報)に記載の発明は、スチール補強ゴム複合体における接着結合の改良方法であって、タイヤ等のゴム製品一般に適用させるものであり、その特許請求の範囲には「(a)清浄化されたスチ-ルまたはスチール合金表面を結晶質または微結晶質燐酸亜鉛で被覆すること、
《中略》(f)前記要素をRFL型有機接着剤組成物中に浸漬すること、そして
(g)前記の浸漬された要素を硬化させることを順次実施することを特徴とする、ゴム物品用の清浄化されたスチールまたは合金スチール補強要素とRFL型有機接着剤との間の接着結合の加水安定性を改善する方法。」と記載されている。

3対比・判断
本件請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明とを比較すると、両者は、「ゴムクロ-ラの基体となるゴム弾性体と接着される芯金であって、当該芯金の表面を処理し」た点で一致し、刊行物1に記載された発明においては、ゴムと金属コア(芯金)との離脱防止のために金属コア(芯金)面に凹凸を設けているのに対し、本件特許発明においては、A『芯金の表面をリン酸亜鉛の化成処理を施した後に加硫同時型接着剤を塗布乾燥した』点及びB『リン酸亜鉛付着量(皮膜重量)が5〜15g/m2とした』点で相違する。
また、請求項2と刊行物1との比較においては、上記相違点に加えてC『リン酸亜鉛の化成皮膜が針状結晶である』点で相違する。

しかしながら、Aの点に関しては、刊行物2及び周知例1ないし3に記載されているように、ゴムと金属との離脱防止のために金属表面にリン酸亜鉛の化成処理を施した後に加硫同時型接着剤を塗布乾燥することが周知の技術であるから、該技術を刊行物1に記載の芯金とゴムとの接着面に用いることは当業者が容易になし得ることと認められる。
Bの点に関しては、刊行物3に示されているように、リン酸亜鉛付着量(皮膜重量)としては通常用いられる量に限定しただけで、格別な効果上の特徴もないのであるから、該相違点は単なる数値の限定に過ぎない。
また請求項2での相違点Cに関しては、刊行物4に見られるように、単に、リン酸亜鉛結晶皮膜の形状を表現したに過ぎない。

なお、権利者は、刊行物2は、防振マウントであって、ゴムクローラとはなんの共通点もない旨主張しているが、刊行物2は、ゴムと金属との離脱防止技術として提示したのであって、該技術において共通点を捉えたのである。
また、リン酸亜鉛付着量の限定は無意味なものではないと主張しているが、該限定部分は、通常用いられる範囲の限定であり、特別の意味はない。
また、針状結晶とゴムクローラの芯金とは結びつかない旨主張しているが、該点は、リン酸亜鉛による化成処理を選択すれば、必然的に生ずる事実を記載したに過ぎない。

4まとめ
以上のとおり、本件請求項1及び2に係る発明は、上記刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明しうるものであるから、本件請求項1及び2に係る発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反しているにもかかわらずなされたものである。
したがって、本件請求項1及び2に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則14条の規定に基づく特許法の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)4条2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-08-31 
出願番号 特願平2-403987
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B62D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岡田 孝博  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 井口 嘉和
鈴木 法明
登録日 2000-03-31 
登録番号 特許第3049285号(P3049285)
権利者 株式会社ブリヂストン
発明の名称 ゴムクロ-ラ用芯金  
代理人 忰熊 弘稔  
代理人 鈴木 悦郎  

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